自動車用燃料タンク
【課題】 タンク給油通路を形成する給油管(12)と該給油管の給油ヘッド(14)に接続された作動時通気導管及び給油時通気導管とを備えた自動車用燃料タンク(10)を得る。
【解決手段】 給油ヘッド(14)には少なくとも一つの開閉切換弁(28)が設けられ、該切換弁(28)は第1切換位置(給油ポジション)で給油時通気導管と燃料蒸気処理装置に通じる通気流路との接続流路を開くと共に作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を遮断し、第2切換位置(作動ポジション)で作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を開くと共に給油時通気導管と通気流路との接続流路を遮断する。
【解決手段】 給油ヘッド(14)には少なくとも一つの開閉切換弁(28)が設けられ、該切換弁(28)は第1切換位置(給油ポジション)で給油時通気導管と燃料蒸気処理装置に通じる通気流路との接続流路を開くと共に作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を遮断し、第2切換位置(作動ポジション)で作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を開くと共に給油時通気導管と通気流路との接続流路を遮断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広義には車両用燃料システムに関するものであり、更に特別には車両用燃料タンクに装備された燃料蒸気通気系を燃料蒸気処理装置等の燃料処理装置に選択的に接続又は遮断するための切換弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク又はその給油系のための燃料蒸気遮断接続体は例えば特許文献1によって公知である。特許文献1は自動車燃料タンクの給油管用の遮断接続体を開示しており、この公知の遮断接続体は、燃料タンクへの給油通路内に位置して給油時に燃料タンクの通気弁を切り換えるために変位されるフラップと、給油時におけるタンク内の通気のために前記通気弁に接続された第1の補償チャンバーと、給油時以外の通常作動時におけるタンク内の通気のために前記通気弁に接続された第2の補償チャンバーとを備えており、この場合の通気弁は、燃料システムが通常の作動中にあるときは第2の補償チャンバーと燃料タンクへの給油通路とを連通状態とするように構成されている。この燃料蒸気遮断接続体は、開閉切換弁で第1の補償チャンバーを燃料蒸気フィルタか燃料タンクへの給油通路かに択一的に接続するという切換機能を有し、それにより係る遮断接続体は種々の燃料タンク給油系に適合させることができるという点で特徴的である。
【0003】
特許文献1に記載されている燃料タンク給油時通気手段の変形形態においては、自動車の給油時にタンク内に生じるガスの体積流が補償チャンバーと燃料蒸気処理装置を介して大気中に放出される。この補償チャンバーと燃料蒸気処理装置との間の流路には、車両が通常の作動状態にあるときは流路を遮断し、燃料タンクへの給油が行われているときは流路を開く弁機構が設けられている。従って、特許文献1に記載の通気系では、自動車燃料システムが通常の作動状態にあるときのタンク内の通気は依然として従来からの方式で行われることが明らかである。
【0004】
従来より、燃料システムが通常の作動状態にあるときのタンクの通気は、一般的に燃料タンクの複数箇所から一連の作動時通気導管を介して燃料蒸気処理装置に至る通気系によって行われている。通常、燃料タンク上の通気箇所はタンク最大許容液体燃料レベルよりも上方に位置し、フロート弁形式の通気弁によって閉じられている。燃料タンクへの過充填を防止する目的で給油中に給油ノズルの開閉弁を適時に遮断するように、これらの通気弁に圧力保持機能が与えられ、或いは別の圧力保持弁が付設されている。
【0005】
従って、燃料タンクに配置すべき通気箇所の数に応じて比較的多数の通気弁を設ける必要があり、またフロート弁形式の通気弁では、弁体に慣性があることから、或る一つの通気箇所又は他の複数の通気箇所から通気導管への燃料の漏出が避けられない。通気弁に付設される圧力保持弁でも或る漏れ量が不可避であり、従って通気箇所の数が多くなればなるほど燃料タンクへの過充填の危険が増大する。
【0006】
加えて、自動車の作動中には燃料タンク内をほぼ大気圧に等しい無圧状態に維持する必要がある。
【0007】
特許文献2には、タンク膨出部と、口栓によって閉鎖可能な給油管と、タンク膨出部に接続された通気導管及び通気弁とを有する燃料タンクのためのタンク通気システムが開示されており、このシステムの通気弁は、給油管の口栓が開かれたときには通気導管を遮断するように、また給油管の口栓が閉じられたときには通気導管を開くように切り換えられるようになっている。この切り換えのために燃料蒸気処理装置と燃料タンクの通気導管との間に介装された遮断弁は給油管の給油ヘッドに取り付けられ、この場合、給油管の開口端に口栓キャップがねじ込まれると遮断弁が作動し、それにより作動時通気導管から燃料蒸気処理装置への流路が開かれる。
【0008】
特許文献2に記載されているタンク通気システムは専ら欧州規格のシステムによる給油時通気方式にのみ適合し、その場合、発生する燃料蒸気は給油ノズルガン側の適合装置によって吸引される。特許文献2に開示されたタンク通気システムでは、特許文献1による遮断接続体で果たされているような給油時のタンク通気の一体化は具体化されていない。
【0009】
給油ノズルが挿入されたときに作動するように給油管に取り付けられた切換弁を備えた燃料蒸気コントロールシステムは多くの特許文献に述べられている。そのような特許文献の例を挙げれば以下の通りである。
【0010】
即ち、特許文献3には、通気チューブに接続された第1の室と、キャニスターに連通する第2の室と、蒸発チューブに接続された第3の室とを有する通気遮断弁を備えた燃料タンクが開示されている。第1の室と第2の室は第1の連通孔を有する第1の隔壁によって区画され、また第2の室と第3の室は第2の連通孔を有する第2の隔壁によって区画されている。シャッターが通気遮断弁の主弁体を押したときに第1の連通孔が開かれるように、通気遮断弁の主弁体は第2の室内に配置されている。また通気遮断弁の主弁体には逆止弁が設けられ、この逆止弁と通気遮断弁の弁本体との間に介装された弾性部材により、第2の隔壁に向かって付勢されている第2の連通孔が閉じられるようになっている。
【0011】
亦特許文献4には、圧力平衡ラインに挿入される個別の切換経路で形成されたオンボードの給油時燃料蒸気回収システムが開示されている。給油モードと作動モードとの間で切換弁を切り換えると圧力平衡ラインの個別の切換経路が切り換えられ、作動モードでは圧力平衡ラインが切換弁出口を介して燃料蒸気収容部に接続され、一方、給油モードでは圧力平衡ラインが遮断される。このシステムにはロールオーバー弁を組み込むこともでき、その場合、ロールオーバー弁は好ましくは給油時通気ラインを有する小径の圧力平衡ダクトに接続される。この給油時通気ラインは、燃料タンクの給油口に給油ノズルが挿入されたときに切換弁の作動で開かれるが給油ノズルが外されると遮断され、作動時通気ラインと、圧力平衡ラインと、小径の圧力平衡ダクトだけが切換弁出口から蒸気収容部へ通じることになる。
【0012】
特許文献5には、燃料タンクと、該タンクに接続された給油管と、給油管内に配置されて給油ノズルが挿入されたときに作動するシャッタ機構と、挿入された給油ノズルをシャッタ機構に向かって案内するために給油管に設けられたガイドと、給油管内でシャッタ機構に案内された給油ノズルと衝合することにより一定角度に亘って傾転するように給油管内に配置されレバーと、燃料タンクとキャニスター等の関連する機構との間の連通流路を形成するためにレバーの傾転運動に応答するオンオフ弁を含む燃料蒸気通気機構とを備えた燃料タンクシステムが開示されている。ここで、レバーはガイドとシャッタ機構との間に配置されている。オンオフ弁はハウジングケース内の円筒内面を摺動可能であり、この円筒内面には軸方向に延在する複数の隆起ストライプ又は隆起リッジが設けられ、それによってオンオフ弁が滑らかに摺動することを可能にすると共に、オンオフ弁が開かれたときに燃料蒸気がなるべく大量に流れることを可能にしている。
【0013】
給油管に取り付けられた切換弁を含むその他の燃料蒸気制御システムは、例えば特許文献6などにも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第19847472号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19540267号明細書
【特許文献3】米国特許第5404906号明細書
【特許文献4】米国特許第5983963号明細書
【特許文献5】米国特許第4941587号明細書
