説明

自己ロック式ボルト締めファスナ

【課題】容易で、安価に、類似のウエッジング手段を有するボルト締めファスナよりも複雑でなく製造できる、偏心ファスナを提供する。
【解決手段】ブラケット7は、横材11に固定される。横材11に、横方向の長円孔12および縦方向の長円孔12が水平方向に配置される。ボルト9の正方形首部9.1は、長円孔12にはまり込み、ボルト9が回るのを防止する。ブラケット7は、ブラケット7を横材11で中心合わせするように機能する突出部7.1を有する。ブラケット7に、レセプタクル孔7.2が設けられる。ウエッジング手段として機能する偏心要素8の直径は、わずかにより大きな直径のレセプタクル孔7.2に適合しており、偏心要素8は、レセプタクル孔7.2にはまる。ナット10が螺装されるとき、偏心要素8は、ボルト9のまわりで回転し、その偏心によって、自体をレセプタクル孔7.2に押し込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのボルトを使用し且つ少なくとも一つのナットを使用して構成部品を接合し、ウエッジング手段が、回転を防止するために設けられる、自己ロック式ボルト締めファスナ(self−locking bolted fastener)に関する。
【背景技術】
【0002】
公開された独国特許出願公開第10060963号によれば、ウエッジング手段を有するボルト締めファスナは、知られているものであり、ウエッジング手段は、回転を防止するために役立っている。ボルトは、2つの構成部品を一緒に保持する。ボルトの頭部は、構成部品に配設された丸孔の基部に支えられる。丸孔の軸は、偏心距離だけボルトの軸からオフセットしている。ウエッジング手段は、ボルトの頭部と丸孔の内側面とに支えられる。ボルトが螺装されると、ウエッジング手段は、ますますボルトの頭部と内側面との間に押し込まれ、ボルトは、それによって保持され、横方向の振動の力に反応しなくなる。
【0003】
知られている装置の不利な点は、ねじ穴に対して偏心された丸孔が必要となることである。また、座面およびネジ切りを有するブロック形態でのウエッジング手段も、高い費用を必要とする。
【特許文献1】独国特許出願公開第10060963号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ここに解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1に特徴付けられているように、知られている装置の不利な点を回避するための解決策を提供し、且つ容易に据え付けることができる自己ロック式ボルト締めファスナを作成する。
【0006】
本発明の有利なさらなる展開は、従属請求項に述べられている。
【0007】
本発明から得られる利点は、主として本発明に従った偏心ファスナによるものに見られ、少ない部品による容易な組立が可能であり、且つ貴重な作業時間がそれによって節約され得る。付加的な穿孔操作または座面を有するポジティブフィットウエッジング手段が、回避される。
【0008】
本発明による偏心ファスナは、容易で、安価に、そして類似のウエッジング手段を有するボルト締めファスナよりも複雑でなく製造できる。速やかで且つ容易な組立および分解、ならびに少ない部品の使用は、経済的に有利である。エスカレータの組立作業および組立プロセスは、それによって実質的に短縮化される。
【0009】
本発明は、添付された図面を参照することによってより詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、レールブロック5およびトラス6を有する、エスカレータまたは動く歩道の上側ヘッドピース3を示している。レールブロック5は、ステップまたはパレットのチェーンバンドを駆動するための駆動ホイール5.1、手摺りを駆動するための駆動ホイール5.2、およびステップローラまたはパレットローラをガイドするためのガイドレール5.3を備えている。
【0011】
レールブロック5は、ボルト締めファスナを用いてトラス6に固定されている。ブラケット7は、レールブロック5とトラス6との間の結合部品として機能している。ブラケット7は、ボルト9、ナット10、および偏心要素8を用いて、レールブロック5と、長円孔12を有する横材11と、トラス6の長円孔6.2を有する支柱6.1とに固定されている。自己ロック式ポジティブフィット接合部は、それによってコンパクトな、耐久性のある、適切な寸法の力インタフェースを形成する。付加的な溶接またはピン固定操作が回避される。ボルト9およびナット10が締め付けられるとき、偏心要素8は回り、そしてポジティブフィットとなり、且つレセプタクル孔7.2内にしっかり固定される。
