説明

自律神経失調症診断装置および自律神経失調症診断方法

【課題】十分に小型化されることができる自律神経失調症診断装置を提供する。
【解決手段】自律神経失調症診断装置11は、生体の振動により発生する物理量を検出し、当該物理量を特定する検出信号を出力する物理量検出手段27と、出力された検出信号の周波数を算出する周波数算出手段28と、算出された周波数に基づき、前記生体の自律神経機能が正常か否かを判定する判定手段31とを備える。一般に、生体の振動により発生する物理量の検出にあたって小型化された物理量検出手段27は知られる。したがって、自律神経失調症診断装置11は十分に小型化されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自律神経失調症診断装置および自律神経失調症診断方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されるように、自律神経失調症診断装置は知られる。この自律神経失調症診断装置は手の指先で脈波を測定する。脈波の測定にあたって血圧測定と同様に上腕が締め付けられ加圧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−61572号公報
【特許文献2】特開2001−35896号公報
【特許文献3】特開2009−142468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の自律神経失調症診断装置では上腕の加圧にあたって高圧の空気が送り込まれなければならない。したがって、脈波計と、加圧用のカフと、圧力供給源を収容する本体とはそれぞれ異なる個体として構成されなければならない。自律神経失調症診断装置は十分に小型化されることができない。
【0005】
本発明の少なくとも1つの態様によれば、十分に小型化されることができる自律神経失調症診断装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、生体の振動により発生する物理量を検出し、検出信号を出力する物理量検出手段と、出力された前記検出信号の周波数を算出する周波数算出手段と、算出された前記周波数に基づき、前記生体の自律神経機能が正常か否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする自律神経失調症診断装置に関する。
【0007】
こうした自律神経失調症診断装置によれば、生体の振動に基づき明確に自律神経失調症は診断されることができる。専門家の判断に頼ることなく家庭で自律神経失調症は発見されることができる。しかも、一般に、生体の振動により発生する物理量の検出にあたって小型化された物理量検出手段は知られる。したがって、自律神経失調症診断装置は十分に小型化されることができる。
【0008】
(2)前記周波数算出手段は、前記検出信号を周波数解析し、前記判定手段は、前記周波数解析の結果から、最大の強度を示すピーク値周波数を抽出し、副交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の上限周波数で設定される基準周波数に前記ピーク値周波数を照らし合わせることができる。
【0009】
発明者の観察によれば、副交感神経が優位な際には第1周波数程度にピーク値周波数が現れる。交感神経が優位な際には第1周波数よりも高い第2周波数程度にピーク値周波数が現れる。被験者の自律神経のバランスが崩れると、副交感神経が優位な条件で測定されたピーク値周波数は第1周波数から第2周波数に向かって移動する。その結果、測定されたピーク値周波数が上限周波数で設定される基準周波数に照らし合わせられると、自律神経失調症の当否は判断されることができる。
【0010】
自律神経失調症診断装置は、交感神経の優位性を示す指標を生成する指標生成手段をさらに備えてもよい。この場合、前記周波数算出手段は、副交感神経が優位な際に前記物理量検出手段から出力される前記検出信号を周波数解析する。前記判定手段は、周波数解析の結果から、副交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数に前記指標を関連づける。こうして健常者のピーク値周波数はサンプルとして収集されることができる。収集されたピーク値周波数に応じて基準周波数は設定されることができ修正されることができる。
【0011】
(3)前記周波数算出手段は、前記検出信号を周波数解析し、前記判定手段は、前記周波数解析の結果から、最大の強度を示すピーク値周波数を抽出し、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の下限周波数で設定される基準周波数に前記ピーク値周波数を照らし合わせることができる。
【0012】
被験者の自律神経のバランスが崩れると、交感神経が優位な条件で測定されたピーク値周波数は第2周波数から遠ざかる。その結果、測定されたピーク値周波数が下限周波数で設定される基準周波数に照らし合わせられると、自律神経失調症の当否は判断されることができる。測定されたピーク値周波数が周波数帯域の上限値周波数で設定される基準周波数に照らし合わせられても、自律神経失調症の当否は判断されることができる。
【0013】
自律神経失調症診断装置は、交感神経の優位性を示す指標を生成する指標生成手段をさらに備えてもよい。この場合、前記周波数算出手段は、交感神経が優位な際に前記物理量検出手段から出力される前記検出信号を周波数解析する。前記判定手段は、周波数解析の結果から、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数に前記指標を関連づける。こうして健常者のピーク値周波数はサンプルとして収集されることができる。収集されたピーク値周波数に応じて基準周波数は設定されることができ修正されることができる。
【0014】
(4)前記物理量検出手段は、前記生体の安静時および活動時の前記物理量を検出し、前記安静時および活動時の検出信号を出力し、前記周波数算出手段は、前記安静時および活動時の検出信号を周波数解析し、前記判定手段は、前記安静時の周波数解析の結果から、最大の強度を示す第1ピーク値周波数を抽出し、副交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の上限周波数で設定される第1基準周波数に前記第1ピーク値周波数を照らし合わせ、かつ、前記活動時の周波数解析の結果から、最大の強度を示す第2ピーク値周波数を抽出し、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の下限周波数で設定される第2基準周波数に前記第2ピーク値周波数を照らし合わせることができる。こうして自律神経失調症の当否は一層確実に判断されることができる。
