説明

自発光視線誘導標

【課題】自発光視線誘導標の上端面に備えた太陽電池モジュールにほこりが付着しにくく、かつ視認性の良い自発光視線誘導標を提供すること。
【解決手段】複数の自発光体が配置された発光部と、前記発光部を前面側に備え前記自発光体の発光にかかわる機器を収納する筐体とを備え、前記筐体の上端部の前面部分が発光部の上方から前方に突出して庇部を形成すると共に、該庇部を含む前記筐体の上端面が左右方向に向かって下方に傾斜する曲面形状を有しており、かつ、前記上端面にはその局面形状に追従するフレキシブルな太陽電池モジュールが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の主に路肩や中央分離帯などに設置され、車両の運転者の視線を誘導する自発光視線誘導標に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)は電球などと比較して光線の指向性が強く、また発光寿命も長くメンテナンスが少なくて済むことから、夜間において車両の運転者に対する視線誘導を行うに当たり好適に用いられてきているものであり、多くの関連する発明が開示されてきている。
【0003】
例えば、複数のLEDが配置された発光部と、前記発光部の上方から前方に突設された庇部と、前記発光部を前面側に備え前記LEDの発光に係わる機器を収納している筐体と、前記LEDの発光に用いられる電力を生起する太陽電池モジュールとを備える自発光視線誘導標において、前記庇部の上面と前記筐体の上面とが連続した面である上端面となされ、該上端面に前記太陽電池モジュールが配置されているものがある(特許文献1)。
【0004】
この自発光視線誘導標によれば、庇部及び筐体の上面により形成された上端面に太陽電池モジュールを設けることで太陽電池モジュールを別体で設ける必要がない。また、上端面が位置する視線誘導標上面は太陽光の受光効率が最も高くなる箇所であるから太陽電池モジュールの角度を調整することなく高い発電効率を確保でき、太陽電池モジュールの角度を保持する機構が必要とならず、形成や維持に係わる作業を簡便なものとすることができる。更に、上端面が連続した面となされていることで、一体の面状の太陽電池モジュールを用いることができ、太陽電池モジュールの取り付け作業の低減でき、また太陽電池モジュール同士の接続部をなくして発電効率の向上に繋げることができる。
【特許文献1】特開2006−45939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明においては、前記上端面が水平面形状であるため、当該上端面、すなわち太陽電池モジュールの表面にほこりなどが付着し易い。そうすると、太陽電池モジュールの発電効率が落ちてしまう。
【0006】
また、庇部を含む前記上端面が水平面形状であるのに対し、発光部は略円形状であって、形状が異なっているため、庇効果が十分でない。
【0007】
本発明は上記の問題点を克服するためになされたものであり、自発光視線誘導標の上端面に備えた太陽電池モジュールにほこりが付着しにくい自発光視線誘導標を提供することを目的とする。さらに、本発明は、庇効果が高く、視認性の良い自発光視線誘導標を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係る自発光視線誘導標は、複数の自発光体が配置された発光部と、前記発光部を前面側に備え前記自発光体の発光にかかわる機器を収納する筐体とを備え、前記筐体の上端部の前面部分が発光部の上方から前方に突出して庇部を形成すると共に、該庇部を含む前記筐体の上端面が左右方向に向かって下方に傾斜する曲面形状を有しており、かつ、前記上端面にはその局面形状に追従するフレキシブルな太陽電池モジュールが配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る自発光視線誘導標によれば、前記上端面が水平面形状ではなく、左右方向に向かって下方に傾斜しているので、上端面、すなわち太陽電池モジュール表面にほこり等が付着しにくい。したがって、太陽電池モジュールの発電効率を高く維持することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る自発光視線誘導標においては、発光部が略円形状であり、かつ前記上端面の曲面形状が、発光部の上端円弧形状に沿った曲面形状であるのが好ましい。
【0011】
このようにすれば、庇部を含む上端面の形状が、発光部の上側の外周形状(円弧形状)に沿った形状となるので、庇効果が高まる。
【0012】
さらに、本発明に係る自発光視線誘導標において、太陽電池モジュールの表面には、保護層が形成され、該保護層の外面には二酸化チタン等の光触媒を含む光触媒含有層が形成されているようにしてもよい。このようにすれば、光触媒によって表面が親水化されるため、塵埃や車両の排気ガス等の汚染物質が尚一層付着しにくくなり、たとえ付着したとしても降雨などによって容易に洗い流されて除去されるため、汚染物質が堆積しにくくなる。
【発明の効果】
【0013】
以上の通り、本発明に係る自発光視線誘導標によれば、上端面が水平面ではなく、左右方向に向かって下方に傾斜しているので、上端面、すなわち太陽電池モジュール表面にほこり等が付着しにくい。したがって、太陽電池モジュールの発電効率を高く維持することが可能となる。また、自発光視線誘導標の上端面の曲面形状を、発光部の外周の円弧形状に沿った形状とすることにより、庇効果が高まり、視認性がより良くなる。
【0014】
さらに、太陽電池モジュールの表面に、光触媒含有層を形成すれば、塵埃や車両の排気ガス等の汚染物質が尚一層付着しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る自発光視線誘導標の、実施の一形態を示す斜視図である。図2は、本発明に係る自発光視線誘導標の実施の一形態を示す正面図であり、図3は、その側面図である。また、図4は、図2のA−A線間における側断面図である。
【0017】
図1に示すとおり、自発光視線誘導標1は、支柱60の頭部にキャップ部101を嵌着して取り付けられ設置されるものであって、筐体10の前面には発光部2が設けられている。
【0018】
