説明

自然災害発生検知装置

【課題】災害検知線を引き回すことで広範囲な場所での断線及び短絡の発生を一つの回路で選択的に検知できる自然災害発生検知装置を得る。
【解決手段】電流が流れることにより災害検知線の断線を検知する断線検知回路と、電流が流れることにより災害検知線の短絡を検知する短絡検知回路と、自然災害発生予測領域に設置した定電流器とを直流電源に対してそれぞれ並列に接続し、前記災害検知線は、前記定電流器に対して配線を引き回して接続するとともに、配線における導電性部分が露出した裸線部を有する一方、前記災害検知線が正常である場合には前記断線検知回路及び前記短絡検知回路に電流を流すことなく、前記災害検知線が断線した際に前記断線検知回路にのみ選択的に電流を流すとともに、前記災害検知線が短絡した際に前記短絡検知回路にのみ選択的に電流を流すように構成した制御回路を有して自然災害発生検知装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道施設、自動車道路、発電所、工場、農地、人家に対する自然災害、例えば、暴風雨、豪雨等による冠水、傾斜地に生じる土石流・地すべり・雪崩、河川の氾濫等、広範囲な地域に発生する自然災害の発生を予測して検知するための自然災害発生検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば土砂崩れ・雪崩・河川の氾濫等の自然災害が起こる場合には、その前兆として土砂の移動や河川の増水等による地形状態又は水位状態(以下、土地状態等という)の変化が発生するので、土地状態等の変化をセンサで検知すれば自然災害の発生を予測して検知することができる。
自然災害の発生を予測して検知する装置としては、図9に示すように、抵抗A,抵抗A´,抵抗B,抵抗B´で構成されるブリッジ回路60において、抵抗B´に対して断線感知器を直列に接続するとともに、抵抗B´に対して短絡感知器を並列に接続する構成が存在する。断線感知器及び短絡感知器は、自然災害が発生し易い場所に設置して自然災害の前兆となる土地状態等の変化(例えば土砂の移動が発生すること)による機械的な動作により接点が閉じる(若しくは開く)構成により、その設置場所における断線や短絡をスポット的に感知するものである。
そして、上記回路において、「抵抗Aの抵抗値=抵抗A´の抵抗値」「抵抗Bの抵抗値=抵抗B´の抵抗値+配線抵抗C」とすることで、通常時においてブリッジ回路の平衡性を維持し、断線感知器61や短絡感知器62で断線や短絡を感知した場合にブリッジ回路60の抵抗値の平衡性が崩れることで、ブリッジ回路60の中間位置同士間に接続された検知器65に電流が流れて断線や短絡の発生を検知するものである。
【0003】
また、雪崩等の自然災害を検知するに際して、その規模や発生時期の把握を行うことができる装置としては、特許文献1のような自然災害発生検出装置が提案されている。
【特許文献1】特許第3715493号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9に示した自然災害発生検出装置の構造によれば、断線感知器及び短絡感知器の接点は、平常時にオン状態とし土石流や土砂流による浸水が生じた時にオフ状態となる(若しくは、逆にオフ状態からオン状態になる)機械的な動作を伴う構成であるため、動作完了までに時間を要し土地状態等の変化を感知するのにタイムラグが生じるという問題点があった。
また、上記構造によれば、断線感知器61や短絡感知器62を設置した場所でのスポット的な点検知であり、ある程度の範囲で検知を行うためには、多数の感知器を設置する必要があり、費用がかかるという問題があった。すなわち、上述の自然災害発生検出装置では、断線や短絡の発生を広域範囲な一定領域で検知(線状的な検知)することができないという問題点があった。
【0005】
また、上述した自然災害発生検出装置によれば、ブリッジ回路60において抵抗値の均衡を保つため、「抵抗Bの抵抗値=抵抗B´の抵抗値+配線抵抗C」であることが要件となり、配線抵抗Cは設置場所の配線の長さにより変動するので、それに応じて抵抗B´の抵抗値を調整することが必要となり煩雑であるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたもので、災害検知線を引き回すことで広範囲な場所での断線及び短絡の発生を一つの回路で選択的に検知できる自然災害発生検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の自然災害発生検知装置は、電流が流れることにより災害検知線の断線を検知する断線検知回路と、電流が流れることにより災害検知線の短絡を検知する短絡検知回路と、自然災害発生予測領域に設置した定電流器とを直流電源に対してそれぞれ並列に接続し、
