説明

自発光デバイス

【課題】 発光体が放射する光を空気中により効率よく取り出すこと。
【解決手段】 自発光デバイス1は、半導体層の屈折率分布により光の取り出し効率を向上させる態様であり、第1の層(半導体層2)と、第1の層(半導体層2)上に重なる発光層3と、発光層3に重なる第2の層(半導体層4)とを備え、第1の層(半導体層2)の屈折率と第2の層(半導体層4)の屈折率とを異ならせ、発光層3を挟む層(半導体層2,4)の屈折率を非対称な構成とする。非対称な層(半導体層)の屈折率分布において、第2の層(半導体層4)の屈折率を第1の層(半導体層2)の屈折率よりも高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)や有機EL等の自発発光する自発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)や有機ELなどの自発発光する自発光デバイスは、表示、ディスプレイ、照明等の広い分野での利用が期待されているが、発光体から放射された光は全反射によって外部への取り出しが制限されるため、発光体で発光した光の利用効率が低いという問題が指摘されている。例えば、LED等の半導体を用いた発光素子の効率は10%以下と言われている。
【0003】
したがって、上記した自発光デバイスでは、発光体が放射する光を空気中により効率良く取り出すことが求められている。
【0004】
この課題を解決するものとして、半導体表面に周期構造を形成する手法が提案されている(例えば、特許文献1,2,3,4参照)。半導体表面に形成した周期構造は、周期構造の波数変換作用によって半導体内部の光の方向を変化させ、全反射していた光を空気中に取り出すようにするもので、内部の光が大きな立体角を有することから、結果的に取り出し効率が向上する。
【特許文献1】米国特許 第5779924号
【特許文献2】特開平10−4209号公報
【特許文献3】特開2004−128445号公報
【特許文献4】特開2004−31221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の発明者は、3次元光波シミュレーションによって前記した周期構造による取り出し効率を算出した結果、見込まれる取り出し効率の向上は、周期構造による回折効率によって制限され、1.5倍から2倍に留まることを確認した。なお、3次元光波シミュレーションは、本出願の発明者が波動光学シミュレーション方法として出願している(特開2005−69709号公報)。
【0006】
また、周期構造を形成する加工プロセスによっては、周期構造の周期性を完全なものとすることができず、十分な光の取り出し効率が得られないという問題があり、また、この周期構造の周期性を完全なものとするには、加工プロセスに大きな負担がかかるという問題がある。
【0007】
この効率を向上させるものとして、発光層(活性層)に回折格子を直接に形成する構造が考えられ、この構造とすることによって、さらに大幅な効率向上が見込まれる。しかしながら、発光層に直接に回折格子を形成する構造では、発光層自体の品質を著しく損傷させてしまうという問題があるため、現実にはこのような構造を採用することはできない。
【0008】
本発明は前記した従来の問題点を解決し、発光体が放射する光を空気中により効率よく取り出すことを目的とする。
【0009】
また、加工プロセスに負担をかけることなく光の取り出し効率を向上させることを目的とする。
【0010】
また、周期構造の周期性が不十分な場合であっても、光の取り出し効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願の発明者は、前記した3次元光波シミュレーションによって自発光デバイスからの光放射を解析した結果、光の取り出しに係わる要因として、自発光デバイスを構成する半導体層等の各層の屈折率分布があることを見出した。
【0012】
また、自発光デバイスの発光面が二次元周期構造を備える構成である場合には、その二次元周期構造の形状、発光層と二次元周期構造との距離があることも見出した。
【0013】
本発明の自発光デバイスは、上記シミュレーションから得られる知見に基づくものであり、光の取り出し効率を向上させる構成として4つの態様を備える。
【0014】
本発明の自発光デバイスの第1の態様は、自発光デバイスを構成する各層の屈折率分布により光の取り出し効率を向上させる態様であり、第1の層と、この第1の層上に重なる発光層と、この発光層上に重なる第2の層とを備え、第1の層の屈折率と第2の層の屈折率とを異ならせ、発光層を挟む両層の屈折率を非対称な構成とする。
【0015】
この非対称な層の屈折率分布において、第2の層の屈折率を第1の層の屈折率よりも高くする。
【0016】
第1の態様によれば、発光層を挟む層の屈折率を非対称な構成とすることによって、自発光デバイスを構成する各層内における光の存在分布を、屈折率が対称である構成による光分布と異ならせ、この光分布によって発光層内に閉じ込められていた光を発光層外に取り出し易くする。
【0017】
第2の層の屈折率を第1の層の屈折率よりも高くすることによって、発光層から取り出した光を、屈折率が高い第2の層側に導き、第2の層側の発光面から取り出す発光効率を向上させる。
【0018】
なお、発光層を挟む両層の屈折率を非対称な構成とする第1の態様は、自発光デバイスの発光面が二次元周期構造を備えない構成、及び、二次元周期構造を備える構成のいずれの構成にも適用することができる。
【0019】
本発明の自発光デバイスの第2の態様は、自発光デバイスの発光面が二次元周期構造を備える構成において、発光層と二次元周期構造との距離により光の取り出し効率を向上させる態様であり、第1の層と、この第1の層上に重なる発光層と、この発光層上に重なる第2の層とを備え、第2の層の表面、又は第2の層上に重なる層の表面に二次元周期構造を設け、λを真空中波長としたとき、発光層の上部と二次元周期構造の底部との距離を0.1λ〜0.3λ、又は0.3λ〜λとする。この距離は、消失領域の浸透深さと同程度、あるいはそれよりも長き距離である。
【0020】
発光層の上部と二次元周期構造の底部との距離を0.3λ〜λのように厚い構成とした場合には、内部で自由発光する光の取り出しを高めることで取り出し効率を向上させる。また、発光層の上部と二次元周期構造の底部との距離を0.1λ〜0.3λのように薄い構成とした場合には、光の取り出しを高めると共に、外部に向かっての光放射を高めることで取り出し効率を向上させる。
【0021】
この第2の態様は、前記した第1の態様と組み合わせることができ、発光面に形成した二次元周期構造の底部と発光層の上部との距離を0.1λ〜0.3λ、又は0.3λ〜λとし、かつ、第1の層の屈折率と第2の層の屈折率とを異ならせ、発光層を挟む両層の屈折率を非対称とし、また、第2の層の屈折率を第1の体層の屈折率よりも高い構成とする。
【0022】
本発明の自発光デバイスの第3の態様は、第1の態様と同様に自発光デバイスを構成する層の屈折率分布によって光の取り出し効率を向上させるものであって、中間層を備える多層構造とする態様であり、第1の層と、この第1の層上に重なる発光層と、この発光層上に重なる第2の層とを備え、この第2の層内に中間層を設けた多層構造とする。
【0023】
この中間層は、屈折率を発光層と同等とし、かつ、発光層が発光する光を吸収しない媒質により形成する。あるいは、中間層は、屈折率を第1の層及び第2の層の屈折率よりも高く形成する。この中間層の厚さは、例えば、λを真空中波長としたとき0.5λ以上とする。
【0024】
この第3の態様は、前記した第2の態様と組み合わせることができ、第2の層に二次元周期構造を設け、この二次元周期構造内に中間層を設けた多層構造とし、二次元周期構造の底部と発光層の上部との距離を0.1λ〜0.3λ、又は0.3λ〜λとする。
【0025】
第1の層、第2の層、及び中間層はAlGaNとし、中間層のAlの組成率を第1の層及び第2の層のAlの組成率よりも低く形成することで、中間層の屈折率を第1の層及び第2の層の屈折率よりも高くする。
