説明

自転車検出装置及び照射装置

【課題】本発明は、自転車検出装置及び照射装置に係り、暗所において接近する自転車を正確に検出することにある。
【解決手段】照射手段から光が照射される方向を含む領域を撮影するカメラと、カメラに撮影される撮像画像内の光の強さが所定範囲内にあるか否かを判別する強度判別手段と、カメラに撮影される撮像画像内の光が上下に往復運動するか否かを判別する往復運動判別手段と、強度判別手段により肯定判定がなされ、かつ、往復運動判別手段により肯定判定がなされる場合に、前記方向に自転車が存在すると判定する自転車判定手段と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車検出装置及び照射装置に係り、特に、例えば夜間やトンネルなどの暗所において接近する自転車を検出する自転車検出装置、及び、暗所において例えば車両の前照灯などの照射手段からの光の照射範囲を制限する遮光制御を実行する照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、暗所において車両に接近する自転車などの接近物体を検知するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このシステムにおいて、接近物体は、所定パターンの光を発光すると共に、車両は、暗所において撮像装置の撮像画像内に接近物体からの所定パターンの光が含まれているかを検出し、その光が含まれている場合に接近物体が自車両に近づいていると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−6152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したシステムでは、自転車などの接近物体に、予め車両側に登録されている所定パターンで発光させることが必要であるため、その所定パターンの光を発光しない例えば一般的な点灯や点滅で発光する接近物体は車両側で検知対象外となってしまう。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、暗所において接近する自転車を正確に検出することが可能な自転車検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、照射手段から光が照射される方向を含む領域を撮影するカメラと、前記カメラに撮影される撮像画像内の光の強さが所定範囲内にあるか否かを判別する強度判別手段と、前記カメラに撮影される撮像画像内の光が上下に往復運動するか否かを判別する往復運動判別手段と、前記強度判別手段により肯定判定がなされ、かつ、前記往復運動判別手段により肯定判定がなされる場合に、前記方向に自転車が存在すると判定する自転車判定手段と、を備える自転車検出装置により達成される。
【0006】
尚、上記した自転車検出装置は、前記自転車判定手段により前記方向に自転車が存在すると判定された場合に、前記照射手段からの照射光が該自転車に当たらないように遮光制御を実行する遮光制御手段を備える照射装置に適用されることとすればよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、暗所において接近する自転車を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施例である自転車検出装置及び照射装置を備える車載システムの構成図である。
【図2】本実施例において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図3】自転車の斜視図である。
【図4】自転車から出力又は反射された光が車両に入力される場合の光の状態変化を模式的に表した図である。
【図5】本実施例の照射装置における光の照射範囲を変更する手法を表した図である。
【図6】本発明の第2実施例である自転車検出装置及び照射装置において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本発明に係る自転車検出装置及び照射装置の具体的な実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の第1実施例である自転車検出装置10及び照射装置12を備える車載システムの構成図を示す。本実施例において、自転車検出装置10は、自動車やトラックなどの四輪や二輪の車両に搭載されており、自車両の前方で自車両に接近する自転車を検出する装置である。自転車検出装置10は、車両に搭載される物体検出装置14に一部として含まれる。また、照射装置12は、車両に搭載されており、自車両前方へ照射する前照灯の光の照射範囲や照射量を制御する装置である。
【0011】
