説明

自家グレリンに対する免疫化

一般に自家グレリンに対する免疫化に基づく新規方法が開示される。免疫化は、好ましくは、自家グレリンのアナログの投与により行なわれる。このアナログは、自家グレリンポリペプチドに対する抗体産生を誘導し得る。免疫原として特に好ましいのは、ただ1つ又は数個の外来性の優性で無差別性のT細胞エピトープの導入により改変されている自家グレリンである。グレリンに対する核酸ワクチン接種及び生ワクチンを用いるワクチン接種並びにこれらワクチン接種に有用な方法及び手段もまた開示される。このような方法及び手段は、アナログ及び薬学的製剤並びに核酸フラグメント、ベクター、形質転換細胞、ポリペプチド及び薬学的製剤の製造方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療的ワクチン接種(「積極治療的免疫療法」)に関する。特に、本発明は自家(「自己」)のグレリンタンパク質を標的化する治療ワクチン接種並びに過剰な体脂肪蓄積により特徴付けられる肥満及び他の疾患或いは体重の増大が関心の的である状態を標的化する治療に関する。
したがって、本発明は、過剰な脂肪蓄積により特徴付けられる肥満の治療及び予防の改善に関するが、また体重減少で特徴付けられる状態の治療及び予防の改善にも関する。より具体的には、本発明は、過剰な脂肪蓄積を含む肥満を患っているか又は患う危険にある被検体においてグレリン又はその成分に対する抗体を産生させることにより、脂肪の(望まない)蓄積をダウンレギュレートする方法を提供する。本発明はさらに、痩せ症を患っているか又は患う危険にある被検体にグレリン又はその成分に対する抗体を産生させることにより、体脂肪の望ましい蓄積をアップレギュレートする提供する。本発明はまた、これらの方法で有用なポリペプチドを製造する方法並びに改変したポリペプチドそのものを提供する。また、改変ポリペプチドをコードする核酸フラグメント並びにこれらの核酸フラグメントを組み込んでいるベクター及びこのベクターで形質転換された宿主細胞及び細胞株も本発明に含まれる。本発明はまた、本発明の方法で有用である蓄積ポリペプチド(deposit polypeptide)のアナログの同定方法並びに改変ポリペプチドを含むか又は改変ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物を提供する。最後に、本発明はまた、結合体のグレリンペプチド免疫原を提供する。
【背景技術】
【0002】
過去30年にわたって、米国や欧州だけでなく中国、中南米、中東及び北アフリカ諸国のような発展途上国でもまた、肥満の罹患率は流行伝染病のような勢いに達しており、人口における肥満の発生率の増加が報告されている。公衆衛生上の努力にもかかわらず、今後10年にわたり、より健全なライフスタイルへの顕著な変化はありそうもない。最近の統計の結果によれば、米国成人の推定で61%が、過体重又は肥満(ボディ・マス・インデックス(BMI=体重(kg)÷[伸長(m)]2)が25以上と定義)のいずれかである(National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES) 1999)。同じ集団で、肥満(BMIが30.0以上と定義)は、1980年の約15%から二倍近くになり、1999年には27%と推定されている。WHOによれば、世界中で300百万人の人々が肥満であると推定されている。
【0003】
過体重及び肥満の個人は(BMIが25以上)は、身体的不具合(physical ailments)の危険が増大している:例えば、高い血圧(high blood pressure)、高血圧症(hypertension);高い血中コレステロール、異脂肪血症;2型(インスリン非依存型)糖尿病;インスリン抵抗性、耐糖能異常;高インスリン血症;冠状動脈性心臓疾患;狭心症;うっ血性心不全;卒中;胆石;胆汁膀胱炎(Cholescystitis)及び胆石症;痛風;変形性関節炎;閉塞型睡眠時無呼吸症候群及び呼吸困難;いくつかのタイプのガン(例えば子宮内膜、胸部、前立腺及び結腸);妊娠合併症;女性のリプロダクティブヘルス(reproductive health)の不良(例えば、月経不順、不妊症、不規則排卵);膀胱制御困難(例えば緊張性失禁);尿酸腎石症;精神障害(例えば抑うつ、摂食障害、歪んだ身体図式及び低い自尊心)。その結果の健康状態は、早死の危険増大からクオリティ・オブ・ライフ全体を低下させる重篤な慢性状態までに及ぶ。さらに、重症肥満は、痩せた人に比べて25〜35才の死亡率が12倍高いことと関連している。肥満の人に対する否定的な考え方は、健康管理及び雇用を含む生活の多くの場面で差別を招来することがある。
【0004】
国民保健制度における肥満の診断、処置及び管理(management)の直接費用は、今日まで2、3の国でのみ評価されている。方法論は研究間で相当異なり、そのことが国をまたがって費用を比較すること及びある国の結果を別の国へ外挿することを困難にしているが、これら推定により、西側諸国で医療費全体の2〜8%が肥満に帰され得ることが示唆される。これは、例えばガン治療の費用全体に匹敵する国民保健予算の大きな部分に相当する。開発途上諸国の未整備の保健制度における保健資源に対する潜在的な影響はなおさら深刻である可能性が高い(WHO)。
【0005】
過体重及び肥満は、過剰カロリー消費及び/又は不適切な身体的活動を含む平衡失調から生じる。各個人については、体重は、遺伝的、代謝的、行動的、環境的、文化的及び社会経済的影響の組合せの結果である。行動的及び環境的要因が過体重及び肥満に大きく寄与しており、予防及び処置のために考案された行為及び介入の最大の機会を提供する。したがって、多くの研究により、食事療法及び運動による肥満の低下が上記の危険要因を劇的に低下させることが示されている。不幸にも、これらの処置はその多くが成功せず、失敗率は95%に達する。この失敗は、古代、食物供給が心許無いときに生存する助けとなった複雑な身体機構に起因するのかもしれない。この機構は、食事療法及び運動に対して、食欲が増大し、高カロリー食品を好み、身体的活動が低下し、そして脂質生成代謝が増大することに寄与しているのかもしれない。
【0006】
1995年に発見されたレプチンは食欲を抑制するホルモンである。レプチンは、脂肪組織で主に産生され、脂肪貯蔵に比例して全身を循環する。これは、脂肪細胞が十分であるとき食事を止めることを促す。グレリンと呼ばれる新たに発見されたホルモン(1999)は、反対の効果を有しているようである。このホルモンは、成長ホルモン(GH)分泌促進物質レセプターサブタイプ1a(GHS-R1a)の内因性リガンドとして同定された胃ホルモンである。これは、ラット及びヒトにおいて成長ホルモンの分泌を刺激する(Kojima Mら,Nature,1999,402:656-60;Kojima Mら,Trends in Endocrinology and Metabolism,2001,12:118-22;Takaya Kら,J Clin Endocrinol Metab,2000,85:4908-11)。げっ歯類における食欲促進及び脂肪生成効果の観察(Tschop Mら,Nature,2000,407:908-913;Wren AMら,Endocrinology,2000,141:4325-28;Nakazato Mら,Nature,2001,409:194-8;Shintani Mら,Diabetes,2001,50:227-232)に基づいて、エネルギーバランスの調節におけるグレリンの追加の役割が推測された(Inui A,Nature Reviews Neuroscience,2001,2:551-60;Horvath TLら,Endocrinology,2001,142(10):4163-9)。研究により、グレリンの注入は、げっ歯類において、成長ホルモン分泌の変化とは独立して(Nakazato Mら,Nature,2001,vol.409:194-8)、摂食行動を刺激し肥満を生じることが明らかになった(Tschop Mら,Nature,2000,908-13)。ヒト被検体において、グレリンの注入は、短期の空腹増大を導いた(Wren AMら,J Clin Endocrinol Metab,2001,86:5992)。Cummings DEら(N Eng J Med,2002,346:1623-30)は、グレリンレベルが食事の直前及び食物制限又は飢餓に伴って上昇し、食事後に迅速に低下することを報告している。著者らは、観察された食事前の増大が食べることに対する欲求をトリガーしており、長期の食物制限に伴うレベルの増大が空腹及びおそらくは負のエネルギー平衡を伴う他の順応に寄与し得るという仮説を立てている。この理論は、グレリンがエネルギー平衡を調節することが知られている視床下部ニューロンに作用するという証拠(Nakazato Mら,Nature,2001,vol.409:194-8)と一致している。Cummings DEら(2002)は、食事前の血漿グレリンレベルが、食事療法に誘導された体重減少の際に増加することを報告した。個体の体重が減少すればするほど、食事療法後のグレリンレベル増加が大きくなる。このことは、グレリンが体重の長期調節に役割を有するという仮説と一致する。さらに、胃バイパス手術はグレリンレベルの顕著な抑制に関係し、そのことがバイパス患者の体重低下効果におそらく寄与しているであろうことが報告された。バイパス手術は胃の細胞が食物に曝されるのを防ぎ、このことが、ほとんど検出不可能なレベルにまでのグレリン産生の減少(>75%減少)を導く。興味深いことに、バイパス患者のほとんどは、手術後に食物に対する興味が完全に喪失することを訴えた。これはグレリン産生の顕著な低下に起因し得る。したがって、グレリンは、肥満で重要な役割を確かに演じ、食事療法中の肥満患者におけるグレリン産生の顕著な低下の必要性は、1.体重を減少させること(すなわち過剰な体脂肪を減少させること)及び2.その後の食事療法に誘導された体重減少の維持することに不可欠である。
【0007】
グレリンの構造
グレリンは、セリン−3残基にn−オクタノイルエステルを有する独特な構造を示す。プロセシングされた成熟グレリンの最初の数個の残基Gly-Ser-Ser(n−オクタノイル)-Pheセグメントがこのペプチドの活性成分を構成することが示されている(Bednarek MAら,2000)。
【0008】
グレリンの他のタンパク質との相同性
グレリンはヒト胃で同定され、2アミノ酸以外はラットグレリンと相同である。胃cDNAライブラリから単離されたヒトプレプログレリンは、117アミノ酸からなる。ラット及びヒトのプレプログレリンは82.9%同一である。グレリンはこれまでに同定された他のいずれの非グレリンペプチドとも高い相同性を有しない。
【0009】
グレリンの生物学的活性
グレリンは、ある程度胃機能のCNS制御の調整を通じて、摂食行動を改変すると考えられている(Date Yら,2001;Masuda Yら,2000)。具体的には、グレリンのICV投与は、用量依存的及びアトロピン感受性の様式で胃酸分泌を刺激した。免疫組織化学により、ラット迷走神経の孤束核及び背側運動核でのFos発現の誘導が証明された。Asakawa Aらは、2001年に、グレリンがモチリンに構造的類似性で胃運動促進活性を示し、そして視床下部ニューロペプチドY及びY(1)レセプターに対する作用を通じて強力な食欲促進(摂食行動)活性を示すことを明らかにした。これらは迷走神経切断後に消失した。グレリンは胃迷走神経の求心性放電を減少させ、これに対し他の食欲不振誘発性ペプチドはその活動を増大させた。これらの著者及び他の者(Toshinai Kら,2001)は、胃におけるグレリン遺伝子発現が絶食により、インスリンにより及びob/obマウスにおいて増大することを報告した。
【0010】
グレリンの役割のインビボにおける証明
GH放出の増大と同様に、外因性グレリンはまた、マウス及びラットにおいて、食物摂取を増大させ、体重増加を引き起こし、そして脂肪利用を減少させた(Wren AMら,2000;Tschop Mら,2000)。同様に、グレリンの脳室内(ICV)投与もまた、食物摂取及び体重の用量依存的な増大を生じた。ラット血清グレリン濃度は絶食により増大し、再摂食又は経口グルコース投与により低下したが、水摂取によっては低下しなかった。これらの著者らは、グレリンが、GH分泌調節における役割に加えて、代謝効率の増大が必要なときに視床下部に注意喚起すると提案した。Nakazato Mら(2001)は、グレリンがエネルギー恒常性の視床下部による調節に関与することを証明した。グレリンの脳室内注入は、ラットにおける摂食行動を強力に刺激し、体重獲得を増大させた。グレリンはまた、遺伝的にGHを欠損するラットにおいて摂食行動を増大させた。抗グレリン免疫グロブリンGは摂食行動を確実に抑制した。icvグレリン投与後、ニューロン活性化のマーカーであるFOSタンパク質が、摂食行動の調節に最重要な領域(ニューロペプチドYニューロン及びアグーチ関連タンパク質ニューロンを含む)で見出された。ニューロペプチドY及びアグーチ関連タンパク質の抗体及びアンタゴニストは、グレリン誘導摂食行動を消滅させた。グレリンは、ニューロペプチドY遺伝子の発現を増強し、レプチン誘導摂食行動低下を阻止した。このことは、摂食行動調節においてグレリンとレプチンとの間に競合的相互作用があることを示唆する。したがって、グレリンは摂食行動の生理学的メディエータであると結論付けられた。動物研究に加えて、グレリンはまた、多くの臨床研究でも研究されてきた。グレリンのレベルは、食事の1時間前に2倍増大し、食事から1時間以内に低いレベルまで低下する(挿入図を参照)ことが示され、このことはグレリンが食事の開始に重要な役割を演じることを示唆する(Cummings DEら,2001)。このことは、グレリンがヒトにおいて食欲及び食物摂取を増大させることを示した研究(Wren AMら,2001)により確証された。
【0011】
現在及び将来の肥満処置
米国でおよそ3,400〜6,100万人が肥満であり、開発途上国の多くでこの発生率は年に約1%の割合で増大していると推定されている。初期の処置が撤回された後、FDAがAbbott社のシブトラミン(Reductil/Meridia)を肥満への使用について認可した1997年11月に、更にはRoche社のゼニカル(orlistat)もまた認可された1999年4月に、抗肥満医薬の市場が再び確立された。 全世界の肥満市場は、年複利成長率21.1%で、2008年までに37億ドルに達すると予測されている。この市場潜在性により、製薬会社は新規な抗肥満製品の同定を最優先にし、その結果、開発中の薬物の数は、前臨床研究活動の増大に大いに起因して、過去7年にわたって3倍上昇している。最も大きく注目されている薬学的クラスは、5-HT 調整薬物;β3−アドレナリンレセプターアゴニスト;リパーゼインヒビター;メラノコルチン4アゴニスト;及びレプチンアゴニストを含む。レプチンアゴニストは、このメディエータが摂食行動を低下させることができるので、大きな関心が持たれたが、肥満個体が高レベルのレプチンを産生し、レプチンに対して抵抗性であるという最近の観察により、代替物の検索に駆り立てられた。
【0012】
グレリンは肥満の分野で最も有望な破壊標的(breaking target)の1つである。科学者たちは1999年にグレリンを同定したのみであったが、この物質について200を超える論文が既に発表されている。グレリンは、食物摂取を刺激するように作用するが、血漿レベルは肥満患者で低下している。このことは、このメディエータが、食物摂取の鍵となる調節物質であることを示唆している。この分野の先導者たちは、現在、グレリン活性の更なる低下が治療的標的を提供し得、したがってグレリンレセプター結合のアンタゴニストが肥満処置における薬理学的選択肢として浮かび上がってきていると考えている。これに対応して、多くのツールが、今や、グレリンレセプターアンタゴニストのスクリーニングに利用可能である。薬物発見の可能性にもかかわらず、グレリンレセプターアンタゴニストは、未だに出現していないが、多くの特許文献がそのような分子は実現間近であるように示唆している。グレリンアンタゴニストの開発を支持する概念の証明を考慮すれば、肥満市場の潜在的なサイズ及び医師に利用可能な処置が比較的少ないことは、今や、この刺激的な治療クラスの開発に投資するに理想的な時期である。
【0013】
体脂肪の増大が重要である状態
多くの疾患を患っている患者は、上記の肥満患者とは全く対照的に、体脂肪の増大により恩恵を受ける。問題が食欲の欠如であり食物供給への不十分なアクセスではないような状態は確かに存在する。このような状態には悪液質及び食欲不振が含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的
本発明の目的は、肥満に特徴的であるような、エネルギー消費を超えるエネルギー摂取から生じる過剰な体脂肪の蓄積により特徴付けられる状態に対する新規な治療薬を提供することである。別の目的は、体脂肪の増大を誘導する治療薬及び処置を提供することである。更なる目的は、グレリンに対する自家ワクチンを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要旨
本明細書に記載されるのは、そうでなければ非免疫原性の自己タンパク質たるグレリン(過剰な体脂肪蓄積に関与する)に対して強力な免疫応答を生じさせるための自家ワクチン接種技術の使用である。これにより、強力な免疫応答がグレリンに対して生じる。過剰な体脂肪蓄積と関連する疾患の症状の予防、可能な治療又は緩和のためのワクチンの製造も記載されるが、体脂肪の増大を誘導するためのワクチンの製造もまた記載される。
【0016】
後者は、本発明の多くの免疫原性グレリンアナログがその変形体で免疫した動物において血清グレリンの上昇をもたらすようであるという驚くべき知見の結果である。血清グレリンのこの上昇は、免疫動物が食物摂取の増大を示さなくとも、その動物において顕著な体重増大を伴う。
さらに、循環グレリンレベルの増大により、自家グレリンに対する能動免疫は、1)グレリンが発揮す生理学的効果の恩恵を受け、そして2)その患者自身グレリンを産生する能力を確かに有する被検体においてグレリンの直接投与に代わる予期しなかった選択肢となる。
【0017】
したがって、最も広く最も概括的な範囲で、本発明は、ヒトを含む動物において自家グレリンに対する免疫応答を誘導するための方法に関し、この方法は、
− グレリンポリペプチド又はサブ配列での動物の免疫化が該動物の自家グレリンに対する抗体の産生を誘導するように製剤化された少なくとも1つのグレリンポリペプチド又はそのサブ配列、及び
− グレリンアナログでの動物の免疫化がグレリンに対する抗体の産生を誘導するように、同じ分子中に少なくとも1つのグレリンB細胞エピトープ及びグレリンに由来しない少なくとも1つの化学的部分を組み込んでいる少なくとも1つのグレリンアナログ
からなる群より選択される免疫原の免疫学的有効量を動物の免疫系に提示させることからなる。
【0018】
下記の本発明の説明から明らかになるように、本方法は、グレリン活性のインビボダウンレギュレーションをもたらすか又はグレリン活性のインビボアップレギュレーションをもたらすかのいずれかに使用することができる。
このアプローチの最も魅力的な観点は、例えば、抗グレリン又はこれと類似のグレリンに結合親和性を有する分子の投与からなる治療アプローチとは対照的に、周期的ではあるがさほど頻繁でない免疫により肥満を制御及び/又は逆転できることである。グレリン活性の他のインヒビターの投与は、毎日又は少なくとも毎週の投与が確かに必要であるか又は必要であろうが、本発明に従う免疫原性組成物は年間1〜4回の注射で、所望の効果を得るに十分であると予測される。同様な利点は、体脂肪の増大が望ましい適応症に存在する。
【0019】
本発明はまた、グレリンアナログ及びこれらのサブセットをコードする核酸フラグメントに関する。また、このアナログ又は核酸フラグメントを含む免疫原性組成物も本発明の一部である。
本発明はまた、グレリンのアナログを同定する方法及びグレリンアナログを含む組成物を製造する方法に関する。
最後に、本発明はまた、能動ワクチン接種と同様な効果を得るために抗グレリンモノクローナル抗体が投与される受動免疫治療を提供する。
【0020】
図面の説明
図1:自家グレリンに対して免疫したラットでの抗グレリン抗体価。