前記災害検知線は、前記定電流器に対して配線を引き回して接続するとともに、配線における導電性部分が露出した裸線部を有する一方、
前記災害検知線が正常である場合には前記断線検知回路及び前記短絡検知回路に電流を流すことなく、前記災害検知線が断線した際に前記断線検知回路にのみ選択的に電流を流すとともに、前記災害検知線が短絡した際に前記短絡検知回路にのみ選択的に電流を流すように構成した制御回路と、
を具備することを特徴としている。
【0008】
請求項2の自然災害発生検知装置は、第1のトランジスタが導通状態となって電流が流れることにより災害検知線の断線を検知する断線検知回路と、第2のトランジスタが導通状態となって電流が流れることにより災害検知線の短絡を検知する短絡検知回路と、自然災害発生予測領域に設置した定電流器とを直流電源に対してそれぞれ並列に接続して成り、次の構成を含むことを特徴としている。
前記災害検知線は、前記定電流器に対して配線を引き回して接続する。
前記災害検知線は、配線における導電性部分が露出した裸線部を有する。
前記第1のトランジスタのオン・オフ制御を行う第3のトランジスタを設ける。
前記第3のトランジスタのベースに電位差を発生させるための断線検知側電位差抵抗を設ける。
前記第2のトランジスタのオン・オフ制御を行う第4のトランジスタを設ける。
前記第4のトランジスタのオン・オフ制御を行う第5のトランジスタを設ける。
前記第5のトランジスタのベースに接続された定電圧ダイオードを設ける。
前記定電圧ダイオードに電位差を発生させるための短絡検知側電位差抵抗を設ける。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の自然災害発生検知装置において、前記災害検知線は導電性部分が被覆された被覆部を有し、この被覆部を支柱に固定して自然災害発生予測領域に設置して成ることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2に記載の自然災害発生検知装置において、前記定電流器は、自然災害発生予測領域において、災害検知線の短絡が発生し易い箇所に設置して成ることを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項2に記載の自然災害発生検知装置において、前記直流電源の+端子側に、ON/OFFスイッチから構成される誤動作判別回路を接続したことを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項2又は請求項5に記載の自然災害発生検知装置において、 前記直流電源の−端子側に、断線検知回路及び短絡検知回路側と、断線検知側電位差抵抗及び短絡検知側電位差抵抗とを選択的に接続する選択スイッチを含んで構成される誤動作判別回路を接続したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、定電流器に対して配線を引き回して接続することで災害検知線を構成するので、災害検知線において地形に適した引き回し線の構造を得ることができ、災害検知線の断線や短絡を検知しやすい構成とすることができるとともに、配線を引き回した広い範囲において災害の発生を予測して検知(線状検知)することができる。
【0014】
自然災害発生予測領域に設置した定電流器に接続された災害検知線に対して、断線検知回路及び短絡検知回路が並列に接続されているので、同一地点の断線検知及び短絡検知を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の一例について、図面を参照しながら説明する。
本発明の自然災害発生検知装置は、自然災害発生予測領域に設置した定電流器4と、定電流器4に接続された災害検知線3と、災害検知線3の断線を検知する断線検知回路1と、災害検知線3の短絡を検知する短絡検知回路2と直流電源5に対してそれぞれ並列に接続して構成されている。
【0016】
断線検知回路1は、断線検知回路1に直列に接続された第1のトランジスタ10が導通状態となって電流が流れることにより、この電流値を計測回路(図示せず)で測定することで災害検知線3の断線を検知し、例えばリレー回路(図示せず)を動作させ、自然災害検知装置が設置された近隣に災害発生を知らせる警報器を駆動(警報を鳴らす)して報知するようにしたり、有線・無線・衛星通信で消防署等に通達するように構成されている。