【特許文献6】米国特許第6318423号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、給油ノズルとの衝合で作動するように給油管に取り付けられた切換弁と連携して容易滑確実に作動する燃料蒸気コントロールシステムを含む改良された燃料タンクを提供することである。本発明の別の目的は、自動車の作動中に燃料タンクの通気をほぼ大気圧と同等の無圧状態で可能とし、更にはその他の要求事項である燃料蒸気からの凝縮液滴の捕集と圧力補償のための各容積を考慮に入れて、できるだけ簡単で安価に製できる燃料タンクを提供することである。
【0016】
また、燃料蒸気の凝縮液滴を除去するための付加的な容器並びに圧力補償用の付加的な容積等を不要とすることが可能な構成の燃料システム用の改良された切換弁を提供することも本発明の更に別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による自動車用燃料タンクはタンク給油通路を形成する給油管と該給油管の給油ヘッドに接続された作動時通気導管及び給油時通気導管とを備え、該給油ヘッドには少なくとも一つの開閉切換弁が設けられている。該切換弁は、第1の切換位置(給油ポジション)において給油時通気導管と燃料蒸気処理装置に通じる通気流路との接続流路を開くと共に作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を遮断し、第2の切換位置(作動ポジション)において作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を開くと共に給油時通気導管と通気流路との接続流路を遮断する。この開閉切換弁によって前記作動時通気導管は前記通気流路に接続可能とされ、該切換弁は第2の切換位置において作動時通気導管と通気流路との接続流路を開くと共に第1の切換位置において作動時通気導管と通気流路との接続流路を遮断し、更に作動時通気導管から燃料蒸気処理装置への接続流路中には前記タンク給油通路へ連じる液体燃料ドレン通路が設けられている。
【0018】
液体燃料ドレン通路は、燃料蒸気が凝縮した液体燃料又は燃料蒸気に随伴する液体燃料の液滴が重力の作用だけでタンク給油通路に流出するような構成とすることが好ましい。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、給油ヘッドはタンク給油通路へ排出すべき液体燃料のための液体トラップを備えている。
【0020】
液体トラップは区画室を備えていると特に有利である。液体トラップの区画室は、切換弁のハウジング内に一体化される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、液体トラップは特定の幾つかの状況下でドレンの排出を阻止するために区画室を封止するシール手段を備えている。
【0022】
液体トラップは、区画室から液体燃料を排出するための開放位置と排出を阻止するための閉鎖位置との間で変位可能なシールプラグを備えていることが特に好ましい。
【0023】
本発明における切換弁は、作動時通気導管と給油時通気導管とを燃料蒸気処理装置(活性炭充填キャニスター)に択一的に接続するための給油ノズルセンサーを備えていることが好ましい。
【0024】
本発明による燃料タンクでは、液滴除去容器又は補償チャンバーを介在させることなしに給油時通気導管を給油ヘッドに接続することができる。従って、燃料蒸気の凝縮液滴を除去するための付加的な容器並びに圧力補償用の付加的な容積は不要である。
【0025】
開閉切換弁の第2の切換位置において、作動時通気導管は無圧で開くように燃料蒸気処理装置に接続されることが望ましい。ここで、本発明において「無圧」という用語は、導管の流路断面積と燃料蒸気処理装置の流体抵抗とによってのみ圧力損失が生じる状態を意味するものである。
【0026】
給油時通気導管と燃料蒸気処理装置との間の接続流路には、タンク給油通路へ通じる開口又は通路の形態の再循環流路が形成されていることが特に好ましい。
【0027】
それにより、タンクへの給油中にタンク内から排出されるガスの一部がタンク給油通路を軽油して再循環され、炭化水素を含むガスが燃料蒸気処理装置へ過剰に送られることを回避することができる。
【0028】
本発明の別の実施形態による燃料タンクでは、タンク給油通路と通気流路との間に、タンク内の燃料が給油管に逆流したときに少なくとも燃料蒸気処理装置への接続流路を遮断するロールオーバー弁が設けられており、これにより、特に車両の横転時等において、過剰な燃料が給油管から燃料蒸気処理装置や周囲へ溢流することを確実に防止することが可能である。
【0029】
本発明の更に別の実施形態によれば、燃料タンク内の最大燃料レベル、即ち、給油ノズルのカットオフ又はシャットオフが起きる燃料レベルを決定するための一つ以上の給油制限通気弁(FLVV)が燃料タンクに設けられている。
【0030】
このように、給油操作と給油中の各通気弁の状態とを関連付けることが有利である。通気弁は、別の方式で制御することも可能である。例えば、圧力差、燃料タンク内の液位、或いは給油ノズルで作動される作動プランジャを利用することができる。
【0031】
本発明の更に別の実施形態による燃料タンクは、給油管と、燃料蒸気フィルタ(活性炭充填キャニスター)等の燃料蒸気処理装置と、少なくとも一つの第1の弁と、給油管の給油ヘッドに取り付けられ、かつ給油ヘッドにおける給油ノズルの有無に応じて第1の弁を燃料蒸気処理装置から選択的に遮断するための給油ノズルセンサを有する切換弁とを備えている。この場合の第1の弁は燃料吐出弁であればよく、第2の弁として給油制限弁(FLV)が付加されていてもよい。切換弁がこれらの弁を燃料蒸気処理装置から択一的に切り離すようにシステムを構成してもよい。
【0032】
ここで、「択一的」なる用語は、前記遮断又は切り離しと同時に、少なくとも一つの第1の弁又は少なくとも一つの第2の弁のいずれかは燃料蒸気処理装置と流路接続されることを意味するために用いられている。
【0033】
本発明は更に、燃料タンクに通じる給油管の給油ヘッドに装着される切換弁をも提供するものであり、この切換弁は、第1の弁入口ポートと、第2の弁入口ポートと、燃料蒸気室と、該燃料蒸気室に連通した燃料蒸気出口ポートと、給油ヘッド内に突き出すようにばね付勢された給油ノズルセンサに連結されるシール部材とを有するハウジングを備えている。シール部材は、給油ヘッド内に給油ノズルが存在するか否かに応じて第1の弁入口ポートから前記燃料蒸気室へ向かう流体流れを遮断するように変位可能であり、ハウジング内には、第1の弁入口ポート及び/又は第2の弁入口ポートからハウジング内に流入する燃料蒸気から液体燃料を捕集して該液体燃料を給油ヘッド内へ導くための液体トラップが一体に設けられている。
【0034】
この切換弁は、第1の弁入口ポート又は第2の弁入口ポートを燃料蒸気処理装置に択一的に接続可能であることが特に好ましい。
【0035】
本発明による切換弁の好適な一実施形態によれば、給油ノズルセンサはハウジングに装着されたプランジャーからなり、該プランジャーは給油ヘッドに挿入された給油ノズルが衝合したときに後退するように平時は前記ハウジングから給油管の給油ヘッド内へ突き出しているようにばね付勢されている。
【0036】
本発明による切換弁の別の好適な実施形態によれば、液体トラップは、給油ヘッドに接続されるドレンポートに通じた出口開口を有する区画室と、閉鎖位置と平時の開放位置との間で変位可能なシールプラグとを備え、該シールプラグは、前記閉鎖位置においては前記出口開口を閉鎖すると共に、前記開放位置においては前記出口開口を開放して前記ドレンポートを通して前記区画室から給油ヘッド内へ前記液体燃料を排出可能とするものである。
【0037】
本発明による切換弁の更に別の好適な実施形態によれば、シールプラグは実質的に縦向きの軸線に沿って変位可能である。
【0038】
本発明による切換弁の更に別の好適な実施形態によれば、シール部材は給油ノズルセンサに連結されたディスク状部品からなり、第1の弁入口ポートは第1のシール弁座を有する第1の室に連通し、第2の弁入口ポートは前記第1の室を同軸に囲む第2の室に連通すると共に該第2の室が第2のシール弁座を有し、前記ディスク状部品からなるシール部材が第1のシール弁座と第2のシール弁座に択一的に着座可能とされている。この構成は、液体トラップの区画室が第2の弁入口ポートに通じる第2の室と連通する構造である。
【0039】
液体トラップの区画室は、第2の弁入口ポート、即ち給油制限弁(FLV)入口ポートと連通している第2の室に通じていることが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
従来技術と比較して、本発明による燃料タンクでは、燃料タンクの様々な位置に設けられる各通気箇所に圧力保持弁を付加する必要がなく、従って燃料蒸気処理装置には吸気管を直接連結でき、この場合、給油時と作動時とで大気への通気を燃料蒸気処理装置経由で択一的に行うことができるという利点を享受することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による切換弁を装備した車両用燃料システムの概略図である。
