自然由来柄の定量的評価方法、並びにその印象制御による自然由来柄の創成方法および創成システム
【課題】合理的かつ安価な方法で、自然由来柄を定量的に評価できる方法、並びに自然由来柄の印象を定量的に制御可能な方法およびシステムを得ること。
【解決手段】複数試料について、中屋変法による一対比較法で評価した複数評価項目の平均評価値と、各試料のパワースペクトル画像から抽出した特徴量パラメータ(特徴量)と有意に相関する操作可能評価項目と特徴量との関連を保持する関連保持部と、操作対象の自然由来柄の特徴量を試料と同様に抽出し、同時に位相情報を保持する特徴量抽出部と、入力された操作項目・操作量と、関連保持部が保持しりデータから特徴量パラメータ変更値を導出する変更値導出部と、この変更値について操作対象の特徴量を変更する特徴量変更部と、変更後の特徴量と、特徴量抽出部が保持する位相情報とを用いた逆フーリエ変換により、操作対象を任意の評価項目について変化させた自然由来柄を創成する自然由来柄創成部とを具える自然由来柄の創成システム。
【解決手段】複数試料について、中屋変法による一対比較法で評価した複数評価項目の平均評価値と、各試料のパワースペクトル画像から抽出した特徴量パラメータ(特徴量)と有意に相関する操作可能評価項目と特徴量との関連を保持する関連保持部と、操作対象の自然由来柄の特徴量を試料と同様に抽出し、同時に位相情報を保持する特徴量抽出部と、入力された操作項目・操作量と、関連保持部が保持しりデータから特徴量パラメータ変更値を導出する変更値導出部と、この変更値について操作対象の特徴量を変更する特徴量変更部と、変更後の特徴量と、特徴量抽出部が保持する位相情報とを用いた逆フーリエ変換により、操作対象を任意の評価項目について変化させた自然由来柄を創成する自然由来柄創成部とを具える自然由来柄の創成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然由来柄の定量的評価方法、並びにその印象制御による自然由来柄の創成方法および創成システムに関するものである。
【0002】
より具体的には、撮像によりコンピュータに取り込まれるか、または計算機により創成された自然由来柄の評価に関与する項目を、官能評価により任意の集団に評価させた結果をもとに、統計的な手法によってデザイン柄のパターンにおける特徴変数を抽出し、これを用いて上記項目に関した印象制御を定量的に可能としたものである。
【背景技術】
【0003】
我々が日常生活で目にする建築物の内外装やあらゆる工業製品において、天然素材が用いられている。例えば皮革表面のシボ、木目、石目などが代表例として挙げられる。このような自然柄デザインは、高品質感、高級感、貴重感等の装飾性を与え外装の美観高揚に効果的に利用されており、商品の価値を高めるために欠かせない要素となっている。しかし今日では、環境への配慮という視点からも、これら天然素材を潤沢に使用することは困難となりつつあり、代替技術として印刷技術が活発に活用されるようになっている。
【0004】
このような自然柄の印刷の利用は、実際の天然素材を撮像し、画像処理を行ってよりデザインとして好ましい柄になるようデザイナーが修正をほどこした後に、紙、フィルム等に印刷し、これを基材に張り合わせることによって行われることが多い。この作業は、デザイナーが好ましいと考える本物の皮革や木材、石などの原材料を探し求めるところから始まり、これに納得がいくまで修正を加えることから成るため、非常に多くの時間を必要とするものである。
【0005】
このように柄開発にかかる時間を短縮する目的で、近年のコンピュータ技術の発達に伴い、自然柄に似た柄をコンピュータで創成しようとする試みも行われている。
【0006】
特許文献1は、このようなシボ柄印刷用のシボ柄の、コンピュータを用いた創成方法および創成プログラムを開示している。これは、幾何学的フラクタルにより発生した基本構造を繰り返すとともに、その繰り返しの中に繰り返し態様を変更した基本構造を含むことを特徴とするものである。
【0007】
また、円筒を同心円状に多数重ねて樹幹とする樹木モデルを作り出し、これを計算機内で切断することで木目柄を得る手法などが試みられている。しかし、これらの手法を用いて作成された柄デザインは、自然素材由来のものとして実用されるには至っていない。これは計算機内で創成された柄が、自然柄と比べて不自然さを隠せないためである。
【0008】
さらに、この種のシボ柄をはじめとした自然由来柄の開発に関しては、業界に精通したデザイナーに託されることが一般的であり、デザイナー個人の主観に頼るところが大きい。現状において、このようなデザイナーは、自己の判断に加え、展示会や顧客先、社内検討などを経て、市場動向をにらみながら上梓する柄の評価をしている。しかし、刻々と変化する市場のニーズに迅速に対応するためには、常に見本市などで受けたフィードバックを反映させることが必要不可欠である。また、現在の市場においては、商品のライフサイクルは短く、比較的小規模で、多様なニーズが増えている。このような現状に対応するためには、開発段階で市場の評価を定量的に見極めることが可能であり、かつ、迅速に多様なバリエーションを生み出せる柄開発システムが欲される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、合理的かつ安価な方法で、自然由来柄を定量的に評価できる方法、並びに自然由来柄の印象を定量的に制御可能な方法およびシステムを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、独立請求項に記載する特徴を備える本発明によって解決される。また、本発明の最適な実施態様については、従属項に記載する。
【0011】
これによれば、本発明自然由来柄の定量的評価方法においては、複数種類の自然由来柄を準備するとともに複数種類の評価項目を設定し、各自然由来柄を評価項目について中屋の変法による一対比較法で定量的に評価し、各自然由来柄をフーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から、特徴量パラメータを抽出し、複数種類の自然由来柄についての評価値の平均と特徴量パラメータの算出結果との相関を求める。
【0012】
また、自然由来柄の創成方法においては、複数種類の自然由来柄を準備するとともに複数種類の評価項目を設定し、各自然由来柄を評価項目について中屋の変法による一対比較法で定量的に評価し、各自然由来柄をフーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から、特徴量パラメータを抽出し、複数種類の自然由来柄についての評価値の平均と特徴量パラメータの算出結果とが有意に相関する評価項目である制御可能評価項目を特定し、操作対象である任意の自然由来柄についても特徴量パラメータを抽出し、制御可能評価項目の中から所望の項目を操作項目として選択し、また、操作量を決定し、操作項目と有意に相関する特徴量パラメータを、操作量分変更し、その変更した特徴量パラメータを用いた逆フーリエ変換により、任意の自然由来柄を変化させて所望の評価の自然由来柄を創成する。
【0013】
上記の本発明自然由来柄の定量的評価方法および創成方法において、好適には、各自然由来柄の特徴量パラメータは、その自然由来柄を二次元フーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から、周波数の変数としたパワースペクトルの分布である周波数―パワースペクトル分布曲線を生成し、周波数―パワースペクトル分布曲線を低周波域と高周波域とに分け、それら低周波域と高周波域における周波数―パワースペクトル分布曲線の傾向から抽出する。
【0014】
さらに好適には、周波数―パワースペクトル分布曲線の傾向とは、画像の中心を原点にし、そのうちの180度について一定角度ごとに分割し、最小近似値を導出し、特徴点を除いて再度最小近似値を導出し、再度算出した最小近似値の、低周波の傾き、高周波の傾き、低周波の切片、および高周波におけるパワースペクトルの重心位置の4項目を算出し、4項目について求めた平均値、および最大値と最小値の差であることとする。
【0015】