ラットの群(n=10)に、異なるグレリンAutoVacペプチド(それぞれ配列番号15、16及び17に対応するペプチド3、4、5)、野生型ラットグレリン(ペプチド2)又はIgEに由来するネガティブコントロールペプチド(ペプチド1)を用いてワクチン接種した。5群の各々からの血清(3回目のワクチン接種後)のプールを、プレートにグレリン(Bachem,2μg/ml)をコーティングした直接ELISAで抗グレリン抗体応答について試験した。血清は、1:10の開始希釈率から三重倍(three-fold)で滴定した。ELISAプレートへの血清の非特異結合についてのネガティブコントロールとして、ペプチド5をワクチン接種したラットの血清を、コーティングしていないウェル(非コーティング)に加えた。抗グレリン抗体の結合を、HRP接合抗ラットIg二次抗体(1:1000希釈,Dako)で検出した。
図2:免疫化ラットの体重。
研究の開始(時間=0.0)から全ての群で体重を週に1度測定した。全ての群において10週間の研究で体重が増加しているが、体重増加は、wt及びコントロール(それぞれペプチド2及び1)より上昇したレベルのグレリン(ペプチド3〜5)の動物で高い。
図3:免疫化ラットにおける食物摂取
研究の開始(時間=0.0)から全ての群で週に1度、ワクチン接種ラットの食物摂取を測定した。グラフは、10週間の研究にわたる累積食物摂取を示す。明らかに、示された体重の差異は累積食物摂取に直接反映していない。
図4:ワクチン接種動物の血漿グレリンレベル
グレリンレベルを標準化するために、血液サンプルを18時間の絶食後に採取した。プールした血清を、Phoenix社の市販RIAキット(Ghrelin(Rat Mouse)-RIA Kit)を製造業者の指示書に従って使用してラットグレリンについて分析した。最初のデータ(11/4)は、予備採血のものであり、残りの点は注入後1週間で採取した血液からのものである。
【0021】
発明の詳細な説明
定義
以下に、本発明の境界を明確にするため、本明細書及び特許請求の範囲で使用する多くの用語を規定し、詳細に説明する。
【0022】
本明細書において、用語「免疫原」は、免疫応答を誘導する薬剤(agent)(物質又は組成物)をいう。特定の分子(例えば自家宿主で寛容される伝統的な小ハプテン又は自己タンパク質)は免疫応答を誘導することができないことは理解されている。しかし、いくつかの自己タンパク質は、非常に強力な免疫原性アジュバント中で製剤化されたとき、免疫動物の正常な寛容状態にも関わらず、免疫応答を誘導することができる。したがって、そのような意味において、「免疫原」は、組成物(自己タンパク質及びアジュバント)であり、単一分子のみではない。
【0023】
用語「Tリンパ球」及び「T細胞」は、種々の細胞媒介性免疫応答を及び体液性免疫応答におけるヘルパー活性を担う胸腺由来のリンパ球について交換可能に使用される。同様に、用語「Bリンパ球」及び「B細胞」は、抗体産生リンパ球について互換可能に使用される。
【0024】
「グレリンポリペプチド」は、本明細書において、ヒト及び他の哺乳動物由来の上記グレリンタンパク質のアミノ酸配列を有するポリペプチド(又は完全な(native)グレリンと相当量のB細胞エピトープを共有するその短縮体)を指すものとされるが、他の種から単離されたこれらタンパク質の異種アナログと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドもまた、この用語に包含され;成熟グレリンペプチド並びにグレリンプロペプチド及びグレリンプレプロペプチドのいずれもこの用語に包含される。原核生物系で製造される非グリコシル化形態のグレリンもこの用語の範囲内に含まれ、例えば酵母又は他の非哺乳動物真核発現系の使用に起因して種々のグリコシル化パタンを有する形態も同様である。しかし、用語「グレリンポリペプチド」を使用する場合、この用語は、問題のポリペプチドが、処置されるべき動物に提示されたとき、通常は非免疫原性であるとされることに留意すべきである。換言すれば、グレリンポリペプチドは、通常は、問題の動物でグレリンに対する免疫応答を生じさせない自己タンパク質であるか又はその自己タンパク質の異種アナログである。
【0025】
「グレリンアナログ」は、一次構造が変更を受けているグレリンポリペプチドである。この変更は、例えば、グレリンポリペプチドと適切な融合パートナーとの融合体形態(すなわち、アミノ酸残基のC及び/又はN末端付加を専ら含む一次構造の変更)であり得るし、そして/又はグレリンポリペプチドのアミノ酸配列における挿入及び/又は欠失及び/又は置換の形態であり得る。また、誘導体化されたグレリン分子もこの用語に含まれる(グレリンの改変についての下記の説明を参照)。
ヒトグレリンの例えばイヌアナログのヒトにおけるワクチンとしての使用は、グレリンに対する所望の免疫化を生じると想像できることに留意すべきである。免疫化のための異種アナログのこのような使用もまた、上記定義のように、「グレリンアナログ」であるとみなされる。
【0026】
本明細書中で略語「グレリン」を使用する場合、これは、野生型グレリン(本明細書中で「グレリン」及び「グレリン-wt」とも呼ばれる)のアミノ酸配列へ言及するものとされる。この用語は、プロペプチド及び成熟ペプチドの両方を包含し、成熟グレリンはグレリン-mと呼ばれる。成熟ヒトグレリンは、h-グレリン、h-グレリン-mと呼ばれ、マウス成熟グレリンはm-グレリン、m-グレリン-m又はm-グレリン-wtと呼ばれ、他も同様である。DNA構築物がリーダー配列又は他の材料(material)をコードする情報を含む場合、これは、通常は、文脈から明らかである。
【0027】
用語「ポリペプチド」は、本明細書において、2〜10アミノ酸残基の短いペプチド、11〜100アミノ酸残基のオリゴペプチド及び100を超えるアミノ酸残基のポリペプチドのいずれをも意味するものとする。さらに、この用語はまた、タンパク質、すなわち少なくとも1つのポリペプチドを含む機能的な生体分子を含むものとする。少なくとも2つのポリペプチドを含む場合、これらは、複合体を形成してもよいし、共有的に連結されていてもよいし、又は非共有的に連結されていてもよい。タンパク質中のポリペプチドは、グリコシル化及び/又は脂質化されることができ、及び/又は補欠分子団を含むことができる。また、用語「ポリアミノ酸」は用語「ポリペプチド」と同義である。
【0028】
用語「サブ配列」は、天然に存在するグレリンのアミノ酸配列又は該当する場合には核酸配列から直接得られるそれぞれ少なくとも3アミノ酸又は少なくとも3ヌクレオチドの任意の連続ストレッチ(consecutive stretch)を意味する。
【0029】
用語「動物」は、本明細書において、一般に、動物種(好ましくは哺乳動物)、例えばHomo sapiens、Canis domesticusなどを指すものとされ、一個体の動物をいうものではない。しかし、この用語はまた、そのような動物種の一集団をも指す。なぜならば、本発明の方法に従って免疫した個体が全て実質的に同じグレリンを保有し(harbour)、一群の動物が同じ免疫原で免疫されることが重要であるからである。例えば、遺伝的変形体のグレリンが異なるヒト集団に存在すれば、各集団でグレリンに対する自己寛容を破壊し得るためには、これら異なる集団間で異なる免疫原を使用することが必要であり得る。本明細書において動物は免疫系を有する生物であることは当業者に明らかである。動物は脊椎動物(例えば哺乳動物)であることが好ましい。
【0030】
用語「グレリン活性のインビボダウンレギュレーション」は、本明細書中で、その生命体中でのグレリンとそのレセプターとの間(又はグレリンと他の可能な生物学的に重要なこの分子の結合パートナーとの間)の相互作用の数の減少を意味する。ダウンレギュレーションはいくつかの機構により得ることができる。これらのうち、抗体結合によるグレリン中の活性部位の単なる妨害は最も単純なものである。しかし、抗体結合の結果としてのスカベンジャー細胞(例えばマクロファージ及び他の食細胞)によるグレリンの除去もまた本発明の範囲内である。別の可能性は、成熟グレリンを生じる通常のプログレリン切断を妨害し得る抗グレリン抗体の結合である。
【0031】
表現「免疫系に...提示させる」は、制御された様式で動物の免疫系を免疫攻撃(immunogenic challenge)に曝すことを指すものとする。下記の開示から明らかなように、このような免疫系攻撃は、多くの方法で行なうことができ、そのうちの最も重要なのは「ファーマシン(pharmaccine)」(すなわち、進行中の疾患を処置又は改善するために投与するワクチン)を含むポリペプチドを用いるワクチン接種又は核酸「ファーマシン」ワクチン接種である。達成すべき重要な結果は、動物の免疫コンピテント細胞が免疫学的に有効な様式で抗原と対決(confronted)することである。一方、この結果を達成する正確な態様は、本発明の基礎をなす独創的思想にとってさほど重要ではない。
【0032】
用語「免疫学的有効量」は、免疫学の分野で通常の意味を有する。すなわち、その免疫原と免疫学的特徴を共有する分子を有意に関係させる(engage)免疫応答を誘導することができる免疫原の量である。
【0033】
グレリンが「改変されている」という表現を用いる場合、本明細書では、グレリンの骨格を構成するポリペプチドの化学的改変を意味する。このような改変は、例えば、グレリン配列中の特定のアミノ酸残基の誘導体化(例えばアルキル化、アシル化、エステル化など)であり得るが、下記の開示から明らかなように、好ましい改変には、グレリンアミノ酸配列の一次構造の変更(又はその一次構造への付加)が含まれる。1つの特定の改変は、グレリン中の天然に存在するn−オクタノイル基の削除である。
【0034】
「グレリンに対する自己寛容」を論じる場合、グレリンはワクチン接種する集団において自己タンパク質であるので、集団中の正常個体は、グレリンに対して免疫応答を開始(mount)しないことが理解される。しかし、動物集団中の個体が、偶然にも、例えば自己免疫疾患の一部として、ネイティブ(native)のグレリンに対して抗体を産生し得る可能性は排除できない。いずれにしても、動物は、正常には、自身のグレリンに対しては自己寛容でしかないが、他の動物種又は異なるグレリン表現型を有する集団に由来するグレリンアナログもまた、当該動物により寛容されることは排除できない。
【0035】
「外来性T細胞エピトープ」(又は「外来性Tリンパ球エピトープ」)は、動物種において、MHC分子に結合することができ、T細胞を刺激するペプチドである。本発明において好ましい外来性T細胞エピトープは、「無差別性(promiscuous)」エピトープ、すなわち動物種中又は集団中の特定クラスのMHC分子の相当な割合に結合するエピトープである。非常に限られた数のそのような無差別性T細胞エピトープのみが既知であり、それらについては下記に詳細に説明する。本発明に従って使用する免疫原が動物集団の可能な限り大きな割合で有効であるためには、1)同じグレリンアナログにいくつかの外来性T細胞エピトープを挿入すること、又は2)各アナログが異なる無差別性エピトープを挿入されているいくつかのグレリンアナログを準備することが必要であり得ることに留意すべきである。外来性T細胞エピトープの概念はまた、(cryptic)T細胞エピトープ、すなわち自己タンパク質に由来し、その自己タンパク質の一部でない単離形態で存在する場合にのみ免疫原性挙動を発揮するエピトープの使用を包含することもまた留意するべきである。
【0036】
「外来性Tヘルパーリンパ球エピトープ」(外来性THエピトープ)は、MHCクラスII分子に結合し、そのMHCクラスII分子に結合した抗原提示細胞(APC)の表面に提示され得る外来性T細胞エピトープである。
【0037】
(生体)分子の「機能的部分」は、本明細書において、その分子が発揮する少なくとも1つの生化学的又は生理学的効果を担う当該分子の部分を意味するものとされる。多くの酵素及び他のエフェクター分子が、問題の分子により発揮される効果を担う活性部位を有することは当該分野において周知である。その分子の他の部分は、安定化又は溶解性増強の目的に働き得、したがってこれらの目的が本発明の特定の実施形態に関して重要でない場合は除去することができる。例えば、グレリンにおいて改変作用部分(modifying moeity)として特定のサイトカインを使用することができ、そのような場合、グレリンとのカップリングが必要な安定性を提供するので、安定性の問題は重要でないかもしれない。
【0038】
用語「アジュバント」は、ワクチン技術の分野で通常の意味を有する。すなわち、1)それ自体はワクチンの免疫原に対する特異的な免疫応答を開始できないが、2)にもかかわらず、その免疫原に対する免疫応答を増強することができる物質又は組成物である。換言すれば、アジュバントのみでのワクチン接種は、免疫原に対する免疫応答を提供せず、免疫原でのワクチン接種は、免疫原に対する免疫応答を生じるかもしれないし生じないかもしれないが、免疫原とアジュバントとのワクチン接種の組合せは、免疫原単独で誘導されるものより強力な免疫原に対する免疫応答を誘導する。
【0039】
分子の「標的化」は、本明細書においては、分子が、動物に導入される際、特定の組織に優先的に出現するか、又は特定の細胞若しくは細胞タイプと優先的に関係する状況を指すものとする。これは、標的化を促進する組成でその分子を製剤化すること、又はその分子中に標的化を促進する基を導入することによることを含む多くの方法で達成することができる。これらの点は下記で詳細に説明する。
【0040】
「免疫系の刺激」は、物質又は組成物が全身性の非特異的な免疫刺激効果を示すことを意味する。多くのアジュバント及び推定アジュバント(例えば特定のサイトカイン)は、免疫系を刺激する能力を共有する。免疫刺激剤の使用は、免疫系の増大した「変化」をもたらし、これは、免疫原での同時又は後続の免疫化は、免疫原の単独使用と比較して、顕著により効果的な免疫応答を誘導することを意味する。
【0041】
「生産的結合(productive binding)」は、MHC分子に結合したペプチドを提示する細胞と関係する(engage)T細胞を刺激できるように、ペプチドがMHC分子(クラスI又はII)と結合することを意味する。例えば、APCの表面でMHCクラスII分子に結合したペプチドは、このAPCが提示されたペプチド−MHCクラスII複合体に結合するTH細胞を刺激する場合、生産的に結合していると言える。
【0042】
抗グレリン免疫化の好ましい実施形態
上記に簡潔に述べたように、グレリンに対する免疫化は、能動的でも受動的でもあり得る。本発明の焦点がグレリンに対する能動免疫応答を誘導する薬剤の投与であっても、インビボでグレリンに結合する薬剤を投与することもまた、本発明の範囲内である。例えば、本発明で、モノクローナル抗体投与の周知技術を利用することができる。例えばヒト免疫グロブリン軽鎖及び重鎖を発現するトランスジェニックマウスを用いることによって、ヒト化又は完全ヒトモノクローナル抗体を使用することは、本発明に関しては好ましい。当業者には、そのような抗体組成物の調薬及び投与の方法は公知である。あるいは、可溶型のグレリンレセプターを注入し、血流中でグレリンに効果的結合を生じさせることができる。
しかし、上記のように、好ましい実施形態はグレリンに対する能動免疫を伴う。
【0043】
本発明の方法で免疫原として使用するグレリンポリペプチドは、少なくとも1つの変更がグレリンポリペプチドアミノ酸配列中に存在する改変された分子であることが好ましい。なぜなら、グレリンに対する自己寛容の極めて重要な破壊を得る機会が、そうすることで大いに促進されるからである。このことは、グレリンに対する自己寛容の破壊をさらに促進する製剤中、例えば、下記に詳細に説明する特定のアジュバントを含む製剤中でそのような改変されたグレリンを使用する可能性を排除するものではないことに留意すべきである。
【0044】
自己タンパク質を認識する潜在的に自己反応性のBリンパ球が、正常個体に生理学的に存在することは、Dalum Iら,1996,J.Immunol.157:4796-4804に示されている。しかし、これらのBリンパ球が問題の自己タンパク質と反応性である抗体を実際に産生するように誘導されるためには、サイトカイン産生Tヘルパーリンパ球(TH細胞又はTHリンパ球)の支援が必要である。Tリンパ球は、一般に、抗原提示細胞(APC)により提示されるときの自己タンパク質由来のT細胞エピトープを認識しないので、通常、この補助は提供されない。しかし、自己タンパク質中に「外来性」の要素が提供されることにより(すなわち、免疫学的に有意な改変が導入されることにより)、その外来性要素を認識するT細胞は、APC(例えば、初期では、単球細胞)上の外来性エピトープを認識する際に活性化される。改変された自己タンパク質上の自己エピトープを認識し得るポリクローナルBリンパ球(これもまた特化したAPCである)もまた、抗原を内在化し、続いてその外来性T細胞エピトープを提示し、その後、活性化したTリンパ球が、これらの自己反応性ポリクローナルBリンパ球に対してサイトカイン補助を提供する。これらポリクローナルBリンパ球により産生される抗体は、改変されたポリペプチド上の異なるエピトープ(ネイティブのポリペプチド中にも存在するエピトープも含む)と反応性であるので、非改変自己タンパク質と交差反応性の抗体が誘導される。結論として、事実は、挿入されたエピトープのみが宿主に対して外来性であるが、Tリンパ球は、ポリクローナルBリンパ球の集団が1つの全体的に外来性の抗原を認識しているかのように作用するように導くことができる。このようにして、非改変自己抗原と交差反応し得る抗体が誘導される。
【0045】
自己寛容の破壊を得るためにペプチド自己抗原を改変するいくつかの方法は当該分野において公知である。したがって、本発明によれば、改変は、
− 少なくとも1つの外来性T細胞エピトープを導入すること、及び/又は
− 改変分子を抗原提示細胞(APC)に標的化する少なくとも1つの第1の部分を導入すること、及び/又は
− 免疫系を刺激する少なくとも1つの第2の部分を導入すること、及び/又は
− 免疫系への改変グレリンポリペプチドの提示を最適化する少なくとも1つの第3の部位を導入すること
を含むことができる。
【0046】
しかし、これら改変の全ては、グレリン中の元のBリンパ球エピトープの相当の割合を維持しつつ実施されるべきである。なぜなら、このことによって、ネイティブの分子のBリンパ球認識が増強されるからである。
【0047】
1つの好ましい実施形態では、(外来性T細胞エピトープ又は上記第1、第2及び第3の部分の形態の)側基(side group)は、共有結合的又は非共有結合的に導入される。このことは、一次アミノ酸配列を変更することなくか、又は少なくとも連鎖中の個々のアミノ酸間のペプチド結合に変更を導入することなく、グレリン由来のアミノ酸残基のストレッチが誘導体化されることを意味するものである。
【0048】
別の好ましい実施形態は、アミノ酸の置換及び/又は欠失及び/又は挿入及び/又は付加(これらは、組換え手段又はペプチド合成により行なわれてもよい;より長いアミノ酸ストレッチを含む改変は融合ポリペプチドを生じることがある)。この実施形態の1つの特に好ましい型は、WO 95/05849に記載された技法であり、これには、多くのアミノ酸配列が対応する数のアミノ酸配列(各々が外来性免疫優性T細胞エピトープを含む)で置換されていると同時に、そのアナログ中で自己タンパク質の全体の三次元構造を維持している当該自己タンパク質のアナログで免疫することによって、当該自己タンパク質に対して免疫する方法が開示されている。しかし、本発明の目的のためには、改変(アミノ酸の挿入、付加、欠失又は置換である得る)は外来性T細胞エピトープを生じると同時にグレリン中の相当数のB細胞エピトープを保存していれば十分である。しかし、誘導された免疫応答の最大効力を得るためには、グレリンの全体の三次元構造が改変分子中で維持されることが好ましい。
【0049】
以下の式は、本発明が概括的に包含するグレリン構築物を記述する:
以下の式は、本発明が概括的に包含する分子構築物を記述する:
(MOD1)s1(ghre1)n1(MOD2)s2(ghre2)n2....(MODx)sx(ghrex)nx (I)