自転車検出装置10を含む物体検出装置14は、カメラ16を備えている。カメラ16は、車両バンパやフロントグリル,車室内ルームミラーのステイなどに配設されている。カメラ16は、自車両から車両前方に広がる所定領域を撮影することが可能な光検出センサである。カメラ16は、近赤外線に感光する赤外線カメラではなく、可視光線に感光する一般的なデジタルカメラであればよい。
【0012】
物体検出装置14は、また、マイクロコンピュータを主体に構成される電子制御ユニット(以下、認識ECUと称す)18を備えている。認識ECU18には、上記のカメラ16が電気的に接続されている。カメラ16の撮影した撮像画像は、認識ECU18に供給される。認識ECU18は、カメラ16から供給されるカメラ16に撮影された撮像画像に基づいて、後に詳述の如く、自車両の前方に存在する自転車及び他車両をそれぞれ区別して検出する。認識ECU18は、その検出した自転車又は他車両の、撮像画像内の位置などに基づいて、自車両に対する角度及び距離を含む位置を検出する。
【0013】
照射装置12は、マイクロコンピュータを主体に構成される電子制御ユニット(以下、照射ECUと称す)20を備えている。照射ECU20には、上記の認識ECU18が電気的に接続されている。認識ECU18が検出した自転車及び他車両の自車両に対する位置の情報は、照射ECU20に供給される。
【0014】
照射ECU20には、車体前部左右に配設される前照灯22が電気的に接続されている。前照灯22は、照射ECU20からの指令に従って車両前方の所定領域へ可視光を照射する。左右の前照灯22はそれぞれ、光を照射する照射範囲を変更可能なLEDライトやバルブ式ライトなどである。照射ECU20は、前照灯22の照射範囲が自車両に対して自車両前方のどの領域に位置するかを把握することが可能である。
【0015】
照射ECU20は、前照灯22へ発光指令を行うと共に、認識ECU18から供給される自転車及び他車両の位置情報、車両の操舵角情報、及び車高姿勢に基づいて、前照灯22の光を照射する車両前方の照射範囲を変更させる。例えば、車両の操舵角及び車速に応じた左右角度方向へ前照灯22の光が照射されるようにその照射範囲(左右方向の光軸の向く方向)を変更させ、或いは、車高姿勢に応じた上下角度方向へ前照灯22の光が照射されるようにその照射範囲(上下方向の光軸の向く方向)を変更させる。
【0016】
次に、図2乃至図5を参照して、本実施例の自転車検出装置10を含む物体検出装置14の動作及び照射装置12の動作についてそれぞれ説明する。図2は、本実施例において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図3は、自転車の斜視図を示す。図4は、自転車から出力又は反射された光が車両に入力される場合の光の状態変化を模式的に表した図を示す。また、図5は、本実施例の照射装置12における光の照射範囲を変更する手法を表した図を示す。
【0017】
本実施例において、車両は、乗員によるスイッチ操作により或いは自車両周囲が所定照度以下に暗いことが検知された際に自動的に、自車両の前照灯22を点灯させる。照射ECU20は、前照灯22の点灯条件が成立すると、前照灯22へ点灯指令を行う。この場合、前照灯22は自車両前方の所定領域に可視光を照射する。物体検出装置14は、暗所において車両の前照灯22が点灯されていることなどの検出条件が成立する場合(ステップ100の肯定判定時)、カメラ16を用いてその前照灯22から可視光が照射される方向を少なくとも含む車両前方の領域を撮影する(ステップ102)。カメラ16の撮影した撮像画像は、認識ECU18へ供給される。
【0018】
認識ECU18は、上記した検出条件が成立する場合、カメラ16から供給される撮像画像に基づいて、その撮像画像内に含まれる光を検出する(ステップ104)。そして、その検出した光の強さWが第1の閾値SH1以上であるか否かを判別する(ステップ106)。尚、この第1の閾値は、例えば自車両から所定距離(例えば400m)以上離れた車両の前照灯から照射される光が自車両に入力された際に実現される光の最低光度である。また、この際に検出対象となる光は、所定周期で点滅するものであってもよい。その判別の結果、光の強さWが第1の閾値SH1以上である場合は、自車両前方でその光を照射する物体が車両であると判断し、自車両前方に他車両が存在すると判定する(ステップ108)。
【0019】
一方、認識ECU18は、上記の判別の結果、検出した光の強さWが第1の閾値SH1未満である場合は、次に、その光の強さWが第2の閾値SH2以上であるか否かを判別する(ステップ110)。尚、この第2の閾値SH2は、例えば自車両から所定距離(例えば75m)以上離れた自転車の前照灯から照射される光が自車両に入力された際に実現される光の最低光度であって、上記した第1の閾値SH1よりも小さい閾値である。また、自転車の前照灯から照射される光を検出するため、この強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満であるか否かを判別する対象となる光は、地面から所定高さ(例えば80cm程度)に位置しかつ所定面積(例えば10cm±3cm程度)内で発光するものに限定されることとしてもよい。