【図2A】切換弁を取り付けた給油管ネックの給油ヘッド部の背面図である。
【図2B】本発明による切換弁の斜視図である。
【図2C】給油ノズルとセンサ用プランジャを透視図で添画した給油ヘッド部及びそれに取り付けられた切換弁の斜視図である。
【図3A】給油時以外の開位置にある切換弁の内部を示す、図2BのA−A線矢視断面図である。
【図3B】給油時以外の開位置にある切換弁の内部を示す、図2BのB−B線矢視断面図である。
【図3C】図3Aに対応する斜視断面図である。
【図4A】給油時の閉位置にある切換弁の内部を示す、図2BのA−A線矢視断面図である。
【図4B】給油時の閉位置にある切換弁の内部を示す、図2BのB−B線矢視断面図である。
【図4C】図4Aに対応する斜視断面図である。
【図5】本発明による切換弁の別の実施形態における矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明に対する理解を深め、また本発明が実際に実施可能であることを示すため、添付図面を参照して本発明の限定を意図しない幾つかの実施形態について説明すれば以下の通りである。
【0043】
先ず図1に注目すると、全体符号8で模式的に示す燃料システムは燃料タンク10を含み、このタンクには給油管12が設けられ、該給油管の終端部は、給油装置の給油ノズル(その端部を図2Cに符号18で示す)を受け入れるように適合された形状の給油ヘッド部14(以下、場合により給油管ネックとも呼ぶ)となっている。
【0044】
燃料タンク10には複数の弁装置も取り付けられており、図1にはそのうちの幾つかが模式的に示されている。即ち、通気弁としてタンクに装着されている複数のロールオーバー弁(ROV)20の出口ポートはいずれもチューブ35に連結され、このチューブが作動用通気導管を構成している。これは、一連のロールオーバー弁20を連結している作動用通気導管によって車両の通常の作動中における燃料タンクの通気が果たされることを意味する。各ロールオーバー弁は車両が通常の作動状態にあるときは開かれている。燃料タンク10には給油制限通気弁(FLVV)22も装着されている。尚、図1には給油制限通気弁が一つしか示されていないが、二つ以上の給油制限通気弁が燃料タンクに装着されることもある。
【0045】
この燃料システムは、例えば活性炭充填キャニスター等の公知の燃料蒸気処理装置(燃料蒸気フィルタ)26を更に備えている。
【0046】
各通気弁20と22及び燃料蒸気処理装置26は、後述するように全体符号28で示す本発明による切換弁と流路接続されている。
【0047】
切換弁28は、以下で明かとなるように実質的に縦向き姿勢で給油管ネック14に固定的に取り付けられている(図2A及び図2C参照)。
【0048】
切換弁28はハウジング32を有し、このハウジングには、作動時通気導管を構成するチューブ35で一つ以上のロールオーバー弁20に接続可能なロールオーバー弁入口ポート34と、給油時通気導管を構成する別のチューブ42で一つ以上の給油制限通気弁22に接続可能な給油制限通気弁入口ポート36とを備えている。また、このハウジングに設けられた燃料蒸気出口ポート38は、更に通気出口管を構成する更に別のチューブによって燃料蒸気処理装置26に接続されている。
【0049】
切換弁28のハウジング32内には、燃料蒸気出口ポート38と連通している燃料蒸気室50が設けられている。
【0050】
ハウジング32の燃料蒸気室内にはROV入口室52が略同心状に設けられ、このROV入口室内を通して前記ロールオーバー弁入口ポート34がROV入口室下端の環状境界シール54にまで通じており、この境界シールは、以下に述べるようにハウジング軸心方向に変位可能なシール部材58が着座したときにシールされてROV入口室と燃料蒸気室との連通を遮断する。更にハウジング内には前記シール部材によって前記燃料蒸気室から仕切られた給油制限通気弁室(FLVV室)53も設けられており、この給油制限通気弁室には給油制限通気弁入口ポート36が連通すると共に前記シール部材の下部周縁を受ける環状のシール弁座59が設けられている。
【0051】
ハウジング32の下部から同心状に突き出ているのはプランジャ62の形態の給油ノズルセンサーであり、このプランジャ62は、給油管ネック14に取り付けられた状態(図2A)において、ハウジング下部から突き出た端部(図3A〜図3C)が給油管ネック14内に挿入された給油ノズル18と衝合して後退可能なようにハウジング内でばね付勢されている。
【0052】
シール部材58はクラッキングバネを介してプランジャ62に連結され、第1の切換位置(閉位置)と第2の切換位置(実質的な開位置)との間で変位可能である。ここで、閉位置は給油ノズルが給油管ネックに挿入された状態のときのタンク給油位置(図4A〜図4C)であり、シール部材がこの位置にあるときには、FLVV室53は燃料蒸気室50と連通しているが、ROV室入口52は燃料蒸気室50及びFLVV室53から遮断されている。また前記実質的な開位置は燃料システムが通常の作動状態にあるときの作動位置(図3A〜図3C)であり、このときにはROV室入口52は燃料蒸気室50と連通しているが、FLVV室53はもはやROV入口室52及び燃料蒸気室50から遮断されている。開位置においては、図3Cに示すようにシール部材58がシール弁座59に着座してFLVV室と燃料蒸気室との連通遮断部をシールし、これによって給油制限通気弁入口ポート36と燃料蒸気室50との間の連通がシール状態で遮断されている。
【0053】
また、図示するように切換弁28には凝縮液体燃料トラップが組み込まれており、このトラップは、切換弁内で燃料蒸気から凝縮した燃料の液体分及び液滴を捕集して、捕集した液体燃料を給油管ネック内へ還流させるために設けられている。この液体燃料トラップは出口開口72を有する液体トラップ区画室70を備え、この出口開口72は、適正な向きで切換弁が取り付けられている状態で給油管ネック14に設けられた開口(図示せず)に通じるドレンポート76と連通している。
【0054】
出口開口72の周囲でハウジングには筒状のプラグ収容部82が設けられ、その内部に或る質量を有するシールプラグ80が収容されている。シールプラグ80はコイル状の弱いバネ86によって出口開口72へ向けて付勢されているが、通常は開放位置、即ち出口開口72を閉鎖しない位置に容易に移動可能である。但し、車両が横転事故を起こした場合には、質量を持つシールプラグ80に作用する重力と、更にはコイル状のばね86による付勢とでシールプラグ80が出口開口72を完全にシールする閉鎖位置に保持される。
【0055】
ここで、プラグ収容部82、従ってシールプラグ80は、車両が正常な運転姿勢あるときにほぼ鉛直に向く給油管12の軸線と平行に延在(図2A)し、それにより例えば走行中の車両が上下にバウンドしたときにも慣性力によってシールプラグ80が前記閉鎖位置へ押し付けられることに留意すべきである。
【0056】
車両が通常の走行状態にあるとき、換言すれば車両に対する給油が行われていないときは、プランジャ62は常に引き出された位置、即ち給油管ネック14内に突き出された位置にあり、従ってプランジャにバネを介して滑節結合されたシール部材58は環状の境界シール54から離れており、これによってROV入口室52は燃料蒸気室50と連通し、一つ以上のロールオーバー弁20から燃料蒸気処理装置26への燃料蒸気の流れが確保されている。但し、この状態においては、FLVV室53はROV入口室52及び燃料蒸気室50から遮断されており、これによってROV入口室からの燃料蒸気が少なくとも一つの給油制限通気弁(FLVV)に向かう方向へ流れることが阻止されることは述べるまでもない。ハウジング32内に溜まる燃料の液体分や液滴は液体トラップ区画室70に捕集され、捕集された液体燃料は、シールプラグ80がその開口位置に移動する毎に出口開口72を通って流出し、ポート76を通って給油管ネック14内から最終的には燃料タンク10内へ還流する。
【0057】
但し、給油に際しては給油装置の給油ノズル18が給油管ネック14に挿入され(図2C)、このノズルによってプランジャ62が押し込まれて後退位置に達するとシール部材58が環状の境界シール54を全周でシールし、これによりFLVV室53と燃料蒸気室50との間に連通が確立され、このようにして、過剰な燃料供給を防止(カットオフ又はシャットオフレベルを決定)するための一つ以上の給油制限通気弁(FLVV)と燃料蒸気処理装置26との間の通気が促進される。
【0058】
図5は本発明の変形実施形態を示しており、この場合、全体符号90で示す切換弁は、見掛けは上述の実施形態について述べたものと同様であるが、給油制限通気弁入口ポート92は給油管ネックに取り付け可能な(例えば加熱溶接によって)基部壁96を有する入口室94に通じており、この基部壁には給油管ネック内に直接連通する開口98が設けられている点で異なっている。この構成は、給油制限通気弁(図示せず)から給油制限通気弁入口ポート36に入ってくる燃料蒸気が給油中の給油管ネック内に生じる減圧状態により給油管ネックへ吸引されるようにしたものであり、これは、安全法規により給油中に必要とされている機能である。従ってこのような構成により給油中に生じる燃料蒸気を燃料蒸気処理装置(図示せず)へ導くことなく実質的に全量を給油管ネックへ吸引させて燃料タンク内に戻すようにすることができる。