【0026】
第2の態様及び第3の態様において、二次元周期構造は、円孔最密配列又は錐状突起最密配列とすることができる。錐状突起最密配列としては、例えば、円錐突起最密配列や角錐突起最密配列とすることができる。
【0027】
また、二次元周期構造は、フォトニック結晶、あるいはフォトニック準結晶により形成することができる。
【0028】
なお、フォトニック準結晶は、発光体の発光面に、屈折率について並進対称性を持たず、長距離秩序及び回転対称性を有する屈折率の準周期構造を備える。この構成は、発光体の発光面に、フォトニック結晶を構成する屈折率領域を、並進対称性を有しない準結晶のパターンに従って配列することで形成することができる。
【0029】
第1の態様乃至第3の態様において、第1の層及び第2の層を半導体層とする場合には、第1の半導体層はn-GaN(又はp-GaN)であり、発光層はIn GaNであり、第2の半導体層はp-GaN(又は n-GaN)により形成することができる。
【0030】
また、第1の態様乃至第3の態様において、第2の層を樹脂層で被覆する構成とすることができる。
【0031】
また、二次元周期構造においてフォトニック準結晶による準周期構造を用いることで、帯域依存性や視野角依存性を低減し、広い立体角や広いスペクトルに対する効率を向上させることができ、発光体が放射する光を空気中により効率よく取り出すことができる。
【0032】
前記した第1の層及び第2の層は半導体により形成する他、ガラス基板等によって形成することができ、これにより、発光ダイオードあるいは有機ELを構成することができる。
【0033】
さらに、本発明の自発光デバイスの第4の態様は、発光面に二次元周期構造を備えると共に、第1の態様と同様に自発光デバイスを構成する層の屈折率分布によって光の取り出し効率を向上させる態様である。
【0034】
この第4の態様は、第1の層と、第1の層上に重なる発光層と、発光層上に重なる第2の層とを備える。第2の層の表面、又はこの第2の層上に重なる層の表面は二次元周期構造を有する。また、第1の層は低屈折率層である。第1の層の屈折率は、発光層よりも低く、かつ、第2の層と同じ若しくは低く設定する。低屈折率層の厚さは、発光層の発光波長と同程度である。
【0035】
第4の態様において、発光層はInGaNであり、第1の層の低屈折率層は、AlGaN、AlO(サファイア)、AlN(窒化アルミ)の何れかである。
【0036】
第4の態様の自発光デバイスの一構成は、サファイア基板上にInGaNの発光層、及び二次元周期構造を有したAlGaN層を順に積層する。サファイア基板と発光層との間に一方の電極を有した層を備え、AlGaN層の一部に他方の電極を備えることで、発光層に通電する。
【0037】
また、本発明は、二次元周期構造を備える自発光デバイスにおいて、自発光デバイスが備える二次元周期構造の周期性は、1/2周期〜2周期の周期範囲を備え、この範囲内の周期ずれであれば十分な効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、発光体が放射する光を空気中により効率よく取り出すことができる。また、加工プロセスに負担をかけることなく光の取り出し効率を向上させることができる。
【0039】
また、周期構造の周期性が不十分な場合であっても、光の取り出し効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、本発明の自発光デバイスは、発光ダイオード等のように、各層を半導体層により形成する構成例を用いて説明するが、有機ELのように各層をガラス基板等により形成する構成にも適用することができる。
【0041】
本発明の第1の態様を図1を用いて説明する。図1において、第1の態様の自発光デバイス1は、半導体層の屈折率分布により光の取り出し効率を向上させる態様であり、第1の半導体層2と、この第1の半導体層2上に重なる発光層3と、この発光層3上に重なる第2の半導体層4とを備え、第1の半導体層2の屈折率を低屈折率とし、第2の半導体層4の屈折率を高屈折率として、発光層3を挟む上下の半導体層2,4の屈折率を非対称な構成とする。
【0042】
半導体層2,4及び発光層3は自発光デバイス1の各層を構成する。各層は、例えば、第1の半導体層2及び第2の半導体層4はAlGaNのクラッド層によって形成し、発光層3はInGaNにより形成する。ここで、発光層3の屈折率は例えば2.8とし、第1の半導体層2のAlGaNのクラッド層の屈折率は2.5とし、第2の半導体層4のAlGaNのクラッド層の屈折率は2.78とする。第2の半導体層4のAlGaNのクラッド層の屈折率は、Alの組成を第1の半導体層2のAlGaNのクラッド層のAlの組成よりも低くすることによって、高い屈折率とすることができる。また、光の真空中波長λとするとき、発光層3の厚さは0.2λとする。
【0043】
次に、本発明の第2の態様を図2を用いて説明する。図2において、第2の態様の自発光デバイス1は、自発光デバイス1の発光面に二次元周期構造10を備える構成において、発光層3と二次元周期構造10との距離dsにより光の取り出し効率を向上させる態様である。なお、二次元周期構造は、半導体層に設ける他、半導体層上に重なる層の表面に形成してもよい。以下では、半導体層に二次元周期構造を設ける例について説明する。
【0044】
自発光デバイス1は、第1の半導体層2と、この第1の半導体層2の上に重なる発光層3と、この発光層3上に重なる第2の半導体層4とを備え、第2の半導体層4の表面に二次元周期構造10を設け、λを真空中波長としたとき、発光層3の上部と二次元周期構造10の底部との距離を0.1λ〜0.3λ、又は0.3λ〜λとする。なお、この距離dsは、消失領域の浸透深さと同程度、あるいはそれよりも長い距離である。
【0045】
半導体層2,4及び発光層3は、前記した第1の態様と同様に、自発光デバイス1の各層を構成し、例えば、第1の半導体層2及び第2の半導体層4はAlGaNのクラッド層によって形成し、発光層3はInGaNにより形成することができる。
【0046】
ここで、第1の半導体層2、発光層3、及び第2の半導体層4の屈折率は、第1の態様と同様に非対称な構成とする他、対称な構成としてもよい。非対称な構成では、発光層3の屈折率は例えば2.8とし、第1の半導体層2のAlGaNのクラッド層の屈折率は2.5とし、第2の半導体層4のAlGaNのクラッド層の屈折率は2.78とする。また、対称な構成では、発光層3の屈折率は例えば2.8とし、第1の半導体層2及び第2の半導体層4のAlGaNのクラッド層の屈折率は2.5とする。
【0047】
第2の態様が備える二次元周期構造10は、例えば円孔最密配列又は錐状突起最密配列により構成することができ、フォトニック結晶あるいはフォトニック準結晶により形成することができる。錐状突起最密配列は、錐状体の突起物を最密配列するものであり、錐状体は任意の形状とすることができ、例えば、円錐状突起最密配列や角錐状突起最密配列とすることができる。
【0048】
なお、フォトニック結晶は、屈折率を異にする領域を光の波長程度の周期で繰り返して並べることで構成され、フォトニック準結晶は、2つの異なる屈折率領域を光の波長程度の周期で繰り返すフォトニック結晶において配列パターンを準結晶のパターンに従って構成するものであり、屈折率について並進対称性を持たず、長距離秩序及び回転対称性を有する屈折率の準周期構造を備える。準結晶を形成するパターンとしては、例えば、ペンローズタイリング(Penrose-type) のパターンや正方形−三角形タイリング(12-fold Symmetric)のパターンを用いることができる。
【0049】
フォトニック準結晶による格子構造を備えた発光面を適用することによって、光の取り出し効率を高めることができ、また、視野角依存性を低減して高い立体角を得ることができる。
【0050】
