説明

自動車用灯火器

【課題】発熱が少なくて別段の放熱手段を必要とせず、光源の耐用年数が長くて実用上光源の交換を要せず、完全水密構造が可能な路肩灯を提供する。
【解決手段】ランプハウジング1の上に基板2を設置し、該基板を覆ってレンズ3を配設し、該レンズ3と前記ランプハウジング1とを水密に溶着する。前記基板2上に複数個の発光ダイオード8が一直線状に配置されている。発光ダイオードは発熱量が少ないので過熱する虞が無い。さらに、発光ダイオードは耐用年数が長いので交換の必要性が無く、灯室内に密封しても不具合を生じない。前記発光ダイオード8としては白色チップタイプのものが望ましい。前記レンズ3は透明又は黄色のプラスチックで成形されており、カバー4で覆って保護されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路肩灯として自動車に搭載される灯火器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
路肩灯は、バスやトラックなどの大型の自動車における後輪の近傍に設置され、主として後輪と道路の路肩とを照明する灯火器である。そして、この路肩灯は自動車の側面から突出して設置されることから、防水性を要求されるとともに、物にぶつかって壊れる虞があることから、できるだけ偏平な形状にして車幅寸法を増加させないことが望まれていた。また、万が一損傷した場合には、その路肩灯を自動車から取り外して容易に交換することができる構造となっていた。路肩灯はこうした目的に沿って、一般に、細長い投光面を有するレンズを備えた偏平な灯室内に、光源を配置した構造からなり、これを自動車の側面に着脱可能に設置する構造となっている。
【0003】
従来例の路肩灯は、偏平なランプハウジングの中に白熱灯を配置して、ランプハウジングの前面開口部を細長い形の前面レンズで覆った構成である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−121962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来例の路肩灯は、偏平かつ狭小な灯室内に白熱ランプを設置することから、白熱ランプの熱がこもって過熱し易く、そのため放熱に関して特別に配慮することが必要となっていた。また白熱ランプは、老化断線したときに交換しなければならないことから、前面レンズ等はランプハウジングに対して着脱可能である必要があり、そのため前面レンズの取り付け部はゴムパッキンを介装するなどして水密を保持する必要があった。
また、自動車はさまざまな運転状況に応じて電源電圧が変動することが多く、この電圧変動によって従来例の路肩灯は明るさ(光度)が変化して、好ましい一定な明るさの照明が得られないという問題もあった。
本発明は前述の事情に鑑みて為されたものであって、その目的は、
イ.発熱量が少なくて、格別の放熱手段を必要とせず、
ロ.光源の耐用年数が長く実用上交換が不要で、灯室を密封して完全防水することができ、
ハ.灯火器の形状が偏平で、自動車の側面に装着するに適し、
ニ.電源電圧の変化に拘わらず明るさを一定に保つことができ、
ホ.投光ビームの断面形状が細長いため路肩灯として好適な、自動車用灯火器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、路肩灯に用いる光源として発光ダイオードを使用することで、発熱量を少なくしつつ従来よりも小型で扁平な形状とし、光源を交換するために前面レンズを着脱する構造を不要とすることができる自動車用灯火器を案出するに至った。
すなわち、本発明の自動車用灯火器は、発光ダイオードと該発光ダイオードを定電流で点灯駆動する定電流制御回路とを配置する基板と、該基板が取り付けられるランプハウジングと、前記基板を覆ってランプハウジングに水密に溶着され投光面を有するレンズとを備え、前記ランプハウジングが自動車に固定されることを特徴とする。
これにより、
イ.光源に発光ダイオードを用いているので発熱量が少なく、
ロ.光源である発光ダイオードの耐用年数が長く、交換を考慮する必要がないことから灯室を密封することができ、
ハ.白熱電球と比較して小径な光源を一直線状に配列したので、全体を偏平な形状とすることができ、自動車の側面に装着するに適し、
ニ.投光ビームの断面形状が偏平であり、路肩灯に好適な自動車用灯火器が得られる。
【0007】
本発明に係る自動車用灯火器の構成は、発光ダイオードがチップタイプの発光ダイオードであることを特徴とする。
これにより、チップタイプ発光ダイオードが小型、高輝度であり、かつ広い出射角を有しているから、複数のチップタイプ発光ダイオードが一直線状に配列された光源は近似的に線光源である。このため、断面形状が偏平な投光ビームが得られ、路肩灯として好適である。
【0008】
本発明に係る自動車用灯火器の構成は、発光ダイオードが白色発光ダイオードであり、レンズが透明であることを特徴とする。
これにより、白色光の明るい自動車用灯火器が得られる。
【0009】
本発明に係る自動車用灯火器の構成は、発光ダイオードが白色発光ダイオードであり、レンズが黄色であることを特徴とする。
これにより、黄色やオレンジ系の演色性に優れた色調の自動車用灯火器が得られる。