【0020】
認識ECU18は、上記の判別の結果、光の強さWが第2の閾値SH2未満である場合は、自車両前方に光を照射する物体が存在しない或いは自転車でないと判断し、以後の検出処理を終了する。一方、上記の判別の結果、光の強さWが第2の閾値SH2以上である場合(すなわち、SH2≦W<SH1が成立する場合)は、自車両前方でその光を照射する物体が車両ではないが自転車である可能性があると判断する。また、かかる判断をした場合は、次に、カメラ16からの撮像画像内に更に、上記の強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である光以外の2箇所に別々の光が存在するか否かを判別する(ステップ112)。
【0021】
尚、上記のステップ112で検出対象となる2つの光はそれぞれ第3の閾値SH3以上の光の強さWを有するものであればよく、また、その第3の閾値SH3は上記の第2の閾値SH2未満に設定されていてもよい。また、この第3の閾値SH3は、例えば、自車両の前照灯22の光が、自車両から所定距離(例えば75m)以上離れた自転車のペダルに取り付けられた反射板で反射したときに、その反射光が自車両に入力された際に実現される光の最低光度である。また、上記のステップ112で検出対象となる2つの光はそれぞれ、所定面積(例えばペダルに取り付けられた反射板の表面積程度)内で発光するものに限定されることとしてもよい。
【0022】
一般的に、図3に示す如く、自転車30は、一つの前照灯32を有すると共に、左右のペダル34,36それぞれに光を反射する反射板38,40を有している。このため、自転車30の進行方向に存在する車両の前照灯22からその自転車30の正面側に向けて光が照射されると、その光が自転車30の左右のペダル34,36の反射板38,40でそれぞれ反射することで2つの反射光が一対となって生成されて車両に戻ってくる。また、自転車30は、その運転者がペダル34,36を漕ぐことで動力を発生するので、一般的に、図4に示す如く、自転車30の進行方向に存在する車両の前照灯22からその自転車30の正面側に向けて光の照射が継続して行われると、その車両からは、自転車30の前照灯32の光がほぼ不動である一方で、その前照灯32の光を挟んで左右(更に具体的には、左下及び右下)に存在しかつ自転車30の左右のペダル34,36の反射板38,40で反射した一対の反射光が共に上下に往復運動するようにみえる。尚、これら一対の反射光の往復運動は、互いに逆相でかつ略一定周期で行われる。
【0023】
認識ECU18は、上記のステップ112における判別の結果、撮像画像内に強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である光以外に一対の光が存在しない場合は、自車両前方に光を照射する物体が存在しない或いは自転車でないと判断し、以後の検出処理を終了する。一方、かかる一対の光が存在すると判別した場合は、自車両の前照灯22から照射された光が自転車の左右にあるペダルに取り付けられた反射板それぞれで反射して自車両に戻ってきた可能性があると判断し、次に、それら一対の光が、上記の強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である光(以下、中心光と称す。)を挟んで左右に存在しつつ、共に上下に往復運動するか否かを判別する(ステップ114)。
【0024】
尚、上記ステップ114における判別で肯定判定を受けるために必要な一対の光の往復運動はそれぞれ、略一定周期(例えば、1秒程度の周期であって、ある幅を持った所定範囲の周期であればよい。)で行われるものであってもよく、また、双方の光の関係として互いに逆相で行われるものであってもよい。更に、この判別処理は、所定時間中に得られるカメラ16の複数の撮像画像を合成して得られる合成画像に基づいて行われることとしてもよい。
【0025】
上記ステップ114における判別の結果、一対の光が中心光を挟んで左右に存在しない、或いは、それら一対の光の何れか一つが上下に往復運動しない場合は、自車両前方に光を照射する物体が自転車でないと判断し、以後の検出処理を終了する。一方、一対の光が中心光を挟んで左右に存在しかつ共に上下に往復運動する場合は、自車両前方に光を照射する物体が自転車であると判断し、自車両前方に自転車が存在すると判定する(ステップ116)。
【0026】