第1のトランジスタ10のベース側には、この第1のトランジスタ10のオン・オフ制御を行うための第3のトランジスタ11のコレクタ側が接続されている。第3のトランジスタ11のベース・エミッタ間には、第3のトランジスタ11のベースに電位差を発生させるための断線検知側電位差抵抗12が接続されることで、第1のトランジスタ10のオン・オフを制御する制御回路が構成されている。
【0017】
短絡検知回路2は、短絡検知回路2に直列に接続された第2のトランジスタ20が導通状態となって電流が流れることにより、この電流値を計測回路(図示せず)で測定することで災害検知線の短絡を検知し、例えばリレー回路(図示せず)を動作させ、自然災害検知装置が設置された近隣に災害発生を知らせる警報器を駆動(警報を鳴らす)して報知するようにしたり、有線・無線・衛星通信で消防署等に通達するように構成されている。
第2のトランジスタ20のベース側には、この第2のトランジスタのオン・オフ制御を行う第4のトランジスタ21のコレクタ側が接続されている。第4のトランジスタ21のベース・エミッタ間には、この第4のトランジスタ21のオン・オフ制御を行う第5のトランジスタ22が接続されている。
第5のトランジスタ22のベース側には定電圧ダイオード23が接続され、この定電圧ダイオードと第5のトランジスタのエミッタ間に、定電圧ダイオード23を介して、この定電圧ダイオード23に電位差を発生させて第5のトランジスタのベースに電流を流すための短絡検知側電位差抵抗24が接続されている。
したがって、第4のトランジスタ21、第5のトランジスタ22、定電圧ダイオード23、短絡検知側電位差抵抗24により、第2のトランジスタ20のオン・オフを制御する制御回路が構成されている。
【0018】
断線検知側電位差抵抗12において、第3のトランジスタ11のベースに接続された側は、災害検知線3及び定電流器4に接続されている。
同様に、短絡検知側電位差抵抗24において、第5のトランジスタ22のベースに接続された側は、災害検知線3及び定電流器4に接続されている。
【0019】
定電流器4は、災害検知線3の正常時に回路に一定の電流が流れるようにするためのもので、例えば抵抗から構成されている。災害検知線3に短絡が発生した場合、図2に示すように、短絡箇所の抵抗Rsとして配線抵抗を無視すると、合成抵抗値Rt(全体の抵抗)は、抵抗Rsと定電流器4の抵抗R1と並列接続となり、その値は(RRs/(R+Rs))となる。この合成抵抗値Rtは、Rの値より小さくなるので、正常時及び短絡時の直流電源電圧をVとすると、正常時に災害検知回路3を流れる電流I(V/R)に対して、短絡時の短絡電流Isは、Is=V/Rtとなり、Rt<Rであるため、電流Iより大きな値となる。この短絡電流Is(V/Rt)が災害検知線3の正常時に流れる電流I(V/R)と十分区別できる値となるように,予め定電流器4の抵抗Rが設定されている。
【0020】
災害検知線3は、定電流器4に対して自然災害の発生を予測して検知したい場所(丘陵の斜面や頂上部、谷、河川・湖の堤防等)に配線を引き回して接続するようになっている。この構成により、配線を引き回した広い範囲において、災害検知線3に発生する断線や短絡を検知可能とすることで、自然災害の前兆となる土地状態等の変化を検知することができる。
配線の引き回しの具体的な構造は、自然災害の発生を予測して検知し易い場所や検知したい災害の種類によって異なるものであり、具体的な配線の引き回し例については後述する。
【0021】
また、災害検知線3は、短絡情報を得るために、配線の被覆部3bを除去して導電性部分が露出した裸線部3aを有するように構成されている。この裸線部3aは、災害検知線3の全体に亘って連続して形成されるものでも良いが、被覆部3bと裸線部3aとが交互に形成されるものが好ましい。すなわち、災害検知線3は災害発生地域に引き回して設置されるが、配線の全てが裸線部である場合には、この裸線部を所定の間隔をもって地面に設置される支柱に固定しなければなない。その場合、風等による揺れの繰り返し荷重を受け、晴天時でも断線が生じることから誤作動の要因となる可能性がある。
これに対して、図3(a)に示すように、災害検知線3の被覆部3bを支柱6に固定すれば、揺れによる断線発生を防止でき、断線検知に対する信頼性の向上を図ることができる。災害地域の地面に設置する支柱6の間隔は、地形、風土や環境及び土質の相違により異なるため、裸線部3aに対する被覆部3bの位置についても不規則な間隔に設けられている。
【0022】