【0059】
これに代えて、前述の実施形態によるものと同じ構造の切換弁を使用して給油中の燃料蒸気を給油管ネックからタンク内へ吸引させることもできるが、この場合は第2の弁入口ポート(給油制限通気弁入口ポート36)をシールプラグ(図示せず)で遮断しておき、給油制限通気弁からの接続ライン(図1のチューブ42)を給油管ネックに直接連結しておけばよい。
【0060】
このように、少なくとも一つの給油制限通気弁が切換弁に形成された常開流路を介して給油管ネックの対応する開口から給油管ネック内へ直接連通する流路接続構造は、燃料システムの試験とその故障検出のためのオンボード診断システム(OBD)を装備した車両における使用にも好適である。この場合、或る減圧状態(典型的には真空)を例えば燃料処理システムに適用すると、この減圧状態は切換弁をも経由して燃料タンクに装着された各通気弁から燃料タンク内に達することになり、従って本発明による切換弁がOBDの動作に支障を与えることがない。つまり、従来技術による通常の接続構造では逆止弁が燃料タンクと給油管ネックとの間に介在し、従ってタンク内と給油管ネック内との圧力の平衡が阻止又は妨害されるが、上述のような本発明による切換弁を設けることにより切換弁を経由する連通流路が給油管ネック内と燃料タンク内との間に確立され、従って給油管内を燃料タンク内と同一の圧力とすることができる。
【0061】
尚、給油中には給油ノズルからの燃料流と共に大量の空気が燃料タンクに持ち込まれることが知られている。この現象による悪影響を低減するために、流入空気を循環させること、即ち、空気チューブを通して過剰空気を戻すことが知られている。このような場合、本発明による切換弁を通して給油管ネック内と燃料タンク内との間を連通する流路が形成されていれば、燃料タンク内に持ち込まれた空気は係る連通流路を経由してタンク内から給油管内へ再循環することができ、その結果、特別な空気チューブを設けずとも給油中に燃料タンク内へ持ち込まれる空気量を低減することができる。
【0062】
以上、幾つかの実施形態について図示及び説明してきたが、これは各実施形態によって本発明の開示範囲を限定するためのものではなく、むしろ必要な変更を加えて、添付の特許請求の範囲に記載されている通りの本発明の理念及び技術的範疇に含まれる全ての実施形態と変形形態の構成を包含することを意図するものであることを理解されたい。
【技術分野】
【0001】
本発明は広義には車両用燃料システムに関するものであり、更に特別には車両用燃料タンクに装備された燃料蒸気通気系を燃料蒸気処理装置等の燃料処理装置に選択的に接続又は遮断するための切換弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク又はその給油系のための燃料蒸気遮断接続体は例えば特許文献1によって公知である。特許文献1は自動車燃料タンクの給油管用の遮断接続体を開示しており、この公知の遮断接続体は、燃料タンクへの給油通路内に位置して給油時に燃料タンクの通気弁を切り換えるために変位されるフラップと、給油時におけるタンク内の通気のために前記通気弁に接続された第1の補償チャンバーと、給油時以外の通常作動時におけるタンク内の通気のために前記通気弁に接続された第2の補償チャンバーとを備えており、この場合の通気弁は、燃料システムが通常の作動中にあるときは第2の補償チャンバーと燃料タンクへの給油通路とを連通状態とするように構成されている。この燃料蒸気遮断接続体は、開閉切換弁で第1の補償チャンバーを燃料蒸気フィルタか燃料タンクへの給油通路かに択一的に接続するという切換機能を有し、それにより係る遮断接続体は種々の燃料タンク給油系に適合させることができるという点で特徴的である。
【0003】
特許文献1に記載されている燃料タンク給油時通気手段の変形形態においては、自動車の給油時にタンク内に生じるガスの体積流が補償チャンバーと燃料蒸気処理装置を介して大気中に放出される。この補償チャンバーと燃料蒸気処理装置との間の流路には、車両が通常の作動状態にあるときは流路を遮断し、燃料タンクへの給油が行われているときは流路を開く弁機構が設けられている。従って、特許文献1に記載の通気系では、自動車燃料システムが通常の作動状態にあるときのタンク内の通気は依然として従来からの方式で行われることが明らかである。
【0004】
従来より、燃料システムが通常の作動状態にあるときのタンクの通気は、一般的に燃料タンクの複数箇所から一連の作動時通気導管を介して燃料蒸気処理装置に至る通気系によって行われている。通常、燃料タンク上の通気箇所はタンク最大許容液体燃料レベルよりも上方に位置し、フロート弁形式の通気弁によって閉じられている。燃料タンクへの過充填を防止する目的で給油中に給油ノズルの開閉弁を適時に遮断するように、これらの通気弁に圧力保持機能が与えられ、或いは別の圧力保持弁が付設されている。
【0005】
従って、燃料タンクに配置すべき通気箇所の数に応じて比較的多数の通気弁を設ける必要があり、またフロート弁形式の通気弁では、弁体に慣性があることから、或る一つの通気箇所又は他の複数の通気箇所から通気導管への燃料の漏出が避けられない。通気弁に付設される圧力保持弁でも或る漏れ量が不可避であり、従って通気箇所の数が多くなればなるほど燃料タンクへの過充填の危険が増大する。
【0006】
加えて、自動車の作動中には燃料タンク内をほぼ大気圧に等しい無圧状態に維持する必要がある。
【0007】
特許文献2には、タンク膨出部と、口栓によって閉鎖可能な給油管と、タンク膨出部に接続された通気導管及び通気弁とを有する燃料タンクのためのタンク通気システムが開示されており、このシステムの通気弁は、給油管の口栓が開かれたときには通気導管を遮断するように、また給油管の口栓が閉じられたときには通気導管を開くように切り換えられるようになっている。この切り換えのために燃料蒸気処理装置と燃料タンクの通気導管との間に介装された遮断弁は給油管の給油ヘッドに取り付けられ、この場合、給油管の開口端に口栓キャップがねじ込まれると遮断弁が作動し、それにより作動時通気導管から燃料蒸気処理装置への流路が開かれる。
【0008】
特許文献2に記載されているタンク通気システムは専ら欧州規格のシステムによる給油時通気方式にのみ適合し、その場合、発生する燃料蒸気は給油ノズルガン側の適合装置によって吸引される。特許文献2に開示されたタンク通気システムでは、特許文献1による遮断接続体で果たされているような給油時のタンク通気の一体化は具体化されていない。
【0009】
給油ノズルが挿入されたときに作動するように給油管に取り付けられた切換弁を備えた燃料蒸気コントロールシステムは多くの特許文献に述べられている。そのような特許文献の例を挙げれば以下の通りである。
【0010】
即ち、特許文献3には、通気チューブに接続された第1の室と、キャニスターに連通する第2の室と、蒸発チューブに接続された第3の室とを有する通気遮断弁を備えた燃料タンクが開示されている。第1の室と第2の室は第1の連通孔を有する第1の隔壁によって区画され、また第2の室と第3の室は第2の連通孔を有する第2の隔壁によって区画されている。シャッターが通気遮断弁の主弁体を押したときに第1の連通孔が開かれるように、通気遮断弁の主弁体は第2の室内に配置されている。また通気遮断弁の主弁体には逆止弁が設けられ、この逆止弁と通気遮断弁の弁本体との間に介装された弾性部材により、第2の隔壁に向かって付勢されている第2の連通孔が閉じられるようになっている。
【0011】
亦特許文献4には、圧力平衡ラインに挿入される個別の切換経路で形成されたオンボードの給油時燃料蒸気回収システムが開示されている。給油モードと作動モードとの間で切換弁を切り換えると圧力平衡ラインの個別の切換経路が切り換えられ、作動モードでは圧力平衡ラインが切換弁出口を介して燃料蒸気収容部に接続され、一方、給油モードでは圧力平衡ラインが遮断される。このシステムにはロールオーバー弁を組み込むこともでき、その場合、ロールオーバー弁は好ましくは給油時通気ラインを有する小径の圧力平衡ダクトに接続される。この給油時通気ラインは、燃料タンクの給油口に給油ノズルが挿入されたときに切換弁の作動で開かれるが給油ノズルが外されると遮断され、作動時通気ラインと、圧力平衡ラインと、小径の圧力平衡ダクトだけが切換弁出口から蒸気収容部へ通じることになる。
【0012】
特許文献5には、燃料タンクと、該タンクに接続された給油管と、給油管内に配置されて給油ノズルが挿入されたときに作動するシャッタ機構と、挿入された給油ノズルをシャッタ機構に向かって案内するために給油管に設けられたガイドと、給油管内でシャッタ機構に案内された給油ノズルと衝合することにより一定角度に亘って傾転するように給油管内に配置されレバーと、燃料タンクとキャニスター等の関連する機構との間の連通流路を形成するためにレバーの傾転運動に応答するオンオフ弁を含む燃料蒸気通気機構とを備えた燃料タンクシステムが開示されている。ここで、レバーはガイドとシャッタ機構との間に配置されている。オンオフ弁はハウジングケース内の円筒内面を摺動可能であり、この円筒内面には軸方向に延在する複数の隆起ストライプ又は隆起リッジが設けられ、それによってオンオフ弁が滑らかに摺動することを可能にすると共に、オンオフ弁が開かれたときに燃料蒸気がなるべく大量に流れることを可能にしている。