ここに、発光ダイオードは大量生産される汎用性の規格品であるから、微妙な色調を調節することが困難であるが、レンズは灯火器メーカーが任意に仕様を定め得るから、路肩灯として最適な色調にすることができる。
【0010】
本発明に係る自動車用灯火器の構成は、レンズの投光面以外の外周面が、金属製若しくは不透明な硬質プラスチック製のカバーで覆われていることを特徴とする。
ただし硬質プラスチックとは、前記レンズよりも耐衝撃性の大きいプラスチックをいう。
これにより、本発明に係るカバーによってレンズを保護し、かつ余分な光束を遮蔽することができる。
【0011】
本発明に係る自動車用灯火器を、路肩灯とすることを特徴とする。
これにより、耐水性に優れ、過熱の虞が無く、自動車の側面に装着するに適し、路肩及びタイヤを照明するに適した投光ビームを有する路肩灯を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る自動車用灯火器の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図2(A)は本発明に係る自動車用灯火器の平面図、図2(B)は正面図、図2(C)は底面図である。
【図3】図3(A)は図2(B)のA−A線断面図、図3(B)は図2(B)のB−B線断面図、図3(C)は図2(A)のC−C線断面図、図3(D)は図2(C)のD−D線断面図である。
【図4】本発明に係る自動車用灯火器の回路図であって、図4(A)は従来の自動車用灯火器の回路をそのまま利用した回路図を示し、図4(B)は本発明の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図1〜図4は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0014】
図1は、本発明に係る自動車用灯火器の一実施形態を示す分解斜視図である。
平板状のランプハウジング1上に、2個の基板取付金具5が金具取付ネジ13で取り付けられ、この基板取付金具5に基板取付ネジ6を用いてプリント回路が形成された基板2が装着される。
前記基板2は細長い形状をなし、その上に6個の発光ダイオード8が直線状に配列して実装されるとともに、該基板2の上に定電流制御回路ICが実装されている。また前記定電流制御回路ICが基板2に実装されていることの意義は、該定電流制御回路が発光ダイオードと電気的に接続されていることにある。従って、故意に定電流制御回路を基板から離間させても、発光ダイオードと直接的に配線されている限り本発明と均等であって、その技術的範囲に属する。
【0015】
前記基板2、及びこれに実装された発光ダイオード8を覆ってレンズ3がランプハウジング1に配置される。(説明の便宜上、図示のごとく直交3軸X,Y,Zを想定する。Xは基板2の長手方向の水平軸、Zは垂直軸である。)
前記平板状のランプハウジング1はX−Z面と平行であり、レンズ3下端である周囲の縁もX−Z面と平行になっている。そして、ランプハウジング1の上面とレンズ3の周囲縁とは、水密に溶着されている。本実施例にあっては、レンズ3下端をランプハウジング1上面に当接し、その接合部を超音波溶着を用いて加熱し、加熱個所の両方の合成樹脂を溶融・混合させ一体的に固着させるものであり、これにより前記接合部は確実に密閉される。なお、本実施例の超音波溶着以外にも、熱溶着を用いても良い。また、合成樹脂を溶融させる接着剤を用いることも本発明と均等であって、その技術的範囲に属する。
【0016】
前記発光ダイオード8は、白色チップタイプ(本実施形態においては日亜化学(株)製)であり、レンズ3は透明又は黄色のプラスチックからなるものである。
発光ダイオード8は、メーカー規格の発光色調を有しており、レンズ3は灯火器製造者が所望の透過色調特性となるように適宜仕様を定めることができる。本実施形態においては、発光ダイオード8の白色光が、レンズ3を透過して白色光若しくは黄色光に調光されて投光される。黄色光の場合には演色性に優れることから、路肩とタイヤとの立体的な位置関係を認識し易く、さらに、黄色光は霧によって散乱され難いので霧中での照明として実用的価値が高いものである。
【0017】
図1に示すごとく、基板2上には白色チップタイプの発光ダイオード8が直線状に配列実装されている。チップタイプの発光ダイオードは、小型、軽量であり、出射角が広く、高輝度を有する。これにより、近似的に線光源が形成されて偏平な断面形状の光束が投光され、路肩灯として好適である。
図1に示すレンズ3は、手前側の平面が投光面であり、この投光面以外の外周面を覆ってカバー4が装着されている。7は、カバー4をレンズ3に取り付けるためのカバー取付ネジである。上記カバー4はレンズ3の保護と、光が投光面以外から漏れ出ないようにする遮光の両方の役目を兼ねるべく、レンズ3よりも耐衝撃性に優れた材料である金属又は不透明な硬質プラスチックで構成されている。上述の構造機能から理解されるように、本発明における不透明な硬質プラスチックとは、硬質プラスチックが光束を遮断する機能を備えている状態を意味する。従って、透明な硬質プラスチックに遮光処理を施した構成であっても、不透明な硬質プラスチックに相当する。
【0018】