図3(a)は、災害検知線3による断線検知を主として検知する場合の設置方法であるが、短絡検知を検知させる場合には、図3(b)に示すように、それぞれ水平板7aを有する支柱7,7を支柱6に対して配設し、支柱7,7の水平板7aの両端で裸線部を拡げて支持することで、支柱6に固定された被覆部に対して裸線部同士を近接位置に配置する。この構造によれば、比較的に近い位置に裸線部同士が位置させることが可能となるので、土砂や雪崩等(導電性を有する)を介して裸線部同士が接続することで短絡状態を検知できる。
【0023】
次に、上記構造の自然災害発生検知装置による災害検知線3の正常時、断線時、短絡時における回路動作について、図4(a)〜(c)を参照しながらそれぞれ説明する。
(正常時)
災害検知線3に断線や短絡がない正常時の場合(図4(a))、定電流器4の抵抗値Rを含む回路の抵抗値の抵抗値Rは、配線抵抗Rを考慮した場合、R=R+Rとなる。ただし、Rは、「R=(R×R)/(R+R)+検知線3の抵抗値」で示される。したがって、直流電源電圧をVとすると、災害検知線3には電流I(=V/(R+R))が流れる。
この電流Iにより短絡検知側電位差抵抗24の抵抗R2の両端(第5のトランジスタ22のエミッタと定電圧ダイオード23間)に電位差が発生するが、電流Iが小さいので定電圧ダイオード23が動作に十分な電位差が生じない。そのため、第5のトランジスタ22はオフ状態を維持する。
第4のトランジスタ21のベース・エミッタ間に直流電源5による電源電圧がかかりベース電流が流れる。その結果、第4のトランジスタ21がオン状態となり、第2のトランジスタ20がオフ状態となる。
同時に電流Iにより断線検知側電位差抵抗12の抵抗R3の両端(第3のトランジスタ11のエミッタとベース間)に電位差が発生する。電流Iは小さいが第3のトランジスタ11を導通させるに十分な電位差が発生する。その結果、第3のトランジスタ11がオン状態となり、第1のトランジスタ10がオフ状態を維持する。
【0024】
(断線時)
災害検知線3のいずれかの箇所に断線が生じた場合(図4(b))、災害検知線3には断線により電流が流れない。したがって、短絡検知側電位差抵抗24の抵抗R2の両端(第5のトランジスタ22のエミッタと定電圧ダイオード23間)に電位差が発生せず、定電圧ダイオード23が動作しない。そのため、第5のトランジスタがオフ状態を維持する。
一方、第4のトランジスタ21のベース・エミッタ間には直流電源5による電源電圧がかかり、ベース電流が流れるため、第4のトランジスタ21がオン状態となり、第2のトランジスタ20がオフ状態を維持する。
第3のトランジスタについては、断線検知側電位差抵抗12に電流が流れないので抵抗R3の両端に電位差が発生せず、第3のトランジスタ11がオフ状態となる。その結果、第1のトランジスタ10のベース・エミッタ間に直流電源5による電源電圧がかかり、第1のトランジスタ10がオン状態となり、断線検出回路1に電流が流れて断線発生を検知する。
【0025】
(短絡時)
災害検知線3のいずれかの箇所に短絡が生じた場合(図4(c))、災害検知線3には短絡箇所により抵抗値が変動するので、それに応じた短絡電流Isが流れる。この短絡電流Isは、定電流器4の抵抗R1を流れないので、正常時に流れる電流Iよりも十分大きい値となる。
そして、この短絡電流Isにより短絡検知側電位差抵抗24の抵抗R2の両端(第5のトランジスタ22のエミッタと定電圧ダイオード23間)に定電圧ダイオード23が動作に十分な電位差が発生し、第5のトランジスタ22がオン状態となることで、第4のトランジスタ21にベース電流が流れず、第4のトランジスタ21がオフ状態を維持する。
第4のトランジスタ21がオフ状態を維持した場合、第2のトランジスタ20のベース・エミッタ間に短絡電流Isの電圧効果による電圧差が発生し、第2のトランジスタ20がオン状態となり、短絡検出回路2に電流が流れて短絡発生を検知する。
同時に、短絡電流Isにより断線検知側電位差抵抗12の抵抗R3の両端(第3のトランジスタ11のエミッタとベース間)に電位差が発生し、第3のトランジスタ11がオン状態となり、第1のトランジスタ10がオフ状態を維持する。
【0026】
災害検知線3に短絡が発生した場合、短絡箇所の短絡抵抗Rs,断線検知回路1及び短絡検知回路2側の配線抵抗Rx,定電流器4側の配線抵抗Ryとすると、合成抵抗値Rtは、定電流器4の抵抗R1と短絡抵抗Rsとの合成抵抗に配線抵抗Rx,Ryを加算した値、すなわち、Rt=Rx+Ry+(RRs/(R+Rs))となるので、短絡電流Isの値は、直流電源電圧Vを合成抵抗値Rtで除した値(V/Rt)となる。