そして、本発明の自然由来柄創成システムは、複数種類の自然由来柄の各々を複数種類の評価項目について、中屋の変法による一対比較法で定量的に評価して得た、各評価項目についての平均評価値と、各自然由来柄をフーリエ変換を用いて得られたパワースペクトル画像から抽出した特徴量パラメータとの相関のうち、互いに有意に相関する操作可能評価項目である評価項目と特徴量パラメータとの関連を保持する関連保持部と、操作対象である任意の自然由来柄について試料と同様にして特徴量パラメータを抽出し、同時に得られる位相情報について保持する特徴量パラメータ抽出部と、特徴量パラメータ抽出部が抽出した任意の自然由来柄の特徴量パラメータのうち、制御可能評価項目の中から所望の操作項目として選択入力された項目およびその操作量と、関連保持部が保持する操作可能評価項目と特徴量パラメータとの関連に基づき変更値を導出する変更値導出部と、変更値導出部が導出した変更値について、任意の自然由来柄の特徴量パラメータを変更する特徴量パラメータ変更部と、特徴量パラメータ変更部が変更した特徴量パラメータおよび特徴量パラメータ抽出部保持する位相情報を用いた逆フーリエ変換により、任意の自然由来柄を任意の評価項目について変化させる自然由来柄創成部とを具えてなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。以下の実施形態は、自然由来柄の定量的評価を用いた自然由来柄の創成システムであり、通常のコンピュータ内にあらかじめインストールされたプログラムまたはそのコンピュータ内に外部記憶媒体から供給されるプログラムを用いて実現されるものである。このシステムは、図1に示すように、複数種類の自然由来柄の各々についての平均評価値と、各自然由来柄のから抽出した特徴量パラメータとのうち、互いに有意に相関するものの関連を保持する関連保持部1と、操作対象である任意の自然由来柄についても特徴量パラメータおよび位相情報を抽出する特徴量パラメータ抽出部2と、所望の操作項目として選択入力された項目およびその操作量と、関連保持部が保持するデータから変更値を導出する変更値導出部3と、変更値導出部が導出した変更値について任意の自然由来柄の特徴量パラメータを変更する特徴量パラメータ変更部4と、特徴量パラメータ変更部が変更した特徴量パラメータから換算されたスペクトル情報と、特徴量パラメータ抽出部に保持された位相情報とを用いた逆フーリエ変換により、元の自然由来柄から変化させた自然由来柄を創成する自然由来柄創成部5とを具える。
【0017】
[システムの基本フロー]
本発明による印象制御を伴う自然由来柄の創成は、図1に示すシステムが、図2に示すフロー図に従って行う。このシステムは、具体的には通常のコンピュータで構成され、大きくは、自然由来柄を一対比較法(中屋の変法)により評価し(G1)、これらの自然由来柄を特徴付ける物理的特性(以下特徴量パラメータとする)を抽出し(G2)、(G1)および(G2)で得られた値の関連付けから制御可能な評価項目を特定する(G3)、という定量的制御のための値の算出段階と、印象を制御したい自然由来柄の特徴量パラメータを抽出し(G4)、前記の算出段階で算出した値に基づき、制御したい評価項目について特徴量パラメータの値を所望量変化させ(G5)、これを再び画像に戻す(G6)、という制御段階とに分かれる。ただし、(G1)の定量的評価は、以下のように人が行う評価を基礎とする。
【0018】
[自然由来柄の定量的評価]
まず始めに、試料および評価項目を選出する。本実施例においては、図3に示す(a)〜(j)までの10種類の自然由来柄を試料として用意した。これらの自然由来柄は、工業製品に多く使用されている代表的な柄として現場の意見を元に選択している。また評価項目は、例えば、これらの試料をパネルで提示し、試料が与える尋ねて得られた形容詞の中から、制御したい性質などを考慮し選定する。本実施例においては、「なめらかな」、「凹凸がある」、「暖かそう」、「自然な」、「落ち着いた」、「丈夫そう」、「やわらかそう」、「単調な」、「複雑な」、「繊細な」、「乱雑な」、「高級そう」、「流れるような」の13項目を評価項目として用意した。ただし、使用される評価項目は柄を評価すると考えられる、他のどのような形容詞でもよく、例えば、「渋い」、「派手」、「じみ」等の用語を用いることができる。
【0019】
次に、選定した試料についての各評価項目への当てはまり具合を一対比較法(中屋の変法)を用いて定量評価する。一対比較法(中屋の変法)では、試料の全ての対(計45対)について、指定された一方が、他方と比較した場合にどの程度評価項目ワードに当てはまるかを評価するもので、本実施例においては、−2〜+2の5段階で評価する。表1に、試料ごとの平均評価値を示す。
【0020】
【表1】
試料ごとの平均評価値
【0021】
また、解析では、解析結果がどの程度有効であるかを判断するため分散分析を行い、各試料間の有意差があるかどうか確認するため、ヤードスティックを計算し、そこから信頼区間を求める。
【0022】
下記数1および表2には各値の算出計算式を示す。表2において不偏分散値は、各要素の平方和を各自由度で除した値である。またF0は、各不偏分散値を誤差の不偏分散値で除した値であり、この値がF分布の数表値以上であれば有意であると判断する。このとき数1内の各変数はそれぞれ、
x:被験者kがAiとAjの順で比較したときの採点
t:試料数
N:被験者総数
i;先にテストした試料
j:後にテストした試料
k:被験者の番号
αi, αj:試料AiとAjに対して、被験者が持っている平均的な嗜好度
αik, αjk:試料AiとAjに対して、被験者kが持っている嗜好度の個人差
γij:組合せの効果
δ:平均の順序効果
δk:順序効果の個人差
εij:誤差
を意味するものとする。
【数1】
【0023】
【表2】
分散分析表算出式
【0024】
分散分析の結果、主効果で有意であることを確認できたため、どの主効果間に差があるかを知るために信頼区間を求める。そのために数2の上段の式においてヤードスティックを計算し、下段の式により信頼区間を求める。このとき、δは平均の順序効果を、qはスチューデント化された範囲を示す。表3は、「なめらかな」という評価項目についての分散分析表である。表4は、ヤードスティックの計算結果である。信頼区間の優位性については表3の分散分析表に95%及び99%信頼区間として表した。計算結果より主効果は全ての評価項目ワードにおいて有意であることを確認している。
【数2】
【0025】
【表3】
分散分析表(なめらかな)
【0026】
【表4】
ヤードスティック(信頼区間)
【0027】
[物理的特性の抽出]
次に、自然由来柄の物理的特性を抽出する。ここでは、テクスチャなどパターン認識に有効とされている二次元フーリエ変換により、自然由来柄の持つ色の濃淡の定量化を図る。図4は、自然由来柄の解析手順を示すフロー図である。ここではまず、解析対象である自然由来柄を、二次元フーリエ変換することでスペクトル情報および位相情報が得られる。ここで得られたスペクトル情報からパワースペクトル画像を生成する(ステップS1)。こうして得られたパワースペクトル画像を、まず画像の中心を原点として22.5°ごとに16分割し(ステップS2)、そのうち180°までをそれぞれ解析対象とする(ステップS3)。全てのピクセルについて、原点からの距離(周波数)を横軸にとり、縦軸にはその平均スペクトル値を取りをプロットし(ステップS4)、このプロット点を領域ごとに折れ線で結び、8方向全てについて1つのグラフに表す(ステップ5)ことで、8方向についての周波数―パワースペクトル分布曲線を生成する。
【0028】
以下、各ステップについて詳しく述べる。
【0029】
まず、解析対象の自然由来柄の二次元フーリエ解析についてである。x,yを変数とする関数f(x,y)のフーリエ変換F(u,v)は数3により表される。自然由来柄はf(x,y)で示すものとする。ここでx,yは自然由来柄の2方向の軸であり、単位は長さとする。フーリエ変換された関数F(u,v)で、u,vは長さの逆数を単位とする量である。言い換えると、u,vは単位長さあたりの特徴量の繰り返し数、つまり周波数である。例えば木目柄において、特徴量は木目であり、u,vは単位長さに入る木目の本数に当たる。
【数3】
【0030】
《二次元フーリエ変換》
二次元フーリエ変換において、強度を表すパワースペクトルは、二次元周波数パラメータ(u’、v’)にパワースペクトルau2の三次元情報として表現される。このとき、周波数特性全体を把握するため、1枚の画像として示すことが一般的な方法である。例えば、図5に示す、画像の濃淡として表される二次元波aucos{2π(u’x+v’u)}をフーリエ変換すると、図6に示す(u’、v’)、(-u’、-v’)の位置に、強度au2のパワースペクトルとして現れる。つまり、中心からプロットされる位置への距離が二次元波の周波数を示し、プロット位置の中心角が二次元波の進行方向に対応する。画像におけるフーリエ変換では、高い周波数は小刻みな濃淡の変化として、低い周波数は濃淡の画像全体での滑らかな変化として見られる。
