説明

自転車の駆動装置

【課題】自転車の駆動方式には後輪駆動方式や前輪駆動方式及び全輪駆動方式がある。これら3つの駆動方式を1台の自転車に取り入れて、乗り手が走り方や路面状況等から判断して最適な駆動方式に切替えて走行する自転車の技術は何ら開示・示唆されていない。
【解決手段】前輪と後輪へ動力伝達手段を持った自転車において、クランクペダルの回転力をクランク軸から共に共通の中間軸経由で前輪と後輪に伝達する構成にして、中間軸に前輪側クラッチと後輪側クラッチの2つのクラッチを設けて、2つのクラッチの伝達と遮断の組み合わせで、後輪駆動方式と前輪駆動方式及び全輪駆動方式を作り出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクペダルの回転力を前輪へ伝達する前輪伝達手段と前記クランクペダルの回転力を後輪へ伝達する後輪伝達手段とを持った自転車で、前記前輪伝達手段は前記クランクペダル回転力を前記前輪へ伝達と遮断ができるクラッチを持ち、前記後輪伝達手段は前記クランクペダル回転力を前記後輪へ伝達と遮断ができるクラッチを持っている自転車駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自転車はクランクペダルの回転力で後輪を駆動する自転車がほとんどである。クランクペダルの回転力で前輪を駆動する前輪駆動自転車はペダル踏力で生じたクランクペダルの回転力をハンドル側の前輪へ自在軸継手経由で伝達する機構によって提案されている。クランクペダルの回転力で前輪と後輪を共に駆動する全輪駆動自転車も試作公開されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−104385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クランクペダルの回転力で後輪を駆動する後輪駆動自転車、クランクペダルの回転力で前輪を駆動する前輪駆動自転車、およびクランクペダルの回転力で前後輪を共に駆動する全輪駆動自転車はあるが、これら3つの駆動方式を1台の自転車に取り入れて、乗り手がこれら3つの駆動方式を走り方や路面状況等から判断して最適な駆動方式に切替えて走行する自転車の技術は何ら開示・示唆されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前輪への動力(回転力)伝達手段と後輪への動力(回転力)伝達手段を持った自転車において、図2及び図3に示すように、各々の動力伝達手段はクランクペダル回転力を直接前輪6及び後輪7に伝達しないで、共通の中間軸22経由で前輪6及び後輪7に回転力を伝達する構成にしている。この中間軸22に前輪側クラッチ21と後輪側クラッチ20の2つのクラッチを設けて、2つのクラッチによる動力(クランクペダル回転力)の伝達と遮断の組み合わせ、つまり、前輪駆動にして走行する場合は前輪側クラッチを伝達にして後輪側クラッチを遮断にする。後輪駆動にして走行する場合は前輪側クラッチを遮断にして後輪側クラッチを伝達にする。全輪駆動にして走行する場合は前輪側クラッチを伝達にして後輪側クラッチを伝達にする。これにより一台の自転車で駆動方式を切替えて後輪駆動走行や前輪駆動走行又は全輪駆動走行ができる。
【発明の効果】
【0006】
一台の自転車で前輪駆動走行と後輪駆動走行と全輪駆動走行を択一的に切替えて走行できるので、走行路面の路面状況や路面勾配等に合わせて適した駆動方式で走行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係る自転車駆動装置の実施の形態について図1ないし図2によって詳細に説明する。クランクペダル10を漕げばそのクランクペダルの回転力はクランク軸12からクランクスプロケット11とチェーン13と中間クランク側スプロケット17を経由して中間軸22に伝達される。
【0008】
中間軸22はクランクペダル回転力が伝えられるスプロケット17とクランクペダル回転力を後輪7へ伝達するスプロケット19とクランクペダル回転力を前輪6へ伝達するスプロケット18の3つのスプロケットと、クランクペダル回転力を後輪7に伝達と遮断の機能を持った後輪側クラッチ20とクランクペダル回転力を前輪6に伝達と遮断の機能を持った前輪側クラッチ21の2つのクラッチを備えている。
【0009】
中間軸22に伝達されたクランクペダル回転力は2つのクラッチ20,21の操作によって、後輪駆動にしたり、前輪駆動にしたり、前輪と後輪の両輪を駆動する全輪駆動にすることができる。つまり、前輪駆動にして走行する場合は前輪側クラッチ21を伝達にして後輪側クラッチ20を遮断にしてクランクペダル回転力を中間前輪側スプロケット18に伝達してチェーン経由で前車軸8を駆動する。後輪駆動にして走行する場合は前輪側クラッチ21を遮断にして後輪側クラッチ20を伝達にしてクランクペダル回転力を中間後輪側スプロケット19に伝達してチェーン経由で後車軸9を駆動する。全輪駆動にして走行する場合は前輪側クラッチ21と後輪側クラッチ20を共に伝達にしてクランクペダル回転力を中間前輪側スプロケット18と中間後輪側スプロケット19に伝達して各々のチェーン経由で前車軸8と後車軸9を駆動する。