発光部2は、図2に示すとおり、正面から見て略円形状としている。また、図2および図5に示すとおり、発光部2は、筐体10前面の開口部内に嵌着された反射板21と、反射板21に複数設けられたレンズ部211の背面に配置された複数の自発光体22とを備えている。自発光体22は、基板23に取り付けられ、反射板21の背面に配置されている。レンズ部211は、自発光体22から放射される光線がレンズ部211の内側面からレンズ部211に入射し、略並行な光線となって前方へ放射されるように、レンズ部211の曲率半径や、レンズ部211と自発光体22との距離を調整すれば、効率よく前方へ光線を放射できるので好ましい。
【0019】
反射板21は、裏面がプリズム加工され、前面より入射された光が前記プリズムにより光源方向に再帰反射されるようになされた反射板21であって、蛍光染料を含有する透光性合成樹脂から形成されている。
【0020】
自発光体22には、複数のLEDが使用されている。自発光体22としては、LEDのほか、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、陰極管、エレクトロルミネッセンス、キセノンランプ等が適宜使用されるが、一般には高輝度かつ長期に亘る寿命を有するLEDが好適に使用される。
【0021】
これにより、日中は太陽紫外線の直射光または拡散光が反射板21の透光性合成樹脂を透過しプリズムにより屈折放射されて反射板21全体が蛍光発光され、良好な視線誘導機能が得られる一方、夜間は太陽電池を電源として反射板21にLEDの光が照射され、蛍光染料が励起して、反射板21が蛍光色に自発光する。従って、薄暮時未だヘッドライトが点灯されていない状態でも、かかる作用によって反射板21が蛍光色に自発光するので、広域に渡って視認性が確保される。
【0022】
筐体10は、ポリエチレンやABS樹脂、FRP、ポリカーボネート、AAS等の合成樹脂、あるいはアルミニウム合金や鋼などの金属を成型して得られるものである。
【0023】
図4に示すとおり、筐体10内には、蓄電池40および制御装置50が収納されている。これにより、太陽電池モジュール30により生起された電力は、蓄電池40に蓄電され、制御装置50および自発光体22に供給される。また制御装置50は、蓄電池40から供給される電力により動作し、自発光体22の点灯状態を制御する。
【0024】
図1、図4および図5に示すとおり、筐体10の上端部は、その前面部分が発光部2の上方から前方に突出し、庇部102を形成している。この庇部102は、筐体10と一体的に形成されている。
【0025】
庇部102を含む筐体10の上端面70は、左右方向に向かって下方に傾斜する曲面形状を有している。好ましくは、図2に示すように、円形状の発光部2の上端円弧形状にほぼ沿った曲面形状に形成される。このようにすれば、庇部102の庇効果がより一層高まる。
【0026】
前記上端面70にはその局面形状に追従するフレキシブルな太陽電池モジュール30が配置されている。この太陽電池モジュール30は、図4に示すとおり、太陽電池セル301を透光性の合成樹脂302により封止して形成したものである。太陽電池セル301としては、色素増感型太陽電池や、その他有機薄膜太陽電池、あるいはアモルファス太陽電池など、フィルム化に適した太陽電池を好適に使用することができる。
【0027】
また、透光性の合成樹脂302としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)など、フレキシブルな合成樹脂材料が使用され、これにより、太陽電池セル301が封止されて柔軟性を有するフィルム状の太陽電池モジュール30が形成される。
【0028】
このように構成することで、前方へ突出した庇部102を含む筐体10の上端面70全体に太陽電池モジュール30を配置することができ、太陽電池モジュール30の面積を大きく確保することが可能となる。加えて、上端面70が左右方向に向かって下方に傾斜する曲面形状を有しているために、上端面70にほこりや汚れ等が付着しにくい。しかも、当該曲面形状が発光部2の円弧形状に沿った形状となっているため、太陽光等周囲から発光部2への光の入射が庇部102の庇効果により低減され、昼間における視認性が高められている。
【0029】
尚、太陽電池モジュール30で生起した電力を蓄電池40へ出力するための配線が必要であるが、当該配線は、自発光視線誘導標1の中央上端部から本体内へ引き込むようにするのが好ましい。このようにすれば、当該引き込み箇所の止水処理が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る自発光視線誘導標の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る自発光視線誘導標の一実施形態を示す正面図である。
【図3】本発明に係る自発光視線誘導標の一実施形態を示す側面図である。
【図4】図2におけるA−A線間の側断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 自発光視線誘導標
10 筐体
102 庇部
2 発光部
21 反射板
211 レンズ部
30 太陽電池モジュール
40 蓄電池





【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自発光体が配置された発光部と、前記発光部を前面側に備え前記自発光体の発光にかかわる機器を収納する筐体とを備え、前記筐体の上端部の前面部分が発光部の上方から前方に突出して庇部を形成すると共に、該庇部を含む前記筐体の上端面が左右方向に向かって下方に傾斜する曲面形状を有しており、かつ、前記上端面にはその局面形状に追従するフレキシブルな太陽電池モジュールが配置されていることを特徴とする自発光視線誘導標。
【請求項2】
発光部は略円形状であり、かつ前記上端面の曲面形状は、発光部の上端円弧形状に沿った曲面形状であることを特徴とする請求項1記載の自発光視線誘導標。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−215779(P2009−215779A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60436(P2008−60436)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】