【0015】
(5)自律神経失調症診断装置は、交感神経の優位性を示す指標を生成する指標生成手段をさらに備え、前記周波数算出手段は、交感神経が優位な際に前記物理量検出手段から出力される前記検出信号を周波数解析し、前記判定手段は、前記交感神経が優位な際の周波数解析の結果から、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の強度の総和を特定し、前記指標に当該総和を基準値として関連づけ、前記生体の安静時の周波数解析の結果から当該周波数帯域の強度の総和を算出し前記基準値に照らし合わせることができる。
【0016】
発明者の観察によれば、副交感神経が優位な際には第1周波数程度にピーク値周波数が現れる。交感神経が優位な際には第1周波数よりも高い第2周波数程度にピーク値周波数が現れる。被験者の自律神経のバランスが崩れると、副交感神経が優位な条件で測定されたピーク値周波数は第1周波数から第2周波数に向かって移動する。その結果、算出された強度の総和が総和の基準値に近づく。こうして、算出された強度の総和が総和の基準値に照らし合わせられると、自律神経失調症の当否は判断されることができる。
【0017】
(6)自律神経失調症診断装置は、交感神経の優位性を示す指標を生成する指標生成手段をさらに備え、前記周波数算出手段は、交感神経が優位な際に前記物理量検出手段から出力される前記検出信号を周波数解析し、前記判定手段は、前記交感神経が優位な際の周波数解析の結果から、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を上限値に含む周波数帯域の強度の変化の傾きを算出し、前記指標に当該傾きを基準値として関連づけ、前記生体の安静時の周波数解析の結果から当該周波数帯域の強度の変化の傾きを算出し前記基準値に照らし合わせることができる。
【0018】
発明者の観察によれば、副交感神経が優位な際には第1周波数程度にピーク値周波数が現れる。交感神経が優位な際には第1周波数よりも高い第2周波数程度にピーク値周波数が現れる。被験者の自律神経のバランスが崩れると、副交感神経が優位な条件で測定されたピーク値周波数は第1周波数から第2周波数に向かって移動する。その結果、算出された強度の変化の傾きが傾きの基準値に近づく。こうして、算出された強度の変化の傾きが傾きの基準値に照らし合わせられると、自律神経失調症の当否は判断されることができる。
【0019】
(7)自律神経失調症診断装置は、前記生体の自律神経機能の判定結果を表示する表示手段をさらに備えることができる。こうして判定結果は視覚的に通知されることができる。
【0020】
(8)前記物理量検出手段は加速度センサーまたは角速度センサーであることができる。加速度センサーは物理量の一例として加速度を検出する。加速度は生体のマイクロバイブレーションを表す。加速度センサーの利用によれば、自律神経失調診断装置は確実に小型化されることができる。角速度センサーは物理量の一例として角速度を検出する。角速度は生体のマイクロバイブレーションを表す。一般に、角速度の検出にあたってコリオリ力が検出される。加速度に相当する外乱は特別なフィルターなしに除去されることができる。その結果、角速度センサーの利用によれば、自律神経失調症診断装置の診断の精度は高められることができる。
【0021】
(9)本発明の他の態様は、生体の振動により発生する物理量を検出し、検出信号を取得する工程と、前記検出信号の周波数を算出する工程と、算出された前記周波数に基づき、前記生体の自律神経機能が正常か否かを判定する工程とを備えることを特徴とする自律神経失調症診断方法に関する。
【0022】
こうした自律神経失調症診断方法によれば、生体の振動に基づき明確に自律神経失調症は診断されることができる。専門家の判断に頼ることなく家庭で自律神経失調症は発見されることができる。しかも、一般に、生体の振動により発生する物理量の検出にあたって小型化された物理量検出装置は知られる。したがって、当該診断方法に用いられる自律神経失調症診断装置は十分に小型化されることができる。
【0023】
(10)自律神経失調症診断方法は、前記周波数の算出にあたって前記検出信号を周波数解析する工程と、前記周波数解析の結果から、最大の強度を示すピーク値周波数を抽出し、副交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の上限周波数で設定される基準周波数に前記ピーク値周波数を照らし合わせる工程とをさらに備えることができる。
【0024】
発明者の観察によれば、副交感神経が優位な際には第1周波数程度にピーク値周波数が現れる。交感神経が優位な際には第1周波数よりも高い第2周波数程度にピーク値周波数が現れる。被験者の自律神経のバランスが崩れると、副交感神経が優位な条件で測定されたピーク値周波数は第1周波数から第2周波数に向かって移動する。その結果、測定されたピーク値周波数が上限周波数で設定される基準周波数に照らし合わせられると、自律神経失調症の当否は判断されることができる。
【0025】
(11)自律神経失調症診断方法は、前記周波数の算出にあたって前記検出信号を周波数解析する工程と、前記周波数解析の結果から、最大の強度を示すピーク値周波数を抽出し、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の下限周波数で設定される基準周波数に前記ピーク値周波数を照らし合わせる工程とをさらに備えることができる。
【0026】
被験者の自律神経のバランスが崩れると、交感神経が優位な条件で測定されたピーク値周波数は第2周波数から遠ざかる。その結果、測定されたピーク値周波数が下限周波数で設定される基準周波数に照らし合わせられると、自律神経失調症の当否は判断されることができる。測定されたピーク値周波数が周波数帯域の上限値周波数で設定される基準周波数に照らし合わせられても、自律神経失調症の当否は判断されることができる。
【0027】