【0031】
図7は、試料(a)〜(j)と、これらを二次元フーリエ変換することで得られたパワースペクトル画像とをそれぞれ示すものである。ここから見て取れるように、周波性の強いものほど軌線が明確になり、不規則性が強いものほど全体に円を描くように広がっていることが分かる。
【0032】
《周波数―パワースペクトル曲線》
パワースペクトル画像の解析にあたっては、方向性による単調性や複雑性が大きいことを考慮し、図8に示すように、画像の中心を原点として22.5°ずつ対角を含め計8等分する。このとき、パワースペクトル画像は点対称であるので、180°まで解析を行う。全てのピクセルについて、横軸に周波数(中心からの距離)をとり、縦軸にはパワースペクトル値の平均値をプロットし、これらを分割した各8領域ごとに折れ線で結び、両軸を対数軸で示した周波数―パワースペクトル曲線を、図9に示す。ただしこの時、例えば0°〜22.5°の場合、中間ラインである12.25°ライン上の点のみについてをプロットするなど、適宜省略しても本発明の実施は可能である。
【0033】
《特徴量パラメータの抽出》
次に、得られた周波数―パワースペクトル曲線から、特徴量パラメータを抽出する。図9に示す周波数―パワースペクトル曲線を見ると、何箇所かに大きなピークが見られる。これはその自然由来柄形状を特徴付けている特有のスペクトルである。この部分を特徴点としてみなし、制御対象からはずすことで、自然由来柄形状の特徴を維持できる。
【0034】
図10に、特徴量パラメータを抽出する際のフロー図を示す。まず、周波数―パワースペクトル曲線を、高周波域と低周波域で挙動が異なる点を考慮して、図11に示す通り周波数域を二分割し(ステップS11)、それぞれについて、画像の中心を原点として22.5°ごとに分割し、そのうち180°までをそれぞれ解析対象とする(ステップS12)。次に各周波数―パワースペクトル曲線について、最小二乗近似直線を導出し(ステップS13)、得られた近似直線と、分布曲線との誤差から標準偏差σを算出し(ステップS14)、近似直線と分布曲線の誤差を求め(ステップS15)、これを±2σとの大小関係において判断し(ステップS16)、誤差が±2σよりも大きいと、特徴点として計算から除外され、制御も禁止される(ステップS17′)。誤差が±2σ以下であれば、有効点と判断され(ステップS17)、これらの有効点群だけを用いて最小近似直線を再度算出する(ステップS18)。
【0035】
さらに、高周波域および低周波域のそれぞれにおいて、ステップS18で導出した最小二乗近似直線の低周波の傾き、高周波の傾き、低周波の切片、および高周波におけるパワースペクトルの重心位置(中心Y座標)の計4項目を算出し(ステップS19)、それぞれについてさらに、全方向の平均値、および最大値と最小値の差を求め(ステップS20)、これら8つを、特徴量パラメータとして定義した。これら特徴量パラメータを全ての自然由来柄について求めた解析結果を表5に示す。
【0036】
【表5】
周波数―パワースペクトル曲線における特徴量パラメータ
【0037】
[制御可能な評価項目の特定]
まず、各試料についての、表1に示す平均評価値および表5に示す特徴量パラメータの値について、相関係数を求める。本実施例における結果は表6に示すとおりである。
【0038】
【表6】
【0039】
ここで相関関係が特に大きい「高周波/重心/平均」と「高周波/傾き/差」についてグラフ化したものを図12、図13にそれぞれ示す。より詳しくは、図12は、平均評価値を横軸にとり、高周波領域における重心の平均を縦軸にとった「高周波/重心/平均」のグラフであり、図13は、平均評価値を横軸にとり、高周波領域における傾きの差を縦軸にとった「高周波/傾き/差」のグラフである。
【0040】
図12から一つの解析項目が複数の評価項目に影響していることがわかる。「乱雑な」「複雑な」「凸凹のある」の3項目の最小二乗近似した直線の傾きは、プラス傾斜である程度一致していることから、互いに高い相関があると言える。一方で「なめらかな」「単調な」の2項目の最小二乗近似直線の傾きはマイナス傾斜でほぼ一致しており、前述の3項目の傾きと正負反対の関係にあり、これは負の相関があると言える。同様に、図13からは、「流れるような」と「自然な」「繊細な」の2項目とが正負の相関関係にあることが分かる。
【0041】
[自然由来柄の印象を制御]
このプロセスでは、以上で得られた結果を基にして、自然由来柄の持つパワースペクトルの分布を変化させることにより、その自然由来柄の印象に関わる物理的特性を変化させる。こうして制御した(変化させた)パワースペクトルから、新しくスペクトル情報を算出し、この制御後のスペクトル情報と、元の位相情報とを用いて2次元フーリエ逆変換をすることで、特徴量を制御した自然由来柄画像が得られる。
【0042】
まず、任意の自然由来柄を制御するにあたり、その自然由来柄の特徴量パラメータを算出する。その過程において、2次元フーリエ変換をするが、この際得られるスペクトル情報および位相情報のうち、スペクトル情報は以下に示す手順に従い変更し、位相情報はそのまま保持しておく。
【0043】
ここでは、本実施例で採用した評価項目との相関関係が特に高い、「高周波/重心/平均」、「高周波/傾き/差」、「低周波/傾き/平均」の3つの特徴量パラメータを変更し、パワースペクトルを制御する例を示す。このプロセスは図14のフローチャートに示す手順の一部に対応する。
【0044】
《高周波/重心/平均》
まず、図12を参照しながら「高周波/重心/平均」の項目を操作したパワースペクトルを得る場合について記載する。このとき、各8方向の曲線の最小二乗近似直線の傾きmn(n=1,2,3…8)を、操作者が入力する任意の「印象の変化量」をM1とすると、「高周波/重心/平均」の変化量である変更値D1は数4で求められる。
【数4】
【0045】
変化前のパワースペクトルをP、数4で得られた変更値D1を反映させたパワースペクトルをP'とすると、P’は数5により求められる。
【数5】
【0046】
《高周波/傾き/差》
次に、図13を参照しながら「高周波/傾き/差」の項目を操作したパワースペクトルを得る場合について記載する。このとき、各8方向の曲線の最小二乗近似直線の傾きをmn(n=1,2,3…8)、傾きの中の最大値をmmax、最小値をmmin、操作者が入力する任意の「印象の変化量」をM2とすると、「高周波/傾き/差」の変化量である変更値D2は、数6で求められる。
【数6】
【0047】
操作項目は、高周波における傾きの最大値と最小値の差mmax−mminである。このときより自然な結果を求めるため、全ての方向における傾きmnにも変化を与える。その際、傾きの最大値と最小値の中間値Cmを数7の上段式のとおりに定義し、Cmを中心に、傾きmnの分布を変化させる。mnの変化後の傾きmn’は、数7の下段式により求められる。
【数7】
【0048】
さらに、この変化後のmn’の最大値と最小値の差は、数8により、求めることができる。
【数8】
【0049】
変化前のパワースペクトルをP、変化後のパワースペクトルをP’とすると、P’は数9により求められる。ここで、Gx,Gyは高周波域の重心位置の対数軸上での座標である。傾きを変化させても他の制御項目に影響が出ないようにするため、必ず重心を通過させる。
【数9】
【0050】
《低周波/傾き/平均》
最後に「低周波/傾き/平均」の項目を操作したパワースペクトルを得る場合について記載する。このとき、低周波における各8方向の曲線の最小二乗近似直線の傾きをmn(n=1,2,3…8)、傾きの平均値をmave、低周波の切片をbn、操作者が入力する任意の「印象の変化量」をm3とすると、「低周波/傾き/平均」の変化量である変更値D3は、数10で求められる。
【数10】
【0051】
操作項目は低周波における傾きの平均値maveであるので、各8方向の傾き全てのmnをD3だけ変化させる。mnの変化後の傾きをmn’とすると、数11で求められる。
【数11】
【0052】
このmn’を用いて、パワースペクトルを変化させる。変化前のパワースペクトルをP、mn’を反映させた変化後のパワースペクトルをP’とすると、P’は数12で求められる。
【数12】
【0053】
《逆フーリエ変換》
以上3つの例において得られた制御後のパワースペクトルP’に基づいてスペクトル情報を算出し、このスペクトル情報と、最初に操作対象である自然由来柄についてスペクトル情報を取得した際に同時に取得された位相情報とを用いて二次元フーリエ逆変換を行うことで、評価項目の持つ印象について制御された自然由来柄を得ることができる。