【0010】
後輪7へのクランクペダル回転力の伝達は中間後輪側スプロケット19からチェーン16と後輪スプロケット23と後車軸9を経由して後輪7へ伝達する。前輪6へのクランクペダル回転力の伝達は中間前輪側スプロケット18からチェーン14と自在軸フレーム側スプロケット26を経由して自在軸25に伝達する。自在軸25は自在軸継手24を備えていてハンドル1を切っても自在軸継手24の作用でクランクペダル回転力は伝達されるので、クランクペダル回転力は自在軸25から自在軸前輪側スプロケット27とチェーン15と前輪スプロケット28と前車軸8を経由して前輪6へ伝達する。前輪6と後輪7の両輪へのクランクペダル回転力の伝達は、上記後輪7へのクランクペダル回転力の伝達と上記前輪6へのクランクペダル回転力の伝達の組み合わせとなる。
【0011】
上記のクラッチ20、21には機械式のかみ合いクラッチや摩擦クラッチがあり、又電気的に動力の伝達と遮断を行う電磁クラッチ等がある。
【0012】
前輪駆動方式と後輪駆動方式および全輪駆動方式の3つの駆動方式を切替えるために、2つのクラッチ20、21に設けたクラッチ操作手段をクラッチ部からクラッチ操作をリモートコントロールする機能を持ったクラッチ操作ケーブル30経由でハンドル1に取り付けて操作性を向上させてもよい。
【0013】
自転車に備えた走行状態検出手段で走行速度や路面の勾配や路面凹凸レベル等を検出して、これらの検出値を使ってマイコン等で最適駆動方式を演算して、その最適駆動方式になるように2つのクラッチ20、21のクラッチ操作手段29を電気信号で自動的に切替えるようにしてもよい。又、クランクペダルの回転力をモータ回転力で増加した回転力を上記の中間軸に伝達して、そのあと前記したクラッチの操作で後輪駆動や前輪駆動または全輪駆動にしてもよい。つまり3つの駆動方式を持った電動アシスト自転車にすることができる。
【0014】
図2駆動装置Aと図3駆動装置Bの違いはクランクペダル回転力の中間軸22から先の前輪6及び後輪7へのチェーンのかけ方の違いで、駆動装置Aの場合は自転車の右側に後輪駆動用のチェーンを配置し、左側に前輪駆動用のチェーンを配置して、駆動装置Bの場合は自転車の左側に後輪駆動用のチェーンを配置し、右側に前輪駆動用のチェーンを配置している。この組み合わせはこれ以外にもいろいろ考えられるが省略する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る一実施例の自転車の全体側面図
【図2】本実施例の駆動装置A
【図3】本実施例の駆動装置B
【符号の説明】
【0016】
1...ハンドル
2...ハンドルステー
3...サドル
4...フレーム
5...ホーク
6...前輪
7...後輪
8...前車軸
9...後車軸
10...クランクペダル
11...クランクスプロケット
12...クランク軸
13...クランク側チェーン
14...前輪フレーム側チェーン
15...前輪ホーク側チェーン
16...後輪側チェーン
17...中間クランク側スプロケット
18...中間前輪側スプロケット
19...中間後輪側スプロケット
20...後輪側クラッチ
21...前輪側クラッチ
22...中間軸
23...後輪スプロケット
24...自在軸継手
25...自在軸
26...自在軸フレーム側スプロケット
27...自在軸前輪側スプロケット
28...前輪スプロケット
29...クラッチ操作手段
30...クラッチ操作ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクペダルの回転力を前輪へ伝達する前輪伝達手段と前記クランクペダルの回転力を後輪へ伝達する後輪伝達手段とを持った自転車で、前記前輪伝達手段は前記クランクペダル回転力を前記前輪へ伝達と遮断ができるクラッチを持ち、前記後輪伝達手段は前記クランクペダル回転力を前記後輪へ伝達と遮断ができるクラッチを持っていることを特徴とする自転車。
【請求項2】
前記前輪伝達手段の前記クラッチの伝達と遮断の操作をする操作手段と、前記後輪伝達手段の前記クラッチの伝達と遮断の操作をする操作手段とを、ハンドル部に設けたことを特徴とする請求項1に記載の自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−290208(P2006−290208A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115121(P2005−115121)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(399001635)
【Fターム(参考)】