【0013】
給油管に取り付けられた切換弁を含むその他の燃料蒸気制御システムは、例えば特許文献6などにも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第19847472号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19540267号明細書
【特許文献3】米国特許第5404906号明細書
【特許文献4】米国特許第5983963号明細書
【特許文献5】米国特許第4941587号明細書
【特許文献6】米国特許第6318423号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、給油ノズルとの衝合で作動するように給油管に取り付けられた切換弁と連携して容易滑確実に作動する燃料蒸気コントロールシステムを含む改良された燃料タンクを提供することである。本発明の別の目的は、自動車の作動中に燃料タンクの通気をほぼ大気圧と同等の無圧状態で可能とし、更にはその他の要求事項である燃料蒸気からの凝縮液滴の捕集と圧力補償のための各容積を考慮に入れて、できるだけ簡単で安価に製できる燃料タンクを提供することである。
【0016】
また、燃料蒸気の凝縮液滴を除去するための付加的な容器並びに圧力補償用の付加的な容積等を不要とすることが可能な構成の燃料システム用の改良された切換弁を提供することも本発明の更に別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による自動車用燃料タンクはタンク給油通路を形成する給油管と該給油管の給油ヘッドに接続された作動時通気導管及び給油時通気導管とを備え、該給油ヘッドには少なくとも一つの開閉切換弁が設けられている。該切換弁は、第1の切換位置(給油ポジション)において給油時通気導管と燃料蒸気処理装置に通じる通気流路との接続流路を開くと共に作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を遮断し、第2の切換位置(作動ポジション)において作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を開くと共に給油時通気導管と通気流路との接続流路を遮断する。この開閉切換弁によって前記作動時通気導管は前記通気流路に接続可能とされ、該切換弁は第2の切換位置において作動時通気導管と通気流路との接続流路を開くと共に第1の切換位置において作動時通気導管と通気流路との接続流路を遮断し、更に作動時通気導管から燃料蒸気処理装置への接続流路中には前記タンク給油通路へ連じる液体燃料ドレン通路が設けられている。
【0018】
液体燃料ドレン通路は、燃料蒸気が凝縮した液体燃料又は燃料蒸気に随伴する液体燃料の液滴が重力の作用だけでタンク給油通路に流出するような構成とすることが好ましい。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、給油ヘッドはタンク給油通路へ排出すべき液体燃料のための液体トラップを備えている。
【0020】
液体トラップは区画室を備えていると特に有利である。液体トラップの区画室は、切換弁のハウジング内に一体化される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、液体トラップは特定の幾つかの状況下でドレンの排出を阻止するために区画室を封止するシール手段を備えている。
【0022】
液体トラップは、区画室から液体燃料を排出するための開放位置と排出を阻止するための閉鎖位置との間で変位可能なシールプラグを備えていることが特に好ましい。
【0023】
本発明における切換弁は、作動時通気導管と給油時通気導管とを燃料蒸気処理装置(活性炭充填キャニスター)に択一的に接続するための給油ノズルセンサーを備えていることが好ましい。
【0024】
本発明による燃料タンクでは、液滴除去容器又は補償チャンバーを介在させることなしに給油時通気導管を給油ヘッドに接続することができる。従って、燃料蒸気の凝縮液滴を除去するための付加的な容器並びに圧力補償用の付加的な容積は不要である。
【0025】
開閉切換弁の第2の切換位置において、作動時通気導管は無圧で開くように燃料蒸気処理装置に接続されることが望ましい。ここで、本発明において「無圧」という用語は、導管の流路断面積と燃料蒸気処理装置の流体抵抗とによってのみ圧力損失が生じる状態を意味するものである。
【0026】
給油時通気導管と燃料蒸気処理装置との間の接続流路には、タンク給油通路へ通じる開口又は通路の形態の再循環流路が形成されていることが特に好ましい。
【0027】
それにより、タンクへの給油中にタンク内から排出されるガスの一部がタンク給油通路を軽油して再循環され、炭化水素を含むガスが燃料蒸気処理装置へ過剰に送られることを回避することができる。
【0028】
本発明の別の実施形態による燃料タンクでは、タンク給油通路と通気流路との間に、タンク内の燃料が給油管に逆流したときに少なくとも燃料蒸気処理装置への接続流路を遮断するロールオーバー弁が設けられており、これにより、特に車両の横転時等において、過剰な燃料が給油管から燃料蒸気処理装置や周囲へ溢流することを確実に防止することが可能である。
【0029】
本発明の更に別の実施形態によれば、燃料タンク内の最大燃料レベル、即ち、給油ノズルのカットオフ又はシャットオフが起きる燃料レベルを決定するための一つ以上の給油制限通気弁(FLVV)が燃料タンクに設けられている。
【0030】
このように、給油操作と給油中の各通気弁の状態とを関連付けることが有利である。通気弁は、別の方式で制御することも可能である。例えば、圧力差、燃料タンク内の液位、或いは給油ノズルで作動される作動プランジャを利用することができる。
【0031】
本発明の更に別の実施形態による燃料タンクは、給油管と、燃料蒸気フィルタ(活性炭充填キャニスター)等の燃料蒸気処理装置と、少なくとも一つの第1の弁と、給油管の給油ヘッドに取り付けられ、かつ給油ヘッドにおける給油ノズルの有無に応じて第1の弁を燃料蒸気処理装置から選択的に遮断するための給油ノズルセンサを有する切換弁とを備えている。この場合の第1の弁は燃料吐出弁であればよく、第2の弁として給油制限弁(FLV)が付加されていてもよい。切換弁がこれらの弁を燃料蒸気処理装置から択一的に切り離すようにシステムを構成してもよい。
【0032】
ここで、「択一的」なる用語は、前記遮断又は切り離しと同時に、少なくとも一つの第1の弁又は少なくとも一つの第2の弁のいずれかは燃料蒸気処理装置と流路接続されることを意味するために用いられている。
【0033】
本発明は更に、燃料タンクに通じる給油管の給油ヘッドに装着される切換弁をも提供するものであり、この切換弁は、第1の弁入口ポートと、第2の弁入口ポートと、燃料蒸気室と、該燃料蒸気室に連通した燃料蒸気出口ポートと、給油ヘッド内に突き出すようにばね付勢された給油ノズルセンサに連結されるシール部材とを有するハウジングを備えている。シール部材は、給油ヘッド内に給油ノズルが存在するか否かに応じて第1の弁入口ポートから前記燃料蒸気室へ向かう流体流れを遮断するように変位可能であり、ハウジング内には、第1の弁入口ポート及び/又は第2の弁入口ポートからハウジング内に流入する燃料蒸気から液体燃料を捕集して該液体燃料を給油ヘッド内へ導くための液体トラップが一体に設けられている。
【0034】
この切換弁は、第1の弁入口ポート又は第2の弁入口ポートを燃料蒸気処理装置に択一的に接続可能であることが特に好ましい。
【0035】
本発明による切換弁の好適な一実施形態によれば、給油ノズルセンサはハウジングに装着されたプランジャーからなり、該プランジャーは給油ヘッドに挿入された給油ノズルが衝合したときに後退するように平時は前記ハウジングから給油管の給油ヘッド内へ突き出しているようにばね付勢されている。
【0036】
本発明による切換弁の別の好適な実施形態によれば、液体トラップは、給油ヘッドに接続されるドレンポートに通じた出口開口を有する区画室と、閉鎖位置と平時の開放位置との間で変位可能なシールプラグとを備え、該シールプラグは、前記閉鎖位置においては前記出口開口を閉鎖すると共に、前記開放位置においては前記出口開口を開放して前記ドレンポートを通して前記区画室から給油ヘッド内へ前記液体燃料を排出可能とするものである。
【0037】
本発明による切換弁の更に別の好適な実施形態によれば、シールプラグは実質的に縦向きの軸線に沿って変位可能である。
【0038】
本発明による切換弁の更に別の好適な実施形態によれば、シール部材は給油ノズルセンサに連結されたディスク状部品からなり、第1の弁入口ポートは第1のシール弁座を有する第1の室に連通し、第2の弁入口ポートは前記第1の室を同軸に囲む第2の室に連通すると共に該第2の室が第2のシール弁座を有し、前記ディスク状部品からなるシール部材が第1のシール弁座と第2のシール弁座に択一的に着座可能とされている。この構成は、液体トラップの区画室が第2の弁入口ポートに通じる第2の室と連通する構造である。