【0054】
このとき、f(x,y)を、数3によりフーリエ変換した変換値であるF(u,v)は、式(2)によりf(x,y)に逆変換して戻すことができる。これを逆フーリエ変換と呼ぶ。F(u,v)を、実部R(u,v)および虚部I(u,v)で表すと、パワースペクトルP(u,v)およびフーリエスペクトルQ(u,v)は、それぞれ数13のように表される。
【数13】
【0055】
図15A,図15B,図15Cにそれぞれ示すのは、「高周波/重心/平均」「高周波/傾き/差」「低周波/傾き/平均」について制御を行った結果である。図の括弧内に示した数値は制御量として操作者が入力した「印象の変化量」を表している。また、(a)は元画像、(b)(c)は制御後の画像で、(b)と(c)において操作したのは、互いに負の相関関係があると考えられている項目である。元の形状のイメージを残しつつ、異なる印象を与えていることが分かる。
【0056】
以上、本発明の自然由来柄の定量的評価を用いた自然由来柄の創成システムについて、実施例を参照しながら説明したが、本発明は上記に限定されるものではなく、当業者は請求の範囲内で様々なバリエーションを考え得るだろう。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本システムは、自然由来柄の評価に関与する項目を、官能評価により任意の集団に評価させた結果をもとに、統計的な手法によってデザイン柄のパターンにおける特徴変数を抽出し、これを用いて上記項目に関した印象制御を定量的に可能としたものである。これまで、意匠デザイナーは、自己の判断に加え、展示会や顧客先、社内検討などを経て、市場動向をにらみながら上梓する柄の評価をしていた。これに対し本発明は、美的感覚に関する評価項目に対して評価結果を集め、これを工学的手法によって処理することで柄の評価を決定する手法を提示するものでもある。これは、デザイナーの柄作成の大きな支援ともなるだろう。また、評価を仰ぐ集団を変えることにより、特徴ある市場の評価をも、論理手法により求めることが可能となる。つまり、今までデザイナー個々人の感性に頼っていた柄開発の過程を、任意の集団の評価を定量的に反映させ、自然由来柄の印象を制御することで、より短時間で合理的かつ安価にデザイン柄の開発が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明自然柄創成システムの説明図である。
【図2】図1に示す本発明自然柄由来創成システムが働くフロー説明図である。
【図3】本発明実施例において用いる10種類の試料である。
【図4】自然由来柄の解析手順を示すフロー図である。
【図5】画像の濃淡として表される二次元波である。
【図6】パワースペクトルの表示に関する説明図である。
【図7】図3に示す10種類の試料の、元のパワースペクトル画像と、特徴量パラメータ変更後のパワースペクトル画像をそれぞれ示した図である。
【図8】周波数―パワースペクトル曲線の導出方法の説明図である。
【図9】図3に示す10種類の試料の、周波数―パワースペクトル曲線をそれぞれ示す図である。
【図10】特徴量パラメータを抽出する際のフロー図である。
【図11】図10に示すステップS11〜S13について参照される図である。
【図12】図3に示す試料の、高周波における重心の平均についてグラフ化したものである。
【図13】図3に示す試料の、高周波における傾きの最大値と最小値の差についてグラフ化したものである。
【図14】特徴量パラメータを制御し、逆フーリエ変換により画像を逆生成するまでの手順を示すフロー図である。
【図15A】元画像〔a〕について、高周波における重心の平均を制御した結果の画像(b),(c)である。
【図15B】元画像〔a〕について、高周波における傾きの最大値と最小値の差を制御した結果の画像(b),(c)である。
【図15C】元画像〔a〕について、低周波における傾きの平均を制御した結果の画像(b),(c)である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然由来柄の定量的評価方法、並びにその印象制御による自然由来柄の創成方法および創成システムに関するものである。
【0002】
より具体的には、撮像によりコンピュータに取り込まれるか、または計算機により創成された自然由来柄の評価に関与する項目を、官能評価により任意の集団に評価させた結果をもとに、統計的な手法によってデザイン柄のパターンにおける特徴変数を抽出し、これを用いて上記項目に関した印象制御を定量的に可能としたものである。
【背景技術】
【0003】
我々が日常生活で目にする建築物の内外装やあらゆる工業製品において、天然素材が用いられている。例えば皮革表面のシボ、木目、石目などが代表例として挙げられる。このような自然柄デザインは、高品質感、高級感、貴重感等の装飾性を与え外装の美観高揚に効果的に利用されており、商品の価値を高めるために欠かせない要素となっている。しかし今日では、環境への配慮という視点からも、これら天然素材を潤沢に使用することは困難となりつつあり、代替技術として印刷技術が活発に活用されるようになっている。
【0004】
このような自然柄の印刷の利用は、実際の天然素材を撮像し、画像処理を行ってよりデザインとして好ましい柄になるようデザイナーが修正をほどこした後に、紙、フィルム等に印刷し、これを基材に張り合わせることによって行われることが多い。この作業は、デザイナーが好ましいと考える本物の皮革や木材、石などの原材料を探し求めるところから始まり、これに納得がいくまで修正を加えることから成るため、非常に多くの時間を必要とするものである。
【0005】
このように柄開発にかかる時間を短縮する目的で、近年のコンピュータ技術の発達に伴い、自然柄に似た柄をコンピュータで創成しようとする試みも行われている。
【0006】
特許文献1は、このようなシボ柄印刷用のシボ柄の、コンピュータを用いた創成方法および創成プログラムを開示している。これは、幾何学的フラクタルにより発生した基本構造を繰り返すとともに、その繰り返しの中に繰り返し態様を変更した基本構造を含むことを特徴とするものである。
【0007】
また、円筒を同心円状に多数重ねて樹幹とする樹木モデルを作り出し、これを計算機内で切断することで木目柄を得る手法などが試みられている。しかし、これらの手法を用いて作成された柄デザインは、自然素材由来のものとして実用されるには至っていない。これは計算機内で創成された柄が、自然柄と比べて不自然さを隠せないためである。
【0008】
さらに、この種のシボ柄をはじめとした自然由来柄の開発に関しては、業界に精通したデザイナーに託されることが一般的であり、デザイナー個人の主観に頼るところが大きい。現状において、このようなデザイナーは、自己の判断に加え、展示会や顧客先、社内検討などを経て、市場動向をにらみながら上梓する柄の評価をしている。しかし、刻々と変化する市場のニーズに迅速に対応するためには、常に見本市などで受けたフィードバックを反映させることが必要不可欠である。また、現在の市場においては、商品のライフサイクルは短く、比較的小規模で、多様なニーズが増えている。このような現状に対応するためには、開発段階で市場の評価を定量的に見極めることが可能であり、かつ、迅速に多様なバリエーションを生み出せる柄開発システムが欲される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、合理的かつ安価な方法で、自然由来柄を定量的に評価できる方法、並びに自然由来柄の印象を定量的に制御可能な方法およびシステムを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、独立請求項に記載する特徴を備える本発明によって解決される。また、本発明の最適な実施態様については、従属項に記載する。
【0011】
これによれば、本発明自然由来柄の定量的評価方法においては、複数種類の自然由来柄を準備するとともに複数種類の評価項目を設定し、各自然由来柄を評価項目について中屋の変法による一対比較法で定量的に評価し、各自然由来柄をフーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から、特徴量パラメータを抽出し、複数種類の自然由来柄についての評価値の平均と特徴量パラメータの算出結果との相関を求める。
【0012】