図2(a)、(b)は、二次元周期構造として円孔最密配列を用いた場合を示している。図2(a)は円孔最密配列による二次元周期構造10の平面を示し、図2(b)は自発光デバイス1及び二次元周期構造10の側面を示している。
【0051】
この円孔最密配列の二次元周期構造を備える自発光デバイス1では、第2の半導体層4に孔径2r、孔の深さdhを有する円孔11が周期的に配列され、円孔11の底部12と発光層3の上部との間の距離をdsとしている。二次元周期構造を定めるパラメータとして格子常数a(孔間のピッチ)を備える。
【0052】
3次元光波シミュレーションの結果によれば、これらのパラメータa,2r,及びdhによって光の取り出し効率が変化し、
a=λ〜1.5λ
2r=0.5a〜0.6a
dh=0.5λ〜λ
において、光の取り出し効率が最大となる。
【0053】
また、図2(c)は円錐突起最密配列による二次元周期構造10の平面を示し、図2(d)は自発光デバイス1及び二次元周期構造10の側面を示している。
【0054】
なお、以下では円錐突起最密配列を用いて説明するが、円錐突起最密配列は錘状突起最密配列の一例に過ぎず、角錘突起体を最密配列する角錘突起最密配列としてもよい。
【0055】
この円錐突起最密配列の二次元周期構造を備える自発光デバイス1(発光面は円錐突起によって完全に満たされているものとする)では、第2の半導体層4に角度θを有する円錐突起13が周期的に配列され、円錐突起13の底部14と発光層3の上部との間の距離をdsとしている。二次元周期構造を定めるパラメータとして格子常数a(円錐突起間のピッチ)、及び角度θを備える。
【0056】
3次元光波シミュレーションの結果によれば、これらのパラメータa,θによって光の取り出し効率が変化し、
a=0.5λ〜λ
θ=60°〜65°
において、光の取り出し効率が最大となる。
【0057】
なお、上記光の取り出し効率は、後述するように、二次元周期構造を備えない平面構造の自発光デバイスの光取り出し量を基準とした比較によって得ている。
【0058】
また、3次元光波シミュレーションの結果によれば、発光層3の上部と二次元周期構造10の底部(図2(b)に示す円孔最密配列の底部12、図2(d)に示す円錐突起最密配列の底部14)との距離dsを0.1λ〜0.3λ、又は0.3λ〜λとすることによって、光の取り出し効率が向上する。
【0059】
距離dsを0.3λ〜λとして、発光層の上部と二次元周期構造の底部との距離を厚い構成とした場合には、発光層3で自由発光する光の発光層からの取り出しを高め、また、距離dsを0.1λ〜0.3λとして、発光層の上部と二次元周期構造の底部との距離を薄い構成とした場合には、発光層からの取り出しと共に、発光面からの光放射をより高めるように光り分布を変化させることで取り出し効率を向上させる。
【0060】
この二次元周期構造は、モールドや鋳型によって予め二次元周期構造の突起を形成しておき、この突起構造を半導体基板や有機EL基板に転写することで形成するほか、エピタキシャル等のエッチング処理等によって形成することができる。
【0061】
この二次元周期構造の形成では半導体層を削る工程を含むため、底部では発光層の近傍まで半導体層を削ることになり、その距離は前記したdsで定まる。そのため、発光層の上部と二次元周期構造の底部との距離dsが薄い構成では、製造プロセス中に発光層を損傷する可能性が高くなるという問題がある。
【0062】
この場合には、前記した第1の態様の半導体層の屈折率を非対称とする構造と組み合わせ、距離dsを0.3λ〜λの厚い構造を採用することによって、この製造プロセス中の発光層の損傷の問題を解決することができる。なお、このときの光の取り出し効率は、後述する図6中の例で示すように、F=3.61を維持することができる。なお、ここで、Fは、二次元周期構造を持たず、また本発明の第1〜第4の何れの態様も備えない構成において取り出される光強度を基準としたときの比率を表している。
【0063】
二次元周期構造の周期性は、1/2周期〜2周期の周期範囲で周期ずれを許容することができる。図3は二次元周期構造の周期性と出力との関係を示す図である。
【0064】
図3(a),図3(b)は、二次元周期構造が円孔最密配列の例であり、図3(a)に示す仕様の二次元周期構造において、a/λで規格化したピッチ(横軸)に対する強度(縦軸)を、d/λをパラメータとして示している。また、図3(c),図3(d)は、二次元周期構造が円錐突起最密配列の例であり、図3(c)に示す仕様の二次元周期構造において、a/λで規格化したピッチ(横軸)に対する強度(縦軸)を、θをパラメータとして示している。
【0065】
上記した図3(a)〜図3(d)に示すように、ピッチa/λが0.5〜2.0の範囲であれば、出力が有効的に高まることが確認される。したがって、二次元周期構造の周期性は、規格化したピッチa/λで表したとき0.5〜2.0の周期範囲内で周期ずれを許容することができる。
【0066】
また、図3(e)は、二次元周期構造の周期性のずれと散乱性と回折性との関係を示している。図3(e)では、a/λ(a:格子常数、λ:波長)で表される規格化されたピッチに対して、1〜6の間で出力が高まることが確認され、そのうち、散乱性と回折性の寄与の程度を示している。
【0067】
図3(e)によれば、二次元周期構造の周期性は、規格化したピッチa/λで表したとき1.0〜6.0の周期範囲内で周期ずれを許容することができる
【0068】
次に、本発明の第3の態様を図3を用いて説明する。
【0069】
図4において、第3の態様の自発光デバイス1は、第1の態様と同様に自発光デバイスを構成する半導体層の屈折率分布によって光の取り出し効率を向上させるものであって、中間層を備える多層構造とする態様である。
【0070】
自発光デバイス1は、第1の半導体層2と、この第1の半導体層2上に重なる発光層3と、この発光層3上に重なる第2の半導体層4と、この第2の半導体層4内に中間層5を備えた多層構造である。
【0071】
この中間層5の第1の形態は、屈折率を発光層3に近い値とし、かつ、発光層3が発光する光を吸収しない媒質により形成する。また、第2の形態は、中間層5の屈折率を半導体層2,4の屈折率よりも高く形成する。中間層5の厚さは、例えば、λを真空中波長としたとき0.5λ以上とする。
【0072】
例えば、半導体層2,4をAlGaNのクラッド層としたときの屈折率を2.5とし、InGaNの発光層3の屈折率を3.0とした場合には、中間層5をAlGaNのAlの組成を低くすることでその屈折率を2.8とする。
【0073】
また、この第3の態様は、前記した第2の態様と組み合わせることができ、第2の半導体層に二次元周期構造10を設け、この二次元周期構造10内に中間層5を設けた多層構造とし、二次元周期構造の底部と発光層の上部との距離を0.1λ〜0.3λ、又は0.3λ〜λとする構成としてもよい。
【0074】
図4(a)は、二次元周期構造を備えない発光面に周期構造を形成しない構成例であり、図4(b)は、二次元周期構造として円孔最密配列を備えた構成例であり、図4(c)は、二次元周期構造として円錐突起最密配列を備えた構成例である。
【0075】
多層構造による自発光デバイスは、非対称構造で強度dsを0.1λ〜0.3λとする薄い構成と同様の効果を奏することができる。これは、発光層の導光は、第2の高屈折率の半導体層と結合し、二次元周期構造の格子によって強く回折されるからである。
【0076】
次に、本発明の第4の態様を図5を用いて説明する。
【0077】
図5において、第4の態様の自発光デバイス1は、発光面に二次元周期構造10を備えると共に、第1の態様と同様に自発光デバイスを構成する層の屈折率分布によって光の取り出し効率を向上させる態様である。
【0078】
この第4の態様の自発光デバイス1は、第1の層と、第1の層上に重なる発光層と、発光層上に重なる第2の層とを備える。第2の層の表面、又はこの第2の層上に重なる層の表面は二次元周期構造を有する。ここで、第1の層は低屈折率層とし、その屈折率は、発光層よりも低く、かつ、第2の層と同じ若しくは低く設定する。