(式中、ghre1〜ghrexは、グレリンポリペプチドのx個のB細胞エピトープ含有サブ配列であり、これらは独立して同一又は非同一であり、外来性側基を含んでもよいし含まなくてもよく、xは3以上の整数であり、n1〜nxはx個の0以上の整数であり(少なくとも1つは1以上である)、MOD1〜MODXは保存されるB細胞エピトープの間に導入されるx個の改変であり、s1〜sxはx個の0以上の整数である(ghrex配列に側基が導入されない場合、少なくとも1つは1以上である))。したがって、構築物の免疫原性について一般的な機能的拘束が与えられると、本発明により、グレリンポリペプチドの元の配列のあらゆる種類の並べ替え及び当該配列中のあらゆる種類の改変が可能になる。したがって、グレリンポリペプチドの配列の部分を省略することにより得られる改変グレリンポリペプチド(これは、例えばインビボで有害効果を示し、したがって望ましくない免疫学的反応を生じ得る)は本発明に含まれる。
【0050】
本発明の1つの好ましい実施形態は、グレリンポリペプチドのBリンパ球エピトープの複数提示(すなわち、少なくとも1つのB細胞エピトープが2つの位置に存在する式I)を利用する。これは、種々の方法で、例えば、構造(グレリンペプチド)m(式中、mは2以上の整数である)を含む融合ポリペプチドを単に製造し、次いで本明細書中で説明した改変を少なくとも1つのグレリン配列に導入することにより達成することができる。導入する改変は、Bリンパ球エピトープの少なくとも1つの複製及び/又はハプテンの導入を含むことが好ましい。選択されたエピトープの複数提示を含むこれらの実施形態は、グレリンポリペプチドの主要でない部分がワクチン薬剤中の成分として有用である状況で特に好ましい。
【0051】
上記のように、外来性T細胞エピトープの導入は、少なくとも1つのアミノ酸の挿入、付加、欠失又は置換の導入によって達成することができる。当然、通常の状況は、アミノ酸配列中の1より多い変更の導入(例えば、完全なT細胞エピトープの導入又は置換)であるが、達成すべき重要なゴールは、アナログが、抗原提示細胞(APC)によりプロセシングされたとき、APCの表面上でMCHクラスII分子との関係で提示される外来性免疫優性T細胞エピトープを生じることである。したがって、適切な位置のグレリンポリペプチドのアミノ酸配列が、外来性THエピトープにもまた見出され得るアミノ酸残基を多く含む場合、外来性THエピトープの導入は、アミノ酸の挿入、付加、欠失及び置換によりその外来性エピトープの残りのアミノ酸を提供することによって達成することができる。換言すれば、本発明の目的を満足するために、挿入又は置換により完全なTHエピトープを導入する必要はない。
【0052】
アミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加の数は、少なくとも2、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21及び25の挿入、置換、付加又は欠失であることが好ましい。アミノ酸の挿入、置換、付加又は欠失の数は、150を超えないこと、例えば多くとも100、多くとも90、多くとも80及び多くとも70であることがさらに好ましい。置換、挿入、欠失又は付加の数は60を超えないことが特に好ましく、特にはその数は50を又は40さえも超えるべきではない。最も好ましいのは、30を超えない数である。アミノ酸付加に関して、これらは、得られる構築物が融合ポリペプチドの形態であるとき、しばしば150より相当高くなることに留意しなければならない。
【0053】
本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1つの外来性の免疫優性T細胞エピトープを導入することによる改変を含む。T細胞エピトープの免疫優性の問題は、問題の動物種に依存することが理解される。本明細書中で使用されるように、用語「免疫優性」は、単に、ワクチン接種された個体/集団において有意な免疫応答を生じるエピトープを言う。しかし、ある1つの個体/集団において免疫優性であるT細胞エピトープは、たとえそれが同じ種の別の個体においてMHC-II分子と結合することができても、必ずしも、その別の個体において免疫優性ではないことは周知の事実である。したがって、本発明の目的のためには、免疫優性T細胞エピトープは、抗原に存在するとき、T細胞の援助(help)を提供することに効果的であるT細胞エピトープである。代表的には、免疫優性T細胞エピトープは、それらが出現するポリペプチドにかかわらず、実質的に常に提示される固有の特徴として、MHCクラスII分子に結合している。
【0054】
別の重要な点は、T細胞エピトープのMHC制限の問題である。一般に、天然に存在するT細胞エピトープは、MHC制限されている。すなわち、T細胞エピトープを構成する特定のペプチドのみが、MHCクラスII分子のある1つのサブセットに効果的に結合する。よって、このことは、ほとんどの場合で、1つの特異的T細胞エピトープの使用すると、集団の一部でのみ効果的であるワクチン成分が生じ、その一部のサイズに依存して、同じ分子中に更なるT細胞エピトープを含ませるか、或いはその成分が、導入されたT細胞エピトープの性質により互いに区別されるグレリンポリペプチドの変形体である多成分ワクチンを製造する必要があり得るという結果を有する。
【0055】
使用するT細胞のMHC制限が全く不明(例えば、ワクチン接種した動物が不十分にしか規定されていないMHC組成物を有する場合)であれば、特定ワクチン組成物によってカバーされる集団の一部は、以下の式により決定することができる:
(II)
【数1】

(式中、piは、その集団における、ワクチン組成物中に存在するi番目の外来性T細胞エピトープに反応するものの頻度であり、nは、ワクチン組成物中の外来性T細胞エピトープの総数である)。したがって、その集団における応答頻度がそれぞれ0.8、0.7及び0.6である3つの外来性T細胞エピトープを含むワクチン組成物は、
1−0.2×0.3×0.4=0.976
を与える。すなわち、その集団の97.6パーセントが、統計学上、このワクチンに対してMHC-II媒介応答を開始する。
【0056】
上記式は、使用するペプチドの大体正確なMHC制限パタンが既知である状況では適用されない。例えば特定のペプチドが、HLA-DR対立遺伝子DR1、DR3、DR5及びDR7によりコードされるヒトMHC-II分子とのみ結合する場合、このペプチドを、HLA-DR対立遺伝子によりコードされる残りのMHC-II分子に結合する別のペプチドと一緒に使用することにより、問題の集団において100%のカバー範囲(coverage)が達成される。同様に、第2のペプチドがDR3及びDR5のみに結合する場合、このペプチドを添加しても、カバー範囲を全く増大させない。集団応答の計算を、純粋にワクチン中のT細胞エピトープのMHC制限に基づかせれば、特定ワクチン組成物によりカバーされる集団の一部は、以下の式により決定することができる:
(III)
【数2】

(式中、φjは、その集団における、ワクチン中のT細胞エピトープの任意の1つに結合し、3つの既知のHLA遺伝子座(DP、DR及びDQ)のj番目に属するMHC分子をコードする対立遺伝子ハプロタイプの頻度の和である;実際には、まず、どのMHC分子がワクチン中の各T細胞エピトープを認識するのかを決定し、その後これらをタイプ(DP、DR及びDQ)ごとに一覧表に記載し、次いで、一覧表に掲載された異なる対立遺伝子ハプロタイプの個々の頻度を各タイプについて合計し、そうしてφ1、φ2及びφ3を得る)。
【0057】
式II中の値piが対応する理論値πi
(IV)
【数3】

(式中、νjは、その集団における、ワクチン中のi番目のT細胞エピトープに結合し、3つの既知のHLA遺伝子座(DP、DR及びDQ)のj番目に属するMHC分子をコードする対立遺伝子ハプロタイプの頻度の和である)を超えることもあり得る。これは、その集団の1−πiにおいて応答するものの頻度がfresidual_i=(pii)/(1-πi)であることを意味する。したがって、式IIIを調整して式V:
(V)
【数4】

(式中、項1−fresidual-iは、負のときは0とする)を得ることができる。式Vは、全てのエピトープが同一セットのハプロタイプに対してハロタイプマッピングされていることが必要であることに留意しなければならない。
【0058】
したがって、アナログ中に導入すべきT細胞エピトープを選択する場合、エピトープの利用可能な全ての知識を含ませることが重要である:1)集団における各エピトープに応答するものの頻度、2)MHC制限データ、及び3)集団における関連ハプロタイプの頻度。
【0059】
動物種又は動物集団の大部分の個体で活性な多くの天然に存在する「無差別性」T細胞エピトープが存在し、これらは好ましくはワクチンに導入され、このことによって当該ワクチンにおける非常に多くの異なるアナログの必要性を低下させる。
【0060】
無差別性エピトープは、本発明によれば、天然に存在するヒトT細胞エピトープ、例えば破傷風毒素のエピトープ(例えば、P2及びP30エピトープ)、ジフテリア毒素のエピトープ、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)のエピトープ及び熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum) CS抗原のエピトープであり得る。
【0061】
何年にもわたって、多くの他の無差別性T細胞エピトープが同定されている。特に、異なるHLA-DR対立遺伝子によってコードされるHLA-DR分子の大部分に結合することができるペプチドが同定されており、これらは全て、本発明に従って使用されるアナログに導入することが可能なT細胞エピトープである。以下の参考文献(これらは全て、本明細書中で参考として援用される)で議論されているエピトープもまた参照:WO 98/23635(Frazer IHら,The University of Queenslandに譲渡);Southwood Sら,1998,J.Immunol.160:3363-3373;Sinigaglia Fら,1988,Nature 336:778-780;Chicz RMら,1993,J.Exp.Med 178:27-47;Hammer Jら,1993,Cell 74:197-203;及びFalk Kら,1994,Immunogenetics 39:230-242。後者の参考文献はまた、HLA-DQ及び-DPリガンドを扱っている。これら5つの参考文献に挙げられた全てのエピトープは、本発明で使用される天然エピトープ候補として関係する。これらと共通モチーフを共有するエピトープも同様である。
【0062】
或いは、エピトープは、MHCクラスII分子の大部分に結合することができる任意の人工T細胞エピトープであり得る。これに関して、WO 95/07707及び対応する論文Alexander Jら,1994,Immunity 1:751-761(両開示とも本明細書中で参考として援用する)に記載の汎DRエピトープペプチド(「PADRE」)は、本発明に従って使用されるエピトープの興味深い候補である。これら論文に開示された最も効果的なPADREペプチドは、投与時の安定性を向上させるために、C及びN末端にD-アミノ酸を有することに留意すべきである。しかし、本発明は、基本的には、改変グレリンポリペプチドの部分として、関連エピトープを組み込むことを目的とする。この改変グレリンポリペプチドは、その後、APCのリソソーム区画内で酵素により分解され、続いてMHC-II分子との関係で提示される。したがって本発明で使用されるエピトープ中にD-アミノ酸を組み込むことは、得策ではない。
【0063】
1つの特に好ましいPADREペプチドは、アミノ酸配列AKFVAAWTLKAAA又はその免疫学的に有効なサブ配列を有するものである。このエピトープ及びMHC制限を同じく欠いている他のエピトープが、本発明の方法で使用するアナログ中に存在すべき好ましいT細胞エピトープである。このような超無差別性エピトープは、唯1つの単一改変グレリンポリペプチドがワクチン接種動物の免疫系に提示される本発明の最も単純な実施形態を可能にする。
【0064】
上記のように、グレリンポリペプチドの改変はまた、改変グレリンポリペプチドをAPC又はBリンパ球に標的化する第1の部分の導入を含む。例えば、第1の部分は、Bリンパ球特異的表面抗原又はAPC特異的表面抗原の特異的結合パートナーであり得る。多くのこのような特異的表面抗原は、当該分野において公知である。例えば、部分は、Bリンパ球又はAPC上にレセプターが存在する糖質(例えばマンナン又はマンノース)であり得る。或いは、第2の部分はハプテンであり得る。また、APC又はリンパ球上の表面分子を特異的に認識する抗体フラグメントも、第1の部分として使用することができる(表面分子は、例えば、マクロファージ及び単球のFCγレセプター(例えばFCγRI)、或いは任意の特異的表面マーカー(例えばCD40又はCTLA-4)であり得る)。これら例示の標的化分子(targeting molecule)の全てが、アジュバントの部分として使用することができる(下記もまた参照)ことに留意すべきである。
【0065】
増強した免疫応答を達成するために、改変グレリンポリペプチドを特定の細胞タイプに標的化することの代替又は補充として、免疫系を刺激する上記第2の部分を含ませることによって免疫系の応答性のレベルを増大させることが可能である。そのような第2の部分の代表例は、サイトカイン及び熱ショックタンパク質又は分子シャペロン並びにその有効部分である。
【0066】
本発明に従って使用するに適切なサイトカインは、ワクチン組成物において通常アジュバントとしてもまた機能するものであり、すなわち、例えば、インターフェロンγ(IFN-γ)、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン13(IL-13)、インターロイキン15(IL-15)及び顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である。あるいは、サイトカイン分子の機能的部分が、第2の部分として十分であり得る。アジュバント物質としてのこのようなサイトカインの使用に関しては、下記の説明を参照。
【0067】
本発明によれば、第2の部分として使用する適切な熱ショックタンパク質又は分子シャペロンは、HSP70(熱ショックタンパク質70)、HSP90(熱ショックタンパク質90)、HSC70(熱ショックコグネイトタンパク質70)、GRP94(またgp96としても知られる;Wearsch PAら,1998,Biochemistry 37:5709-19を参照)及びCRT(カルレティキュリン)であり得る。
【0068】
或いは、第2の部分は、毒素、例えばリステリロリシン(listeriolycin)(LLO)、脂質A及び易熱性エンテロトキシンであり得る。また、多くのマイコバクテリア誘導体、例えばMDP(ムラミールジペプチド)、CFA(完全フロイントアジュバント)並びにトレハロースジエステルTDM及びTDEは、興味深い候補である。
【0069】
また、免疫系への改変グレリンポリペプチドの提示を増強する第3の部分を導入する可能性は、本発明の重要な実施形態である。先行技術は、この原理のいくつかの例を示している。例えば、Borrelia burgdorferiタンパク質OspA中のパルミトイル脂質化アンカー(palmitoyl lipidation anchor)は、自己アジュバント作用ポリペプチド(self-adjuvanting polypeptide)を提供するために利用され得ることが知られている(例えばWO 96/40718を参照)。この脂質化されたタンパク質は、コアがそのポリペプチドの脂質化アンカー部分からなり、その分子の残りの部分がそこからから突き出るミセル様構造に整列し、その結果、抗原決定基の複数提示を生じるようである。したがって、異なる脂質化アンカー(例えば、ミリスチル基、ミリスチル基、ファルネシル基、ゲラニル−ゲラニル基、GPI-アンカー及びN-アシルジグリセリド基)を用いるこのアプローチ及び関連アプローチの使用は、本発明の好ましい実施形態である。なぜなら、特に、組換え産生されたタンパク質中にこのような脂質化アンカーを提供することは、かなり簡単で、単に、例えば天然に存在するシグナル配列を改変グレリンポリペプチド用融合パートナーとして使用することを必要とするだけであるからである。別の可能性は、補体因子C3のC3dフラグメント又はC3自体の使用である(Dempseyら,1996,Science 271,348-350及びLou & Kohler,1998,Nature Biotechnology 16,458-462を参照)。
【0070】
エピトープ領域の複数コピーを提示する別の魅力的な方法は、WO 00/32227に開示された技術である。ここでは、抗原は規則正しい繰り返しパタンで提示され、それによりウイルスカプシドに似たT細胞非依存性免疫原を生じる。本発明に関して、WO 00/32227の技術は特殊化アジュバントの適用と考えられる。WO 00/32227の開示は、本明細書中で参考として援用される。免疫系へのグレリンポリペプチドの重要なエピトープ領域の複数(例えば少なくとも2つ)のコピーの好ましい提示もまた生じる本発明の代替の実施形態は、グレリンポリペプチド、そのサブ配列又はそのアナログから選択されるポリアミノ酸と特定の分子とを、必要な場合には外来性THエピトープ又は上記の第1、第2若しくは第3の部分と共に共有結合的にカップリングすることである。例として、ポリマー、例えばポリヒドロキシポリマー、特に糖質(例えばデキストラン)(例えば、Lees Aら,1994,Vaccine 12:1160-1166;Lees Aら,1990,J Immunol.145:3594 3600を参照)を使用できるが、またマンノース及びマンナンも有用な代替物である。例えばE.coli及び他の細菌の膜内在性タンパク質もまた、有用な接合パートナー(conjugation partner)である。伝統的なキャリア分子(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風毒素、ジフテリア毒素及びウシ血清アルブミン(BSA))もまた、好ましく有用な接合パートナーである。グレリンペプチドと薬学的に受容可能なポリヒドロキシポリマー(例えば糖質)との共有結合的カップリングの好ましい実施形態は、別々にポリヒドロキシポリマーとカップリングされる少なくとも1つのグレリンポリペプチド及び少なくとも1つの外来性Tヘルパーエピトープ(すなわち、外来性Tヘルパーエピトープ及びグレリンポリペプチドは互いに融合しておらず、後にキャリア骨格として働くポリヒドロキシポリマーに結合している)の使用を含む。再び、このような実施形態は、グレリンポリペプチドの適切なB細胞エピトープを有する領域が短いペプチドストレッチにより構成される場合、最も好ましい。これは、このアプローチが、得られる免疫原性薬剤における選択されたエピトープの複数提示を達成するための1つの非常に便利な方法であるからである。
【0071】
ポリアミノ酸とポリヒドロキシポリマーとのカップリングは、ペプチダーゼにより切断され得るアミド結合によることが特に好ましい。この戦略は、APCが接合体(conjugate)を取り込むことができ、同時にその接合体をプロセシングし、続いてMHCクラスIIとの関係で外来性T細胞エピトープを提示することができるという効果を有する。
【0072】
ペプチド(目的のグレリンポリペプチドと外来性エピトープの両方)のカップリングを達成する1つの方法は、トレシル(トリフルオロエチルスルホニル)基又は他の適切な活性化基(例えばマレイミド、p-ニトロフェニルクロロホルメート)(OH基の活性化及びペプチドとポリヒドロキシポリマーとの間のペプチド結合の形成のため)及びトシル(p-トルエンスルホニル)を用いて適切なポリヒドロキシポリマーを活性化することである。例えば、WO 00/05316及び米国特許第5,874,469号(共に本明細書中に参考として援用する)に記載のような活性化された多糖を調製し、これらを従来の固相又は液相ペプチド合成技術により調製したグレリンペプチド及びT細胞エピトープにカップリングすることが可能である。得られる生成物は、それらのN末端又は他の利用可能な窒素部分により付着しているグレリンポリペプチド及び外来性T細胞エピトープを有するポリヒドロキシポリマー骨格(例えばデキストラン骨格)からなる。所望であれば、N末端のもの以外のすべての利用可能なアミノ基を保護するようにグレリンポリペプチドを合成し、続いて、得られる保護ペプチドをトレシル化デキストラン部分にカップリングし、最後に得られる接合体を脱保護することが可能である。このアプローチの具体例は、下記の実施例に記載される。