また、自然由来柄の創成方法においては、複数種類の自然由来柄を準備するとともに複数種類の評価項目を設定し、各自然由来柄を評価項目について中屋の変法による一対比較法で定量的に評価し、各自然由来柄をフーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から、特徴量パラメータを抽出し、複数種類の自然由来柄についての評価値の平均と特徴量パラメータの算出結果とが有意に相関する評価項目である制御可能評価項目を特定し、操作対象である任意の自然由来柄についても特徴量パラメータを抽出し、制御可能評価項目の中から所望の項目を操作項目として選択し、また、操作量を決定し、操作項目と有意に相関する特徴量パラメータを、操作量分変更し、その変更した特徴量パラメータを用いた逆フーリエ変換により、任意の自然由来柄を変化させて所望の評価の自然由来柄を創成する。
【0013】
上記の本発明自然由来柄の定量的評価方法および創成方法において、好適には、各自然由来柄の特徴量パラメータは、その自然由来柄を二次元フーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から、周波数の変数としたパワースペクトルの分布である周波数―パワースペクトル分布曲線を生成し、周波数―パワースペクトル分布曲線を低周波域と高周波域とに分け、それら低周波域と高周波域における周波数―パワースペクトル分布曲線の傾向から抽出する。
【0014】
さらに好適には、周波数―パワースペクトル分布曲線の傾向とは、画像の中心を原点にし、そのうちの180度について一定角度ごとに分割し、最小近似値を導出し、特徴点を除いて再度最小近似値を導出し、再度算出した最小近似値の、低周波の傾き、高周波の傾き、低周波の切片、および高周波におけるパワースペクトルの重心位置の4項目を算出し、4項目について求めた平均値、および最大値と最小値の差であることとする。
【0015】
そして、本発明の自然由来柄創成システムは、複数種類の自然由来柄の各々を複数種類の評価項目について、中屋の変法による一対比較法で定量的に評価して得た、各評価項目についての平均評価値と、各自然由来柄をフーリエ変換を用いて得られたパワースペクトル画像から抽出した特徴量パラメータとの相関のうち、互いに有意に相関する操作可能評価項目である評価項目と特徴量パラメータとの関連を保持する関連保持部と、操作対象である任意の自然由来柄について試料と同様にして特徴量パラメータを抽出し、同時に得られる位相情報について保持する特徴量パラメータ抽出部と、特徴量パラメータ抽出部が抽出した任意の自然由来柄の特徴量パラメータのうち、制御可能評価項目の中から所望の操作項目として選択入力された項目およびその操作量と、関連保持部が保持する操作可能評価項目と特徴量パラメータとの関連に基づき変更値を導出する変更値導出部と、変更値導出部が導出した変更値について、任意の自然由来柄の特徴量パラメータを変更する特徴量パラメータ変更部と、特徴量パラメータ変更部が変更した特徴量パラメータおよび特徴量パラメータ抽出部保持する位相情報を用いた逆フーリエ変換により、任意の自然由来柄を任意の評価項目について変化させる自然由来柄創成部とを具えてなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。以下の実施形態は、自然由来柄の定量的評価を用いた自然由来柄の創成システムであり、通常のコンピュータ内にあらかじめインストールされたプログラムまたはそのコンピュータ内に外部記憶媒体から供給されるプログラムを用いて実現されるものである。このシステムは、図1に示すように、複数種類の自然由来柄の各々についての平均評価値と、各自然由来柄のから抽出した特徴量パラメータとのうち、互いに有意に相関するものの関連を保持する関連保持部1と、操作対象である任意の自然由来柄についても特徴量パラメータおよび位相情報を抽出する特徴量パラメータ抽出部2と、所望の操作項目として選択入力された項目およびその操作量と、関連保持部が保持するデータから変更値を導出する変更値導出部3と、変更値導出部が導出した変更値について任意の自然由来柄の特徴量パラメータを変更する特徴量パラメータ変更部4と、特徴量パラメータ変更部が変更した特徴量パラメータから換算されたスペクトル情報と、特徴量パラメータ抽出部に保持された位相情報とを用いた逆フーリエ変換により、元の自然由来柄から変化させた自然由来柄を創成する自然由来柄創成部5とを具える。
【0017】
[システムの基本フロー]
本発明による印象制御を伴う自然由来柄の創成は、図1に示すシステムが、図2に示すフロー図に従って行う。このシステムは、具体的には通常のコンピュータで構成され、大きくは、自然由来柄を一対比較法(中屋の変法)により評価し(G1)、これらの自然由来柄を特徴付ける物理的特性(以下特徴量パラメータとする)を抽出し(G2)、(G1)および(G2)で得られた値の関連付けから制御可能な評価項目を特定する(G3)、という定量的制御のための値の算出段階と、印象を制御したい自然由来柄の特徴量パラメータを抽出し(G4)、前記の算出段階で算出した値に基づき、制御したい評価項目について特徴量パラメータの値を所望量変化させ(G5)、これを再び画像に戻す(G6)、という制御段階とに分かれる。ただし、(G1)の定量的評価は、以下のように人が行う評価を基礎とする。
【0018】
[自然由来柄の定量的評価]
まず始めに、試料および評価項目を選出する。本実施例においては、図3に示す(a)〜(j)までの10種類の自然由来柄を試料として用意した。これらの自然由来柄は、工業製品に多く使用されている代表的な柄として現場の意見を元に選択している。また評価項目は、例えば、これらの試料をパネルで提示し、試料が与える尋ねて得られた形容詞の中から、制御したい性質などを考慮し選定する。本実施例においては、「なめらかな」、「凹凸がある」、「暖かそう」、「自然な」、「落ち着いた」、「丈夫そう」、「やわらかそう」、「単調な」、「複雑な」、「繊細な」、「乱雑な」、「高級そう」、「流れるような」の13項目を評価項目として用意した。ただし、使用される評価項目は柄を評価すると考えられる、他のどのような形容詞でもよく、例えば、「渋い」、「派手」、「じみ」等の用語を用いることができる。
【0019】
次に、選定した試料についての各評価項目への当てはまり具合を一対比較法(中屋の変法)を用いて定量評価する。一対比較法(中屋の変法)では、試料の全ての対(計45対)について、指定された一方が、他方と比較した場合にどの程度評価項目ワードに当てはまるかを評価するもので、本実施例においては、−2〜+2の5段階で評価する。表1に、試料ごとの平均評価値を示す。
【0020】
【表1】
試料ごとの平均評価値
【0021】
また、解析では、解析結果がどの程度有効であるかを判断するため分散分析を行い、各試料間の有意差があるかどうか確認するため、ヤードスティックを計算し、そこから信頼区間を求める。
【0022】
下記数1および表2には各値の算出計算式を示す。表2において不偏分散値は、各要素の平方和を各自由度で除した値である。またF0は、各不偏分散値を誤差の不偏分散値で除した値であり、この値がF分布の数表値以上であれば有意であると判断する。このとき数1内の各変数はそれぞれ、
x:被験者kがAiとAjの順で比較したときの採点
t:試料数
N:被験者総数
i;先にテストした試料
j:後にテストした試料
k:被験者の番号
αi, αj:試料AiとAjに対して、被験者が持っている平均的な嗜好度
αik, αjk:試料AiとAjに対して、被験者kが持っている嗜好度の個人差
γij:組合せの効果
δ:平均の順序効果
δk:順序効果の個人差
εij:誤差
を意味するものとする。
【数1】
【0023】
【表2】
分散分析表算出式
【0024】
分散分析の結果、主効果で有意であることを確認できたため、どの主効果間に差があるかを知るために信頼区間を求める。そのために数2の上段の式においてヤードスティックを計算し、下段の式により信頼区間を求める。このとき、δは平均の順序効果を、qはスチューデント化された範囲を示す。表3は、「なめらかな」という評価項目についての分散分析表である。表4は、ヤードスティックの計算結果である。信頼区間の優位性については表3の分散分析表に95%及び99%信頼区間として表した。計算結果より主効果は全ての評価項目ワードにおいて有意であることを確認している。
【数2】
【0025】
【表3】
分散分析表(なめらかな)
【0026】
【表4】
ヤードスティック(信頼区間)
【0027】
[物理的特性の抽出]