【0039】
液体トラップの区画室は、第2の弁入口ポート、即ち給油制限弁(FLV)入口ポートと連通している第2の室に通じていることが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
従来技術と比較して、本発明による燃料タンクでは、燃料タンクの様々な位置に設けられる各通気箇所に圧力保持弁を付加する必要がなく、従って燃料蒸気処理装置には吸気管を直接連結でき、この場合、給油時と作動時とで大気への通気を燃料蒸気処理装置経由で択一的に行うことができるという利点を享受することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による切換弁を装備した車両用燃料システムの概略図である。
【図2A】切換弁を取り付けた給油管ネックの給油ヘッド部の背面図である。
【図2B】本発明による切換弁の斜視図である。
【図2C】給油ノズルとセンサ用プランジャを透視図で添画した給油ヘッド部及びそれに取り付けられた切換弁の斜視図である。
【図3A】給油時以外の開位置にある切換弁の内部を示す、図2BのA−A線矢視断面図である。
【図3B】給油時以外の開位置にある切換弁の内部を示す、図2BのB−B線矢視断面図である。
【図3C】図3Aに対応する斜視断面図である。
【図4A】給油時の閉位置にある切換弁の内部を示す、図2BのA−A線矢視断面図である。
【図4B】給油時の閉位置にある切換弁の内部を示す、図2BのB−B線矢視断面図である。
【図4C】図4Aに対応する斜視断面図である。
【図5】本発明による切換弁の別の実施形態における矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明に対する理解を深め、また本発明が実際に実施可能であることを示すため、添付図面を参照して本発明の限定を意図しない幾つかの実施形態について説明すれば以下の通りである。
【0043】
先ず図1に注目すると、全体符号8で模式的に示す燃料システムは燃料タンク10を含み、このタンクには給油管12が設けられ、該給油管の終端部は、給油装置の給油ノズル(その端部を図2Cに符号18で示す)を受け入れるように適合された形状の給油ヘッド部14(以下、場合により給油管ネックとも呼ぶ)となっている。
【0044】
燃料タンク10には複数の弁装置も取り付けられており、図1にはそのうちの幾つかが模式的に示されている。即ち、通気弁としてタンクに装着されている複数のロールオーバー弁(ROV)20の出口ポートはいずれもチューブ35に連結され、このチューブが作動用通気導管を構成している。これは、一連のロールオーバー弁20を連結している作動用通気導管によって車両の通常の作動中における燃料タンクの通気が果たされることを意味する。各ロールオーバー弁は車両が通常の作動状態にあるときは開かれている。燃料タンク10には給油制限通気弁(FLVV)22も装着されている。尚、図1には給油制限通気弁が一つしか示されていないが、二つ以上の給油制限通気弁が燃料タンクに装着されることもある。
【0045】
この燃料システムは、例えば活性炭充填キャニスター等の公知の燃料蒸気処理装置(燃料蒸気フィルタ)26を更に備えている。
【0046】
各通気弁20と22及び燃料蒸気処理装置26は、後述するように全体符号28で示す本発明による切換弁と流路接続されている。
【0047】
切換弁28は、以下で明かとなるように実質的に縦向き姿勢で給油管ネック14に固定的に取り付けられている(図2A及び図2C参照)。
【0048】
切換弁28はハウジング32を有し、このハウジングには、作動時通気導管を構成するチューブ35で一つ以上のロールオーバー弁20に接続可能なロールオーバー弁入口ポート34と、給油時通気導管を構成する別のチューブ42で一つ以上の給油制限通気弁22に接続可能な給油制限通気弁入口ポート36とを備えている。また、このハウジングに設けられた燃料蒸気出口ポート38は、更に通気出口管を構成する更に別のチューブによって燃料蒸気処理装置26に接続されている。
【0049】
切換弁28のハウジング32内には、燃料蒸気出口ポート38と連通している燃料蒸気室50が設けられている。
【0050】
ハウジング32の燃料蒸気室内にはROV入口室52が略同心状に設けられ、このROV入口室内を通して前記ロールオーバー弁入口ポート34がROV入口室下端の環状境界シール54にまで通じており、この境界シールは、以下に述べるようにハウジング軸心方向に変位可能なシール部材58が着座したときにシールされてROV入口室と燃料蒸気室との連通を遮断する。更にハウジング内には前記シール部材によって前記燃料蒸気室から仕切られた給油制限通気弁室(FLVV室)53も設けられており、この給油制限通気弁室には給油制限通気弁入口ポート36が連通すると共に前記シール部材の下部周縁を受ける環状のシール弁座59が設けられている。
【0051】
ハウジング32の下部から同心状に突き出ているのはプランジャ62の形態の給油ノズルセンサーであり、このプランジャ62は、給油管ネック14に取り付けられた状態(図2A)において、ハウジング下部から突き出た端部(図3A〜図3C)が給油管ネック14内に挿入された給油ノズル18と衝合して後退可能なようにハウジング内でばね付勢されている。
【0052】
シール部材58はクラッキングバネを介してプランジャ62に連結され、第1の切換位置(閉位置)と第2の切換位置(実質的な開位置)との間で変位可能である。ここで、閉位置は給油ノズルが給油管ネックに挿入された状態のときのタンク給油位置(図4A〜図4C)であり、シール部材がこの位置にあるときには、FLVV室53は燃料蒸気室50と連通しているが、ROV室入口52は燃料蒸気室50及びFLVV室53から遮断されている。また前記実質的な開位置は燃料システムが通常の作動状態にあるときの作動位置(図3A〜図3C)であり、このときにはROV室入口52は燃料蒸気室50と連通しているが、FLVV室53はもはやROV入口室52及び燃料蒸気室50から遮断されている。開位置においては、図3Cに示すようにシール部材58がシール弁座59に着座してFLVV室と燃料蒸気室との連通遮断部をシールし、これによって給油制限通気弁入口ポート36と燃料蒸気室50との間の連通がシール状態で遮断されている。
【0053】
また、図示するように切換弁28には凝縮液体燃料トラップが組み込まれており、このトラップは、切換弁内で燃料蒸気から凝縮した燃料の液体分及び液滴を捕集して、捕集した液体燃料を給油管ネック内へ還流させるために設けられている。この液体燃料トラップは出口開口72を有する液体トラップ区画室70を備え、この出口開口72は、適正な向きで切換弁が取り付けられている状態で給油管ネック14に設けられた開口(図示せず)に通じるドレンポート76と連通している。
【0054】
出口開口72の周囲でハウジングには筒状のプラグ収容部82が設けられ、その内部に或る質量を有するシールプラグ80が収容されている。シールプラグ80はコイル状の弱いバネ86によって出口開口72へ向けて付勢されているが、通常は開放位置、即ち出口開口72を閉鎖しない位置に容易に移動可能である。但し、車両が横転事故を起こした場合には、質量を持つシールプラグ80に作用する重力と、更にはコイル状のばね86による付勢とでシールプラグ80が出口開口72を完全にシールする閉鎖位置に保持される。
【0055】
ここで、プラグ収容部82、従ってシールプラグ80は、車両が正常な運転姿勢あるときにほぼ鉛直に向く給油管12の軸線と平行に延在(図2A)し、それにより例えば走行中の車両が上下にバウンドしたときにも慣性力によってシールプラグ80が前記閉鎖位置へ押し付けられることに留意すべきである。
【0056】
車両が通常の走行状態にあるとき、換言すれば車両に対する給油が行われていないときは、プランジャ62は常に引き出された位置、即ち給油管ネック14内に突き出された位置にあり、従ってプランジャにバネを介して滑節結合されたシール部材58は環状の境界シール54から離れており、これによってROV入口室52は燃料蒸気室50と連通し、一つ以上のロールオーバー弁20から燃料蒸気処理装置26への燃料蒸気の流れが確保されている。但し、この状態においては、FLVV室53はROV入口室52及び燃料蒸気室50から遮断されており、これによってROV入口室からの燃料蒸気が少なくとも一つの給油制限通気弁(FLVV)に向かう方向へ流れることが阻止されることは述べるまでもない。ハウジング32内に溜まる燃料の液体分や液滴は液体トラップ区画室70に捕集され、捕集された液体燃料は、シールプラグ80がその開口位置に移動する毎に出口開口72を通って流出し、ポート76を通って給油管ネック14内から最終的には燃料タンク10内へ還流する。
【0057】