【0073】
WO 00/05316及び米国特許第5,874,469号で教示されたような水溶性多糖分子を使用する代わりに、架橋した多糖分子を利用し、それによりポリペプチドと多糖との粒子状接合体を得ることも同等に可能である。2つの目的が達成される(すなわち、接合体を注入するときの局所的な蓄積効果及びAPCの誘引性標的である粒子が得られる)ので、これは、免疫系へのポリペプチドの改善された提示を導くと考えられる。このような粒子系を使用するアプローチもまた、実施例で詳述する。
【0074】
グレリンポリペプチド中の改変を導入する領域の選択の根拠として考慮すべきことは、a)既知及び推定のB細胞エピトープの保存、b)3D構造の保存、c)「産生細胞(producer cell)」に存在するB細胞エピトープの回避などである。いずれにせよ、上記のように、その全てが異なる位置でT細胞エピトープを導入されている改変グレリン分子のセットをスクリーニングすることはかなり容易である。
【0075】
成熟形態のグレリン及びプロペプチド形態の両方を標的化するワクチン接種を想定することができ、両方の形態とも異なる利点を必然的に伴うと考えられる。プロペプチドを標的化することにより、成熟グレリンの生成を導く酵素プロセシングに干渉することができるはずである。使用する免疫原が成熟グレリン及びプログレリンの両方からのB細胞エピトープを含む場合、生成する抗体は、成熟グレリンのダウンレギュレーションについて最大の能力を有する:成熟グレリンを中和化することができるだけでなく、その生成が減少する。なぜなら、強力に結合する抗体が、切断部位及び酵素性切断が起こるに重要な他の部位を「マスクする」ので、酵素プロセシングが阻害されるからである。
【0076】
他方、成熟グレリンのレベルをより少ない程度だけ減少させることが望ましい場合、相当量の成熟グレリンを含まないプロペプチドの部分に対するワクチン接種をすることが好ましい。そうすることにより、成熟グレリンに抗体が結合せず、成熟グレリンの生成のみが減少する。
【0077】
最後に、成熟分子(これは任意の既知の非グレリンとの配列同一性をほとんど有さない)を標的化することのみを目的とする場合、免疫原は成熟グレリンのB細胞エピトープを優勢に含むべきである。
【0078】
本発明の最も好ましい実施形態は、ヒトグレリンに対する免疫化を含むので、上記のグレリンポリペプチドはヒトグレリンポリペプチドであることが結果的に好ましい。しかし、ヒトグレリンについての下記の説明は、いずれも、他の種のグレリン(特に、本出願の配列表に列挙したもの)に使用できる。ヒト配列における変更に関連する教示は、該当する動物の該当する配列に置き換えられるべきであることが理解される:配列表から、成熟グレリンペプチド配列の境界の場所を見出すことが可能であるように思われ、ヒト配列で言及される任意の特定の配列データは、種々の哺乳動物グレリン配列中の対応する配列において補正されるべきであることが理解される。
【0079】
ヒトグレリンに関連する実施形態において、ヒトグレリンポリペプチドは、配列番号11中の少なくとも1つのアミノ酸配列を、外来性THエピトープを含む等しいか又は異なる長さの少なくとも1つのアミノ酸配列で置換することにより改変されていることが特に好ましい。或いは、外来性THエピトープが単に配列番号11に挿入されてもよい。
【0080】
より具体的には、配列番号11中に導入されるTH含有(又は完備)アミノ酸配列は、配列番号11中の任意のアミノ酸で導入されてもよい。すなわち、導入は、配列番号11中のアミノ酸1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116及び117の任意の1つの後で可能であり、付加の場合には、アミノ酸1の前でも可能である。これは、配列11中のアミノ酸1及び/又は2及び/又は3及び/又は4及び/又は5及び/又は6及び/又は7及び/又は8及び/又は9及び/又は10及び/又は11及び/又は12及び/又は13及び/又は14及び/又は15及び/又は16及び/又は17及び/又は18及び/又は19及び/又は20及び/又は21及び/又は22及び/又は23及び/又は24及び/又は25及び/又は26及び/又は27及び/又は28及び/又は29及び/又は30及び/又は31及び/又は32及び/又は33及び/又は34及び/又は35及び/又は36及び/又は37及び/又は38及び/又は39及び/又は40及び/又は41及び/又は42及び/又は43及び/又は44及び/又は45及び/又は46及び/又は47及び/又は48及び/又は49及び/又は50及び/又は51及び/又は52及び/又は53及び/又は54及び/又は55及び/又は56及び/又は57及び/又は58及び/又は59及び/又は60及び/又は61及び/又は62及び/又は63及び/又は64及び/又は65及び/又は66及び/又は67及び/又は68及び/又は69及び/又は70及び/又は71及び/又は72及び/又は73及び/又は74及び/又は75及び/又は76及び/又は77及び/又は78及び/又は79及び/又は80及び/又は81及び/又は82及び/又は83及び/又は84及び/又は85及び/又は86及び/又は87及び/又は88及び/又は89及び/又は90及び/又は91及び/又は92及び/又は93及び/又は94及び/又は95及び/又は96及び/又は97及び/又は98及び/又は99及び/又は100及び/又は101及び/又は102及び/又は103及び/又は104及び/又は105及び/又は106及び/又は107及び/又は108及び/又は109及び/又は110及び/又は111及び/又は112及び/又は113及び/又は114及び/又は115及び/又は116及び/又は117の欠失により達成されてもよい。
【0081】
しかし、プレプロペプチド形態のグレリンに対する免疫化は、プロペプチドに対する免疫化と比較して何らの妥当性があるとは期待されないので、導入は、配列11中のアミノ酸23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116及び117のいずれか1つの後で実施されること(アミノ酸23がヒトグレリンにおけるシグナル配列中の最後のアミノ酸であるので、導入は、グレリン分子のプロペプチド領域で実施される)、及びシグナル配列のアミノ酸は免疫原の部分に実質的にないことが好ましい。
【0082】
完全なプロペプチドを標的化することが望ましい実施形態(上記を参照)では、プログレリン中のB細胞エピトープの破壊を回避することが好ましい。したがって、外来性THエピトープの導入は、本実施形態では、配列番号11中のアミノ酸24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116及び117のいずれの欠失も伴わないか、又はこれらの任意の1つの非常に限定された欠失(B細胞エピトープを破壊しない欠失)を伴うべきである。
【0083】
他方、成熟グレリンの配列を含まない「免疫原化された」グレリンを提供することが望ましい場合(上記を参照)、導入は、好ましくは、配列番号11中のアミノ酸1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50及び51の相当な数の欠失を含む。その結果、非破壊性(すなわちB細胞エピトープが保存される)欠失/置換のみが、配列番号11中のアミノ酸52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116及び117の内でなされることが好ましい。この実施形態では、アミノ酸1〜51の全てが欠失されるのが最も好ましい。
【0084】
最後に、成熟分子の部分を構成しないプログレリンの部分のB細胞エピトープを含まないグレリン変形体を提供することが望ましい場合、外来性THエピトープの導入は、配列番号11中のアミノ酸52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116及び117の相当数の欠失を伴うべきである。結果として、非破壊性(すなわちB細胞エピトープが保存される)欠失/置換のみが、配列番号11中のアミノ酸24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50及び51の内でなされることが好ましい。この実施形態では、アミノ酸52〜117の全てが欠失されるのが最も好ましい。
【0085】
本発明の別の実施形態は、T細胞応答を始めるMHCクラスII分子に生産的に結合するグレリンのサブ配列を含まないグレリンアナログの提示である。
【0086】
免疫系と関係(engage)して抗グレリン免疫応答を誘導する免疫原の設計のための戦略の理論的根拠は、以下のとおりである:自家タンパク質に対する身体の寛容性を破壊するに十分に強力であるアジュバント中で製剤化された自家タンパク質で免疫する場合、ワクチン接種した個体のいくらかで、誘導された免疫応答は、単なる免疫化中断では中断できない危険があることが留意されてきた。これは、そのような個体で誘導される免疫応答が、自家タンパク質のネイティブのTHエピトープによって駆動されている可能性が最も高く、このことが、ワクチン接種された個体自身のタンパク質が自分自身において免疫化薬剤として機能し得るという有害効果を有するからである。このようにして、自己免疫化状態が確立されてしまう。
【0087】
外来性THエピトープの使用を含む好ましい方法は、本発明者らが知る限り、この効果を生じるという観察はされていないはずである。なぜなら、抗自己免疫応答は外来性THエピトープにより駆動され、この好ましい技術により引き起こされた誘導免疫応答が免疫化中断後に確かに減衰することは、本発明者らが繰り返し証明してきたからである。しかし、理論的には、2、3の個体で、免疫した問題の自己タンパク質の自家THエピトープによっても免疫応答が駆動されることが偶然に起こり得る。これは、比較的豊富である自己タンパク質を考慮する場合、特に関係する。他方、他の治療上関連する自己タンパク質が、体内で、局所的にのみ存在するか、又は非常に低い量で存在する場合、「自己免疫化効果」は可能性がない。しかし、グレリンについては、この効果を排除することができない。
【0088】
したがって、この自己免疫化を回避する1つの非常に簡単な方法は、THエピトープとして働き得るペプチド配列が免疫原に含まれることを完全に回避することである(そして、約9アミノ酸より短いペプチドはTHエピトープとして働き得ないので、より短いフラグメントの使用は、1つの簡単で容易なアプローチである)。したがって、本発明のこの実施形態はまた、そうでなければTHエピトープとして機能し得る標的タンパク質の配列中に保存的置換を単に含む配列を含ませ、免疫原が、確実に、「自己刺激性THエピトープ」として働き得る標的グレリンのペプチド配列を含まなくすることに貢献する。
【0089】
グレリンアナログの免疫系提示の好ましい実施形態は、少なくとも1つのグレリン由来ペプチド(これは、MHCクラスII分子に生産的に結合しない)及び少なくとも1つの外来性Tヘルパーエピトープを含むキメラペプチドの使用を含む。さらに、グレリン由来ペプチドはB細胞エピトープを有することが好ましい。免疫原性アナログが、1以上のB細胞エピトープを含むアミノ酸配列が連続配列又はインサートを含む配列(インサートは外来性Tヘルパーエピトープを含む)のいずれかとして表されるものである場合、特に有利である。
【0090】
再び、そのような実施形態は、適切なB細胞エピトープを有するグレリン領域が、全くMHCクラスII分子に生産的に結合しない短いペプチドストレッチにより構成される場合、最も好ましい。したがって、グレリンの選択された1又は複数のB細胞エピトープは、対象の動物のグレリンの多くとも9個の連続アミノ酸、すなわち、例えば、配列番号9、10、11、12、13又は14中の少なくとも9個の連続アミノ酸を含むべきである。より短いペプチド、例えば、グレリンアミノ酸配列からの多くとも8、7、6、5、4又は3個の連続するアミノ酸を有するものが好ましい。
【0091】
アナログが配列番号9、10、11、12、13又は14の少なくとも1つのサブ配列を含み、少なくとも1つのサブ配列の各々が、独立して、9個の連続するアミノ酸、8個の連続するアミノ酸、7個の連続するアミノ酸、6個の連続するアミノ酸、5個の連続するアミノ酸、4個の連続するアミノ酸及び3個の連続するアミノ酸からなる群より選択されるグレリン由来のアミノ酸ストレッチからなることが好ましい。
【0092】
連続するアミノ酸は、配列番号9、10、11、12、13又は14中の残基1及び/又は2及び/又は3及び/又は4及び/又は5及び/又は6及び/又は7及び/又は8及び/又は9及び/又は10及び/又は11及び/又は12及び/又は13及び/又は14及び/又は15及び/又は16及び/又は17及び/又は18及び/又は19及び/又は20及び/又は21及び/又は22及び/又は23及び/又は24及び/又は25及び/又は26及び/又は27及び/又は28及び/又は29及び/又は30及び/又は31及び/又は32及び/又は33及び/又は34及び/又は35及び/又は36及び/又は37及び/又は38及び/又は39及び/又は40及び/又は41及び/又は42及び/又は43及び/又は44及び/又は45及び/又は46及び/又は47及び/又は48及び/又は49及び/又は50及び/又は51及び/又は52及び/又は53及び/又は54及び/又は55及び/又は56及び/又は57及び/又は58及び/又は59及び/又は60及び/又は61及び/又は62及び/又は63及び/又は64及び/又は65及び/又は66及び/又は67及び/又は68及び/又は69及び/又は70及び/又は71及び/又は72及び/又は73及び/又は74及び/又は75及び/又は76及び/又は77及び/又は78及び/又は79及び/又は80及び/又は81及び/又は82及び/又は83及び/又は84及び/又は85及び/又は86及び/又は87及び/又は88及び/又は89及び/又は90及び/又は91及び/又は92及び/又は93及び/又は94及び/又は95及び/又は96及び/又は97及び/又は98及び/又は99及び/又は100及び/又は101及び/又は102及び/又は103及び/又は104及び/又は105及び/又は106及び/又は107及び/又は108及び/又は109及び/又は110及び/又は111及び/又は112及び/又は113及び/又は114及び/又は115及び/又は116からなる群より選択されるアミノ酸残基から始まることが特に好ましい。ここで、このことは、連続ストレッチの長さ及び対象のグレリンポリペプチドが与えられれば可能である。
【0093】
成熟グレリンのn-オクタノイル化セリンが存在し得る上記の全ての変形体において、n−オクタノイル化が存在しないような方法で免疫原性構築物を製造すること(構築物をペプチド合成により製造するか又はn−オクタノイル化を導入しない発現系を使用するかのいずれかによって)が好ましい。この方法では、構築物はCNSにおいて生理学的に活性でないことが保証される。
【0094】
グレリン及び改変グレリンポリペプチドの製剤化
動物への投与により動物の免疫系へのグレリンポリペプチド又は改変グレリンポリペプチドの提示を行なう場合、ポリペプチドの製剤化は、当該分野において一般に認識されている原則に従う。
【0095】
活性成分としてペプチド配列を含むワクチンの製造は、米国特許第4,608,251号;同第4,601,903号;同第4,599,231号;同第4,599,230号;同第4,596,792号;及び同第4,578,770号(全て本明細書中に参考として援用する)に例示されるように、当該分野において一般的に十分に理解されている。代表的には、このようなワクチンは、液体溶液又は懸濁液としてのいずれかで注射剤として製造される。注射前に液体に溶解又は懸濁するに適切な固体形態が製造されてもよい。調製物は乳化されてもよい。活性免疫原性成分は、しばしば、薬学的に受容可能でその活性成分と相溶性である賦形剤と混合される。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど及びそれらの組合せである。加えて、所望であれば、ワクチンは、少量の補助物質、例えば、湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝化剤又はワクチンの効果を増強するアジュバントを含んでもよい。下記のアジュバントの詳細な説明を参照。
【0096】
ワクチンは、従来は、例えば注射により、表皮下(subcutaneously)、真皮下(subdermally)、表皮内(intracutaneously)、真皮内(intradermally)又は筋肉内のいずれかで非経口的に投与される。他の投与形態に適切な更なる製剤は、坐薬、及びいくつかの場合には、経口、口腔粘膜、舌下、腹腔内、膣内、肛門、硬膜外、脊髄及び頭蓋内用の製剤を含む。坐薬に関しては、伝統的な結合剤及びキャリアは、例えば、ポリアルカレングリコール(polyalkalene glycol)又はトリグリセリドを含んでもよい。このような坐薬は、活性成分を0.5%〜10%の範囲、好ましくは1〜2%の範囲で含む混合物から生成され得る。経口製剤は、例えば医薬品等級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの通常用いられる賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、持続放出製剤又は散剤の形態を取り、10〜95%、好ましくは25〜70%の活性成分を含む。経口製剤に関しては、コレラ毒素が興味深い製剤パートナー(そしてまた接合パートナーの候補)である。
【0097】
ポリペプチドは、中性又は塩の形態としてワクチンに製剤化されてもよい。薬学的に受容可能な塩は、(ペプチドの遊離アミノ基と形成される)酸付加塩を含み、例えば塩酸若しくはリン酸のような無機酸又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸と形成される。遊離カルボキシル基と形成する塩もまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム又は水酸化鉄のような無機塩基及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導され得る。
【0098】
ワクチンは、投薬処方と矛盾のない様式で、治療上有効及び免疫原性である量で投与される。投与すべき量は、処置すべき対象(例えば、その個体の免疫系の免疫応答を開始する能力及び所望する保護の程度を含む)に依存する。適切な投薬範囲は、1回のワクチン接種あたり数百マイクログラムオーダーの活性成分であり、(1〜10mg範囲のより高い量が企図され得るとしても)好ましくは約0.1μg〜2,000μgの範囲、例えば約0.5μg〜2,000μg又は0.5μg〜1,000μgの範囲、好ましくは1μg〜500μgの範囲、特に約10μg〜100μgの範囲である。初回投与及びブースター注射(booster shot)の適切なレジメンもまた変化し得るが、代表的には、初回投与の後に、引き続いて接種又は他の投与をする。
【0099】
適用の様式は広く変化し得る。ワクチン投与の従来法のいずれもが適用可能である。これらには、固形の生理学的に受容可能な塩基又は生理学的に受容可能な分散剤での経口適用、注入などによる非経口的適用が含まれる。ワクチンの投薬量は、投与経路に依存し、ワクチン接種すべき人物の年齢及び抗原の処方に従って変わる。
【0100】
ワクチンのポリペプチドのあるものは、そのワクチン中で十分に免疫原性であるが、その他のもののいくつかについては、ワクチンがアジュバント物質をさらに含む場合に免疫応答が増強される。
【0101】
ワクチンのためにアジュバント効果を達成する種々の方法は、公知である。一般的原則及び方法は、「The Theory and Practical Application of Adjuvants」,1995,Duncan E.S. Stewart-Tull(編),John Wiley & Sons Ltd,ISBN 0-471-95170-6及び「Vaccines: New Generation Immunological Adjuvants」,1995,Gregoriadis Gら(編),Plenum Press,New York,ISBN 0-306-45283-9(共に本明細書中に参考として援用する)に詳述されている。