このように、本実施例の自転車検出装置10を含む物体検出装置14においては、自車両の前照灯22から自車両前方へ可視光が照射されているとき、カメラ16がその可視光が照射されている方向を少なくとも含む自車両前方の領域を撮影する。そして、そのカメラ16の撮像画像の処理により、強さWが第1の閾値SH1以上である光が検出された場合は、自車両前方に他車両が存在すると判定される。また、そのカメラ16の撮像画像の処理により、強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である中心光が検出され、かつ、その中心光を挟んで左右両側に存在しかつ共に上下に往復運動する一対の反射光が検出された場合は、自車両前方に自転車が存在すると判定される。すなわち、自車両前方に自転車が存在すると判定するためには、カメラ16の撮像画像内に、強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である中心光と、その中心光を挟んで左右両側に存在しかつ共に上下に往復運動する一対の反射光と、がセットで検出されることが必要である。
【0027】
上記の如く、自転車の進行方向に存在する車両の前照灯22からその自転車に向けて光の照射が継続して行われると、その車両からは、自転車の前照灯の光がほぼ不動である一方で、その前照灯の光を挟んで左右(更に具体的には、左下及び右下)に存在しかつ自転車の左右のペダルの反射板で反射した一対の反射光が共に上下に往復運動するようにみえる。一方、自転車以外の物体では、かかる往復運動を行う一対の光の動きは生じないと考えられる。
【0028】
従って、本実施例の自転車検出装置10によれば、カメラ16の撮像画像を処理して、自車両前方で光を発する物体が他車両であると判定できる第1の閾値SH1には達しないが第2の閾値SH2以上である強さWを有する光(中心光)が検出されるか否か、及び、その中心光を挟んで左右に存在しかつ共に上下に往復運動する一対の反射光が検出されるか否かに基づいて、自車両前方に存在する光を発する物体が自転車であるのか自転車以外の固定物(例えば、標識や自然発光体など)であるのかを区別して検出することができる。このため、カメラ16の撮像画像内で、自車両前方で光を発する物体が他車両であると判定できる強さWを有する光よりも弱い光を、物体検出のために検出対象となる光として設定しても、自転車の誤検出を防止することができる。また、夜間やトンネル内などの暗所における自車両の前照灯22の点灯時、自車両前方におけるその前照灯22が光を照射する方向に自車両に向けて接近する自転車が存在する場合に、その接近する自転車を正確に検出することができる。
【0029】
本実施例において、認識ECU18は、上記ステップ108において自車両前方に他車両が存在すると判定し、或いは、上記ステップ116において自車両前方に自転車が存在すると判定すると、その他車両又は自転車の自車両に対する角度及び距離を含む位置を検出し、その位置情報を照射ECU20に供給する。尚、自車両前方に他車両や自転車が存在すると判定されない場合は、認識ECU18から照射ECU20へ位置情報は供給されない。照射ECU20は、認識ECU18から他車両又は自転車の自車両に対する位置情報が供給されると、その位置情報に基づいて、前照灯22から可視光を照射する照射範囲を制限する遮光制御を実行する(ステップ118,120)。
【0030】
具体的には、照射ECU20は、図5に示す如く、認識ECU18から他車両又は自転車の自車両に対する位置情報が供給されない場合は、前照灯22の照射範囲の制限を行わない一方、認識ECU18から自車両前方で存在することが検出された他車両又は自転車の自車両に対する位置情報が供給された場合は、その他車両又は自転車に自車両の前照灯22からの可視光が当たらないようにその前照灯22の照射範囲を制限する。
【0031】
かかる遮光制御においては、自車両前方に他車両又は自転車が存在する場合に、自車両の前照灯22から可視光が通常照射される自車両前方の全領域のうちその他車両及び自転車が存在する領域を避けて可視光照射が実施されるので、自車両前方の他車両及び自転車の乗員が眩しくなるのは防止される。従って、本実施例の照射装置12によれば、自車両が夜間やトンネル内などの暗所を走行する際に、自車両の前照灯22から照射する光によって自車両前方の他車両や自転車の走行を阻害するのを回避させることができ、道路上の各車両や自転車の安全走行を向上させることができる。
【0032】
尚、上記の第1実施例においては、前照灯22が特許請求の範囲に記載した「照射手段」に、認識ECU18が検出した光の強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満であるか否かを判別することが特許請求の範囲に記載した「強度判別手段」に、認識ECU18が図2に示すルーチン中ステップ114の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「往復運動判別手段」に、認識ECU18がステップ116の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「自転車判定手段」に、照射ECU20が認識ECU18から供給される他車両又は自転車の位置情報に基づいて前照灯22から可視光を照射する照射範囲を制限する遮光制御を実行することが特許請求の範囲に記載した「遮光制御手段」に、それぞれ相当している。