【0079】
第4の態様は複数の形態とすることができる。図5(a)〜図5(c)は第4の態様の各形態を示している。
【0080】
図5(a)に示す第4の態様の第1の形態は、第1の層である低屈折率層20を発光層3の下方に直接設ける構成である。
【0081】
なお、発光層3と低屈折率層20とを直接接合する構成において、両者の間で良好な接合性が得られない場合には、低屈折率層20上に半導体層(例えば、p-GaN層)等の別の層を挟んで発光層3を重ねる構成としてもよい。この場合、間に挟んだ半導体層には、発光層3に給電する一方の電極を設けることができる。p-GaN層は、電気抵抗を低く、厚さを薄くすることができるため、低屈折率層20と発光層3との間に挟む層として有効に用いることができる。
【0082】
図5(b)に示す第4の態様の第2の形態は、発光層3を挟む上方の二次元周期構造10と下方の半導体層を単一層30で形成し、発光層3の下方の単一層内に低屈折率層20を挟んで設ける構成である。
【0083】
また、図5(c)に示す第4の態様の第3の形態は、発光層3を挟む上方の二次元周期構造10と下方の半導体層を単一層30で形成し、この単一層30の下方に低屈折率層20を設ける構成である。
【0084】
この第4の態様において、低屈折率層20は、発光層3よりも低屈折率であり、かつ、二次元周期構造等を構成する他の層と同等あるいは低い屈折率とする。
【0085】
なお、第4の態様の低屈折率層20は、単一の屈折率で構成する他、屈折率を順次変化させて多層膜構成とすることもできるが、本発明の第4の態様は、発光層の下方に単に低屈折率層を設けるという簡易な構成によって、発光効率を高めることができる点を特徴的に備える。
【0086】
なお、低屈折率層の厚さは、発光層の発光の波長と同程度の長さが適当である。例えば、発光層周辺の屈折率を2.4とし低屈折率層の屈折率を2.2としたときに、発光層からは青色LEDの波長であるおよそ0.5μmの光が発光する。このとき、発光効率の増大する効果は、低屈折率層の厚さが増すにつれて増加し、波長と同程度の0.5μm程度の厚さで飽和する。この低屈折率層の厚さは、波長と同程度であればある程度の範囲で幅を持たせることができ、例えば、0.4μmであっても発光効率を十分に増大させることができる。
【0087】
また、発光効率の増大効果が波長と同程度の厚さで飽和するということは、低屈折率装置の厚さがこれよりも厚い場合であっても同じ効果を奏することができることを意味している。
【0088】
なお、この波長と同程度とする本発明の低屈折率層の厚さは、通常発光層の下側に設ける半導体層の厚さと比較したとき数倍以上の厚さである。
【0089】
また、低屈折率層の屈折率を、例えば、2.0〜1.6程度に下げた場合には、波長と同程度の厚さよりも薄い方向であって同様の効果を奏することができる。これは、発光層との屈折率の差が大きいことによって、発光層から低屈折率層へ光がしみ出す程度が低下するためである。
【0090】
この2.0〜1.6程度の屈折率は、AlO(サファイア)、AlN(窒化アルミ)の屈折率に相当するため、AlO(サファイア)、AlN(窒化アルミ)の基板を低屈折率層として用いることで、本発明の自発光デバイスを構成することができる。
【0091】
以下、二次元周期構造を備えない平面構造の自発光デバイスの各構造の光の取り出し効率を、単一層の構造における光強度を基準として3次元光波シミュレーションにより求めた結果を、図6を用いて示す。
【0092】
なお、図6(a)は単一層の構造の平面図であり、図6(b)〜図6(f)は単一層の構造の側面図である。図6(c)は屈折率を異ならせる非対称構造、図6(d)は屈折率を等しくする対称構造、図6(e)は第2の半導体層に中間層を備える多層構造、図6(f)は発光面を樹脂カバーで覆う樹脂被覆構造、及び単一層の構造における光強度を基準としたときの光の取り出し効率Fを示している。なお、図6では、発光面が面する空気の屈折率を1.0とする。
【0093】
図6(b)に示す単一層による構造では、第1の半導体層2、発光層3、及び第2の半導体層4の各屈折率は2.8とし、このときに得られる光の強度を基準として“1.00”とする。
【0094】
図6(c)に示す非対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.78とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、単一層による構造の光強度を基準として“1.14”となる。
【0095】
図6(d)に示す対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、単一層による構造の光強度を基準として“1.02”となる。
【0096】
図6(e)に示す対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5、第2の半導体層4内に設けた中間層5の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、単一層による構造の光強度を基準として“1.02”となる。
【0097】
また、図6(f)に示す対称構造では、前記した単一層による構造の発光面に、屈折率1.45の樹脂で被覆する。この構造により得られる光の取り出し効率は、単一層による構造の光強度を基準として“2.74”となる。
【0098】
次に、図7,8を用いて、二次元周期構造を備える自発光デバイスについて、各構造の光取り出し効率を、前記図6で示した二次元周期構造を備えない平面構造の自発光デバイスの場合を基準として示す。
【0099】
ここでは、3次元光波シミュレーションの結果により得られた最適なパラメータ範囲に基づいて、円孔最密配列の二次元周期構造を備える自発光デバイスでは、a=1.5λ、2r=0.6a,dh=λとし、円錐突起最密配列の二次元周期構造を備える自発光デバイスではa=0.5λ、θ=63°とした3次元光波シミュレーション結果である。
【0100】
図7は、円孔最密配列の二次元周期構造の場合であり、平面構造の光取り出し効率を基準として、単一層の構造(図7(b),図7(g))、屈折率を異ならせる非対称構造(図7(c),図7(h))、屈折率を等しくする対称構造(図7(d),図7(i))、第2の半導体層に中間層を備える多層構造(図7(e),図7(j))、発光面を樹脂カバーで覆う樹脂被覆構造(図7(f),図7(k))の各構造における光の取り出し効率を比較する。
【0101】
なお、図7(b)〜図7(f)は、二次元周期構造の底部と発光層との距離dsを0.3λ〜λとする厚い構成の場合であり、図7(g)〜図7(k)は、距離dsを0.1λ〜0.3λとする薄い構成の場合である。また、図7の発光面が面する空気の屈折率を1.0とする。
【0102】
はじめに、距離dsが0.3λ〜λの厚い構成の場合について図7(b)〜図7(f)を用いて説明する。
【0103】
図7(b)に示す単一層による構造では、第1の半導体層2、発光層3、及び第2の半導体層4の各屈折率は2.8とし、図6(b)の構造で得られる光の強度を基準“1.00”としたとき“1.72”となる。
【0104】
図7(c)に示す非対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.78とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の単一層による構造の光強度基準に対して“2.94”となる。
【0105】
図7(d)に示す対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の単一層による構造の光強度基準に対して“1.84”となる。
【0106】
図7(e)に示す多層構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5、第2の半導体層4内に設けた中間層5の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の単一層による構造の光強度基準に対して“2.20”となる。
