説明

自動車用燃料タンク

【課題】リサイクル利用を促進し、剛性が高く、耐衝撃性の優れた燃料タンクを提供する。
【解決手段】燃料タンク1の外壁10は、外側から順に、表皮層11、外部本体層12、外部接着剤層14、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16から形成され、全体の肉厚が3mm〜8mmである。表皮層11と内部本体層16は、高密度ポリエチレンで形成される。外部本体層12は、高密度ポリエチレンの再生材を主材として形成され、粒径が10μm以下の無機フィラーを外部本体層12の全重量に対して10重量%〜35重量%含有するとともに、外壁10の全体の肉厚に対して25%〜50%の肉厚を有する。外部接着剤層13と内部接着剤層15は、高密度ポリエチレンとバリヤ層14の両方に接着性を有する合成樹脂で形成され、バリヤ層14は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成された自動車用燃料タンクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクに関するものであり、特に、多層構成からなる合成樹脂層の合成樹脂部材をブロー成形することにより本体が形成される燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用等の燃料タンクの構造としては、金属製のものが用いられていたが、近年、車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性合成樹脂製のものが用いられるようになってきた。
合成樹脂製の自動車用燃料タンクの製造は、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。ブロー成形方法では、溶融した熱可塑性合成樹脂部材のパリソンを円筒状にして上から押出して、そのパリソンを金型で挟みパリソン中に空気を吹き込み、自動車用燃料タンクを製造していた。
【0003】
このブロー成形において、燃料タンクの強度を確保して、燃料油の透過性を防止するために、パリソンは多層構成を有している。即ち、この多層構成は、少なくとも、燃料タンクの強度を確保する耐衝撃性の樹脂からなる層と、燃料油の浸透を防止するバリヤ性の樹脂からなる層を個々に有し、そしてこの2種類の層を接着する層を有している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この場合は、燃料タンクの本体の外部本体層と内部本体層を燃料タンクとして必要な強度を保持して、燃料にも強い高密度ポリエチレン(HDPE)で構成し、その間に燃料の浸透を防止するバリヤ層としての中間層から構成される熱可塑性合成樹脂部材で形成している(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、近年、環境保護のため、リサイクル利用の必要性が増大し、合成樹脂性の自動車用燃料タンクにおいても、自動車用燃料タンクの本体のリサイクルが図られている。この場合は、燃料タンクの本体の大部分は、高密度ポリエチレン(HDPE)であるため、リサイクルされる再生材は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有している。そのため、剛性を確保できるように、燃料油に直接さらされることのない、燃料タンクの本体の外部本体層に使用される。
【0006】
一方、燃料タンクの本体の内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)の新材が使用されるが、使用中に燃料油により若干膨潤し、剛性が低下する場合がある。このため、燃料タンクの内部本体層に補強リブを形成したり、燃料タンクの内部本体層の肉厚を大きくしたりして剛性を向上させている。しかしこの場合は、燃料タンクの容量が少なくなったり、重量が増加したりすることとなる。
【0007】
また、燃料タンクの使用中に雰囲気温度が上昇し、燃料タンクの内部圧力が増加し、燃料タンクが膨張する恐れもある。このため、燃料タンクの剛性を増加させるために、高密度ポリエチレン(HDPE)に無機フィラーを混入させることも行われている(例えば、特許文献3及び4参照。)。しかし無機フィラーを混入すると、燃料タンクの耐衝撃性が低下する。
【特許文献1】特開平9−29904号公報
【特許文献2】特開2003−220840号公報
【特許文献3】特開2001−179901号公報
【特許文献4】特開2004−299737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、本発明は、リサイクル利用を促進し、剛性が高く、耐衝撃性の優れた燃料タンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、多層構成からなる合成樹脂層で本体が形成された外壁を有する自動車用燃料タンクにおいて、
外壁は、少なくとも外側から順に、表皮層、外部本体層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層及び内部本体層から形成され、全体の肉厚が3mm〜8mmであり、
表皮層と内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、
外部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材を主材として形成され、粒径が10μm以下の無機フィラーを外部本体層の全重量に対して10重量%〜35重量%含有するとともに、外壁の全体の肉厚に対して25%〜50%の肉厚を有し、
外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成され、
バリヤ層は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成された自動車用燃料タンクである。
【0010】