図2は前掲の図1に示した実施形態に係る自動車用灯火器の3面図であって、図2(A)は平面図、図2(B)は正面図、図2(C)は底面図である。
図2(B)に示すごとく、ランプハウジング1底面には下方に突出するネジ脚11が一体成形されていて、フランジナット12によって自動車の車体bに装着される。
図2(C)に示すごとく、前記の基板2に接続された電線9は防水グロメット10を介してランプハウジング1を貫通し、灯火器の下面から外側に引き出されている。なお、防水グロメット10よりもさらに完璧な防水性を求めるならば、本発明の他の実施例として、ランプハウジング1を貫通する導電端子をモールド成形することで、より一層確実な水密構造とすることができる。
【0019】
図2(B)に示すごとく、基板取付金具5は、ランプハウジング1に対して金具取付ネジ13によって螺着されている。この金具取付ネジ13を通るA−A面による断面矢視図を図3(A)に示すように、金具取付ネジ13はランプハウジング1を貫通していないので、水密構造が保たれる。
図3(B)には、ランプハウジング1を車体bに取り付けるための2個のネジ脚11が現れており、ネジ脚11にフランジナット12を螺着することにより、灯火器を車体bに対して着脱可能に固定している。
【0020】
図3(C)に示すごとく、断面三角形状のレンズ3の左方の斜面が投光面であり、この投光面を除いてレンズ3はカバー4で覆われ、カバー4はカバー取付ネジ7でレンズ3に固定されている。
図3(D)に示すごとく、基板2からの電線9が、防水グロメット10を介して水密にランプハウジング1を貫通している。前述したように、レンズ3とランプハウジング1とは溶着され着脱不可の構造となっている。また、防水グロメット10はモールド成形される導電端子で代替し得る。このようにして灯室が密閉され、完全に防水される。
【0021】
図4は複数個(本実施形態においては6個)の発光ダイオード8の点灯駆動回路を示している。
従来の一般的な回路では、図4(A)に示すごとく、6個の発光ダイオード8と、電流制御抵抗器Rと、逆接防止ダイオードDとが直列に接続されるが、これだけでは自動車の電源電圧の変動に伴う光度変化が避けられないので、本実施形態においては図4(B)に示すごとく、点灯駆動回路に定電流制御回路ICを用いるものである。Rは電流制御抵抗器、Dは逆接防止ダイオード、Fはヒューズ、Cは平滑コンデンサである。これにより、自動車搭載エンジンの負荷状態や車載バッテリの充放電状態の如何に拘わらず発光ダイオード8を流れる電流は一定に保たれ、発光ダイオード8の光度は一定に保たれる。
【0022】
以上に実施形態を挙げて説明したように,本発明に係る自動車用灯火器によれば、耐水性に優れ、過熱の虞が無く、自動車の側面に装着するに適し、路肩及び車輪を照明するに適した投光ビームを有する路肩灯を小型、軽量に、かつ低コストで構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の自動車用灯火器は、路肩灯を製造する産業において利用することができるものである。
【符号の説明】
【0024】
1…ランプハウジング 2…基板 3…レンズ 4…カバー 5…基板取付金具 6…基板取付ネジ 7…カバー取付ネジ 8…発光ダイオード 9…電線 10…防水グロメット 11…ネジ脚 12…フランジナット 13…金具取付ネジ b…自動車の車体 C…コンデンサ D…逆接防止ダイオード F…ヒューズ IC…定電流制御回路 R…電流制御抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードと該発光ダイオードを定電流で点灯駆動する定電流制御回路とを配置する基板と、
該基板が取り付けられるランプハウジングと、
前記基板を覆ってランプハウジングに水密に溶着され投光面を有するレンズとを備え、
前記ランプハウジングが自動車に固定されることを特徴とする自動車用灯火器。
【請求項2】
前記発光ダイオードがチップタイプ発光ダイオードであることを特徴とする請求項1に記載した自動車用灯火器。
【請求項3】
前記発光ダイオードが白色発光ダイオードであり、前記レンズが透明であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した自動車用灯火器。
【請求項4】
前記発光ダイオードが白色発光ダイオードであり、前記レンズが黄色であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した自動車用灯火器。
【請求項5】
前記レンズの投光面以外の外周面が、金属製又は不透明な硬質プラスチック製のカバーで覆われていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載した自動車用灯火器。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れかに記載した自動車用灯火器を用いて構成したことを特徴とする自動車用の路肩灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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