(12)自律神経失調症診断方法は、前記生体の安静時の前記物理量を検出し、検出信号を取得する工程と、前記周波数の算出にあたって、前記安静時の検出信号を周波数解析する工程と、前記安静時の周波数解析の結果から、最大の強度を示す第1ピーク値周波数を抽出し、副交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の上限周波数で設定される基準周波数に前記第1ピーク値周波数を照らし合わせる工程と、前記生体の活動時の前記物理量を検出し、検出信号を取得する工程と、前記周波数の算出にあたって、前記活動時の検出信号を周波数解析する工程と、前記活動時の周波数解析の結果から、最大の強度を示す第2ピーク値周波数を抽出し、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の下限周波数で設定される第2基準周波数に前記第2ピーク値周波数を照らし合わせる工程とを備えることができる。こうして自律神経失調症の当否は一層確実に判断されることができる。
【0028】
(13)自律神経失調症診断方法は、交感神経が優位な際に取得される前記検出信号を周波数解析する工程と、前記交感神経が優位な際の周波数解析の結果から、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の強度の総和を特定し、交感神経の優位性を示す指標に当該総和を基準値として関連づける工程と、前記生体の安静時の周波数解析の結果から当該周波数帯域の強度の総和を算出し前記基準値に照らし合わせる工程とをさらに備えることができる。
【0029】
発明者の観察によれば、副交感神経が優位な際には第1周波数程度にピーク値周波数が現れる。交感神経が優位な際には第1周波数よりも高い第2周波数程度にピーク値周波数が現れる。被験者の自律神経のバランスが崩れると、副交感神経が優位な条件で測定されたピーク値周波数は第1周波数から第2周波数に向かって移動する。その結果、算出された強度の総和が総和の基準値に近づく。こうして、算出された強度の総和が総和の基準値に照らし合わせられると、自律神経失調症の当否は判断されることができる。
【0030】
(14)自律神経失調症診断方法は、交感神経が優位な際に取得される前記検出信号を周波数解析する工程と、前記交感神経が優位な際の周波数解析の結果から、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を上限値に含む周波数帯域の強度の変化の傾きを算出し、交感神経の優位性を示す指標に当該傾きを基準値として関連づける工程と、前記生体の安静時の周波数解析の結果から当該周波数帯域の強度の変化の傾きを算出し前記基準値に照らし合わせる工程とをさらに備えることができる。
【0031】
発明者の観察によれば、副交感神経が優位な際には第1周波数程度にピーク値周波数が現れる。交感神経が優位な際には第1周波数よりも高い第2周波数程度にピーク値周波数が現れる。被験者の自律神経のバランスが崩れると、副交感神経が優位な条件で測定されたピーク値周波数は第1周波数から第2周波数に向かって移動する。その結果、算出された強度の変化の傾きが傾きの基準値に近づく。こうして、算出された強度の変化の傾きが傾きの基準値に照らし合わせられると、自律神経失調症の当否は判断されることができる。
【0032】
(15)前記物理量は加速度または角速度であることができる。加速度は生体のマイクロバイブレーションを表す。加速度の検出にあたって加速度センサーは利用されることができる。加速度センサーの利用によれば、当該診断方法に利用される自律神経失調診断装置は確実に小型化されることができる。角速度は生体のマイクロバイブレーションを表す。角速度の検出にあたって角速度センサーは利用されることができる。一般に、角速度の検出にあたってコリオリ力が検出される。加速度に相当する外乱は特別なフィルターなしに除去されることができる。その結果、角速度センサーの利用によれば、自律神経失調症診断装置の診断の精度は高められることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自律神経失調症診断装置の外観を概略的に示す平面図である。
【図2】自律神経失調症診断装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】副交感神経が優位な際にジャイロセンサーから出力される検出信号の周波数特性を示すグラフである。
【図4】交感神経が優位な際にジャイロセンサーから出力される検出信号の周波数特性を示すグラフである。
【図5】第1基準周波数および第2基準周波数の設定方法を示す概念図である。
【図6】被験者の手首に装着された自律神経失調症診断装置を概略的に示す斜視図である。
【図7】「診断モード」時に自律神経失調症診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】自律神経が正常な際に一日の交感神経および副交感神経の活動パターンを示す概念図である。
【図9】自律神経が失調した際に一日の交感神経および副交感神経の活動パターンを示す概念図である。
【図10】ジャイロセンサーから出力される検出信号の周波数特性で強度の総和の概念を示すグラフである。
【図11】交感神経が優位な際にジャイロセンサーから出力される検出信号の周波数特性で強度の変化の傾きの概念を示すグラフである。
【図12】副交感神経が優位な際にジャイロセンサーから出力される検出信号の周波数特性で強度の変化の傾きを示すグラフである。
【図13】ジャイロセンサーの構造を概略的に示す拡大平面図である。
【図14】三軸加速度センサーの構造を概略的に示す拡大斜視図である。
【図15】1加速度センサーの構造を概略的に示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0035】
(1)第1実施形態に係る自律神経失調症診断装置の構成
図1は本発明の第1実施形態に係る自律神経失調症診断装置11を概略的に示す。この自律神経失調症診断装置11は本体12およびリストバンド13を備える。リストバンドの第1端にはバックル14が取り付けられる。第2端から第1端に向かって等間隔でリストバンド13には複数の開口15が配列される。バックル14は選択的に開口15に結合される。選択される開口15に応じてリストバンド13の輪の大きさは決定される。
【0036】
本体12の表面には表示装置の画面16が設置される。表示装置の画面16には、自律神経失調症診断装置11の動作にあたって操作の指示や診断結果その他の情報が表示されることができる。加えて、本体12の側面にはモード切り替えスイッチ17、診断開始スイッチ18および情報入力キー19が設置される。モード切り替えスイッチ17が押されるたびに、「診断モード」、「情報入力モード」、「安静時モード」および「活動時モード」が切り替わる。「診断モード」、「情報入力モード」、「安静時モード」および「活動時モード」の詳細は後述される。診断開始スイッチ18が押されると、自律神経失調症診断装置11は診断の動作を開始する。情報入力キー19は画面16上の表示と連動して文字情報や数値情報の入力にあたって利用される。