請求項1の本発明では、外壁は、少なくとも外側から順に、表皮層、外部本体層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層及び内部本体層から形成され、全体の肉厚が3mm〜8mmである。このため、各層を積層して燃料タンクの燃料透過防止性、剛性と耐衝撃性の各性能を満足させるとともに、各層間の接着を強固にして、全体の肉厚を薄くして燃料タンクの容量を確保し、重量増加を防止することができる。
【0011】
表皮層と内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成される。このため、表皮層で無機フィラーを含有した外部本体層の表面を覆い、表面を円滑にするとともに、後述する外部本体層の耐衝撃性の減少を補完して、燃料タンクの耐衝撃性の向上を図っている。内部本体層で燃料が浸透しても燃料タンクの剛性を確保し、耐衝撃性を向上させることができる。
【0012】
外部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材を主材として形成され、粒径が10μm以下の無機フィラーを外部本体層の全重量に対して10重量%〜35重量%含有するとともに、外壁の全体の肉厚に対して25%〜50%の肉厚を有している。このため、主として高密度ポリエチレン(HDPE)で形成される燃料タンクのリサイクル利用を図ることができる。
【0013】
さらに、無機フィラーを含有するとともに、外壁の全体の肉厚に対して25%〜50%の肉厚を有することにより、燃料タンクの剛性を向上して、燃料タンクの内圧が増加してもその膨張を抑制することができ、燃料タンクの肉厚の増加を防止して、燃料タンクの容量の減少を防ぐことができる。また、無機フィラーを所定量有しているため、外部本体層の剛性を増加させ、燃料タンクの剛性と耐衝撃性の両方の性能を確保できる。
【0014】
外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成される。このため、外部接着剤層と内部接着剤層は、バリヤ層と、外部本体層及び内部本体層とをそれぞれ強固に接着して、燃料タンクの各層間を強固に接着し、一体化させて、燃料タンクの燃料透過防止性と、強度を確保することができる。
バリヤ層は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成されたため、内部本体層を浸透した燃料の透過が、外部本体層まで浸透し、車外に蒸発することを防止することができる。
【0015】
請求項2の本発明は、外部本体層に、変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させた自動車用燃料タンクである。
【0016】
請求項2の本発明では、外部本体層に、変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させたため、高密度ポリエチレン(HDPE)の再生材に含まれるバリヤ層の構成材料であるエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等と、高密度ポリエチレン(HDPE)との相溶性が向上し、外部本体層の耐衝撃性が向上する。
【0017】
請求項3の本発明は、無機フィラーは、板状フィラーである自動車用燃料タンクである。
【0018】
請求項3の本発明では、無機フィラーは、板状フィラーであるため、他の形状の無機フィラーと比べて、補強効果が大きく少量の混合でも外部本体層の剛性を充分向上させることができる。
【0019】
請求項4の本発明は、無機フィラーは、表面処理がされた無機フィラーである自動車用燃料タンクである。
【0020】
請求項4の本発明では、無機フィラーは、表面処理がされた無機フィラーであるため、混入される高密度ポリエチレン(HDPE)との相溶性が向上し、高密度ポリエチレン(HDPE)への分散性が良く、補強効果が向上し、燃料タンクの剛性を向上させることができる。
【0021】
請求項5の本発明は、無機フィラーは、タルク又はマイカである自動車用燃料タンクである。
【0022】
請求項5の本発明では、無機フィラーは、タルク又はマイカであるため、補強効果が大きく、外部本体層の剛性を向上させることができるとともに、耐火性の向上も図ることができる。
【0023】
請求項6の本発明は、バリヤ層は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)で形成された自動車用燃料タンクである。
【0024】
請求項6の本発明では、バリヤ層は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)であるためガソリンの透過防止性に優れるとともに、溶融成形が可能で加工性にも優れている。また、高湿度下において、あるいはアルコールを含有するガソリンに対しても優れた透過防止性を有する。
【0025】
請求項7の本発明は、内部本体層の肉厚は、外壁の全体の肉厚に対して15%〜67%の肉厚を有する自動車用燃料タンクである。
【0026】
請求項7の本発明では、内部本体層の肉厚は、外壁の全体の肉厚に対して15%〜67%の肉厚を有するため、燃料で膨潤しても充分な強度を有して、耐衝撃性を確保することができる。
【0027】
請求項8の本発明は、燃料タンクの本体は、ブロー成形で形成された自動車用燃料タンクである。
【0028】
請求項8の本発明では、燃料タンクの本体は、ブロー成形で形成されたため、多層構造を有する合成樹脂層の中空状の燃料タンクを1回の成形で成形でき、自由に形状を選択することができる。
【発明の効果】
【0029】
表皮層と内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されるため、表皮層で無機フィラーを含有した外部本体層の表面を覆い、表面を円滑にするとともに、内部本体層で燃料タンクの剛性を確保し、耐衝撃性を向上させることができる。
外部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)の再生材を主材として形成され、粒径が10μm以下の無機フィラーを外部本体層の全重量に対して10重量%〜35重量%含有するため、主として高密度ポリエチレン(HDPE)で形成される燃料タンクのリサイクル利用を図ることができ、無機フィラーにより燃料タンクの剛性を向上して、耐衝撃性の両方の性能を確保できる。