但し、給油に際しては給油装置の給油ノズル18が給油管ネック14に挿入され(図2C)、このノズルによってプランジャ62が押し込まれて後退位置に達するとシール部材58が環状の境界シール54を全周でシールし、これによりFLVV室53と燃料蒸気室50との間に連通が確立され、このようにして、過剰な燃料供給を防止(カットオフ又はシャットオフレベルを決定)するための一つ以上の給油制限通気弁(FLVV)と燃料蒸気処理装置26との間の通気が促進される。
【0058】
図5は本発明の変形実施形態を示しており、この場合、全体符号90で示す切換弁は、見掛けは上述の実施形態について述べたものと同様であるが、給油制限通気弁入口ポート92は給油管ネックに取り付け可能な(例えば加熱溶接によって)基部壁96を有する入口室94に通じており、この基部壁には給油管ネック内に直接連通する開口98が設けられている点で異なっている。この構成は、給油制限通気弁(図示せず)から給油制限通気弁入口ポート36に入ってくる燃料蒸気が給油中の給油管ネック内に生じる減圧状態により給油管ネックへ吸引されるようにしたものであり、これは、安全法規により給油中に必要とされている機能である。従ってこのような構成により給油中に生じる燃料蒸気を燃料蒸気処理装置(図示せず)へ導くことなく実質的に全量を給油管ネックへ吸引させて燃料タンク内に戻すようにすることができる。
【0059】
これに代えて、前述の実施形態によるものと同じ構造の切換弁を使用して給油中の燃料蒸気を給油管ネックからタンク内へ吸引させることもできるが、この場合は第2の弁入口ポート(給油制限通気弁入口ポート36)をシールプラグ(図示せず)で遮断しておき、給油制限通気弁からの接続ライン(図1のチューブ42)を給油管ネックに直接連結しておけばよい。
【0060】
このように、少なくとも一つの給油制限通気弁が切換弁に形成された常開流路を介して給油管ネックの対応する開口から給油管ネック内へ直接連通する流路接続構造は、燃料システムの試験とその故障検出のためのオンボード診断システム(OBD)を装備した車両における使用にも好適である。この場合、或る減圧状態(典型的には真空)を例えば燃料処理システムに適用すると、この減圧状態は切換弁をも経由して燃料タンクに装着された各通気弁から燃料タンク内に達することになり、従って本発明による切換弁がOBDの動作に支障を与えることがない。つまり、従来技術による通常の接続構造では逆止弁が燃料タンクと給油管ネックとの間に介在し、従ってタンク内と給油管ネック内との圧力の平衡が阻止又は妨害されるが、上述のような本発明による切換弁を設けることにより切換弁を経由する連通流路が給油管ネック内と燃料タンク内との間に確立され、従って給油管内を燃料タンク内と同一の圧力とすることができる。
【0061】
尚、給油中には給油ノズルからの燃料流と共に大量の空気が燃料タンクに持ち込まれることが知られている。この現象による悪影響を低減するために、流入空気を循環させること、即ち、空気チューブを通して過剰空気を戻すことが知られている。このような場合、本発明による切換弁を通して給油管ネック内と燃料タンク内との間を連通する流路が形成されていれば、燃料タンク内に持ち込まれた空気は係る連通流路を経由してタンク内から給油管内へ再循環することができ、その結果、特別な空気チューブを設けずとも給油中に燃料タンク内へ持ち込まれる空気量を低減することができる。
【0062】
以上、幾つかの実施形態について図示及び説明してきたが、これは各実施形態によって本発明の開示範囲を限定するためのものではなく、むしろ必要な変更を加えて、添付の特許請求の範囲に記載されている通りの本発明の理念及び技術的範疇に含まれる全ての実施形態と変形形態の構成を包含することを意図するものであることを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク給油通路を形成する給油管と該給油管の給油ヘッドに接続された作動時通気導管及び給油時通気導管とを備えた自動車用燃料タンクであって、該給油ヘッドには少なくとも一つの開閉切換弁が設けられ、該切換弁が、第1の切換位置(給油ポジション)において給油時通気導管と燃料蒸気処理装置に通じる通気流路との接続流路を開くと共に作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を遮断し、第2の切換位置(作動ポジション)において作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を開くと共に給油時通気導管と通気流路との接続流路を遮断し、前記開閉切換弁によって前記作動時通気導管が前記通気流路に接続可能とされ、該切換弁が第2の切換位置において作動時通気導管と通気流路との接続流路を開くと共に第1の切換位置において作動時通気導管と通気流路との接続流路を遮断し、作動時通気導管から燃料蒸気処理装置への接続流路中に前記タンク給油通路へ連じる液体燃料ドレン通路が設けられていることを特徴とする自動車用燃料タンク。
【請求項2】
給油ヘッドが前記給油通路へ排出すべき液体燃料のための液体トラップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
液体トラップが区画室を備え、該区画室が前記切換弁のハウジング内に一体形成されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料タンク。
【請求項4】
液体トラップが前記区画室から液体燃料を排出するための開放位置と閉鎖位置との間で変位可能なシールプラグを備えていることを特徴とする請求項3に記載の燃料タンク。
【請求項5】
前記切換弁が、作動時通気導管と給油時通気導管とを燃料蒸気処理装置(燃料蒸気フィルタ)に択一的に接続するための給油ノズルセンサーを備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項6】
給油時通気導管が液滴除去容器又は補償チャンバーの介在なしに給油ヘッドに接続されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項7】
前記切換弁の第2の切換位置において作動時通気導管が燃料蒸気処理装置に無圧で接続されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項8】
給油時通気導管と燃料蒸気処理装置との間の接続流路に、タンク給油通路へ通じる開口又は通路の形態の少なくとも一つの再循環流路が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項9】
前記タンク給油通路と前記通気流路との間に、タンク内の燃料が前記給油管に逆流したときに少なくとも燃料蒸気処理装置への接続流路を遮断するロールオーバー弁が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項10】
燃料タンクに通じる給油管の給油ヘッドに装着される切換弁であって、第1の弁入口ポートと、第2の弁入口ポートと、燃料蒸気室と、該燃料蒸気室に連通した燃料蒸気出口ポートと、給油ヘッド内に突き出すようにばね付勢された給油ノズルセンサに連結されるシール部材とを有するハウジングを備え、前記シール部材は、給油ヘッド内に給油ノズルが存在するか否かに応じて第1の弁入口ポートから前記燃料蒸気室へ向かう流体流れを遮断するように変位可能であると共に、前記ハウジング内には、第1の弁入口ポート及び/又は第2の弁入口ポートからハウジング内に流入する燃料蒸気から液体燃料を捕集して該液体燃料を給油ヘッド内へ導くための液体トラップが一体に設けられていることを特徴とする切換弁。
【請求項11】
第1の弁入口ポート又は第2の弁入口ポートを択一的に燃料蒸気処理装置に接続可能であることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【請求項12】
給油ノズルセンサがハウジングに装着されたプランジャーからなり、該プランジャーは給油ヘッドに挿入された給油ノズルが衝合したときに後退するように平時は前記ハウジングから給油管の給油ヘッド内へ突き出しているようにばね付勢されていることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【請求項13】
液体トラップが、給油ヘッドに接続されるドレンポートへ通じた出口開口を有する区画室と、閉鎖位置と平時の開放位置との間で変位可能なシールプラグとを備え、該シールプラグは、前記閉鎖位置においては前記出口開口を閉鎖すると共に、前記開放位置においては前記出口開口を開放して前記ドレンポートを通して前記区画室から給油ヘッド内へ前記液体燃料を排出可能とするものであることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【請求項14】
シールプラグが実質的に縦向きの軸線に沿って変位可能であることを特徴とする請求項13に記載の切換弁。
【請求項15】
シール部材が給油ノズルセンサに連結されたディスク状部品からなり、第1の弁入口ポートが第1のシール弁座を有する第1の室に連通し、第2の弁入口ポートが前記第1の室を同軸に囲む第2の室に連通すると共に該第2の室が第2のシール弁座を有し、前記ディスク状部品からなるシール部材が第1のシール弁座と第2のシール弁座に択一的に着座可能であることを特徴とする請求項10又は11に記載の切換弁。