次に、自然由来柄の物理的特性を抽出する。ここでは、テクスチャなどパターン認識に有効とされている二次元フーリエ変換により、自然由来柄の持つ色の濃淡の定量化を図る。図4は、自然由来柄の解析手順を示すフロー図である。ここではまず、解析対象である自然由来柄を、二次元フーリエ変換することでスペクトル情報および位相情報が得られる。ここで得られたスペクトル情報からパワースペクトル画像を生成する(ステップS1)。こうして得られたパワースペクトル画像を、まず画像の中心を原点として22.5°ごとに16分割し(ステップS2)、そのうち180°までをそれぞれ解析対象とする(ステップS3)。全てのピクセルについて、原点からの距離(周波数)を横軸にとり、縦軸にはその平均スペクトル値を取りをプロットし(ステップS4)、このプロット点を領域ごとに折れ線で結び、8方向全てについて1つのグラフに表す(ステップ5)ことで、8方向についての周波数―パワースペクトル分布曲線を生成する。
【0028】
以下、各ステップについて詳しく述べる。
【0029】
まず、解析対象の自然由来柄の二次元フーリエ解析についてである。x,yを変数とする関数f(x,y)のフーリエ変換F(u,v)は数3により表される。自然由来柄はf(x,y)で示すものとする。ここでx,yは自然由来柄の2方向の軸であり、単位は長さとする。フーリエ変換された関数F(u,v)で、u,vは長さの逆数を単位とする量である。言い換えると、u,vは単位長さあたりの特徴量の繰り返し数、つまり周波数である。例えば木目柄において、特徴量は木目であり、u,vは単位長さに入る木目の本数に当たる。
【数3】
【0030】
《二次元フーリエ変換》
二次元フーリエ変換において、強度を表すパワースペクトルは、二次元周波数パラメータ(u’、v’)にパワースペクトルau2の三次元情報として表現される。このとき、周波数特性全体を把握するため、1枚の画像として示すことが一般的な方法である。例えば、図5に示す、画像の濃淡として表される二次元波aucos{2π(u’x+v’u)}をフーリエ変換すると、図6に示す(u’、v’)、(-u’、-v’)の位置に、強度au2のパワースペクトルとして現れる。つまり、中心からプロットされる位置への距離が二次元波の周波数を示し、プロット位置の中心角が二次元波の進行方向に対応する。画像におけるフーリエ変換では、高い周波数は小刻みな濃淡の変化として、低い周波数は濃淡の画像全体での滑らかな変化として見られる。
【0031】
図7は、試料(a)〜(j)と、これらを二次元フーリエ変換することで得られたパワースペクトル画像とをそれぞれ示すものである。ここから見て取れるように、周波性の強いものほど軌線が明確になり、不規則性が強いものほど全体に円を描くように広がっていることが分かる。
【0032】
《周波数―パワースペクトル曲線》
パワースペクトル画像の解析にあたっては、方向性による単調性や複雑性が大きいことを考慮し、図8に示すように、画像の中心を原点として22.5°ずつ対角を含め計8等分する。このとき、パワースペクトル画像は点対称であるので、180°まで解析を行う。全てのピクセルについて、横軸に周波数(中心からの距離)をとり、縦軸にはパワースペクトル値の平均値をプロットし、これらを分割した各8領域ごとに折れ線で結び、両軸を対数軸で示した周波数―パワースペクトル曲線を、図9に示す。ただしこの時、例えば0°〜22.5°の場合、中間ラインである12.25°ライン上の点のみについてをプロットするなど、適宜省略しても本発明の実施は可能である。
【0033】
《特徴量パラメータの抽出》
次に、得られた周波数―パワースペクトル曲線から、特徴量パラメータを抽出する。図9に示す周波数―パワースペクトル曲線を見ると、何箇所かに大きなピークが見られる。これはその自然由来柄形状を特徴付けている特有のスペクトルである。この部分を特徴点としてみなし、制御対象からはずすことで、自然由来柄形状の特徴を維持できる。
【0034】
図10に、特徴量パラメータを抽出する際のフロー図を示す。まず、周波数―パワースペクトル曲線を、高周波域と低周波域で挙動が異なる点を考慮して、図11に示す通り周波数域を二分割し(ステップS11)、それぞれについて、画像の中心を原点として22.5°ごとに分割し、そのうち180°までをそれぞれ解析対象とする(ステップS12)。次に各周波数―パワースペクトル曲線について、最小二乗近似直線を導出し(ステップS13)、得られた近似直線と、分布曲線との誤差から標準偏差σを算出し(ステップS14)、近似直線と分布曲線の誤差を求め(ステップS15)、これを±2σとの大小関係において判断し(ステップS16)、誤差が±2σよりも大きいと、特徴点として計算から除外され、制御も禁止される(ステップS17′)。誤差が±2σ以下であれば、有効点と判断され(ステップS17)、これらの有効点群だけを用いて最小近似直線を再度算出する(ステップS18)。
【0035】
さらに、高周波域および低周波域のそれぞれにおいて、ステップS18で導出した最小二乗近似直線の低周波の傾き、高周波の傾き、低周波の切片、および高周波におけるパワースペクトルの重心位置(中心Y座標)の計4項目を算出し(ステップS19)、それぞれについてさらに、全方向の平均値、および最大値と最小値の差を求め(ステップS20)、これら8つを、特徴量パラメータとして定義した。これら特徴量パラメータを全ての自然由来柄について求めた解析結果を表5に示す。
【0036】
【表5】
周波数―パワースペクトル曲線における特徴量パラメータ
【0037】
[制御可能な評価項目の特定]
まず、各試料についての、表1に示す平均評価値および表5に示す特徴量パラメータの値について、相関係数を求める。本実施例における結果は表6に示すとおりである。
【0038】
【表6】
【0039】
ここで相関関係が特に大きい「高周波/重心/平均」と「高周波/傾き/差」についてグラフ化したものを図12、図13にそれぞれ示す。より詳しくは、図12は、平均評価値を横軸にとり、高周波領域における重心の平均を縦軸にとった「高周波/重心/平均」のグラフであり、図13は、平均評価値を横軸にとり、高周波領域における傾きの差を縦軸にとった「高周波/傾き/差」のグラフである。
【0040】
図12から一つの解析項目が複数の評価項目に影響していることがわかる。「乱雑な」「複雑な」「凸凹のある」の3項目の最小二乗近似した直線の傾きは、プラス傾斜である程度一致していることから、互いに高い相関があると言える。一方で「なめらかな」「単調な」の2項目の最小二乗近似直線の傾きはマイナス傾斜でほぼ一致しており、前述の3項目の傾きと正負反対の関係にあり、これは負の相関があると言える。同様に、図13からは、「流れるような」と「自然な」「繊細な」の2項目とが正負の相関関係にあることが分かる。
【0041】
[自然由来柄の印象を制御]
このプロセスでは、以上で得られた結果を基にして、自然由来柄の持つパワースペクトルの分布を変化させることにより、その自然由来柄の印象に関わる物理的特性を変化させる。こうして制御した(変化させた)パワースペクトルから、新しくスペクトル情報を算出し、この制御後のスペクトル情報と、元の位相情報とを用いて2次元フーリエ逆変換をすることで、特徴量を制御した自然由来柄画像が得られる。
【0042】
まず、任意の自然由来柄を制御するにあたり、その自然由来柄の特徴量パラメータを算出する。その過程において、2次元フーリエ変換をするが、この際得られるスペクトル情報および位相情報のうち、スペクトル情報は以下に示す手順に従い変更し、位相情報はそのまま保持しておく。
【0043】
ここでは、本実施例で採用した評価項目との相関関係が特に高い、「高周波/重心/平均」、「高周波/傾き/差」、「低周波/傾き/平均」の3つの特徴量パラメータを変更し、パワースペクトルを制御する例を示す。このプロセスは図14のフローチャートに示す手順の一部に対応する。
【0044】
《高周波/重心/平均》
まず、図12を参照しながら「高周波/重心/平均」の項目を操作したパワースペクトルを得る場合について記載する。このとき、各8方向の曲線の最小二乗近似直線の傾きmn(n=1,2,3…8)を、操作者が入力する任意の「印象の変化量」をM1とすると、「高周波/重心/平均」の変化量である変更値D1は数4で求められる。
【数4】
【0045】
変化前のパワースペクトルをP、数4で得られた変更値D1を反映させたパワースペクトルをP'とすると、P’は数5により求められる。
【数5】
【0046】
《高周波/傾き/差》
次に、図13を参照しながら「高周波/傾き/差」の項目を操作したパワースペクトルを得る場合について記載する。このとき、各8方向の曲線の最小二乗近似直線の傾きをmn(n=1,2,3…8)、傾きの中の最大値をmmax、最小値をmmin、操作者が入力する任意の「印象の変化量」をM2とすると、「高周波/傾き/差」の変化量である変更値D2は、数6で求められる。