バリヤ層は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成されたため、内部本体層を浸透した燃料の透過を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の形態である自動車用の燃料タンク1について、図1〜図2に基づき説明する。図1は、本発明の実施の形態の燃料タンク1の斜視図であり、図2は、合成樹脂製の燃料タンク1の外壁10の一部断面図であり、外壁10の多層構造の構成を示すものである。
【0031】
本発明の実施の形態では、燃料タンク1は、図1に示すように、その燃料タンク1に燃料ポンプ(図示せず)等を出し入れするためにポンプユニット取付孔4が上面に形成されている。また、燃料タンク1の側面又は上面には、インレットパイプ(図示せず)から燃料を注入する燃料注入孔5が形成されている。
【0032】
また、燃料タンク1の周囲には外周リブ2が全周に亘り形成されており、外周リブ2のコーナー部等の所定箇所には、数箇所に亘り取付用孔3が形成され、取付用孔3と車体をボルト締めすることにより、燃料タンク1を車体に取付けている。
さらに、燃料タンク1の上面には、内部の燃料蒸気を回収するホース等を接続する各所の取付孔6が形成されている。
【0033】
本実施の形態において、燃料タンク1は、ブロー成形で形成され、その外壁10は、図2に示すように、外側から順に表皮層11、外部本体層12、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16から形成されている。ブロー成形においては、上記の6層から構成されるパリソンが使用される。6層以上の層構成を有するパリソンを使用することもできる。
【0034】
表皮層11は、耐衝撃性が大きく、燃料油に対しても剛性が維持される熱可塑性合成樹脂から形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成される。表皮層11が、後述する無機フィラーを含有した外部本体層12の表面を覆うため、表面に無機フィラーが出ることがなく、表面を円滑にすることができる。さらに、表皮層11は、無機フィラーを含有しないため、後述する内部本体層16と合わせて、燃料タンク1の耐衝撃性を向上させることができる。
【0035】
表皮層11と後述する内部本体層16に使用する高密度ポリエチレン(HDPE)は、例えば、具体的には以下のポリエチレンを使用することができる。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、溶融流動速度(MRF:21.6kg/10min)が5〜7であって、密度(g/cm)が0.944〜0.950のものを使用することができる。
【0036】
表皮層11は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの5%〜20%の厚さを有する。外壁10は全体として3mm〜8mmの肉厚を有するため、0.15mmから1.6mmの範囲の肉厚を有する。これにより、確実に外壁10の表面を覆い、外部本体層12に密着し、外部本体層12への無機フィラーの混入による燃料タンク1の耐衝撃性の低下を防止することができる。なお、表皮層11と外部本体層12はともに高密度ポリエチレン(HDPE)が主材であるため、容易に密着することができる。
【0037】
外部本体層12は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材を主材として形成される。高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材は、例えば、本願発明のように、使用後に回収された燃料タンク1を粉砕してリサイクルして使用する場合や、燃料タンク1の製造工程中で発生する製造工程中で発生する切れ端や不良品を粉砕してリサイクルして使用する場合がある。燃料タンク1は、主として高密度ポリエチレン(HDPE)から構成されているため、燃料タンク1を粉砕した再生材は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主として有している。
これ等の再生材を100%使用する場合と、再生材に新材の高密度ポリエチレン(HDPE)を混合して使用する場合がある。
【0038】
外部本体層12に、相溶化剤として、例えば、変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させることができる。使用後の回収された燃料タンク1や、製造工程中の端材等をリサイクルした材料は、再生材に含まれるバリヤ層の構成材料であるエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等を含んでいる。この再生材を使用すると、高密度ポリエチレン(HDPE)の中にエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が分散して存在する。変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させると、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が微細化して高密度ポリエチレン(HDPE)の中に分散し、相溶性が向上し、充分に混ざり合うことができる。そのため耐衝撃性を向上させることができる。
【0039】
相溶化剤としての変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンは、例えば以下のものを使用することができる。
変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンは、溶融流動速度(MRF:21.6kg/10min)が0.4〜0.7であって、密度(g/cm)が0.930〜0.960のものを使用することができる。