【0107】
また、図7(f)に示す対称構造では、前記した単一層による構造の発光面に、屈折率1.45の樹脂で被覆する。この構造により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の単一層による構造の光強度基準に対して“3.62”となる。
【0108】
次に、距離dsが0.1λ〜0.3λの薄い構成の場合について図7(g)〜図7(k)を用いて説明する。
【0109】
図7(g)に示す単一層による構造では、前記図7(b)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の構造で得られる光の強度基準に対して“1.79”となる。
【0110】
図7(h)に示す非対称構造では、前記図7(c)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の構造で得られる光の強度基準に対して“3.97”となる。
【0111】
図7(i)に示す対称構造では、前記図7(d)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の構造で得られる光の強度基準に対して“2.24”となる。
【0112】
図7(j)に示す多層構造では、前記図7(e)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の構造で得られる光の強度基準に対して“3.20”となる。
【0113】
図7(k)に示す対称構造では、前記図7(f)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の構造で得られる光の強度基準に対して“3.64”となる。
【0114】
次に、図8は、円錐突起最密配列の二次元周期構造の場合であり、平面構造の光取り出し効率を基準として、単一層の構造(図8(b),図8(g))、屈折率を異ならせる非対称構造(図8(c),図8(h))、屈折率を等しくする対称構造(図8(d),図8(i))、第2の半導体層に中間層を備える多層構造(図8(e),図8(j))、発光面を樹脂カバーで覆う樹脂被覆構造(図8(f),図8(k))の各構造における光の取り出し効率を比較する。
【0115】
なお、図8(b)〜図8(f)は、二次元周期構造の底部と発光層との距離dsを0.3λ〜λとする厚い構成の場合であり、図8(g)〜図8(k)は、距離dsを0.1λ〜0.3λとする薄い構成の場合である。また、図8の発光面が面する空気の屈折率を1.0とする。
【0116】
はじめに、距離dsが0.3λ〜λの厚い構成の場合について図8(b)〜図8(f)を用いて説明する。
【0117】
図8(b)に示す単一層による構造では、第1の半導体層2、発光層3、及び第2の半導体層4の各屈折率は2.8とし、図6(b)の構造で得られる光の強度基準に対して“2.11”となる。
【0118】
図8(c)に示す非対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.78とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の単一層による構造の光強度基準に対して“3.61”となる。
【0119】
図8(d)に示す対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の単一層による構造の光強度基準に対して“2.24”となる。
【0120】
図8(e)に示す多層構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5、第2の半導体層4内に設けた中間層5の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の単一層による構造の光強度基準に対して“2.50”となる。
【0121】
また、図8(f)に示す対称構造では、前記した単一層による構造の発光面に、屈折率1.45の樹脂で被覆する。この構造により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の単一層による構造の光強度基準に対して“3.62”となる。
【0122】
次に、距離dsが0.1λ〜0.3λの薄い構成の場合について図8(g)〜図8(k)を用いて説明する。
【0123】
図8(g)に示す単一層による構造では、前記図8(b)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の構造で得られる光の強度基準に対して“2.19”となる。
【0124】
図8(h)に示す非対称構造では、前記図8(c)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の構造で得られる光の強度基準に対して“4.22”となる。
【0125】
図8(i)に示す対称構造では、前記図8(d)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の構造で得られる光の強度基準に対して“3.47”となる。
【0126】
図8(j)に示す多層構造では、前記図8(e)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の構造で得られる光の強度基準に対して“4.20”となる。
【0127】
図8(k)に示す対称構造では、前記図8(f)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図6(b)の構造で得られる光の強度基準に対して“3.67”となる。
【0128】
上記図6,7,8に示したシミュレーション結果をまとめると、以下の表1となる。
【0129】
【表1】

【0130】
なお、上記表において、( )内の数字は、各構造において二次元周期構造を備えない平面構造を基準“1.00”としたときの比率を示している。
【0131】
これらのシミュレーション結果によれば、樹脂カバーの層が設けられる場合には、単一層の場合と比較して、2.74倍に向上される。したがって、樹脂カバーの層が設けられる場合における二次元周期構造の効果は、せいぜい1.3倍程度である。各層を調整することでF=1.5とすることができるが、樹脂カバーの層の場合にはF>>2にすぎない。
【0132】
以下、二次元周期構造を備えず樹脂カバー等の層で被覆した平面構造の自発光デバイスの各構造の光の取り出し効率を、単一層の構造における光強度を基準として3次元光波シミュレーションにより求めた結果を、図9の側面図を用いて示す。
【0133】
なお、図9(a)は単一層の構造の側面図である。図9(b)は屈折率を異ならせる非対称構造、図9(c)は屈折率を等しくする対称構造、図9(d)は第2の半導体層に中間層を備える多層構造、図9(e),図9(f)は発光層の下方に屈折率層を備える構造であり、図9(e)は単一層内に低屈折率層20を挟む構造を示し、図9(f)は第1の層2の下方に低屈折率層20を設ける構造を示すと共に、単一層の構造における光強度を基準“1.00”としたときの光の取り出し効率Fを示している。なお、図9では、樹脂カバーの屈折率を1.45としている。
【0134】
図9(a)に示す単一層による構造では、第1の半導体層2、発光層3、及び第2の半導体層4の各屈折率は2.8とし、樹脂カバーの屈折率を1.45とし、このときに得られる光の強度を“1.00”とし、強度基準とする。
【0135】
図9(b)に示す非対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.78とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“0.99”となる。
【0136】
図9(c)に示す対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“0.99”となる。