【0033】
ところで、上記の第1実施例においては、カメラ16からの撮像画像内で、強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である中心光と、その中心光を挟んで左右両側に存在しかつ共に上下に往復運動する一対の反射光と、がセットで検出される場合に、自車両前方に自転車が存在すると判定するが、カメラ16の撮像画像内でその中心光と一対の反射光とのセットが複数組検出される場合には、複数の自転車が自車両前方に存在すると判定することとしてもよい。
【0034】
また、上記の第1実施例においては、認識ECU18がカメラ16からの撮像画像内に含まれる光の色を識別することを行っていない。しかし、一般的に、自転車の前照灯は白色で発光すると共に、そのペダルの反射板はアンバー色で発光する。そこで、認識ECU18は、撮像画像内で光を検出した場合に更にその検出した光の色識別を行ったうえで、検出したすべての光のうちの一つの白色光の強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満であること、及び、その白色光を挟んで左右に存在するアンバー色の一対の光が共に上下に往復運動することを、自車両前方で光を発する物体が自転車であると判定するうえでの条件としてもよい。かかる変形例によれば、暗所において自車両に接近する自転車をより精度良く検出することが可能となる。
【0035】
また、上記の第1実施例においては、認識ECU18が、まず、カメラ16からの撮像画像内で光の強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満であるか否かを判別し、その後、肯定判定がなされた場合にその中心光とは別に一対の光が存在するか否かを判別し、更に、その肯定判定がなされた場合にそれら一対の光が上記の中心光を挟んで左右に存在しかつ共に上下に往復運動するか否かを判別することで、自車両前方で自車両に接近する自転車があるかを判定することとしているが、自転車判定を行ううえでの上記した判別の順序はこれに限定されるものではなく、例えば、カメラ16からの撮像画像内で一対の光が左右に存在するか否か及び一対の光が共に上下に往復運動するか否かを判別したうえで、肯定判定がなされた場合に、それら一対の光の間に、強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である光が存在するか否かを判別することで、自車両前方で自車両に接近する自転車が存在するか否かを判定することとしてもよい。
【実施例2】
【0036】
上記した第1実施例では、カメラ16からの撮像画像の処理により、強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値未満である中心光が検出され、かつ、その中心光を挟んで左右に存在しかつ共に上下に往復運動する一対の反射光が検出される場合に、自車両前方に存在する光を発する物体が自転車であると判定される。これに対して、本発明の第2実施例においては、カメラ16の撮像画像の処理により、強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値未満である中心光が検出される場合に、自車両前方に存在する光を発する物体が自転車であると推定したうえで、更に、その中心光を挟んで左右に存在しかつ共に上下に往復運動する一対の反射光が検出される場合に、自車両前方に存在する光を発する物体が自転車であると判定する信頼度を上げ、一方、かかる一対の反射光が検出されない場合に、その信頼度を下げることとしている。
【0037】
本実施例のシステムは、物体検出装置14の認識ECU18及び照射装置12の照射ECU20に、図2に示すルーチンに代えて図6に示すルーチンを実行させることにより実現される。図6は、本実施例において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、図6に示すルーチンにおいて、図2に示す処理と同様の処理を実行するステップについては、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0038】