短絡が生じた部分の短絡抵抗Rsについては、土質、土砂や雪崩に含まれる水分や不純物の量により異なる値となる。そして、前記した合成抵抗値Rtが小さくなれば、大きい短絡電流Isが流れることになる。
短絡電流Isは異常発生を検知するため、ある一定値以上である(正常時の電流値と区別できる)必要があるが、短絡電流Isの値が同じ大きさであるとすると、配線抵抗を含む合成抵抗値Rtが同じ大きさとなる。その場合、定電流器4の抵抗Rを小さくすることにより、合成抵抗値Rtにおける配線抵抗の値を大きく設定することができる。
配線抵抗を大きく設定できるということは、芯径が同じ災害検知線3を使用した場合、それだけ長く引き回すことが可能であることを意味するので、より広範囲の領域における災害の検知を行うことができ、短絡予報の信頼性を向上させることができる。
したがって、合成抵抗値Rtの値に影響する定電流器4の抵抗Rは、可能な範囲で小さくなるように設定するのが好ましい。
【0027】
また、定電流器が設置された箇所に災害の前兆となる土地状態等の変化が発生し定電流器を含んで短絡したような場合、定電流器の抵抗値を考慮することなく、短絡が生じた部分の抵抗で短絡電流が定まるので、合成抵抗値より小さい値となり短絡電流も大きくなる。したがって、定電流器の設置場所は、土砂崩れや雪崩等の災害が発生し易い場所するのが好ましい。
【0028】
上記した自然災害発生検知装置の回路構成によれば、災害検知線3に断線や短絡が発生した場合、定電流器4に電流が流れない(断線時)、又は、正常時に定電流器4に流れる電流に対して大きな電流値である短絡電流が流れる(短絡時)ことにより、直流電源に対してそれぞれ並列に接続された断線検知回路1又は短絡検知回路2を動作させ、広い範囲の同一地域に対して断線であるか短絡であるかの検知を行うことができる。
災害検知線の断線及び短絡の発生は、断線検知回路1又は短絡検知回路2に電流が流れるか否かで判断されるため、災害予測検知の異常発生に対してタイムラグなく断線及び短絡の発生を検知することができる。
【0029】
続いて、配線構造の具体的な引き回し例について、図5及び図6を参照しながら説明する。
例えば、図5(a)に示すように谷における災害発生を予測して検知する場合には、図6(a)に示すように、降雨に際して水を含み易い谷の上部に定電流器4を設置し台形状に災害検知線3を引き回して構成する。
【0030】
図5(b)に示すような山や丘陵における災害発生を予測して検知する場合には、図6(b)に示すように、降雨に際して水を含んで崩れ易い頂上部に配線中央に位置する定電流器4を設置し、両側に配線の往復路を繰り返した方形状に災害検知線3を引き回して構成する。
【0031】
図5(c)に示すような河川・湖の堤防に設置する場合には、図6(c)に示すように、氾濫が生じ易い川上部に定電流器4を設置し、往復する配線を方形状に災害検知線3を引き回して構成する。
【0032】
図5(d)に示すような傾斜面における強度舗装地に設置する場合には、図6(d)に示すように、降雨に際して水を含んで崩れ易い上部位置に配線中央に位置する定電流器4を設置し、配線の往復路を繰り返した方形状に災害検知線3を引き回して構成する。
また、地形が複雑な場所に設置する場合には、これらの引き回し線の構成を組み合わせた引き回しの構成であってよい。
【0033】
図5(a)〜(d)に示したいずれの地形においても、降雨等の自然現象に対して水を含んで崩れ易い箇所(例えば上部)や水分を含み易い箇所(災害検知線の短絡が発生し易い箇所)に定電流器4を設置することで、災害の前兆となる土地状態等の変化発生時の短絡電流値を大きくすることができ、災害発生検知装置の予報感度を高めることができる。
【0034】
また、災害検知線3は、定電流器4に対して配線を引き回して接続することで構成されるので、災害検知線3において地形に適した引き回し線の構造を得ることができ、災害発生を予測検知しやすい構成とすることができるとともに、災害検知線3を引き回した広い範囲において災害予測の検知(線状検知)を可能とすることができる。
同一地域の配線を結ぶ定電流器4(R)の値を可能な限り小さくするように設定することは、水分を含む自然災害予報を行い次に生ずる地形変化による断線で災害発生を予測して検知して報知するに際して、信頼性の高い報知を行うことができる。
【0035】
次に、誤動作判別回路が接続された自然災害発生検知装置の実施例について、図7及び図8を参照しながら説明する。
図7は、図1の自然災害発生検知装置に対して、直流電源の+端子側に、ON/OFFスイッチS1から構成される誤動作判別回路40を接続して構成されている。図中、図1の回路図と同一構成をとる部分については同一符号を付している。