【0012】
本発明に従ったファスナによれば、貴重な作業時間が節約され得る。ファスナは、容易で、安価に、そして複雑でなく製造される。溶接、チッピングハンマおよびワイヤブラシによる清掃、ならびにドリル穿孔および所定の位置へのダウエルピンのハンマリングが回避される。
【0013】
エスカレータまたは動く歩道のさらなる構成部品(例えばくし板または手すり)も、上述されたように、ボルト9と、偏心要素8と、ナット10とを用いて、一緒に固定され得る。
【0014】
図2は、ブラケット7を横材11に固定すべき本発明によるボルト締めファスナの分解組み立て図を示している。横材11には、横断方向の長円孔12および長さ方向の長円孔12が配置される。
【0015】
長円孔12は、傾斜をつけられ、またはスロープ付けされて配置されて良い。ボルト9の正方形首部9.1は、長円孔12にはまり込み、且つボルト9が回転するのを防止する。頭部9.2は、長円孔12に対し且つ横材11に対して押圧される。ブラケット7は、ブラケット7を横材11で中心合わせするように機能する突出部7.1を有する。ブラケット7には、レセプタクル孔7.2が設けられている。ウエッジング手段として機能する偏心要素8の直径は、わずかにより大きな直径のレセプタクル孔7.2に適合しており、そして偏心要素8はレセプタクル孔7.2内にはまり込む。ブラケット7の端面には、ブラケット7を支柱6.1に固定するように機能する、さらなるレセプタクル孔7.2が設けられている。
【0016】
図3は、横材11に配置されたブラケット7を示しており、レセプタクル孔7.2は、長円孔12と位置合わせされている。
【0017】
図4は、横材11に完全に取り付けられたブラケット7を示している。偏心要素8は、レセプタクル孔7.2内に挿入されている。ボルト9は、長円孔12、ならびに偏心要素8の孔である偏心円孔8.1を貫通する。ナット10は、ボルト9に螺装され且つ締め付けられる。ナット10の締め付けは、偏心要素8が摩擦係合によって回転されるようにさせ、且つそれらのレセプタクル孔7.2にポジティブフィットする。ボルト9に対する偏心要素8の偏心距離、およびレセプタクル孔7.2に対する円孔8.1のために、自己ロック式ボルト締め接合部が形成される。
【0018】
図5は、突出部7.1および第2のアーム7.4を有する第1のアーム7.3を備える、アングル形状ブラケット7の詳細を示している。第1のアーム7.3において、横材11にボルト締めするための2つのレセプタクル孔7.2があり、第2のアーム7.4において、支柱6.1にボルト締めするための3つのレセプタクル孔がある。ブラケット7、ボルト9、偏心要素8、およびナット10は、横材11および上述されたトラス6の支柱6.1に対する、自己ロック式ボルト締め接合部を形成している。
【0019】
図6は、偏心要素8の詳細を示している。偏心要素8は、一端のストップ体として機能するフランジ8.2を有し、レセプタクル孔7.2に挿入され、且つその中で回転されたときに、スライドするスライド面8.3として機能するシースまたは外側面を有する、本質的に半円筒の形態を有している。フランジ8.2は、偏心要素8が、レセプタクル孔7.2に完全に入ること、またはレセプタクル孔7.2を完全に通過することを防止し、そこではフランジ8.2が、レセプタクル孔7.2の周囲を押圧する。偏心要素の対称性の軸は、線Mによって示されている。偏心円孔8.1の中心は、偏心要素の対称性の軸Mから距離dだけオフセットされており、偏心要素の対称性の軸Mは、レセプタクル孔7.2の対称性の軸と位置合わせされている。ナット10が螺装されまたは締め付けられたとき、ウエッジング手段として作用する偏心要素8は、ボルト9の周りで回り、且つその偏心性のために、それ自体がレセプタクル孔7内に押し込まれる。押し込まれた偏心要素8は、ナット10の偶発的なゆるみまたは偶発的な脱落を防止する。
【0020】
横材11および支柱6.1は、たった1つのボルト9、1つの偏心要素8、および1つのナット10で、ブラケット7に締め付けることもできる。横材11および支柱6.1は、ブラケット7なしで直接的に接合されることもできる。そのときレセプタクル孔7.2は、2つの支柱の一方に配設される。