【0037】
図2に示されるように、本体12内には制御回路21が組み込まれる。制御回路21には記憶装置22および前述の表示装置23が接続される。記憶装置22には例えばフラッシュメモリーといったEEPROMその他の書き込み可能な不揮発性メモリーが用いられることができる。記憶装置22には例えば被験者ごとに診断結果を列記するデータベース24や診断の基準を示す基準周波数といった基準値データ25が格納される。制御回路21は、データベース24や基準値データ25に文字情報や数値情報を書き込むことができ、データベース24や基準値データ25から文字情報や数値情報を読み出すことができる。表示装置23は、制御回路21の指示に従って画面16上に文字や数字、アイコンその他の図画を表示する。表示装置23には例えば液晶ディスプレイが用いられることができる。
【0038】
本体12内には角速度センサーすなわちジャイロセンサー(物理量検出手段)27が組み込まれる。ジャイロセンサー27は生体の振動により発生する角速度(物理量)を検出する。ジャイロセンサー27は、当該角速度を特定する検出信号を出力する。ジャイロセンサー27は一軸ジャイロセンサーであってもよく、二軸ジャイロセンサーまたは三軸ジャイロセンサーであってもよい。例えば三軸ジャイロセンサーであれば、検出信号は直交三軸の角速度の総和を特定してもよい。角速度の検出にあたってジャイロセンサー27には駆動電力が供給される。
【0039】
ジャイロセンサー27には周波数解析回路(周波数算出手段)28が接続される。周波数解析回路28にはジャイロセンサー27の検出信号が供給される。周波数解析回路28はジャイロセンサー27の検出信号に高速フーリエ変換(FFT)を施す。周波数ごとに電力スペクトル密度(PSD)が特定される。こうして検出信号の周波数は算出される。
【0040】
周波数解析回路28にはフィルター回路29が接続される。フィルター回路29は周波数解析回路の出力にフィルタリング処理を施す。フィルタイリング処理で例えば0.1Hz〜20Hzの周波数帯域以外の周波数は除去される。
【0041】
フィルター回路29には判定回路31が接続される。判定回路31は、算出された周波数に基づき、生体の自律神経機能が正常か否かを判定する。判定にあたって、判定回路31は、周波数解析の結果から、最大の強度を示すピーク値周波数を抽出する。判定回路31は、基準周波数にピーク値周波数を照らし合わせる。基準周波数は例えば制御回路21から受け渡されることができる。判定回路31は制御回路21に判定の結果すなわち診断結果を受け渡す。判定にあたって判定回路31はジャイロセンサー27に駆動電力を供給する。なお、制御回路21、判定回路31、周波数解析回路28およびフィルター回路29は例えば演算処理回路(CPU)の機能に基づき確立されることができる。こうした機能の確立にあたって演算処理回路は所定のソフトウェアプログラムを実行すればよい。ソフトウェアプログラムは例えば予め記憶装置22に格納されていればよい。
【0042】
基準周波数は予め設定される。設定にあたって、副交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数(以下「副交感神経優位周波数」という)が特定される。この副交感神経優位周波数は例えば実測に基づき決定されることができる。実測にあたって例えばジャイロセンサーは椅子に座った被験者の膝に取り付けられればよい。図3に示されるように、本発明者の観察によれば、副交感神経優位周波数=1Hz付近で最大の強度が確認された。この副交感神経優位周波数を含む周波数帯域の上限周波数で基準周波数(以下「第1基準周波数」という)は選択される。図4から明らかなように、本発明者の観察によれば、6〜7Hz付近に、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数(以下「交感神経優位周波数」という)が確認された。実測にあたってジャイロセンサーはデジタルスチルカメラに取り付けられた。被験者はデジタルスチルカメラを構えた姿勢すなわち撮像姿勢をとった。この交感神経優位周波数を含む周波数帯域の上限周波数および下限周波数でさらに2つの基準周波数(以下「第2基準周波数」および「第3基準周波数」という)は選択される。
【0043】
ここでは、副交感神経優位周波数および交感神経優位周波数に平均値が用いられる。平均値の算出にあたって複数の被験者に対して副交感神経優位周波数および交感神経優位周波数が実測される。図5に示されるように、副交感神経優位周波数から交感神経優位周波数への接近度(=30%)に応じて第1基準周波数は設定される。接近度は例えば実測値のばらつきに応じて設定されればよい。同様に、交感神経優位周波数からの逸脱度(=±15%)に応じて第2基準周波数および第3基準周波数は設定される。逸脱度は例えば実測値のばらつきに応じて設定されればよい。このとき、第1基準周波数と第2基準周波数との間には所定のマージンが設定されることが望ましい。
【0044】
(2)第1実施形態に係る自律神経失調症診断装置の動作
次に、自律神経失調症診断装置の動作を説明する。図6に示されるように、診断にあたって自律神経失調症診断装置11は被験者の手首Hに装着される。被験者の手首Hにはリストバンド13が巻き付けられる。その結果、本体12は被験者の皮膚に密着する。皮膚からマイクロバイブレーションは本体12に伝達される。
【0045】
モード切り替えスイッチ17の操作に応じて「診断モード」が選択されると、制御回路21は「診断モード」の動作を実行する。実行にあたって例えば制御回路21は記憶装置22からソフトウェアプログラムを取り込めばよい。図7に示されるように、ステップS1で診断開始スイッチ18が押されると、自律神経失調症診断装置11は診断の動作を開始する。
【0046】
ステップS2で被験者情報の入力が促される。制御回路21は表示装置23に画像信号を供給する。画面16に入力用の画像が表示される。操作者(被験者本人でもよい)は画面16の指示に従って情報入力キー19で「性別」や「年齢」、「被験者名」といった被験者情報を入力する。制御回路21は例えばデータベース24に被験者情報を格納する。
【0047】