【0102】
自己抗原に対する自己寛容の破壊を促進することを証明され得るアジュバントを使用することが特に好ましい。実際、これは、非改変グレリンが自家ワクチン中の活性成分として使用される場合、必須である。適切なアジュバントの限定的でない例は、免疫標的化アジュバント(immune targeting adjuvant);免疫調節アジュバント(例えば毒素、サイトカイン及びマイコバクテリア誘導物);オイル製剤;ポリマー;ミセル形成アジュバント;サポニン;免疫刺激複合体マトリクス(ISCOMマトリクス);粒子;DDA;アルミニウムアジュバント;DNAアジュバント;γ−イヌリン;及び被包化アジュバント(encapsulating adjuvant)からなる群より選択される。一般に、アナログ中の第1、第2及び第3の部分として有用な化合物及び薬剤に関連する上記開示は、本発明のワクチンのアジュバントにおける使用にも準用されることに留意すべきである。
【0103】
アジュバントの適用には、緩衝化生理食塩水中0.05〜0.1%溶液として通常使用される水酸化アルミニウム又はリン酸化アルミニウム(ミョウバン)のような薬剤の使用、0.25%溶液として使用される糖の合成ポリマー(例えばCarbopol(登録商標))との混合、70℃〜101℃の範囲の温度でのそれぞれ30秒〜2分間の熱処理によるワクチン中のタンパク質の凝集が含まれ、架橋剤による凝集も可能である。アルブミンに対するペプシン処理抗体(Fabフラグメント)を用いる再活性化による凝集、C. parvumのような細菌細胞又はグラム陰性菌のエンドトキシン若しくはリポ多糖成分との混合、生理学的に受容可能なオイルビヒクル(例えばモノオレイン酸マンナイド(mannide mono-oleate)(Aracel A))中での乳化又はブロック置換体として使用されるペルフルオロカーボンの20%溶液(Fluosol-DA)での乳化も使用してよい。オイル(例えばスクアレン及びIFA)との混合もまた好ましい。
【0104】
本発明によれば、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド)は、DNA及びγ−イヌリンと同様にアジュバントの興味深い候補である。フロイント完全及び不完全アジュバント並びにquillajaサポニン(例えばQuilA及びQS21)も、RIBIと同様に興味深い。更なる可能性のある物として、モノホスホリルリピドA(MPL)、上記のC3及びC3d、並びにムラミルジペプチド(MDP)である。
【0105】
リポソーム製剤もまた、アジュバント効果を付与することが知られており、したがってリポソームアジュバントは本発明に従えば好ましい。
【0106】
また、免疫刺激複合体マトリクス型(ISCOM(登録商標)マトリクス)アジュバントは、本発明によれば、好ましい選択である。なぜなら、特に、この型のアジュバントは、APCによるMHCクラスII発現をアップレギュレートし得ることが示されているからである。ISCOM(登録商標)マトリクスは、(Quillaja saponariaに由来する(選択肢の1つとして、分画された)サポニン(トリテルペノイド)、コレステロール及びリン脂質からなる。免疫原性タンパク質と混合されたとき、得られる微粒子製剤は、ISCOM粒子として知られるものであり、ここでサポニンは60〜70%(w/w)を、コレステロール及びリン脂質は10〜15%(w/w)を、タンパク質は10〜15%(w/w)を構成する。免疫刺激複合体の組成及び使用に関する詳細は、例えば、アジュバントを扱う上記教科書に見出すことができ、また、Morein Bら,1995,Clin.Immunother.3:461-475並びにBarr IG及びMitchell GF,1996,Immunol.and Cell Biol.74:8-25(共に本明細書中に参考として援用する)は、完全な免疫刺激複合体の製造の有用な指示を提供する。
【0107】
アジュバント効果を達成する別の大いに興味深い(したがって好ましい)可能性は、Gosselinら,1992(本明細書中に参考として援用する)に記載される技術を使用することである。簡潔には、本発明の抗原のような対象の抗原の提示は、その抗原を、単球/マクロファージのFcγレセプターに対する抗体(又は抗原結合性抗体フラグメント)に接合することにより増強することができる。特に、抗原と抗FcγRIとの接合体は、ワクチン接種のために免疫原性を増強することが示されている。
【0108】
他の可能性は、グレリン改変体中の第1及び第2の部分の候補として前述した標的化及び免疫調節性物質(すなわちサイトカイン)を使用することを含む。これに関連して、ポリI:Cのようなサイトカインの合成誘導物質(inducer)も可能性のある候補である。
【0109】
適切なマイコバクテリア誘導体は、ムラミルジペプチド、完全フロイントアジュバント、RIBI及びトレハロースのジエステル(例えばTDM及びTDE)からなる群より選択される。
【0110】
適切な免疫標的化アジュバントは、CD4リガンド及びCD40抗体又はその特異的結合性フラグメント(上記の説明を参照)、マンノース、Fabフラグメント及びCTLA-4からなる群より選択される。
【0111】
適切なポリマーアジュバントは、炭化水素(たとえばデキストラン、PEG、澱粉、マンナン及びマンノース);プラスチックポリマー(例えば);及びラテックス(例えばラテックスビーズ)からなる群より選択される。
【0112】
免疫応答を改変するなお別の興味深い方法は、「仮想リンパ節」(VLN)(ImmunoTherapy,Inc.,360 Lexington Avenue,New York,NY 10017-6501により開発された特許に係る医療用デバイス)にグレリン免疫原(選択肢の1つとして、アジュバント及び薬学的に受容可能なキャリア及びビヒクルと併せて)を含ませることである。VLN(薄い管状デバイス)は、リンパ節の構造及び機能を模倣する。皮下へのVLNの挿入は、サイトカイン及びケモカインの急増を伴う殺菌炎症の部位を生じる。T及びB細胞並びにAPCは、危険シグナルに素早く応答し、炎症部位へホーミングし、そしてVLNの多孔性マトリクスに蓄積する。抗原に対する免疫応答の開始に要求される必要抗原用量は、VLNを使用する場合には低下すること及びVLNを使用するワクチン接種により付与される免疫保護は、アジュバントとしてRibiを使用する従来の免疫化を凌ぐことが示されている。この技術は、例えば、「From the Laboratory to the Clinic,Book of Abstracts,October 12th - 15th 1998,Seascape Resort,Aptos,California」のGelber Cら(1998)「Elicitation of Robust Cellular and Humoral Immune Responses to Small Amounts of Immunogens Using a Novel Medical Device Designated the Virtual Lymph Node」に簡潔に記載されている。
【0113】
ワクチンの微小粒子製剤は、多くの場合で、タンパク質抗原の免疫原性を増大させることが示されており、したがって本発明の別の好ましい実施形態である。微小粒子は、抗原と、ポリマー、脂質、糖質又はその粒子を作成するに適切な他の分子との共製剤(co-formulation)として作成されるか、又は微小粒子は、抗原自体のみからなる均質な粒子であることができる。
【0114】
ポリマーベースの微小粒子の例は、ポリマー及び抗原が固体粒子に縮合されているPLGA及びPVPベースの粒子(Gupta RKら,1998)である。脂質ベースの粒子は、そのミセル内に抗原を捕捉する脂質のミセル(いわゆるリポソーム)として作成できる(Pietrobon PJ,1995)。糖質ベースの粒子は、代表的には、適切な分解性糖質(例えば澱粉又はキトサン)から作成される。糖質及び抗原は混合され、ポリマー粒子に使用されるものと同様なプロセスで粒子に縮合される(Kas HSら,1997)。
【0115】
抗原のみからなる粒子は、種々のスプレー及び凍結乾燥技術により作成することができる。本発明の目的に特に適するのは、制御されたサイズの非常に均一な粒子を作成するために使用される超臨界流体技術(York P,1999及びShekunov Bら,1999)である。
【0116】
ワクチンは、年に少なくとも1回、例えば年に少なくとも1、2、3、4、5、6及び12回投与するよう期待される。より具体的には、それを必要とする個体に対して年に1〜12回、例えば年に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12回が期待される。本発明に従う好ましい自家ワクチンの使用によって誘導される記憶免疫は永久でなく、したがって免疫系はアナログで周期的に刺激(challenge)される必要があることは以前に示されている。
【0117】
遺伝的なばらつきのため、異なる個体は、同じポリペプチドに対して種々の強さの免疫応答で反応し得る。したがって、本発明に従うワクチンは、免疫応答を増大させるため、いくつかの異なるポリペプチドを含み得る(外来性T細胞エピトープ導入の選択に関する上記の説明もまた参照)。ワクチンは、その全てが上記のとおりである2以上のポリペプチドを含んでもよい。
【0118】
その結果、ワクチンは、3〜20の異なる改変又は未改変ポリペプチド(例えば3〜10の異なるポリペプチド)を含み得る。しかし、通常は、ポリペプチドの数は、1又は2ポリペプチドのような最小限に維持するように求められる。
【0119】
本発明のグレリンアナログの代わりとして、抗イディオタイプ抗体を又はミモトープさえも使用して免疫することもまた可能である。グレリンエピトープを模倣する抗イディオタイプ抗体を製造するための技術は、当該分野において公知であるが、1つの特に興味深いものは、抗グレリン抗体と反応し、かつ本明細書に一般的に記載したような外来性Tヘルパーエピトープの導入によって改変されている自家抗イディオタイプ抗体の使用を含む。ミモトープは、グレリンに特異的に結合する抗体に対してファージディスプレイでスクリーニングされるランダムペプチドのライブラリから単離することができる。
【0120】
核酸ワクチン接種
ペプチドベースのワクチンの古典的投与の代わりとして、核酸ワクチン接種の技術(「核酸免疫化」、「遺伝免疫化(genetic immunisation)」及び「遺伝子免疫化(gene immunisation)」としても知られる)は多くの魅力的な特徴を提供する。
【0121】
第1に、伝統的なワクチンアプローチとは対照的に、核酸ワクチン接種は、免疫原性薬剤の資源消費的大規模生産(例えば、改変グレリンを産生する微生物の産業的規模の醗酵の形態の)を必要としない。さらに、免疫原の精製及び再折り畳みスキームを考案する必要がない。最後に、核酸ワクチン接種は、導入した核酸の発現産物の産生のために、ワクチン接種した個体の生化学的装置を頼るので、発現産物の最適な翻訳後プロセシングが起こると期待される。これは、自家ワクチン接種の場合に特に重要である。なぜなら、上記のように、元のグレリンB細胞エピトープの相当の割合が、改変分子中で保存されるべきであり、そしてB細胞エピトープは、原則として、任意の(生体)分子(例えば糖質、脂質、タンパク質など)の部分によって構成されることが可能であるからである。したがって、免疫原のネイティブのグリコシル化及び脂質化パタンは、全体の免疫原性にとって非常に重要であり得、このことは免疫原を産生する宿主を有することによって保証されると期待される。
【0122】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、改変グレリンをコードする核酸を動物の細胞に導入し、そうしてその細胞による導入核酸のインビボ発現を得ることによって免疫系にその改変グレリンを提示することを含む。
【0123】
この実施形態では、導入核酸は、好ましくは、裸のDNA、荷電又は非荷電脂質を用いて製剤化されたDNA、リポソーム中に製剤化されたDNA、ウイルスベクターに含まれるDNA、トランスフェクション促進タンパク質又はポリペプチドを用いて製剤化されたDNA、標的化タンパク質又はポリペプチドを用いて製剤化されたDNA、カルシウム沈降剤を用いて製剤化されたDNA、不活性キャリア分子とカップリングさせたDNA、ポリマー(例えばPLGA(WO 98/31398に記載された微小被包化(microencapsulation)技術を参照)又はキチン若しくはキトサン)中に被包化されたDNA及びアジュバントを用いて製剤化されたDNAの形態であり得るDNAである。これに関連して、伝統的なワクチン製剤化でアジュバントを使用することに関する事実上全ての考慮すべき事項は、DNAワクチンの製剤化に適用されることが留意される。したがって、ポリペプチドベースのワクチンに関するアジュバントの使用に関連する本明細書中の全ての開示は、核酸ワクチン接種技術におけるそれらの使用に準用される。
【0124】
上記で詳述したポリペプチドベースのワクチンの投与経路及び投与スキームに関して、これらもまた、本発明の核酸ワクチンに適用可能であり、ポリペプチドのための投与経路及び投与スキームに関する上記の全ての説明は、核酸に準用される。これには、核酸ワクチンは、静脈内及び動脈内に適切に投与することができることが加えられるべきである。さらに、核酸ワクチンは、いわゆる遺伝子銃の使用により投与することができ、したがってこの様式及び等価な様式の投与もまた本発明の一部と見なされることは当該分野において周知である。最後に、核酸の投与におけるVLNの使用は、良好な結果を生じることが報告されており、したがってこの特別な様式の投与は特に好ましい。
【0125】
さらに、免疫薬剤として使用する核酸は、例えば有用なアジュバントとして説明したサイトカインのような上記の免疫調節物質の形態で、第1、第2及び/又は第3の部分をコードする領域を含むことができる。この実施形態の好ましい形は、異なるリーディングフレームに又は少なくとも異なるプロモーターの制御下に、アナログのコード領域及び免疫調節剤(immunomodulator)のコード領域を有することを含む。これにより、アナログ又はエピトープが、免疫調節剤との融合パートナーとして産生されることが回避される。或いは、2つの異なるヌクレオチドフラグメントを使用することができる。しかし、これは、同じ分子中に含まれる両方のコード領域を有するときの確実な共発現の利点のため、比較的好ましくない。
【0126】
したがって、本発明はまた、グレリンに対する抗体の産生を誘導する組成物に関し、この組成物は、
− 本発明の核酸フラグメント又はベクター(下記のベクターの説明を参照)、及び
− 上記のような薬学的及び免疫学的に受容可能なビヒクル及び/又はキャリア及び/又はアジュバント
を含む。
【0127】
正常な状況下、グレリン変形体をコードする核酸は、発現がウイルスプロモーターの制御下にあるベクターの形態で導入される。本発明に従うベクター及びDNAフラグメントのより詳細な説明に関しては、下記の説明を参照。また、核酸ワクチンの製剤化及び使用に関する詳細な開示は、入手可能である(Donnelly JJら,1997,Annu.Rev.Immunol.15:617-648及びDonnelly JJら,1997,Life Sciences 60:163-172(共に本明細書中に参考として援用する)を参照)。
【0128】
生ワクチン
免疫系へ改変グレリンの提示をするための第3の選択肢は、生ワクチン技術の使用である。生ワクチン接種において、免疫系への提示は、動物に、改変グレリンをコードする核酸フラグメント又はそのような核酸フラグメントを組み込まれたベクターで形質転換された非病原性微生物を投与することによって行なわれる。非病原性微生物は、(継代又は組換えDNA技術による病原性発現産物の除去によって減弱させた)任意の減弱細菌株、例えばMycobacterium bovis BCG.、非病原性Streptococcus spp.、E. coli、Salmonella spp.、Vibrio cholerae、Shigellaなどであり得る。先行技術水準の生ワクチンの製造を扱う総説は、例えばSaliou P,1995,Rev.Prat.45:1492-1496及びWalker PD,1992,Vaccine 10:977-990(共に本明細書中に参考として援用する)に見出すことができる。このような生ワクチンで使用される核酸フラグメント及びベクターについての詳細に関しては、下記の説明を参照。
【0129】
細菌性生ワクチンの代わりとして、下記で説明する本発明の核酸フラグメントを、非ビルレントウイルスワクチンベクター(例えば、ワクシニア株又は他の任意の適切なポックスウイルス)に組み込むことができる。
【0130】
通常は、非病原性微生物又はウイルスは動物に1回だけ投与されるが、特定の場合には、保護免疫を維持するために、生涯に1回より多く微生物を投与する必要があり得る。ポリペプチドワクチンについて上記で詳述したスキームのような免疫化スキームは、生又はウイルスワクチンを使用するとき、有用であると考えられる。
【0131】
或いは、生又はウイルスワクチン接種は、事前又は事後のポリペプチド及び/又は核酸ワクチン接種と組み合わされる。例えば、生又はウイルスワクチンでの一次免疫化後に、引き続いてポリペプチド又は核酸アプローチを使用するブースター免疫化を行なうことができる。
【0132】
微生物又はウイルスは、例えば有用なアジュバントとして説明したサイトカインのような上記の免疫調節物質の形態で、第1、第2及び/又は第3の部分をコードする領域を含む核酸で形質転換することができる。この実施形態の好ましい形は、異なるリーディングフレームに又は少なくとも異なるプロモーターの制御下に、アナログのコード領域及び免疫調節剤のコード領域を有することを含む。これにより、アナログ又はエピトープが、免疫調節剤との融合パートナーとして産生されることが回避される。或いは、形質転換剤として2つの異なるヌクレオチドフラグメントを使用することができる。当然のことではあるが、同じリーディングフレームに第1及び/又は第2及び/又は第3の部分を有することは、発現産物として、本発明のアナログを提供することができ、そのような実施形態は、本発明によれば特に好ましい。
【0133】
疾患処置及び他の設定における本発明の方法の使用
上記から明らかなように、グレリンに対するワクチン接種は、それが必要な個体において、過剰な体脂肪を低下させるための効果的な手段を提供すると期待される。さらに、グレリンレセプター(GSH-R)及びグレリンの共発現は、前立腺ガン細胞で確かに起こることが示されている(Jeffery PLら,2002,J Endocrinol,172(3):R7-11)。GSG-Rの発現はまた、いくつかの内分泌腫瘍で報告されており(Volante Mら,2002 J Clin Endocrinol Metab,87(3):1300-8)、Papotti Mら(2001,J Clin Endocrinol Metab,86(10):5052-9)は、胃カルチノイドの大部分(75%)及び腸内分泌腫瘍の25%が、グレリンについて免疫反応性であったことを報告している。換言すれば、本発明の方法は、肥満の処置並びにグレリン関連及びグレリンレセプター関連ガンの処置として行い得る。
【0134】
非常に低量の循環性グレリンは、食物に対する関心の喪失を生じ得、そのような低グレリン濃度を有する個体は、必要なときに食事をする意欲を有しないことに留意しなければならない。したがって、本明細書中で示唆するヒトの処置は、処置を受けている人物が確実に必要な栄養を摂取するように、管理された食事療法を伴わなければならないと考えられる。同時に、体重減少の速度は、経時の体重減少が劇的であり過ぎることを回避するために、注意深くモニターすべきであり、処置される被検体は、確実に、筋肉量の保持などを目的とする身体的運動を行なうべきである。
【0135】
ラットにおいて自家グレリンに対する免疫応答を誘導するために免疫原として使用したラットグレリンの数種の免疫原性変形体を用いた実験を実施例で報告する。予測したように、免疫化は、ラットにおいて、自家ラットグレリンと反応性の高力価抗体の誘導を生じた。しかし、驚くべきことに、これらの高抗体価は、これらのラットにおける循環性グレリンレベルの増大を伴い、このことはまた、試験した全てのラットにおける体重の増大と相関した。体重増大が筋肉量、体脂肪又はその両方の増大に起因したのかどうかは、未だ不明である。