本実施例において、認識ECU18は、ステップ106においてカメラ16からの撮像画像の処理により検出した光の強さWが第1の閾値SH1以上であるか否かを判別した結果、肯定判定がなされる場合は、自車両前方に他車両が存在すると判定する(ステップ108)。一方、否定判定がなされた場合は、その光の強さWが第2の閾値SH2以上であるか否かを判別する(ステップ110)。
【0039】
認識ECU18は、ステップ110における判別の結果、光の強さWが第2の閾値SH2未満である場合は、自車両前方に光を照射する物体が存在しない或いは自転車でないと判断し、以後の検出処理を終了する。一方、上記の判別の結果、光の強さWが第2の閾値SH2以上である場合(すなわち、SH2≦W<SH1が成立する場合)は、自車両前方でその光を照射する物体が車両ではないが自転車である可能性があると推定する(ステップ200)と共に、カメラ16からの撮像画像内に更に、上記の強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である光以外の2箇所に別々の光が存在するか否かを判別する(ステップ112)。
【0040】
認識ECU18は、ステップ112における判別の結果、撮像画像内に強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である光以外に一対の光が存在する場合は、次に、それら一対の光が、上記の強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である光(以下、中心光と称す。)を挟んで左右に存在しつつ、共に上下に往復運動するか否かを判別する(ステップ114)。
【0041】
認識ECU18は、ステップ114における判別の結果、一対の光が中心光を挟んで左右に存在しかつ共に上下に往復運動する場合は、自車両前方に存在する物体が自転車であると判定する信頼度(確率)を上げる(ステップ202)。例えば、上記ステップ200で自車両前方に存在する物体が自転車であると推定した際の信頼度を50%とした場合、ステップ202の処理の結果、その物体が自転車であると判定する信頼度を75%とする。
【0042】
一方、上記ステップ112において撮像画像内に強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である光以外に一対の光が存在しないと判別した場合、及び、上記ステップ114において一対の光が中心光を挟んで左右に存在しない或いはそれら一対の光の何れか一つが上下に往復運動しないと判別した場合は、自車両前方に存在する物体が自転車であると判定する信頼度(確率)を下げる(ステップ204)。例えば、上記ステップ200で自車両前方に存在する物体が自転車であると推定した際の信頼度を50%とした場合、ステップ204の処理の結果、その物体が自転車であると判定する信頼度を25%とする。
【0043】
このように、本実施例の自転車検出装置10を含む物体検出装置14においては、カメラ16の撮像画像の処理により、強さWが第1の閾値SH1以上である光が検出された場合は、自車両前方に他車両が存在すると判定される。また、そのカメラ16の撮像画像の処理により、強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である中心光が検出された場合は、自車両前方に自転車が存在する可能性があると推定されると共に、更に、その中心光を挟んで左右両側に存在しかつ共に上下に往復運動する一対の反射光が検出された場合は、自車両前方に存在する物体が自転車であると判定する信頼度が上げられ、一方、その一対の光が検出されない場合は、その信頼度が下げられる。すなわち、カメラ16の撮像画像内に、強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である中心光と、その中心光を挟んで左右両側に存在しかつ共に上下に往復運動する一対の反射光と、がセットで検出される場合は、自車両前方に存在する物体が自転車であると判定する信頼度を上げ、一方、中心光が検出されても一対の反射光が検出されない場合は、その信頼度を下げる。
【0044】
従って、本実施例の自転車検出装置10によれば、カメラ16の撮像画像を処理して、自車両前方で光を発する物体が他車両であると判定できる第1の閾値SH1には達しないが第2の閾値SH2以上である強さWを有する光(中心光)が検出される場合に、その中心光を挟んで左右に存在しかつ共に上下に往復運動する一対の反射光が検出されるか否かに基づいて、自車両前方に存在する光を発する物体が自転車であると判定する信頼度を変更することができる。
【0045】