被験者情報の入力が完了すると、制御回路21はステップS3で座臥姿勢を指示する。制御回路21は表示装置23に画像信号を供給する。画面16に例えば文字で指示(例えば「椅子に座ってください」や「横に寝ころんでください」)が表示される。こうした指示は例えば聴覚的に被験者に伝達されてもよい。ステップS4で、そこから所定の時間が計測される。所定の時間(例えば10秒)が経過すると、座臥姿勢が確立されたものとみなされる。ステップS5で制御回路21から判定回路31に動作の開始が指示される。このとき、制御回路21は、副交感神経の優位性を示す指標(以下「副交感神経優位の指標」という)を生成する。指示にあたって判定回路31には副交感神経優位の指標に関連付けられて第1基準周波数が供給される。判定回路31からジャイロセンサー27に駆動電力が供給されると、ジャイロセンサー27の計測が開始される。こうして本体12内のジャイロセンサー27は角速度を検出する。
【0048】
ジャイロセンサー27は検出信号を出力する。出力される検出信号は「安静時」の検出信号に相当する。ステップS6で周波数解析回路28は検出信号に高速フーリエ変換を施す。閾値の周波数以上で検出信号の電力スペクトル密度の周波数特性が算出される。例えば、0.2Hz〜0.3Hz以上でなければ、高速フーリエ変換の算出結果は得られない。こうして検出信号は周波数解析される。周波数解析回路28の出力はフィルター回路29でフィルタリング処理される。その結果、0.1Hz〜20Hzの周波数帯域以外の周波数は除去される。こうして周波数に含まれる外乱は排除される。その後、フィルター回路29の出力は判定回路31に供給される。
【0049】
ステップS7で、判定回路31は、算出された周波数に基づき、被験者の自律神経機能が正常か否かを判定する。判定にあたって判定回路31はフィルター回路29の出力からピーク値周波数を抽出する。判定回路31は副交感神経優位の指標に基づき第1基準周波数にピーク値周波数を照らし合わせる。一般に、自律神経のバランスが整っていれば、座臥姿勢時に副交感神経がより活発化する。自律神経失調症で自律神経のバランスが崩れると、座臥姿勢時に交感神経はより活発化する。その結果、座臥姿勢時にピーク値周波数は交感神経優位周波数に向かって副交感神経優位周波数から離れる。したがって、ピーク値周波数が第1基準周波数以上であれば、自律神経失調症(あるいはその疑い)と判定されることができる。ピーク値周波数が第1基準周波数よりも低ければ、自律神経失調症ではない(その疑いはない)と判定されることができる。判定結果は制御回路21に供給される。判定結果は被験者情報に関連づけられてデータベース24に格納される。データベースにはピーク値周波数そのものが副交感神経優位の指標とともに格納されてもよい。
【0050】
座臥姿勢で診断が終了すると、制御回路21はステップS8で起立姿勢を指示する。制御回路21は表示装置23に画像信号を供給する。画面16には例えば文字で指示(例えば「起立ください」)が表示される。ステップS9で、そこから所定の時間が計測される。所定の時間(例えば10秒)が経過すると、起立姿勢が確立されたものとみなされる。ステップS10で制御回路21から判定回路31に動作の開始が指示される。このとき、制御回路21は、交感神経の優位性を示す指標(以下「交感神経優位の指標」という)を生成する。指示にあたって判定回路31には交感神経優位の指標に関連付けられて第2基準周波数が供給される。判定回路31からジャイロセンサー27に駆動電力が供給されると、ジャイロセンサー27の計測が開始される。ジャイロセンサー27は「活動時」の検出信号を出力する。
【0051】
ステップS6と同様に、ステップS11でジャイロセンサー27の検出信号は周波数解析される。検出信号は、フィルタリング処理された後に、判定回路31に供給される。ステップS12で、判定回路31は、算出された周波数に基づき、被験者の自律神経機能が正常か否かを判定する。判定にあたって判定回路31はフィルター回路29の出力からピーク値周波数を抽出する。判定回路31は交感神経優位の指標に基づき第2基準周波数および第3基準周波数にピーク値周波数を照らし合わせる。自律神経失調症で自律神経のバランスが崩れると、起立姿勢時にピーク値周波数は交感神経優位周波数から離れる。したがって、ピーク値周波数が第2基準周波数以下または第3基準周波数以上であれば、自律神経失調症(あるいはその疑い)と判定されることができる。ピーク値周波数が第2基準周波数よりも高く第3基準周波数よりも低ければ、自律神経失調症ではない(その疑いはない)と判定されることができる。判定結果は制御回路21に供給される。判定結果は被験者情報に関連づけられてデータベース24に格納される。データベースにはピーク値周波数そのものが交感神経優位の指標とともに格納されてもよい。第1基準周波数に基づく診断、および、第2基準周波数および第3基準周波数に基づく診断のうち、いずれかの診断で自律神経失調症が判定されれば、制御回路21は自律神経失調症を判定する。判定結果は画面16に表示される。表示にあたって画像信号が制御回路21から表示装置23に供給される。
【0052】
モード切り替えスイッチ17の操作に応じて「安静時モード」が選択されると、制御回路21は「安静時モード」の動作を実行する。この「安静時モード」では制御回路21はステップS3〜S7の処理に基づき自律神経失調症の当否を診断する。制御回路21は副交感神経優位の指標のみを生成する。したがって、この「安静時モード」ではピーク値周波数は常に副交感神経優位の指標とともにデータベース24に格納される。この「安静時モード」で健常者のピーク値周波数はサンプルとして収集されることができる。収集されたピーク値周波数に応じて副交感神経優位周波数や前述の接近度、第1基準周波数は設定されることができ修正されることができる。このとき、ピーク値周波数は被験者ごとに収集されてもよい。こうした被験者ごとの収集によれば、被験者ごとに最適な第1基準周波数は設定されることができる。診断の精度は高められることができる。
【0053】
モード切り替えスイッチ17の操作に応じて「活動時モード」が選択されると、制御回路21は「活動時モード」の動作を実行する。この「活動時モード」では制御回路21はステップS8〜S12の処理に基づき自律神経失調症の当否を診断する。制御回路21は交感神経優位の指標のみを生成する。したがって、この「活動時モード」ではピーク値周波数は常に交感神経優位の指標とともにデータベース24に格納される。この「活動時モード」で健常者のピーク値周波数はサンプルとして収集されることができる。収集されたピーク値周波数に応じて交感神経優位周波数や前述の逸脱度、第2基準周波数、第3基準周波数は設定されることができ修正されることができる。このとき、ピーク値周波数は被験者ごとに収集されてもよい。こうした被験者ごとの収集によれば、被験者ごとに最適な第2基準周波数および第3基準周波数は設定されることができる。診断の精度は高められることができる。
【0054】