【請求項16】
液体トラップの区画室が第2の弁入口ポートと連通している第2の室に通じていることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【請求項17】
第1の弁入口ポートが燃料タンクに装着された一つ以上の通気弁に接続可能であり、第2の弁入口ポートが該燃料タンクに装着されている一つ以上の給油制限弁(FLV)に接続可能であることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【請求項18】
給油ヘッドに装着可能な壁を弁基部に備え、該基部壁に給油管内に直接連通する開口が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【請求項1】
タンク給油通路を形成する給油管と該給油管の給油ヘッドに接続された作動時通気導管及び給油時通気導管とを備えた自動車用燃料タンクであって、該給油ヘッドには少なくとも一つの開閉切換弁が設けられ、該切換弁が、第1の切換位置(給油ポジション)において給油時通気導管と燃料蒸気処理装置に通じる通気流路との接続流路を開くと共に作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を遮断し、第2の切換位置(作動ポジション)において作動時通気導管とタンク給油通路との接続流路を開くと共に給油時通気導管と通気流路との接続流路を遮断し、前記開閉切換弁によって前記作動時通気導管が前記通気流路に接続可能とされ、該切換弁が第2の切換位置において作動時通気導管と通気流路との接続流路を開くと共に第1の切換位置において作動時通気導管と通気流路との接続流路を遮断し、作動時通気導管から燃料蒸気処理装置への接続流路中に前記タンク給油通路へ連じる液体燃料ドレン通路が設けられていることを特徴とする自動車用燃料タンク。
【請求項2】
給油ヘッドが前記給油通路へ排出すべき液体燃料のための液体トラップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
液体トラップが区画室を備え、該区画室が前記切換弁のハウジング内に一体形成されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料タンク。
【請求項4】
液体トラップが前記区画室から液体燃料を排出するための開放位置と閉鎖位置との間で変位可能なシールプラグを備えていることを特徴とする請求項3に記載の燃料タンク。
【請求項5】
前記切換弁が、作動時通気導管と給油時通気導管とを燃料蒸気処理装置(燃料蒸気フィルタ)に択一的に接続するための給油ノズルセンサーを備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項6】
給油時通気導管が液滴除去容器又は補償チャンバーの介在なしに給油ヘッドに接続されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項7】
前記切換弁の第2の切換位置において作動時通気導管が燃料蒸気処理装置に無圧で接続されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項8】
給油時通気導管と燃料蒸気処理装置との間の接続流路に、タンク給油通路へ通じる開口又は通路の形態の少なくとも一つの再循環流路が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項9】
前記タンク給油通路と前記通気流路との間に、タンク内の燃料が前記給油管に逆流したときに少なくとも燃料蒸気処理装置への接続流路を遮断するロールオーバー弁が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項10】
燃料タンクに通じる給油管の給油ヘッドに装着される切換弁であって、第1の弁入口ポートと、第2の弁入口ポートと、燃料蒸気室と、該燃料蒸気室に連通した燃料蒸気出口ポートと、給油ヘッド内に突き出すようにばね付勢された給油ノズルセンサに連結されるシール部材とを有するハウジングを備え、前記シール部材は、給油ヘッド内に給油ノズルが存在するか否かに応じて第1の弁入口ポートから前記燃料蒸気室へ向かう流体流れを遮断するように変位可能であると共に、前記ハウジング内には、第1の弁入口ポート及び/又は第2の弁入口ポートからハウジング内に流入する燃料蒸気から液体燃料を捕集して該液体燃料を給油ヘッド内へ導くための液体トラップが一体に設けられていることを特徴とする切換弁。
【請求項11】
第1の弁入口ポート又は第2の弁入口ポートを択一的に燃料蒸気処理装置に接続可能であることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【請求項12】
給油ノズルセンサがハウジングに装着されたプランジャーからなり、該プランジャーは給油ヘッドに挿入された給油ノズルが衝合したときに後退するように平時は前記ハウジングから給油管の給油ヘッド内へ突き出しているようにばね付勢されていることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【請求項13】
液体トラップが、給油ヘッドに接続されるドレンポートへ通じた出口開口を有する区画室と、閉鎖位置と平時の開放位置との間で変位可能なシールプラグとを備え、該シールプラグは、前記閉鎖位置においては前記出口開口を閉鎖すると共に、前記開放位置においては前記出口開口を開放して前記ドレンポートを通して前記区画室から給油ヘッド内へ前記液体燃料を排出可能とするものであることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【請求項14】
シールプラグが実質的に縦向きの軸線に沿って変位可能であることを特徴とする請求項13に記載の切換弁。
【請求項15】
シール部材が給油ノズルセンサに連結されたディスク状部品からなり、第1の弁入口ポートが第1のシール弁座を有する第1の室に連通し、第2の弁入口ポートが前記第1の室を同軸に囲む第2の室に連通すると共に該第2の室が第2のシール弁座を有し、前記ディスク状部品からなるシール部材が第1のシール弁座と第2のシール弁座に択一的に着座可能であることを特徴とする請求項10又は11に記載の切換弁。
【請求項16】
液体トラップの区画室が第2の弁入口ポートと連通している第2の室に通じていることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【請求項17】
第1の弁入口ポートが燃料タンクに装着された一つ以上の通気弁に接続可能であり、第2の弁入口ポートが該燃料タンクに装着されている一つ以上の給油制限弁(FLV)に接続可能であることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【請求項18】
給油ヘッドに装着可能な壁を弁基部に備え、該基部壁に給油管内に直接連通する開口が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の切換弁。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【公開番号】特開2012−41047(P2012−41047A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261622(P2011−261622)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2008−552735(P2008−552735)の分割
【原出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(598001467)カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (22)
【出願人】(503144294)ラバル・エ−.シ−.エス.・リミテッド (5)
【住所又は居所原語表記】Kibbutz Revivim,D.N.Halutza 85515,Israel
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2008−552735(P2008−552735)の分割
【原出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(598001467)カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (22)
【出願人】(503144294)ラバル・エ−.シ−.エス.・リミテッド (5)
【住所又は居所原語表記】Kibbutz Revivim,D.N.Halutza 85515,Israel
【Fターム(参考)】
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