【0137】
図9(d)に示す対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5、第2の半導体層4内に設けた中間層5の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“0.98”となる。
【0138】
図9(e)に示す対称構造では、屈折率を2.8とした単一層の第1の半導体層2内に、屈折率が2.8以下の低屈折率層20を挟む。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“0.94”となる。
【0139】
図9(f)に示す対称構造では、屈折率を2.8とした第1の半導体層2の下方に屈折率が2.8以下の低屈折率層20を設ける。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“0.95”となる。
【0140】
なお、図9(a)に示すに単一層による構造の光強度は、図6(b)の樹脂カバーの被覆を備えない自発光デバイスによる構造の光強度を基準とした場合には、図6(f)で示したように“2.74”となるため、前記した図9(a)〜図9(f)の各構造による光強度は、前記した数値を“2.74”倍した強度となる。
【0141】
次に、図10,11を用いて、二次元周期構造を備え、かつ被覆構造とした自発光デバイスについて、各構造の光取り出し効率を、前記図9で示した二次元周期構造を備えない平面構造の自発光デバイスの場合を基準として示す。
【0142】
ここでは、3次元光波シミュレーションの結果により得られた最適なパラメータ範囲に基づいて、円孔最密配列の二次元周期構造を備える自発光デバイスでは、a=1.5λ、2r=0.6a,dh=λとし、円錐突起最密配列の二次元周期構造を備える自発光デバイスではa=0.5λ、θ=63°とした3次元光波シミュレーション結果である。
【0143】
図10は、円孔最密配列の二次元周期構造の場合であり、平面構造の光取り出し効率を基準として、屈折率を異ならせる非対称構造(図10(a),図10(f))、屈折率を等しくする対称構造(図10(b),図10(g))、第2の半導体層に中間層を備える多層構造(図10(c),図10(h))、単一層内に低屈折率層20を挟む構造(図10(d),図10(i))、発光層の下方に屈折率層を備える構造(図10(e),図10(j))の各構造における光の取り出し効率を比較する。
【0144】
なお、図10(a)〜図10(e)は、二次元周期構造の底部と発光層との距離dsを0.3λ〜λとする厚い構成の場合であり、図10(f)〜図10(j)は、距離dsを0.1λ〜0.3λとする薄い構成の場合である。また、樹脂カバーの屈折率は1.45とする。
【0145】
はじめに、距離dsが0.3λ〜λの厚い構成の場合について図10(a)〜図10(e)を用いて説明する。
【0146】
図10(a)に示す非対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.78とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“1.69”となる。
【0147】
図10(b)に示す対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“1.24”となる。
【0148】
図10(c)に示す多層構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5、第2の半導体層4内に設けた中間層5の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“1.37”となる。
【0149】
また、図10(d)に示す低屈折率層の構造では、第1の半導体層2内に、発光層3の屈折率(2.8)よりも低く、かつ、他の層の屈折率と同等あるいは低い屈折率の低屈折率層20を設ける。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“1.73”となる。
【0150】
また、図10(e)に示す低屈折率層の構造では、発光層3の下方に、発光層3の屈折率(2.8)よりも低く、かつ、他の層の屈折率と同等あるいは低い屈折率の低屈折率層20を設ける。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“1.73”となる。
【0151】
次に、距離dsが0.1λ〜0.3λの薄い構成の場合について図10(f)〜図10(j)を用いて説明する。
【0152】
図10(f)に示す非対称構造では、前記図10(a)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の構造で得られる光の強度基準に対して“2.27”となる。
【0153】
図10(g)に示す対称構造では、前記図10(b)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の構造で得られる光の強度基準に対して“1.60”となる。
【0154】
図10(h)に示す多層構造では、前記図10(i)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の構造で得られる光の強度基準に対して“1.83”となる。
【0155】
図10(i)に示す低屈折率層構造では、前記図10(d)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の構造で得られる光の強度基準に対して“1.91”となる。
【0156】
図10(j)に示す低屈折率層構造では、前記図10(e)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の構造で得られる光の強度基準に対して“1.88”となる。
【0157】
次に、図11は、円錐突起最密配列の二次元周期構造の場合であり、平面構造の光取り出し効率を基準として、屈折率を異ならせる非対称構造(図11(a),図11(f))、屈折率を等しくする対称構造(図11(b),図11(g))、第2の半導体層に中間層を備える多層構造(図11(c),図11(h))、単一層内に低屈折率層20を挟む構造(図11(d),図11(i))、発光層の下方に屈折率層を備える構造(図11(e),図11(j))の各構造における光の取り出し効率を比較する。
【0158】
なお、図11(a)〜図11(e)は、二次元周期構造の底部と発光層との距離dsを0.3λ〜λとする厚い構成の場合であり、図11(f)〜図11(j)は、距離dsを0.1λ〜0.3λとする薄い構成の場合である。また、樹脂カバーの屈折率は1.45とする。
【0159】
はじめに、距離dsが0.3λ〜λの厚い構成の場合について図11(a)〜図11(e)を用いて説明する。
【0160】
図11(a)に示す非対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.78とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“1.96”となる。
【0161】
図11(b)に示す対称構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“1.47”となる。
【0162】
図11(c)に示す多層構造では、第1の半導体層2の屈折率を2.5、発光層3の屈折率を2.8、第2の半導体層4の屈折率を2.5、第2の半導体層4内に設けた中間層5の屈折率を2.5とする。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“1.58”となる。
【0163】