モード切り替えスイッチ17の操作に応じて「情報入力モード」が選択されると、制御回路21は「情報入力モード」の動作を実行する。この「情報入力モード」では制御回路21はステップS2の処理に基づきデータベース24や基準値データ25を書き込むことができ書き換えることができる。こうして被験者情報や副交感神経優位周波数、交感神経優位周波数、接近度、逸脱度、第1基準周波数、第2基準周波数、第3基準周波数は更新されることができる。
【0055】
図8に示されるように、一般には、自律神経のバランスが整っていれば、日中の活動時に交感神経が活発化し、夜間の安静時(例えば睡眠中)には副交感神経が活発化する。制御回路21は、こうした被験者の生活パターンに合わせて交感神経優位の指標または副交感神経優位の指標にピーク値周波数を関連づけることができる。副交感神経優位の指標が生成される際には、ピーク値周波数と第1基準周波数とが比較されればよく、交感神経優位の指標が生成される際には、ピーク値周波数と第2基準周波数および第3基準周波数とが比較されればよい。例えば、自律神経のバランスが崩れる一例では、図9に示されるように、夜間の安静時でも交感神経が活発化する。このとき、被験者の生活パターンに合わせて副交感神経優位の指標が生成されて、ピーク値周波数が第1基準周波数に比べられると、ピーク値周波数は第1基準周波数以上であることが容易に想像される。
【0056】
その他、判定回路31は、例えば副交感神経優位の指標が供給された際に、ピーク値周波数と第2基準周波数とを比較してもよい。この場合には、副交感神経が優位であるべき際に、ピーク値周波数が第2基準周波数を超えると、判定回路31は自律神経失調症(あるいはその疑い)を判定する。このとき、ピーク値周波数が第2基準周波数以下であれば、判定回路31は自律神経失調症ではない(その疑いはない)ことを判定する。反対に、判定回路31は、交感神経優位の指標が生成された際に、ピーク値周波数と第1基準周波数とを比較してもよい。この場合には、交感神経が優位であるべき際に、ピーク値周波数が第1基準周波数を下回ると、判定回路31は自律神経失調症(あるいはその疑い)を判定すればよい。
【0057】
(3)第2実施形態に係る自律神経失調症診断装置の診断動作
判定回路31は、特定の周波数帯域の強度の総和に基づき、生体の自律神経機能が正常か否かを判定してもよい。強度の総和は例えば周波数曲線の積分値で特定されればよい。判定に先立って判定回路31は基準値を特定する。例えば、判定回路31は、図10に示されるように、周波数解析回路28の周波数解析の結果から、交感神経が優位な際に最大の強度を含む周波数帯域36の強度の総和を特定する。周波数帯域36の大きさは、交感神経が優位な際に周波数解析回路28から出力される信号の周波数特性と、副交感神経が優位な際に周波数解析回路28から出力される信号の周波数特性との比較に基づき決定されればよい。比較される2つの周波数帯域の強度の総和に十分な差が確保されればよい。算出された強度の総和は基準値として交感神経優位の指標に関連づけられる。こうして総和の基準値は基準値データ25に格納されることができる。図10から明らかなように、副交感神経が優位な際には、交感神経が優位な際に比べて強度の総和は小さい値を示す。したがって、安静時に強度の総和が基準値に接近すればするほど、判定回路31は自律神経失調症(あるいはその疑い)を判定することができる。
【0058】
(4)第3実施形態に係る自律神経失調症診断装置の診断動作
判定回路31は、特定の周波数帯域の強度の変化の傾きに基づき、生体の自律神経機能が正常か否かを判定してもよい。判定に先立って判定回路31は基準値を特定する。例えば、判定回路31は、図11に示されるように、周波数解析回路28の周波数解析の結果から、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を上限値に含む周波数帯域37の強度の変化の傾きを算出する。周波数帯域37の大きさは任意に設定されればよい。算出された強度の変化の傾きは基準値として交感神経優位の指標に関連づけられる。こうして変化の傾きの基準値は基準値データ25に格納されることができる。図12から明らかなように、副交感神経が優位な際には、交感神経が優位な際に比べて傾きの大きさ(向き)が相違する。したがって、安静時に強度の変化の傾きが基準値に接近すればするほど、判定回路31は自律神経失調症(あるいはその疑い)を判定することができる。
【0059】
(5)ジャイロセンサーの構造
ここで、ジャイロセンサー27の構造を簡単に説明する。図13に示されるように、ジャイロセンサー27は振動片41を備える。振動片41は例えば水晶から形成される。振動片41は中心体42を備える。中心体42は4本の梁43で固定部材44に連結される。固定部材44は測定対象物に固定される。梁43の変形に応じてxy平面内で中心体42の変位および回転は許容される。梁43はxy平面に直交するz軸方向に中心体42の動きを規制する。
【0060】
中心体42には中心点45が設定される。中心体42には1対の検出振動腕46が接続される。検出振動腕46はxy平面に沿ってy軸方向に中心体42から相互に離れる方向に延びる。中心体42には1対の連結腕47を介して2対の駆動振動腕48が接続される。連結腕47はxy平面に沿ってx軸方向に中心体42から相互に離れる方向に延びる。駆動振動腕48はxy平面に沿って検出振動腕46に平行に延びる。個々の対では駆動振動腕48は連結腕47の先端から相互に離れる方向に延びる。
【0061】
角速度の検出にあたって個々の駆動振動腕48には2つの電極49、51から駆動電力が供給される。駆動振動腕48で自励振動が引き起こされる。駆動振動腕48はxy平面内で連結腕47の先端回りに揺動する。駆動振動腕48aと駆動振動腕48bとは中心点45を含むyz平面で面対称に振動することから、中心体42および検出振動腕46はほとんど振動しない。このとき、検出振動腕48はほとんど変形しない。したがって、電極52、53から信号は検出されない。自励振動は維持される。
【0062】
中心点45にz軸回りで角速度が加わると、駆動振動腕48a、48bにコリオリ力が加わる。このコリオリ力の作用で駆動振動腕48a、48bの振動は連結腕47の先端回りの揺動から駆動振動腕48a、48bの軸方向の移動へ移行する。このコリオリ力に基づく振動は中心点45を通るz軸回りに中心体42の振動を励起する。この振動に応じて検出振動腕46は歪む。この歪みの圧電効果に基づき電極52、53から信号が検出される。
【0063】