【0136】
これらの効果は一般的現象を構成し、免疫化に応答してグレリンの血清レベルの増大を(単独で又は任意の組合せで)説明できるいくつかの説明が存在するとは予想されない:
− グレリンによりアップレギュレートされる分子の濃度に応答してグレリン産生を当然に調節するネガティブフィードバックループの存在、
− 誘導された抗グレリン抗体のいくつかの、調節性分子への結合についてグレリンと競合するレセプターに対する直接効果、
− 誘導された抗グレリン抗体のいくつかによる、通常はグレリン結合性タンパク質により活性化されるエフェクター分子の活性化、これによりグレリン産生が刺激される、
− アクセス可能なグレリンのより大きなプール及びおそらくはまたグレリンの延長した血清半減期を導くグレリン結合性抗体の存在(すなわち、グレリンのコンパートメント化)による血流中の総血清グレリンのアップコンセントレーション(up-concentration)、
− 抗体のいくつかによる、グレリンと、グレリン発現などの制御に関与する「センサレセプター」又は「デコイレセプター」との間の相互作用に対する阻止効果。
【0137】
これら可能性のある説明のいずれも、本実験に基づいて排除することができる。特に、実施例で試験した全ての構築物は成熟ラットグレリンの完全配列を含むことは注目に値する。このことは、全ての可能なグレリンB細胞エピトープに対する抗体が、免疫化ラットの血清中に存在すると予測されるはずであることを意味する。そして、例えば、グレリンの見かけのアップレギュレーションが、抗体がグレリン結合性分子又はレセプターと相互作用する部位に結合する結果であれば、本明細書で開示する多くのグレリン構築物は、グレリン産生に対する刺激効果を有する抗体の誘導を導かず、そのことにより、これらの構築物は、最初に予測されたグレリンのダウンレギュレーションに導く。
【0138】
或いは、この効果が、単純に、血清中のグレリンの利用可能な総量の拡大及び血清半減期の延長の結果であれば、このことは、自家タンパク質及び他の分子に対するワクチン接種を使用したときの全く新しい治療アプローチを開く。例えば、グレリンのようないくつかのホルモンは、標的組織でその効果を発揮することができる前に、抗体に関して透過性でない障壁を横切る必要がある。そのような分子に対して能動的に免疫するとき、その分子(抗体が結合した及び遊離の)の血清レベル及びそれらの半減期は増大し、それにより、アクセス可能な分子のより大きなプールを導く。標的器官のレセプターに結合した分子と血清中の総プールとの間の均衡状態のため、効果は、逆説的に、その分子によって発揮される刺激の正味の増大である。なぜなら、より大量の分子が抗体不透過性障壁を横断することができるからである。したがって、その分子に結合する抗体の存在は、その分子により発揮される効果の増大を導く。この概念は、新規であると考えられ、特定分子の血清プールが増大し得る他の技術(その分子に結合する可溶性レセプターの投与、その分子に結合するモノクローナル抗体の投与など)を使用して適用することもできる。
【0139】
いずれにせよ、これら特別な知見は、グレリンに対する免疫化の予期されない使用(すなわち、グレリンレベルの増大を目的とする状態での使用)を同定した。食欲不振及び悪液質のような状態は、以前、心不全のような心血管疾患と同様に、グレリン療法の適応症として示唆されていた。このような疾患及び状態は全て、抗グレリン免疫応答の誘導が循環グレリンレベルの増大を導く本発明の実施態様の目的である。
【0140】
さらに、酪農業でこの予期されない観点を利用することも目的とする。乳牛並びにその他の脂肪蓄積及び脂肪産生が対象の酪農産物の味及び質に重要である多くの動物において脂肪の産生を増大させることは価値あることである。
【0141】
また、グレリンは、成長ホルモンの放出の刺激物質であることが知られているので、成長ホルモン産生の増大の達成を目的とする状態又は状況で、本発明の方法は、成長ホルモンの反復投与を回避できる選択肢の1つを与える。このような適用は、家畜で成長を誘導すること、心不全を有する患者で生存を延長すること及び「抗老化」薬物としての使用に関して上述したように、体外受精(GH処置がアジュバント療法(adjuvating therapy)として示唆される)に使用すること、創傷治癒で使用すること(例えば重度の火傷の後)及び重度のトラウマの処置に一般に使用することを含む。
【0142】
本発明のペプチド、ポリペプチド及び組成物
上記から明らかなように、本発明は、グレリン抗原に対して個体を免疫するという着想に基づく。そのような免疫化を得る好ましい方法は、グレリンの改変体を使用し、そのことによって当該分野において以前には開示されていなかった分子を提供することである。
【0143】
本明細書で説明する改変グレリン分子は、それ自体発明であると考えられ、したがって本発明の重要な一面は、そのアナログを用いて動物を免疫すると非改変グレリンペプチドと交差反応する抗体の産生が誘導されるという結果を有する改変が導入されている動物グレリン由来のグレリンアナログに関連する。好ましくは、改変の性質は、改変したグレリンを使用する本発明の方法の種々の実施形態を説明するときに上述した改変のタイプと一致する。したがって、改変グレリン分子に関して本明細書中に提示したいずれの開示も、本発明のグレリンアナログを記載する目的に関連し、そのような開示はいずれも、これらのアナログの記述に準用される。
【0144】
好ましい改変グレリン分子は、グレリン又はその少なくとも10アミノ酸長のサブ配列と少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチドを生じる改変を含むことに留意しなければならない。より高い配列同一性(例えば、少なくとも75%又は少なくとも80%若しくは85%はなおさら)が好ましい。タンパク質及び核酸についての配列同一性は、(Nref−Ndif)×100/Nref(式中、Ndifは、整列したときに2つの配列で非同一の残基の総数であり、Nrefは一方の配列の残基の数である)として算出できる。したがって、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATCと75%の配列同一性を有する(Ndif=2及びNref=8)。
【0145】
本発明はまた、本発明の方法の実施に有用な組成物に関する。したがって、本発明はまた、動物において自己タンパク質であるグレリンポリペプチド又はそのようなグレリンペプチドのサブ配列の免疫学的有効量を含む免疫原性組成物に関し、ここで、グレリンポリペプチド又はサブ配列は、グレリンポリペプチドに対するその動物の自己寛容を破壊するために、免疫学的に受容可能なアジュバントと共に製剤化され、組成物は、薬学的及び免疫学的に受容可能なビヒクル及び/又はキャリアをさらに含む。換言すれば、本発明のこの一面は、本発明の方法の実施形態に関連して記載された天然に存在するグレリンポリペプチド/サブ配列の製剤に関する。
【0146】
本発明はまた、免疫学的有用量の上記で規定したグレリンアナログを含む免疫原性組成物に関し、組成物は、薬学的及び免疫学的に受容可能な希釈剤及び/又はビヒクル及び/又はキャリア及び/又は賦形剤並びに必要に応じてアジュバントをさらに含む。換言すれば、本発明のこの一面は、基本的には本明細書中で上述したような改変グレリンの製剤に関する。したがって、アジュバント、キャリア及びビヒクルの選択は、自家グレリンに対して免疫する本発明の方法で使用するための改変及び非改変グレリンの製剤を言うときに上記で説明したことと一致する。
【0147】
ポリペプチドは、当該分野において周知の方法に従って製造される。より長いポリペプチドは、通常、組換え遺伝子技術により製造され、この技術には、適切なベクターへのグレリンアナログをコードする核酸配列の導入、そのベクターでの適切な宿主細胞の形質転換、その核酸配列の発現、宿主細胞又はその培養上清からの発現産物の回収及び引き続く精製並びに必要に応じて更なる改変(例えば、再折り畳み又は誘導体化)が含まれる。
【0148】
より短いペプチドは、好ましくは、固相又は液相ペプチド合成の周知技術により製造される。しかし、この技術における最近の進歩は、これらの手段による完全長ポリペプチド及びタンパク質の製造を可能にし、したがって合成手段により長い構築物を製造することもまた、本発明の範囲内である。
【0149】
本発明の核酸フラグメント及びベクター
改変グレリンポリペプチドは、組換え遺伝子技術により、また化学合成又は半合成によっても製造することができることは上記開示から明らかである。後者の2つは、改変がタンパク質キャリア(例えば、KLH、ジフテリア毒素、破傷風及びBSA)及び非タンパク質性分子(例えば糖質ポリマー)にカップリングすることからなるとき、及び当然のこととしてまた改変がグレリンポリペプチドに由来するペプチド鎖に側鎖(side chain)又は側基を付加することを含むとき、特に適切である。
【0150】
組換え遺伝子技術のために、及び当然のこととしてまた核酸免疫化のために、改変グレリンをコードする核酸フラグメントは、重要な化学生成物である。したがって、本発明の重要な一面は、グレリンアナログ(すなわち、融合パートナーが付加され若しくは挿入されている天然のグレリン配列を含むグレリン由来ポリペプチドか、又は好ましくは外来性T細胞エピトープが挿入及び/若しくは付加により、好ましくは置換及び/若しくは欠失により導入されているグレリン由来ポリペプチドのいずれか)をコードする核酸フラグメントに関する。本発明の核酸フラグメントは、DNA又はRNAフラグメントのいずれかである。
【0151】
本発明の核酸フラグメントは、通常、適切なベクターに挿入されて、本発明の核酸フラグメントを有するクローニング又は発現ベクターを形成する。そのような新規なベクターもまた本発明の一面である。本発明のこれらのベクターの構築に関する詳細は、下記に形質転換した細胞及び微生物に関連して説明する。ベクターは、適用の目的及びタイプに依存して、プラスミド、ファージ、コスミド、ミニ染色体又はウイルスの形態であり得るが、特定の細胞において一時的にのみ発現される裸のDNAもまた重要なベクターである。本発明の好ましいクローニング及び発現ベクターは、自律複製ができ、それにより高レベル発現のために高コピー数を、又はその後のクローニングのために高レベル複製を可能にする。
【0152】
本発明のベクターの一般的な概要は、5'→3'方向に及び作動可能な連結で、以下の特徴を含む:本発明の核酸フラグメントの発現を駆動するためのプロモーター、必要に応じてポリペプチドフラグメントの(細胞外相への又は該当する場合周辺質中への)分泌又は膜への組み込みを可能にするリーダーペプチドをコードする核酸配列、本発明の核酸フラグメント及び必要に応じてターミネーターをコードする核酸配列。産生体株(producer strain)又は細胞株において発現ベクターを用いて作動させる場合、形質転換細胞の遺伝的安定性のためには、ベクターは、宿主細胞中に導入されたとき、その宿主細胞のゲノムに組み込まれることが好ましい。これに対し、動物におけるインビボ発現を行なうために使用するベクターを用いる場合(すなわち、DNAワクチン接種においてベクターを使用する場合)、ベクターは宿主細胞ゲノムに組み込まれ得ないことが安全上の理由から好ましい。代表的には、裸のDNA又は非組み込みウイルスベクターが使用される。それらの選択は当業者に周知である。
【0153】
本発明のベクターは、本発明の改変グレリンポリペプチドを産生するように宿主細胞を形質転換するために使用する。このような形質転換細胞(これもまた本発明の一面である)は、本発明の核酸フラグメント及びベクターの増殖に使用するか又は本発明の改変グレリンポリペプチドの組換え産生に使用する培養細胞又は細胞株であり得る。或いは、形質転換細胞は、改変グレリンの分泌又は細菌膜若しくは細胞壁中への組み込みをもたらすために核酸フラグメント(単一コピー又は多コピー)が挿入されている適切な生ワクチン株であり得る。
【0154】
本発明の好ましい形質転換細胞は、細菌(例えば、Escherichia種[例えばE. coli]、Bacillus種[例えばBacillus subtilis]、Salmonella種又はMycobacterium種[好ましくは非病原性の、例えばM. bovis BCG])、酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae)及び原生動物のような微生物である。或いは、形質転換細胞は、多細胞性生物、例えば真菌、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞に由来する。最も好ましいのは、ヒトに由来する細胞である(下記の細胞株及びベクターの説明を参照)。最近の結果により、本発明のグレリンアナログの組換え産生に、市販のDrosophila melanogaster細胞株(Invitrogenから入手可能なSchneider 2 (S2)細胞株及びベクター系)の使用が非常に有望であることが示されており、したがってこの発現系は特に好ましい。また、spodoptera細胞(SF細胞)SF9及びSF21も好ましい。
【0155】
クローニング及び/又は最適化された発現のために、形質転換細胞は、本発明の核酸フラグメントを複製できることが好ましい。核酸フラグメントを発現する細胞は、本発明の好ましい有用な実施形態である。これらは、改変グレリンの小規模若しくは大規模な製造に、又は非病原性細菌の場合には、生ワクチン中のワクチン構成成分として、使用することができる。
【0156】
形質転換細胞により本発明の改変グレリンを産生する場合、決して必須ではないが、発現産物が培養培地中に運び出されるか又は形質転換細胞の表面に運ばれるかのいずれかであることが好都合である。
【0157】
効果的な産生細胞が同定されている場合、それに基づいて、本発明のベクターを有し、改変グレリンをコードする核酸フラグメントを発現する安定な細胞株を樹立することが好ましい。好ましくは、この安定な細胞株は、本発明のグレリンアナログを分泌又は保有し、このことによりその精製が容易になる。
【0158】
一般に、宿主細胞と適合する種に由来するレプリコン及び制御配列を含むプラスミドベクターが、宿主との関係で使用される。ベクターは、普通、複製部位及び形質転換細胞中で表現型選択を提供することができる識別配列(marking sequence)を有する。例えば、E.coliは、代表的には、pBR322(E. coli種由来のプラスミド(例えばBolivarら,1977を参照)を使用して形質転換する。pBR322プラスミドは、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性遺伝子を含み、したがって形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBRプラスミド又は他の微生物プラスミド若しくはファージは、発現のために原核細胞微生物により使用され得るプロモーターもまた含むか、又は含むように改変されなければならない。
【0159】
原核細胞組換えDNA構築で最も普通に使用されるプロモーターには、B-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)及びラクトースプロモーター系(Changら,1978;Itakuraら,1977;Goeddelら,1979)並びにトリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら,1979;欧州特許出願第0 036 776号)が含まれる。これらが最も通常に使用されるが、他の微生物プロモーターが発見、利用され、これらのヌクレオチド配列に関する詳細が公表されており、当業者がこれらを機能的にプラスミドベクターと連結することが可能である(Siebwenlistら,1980)。原核生物からの特定の遺伝子は、E. coliにおいて、自身のプロモーター配列から効率的に発現され得、人工的手段により別のプロモーターを付加する必要が排除される。
【0160】
原核生物に加えて、真核微生物(例えば酵母培養物)もまた使用してもよいが、ここで、そのプロモーターは発現を駆動することができなければならない。Saccharomyces cerevisiae又は通常のパン酵母が、真核微生物の中で最も普通に使用されるが、多くの他の株が通常に利用可能である。Saccharomycesにおける発現のためには、例えばプラスミドYRp7が通常使用される(Stinchcombら,1979;Kingsmanら,1979;Tschemperら,1980)。このプラスミドは、トリプトファン中で増殖する能力を欠く酵母の変異株(例えばATCC No.44076又はPEP4-1(Jones,1977))についての選択マーカーを提供するtrpl遺伝子を既に含んでいる。その酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrpl損傷の存在は、トリプトファンの非存在下での増殖によって形質転換を検出するための効果的な環境を提供する。
【0161】
酵母ベクター中で適切なプロモーター配列には、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ用プロモーター(Hitzmanら,1980)、又は他の糖分解酵素用(Hessら,1968;Hollandら,1978)、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ及びグルコキナーゼ用のプロモーターが含まれる。適切な発現プラスミドの構築において、これらの遺伝子に関連する終止配列もまた、mRNAのポリアデニル化及び終止を提供するために、発現ベクター中に、発現が望まれる配列の3'で連結される。
【0162】
増殖条件により制御される転写という追加の利点を有する他のプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素及び上記のグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ並びにマルトース及びガラクトース利用を担う酵素のプロモーター領域である。酵母適合性プロモーター、複製起点及び終止配列を含む任意のプラスミドベクターが適切である。
【0163】
微生物に加えて、多細胞生物に由来する細胞の培養物もまた宿主として使用し得る。原則として、任意のそのような細胞培養物が、脊椎動物培養物か無脊椎動物培養物かにかかわらず、機能し得る。しかし、脊椎動物細胞に大きな関心が注がれており、培養(組織培養)での脊椎動物の増殖は、近年、慣用の手順となっている(Tissue Culture,1973)。このような有用な宿主細胞株の例は、VERO及びHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株及びW138、BHK、COS-7 293、Spodoptera frugiperda(SF)細胞(例えばProtein Sciences(1000 Research Parkway,Meriden,CT 06450,U.S.A)及びInvitrogenから完全発現系として市販されている)及びMDCK細胞株である。本発明において、特に好ましい細胞株は、Invitrogen(PO Box 2312,9704 CH Groningen,The Netherlands)から入手可能なS2である。
【0164】
そのような細胞用の発現ベクターは、普通、(必要であれば)複製起点、発現すべき遺伝子の前に位置するプロモーター並びに任意の必要なリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位及び転写ターミネーター配列を含む。
【0165】