【0021】
本発明によるボルト締めファスナは、エスカレータまたは動く歩道以外の装置、例えば、エレベータ、架空索道、ケーブルカー、巻き上げ装置、または機械における、構成部品の接合のために使用されることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】トラスを有するエスカレータの上側ヘッドピースを示す図である。
【図2】組立前の本発明に従ったボルト締めファスナを示す図である。
【図3】組立中の本発明に従ったボルト締めファスナを示す図である。
【図4】組立後の本発明に従ったボルト締めファスナを示す図である。
【図5】ブラケットの詳細を示す図である。
【図6】偏心要素の詳細を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
5 レールブロック
5.1、5.2 駆動ホイール
5.3 ガイドレール
6 トラス
6.1 支柱
6.2、12 長円孔
7 ブラケット
7.1 突出部
7.2 レセプタクル孔
7.3 第1のアーム
7.4 第2のアーム
8 偏心要素
8.1 偏心円孔
8.2 フランジ
8.3 スライド面
9 ボルト
9.1 長方形首部
10 ナット
11 横材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部品(11、7、6.1)を、少なくとも1つのボルト(9)を用い且つ少なくとも1つのナット(10)を用いて接合するとともに、ウエッジング手段(8)が回転を防止するために設けられる、自己ロック式ボルト締めファスナであって、
孔(12)が、一方の構成部品(11、6.1)に設けられ、ウエッジング手段として作用する偏心要素(8)を収容するためのレセプタクル孔(7.2)が、他方の構成部品(7)に設けられ、ボルト(9)が、一方の構成部品(11、6.1)の孔および偏心要素(8)の孔(8.1)を貫通し、且つナット(10)を用いて締め付け可能であることを特徴とする、ボルト締めファスナ。
【請求項2】
偏心要素(8)の孔(8.1)が、偏心の対称の軸(M)から距離(d)だけオフセットしており、偏心の対称の軸(M)が、レセプタクル孔(7.2)の対称の軸と位置合わせされていることを特徴とする、請求項1に記載のボルト締めファスナ。
【請求項3】
偏心要素(8)が、本質的に半円筒の形態を有していることを特徴とする、請求項1または2に記載のボルト締めファスナ。
【請求項4】
偏心要素(8)が、レセプタクル孔(7.2)の周囲に支えられるフランジ(8.2)を一端に有していることを特徴とする、請求項3に記載のボルト締めファスナ。
【請求項5】
横材(11)をトラス(6)に接合するための、請求項1から4のいずれか一項に記載のボルト締めファスナ(1)。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の少なくとも1つのボルト締めファスナを有する、エスカレータまたは動く歩道。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の少なくとも1つのボルト締めファスナを有する、エレベータ。
【請求項8】
エスカレータまたは動く歩道の構成部品を接合するための、請求項1から5のいずれか一項に記載のボルト締めファスナの使用方法。
【請求項9】
エレベータ、架空索道、ケーブルカー、巻き上げ装置、または機械の構成部品を接合するための、請求項1から4のいずれか一項に記載のボルト締めファスナの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−145033(P2006−145033A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−328377(P2005−328377)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(390040729)インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト (166)
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】