こうしたジャイロセンサー27によれば、2つの検出振動腕46からの信号が差動増幅されることができる。その結果、ジャイロセンサー27に加速度が作用しても、加速度の成分は打ち消されることができる。角速度だけが抽出されることができる。こういったジャイロセンサー27が自律神経失調症診断装置11に用いられると、角速度として生体のマイクロバイブレーションは検出されることができる。加速度に相当する外乱は特別なフィルターなしに除去されることができる。その結果、自律神経失調症の診断の精度は高められることができる。なお、ここに例示されるジャイロセンサー27は一例に過ぎず、ジャイロセンサー27には他の構造のものが用いられてもよい。
【0064】
(6)加速度センサーの構造
自律神経失調症診断装置11では前述のジャイロセンサー27に代えて加速度センサー(物理量検出手段)が用いられてもよい。加速度センサーは生体の振動により発生する加速度(物理量)を検出する。加速度センサーの構造を簡単に説明する。図14に示されるように、加速度センサー61は3つの双音叉型水晶振動子(以下「振動子」という)62a、62b、62cを備える。個々の振動子61a、61b、61cは相互に平行に延びる1対の振動梁62を備える。振動梁62は固定端63と可動端64とを接続する。振動子61a、61b、61cの固定端63は固定部材65に固着される。固定部材65は測定対象物に固定される。振動子61a、61b、61cの可動端64は共通1個の錘66に連結される。固定部材65や錘66は例えばアルミニウムから成形されることができる。ここでは、錘66は立方体に形作られる。錘66の1つの頂点67は直交三軸座標系の原点に相当する。当該頂点67で接続される3つの稜線はそれぞれ直交三軸座標系のx軸、y軸およびz軸を規定する。1つ目の振動子61aはxy平面上でx軸に沿って延びる。2つ目の振動子61bはyz平面上でy軸に沿って延びる。3つ目の振動子61cはzx平面上でz軸に沿って延びる。外力が作用して錘66に加速度が加わると、加速度のx軸方向成分、y軸方向成分およびz軸方向成分に応じて個々の振動子61a、61b、61cごとに振動梁62に伸縮が引き起こされる。
【0065】
図15に示されるように、個々の振動子61a、61b、61cでは振動梁62に駆動電圧が供給される。駆動電圧の供給にあたって、第1引き出し電極67には、一方の振動梁62から、第1外側電極68、第2上面電極69、第3内側電極71、他方の振動梁62の第3下面電極72、第2外側電極73および第1上面電極74が順番に連結され、他方の振動梁62から、第1下面電極75、第2内側電極76、第3上面電極77、一方の振動梁62の第3外側電極78、第2下面電極(図示されず)および第1内側電極79が順番に連結される。同様に、第2引き出し電極81には、一方の振動梁62から、第1上面電極82、第2内側電極83、第3下面電極(図示されず)、他方の振動梁62の第3外側電極84、第2上面電極85および第1内側電極86が順番に連結され、他方の振動梁62から、第1外側電極87、第2下面電極88、第3内側電極89、一方の振動梁62の第3上面電極91、第2外側電極92、第1下面電極(図示されず)が順番に連結される。第1引き出し電極67および第2引き出し電極81の間に交流電圧が印加されると、個々の振動梁62は所定の周波数で屈曲振動する。振動梁62の伸縮に応じて圧電効果の働きで交流電圧の周波数は変化する。変化量に応じて加速度の大きさは検出されることができる。
【0066】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれる。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えられることができる。また、自律神経失調症診断装置、ジャイロセンサーおよび加速度センサー等の構成および動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0067】
11 自律神経失調症診断装置、21 指標生成手段(制御回路)、23 表示手段(表示装置)、27 物理量検出手段および角速度センサー(ジャイロセンサー)、28 周波数算出手段(周波数解析回路)、31 判定手段(判定回路)、61 物理量検出手段(加速度センサー)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の振動により発生する物理量を検出し、検出信号を出力する物理量検出手段と、
出力された前記検出信号の周波数を算出する周波数算出手段と、
算出された前記周波数に基づき、前記生体の自律神経機能を判定する判定手段と
を備えることを特徴とする自律神経失調症診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自律神経失調症診断装置において、
前記周波数算出手段は、前記検出信号を周波数解析し、
前記判定手段は、前記周波数解析の結果から、最大の強度を示すピーク値周波数を抽出し、副交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の上限周波数で設定される基準周波数に前記ピーク値周波数を照らし合わせる
ことを特徴とする自律神経失調症診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自律神経失調症診断装置において、
前記周波数算出手段は、前記検出信号を周波数解析し、
前記判定手段は、前記周波数解析の結果から、最大の強度を示すピーク値周波数を抽出し、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の下限周波数で設定される基準周波数に前記ピーク値周波数を照らし合わせる
ことを特徴とする自律神経失調症診断装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自律神経失調症診断装置において、
前記物理量検出手段は、前記生体の安静時および活動時の前記物理量を検出し、前記安静時および活動時の検出信号を出力し、
前記周波数算出手段は、前記安静時および活動時の検出信号を周波数解析し、
前記判定手段は、
前記安静時の周波数解析の結果から、最大の強度を示す第1ピーク値周波数を抽出し、副交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の上限周波数で設定される第1基準周波数に前記第1ピーク値周波数を照らし合わせ、かつ、
前記活動時の周波数解析の結果から、最大の強度を示す第2ピーク値周波数を抽出し、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の下限周波数で設定される第2基準周波数に前記第2ピーク値周波数を照らし合わせる