変性ポリエチレンは、無水マレインで変性したものであり、変性量は、0.1%〜5%のものを使用することができる。変性ポリエチレンを使用すると、混合されたフィラーとの馴染みが良く、フィラーが表面に露出することがない。
【0040】
この高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材に、粒径が10μm以下の無機フィラーを外部本体層12の全重量に対して10重量%〜22重量%含有させて使用する。無機フィラーを含有させると剛性が向上し、燃料タンク1の内圧が増加してもその膨張を抑制することができ、燃料タンク1の肉厚を減少させることができるため、燃料タンク1の軽量化とタンク容量の減少防止を図ることができる。また、耐火性能も向上させることができる。
【0041】
無機フィラーは、タルク、マイカ、クレー、シリカ、炭酸カルシュウム、水酸化マグネシュウム、石膏等を使用することができるが、タルク又はマイカが好ましい。タルク又はマイカは、板状フィラーであるため、他の形状の無機フィラーと比べて、補強効果が大きく少量の混合でも外部本体層12の剛性を充分向上させることができる。
ここで使用するタルクは、平均粒径が2.0μm〜8.0μm、アスペクト比が15、比重が2.7〜2.8のものを使用することが好ましい。
また、マイカは、平均粒径が20μm〜30μm、アスペクト比が10、比重が2.7〜3.0のものを使用することが好ましい。
【0042】
無機フィラーを外部本体層12の全重量に対して10重量%〜35重量%含有させると充分な補強効果を有することができる。10重量%以下では、剛性の向上が不十分で、高温等で燃料タンク1の内圧が上昇したときに、膨張を抑制する効果が不充分である。燃料タンク1の35重量%以上では、燃料タンク1の耐衝撃防止性が充分でなく、かつ、表皮層との接着性が低下する。
【0043】
なお、燃料タンク1の膨張は、燃料タンク1に試験燃料を封入し、所定アングルに宙づりし、65℃で放置し、燃料タンク1の数箇所の点について基準点からの距離を測定し、その距離をゼロ点とする。さらに、この状態で内圧をかけて5分間放置し、基準点からの距離を測定しゼロ点との差を変形量とした。無機フィラーを上記の割合で含有する燃料タンク1は変形量が少なく、実用上充分であった。
【0044】
燃料タンク1の耐衝撃性は、燃料タンク1を常盤に固定し、先端部に円筒を取付けた所定重量の台車を衝突させ、燃料タンク1への円筒部の侵入量をチェックすることにより行った。無機フィラーを外部本体層12の全重量に対して10重量%〜35重量%含有させてもさせなくても進入量は同等で実用上問題はなかった。
【0045】
表1に無機フィラーとしてタルクを外部本体層12に含有させた実施例1〜5と、タルクを含有させない比較例1〜2を評価した結果を示す。
【表1】

【0046】
外部本体層へのタルク混合量を10重量%としたものを実施例1〜3とし、タルク混合量を15重量%としたものを実施例4〜5とし、タルクを混合しないものを比較例1〜2とした。そして、実施例1のタンクの肉厚を5.4mmとし、実施例2〜5のタンクの肉厚を、上記のように順次薄肉とした。表1における構成比とは、タンク全体の肉厚に対するタルクを混合された外部本体層12の肉厚の比です。
【0047】
上記のように燃料タンク1の耐衝撃性の試験として側突試験を行い、燃料タンク1への円筒部の侵入量を測定した。比較例1の値を100として、それぞれの実施例の値を表1に記載した。側突試験においては、タンクの肉厚が薄いほど、進入量は大きくなるが、局部的な変形のみであり、実用上問題はなかった。
【0048】
さらに、最大加圧変形量を上記のようにして測定した。側突試験と同様に、比較例1の値を100として、それぞれの実施例の値を表1に記載した。タルクを混入した実施例1と同じタンクの肉厚のタルクを混入しない比較例1と比べると、最大加圧変形量は、実施例1が88となり、変形量が少ない。また、肉厚を4.8mmとした実施例2においても比較例1よりも変形量は少ない。さらに、肉厚を4.2mmとした実施例3は、同じ肉厚のタルクを混入していない比較例2と比べると変形量は少ない。
さらに、タルクの混入量を15重量%とした実施例4は、同じ肉厚の比較例2よりもはるかに変形量は少なく、タルクの混入量を15重量%とし肉厚をさらに薄くした実施例5においても、比較例2よりも変形量が少ない。
【0049】
また、表面処理がされた無機フィラーを使用することができる。この場合は、混入された無機フィラーと高密度ポリエチレン(HDPE)との相溶性が向上し、高密度ポリエチレン(HDPE)への分散性が良く、補強効果が向上し、燃料タンク1の剛性を向上させることができ、燃料タンク1の膨張を抑制することができる。
【0050】
無機フィラーの表面処理は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミカップリング剤等を使用することができる。これ等のカップリング剤を2種以上混合して使用しても良い。この表面処理は、カップリング剤が入った溶剤中に無機フィラーを浸漬して、煮沸処理して、溶剤を除去することにより行うことができる。
【0051】
粒径が10μm以下の無機フィラーを外部本体層12の全重量に対して10重量%〜35重量%含有するとともに、上記外壁10の全体の肉厚に対して25%〜50%の肉厚を有している。このため、主として高密度ポリエチレン(HDPE)で形成される燃料タンク1のリサイクル利用を図ることができ、無機フィラーにより燃料タンク1の剛性を向上して、燃料タンク1の内圧が増加してもその膨張を抑制することができる。また、無機フィラーを所定量有しているため、燃料タンク1の剛性と耐衝撃性の両方の性能を確保できる。
【0052】
バリヤ層14は、燃料油の透過が極めて少ない熱可塑性合成樹脂から形成されている。バリヤ層14を構成する熱可塑性合成樹脂は、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、半芳香族ナイロン(PPA)を使用することができるが、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましい。