哺乳動物細胞における使用には、発現ベクターに対する制御機能は、しばしば、ウイルス物質により提供される。例えば、通常使用するプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2に由来し、最も頻繁にはシミアンウイルス40(SV40)に由来する。SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、共にそのウイルスからSV40ウイルスの複製起点もまた含むフラグメントとして容易に得られる(Fiersら,1978)ので、特に有用である。そのウイルスの複製起点に位置するHindIII部位からBglI部位へ向けて伸びる約250bp配列が含まれているのであれば、より小さい又はより大きいSV40フラグメントもまた使用し得る。さらに、所望の遺伝子配列に通常結合しているプロモーター又は制御配列を利用することも、そのような制御配列が宿主細胞系と適合性であれば可能であり、そしてしばしば望ましい。
【0166】
複製起点は、例えばSV40若しくは他のウイルス(例えばポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)に由来し得る外因性起点を含むようにベクターを構築することにより提供されてもよいし、又は宿主細胞の染色体複製機構により影響されてもよい。ベクターが宿主細胞の染色体に組み込まれる場合、しばしば後者で十分である。
【0167】
有用なグレリンアナログの同定
ネイティブのグレリンの全ての変形体又は改変が、動物において、その天然形態と交差反応する抗体を誘発する能力を有するわけではないことは、当業者に明らかである。しかし、本明細書中で説明した免疫学的反応性についての最小限の要件を充足する改変グレリン分子についての効果的な標準スクリーニングを設定することは困難ではない。したがって、本発明の別の一面は、非改変グレリンポリペプチドが自己タンパク質である動物種において、その非改変グレリンに対する抗体を誘導できる改変グレリンポリペプチドの同定方法に関し、その方法は、ペプチド合成又は分子生物学的手段により、互いに異なる改変グレリンポリペプチドのセット(ここでは、その動物種のグレリンポリペプチドのアミノ酸配列においてアミノ酸が付加、挿入、欠失又は置換されており、これによりセット中にT細胞エピトープを含みかつその動物種に対して外来性であるアミノ酸配列が生じている)を調製し、又は互いに異なる改変グレリンポリペプチドのセットをコードする核酸フラグメントのセットを調製し、その動物種による非改変グレリンに対する抗体産生を誘導する能力についてセットのメンバーを試験し、その動物種において非改変グレリンに対する抗体産生を有意に誘導するセットのメンバーを同定し、必要であれば単離し、又はその動物種において非改変グレリンポリペプチドに対する抗体産生を有意に誘導する、核酸フラグメントのセットのメンバーによりコードされるポリペプチド発現産物を同定し必要であれば単離することを含む。
【0168】
本発明に関して、「互いに異なる改変グレリンポリペプチドのセット」は、例えば上記の基準に基づいて(例えば、円偏光二色性、NMRスペクトル及び/又はグレリン線回折パタンの試験との組合せで)選択された非同一改変グレリンポリペプチドの集合である。セットは、数個のメンバーのみからなってもよいが、セットは数百のメンバーを含み得ると企図される。同様に、核酸フラグメントのセットは、各々が同じ様式で選択される改変グレリンポリペプチドをコードする非同一核酸フラグメントの集合である。
【0169】
セットのメンバーの試験は、究極的には、インビボで実施することができるが、本発明の目的を果たす改変分子の数を絞る多くのインビトロ試験を適用することができる。
【0170】
外来性T細胞エピトープ導入のゴールは、T細胞援助によりB細胞応答を支持することであるので、改変グレリンによりT細胞増殖が誘導されることが前提条件である。T細胞増殖は、標準化された増殖アッセイによりインビトロで試験することができる。簡潔には、T細胞について富化されたサンプルを、被検体から取得し、続いて培養中で維持する。培養したT細胞を、予め改変分子を取り込みこれをプロセシングしてそのT細胞エピトープを提示している被検体のAPCと接触させる。T細胞の増殖をモニターし、適切なコントロール(例えばインタクトなネイティブのグレリンをプロセシングしたAPCと接触させた培養中のT細胞)と比較する。或いは、外来性T細胞の認識に応答してT細胞により放出される関連サイトカインの濃度を決定することにより、増殖を測定することができる。
【0171】
セットの少なくとも1つの改変グレリンがグレリンに対して抗体産生を誘導し得る可能性を高くするために、非改変グレリンポリペプチドが自己タンパク質である動物種においてその非改変グレリンに対する抗体を誘導し得る少なくとも1つの改変グレリンポリペプチドを含む免疫原性組成物を製造することができる。その方法は、当該動物種においてグレリンと反応性である抗体の産生を有意に誘導するセットのメンバーを、薬学的及び免疫学的に受容可能なキャリア及び/又はビヒクル及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と、必要に応じて少なくとも1つの薬学的及び免疫学的に受容可能なアジュバントと組み合わせて、混合することを含む。
【0172】
同様に、免疫原として、免疫原性グレリンアナログをコードする核酸フラグメントを含む免疫原性組成物を製造することもまた可能である(上記核酸ワクチン接種の説明を参照)。
【0173】
本発明の上記観点は、最初に多くの互いに異なる本発明の核酸配列又はベクターを製造し、これらを適切な発現ベクター中に挿入し、このベクターで適切な宿主細胞を形質転換し、そして本発明の核酸配列を発現させることにより簡便に実施される。これらの工程の後に、発現産物の単離を続けることができる。核酸配列及び/又はベクターは、PCRのような分子増幅技術の実行を含む方法により又は核酸合成により製造することが好ましい。
【0174】
ポリヒドロキシポリマーへのグレリンのカップリング
Tヘルパーエピトープと、ビヒクルとして作用する非免疫原性ポリマー分子(例えば多価の活性化ポリヒドロキシポリマー)に共有結合的に連結したB細胞エピトープであるか又はこれを含むペプチドとを含む分子が、免疫学的に関係する部分のみを含むワクチン分子として機能し、取得可能である。無差別性の又はいわゆる汎用のTヘルパーエピトープは、例えばワクチンの標的が自己抗原である場合に、使用することができる。さらに、免疫学的応答を増強する要素もまた、ビヒクルに同時にカップリングすることができ、そのことによってアジュバントとして作用し得る。そのような要素は、マンノース、タフトシン、ムラミルジペプチド、CpGモチーフなどであり得、例えば免疫刺激ペプチド又は免疫標的化ペプチドである。そのような場合、ワクチン生成物のその後のアジュバント製剤化は、必要でないこともあり、その生成物は、純水又は生理食塩水で投与され得る。
【0175】
細胞傷害性T細胞(CTL)エピトープをTヘルパーエピトープとカップリングすることにより、CTLエピトープが由来した抗原に特異的なCTLを作成することもまた可能である。APC(例えばマクロファージ)の細胞質ゾルへの生成物の取り込みを促進する要素(例えばマンノース)もまた、ビヒクルに、CTLエピトープ及びTヘルパーエピトープと共に同時にカップリングし、CTL応答を増強することができる。
【0176】
最終生成中のB細胞エピトープ及びTヘルパーエピトープ(P2及びP30)の比は、合成工程でこれらのペプチドの濃度を変化させることにより変えることができる。上記のように、免疫原性分子は、合成工程において、例えばマンノース、タフトシン、CpGモチーフ又は他の免疫刺激物質(明細書中に記載)を(必要であれば、例えばその物質のアミン化誘導体を使用して)炭酸緩衝液に添加することにより、それらでタグ化することができる。
【0177】
不溶性の活性化ポリヒドロキシポリマーを使用して、B細胞エピトープを含むペプチドとTヘルパーエピトープを組み合わせる場合、それは、上記のように、固相合成として実施することができ、最終生成物は、洗浄及び濾過により、回収及び精製することができる。トレシル活性化ポリヒドロキシポリマーにカップリングされる要素(ペプチド、タグなど)は、低pH(例えばpH4〜5)のポリヒドロキシポリマーに添加し、受動拡散により「ゲル」に均等に分布させる。その後、pHをpH9〜10まで上げて、ペプチド及びタグ上の第一級アミノ基とポリヒドロキシポリマー上のトレシル基との反応を開始させることができる。ペプチドと例えば免疫刺激要素とのカップリングの後、ゲルを粉砕して免疫化に適切なサイズの粒子を形成する。
【0178】
したがって、本発明のこの特別な一面は、一般に、目的のタンパク質に由来する少なくとも1つの第1のアミノ酸及び外来性Tヘルパー細胞エピトープを含む少なくとも1つの第2のアミノ酸配列を含む免疫原に関する。ここで、少なくとも1つの第1のアミノ酸配列は、少なくとも1つのB細胞エピトープ及び/又は少なくとも1つのCTLエピトープを含み、少なくとも1つの第1のアミノ酸配列及び少なくとも1つの第2のアミノ酸配列の各々は、薬学的に受容可能な活性化ポリヒドロキシポリマーキャリアにカップリングされている。
【0179】
アミノ酸配列がポリヒドロキシポリマーにカップリングするためには、通常は、ポリヒドロキシポリマーを、アミノ酸配列との必要な連結を形成することができる適切な反応性基で「活性化」することが必要である。
【0180】
用語「ポリヒドロキシポリマー」は、WO 00/05316中と同様な意味、すなわち、ポリヒドロキシポリマーはその出願において具体的に教示されているものと同じ特徴を正確に有することができるという意味を有するとされる。したがって、ポリヒドロキシポリマーは、水溶性又は水不溶性であり得る(したがって免疫原の製造の間で異なる合成工程が必要となる)。ポリヒドロキシポリマーは、天然に存在するポリヒドロキシ化合物及び合成ポリヒドロキシ化合物から選択されることができる。
【0181】
具体的で好適なポリヒドロキシポリマーは、アセタン、アミロペクチン、ガム寒天(gum agar-agar)、アガロース、アルギネート、アラビアガム、カラゲナン、セルロース、シクロデキストリン、デキストラン、ファーセレラン、ガラクトマンナン、ゼラチン、ガティ、グルカン、グリコーゲン、グアー、カラヤ、コンニャク/A(konjac/A)、ローカストビーンガム、マンナン、ペクチン、サイリウム、プルラン、スターチ、タマリンド、トラガント、キサンタン、キシラン及びキシログルカンから選択される多糖である。デキストランが特に好ましい。
【0182】
しかし、ポリヒドロキシポリマーはまた、高度に分岐したポリ(エチレンイミン)(PEI)、テトラチエニレンビニレン、ケブラー(ポリパラフェニルテレフタルアミドの長鎖)、ポリ(ウレタン)、ポリ(シロキサン)、ポリジメチルシロキサン、シリコーン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレン-コ-ビニル酢酸)、ポリ(エチレングリコール)及び誘導体、ポリ(メタクリル酸)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ無水物及びポリオルトエステルから選択することができる。
【0183】
問題のポリヒドロキシポリマー(すなわち活性化前)の(重量)平均分子量は、代表的には、少なくとも500、例えば少なくとも1,000、好ましくは2,500〜2,000,000の範囲、より好ましくは3,000〜1,000,000の範囲、特には5,000〜500,000の範囲である。実施例では、10,000〜200,000の範囲の平均分子量を有するポリヒドロキシポリマーが特に有利であることが示されている。
【0184】
ポリヒドロキシポリマーは、好ましくは、室温で少なくとも10mg/ml、好ましくは少なくとも25mg/ml、例えば少なくとも50mg/ml、特には少なくとも100mg/ml、例えば少なくとも150mg/mlの程度に水溶性である。デキストランは、本明細書に記載のように活性化されたときでさえ、水溶性に関する要件を充足することが知られている。
【0185】
最も興味深いポリヒドロキシポリマーのいくつかについては、未活性化ポリヒドロキシポリマー(すなわち活性化前のネイティブのポリヒドロキシポリマー)のC基(炭素原子)とOH基(水酸基)との比は、1.3〜2.5の範囲、例えば1.5〜2.3の範囲、好ましくは1.6〜2.1の範囲、特には1.85〜2.05の範囲である。何らかの特定の理論にとらわれないが、このような未活性化ポリヒドロキシポリマーのC/OH比は、高度に有利なレベルの親水性を示すと考えられる。ポリビニルアルコール及び多糖は、この要件を充足するポリヒドロキシポリマーの例である。上記の比は、活性化ポリヒドロキシポリマーについて、活性化比はむしろ低くあるべきと概略同様であるべきと考えられる。
【0186】
用語「ポリヒドロキシポリマーキャリア」は、アミノ酸配列を有する免疫原の部分を指すものとする。一般原則として、ポリヒドロキシポリマーキャリアは、アミノ酸配列が例えば免疫原をプロセシングしている抗原提示細胞中のペプチダーゼにより切断され得る外側限界を有する。したがって、ポリヒドロキシポリマーキャリアは、活性化基を有するポリヒドロキシポリマーであり得、ここで、その活性化基とアミノ酸配列との間の結合は、APC中のペプチダーゼにより切断可能である。或いは、ポリヒドロキシポリマーキャリアは、活性化基及び例えばリンカー(例えば単一のL-アミノ酸又は多数のD-アミノ酸)を有するポリヒドロキシポリマーキャリアであり得、ここで、リンカーの最後の部分は、アミノ酸配列に結合でき、APC中のペプチダーゼにより切断され得る。
【0187】
上記のように、ポリヒドロキシポリマーは官能基(活性化基)を有し、官能基はキャリアへのペプチドの固着(anchoring)を促進する。広範囲の適用可能な官能基が当該分野において公知であり、例えばトレシル(トリフルオロエチルスルホニル)、マレイミド、p-ニトロフェニルクロロホルメート、臭化シアン、トシル(p-トルエンスルホニル)、トリフリル(トリフルオロメタンスルホニル)、ペンタフルオロベンゼンスルホニル及びビニルスルホン基である。本発明内の官能基の好ましい例は、トレシル、マレイミド、トシル、トリフリル、ペンタフルオロベンゼンスルホニル、p-ニトロフェニルクロロホルメート及びビニルスルホン基であり、とりわけトレシル、マレイミド及びトシル基が特に該当する。
【0188】
トレシル活性化ポリヒドロキシポリマーは、WO 00/05316の実施例1にデキストランの活性化について記載され又はGregoriusら,J.Immunol.Meth.181(1995) 65-73に記載されているようなトレシルクロライドを使用して製造することができる。
【0189】
マレイミド活性化ポリヒドロキシポリマーは、WO 00/05316の実施例3にデキストランの活性化について記載されているようなp-マレイミドフェニルイソシアネートを使用して製造することができる。或いは、マレイミド基は、ポリヒドロキシポリマー(例えばデキストラン)に、過剰のジアミン化合物(一般にH2N-CnH2n-NH2、式中、nは1〜20、好ましくは1〜8である)(例えば1,3-ジアミノプロパン)でのトレシル活性化ポリヒドロキシポリマー(例えばトレシル活性化デキストラン(TAD))の誘導体化、続いてTADに導入したアミノ基をスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(スルホ-SMCC)、スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、スルホスクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(スルホ-SMPB)、N-γ-マレイミドブチリルオキシ-スクシンイミドエステル(GMBS)又はN-γ-マレイミドブチリルオキシ-スルホスクシンイミドエステルのような試薬と反応させることにより導入し得る。活性化のための異なる試薬及び経路は、マレイミド官能性と活性化が行なわれる親の水酸基(parent hydroxy group)の残りとの間の結合に関して僅かに異なるマレイミド活性化生成物をもたらすが、全ていずれも「マレイミド活性化ポリヒドロキシポリマー」とみなされる。
【0190】
トシル活性化ポリヒドロキシポリマーは、WO 00/05316の実施例2にデキストランの活性化について記載されているようなトシルクロライドを用いて製造することができる。トリフリル及びペンタフルオロベンゼンスルホニル活性化ポリヒドロキシポリマーは、例えば対応する酸塩化物を用いることにより、トシル又はトレシル活性化アナログとして製造する。
【0191】
臭化シアン活性化ポリヒドロキシポリマーは、従来の方法を使用してポリヒドロキシポリマーを臭化シアンと反応させることにより製造することができる。得られる官能基は、通常、ポリヒドロキシポリマーの2つの水酸基を有するシアン酸エステルである。
【0192】
活性化の程度は、遊離水酸基と活性化基(すなわち官能化水酸基)との間の比として表現できる。ポリヒドロキシポリマーの親水性と反応性との間の有利なバランスを得るために、ポリヒドロキシポリマーの遊離水酸基と活性化基との間の比は、250:1と4:1の間であるべきと考えられる。比は、好ましくは100:1と6:1の間、より好ましくは60:1と8:1の間、特には40:1と10:1との間である。
【0193】
本発明に従う一般に適用可能な免疫原を作成する方法での使用に特に興味深い活性化ポリヒドロキシポリマーは、トレシル、トシル及びマレイミド活性化多糖、特にトレシル活性化デキストラン(TAD)、トシル活性化デキストラン(TosAD)及びマレイミド活性化デキストラン(MAD)である。
【0194】
ポリヒドロキシポリマーキャリアとこれに付着するアミノ酸配列との間の結合は、例えばAPC中での抗原のプロセシングで活性なペプチダーゼのようなペプチダーゼにより切断可能であることが好ましい。したがって、少なくとも第1及び少なくとも第2のアミノ酸配列がアミド結合又はペプチド結合を介して活性化ポリヒドロキシポリマーキャリアにカップリングしていることが好ましい。少なくとも第1及び少なくとも第2のアミノ酸配列が各々、それぞれのアミド結合の窒素部分を提供することが特に好ましい。
【0195】
ポリヒドロキシポリマーキャリアは、活性化基がペプチダーゼ切断可能結合の部分を提供すれば、アミノ酸残基を実質的に含まなくてもよい。しかし、上記のように、キャリアはまた、単に、少なくとも1つのL-アミノ酸を含むスペーサーを含んでもよい。にもかかわらず、少なくとも第1及び少なくとも第2のアミノ酸配列は、通常、アミノ酸配列のN末端の窒素を介して、活性化型のポリヒドロキシポリマーに結合している。
【実施例】
【0196】
実施例1
免疫原化ラットグレリンでのラットの免疫化
5つのペプチドを、ペプチド合成装置で標準的な方法により製造した。これらのペプチドは、ペプチド1(IgEに由来しP2及びP30エピトープ(それぞれ配列番号7及び8)も含む無関係のコントロールペプチド)、ペプチド2(成熟ラットグレリン(配列番号9)の残基24〜53)、及びペプチド3〜5(すなわちそれぞれ配列番号15〜17)であった。
【0197】
これら5つのペプチドを5群(n=10)の雄性Sprague-Dawleyラットに注射した。総量400μl(アジュバントを含む;初回免疫化では完全フロイントアジュバント(CFA)、ブースター免疫化では不完全フロイントアジュバント(IFA))に100μgのペプチドを含む4回の注射を皮下に3週間の間隔で行なった。
【0198】
血液サンプルを研究開始時の18時間の絶食後及び各注射の1週間後に採取した。
血液サンプルを、Phoenixの市販RIAキット(Ghrelin (Rat Mouse) - RIA Kit)を製造業者の指示に従って使用して血漿ラットグレリンについて分析した(図4を参照)。ELISAを用いて抗グレリン価を測定し、ここでwtラットグレリンに対する抗グレリン抗体(Bachem)の結合をHRP結合抗ラット免疫グロブリン二次抗体(Dako)で検出した(図1を参照)。
【0199】
体重並びに食餌及び水の摂取を1週間に1度測定した(それぞれ図2及び3を参照)。
結果より、ペプチド3〜5はラットグレリンと反応性の抗体を誘導し得る一方で、無関係のコントロール(ペプチド1)及び野生型グレリン(ペプチド2)は誘導し得ないことが示される。しかし、驚くべきことに、抗体誘導は、免疫化ラットの血清中のグレリンレベルの増大及び体重の増大と相関する一方、5群のラットの食餌摂取は有意に異ならなかった。
したがって、体重の増大は、食餌摂取の増大に帰すことができず、おそらく、グレリンに対する抗体を示す動物における代謝の変化に帰すに違いない。
【0200】
実施例2