【0036】
図7の回路中、第1のトランジスタ10に直列に接続されるダイオード13は、誘導電圧を防止して第1のトランジスタ10に電流が逆流するのを防止するものである。断線検知回路1に対して並列に接続されるダイオード14は、誘導電圧を防止して断線検知回路1に電流が逆流するのを防止するものである。断線検知回路1に対して並列に接続される発光ダイオード15は、誤動作確認にために点灯させるものであり、発光ダイオード15に直列に接続される抵抗16は、発光ダイオード15に小電流が流れるようにするためのものである。
【0037】
同様に、第2のトランジスタ20に直列に接続されるダイオード25は、誘導電圧を防止して第2のトランジスタ20に電流が逆流するのを防止するものである。短絡検知回路2に対して並列に接続されるダイオード26は、誘導電圧を防止して短絡検知回路2に電流が逆流するのを防止するものである。短絡検知回路2に対して並列に接続される発光ダイオード27は、誤動作確認にために点灯させるものであり、発光ダイオード27に直列に接続される抵抗28は、発光ダイオード27に小電流が流れるようにするためのものである。
【0038】
上記構成の回路によれば、ON/OFFスイッチS1を閉じた状態で断線検知装置1又は短絡検知回路2に電流が流れた場合、発光ダイオード15又は発光ダイオード27に電流が流れて点灯し、断線又は短絡の発生を知らせる。この動作の正誤を判別するに場合に、ON/OFFスイッチS1を一度オフ状態とし、再度オン状態にすると、誤報である場合は、災害検知線3が正常であるので断線検知回路若しくは短絡検知回路の動作が消滅する。正報である場合は、断線検知回路若しくは短絡検知回路の動作が続行されるので、誤動作であるか否かの判別を行うことができる。
【0039】
図8は、自然災害発生検知装置の追加・補修工事を行うに場合に、適切に工事されたか否かの試験を断線検知回路や短絡検知回路の動作なしに発光ダイオードの点灯のみで確認できる機能を有する誤動作判別回路を接続した例である。
すなわち、図1の自然災害発生検知装置に対して、直流電源の−端子側に、断線検知回路1及び短絡検知回路2側と、断線検知側電位差抵抗12及び短絡検知側電位差抵抗24とを選択的に接続する選択スイッチS2を含んで構成される誤動作判別回路50を接続して構成されている。この回路では、断線検知回路1及び短絡検知回路2側と、断線検知側電位差抵抗12及び短絡検知側電位差抵抗24との間に逆流防止用のダイオード51が選択スイッチS2に対して接続されている。
【0040】
上記構成の回路によれば、自然災害検知装置の追加・補修工事を行うに際して、選択スイッチS2を接点1側に接続した状態で、災害検知線3側の断線テストや短絡テストを行った場合においても、発光ダイオード15又は発光ダイオード27にのみ電流が流れ、断線検知装置1又は短絡検知回路2を動作させることなく、断線又は短絡の発生の確認(誤動作確認)の試験を行うことができる。
そして、追加・補修工事終了後に、選択スイッチS2を接点2側に接続した状態とすれば、図1と同様の断線検知装置1及び短絡検知回路2による災害検知を行うことができる。
【0041】
また、直流電源の+端子側に接続される誤動作判別回路40と、直流電源の−端子側に接続される誤動作判別回路50の双方を設けたものであれば、自然災害検知装置の災害検知線等の追加工事や補修工事、メンテナンスに長時間必要な場合に際して、誤動作判別回路40のON/OFFスイッチS1をオフ状態とすることで、災害検知線3側への電圧供給を遮断させることができるので、電力消費を少なくして省エネルギー化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の自然災害発生検知装置によれば、自然災害の発生が予測される領域に災害検知線を設置することにより、災害検知線の断線検知及び短絡検知について、信頼性の高い検知を行うことができる。
そして、断線検知及び短絡検知を行うことで、自然災害発生予測領域における土地状態等の変化を検知して災害発生の予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の自然災害発生検知装置の回路説明図である。
【図2】災害検知線に短絡が発生した場合の合成抵抗値を説明するための災害検知線及び定電流器部分の回路説明図である。