バリヤ層14を有するため、後述する内部本体層16を浸透してきたガソリン等の燃料油を、バリヤ層14で透過を防ぐことができ、大気中に燃料油が蒸発することを防止できる。
【0053】
バリヤ層14として、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を使用する場合は、ガソリンの透過防止性に優れるとともに、溶融成形が可能で加工性にも優れている。また、高湿度下においても、ガソリンの透過防止性に優れている。さらに、アルコールを含有するガソリンに対しても優れた透過防止性を有することができる。
【0054】
外部接着剤層13は、外部本体層12とバリヤ層14の間に設けられて、この2層を接着し、内部接着剤層15は、内部本体層16とバリヤ層14の間に設けられて、この2層を接着する。外部接着剤層13と内部接着剤層15は、同じ材料で形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層14の両方に接着性を有する合成樹脂で形成される。このため、外部接着剤層13と内部接着剤層15は、バリヤ層14と、外部本体層12及び内部本体層16とをそれぞれ強固に接着して、それぞれの層が一体的に密着して、燃料タンク1の燃料透過防止性と、強度を確保することができる。
【0055】
外部接着剤層13と内部接着剤層15に使用される接着性の合成樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン樹脂を使用することができ、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、特に不飽和カルボン酸変性ポリエチレン樹脂が好ましい。これは、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸を共重合又はグラフト重合させることにより製造することができる。
【0056】
内部本体層16は、表皮層11で述べたように、表皮層11の使用するものと同じ材料である高密度ポリエチレン(HDPE)を使用する。
内部本体層16は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの15%〜67%の厚さを有する。外壁10は全体として3mm〜8mmの肉厚を有するため、0.45mmから5.36mmの範囲の肉厚を有する。これにより、燃料タンク1の外壁10は、内部本体層16が充分な肉厚を有するため、燃料で膨潤しても剛性を保ち、耐衝撃性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態である燃料タンク斜視図である。
【図2】本発明の燃料タンクの外壁の構造を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 燃料タンク
10 外壁
11 表皮層
12 外部本体層
13 外部接着剤層
14 バリヤ層
15 内部接着剤層
16 内部本体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構成からなる合成樹脂層で本体が形成された外壁を有する自動車用燃料タンクにおいて、
上記外壁は、少なくとも外側から順に、表皮層、外部本体層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層及び内部本体層から形成され、全体の肉厚が3mm〜8mmであり、
上記表皮層と上記内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、
上記外部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材を主材として形成され、粒径が10μm以下の無機フィラーを上記外部本体層の全重量に対して10重量%〜35重量%含有するとともに、上記外壁の全体の肉厚に対して25%〜50%の肉厚を有し、
上記外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成され、
上記バリヤ層は、燃料油が透過しにくい合成樹脂で形成されたことを特徴とする自動車用燃料タンク。
【請求項2】
上記外部本体層に、変性ポリエチレン又は軟質ポリエチレンを含有させた請求項1に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項3】
上記無機フィラーは、板状フィラーである請求項1又は請求項2に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項4】
上記無機フィラーは、表面処理がされた無機フィラーである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項5】
上記無機フィラーは、タルク又はマイカである請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項6】
上記バリヤ層は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)で形成された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項7】
上記内部本体層の肉厚は、上記外壁の全体の肉厚に対して15%〜67%の肉厚を有する請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項8】
上記燃料タンクの本体は、ブロー成形で形成された請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−6858(P2009−6858A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170371(P2007−170371)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(502148037)株式会社エフティエス (34)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】