【数6】
【0047】
操作項目は、高周波における傾きの最大値と最小値の差mmax−mminである。このときより自然な結果を求めるため、全ての方向における傾きmnにも変化を与える。その際、傾きの最大値と最小値の中間値Cmを数7の上段式のとおりに定義し、Cmを中心に、傾きmnの分布を変化させる。mnの変化後の傾きmn’は、数7の下段式により求められる。
【数7】
【0048】
さらに、この変化後のmn’の最大値と最小値の差は、数8により、求めることができる。
【数8】
【0049】
変化前のパワースペクトルをP、変化後のパワースペクトルをP’とすると、P’は数9により求められる。ここで、Gx,Gyは高周波域の重心位置の対数軸上での座標である。傾きを変化させても他の制御項目に影響が出ないようにするため、必ず重心を通過させる。
【数9】
【0050】
《低周波/傾き/平均》
最後に「低周波/傾き/平均」の項目を操作したパワースペクトルを得る場合について記載する。このとき、低周波における各8方向の曲線の最小二乗近似直線の傾きをmn(n=1,2,3…8)、傾きの平均値をmave、低周波の切片をbn、操作者が入力する任意の「印象の変化量」をm3とすると、「低周波/傾き/平均」の変化量である変更値D3は、数10で求められる。
【数10】
【0051】
操作項目は低周波における傾きの平均値maveであるので、各8方向の傾き全てのmnをD3だけ変化させる。mnの変化後の傾きをmn’とすると、数11で求められる。
【数11】
【0052】
このmn’を用いて、パワースペクトルを変化させる。変化前のパワースペクトルをP、mn’を反映させた変化後のパワースペクトルをP’とすると、P’は数12で求められる。
【数12】
【0053】
《逆フーリエ変換》
以上3つの例において得られた制御後のパワースペクトルP’に基づいてスペクトル情報を算出し、このスペクトル情報と、最初に操作対象である自然由来柄についてスペクトル情報を取得した際に同時に取得された位相情報とを用いて二次元フーリエ逆変換を行うことで、評価項目の持つ印象について制御された自然由来柄を得ることができる。
【0054】
このとき、f(x,y)を、数3によりフーリエ変換した変換値であるF(u,v)は、式(2)によりf(x,y)に逆変換して戻すことができる。これを逆フーリエ変換と呼ぶ。F(u,v)を、実部R(u,v)および虚部I(u,v)で表すと、パワースペクトルP(u,v)およびフーリエスペクトルQ(u,v)は、それぞれ数13のように表される。
【数13】
【0055】
図15A,図15B,図15Cにそれぞれ示すのは、「高周波/重心/平均」「高周波/傾き/差」「低周波/傾き/平均」について制御を行った結果である。図の括弧内に示した数値は制御量として操作者が入力した「印象の変化量」を表している。また、(a)は元画像、(b)(c)は制御後の画像で、(b)と(c)において操作したのは、互いに負の相関関係があると考えられている項目である。元の形状のイメージを残しつつ、異なる印象を与えていることが分かる。
【0056】
以上、本発明の自然由来柄の定量的評価を用いた自然由来柄の創成システムについて、実施例を参照しながら説明したが、本発明は上記に限定されるものではなく、当業者は請求の範囲内で様々なバリエーションを考え得るだろう。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本システムは、自然由来柄の評価に関与する項目を、官能評価により任意の集団に評価させた結果をもとに、統計的な手法によってデザイン柄のパターンにおける特徴変数を抽出し、これを用いて上記項目に関した印象制御を定量的に可能としたものである。これまで、意匠デザイナーは、自己の判断に加え、展示会や顧客先、社内検討などを経て、市場動向をにらみながら上梓する柄の評価をしていた。これに対し本発明は、美的感覚に関する評価項目に対して評価結果を集め、これを工学的手法によって処理することで柄の評価を決定する手法を提示するものでもある。これは、デザイナーの柄作成の大きな支援ともなるだろう。また、評価を仰ぐ集団を変えることにより、特徴ある市場の評価をも、論理手法により求めることが可能となる。つまり、今までデザイナー個々人の感性に頼っていた柄開発の過程を、任意の集団の評価を定量的に反映させ、自然由来柄の印象を制御することで、より短時間で合理的かつ安価にデザイン柄の開発が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明自然柄創成システムの説明図である。
【図2】図1に示す本発明自然柄由来創成システムが働くフロー説明図である。
【図3】本発明実施例において用いる10種類の試料である。
【図4】自然由来柄の解析手順を示すフロー図である。
【図5】画像の濃淡として表される二次元波である。
【図6】パワースペクトルの表示に関する説明図である。
【図7】図3に示す10種類の試料の、元のパワースペクトル画像と、特徴量パラメータ変更後のパワースペクトル画像をそれぞれ示した図である。
【図8】周波数―パワースペクトル曲線の導出方法の説明図である。
【図9】図3に示す10種類の試料の、周波数―パワースペクトル曲線をそれぞれ示す図である。
【図10】特徴量パラメータを抽出する際のフロー図である。
【図11】図10に示すステップS11〜S13について参照される図である。
【図12】図3に示す試料の、高周波における重心の平均についてグラフ化したものである。
【図13】図3に示す試料の、高周波における傾きの最大値と最小値の差についてグラフ化したものである。
【図14】特徴量パラメータを制御し、逆フーリエ変換により画像を逆生成するまでの手順を示すフロー図である。
【図15A】元画像〔a〕について、高周波における重心の平均を制御した結果の画像(b),(c)である。
【図15B】元画像〔a〕について、高周波における傾きの最大値と最小値の差を制御した結果の画像(b),(c)である。
【図15C】元画像〔a〕について、低周波における傾きの平均を制御した結果の画像(b),(c)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の自然由来柄を準備するとともに複数種類の評価項目を設定し、
前記各自然由来柄を前記評価項目について中屋の変法による一対比較法で定量的に評価し、
前記各自然由来柄を二次元フーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から、特徴量パラメータを抽出し、
前記複数種類の自然由来柄についての前記評価値の平均と前記特徴量パラメータの算出結果との相関を求めることを特徴とする、自然由来柄の定量的評価方法。
【請求項2】
前記各自然由来柄の特徴量パラメータは、前記パワースペクトル画像から、周波数の変数としたパワースペクトルの分布である周波数―パワースペクトル分布曲線を生成し、前記周波数―パワースペクトル分布曲線を低周波域と高周波域とに分け、それら低周波域と高周波域における前記周波数―パワースペクトル分布曲線の傾向から抽出することを特徴とする、請求項1記載の自然由来柄の定量的評価方法。
【請求項3】
前記周波数―パワースペクトル分布曲線の前記傾向とは、画像の中心を原点にし、その原点周りの360度うちの180度分について一定角度ごとに分割し、最小近似値を導出し、特徴点を除いて再度最小近似値を導出し、前記再度算出した最小近似値の、低周波の傾き、高周波の傾き、低周波の切片、および高周波におけるパワースペクトルの重心位置の4項目を算出し、前記4項目について求めた平均値、および最大値と最小値の差であることとする請求項1または2に記載の自然由来柄の定量的評価方法。
【請求項4】
複数種類の自然由来柄を準備するとともに複数種類の評価項目を設定し、
前記各自然由来柄を前記評価項目について中屋の変法による一対比較法で定量的に評価し、
前記各自然由来柄を二次元フーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から、特徴量パラメータを抽出し、
前記複数種類の自然由来柄についての前記評価値の平均と前記特徴量パラメータの算出結果とが有意に相関する評価項目である制御可能評価項目を特定し、
操作対象である任意の自然由来柄についても前記特徴量パラメータを抽出し、
前記制御可能評価項目の中から所望の項目を操作項目として選択し、また、操作量を決定し、
前記操作項目と有意に相関する前記特徴量パラメータを、前記操作量分変更し、
その変更した特徴量パラメータを用いた逆フーリエ変換により、前記任意の自然由来柄を変化させて所望の評価の自然由来柄を創成することを特徴とする、自然由来柄の創成方法。