また、図11(d)に示す低屈折率層の構造では、第1の半導体層2内に、発光層3の屈折率(2.8)よりも低く、かつ、他の層の屈折率と同等あるいは低い屈折率の低屈折率層20を設ける。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“1.99”となる。
【0164】
また、図11(e)に示す低屈折率層の構造では、発光層3の下方に、発光層3の屈折率(2.8)よりも低く、かつ、他の層の屈折率と同等あるいは低い屈折率の低屈折率層20を設ける。この構造により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の単一層による構造の光強度基準に対して“1.97”となる。
【0165】
次に、距離dsが0.1λ〜0.3λの薄い構成の場合について図11(f)〜図11(j)を用いて説明する。
【0166】
図11(f)に示す非対称構造では、前記図11(a)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の構造で得られる光の強度基準に対して“2.37”となる。
【0167】
図11(g)に示す対称構造では、前記図11(b)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の構造で得られる光の強度基準に対して“1.95”となる。
【0168】
図11(h)に示す多層構造では、前記図11(i)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の構造で得られる光の強度基準に対して“2.1”となる。
【0169】
図11(i)に示す低屈折率層構造では、前記図11(d)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の構造で得られる光の強度基準に対して“2.21”となる。
【0170】
図11(j)に示す低屈折率層構造では、前記図11(e)と同様の構成において、dsを0.1λ〜0.3λとする構成により得られる光の取り出し効率は、図9(a)の構造で得られる光の強度基準に対して“2.13”となる。
【0171】
上記図9,10,11に示したシミュレーション結果をまとめると、以下の表2となる。
【0172】
【表2】

【0173】
なお、上記表において、( )内の数字は、各構造において二次元周期構造を備えない平面構造を基準“1.00”としたときの比率を示している。
【0174】
これらのシミュレーション結果によれば、発光層の下方に低屈折率層を設けるという簡易な構成であっても、光の取り出し効率を1.73倍〜2.13倍に向上する。
【0175】
図12は、前記した図6〜図11をまとめて一つの図で示している。図12において、上段の左側の1列は図6を示し、上段の左側から第2,3列は図7を示し、上段の右側の2列は図8を示している。また、下段の左側の1列は図9を示し、上段の左側から第2,3列は図10を示し、上段の右側の2列は図11を示している。
【0176】
前記図9〜図11及び図12の下段は、波長λ=400μmで発光層の屈折率を2.8としたときのシミュレーション結果である。これに対して、図13は波長λ=400μmで発光層の屈折率を2.4としたときのシミュレーション結果である。屈折率が2.4の場合の光の取り出し効率は、屈折率が2.8の場合よりも低くなるが同様に傾向を示すことが観察される。
【0177】
次に、本発明の自発光デバイスの第4の態様の構成例、及び形成方法について図14、図15を用いて説明する。
【0178】
図14(a)は、自発光デバイスの第4の態様の第1の構成例である。この構成例は、発光層3aの上方に二次元周期構造の第2の層10aを備え、発光層3aの下方に層31を挟んで第1の層の低屈折率層20aを備える。発光層3aは例えばInGaNで形成され、第1の層の低屈折率層20aは例えば、AlGaN、AlO、(サファイア)、AlN(窒化アルミ)等で形成することができる。また、第2の層10aはn-GaNとし、層31はp-GaNとすることができ、それぞれ、AlGaNのAlの組成を変えることで形成することができる。
【0179】
発光層3aへの電流供給は、第2の層10aに設けた電極32と、層31に設けた電極33によって行うことができる。
【0180】
なお、n-GaNは厚く形成することができるため、第2の層10aに用いることで、二次元周期構造を切削で形成した際に、下方の発光層3aへの損傷を低減させることができる。また、p-GaNはn-GaNよりも電気抵抗が低いため、発光層3aの面状への電流供給が容易となる。
【0181】
図14(b)は、自発光デバイスの第4の態様の第2の構成例である。この構成例は、発光層3aの上方に二次元周期構造の第2の層10aを備え、発光層3aの下方の第1の層10bと10cとの間に低屈折率層20aを挟んで備える。
【0182】
発光層3aは例えばInGaNで形成され、第1の層の低屈折率層20aは例えば、AlGaN、AlO(サファイア)、AlN(窒化アルミ)等で形成することができる。また、第1の層10b、10c、及び第2の層10aはn-GaNで形成することができる。
【0183】
発光層3aへの電流供給は、第2の層10aに設けた電極32と、第1の層10bに設けた電極33によって行うことができる。
【0184】
図14(c)は、自発光デバイスの第4の態様の第3の構成例である。この構成例は、発光層3aの上方に二次元周期構造の第2の層10aを備え、発光層3aの下方に第1の層10bと低屈折率層20aを備える。
【0185】
発光層3aは例えばInGaNで形成され、第1の層の低屈折率層20aは例えば、AlGaN、AlO、(サファイア)、AlN(窒化アルミ)等で形成することができる。また、第1の層10b、及び第2の層10aはn-GaNで形成することができる。
【0186】
発光層3aへの電流供給は、第2の層10aに設けた電極32と、第1の層10bに設けた電極33によって行うことができる。
【0187】
図15は、本発明の自発光デバイスの第4の態様を形成する手順例を示す図であり、図14(a)の構成例を例として示している。
【0188】
はじめに、n-GaNの層の上に発光層となるInGaNの層を形成し、さらにInGaNの層に上方にp-GaNの層、AlO層(サファイア)を形成する。なお、n-GaNの層、p-GaNの層はAlGaNのAlの組成を変えることで形成することができる(図15(a))。
【0189】
図15(a)で形成した積層を反転させ、下方から、AlO層(サファイア)、p-GaNの層、InGaNの層、n-GaNの層とする(図15(b))。
【0190】
図15(a)で反転させた積層を上方から切削し、n-GaNの層に二次元周期構造と電極用の平面を形成させ、p-GaNの層の一部を露出させる(図15(c))。
【0191】
図15(a)で形成したn-GaNの層上の平面に電極32を形成し、p-GaNの層の露出面に電極33を形成する。
【0192】
自発光デバイスの発光波長が紫外線の領域である場合には、この紫外線によって樹脂カバーが分解されてしまうため、樹脂カバーを備えた構成は適当でない。したがって、樹脂カバーを備えた構成において、光の取り出し効率を向上させるには、二次元周期構造を備えた構成が有効である。
【0193】
また、半導体部分に孔(開口部)あるいは凹部は形成する手法は、光照射による凹部の生成するレーザー加工技術や、マスクを用いて半導体層をエッチングする等の半導体生成技術を用いることができる。
【0194】
シミュレーション結果によれば、円錐突起周期構造において、自発光デバイスのサイズが固定であり、格子定数aが6λまで可変である場合には、光の取り出し効率は最大値の半分まで低下する。このことは、各要素での光散乱、及びフォトニック結晶の周期性による光の回折は、光の取り出し効率に対して同程度に寄与していることを表している。
【0195】
また、格子常数aの依存性が小さいことから、フォトニック結晶は光の取り出し効率に大きく寄与している。また、要素のサイズと最密配列の程度が、構造がローカルで周期的で最適な最密配列から大きくずれていない程度に適正化されていれば、他の表面構造であっても同様の効果を得ることを期待することができる。