更なる変形体を用いたワクチンパイロット研究
実施例1の研究は、基本的には、いくつかの他の候補ワクチン分子で行なうことができる。グレリン自家ワクチンの例示的な候補は、例えば、(例えば、WO 95/05849に詳細に記載される)上記概念に従って、グレリン野生型タンパク質(又はそのプロペプチド変形体)への既知の無差別性T細胞エピトープを用いる置換又は挿入により構築することができる。置換はペプチド置換であり、ここで、挿入するペプチドは、野生型配列の欠失させたペプチドと同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。
【0201】
インビボ試験及びスクリーニングによる概念の初期の証明のために、配列番号1〜5に記載の構築物をマウスで使用してもよい。対応する変形体は、PADRE配列を置換したP2及びP30エピトープで作成できる。
【0202】
これらの構築物は、固相ペプチド合成により合成的に製造する。このことは、(成熟グレリン中の)セリン-3のn-オクタノイル化がグレリンの生物学的活性に必須であるようなので、これらの構築物が成熟グレリンの生物学的活性を欠いていることを確実にする。当然のことではあるが、このことはまた、この特別の翻訳後修飾を許さない組換え発現系を利用することによっても達成することができる。
【0203】
実験動物の集団を、(完全フロイントアジュバントで製剤化した構築物で初回刺激し(prime)、不完全フロイントアジュバントで製剤化したブーストする)標準的なプロトコルに従ってワクチン接種する。例えば、標準的な手順に従って製剤化されたこれら5つの構築物の最適化された量及び動物を用いて実施例1で使用したものを、経時的な体重の増加/減少に関してコントロール群と比較する。体重の減少(及びまたグレリンレベルの低下)を生じる変形体は、体重減少が重要である適応症のための候補として適切である一方、実施例1の結果を真似る変形体は、本明細書に記載した他の適用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】自家グレリンに対して免疫したラットでの抗グレリン抗体価を示す。
【図2】免疫化ラットの体重を示す。
【図3】免疫化ラットの食物摂取を示す。
【図4】ワクチン接種動物の血漿グレリンレベルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− グレリンポリペプチド又はサブ配列での動物の免疫化が該動物の自家グレリンに対する抗体の産生を誘導するように製剤化された少なくとも1つのグレリンポリペプチド又はそのサブ配列、及び
− グレリンアナログでの動物の免疫化がグレリンに対する抗体の産生を誘導するように、同じ分子中に少なくとも1つのグレリンB細胞エピトープ及びグレリンに由来しない少なくとも1つの化学的部分を組み込んでいる少なくとも1つのグレリンアナログ
からなる群より選択される免疫原の免疫学的有効量を動物の免疫系に提示させることからなり、ヒトを含む動物において自家グレリンに対して免疫することによりグレリンをダウンレギュレートすることからなる、過剰な体脂肪蓄積により特徴付けられる肥満又は他の疾患及び状態を処置及び/又は予防及び/又は改善する方法。
【請求項2】
− グレリンポリペプチド又はサブ配列での動物の免疫化が該動物の自家グレリンに対する抗体の産生を誘導するように製剤化された少なくとも1つのグレリンポリペプチド又はそのサブ配列、及び
− グレリンアナログでの動物の免疫化がグレリンに対する抗体の産生を誘導するように、同じ分子中に少なくとも1つのグレリンB細胞エピトープ及びグレリンに由来しない少なくとも1つの化学的部分を組み込んでいる少なくとも1つのグレリンアナログ
からなる群より選択される免疫原の免疫学的有効量を動物の免疫系に提示させることからなり、ヒトを含む動物において自家グレリンに対して免疫することにより該動物において自家グレリンをアップレギュレートすることからなる、ヒトのような動物においてボディマスを増大させる方法。
【請求項3】
免疫原がグレリンアナログである請求項1又は2による方法。
【請求項4】
アナログが相当の割合のグレリンB細胞エピトープを保存しており、かつ、アナログがまた
− 少なくとも1つの外来性Tヘルパーリンパ球エピトープ(THエピトープ)、及び/又は
− アナログを抗原提示細胞(APC)又はBリンパ球に標的化する少なくとも1つの第1の部分、及び/又は
− 免疫系を刺激する少なくとも1つの第2の部分、及び/又は
− アナログの免疫系への提示を最適化する少なくとも1つの第3の部分
からなる請求項3による方法。
【請求項5】
外来性THエピトープ及び/又は第1の部分及び/又は第2の部分及び/又は第3の部分が、グレリン又はそのサブ配列の適切な側基に結合されることにより、アナログ中に存在している請求項4による方法。
【請求項6】
アナログが、少なくとも1つのアミノ酸置換及び/又は欠失及び/又は挿入及び/又は付加により改変されているグレリンポリペプチドである請求項4又は5による方法。
【請求項7】
アナログが融合ポリペプチドである請求項6による方法。
【請求項8】
アミノ酸置換及び/又は欠失及び/又は挿入及び/又は付加がアナログ中におけるグレリンの全体三次元構造の実質的な保存を許容する請求項6又は7による方法。
【請求項9】
アナログが少なくとも1つのグレリンB細胞エピトープの複製及び/又はハプテンの導入を含む請求項4及び請求項4に従属する限りの請求項5〜8のいずれか1項による方法。
【請求項10】
外来性T細胞エピトープが該動物において免疫優性である請求項4及び及び請求項4に従属する限りの請求項5〜9のいずれか1項による方法。
【請求項11】
外来性T細胞エピトープが無差別性である請求項4及び請求項4に従属する限りの請求項5〜10のいずれか1項による方法。
【請求項12】
少なくとも1つの外来性T細胞エピトープが、天然の無差別性T細胞エピトープ及び人工のMHC-II結合性ペプチド配列から選択される請求項11による方法。
【請求項13】
天然のT細胞エピトープが、P2又はP30のような破傷風毒素エピトープ、ジフテリア毒素エピトープ、インフルエンザウイルスヘマグルチニンエピトープ及びP. falciparum CSエピトープから選択される請求項12による方法。
【請求項14】
第1の部分が、Bリンパ球又はAPC上にそのためのレセプターが存在するハプテン又は糖質のようなBリンパ球特異表面抗原又はAPC特異表面抗原に実質的に特異的な結合パートナーである請求項4及び請求項4に従属する限りの請求項5〜13のいずれか1項による方法。
【請求項15】
第2の部分がサイトカイン及び熱ショックタンパク質から選択される請求項4及び請求項4に従属する限りの請求項5〜14のいずれか1項による方法。
【請求項16】
サイトカインがインターフェロンγ(IFN-γ)、Flt3L、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン13(IL-13)、インターロイキン15(IL-15)及び顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)から選択されるか又はこれらの有効な一部分であり、熱ショックタンパク質がHSP70、HSP90、HSC70、GRP94及びカルレティキュリン(CRT)から選択されるか又はこれらのいずれかの有効な一部分である請求項15による方法。
【請求項17】
第3の部分が、パルミトイル基、ミリスチル基、ファルネシル基、ゲラニルゲラニル基、GPI-アンカー及びN-アシルジグリセリド基のような脂質性である請求項4及び請求項4に従属する限りの請求項5〜16のいずれか1項による方法。
【請求項18】
免疫原が、アナログ中で外来性THエピトープを生じる、等しいか又は異なる長さのアミノ酸配列でのグレリンポリペプチド内の少なくとも1つのアミノ酸配列の置換を含む請求項1〜17のいずれか1項による方法。
【請求項19】
グレリンポリペプチドが、アナログ中で外来性THエピトープを生じるアミノ酸配列が挿入されているか又はアナログ中で外来性THエピトープを生じるように少なくとも1つのアミノ酸配列が等しいか又は異なる長さのアミノ酸配列で置換されている配列番号11のアミノ酸24〜51に対応するアミノ酸配列又はそのサブ配列を含み、導入が配列番号11中のアミノ酸1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116及び117のいずれか1つの後で行なわれ、配列番号11中のアミノ酸1及び/又は2及び/又は3及び/又は4及び/又は5及び/又は6及び/又は7及び/又は8及び/又は9及び/又は10及び/又は11及び/又は12及び/又は13及び/又は14及び/又は15及び/又は16及び/又は17及び/又は18及び/又は19及び/又は20及び/又は21及び/又は22及び/又は23及び/又は24及び/又は25及び/又は26及び/又は27及び/又は28及び/又は29及び/又は30及び/又は31及び/又は32及び/又は33及び/又は34及び/又は35及び/又は36及び/又は37及び/又は38及び/又は39及び/又は40及び/又は41及び/又は42及び/又は43及び/又は44及び/又は45及び/又は46及び/又は47及び/又は48及び/又は49及び/又は50及び/又は51及び/又は52及び/又は53及び/又は54及び/又は55及び/又は56及び/又は57及び/又は58及び/又は59及び/又は60及び/又は61及び/又は62及び/又は63及び/又は64及び/又は65及び/又は66及び/又は67及び/又は68及び/又は69及び/又は70及び/又は71及び/又は72及び/又は73及び/又は74及び/又は75及び/又は76及び/又は77及び/又は78及び/又は79及び/又は80及び/又は81及び/又は82及び/又は83及び/又は84及び/又は85及び/又は86及び/又は87及び/又は88及び/又は89及び/又は90及び/又は91及び/又は92及び/又は93及び/又は94及び/又は95及び/又は96及び/又は97及び/又は98及び/又は99及び/又は100及び/又は101及び/又は102及び/又は103及び/又は104及び/又は105及び/又は106及び/又は107及び/又は108及び/又は109及び/又は110及び/又は111及び/又は112及び/又は113及び/又は114及び/又は115及び/又は116及び/又は117が欠失されていてもよい請求項1〜18のいずれか1項による方法。
【請求項20】
アナログが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドからなる群より選択される請求項19による方法。
【請求項21】
免疫原が、抗原決定基の多コピーを提示させ得るキャリア分子に共有結合的又は非共有結合的に連結しているポリアミノ酸を有し、ポリアミノ酸はグレリンポリペプチド、グレリンサブ配列及びグレリンアナログからなる群より選択される請求項20による方法。
【請求項22】
キャリア分子が薬学的に受容可能な活性化ポリヒドロキシポリマーを含むか又はこれからなる請求項21による方法。
【請求項23】
ポリヒドロキシポリマーが、1)グレリンポリペプチド又はそのサブ配列及び2)外来性THエピトープが離れて結合しているキャリア骨格として働く請求項4に従属する限りの請求項22による方法。
【請求項24】
ポリアミノ酸が、アミド結合又はペプチド結合のようなペプチダーゼにより切断可能な結合を介してポリヒドロキシポリマーに結合している請求項22又は23による方法。
【請求項25】
ポリアミノ酸が各アミド結合の窒素部分を提供している請求項24による方法。
【請求項26】
ポリヒドロキシポリマーキャリアがアミノ酸残基を実質的に含まない請求項22〜25のいずれか1項による方法。
【請求項27】
ポリアミノ酸が、アミノ酸配列のN末端の窒素を介して活性化ポリヒドロキシポリマーに結合している請求項22〜26のいずれか1項による方法。
【請求項28】
ポリヒドロキシポリマーが水溶性である請求項22〜27のいずれか1項による方法。
【請求項29】
ポリヒドロキシポリマーが水不溶性である請求項22〜26のいずれか1項による方法。
【請求項30】
ポリヒドロキシポリマーが天然に存在するポリヒドロキシ化合物及び合成ポリヒドロキシ化合物から選択される請求項22〜29のいずれか1項による方法。
【請求項31】
ポリヒドロキシポリマーが多糖である請求項22〜30のいずれか1項による方法。
【請求項32】
多糖が、アセタン、アミロペクチン、ガム寒天、アガロース、アルギネート、アラビアガム、カラゲナン、セルロース、シクロデキストリン、デキストラン、ファーセレラン、ガラクトマンナン、ゼラチン、ガティ、グルカン、グリコーゲン、グアー、カラヤ、コンニャク/A、ローカストビーンガム、マンナン、ペクチン、サイリウム、プルラン、スターチ、タマリンド、トラガント、キサンタン、キシラン及びキシログルカンからなる群より選択される請求項31による方法。
【請求項33】
ポリヒドロキシポリマーがデキストランである請求項32による方法。
【請求項34】
ポリヒドロキシポリマーが、高度に分岐したポリ(エチレンイミン)(PEI)、テトラチエニレンビニレン、ケブラー(ポリパラフェニルテレフタルアミドの長鎖)、ポリ(ウレタン)、ポリ(シロキサン)、ポリジメチルシロキサン、シリコーン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレン-コ-ビニル酢酸)、ポリ(エチレングリコール)及び誘導体、ポリ(メタクリル酸)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ無水物及びポリオルトエステルからなる群より選択される請求項22〜30のいずれか1項による方法。
【請求項35】
活性化前のポリヒドロキシポリマーの平均分子量が少なくとも500である請求項22〜34のいずれか1項による方法。
【請求項36】
ポリヒドロキシポリマーが、トレシル(トリフルオロエチルスルホニル)、マレイミド、p-ニトロフェニルクロロホルメート及びトシル(p-トルエンスルホニル)から選択される官能基で活性化されている請求項22〜35のいずれか1項による方法。
【請求項37】
ポリヒドロキシポリマーに結合している少なくとも1つの更なるポリアミノ酸をさらに含み、少なくとも1つの更なるポリアミノ酸が免疫刺激ペプチド又は標的化ペプチドからなる群より選択される請求項22〜36のいずれか1項による方法。
【請求項38】
免疫原の有効量が、表皮下、真皮下、表皮内、真皮内又は筋肉内経路のような非経口経路;腹腔内経路;経口経路;口腔粘膜経路;舌下経路;硬膜外経路;脊髄経路;肛門経路;及び頭蓋内経路から選択される経路を介して動物に投与される請求項1〜37のいずれか1項による方法。
【請求項39】
有効量が0.5μg〜2,000μgのグレリンポリペプチド、そのサブ配列又はそのアナログである請求項38による方法。
【請求項40】
グレリンポリペプチド又はアナログが仮想リンパ節(VLN)デバイスに含まれている請求項37又は38による方法。
【請求項41】
グレリンポリペプチド、そのサブ配列又はグレリンアナログが、自家抗原に対する自己寛容の破壊を促進するアジュバントと製剤化されている請求項38〜40のいずれか1項による方法。
【請求項42】
免疫系への免疫原の提示が、免疫原をコードする核酸を動物の細胞中に導入し、それにより細胞による導入核酸のインビボ発現を得ることによってもたらされる請求項1〜20のいずれか1項による方法。
【請求項43】
導入核酸が、裸のDNA、荷電又は非荷電の脂質と製剤化されたDNA、リポソーム中に製剤化されたDNA、ウイルスベクターに含まれるDNA、トランスフェクション促進性タンパク質又はポリペプチドと製剤化されたDNA、標的化タンパク質又はポリペプチドと製剤化されたDNA、カルシウム沈降剤と製剤化されたDNA、不活性キャリア分子とカップリングしたDNA、キチン又はキトサン中に被包化されたDNA及びアジュバントと製剤化されたDNAから選択される請求項42による方法。
【請求項44】
核酸がVLNデバイスに含まれている請求項43による方法。
【請求項45】
1年あたり少なくとも1回の投与/導入、例えば少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも6回及び少なくとも12回の投与/導入を含む請求項38〜44のいずれか1項による方法。
【請求項46】
結果としてそのアナログでの動物の免疫により該動物の自家グレリンポリペプチドに対する抗体の産生が誘導される改変が導入されている、動物グレリンポリペプチドに由来し請求項4〜37のいずれか1項に規定されるグレリンポリペプチドのアナログ。
【請求項47】
請求項46によるアナログの免疫学的有効量を含み、薬学的及び免疫学的に受容可能なキャリア及び/又はビヒクル及び必要に応じてアジュバントをさらに含む免疫原性組成物。
【請求項48】
請求項4〜20のいずれか1項に規定されるアナログをコードする核酸フラグメント。
【請求項49】
自律複製し得るベクターのような請求項48による核酸フラグメントを有するベクター。
【請求項50】
プラスミド、ファージ、コスミド、ミニ染色体及びウイルスからなる群より選択される請求項49によるベクター。
【請求項51】
5'→3'方向に作動可能な連結で、請求項48による核酸フラグメントの発現を駆動するためのプロモーター、必要に応じてポリペプチドの分泌又はポリペプチドの膜中への組み込みを可能にするリーダーペプチドをコードする核酸配列、請求項48による核酸フラグメント及び必要に応じてターミネーターを含む請求項49又は50によるベクター。
【請求項52】
宿主細胞中に導入されたとき、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得るか又は組み込まれ得ない請求項49〜51のいずれか1項によるベクター。
【請求項53】
プロモーターが真核細胞及び/又は原核細胞で発現を駆動する請求項51又は52によるベクター。
【請求項54】
請求項48による核酸フラグメントを複製し得る形質転換細胞のような請求項49〜53のいずれか1項によるベクターを有する形質転換細胞。
【請求項55】
細菌、酵母、原生動物から選択される微生物、又は真菌、S2若しくはSF細胞のような昆虫細胞、植物細胞及び哺乳動物細胞から選択される多細胞生物に由来する細胞である請求項54による形質転換細胞。
【請求項56】
請求項46によるアナログを分泌するか又は表面に保有する形質転換細胞のような請求項48による核酸フラグメントを発現する請求項54又は55による形質転換細胞。
【請求項57】
免疫系への提示が、グレリンポリペプチド、サブ配列又はアナログをコードし及び発現する核酸フラグメントを保有する非病原性微生物又はウイルスを投与することによりもたらされる請求項1〜20のいずれか1項による方法。
【請求項58】
− 請求項48による核酸フラグメント又は請求項49〜53のいずれか1項によるベクター、及び
− 薬学的及び免疫学的に受容可能なキャリア及び/又はビヒクル及び/又はアジュバント
を含む自家宿主においてグレリンポリペプチドに対する抗体の産生を誘導する組成物。
【請求項59】
請求項49〜53のいずれか1項によるベクターを保有し、請求項48による核酸フラグメントを発現し、必要に応じて請求項46によるアナログを分泌するか又はその表面に保有する安定な細胞株。
【請求項60】
請求項48による核酸フラグメント又は請求項49〜53のいずれか1項によるベクターで宿主細胞を形質転換することをからなる請求項54〜56のいずれか1項による細胞を生産するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−504413(P2006−504413A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535024(P2004−535024)
【出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【国際出願番号】PCT/DK2003/000592
【国際公開番号】WO2004/024183
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(501023476)
【住所又は居所原語表記】Kogle Alle 6,DK−2970 Horsholm DENMARK
【Fターム(参考)】