ことを特徴とする自律神経失調症診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自律神経失調症診断装置において、
交感神経の優位性を示す指標を生成する指標生成手段をさらに備え、
前記周波数算出手段は、交感神経が優位な際に前記物理量検出手段から出力される前記検出信号を周波数解析し、
前記判定手段は、
前記交感神経が優位な際の周波数解析の結果から、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の強度の総和を特定し、前記指標に当該総和を基準値として関連づけ、
前記生体の安静時の周波数解析の結果から、前記周波数帯域の強度の総和を算出し、前記基準値に照らし合わせる
ことを特徴とする自律神経失調症診断装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自律神経失調症診断装置において、
交感神経の優位性を示す指標を生成する指標生成手段をさらに備え、
前記周波数算出手段は、交感神経が優位な際に前記物理量検出手段から出力される前記検出信号を周波数解析し、
前記判定手段は、
前記交感神経が優位な際の周波数解析の結果から、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を上限値に含む周波数帯域の強度の変化の傾きを算出し、前記指標に当該傾きを基準値として関連づけ、
前記生体の安静時の周波数解析の結果から、前記周波数帯域の強度の変化の傾きを算出し、前記基準値に照らし合わせる
ことを特徴とする自律神経失調症診断装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の自律神経失調症診断装置において、
前記生体の自律神経機能の判定結果を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする自律神経失調症診断装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の自律神経失調症診断装置において、前記物理量検出手段は加速度センサーまたは角速度センサーであることを特徴とする自律神経失調症診断装置。
【請求項9】
生体の振動により発生する物理量を検出し、検出信号を取得する工程と、
前記検出信号の周波数を算出する工程と、
算出された前記周波数に基づき、前記生体の自律神経機能を判定する工程と
を備えることを特徴とする自律神経失調症診断方法。
【請求項10】
請求項9に記載の自律神経失調症診断方法において、
前記周波数の算出にあたって、前記検出信号を周波数解析する工程と、
前記周波数解析の結果から、最大の強度を示すピーク値周波数を抽出し、副交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の上限周波数で設定される基準周波数に前記ピーク値周波数を照らし合わせる工程と
を備えることを特徴とする自律神経失調症診断方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の自律神経失調症診断方法において、
前記周波数の算出にあたって、前記検出信号を周波数解析する工程と、
前記周波数解析の結果から、最大の強度を示すピーク値周波数を抽出し、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の下限周波数で設定される基準周波数に前記ピーク値周波数を照らし合わせる工程と
を備えることを特徴とする自律神経失調症診断方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の自律神経失調症診断方法において、
前記生体の安静時の前記物理量を検出し、検出信号を取得する工程と、
前記周波数の算出にあたって、前記安静時の検出信号を周波数解析する工程と、
前記安静時の周波数解析の結果から、最大の強度を示す第1ピーク値周波数を抽出し、副交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の上限周波数で設定される基準周波数に前記第1ピーク値周波数を照らし合わせる工程と、
前記生体の活動時の前記物理量を検出し、検出信号を取得する工程と、
前記周波数の算出にあたって、前記活動時の検出信号を周波数解析する工程と、
前記活動時の周波数解析の結果から、最大の強度を示す第2ピーク値周波数を抽出し、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の下限周波数で設定される第2基準周波数に前記第2ピーク値周波数を照らし合わせる工程と
を備えることを特徴とする自律神経失調症診断方法。
【請求項13】
請求項9に記載の自律神経失調症診断方法において、
交感神経が優位な際に取得される前記検出信号を周波数解析する工程と、
前記交感神経が優位な際の周波数解析の結果から、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を含む周波数帯域の強度の総和を特定し、交感神経の優位性を示す指標に当該総和を基準値として関連づける工程と、
前記生体の安静時の周波数解析の結果から、前記周波数帯域の強度の総和を算出し、前記基準値に照らし合わせる工程と
を備えることを特徴とする自律神経失調症診断方法。
【請求項14】
請求項9に記載の自律神経失調症診断方法において、
交感神経が優位な際に取得される前記検出信号を周波数解析する工程と、
前記交感神経が優位な際の周波数解析の結果から、交感神経が優位な際に最大の強度を示す周波数を上限値に含む周波数帯域の強度の変化の傾きを算出し、交感神経の優位性を示す指標に当該傾きを基準値として関連づける工程と、
前記生体の安静時の周波数解析の結果から、前記周波数帯域の強度の変化の傾きを算出し、前記基準値に照らし合わせる工程と
を備えることを特徴とする自律神経失調症診断方法。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか1項に記載の自律神経失調症診断方法において、前記物理量は加速度または角速度であることを特徴とする自律神経失調症診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−39265(P2013−39265A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178782(P2011−178782)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】