【0196】
上記説明では、自発光デバイスを構成する各層を半導体層とする例を用いて説明しているが、本発明は、有機ELのように、半導体層に限らずガラス基板等の他の組成による構成の自発光デバイスに対しても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明は、半導体LED、有機EL、白色照明、ライト、インジケータ、LED通信等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明の第1の態様を説明するための図である。
【図2】本発明の第2の態様を説明するための図である。
【図3】二次元周期構造の周期性と出力との関係を示す図である。
【図4】本発明の第3の態様を説明するための図である。
【図5】本発明の第4の態様を説明するための図である。
【図6】本発明の二次元周期構造を備えない平面構造の自発光デバイスの各構造の光の取り出し効率のシミュレーション結果を説明するための図である。
【図7】本発明の円孔最密配列の二次元周期構造を備えた自発光デバイスの各構造の光の取り出し効率のシミュレーション結果を説明するための図である。
【図8】本発明の円錐突起最密配列の二次元周期構造を備えた自発光デバイスの各構造の光の取り出し効率のシミュレーション結果を説明するための図である。
【図9】本発明の樹脂カバーで被覆した平面構造の自発光デバイスの各構造の光の取り出し効率シミュレーション結果を説明するための図である。
【図10】本発明の円孔最密配列の二次元周期構造を備えかつ被覆構造とした自発光デバイスの各構造の光の取り出し効率のシミュレーション結果を説明するための図である。
【図11】本発明の円錐突起最密配列の二次元周期構造を備えかつ被覆構造とした自発光デバイスの各構造の光の取り出し効率のシミュレーション結果を説明するための図である。
【図12】本発明の自発光デバイスのシミュレーション結果の一覧を示す図である。
【図13】本発明の自発光デバイスのシミュレーション結果の一覧を示す図である。
【図14】本発明の自発光デバイスの第4の態様の構成例を説明するための図である。
【図15】本発明の自発光デバイスの第4の態様の構成例の形成方法説明するための図である。
【符号の説明】
【0199】
1…自発光デバイス
2…第1の半導体層
3,3a…発光層
4…第2の半導体層
5…中間層
6…樹脂カバー
10…二次元周期構造
10a…第2の層
10b、10c…第1の層
11…円孔
12…底部
13…円錐突起
14…底部
20,20a…低屈折率層
30…単一層
31…層
32,33…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層と、
前記第1の層上に重なる発光層と、
前記発光層上に重なる第2の層とを備え、
前記第1の層の屈折率と前記第2の層の屈折率とが異なり、発光層を挟む2つの層の屈折率が非対称であることを特徴とする自発光デバイス。
【請求項2】
前記第2の層の屈折率が前記第1の層の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の自発光デバイス。
【請求項3】
第1の層と、
前記第1の層上に重なる発光層と、
前記発光層上に重なる第2の層とを備え、
前記第2の層の表面、又は当該第2の層上に重なる層の表面は二次元周期構造を有し、
前記発光層の上部と前記二次元周期構造の底部との距離が0.1λ〜0.3λ、又は0.3λ〜λ(λは真空中波長)であることを特徴とする、自発光デバイス。
【請求項4】
前記第1の層の屈折率と前記第2の層の屈折率とが異なり、前記発光層を挟む2つの層の屈折率が非対称であることを特徴とする請求項3に記載の自発光デバイス。
【請求項5】
前記第2の層の屈折率が前記第1の層の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項4に記載の自発光デバイス。
【請求項6】
第1の層と、
前記第1の層上に重なる発光層と、
前記発光層上に重なる第2の層と、
前記第2の層内の中間層とを備え、
前記中間層は、前記発光層に近い屈折率を持ち、かつ、当該発光層が発光する光を吸収しない媒質であることを特徴とする自発光デバイス。
【請求項7】
第1の層と、
前記第1の層上に重なる発光層と、
前記発光層上に重なる第2の層と、
前記第2の層内の中間層とを備え、
前記中間層の屈折率は前記第1の層及び第2の層の屈折率よりも高いことを特徴とする自発光デバイス。
【請求項8】
前記中間層の厚さは0.5λ以上(λは真空中波長)であることを特徴とする請求項6又は7に記載の自発光デバイス。
【請求項9】
前記第2の層の表面、又は当該第2の層上に重なる層の表面は二次元周期構造を有し、
前記中間層は前記二次元周期構造内に設け、前記発光層の上部と前記二次元周期構造の底部との距離が0.1λ〜0.3λ、又は0.3λ〜λ(λは真空中波長)であることを特徴とする、請求項6乃至8の何れかに記載の自発光デバイス。
【請求項10】
前記第1の層、第2の層、及び中間層はAlGaNであり、中間層のAlの組成率は前記第1の層及び第2の層のAlの組成率よりも低いことを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の自発光デバイス。
【請求項11】
前記二次元周期構造は、円孔最密配列又は錘状突起最密配列であることを特徴とする、請求項3,4,5,8,9,10の何れかに記載の自発光デバイス。
【請求項12】
前記二次元周期構造は、フォトニック結晶により形成することを特徴とする、請求項3,4,5,8,9,10,11の何れかに記載の自発光デバイス。
【請求項13】
前記二次元周期構造は、屈折率について並進対称性を持たず、長距離秩序及び回転対称性を有する屈折率の準周期構造を備えるフォトニック準結晶により形成することを特徴とする、請求項3,4,5,8,9,10,11の何れかに記載の自発光デバイス。
【請求項14】
前記第1の層はn-GaNであり、前記発光層はIn GaNであり、前記第2の層はp-GaNであることを特徴とする請求項1〜9、11,12の何れかに記載の自発光デバイス。
【請求項15】
前記第2の層上に重なる樹脂層を備えることを特徴とする請求項1乃至14の何れかに記載の自発光デバイス。
【請求項16】
第1の層と、
前記第1の層上に重なる発光層と、
前記発光層上に重なる第2の層とを備え、
前記第2の層の表面、又は当該第2の層上に重なる層の表面は二次元周期構造を有し、
前記第1の層は、発光層より低い屈折率であり、かつ、第2の層と同じ若しくは低い屈折率の低屈折率層であることを特徴とする、自発光デバイス。
【請求項17】
前記低屈折率層の厚さは、発光層の発光波長と同程度であることを特徴とする、請求項16に記載の自発光デバイス。
【請求項18】
前記発光層はInGaNであり、
前記第1の層の低屈折率層は、AlGaN、AlO(サファイア)、AlN(窒化アルミ)の何れかであることを特徴とする、請求項16又は17に記載の自発光デバイス。
【請求項19】
サファイア基板上に、順に積層されるInGaNの発光層、及び二次元周期構造を有したAlGaN層を有し、
前記サファイア基板と前記発光層との間に一方の電極を有した層を備え、
前記AlGaN層の一部に他方の電極を備えることを特徴とする、請求項18に記載の自発光デバイス。
【請求項20】
前記二次元周期構造の周期性は、1/2周期〜2周期の周期範囲を備えることを特徴とする、請求項9又は16に記載の自発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−310721(P2006−310721A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204976(P2005−204976)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】