【図3】(a)(b)は本発明の自然災害発生検知装置における災害検知線の地面への設置例を示す斜視説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の自然災害発生検知装置の動作を説明するための回路説明図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の自然災害発生検知装置を設置する場所の例を示した地形説明図である。
【図6】(a)〜(d)は、本発明の自然災害発生検知装置における災害検知線の引き回し例を示す配線説明図である。
【図7】直流電源の+側に誤動作判別回路を付加した自然災害発生検知装置の実施例の回路説明図である。
【図8】直流電源の−側に誤動作判別回路を付加した自然災害発生検知装置の実施例の回路説明図である。
【図9】従来の自然災害発生検出装置の回路説明図である。
【符合の説明】
【0044】
1 断線検知回路
2 短絡検知回路
3 災害検知線
3a 裸線部
3b 被覆部
4 定電流器
5 直流電源
6 支柱
10 第1のトランジスタ
11 第3のトランジスタ
12 断線検知側電位差抵抗
20 第2のトランジスタ
21 第4のトランジスタ
22 第5のトランジスタ
23 定電圧ダイオード
24 短絡検知側電位差抵抗
40 誤動作判別回路
50 誤動作判別回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れることにより災害検知線の断線を検知する断線検知回路と、電流が流れることにより災害検知線の短絡を検知する短絡検知回路と、自然災害発生予測領域に設置した定電流器とを直流電源に対してそれぞれ並列に接続し、
前記災害検知線は、前記定電流器に対して配線を引き回して接続するとともに、配線における導電性部分が露出した裸線部を有する一方、
前記災害検知線が正常である場合には前記断線検知回路及び前記短絡検知回路に電流を流すことなく、前記災害検知線が断線した際に前記断線検知回路にのみ選択的に電流を流すとともに、前記災害検知線が短絡した際に前記短絡検知回路にのみ選択的に電流を流すように構成した制御回路と、
を具備することを特徴とする自然災害発生検知装置。
【請求項2】
第1のトランジスタが導通状態となって電流が流れることにより災害検知線の断線を検知する断線検知回路と、第2のトランジスタが導通状態となって電流が流れることにより災害検知線の短絡を検知する短絡検知回路と、自然災害発生予測領域に設置した定電流器とを直流電源に対してそれぞれ並列に接続し、
前記災害検知線は、前記定電流器に対して配線を引き回して接続するとともに、配線における導電性部分が露出した裸線部を有する一方、
前記第1のトランジスタのオン・オフ制御を行う第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタのベースに電位差を発生させるための断線検知側電位差抵抗と、
前記第2のトランジスタのオン・オフ制御を行う第4のトランジスタと、
前記第4のトランジスタのオン・オフ制御を行う第5のトランジスタと、
前記第5のトランジスタのベースに接続された定電圧ダイオードと、
前記定電圧ダイオードに電位差を発生させるための短絡検知側電位差抵抗と、
を具備することを特徴とする自然災害発生検知装置。
【請求項3】
前記災害検知線は導電性部分が被覆された被覆部を有し、この被覆部を支柱に固定して自然災害発生予測領域に設置して成る請求項2に記載の自然災害発生検知装置。
【請求項4】
前記定電流器は、自然災害発生予測領域において、災害検知線の短絡が発生し易い箇所に設置して成る請求項2に記載の自然災害発生検知装置。
【請求項5】
前記直流電源の+端子側に、ON/OFFスイッチから構成される誤動作判別回路を接続した請求項2に記載の自然災害発生検知装置。
【請求項6】
前記直流電源の−端子側に、断線検知回路及び短絡検知回路側と、断線検知側電位差抵抗及び短絡検知側電位差抵抗とを選択的に接続する選択スイッチを含んで構成される誤動作判別回路を接続した請求項2又は請求項5に記載の自然災害発生検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−156714(P2009−156714A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335362(P2007−335362)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【特許番号】特許第4268207号(P4268207)
【特許公報発行日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000238290)
【Fターム(参考)】