【請求項5】
前記各自然由来柄の特徴量パラメータは、前記パワースペクトル画像から、周波数の変数としたパワースペクトルの分布である周波数―パワースペクトル分布曲線を生成し、前記周波数―パワースペクトル分布曲線を低周波域と高周波域とに分け、それら低周波域と高周波域における前記周波数―パワースペクトル分布曲線の傾向から抽出することを特徴とする、請求項4記載の自然由来柄の創成方法。
【請求項6】
前記周波数―パワースペクトル分布曲線の前記傾向とは、画像の中心を原点にし、その原点周りの360度うちの180度分について一定角度ごとに分割し、最小近似値を導出し、特徴点を除いて再度最小近似値を導出し、前記再度算出した最小近似値の、低周波の傾き、高周波の傾き、低周波の切片、および高周波におけるパワースペクトルの重心位置の4項目を算出し、前記4項目について求めた平均値、および最大値と最小値の差であることとする、請求項4または5に記載の自然由来柄の創成方法。
【請求項7】
複数種類の自然由来柄の各々を複数種類の評価項目について、中屋の変法による一対比較法で定量的に評価して得た、前記各評価項目についての平均評価値と、前記各自然由来柄を二次元フーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から抽出した特徴量パラメータとの相関のうち、互いに有意に相関する操作可能評価項目である評価項目と特徴量パラメータとの関連を保持する関連保持部と、
操作対象である任意の自然由来柄について、前記試料と同様にして前記特徴量パラメータを抽出し、同時に得られる位相情報を保持する特徴量パラメータ抽出部と、
前記特徴量パラメータ抽出部が抽出した前記任意の自然由来柄の特徴量パラメータのうち、前記制御可能評価項目の中から所望の操作項目として選択入力された項目およびその操作量と、前記関連保持部が保持する前記操作可能評価項目と特徴量パラメータとの関連に基づき特徴量パラメータの変更値を導出する変更値導出部と、
前記変更値導出部が導出した変更値について、前記任意の自然由来柄の特徴量パラメータを変更する特徴量パラメータ変更部と、
前記特徴量パラメータ変更部が変更した特徴量パラメータと、特徴量パラメータ抽出部が保持する位相情報とを用いた逆フーリエ変換により、前記任意の自然由来柄を任意の評価項目について変化させた自然由来柄を創成する自然由来柄創成部と、
を具えてなる、自然由来柄の創成システム。
【請求項1】
複数種類の自然由来柄を準備するとともに複数種類の評価項目を設定し、
前記各自然由来柄を前記評価項目について中屋の変法による一対比較法で定量的に評価し、
前記各自然由来柄を二次元フーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から、特徴量パラメータを抽出し、
前記複数種類の自然由来柄についての前記評価値の平均と前記特徴量パラメータの算出結果との相関を求めることを特徴とする、自然由来柄の定量的評価方法。
【請求項2】
前記各自然由来柄の特徴量パラメータは、前記パワースペクトル画像から、周波数の変数としたパワースペクトルの分布である周波数―パワースペクトル分布曲線を生成し、前記周波数―パワースペクトル分布曲線を低周波域と高周波域とに分け、それら低周波域と高周波域における前記周波数―パワースペクトル分布曲線の傾向から抽出することを特徴とする、請求項1記載の自然由来柄の定量的評価方法。
【請求項3】
前記周波数―パワースペクトル分布曲線の前記傾向とは、画像の中心を原点にし、その原点周りの360度うちの180度分について一定角度ごとに分割し、最小近似値を導出し、特徴点を除いて再度最小近似値を導出し、前記再度算出した最小近似値の、低周波の傾き、高周波の傾き、低周波の切片、および高周波におけるパワースペクトルの重心位置の4項目を算出し、前記4項目について求めた平均値、および最大値と最小値の差であることとする請求項1または2に記載の自然由来柄の定量的評価方法。
【請求項4】
複数種類の自然由来柄を準備するとともに複数種類の評価項目を設定し、
前記各自然由来柄を前記評価項目について中屋の変法による一対比較法で定量的に評価し、
前記各自然由来柄を二次元フーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から、特徴量パラメータを抽出し、
前記複数種類の自然由来柄についての前記評価値の平均と前記特徴量パラメータの算出結果とが有意に相関する評価項目である制御可能評価項目を特定し、
操作対象である任意の自然由来柄についても前記特徴量パラメータを抽出し、
前記制御可能評価項目の中から所望の項目を操作項目として選択し、また、操作量を決定し、
前記操作項目と有意に相関する前記特徴量パラメータを、前記操作量分変更し、
その変更した特徴量パラメータを用いた逆フーリエ変換により、前記任意の自然由来柄を変化させて所望の評価の自然由来柄を創成することを特徴とする、自然由来柄の創成方法。
【請求項5】
前記各自然由来柄の特徴量パラメータは、前記パワースペクトル画像から、周波数の変数としたパワースペクトルの分布である周波数―パワースペクトル分布曲線を生成し、前記周波数―パワースペクトル分布曲線を低周波域と高周波域とに分け、それら低周波域と高周波域における前記周波数―パワースペクトル分布曲線の傾向から抽出することを特徴とする、請求項4記載の自然由来柄の創成方法。
【請求項6】
前記周波数―パワースペクトル分布曲線の前記傾向とは、画像の中心を原点にし、その原点周りの360度うちの180度分について一定角度ごとに分割し、最小近似値を導出し、特徴点を除いて再度最小近似値を導出し、前記再度算出した最小近似値の、低周波の傾き、高周波の傾き、低周波の切片、および高周波におけるパワースペクトルの重心位置の4項目を算出し、前記4項目について求めた平均値、および最大値と最小値の差であることとする、請求項4または5に記載の自然由来柄の創成方法。
【請求項7】
複数種類の自然由来柄の各々を複数種類の評価項目について、中屋の変法による一対比較法で定量的に評価して得た、前記各評価項目についての平均評価値と、前記各自然由来柄を二次元フーリエ変換して得られたパワースペクトル画像から抽出した特徴量パラメータとの相関のうち、互いに有意に相関する操作可能評価項目である評価項目と特徴量パラメータとの関連を保持する関連保持部と、
操作対象である任意の自然由来柄について、前記試料と同様にして前記特徴量パラメータを抽出し、同時に得られる位相情報を保持する特徴量パラメータ抽出部と、
前記特徴量パラメータ抽出部が抽出した前記任意の自然由来柄の特徴量パラメータのうち、前記制御可能評価項目の中から所望の操作項目として選択入力された項目およびその操作量と、前記関連保持部が保持する前記操作可能評価項目と特徴量パラメータとの関連に基づき特徴量パラメータの変更値を導出する変更値導出部と、
前記変更値導出部が導出した変更値について、前記任意の自然由来柄の特徴量パラメータを変更する特徴量パラメータ変更部と、
前記特徴量パラメータ変更部が変更した特徴量パラメータと、特徴量パラメータ抽出部が保持する位相情報とを用いた逆フーリエ変換により、前記任意の自然由来柄を任意の評価項目について変化させた自然由来柄を創成する自然由来柄創成部と、
を具えてなる、自然由来柄の創成システム。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図3】
【公開番号】特開2010−61410(P2010−61410A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226537(P2008−226537)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「2008年度精密工学会春季大会 プログラム&アブストラクト集」の表紙、裏表紙、及び「シボテクスチャデザインシステムの開発」掲載ページのコピー。
【出願人】(591023859)株式会社千代田グラビヤ (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「2008年度精密工学会春季大会 プログラム&アブストラクト集」の表紙、裏表紙、及び「シボテクスチャデザインシステムの開発」掲載ページのコピー。
【出願人】(591023859)株式会社千代田グラビヤ (13)
【Fターム(参考)】
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