本実施例において、認識ECU18は、上記ステップ108において自車両前方に他車両が存在すると判定すると、或いは、上記ステップ202において自車両前方に自転車が存在すると判定する信頼度を上げると、その他車両又は推定自転車の自車両に対する角度及び距離を含む位置を検出し、その位置情報を照射ECU20に供給する。照射ECU20は、認識ECU18から他車両又は推定自転車の位置情報が供給されると、その位置情報に基づいて、前照灯22から可視光を照射する照射範囲を制限する遮光制御を通常どおり実行する(ステップ118,206)。具体的には、自車両前方で検出されて位置情報が供給された他車両又は推定自転車に自車両の前照灯22からの可視光が当たらないようにその前照灯22の照射範囲を制限する。
【0046】
一方、認識ECU18は、上記ステップ204において自車両前方に自転車が存在すると判定する信頼度を下げると、その推定自転車の自車両に対する角度及び距離を含む位置を検出し、その位置情報を照射ECU20に供給する。照射ECU20は、認識ECU18から推定自転車の位置情報が供給されると、その位置情報に基づいて、前照灯22から可視光を照射する照射範囲を制限する遮光制御を限定して実行する(ステップ208)。具体的には、自車両前方で検出されて位置情報が供給された推定自転車に自車両の前照灯22からの可視光が当たらない範囲が一部に限定されるようにその前照灯22の照射範囲を制限する。
【0047】
かかる遮光制御においては、自車両の前照灯22から可視光が通常照射される自車両前方の全領域のうち他車両及び判定信頼度が高い推定自転車が存在する領域を避けて可視光照射が実施されるので、自車両前方の他車両及び自転車の乗員が眩しくなるのは防止される。従って、本実施例の照射装置12によれば、自車両が夜間やトンネル内などの暗所を走行する際に、自車両の前照灯22から照射する光によって自車両前方の他車両や自転車の走行を阻害するのを回避させることができ、道路上の各車両や自転車の安全走行を向上させることができる。
【0048】
また、上記の遮光制御においては、自車両の前照灯22から可視光が通常照射される自車両前方の全領域のうち判定信頼度が低い推定自転車が存在する領域の一部を避けて可視光照射が実施されるので、自車両前方の他車両及び自転車の乗員が眩しくなるのは抑制されると共に、判定信頼度の低い推定自転車が実際には自転車でないときの影響は最小限に抑えられる。従って、自車両が夜間やトンネル内などの暗所を走行する際に、自車両の前照灯22から照射する光によって自車両前方の自転車の走行を阻害するのを抑止することができ、自車両を含め道路上の各車両や自転車の安全走行を向上させることができる。
【0049】
上記の第2実施例に係る態様は、照射手段から光が照射される方向を含む領域を撮影するカメラと、前記カメラに撮影される撮像画像内の光の強さが所定範囲内にあるか否かを判別する強度判別手段と、前記強度判別手段により肯定判定がなされる場合に、前記方向に自転車が存在すると推定する自転車推定手段と、前記カメラに撮影される撮像画像内の光が上下に往復運動するか否かを判別する往復運動判別手段と、前記往復運動判別手段により肯定判定がなされる場合に、前記自転車推定手段により推定される前記方向に自転車が存在することの信頼度を上げる信頼度アップ手段と、を備える自転車検出装置の発明である。
【0050】
この自転車検出装置において、前記強度判別手段は、前記カメラに撮影される撮像画像内に存在する少なくとも一つの光の強さが前記所定範囲内にあるか否かを判別することとしてもよい。
【0051】
また、上記した自転車検出装置において、前記往復運動判別手段は、前記カメラに撮影される撮像画像内で左右に存在する一対の光が共に上下に往復運動するか否かを判別することとしてもよい。
【0052】
また、上記した自転車検出装置において、前記往復運動判別手段は、前記カメラに撮影される撮像画像内で前記一つの光を挟んで左右に存在する一対の光が共に上下に往復運動するか否かを判別することとしてもよい。
【0053】
また、上記した自転車検出装置において、前記往復運動判別手段は、前記一対の光が互いに逆相で上下に往復運動するか否かを判別することとしてもよい。
【0054】
また、上記した自転車検出装置において、前記カメラに撮影される撮像画像内の光の色を検出する色検出手段を備え、前記強度判別手段は、前記カメラに撮影される撮像画像内に存在する少なくとも一つの白色光の強さが前記所定範囲内にあるか否かを判別すると共に、前記往復運動判別手段は、前記カメラに撮影される撮像画像内で左右に存在するアンバー色の一対の光が共に上下に往復運動するか否かを判別することとしてもよい。
【0055】
尚、上記の第2実施例においては、認識ECU18が図6に示すルーチン中ステップ200の処理を実行することが上記した「自転車推定手段」に、認識ECU18がステップ202の処理を実行することが上記した「信頼度アップ手段」に、それぞれ相当している。
【0056】
ところで、上記の第2実施例においては、自車両前方で強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である光を照射する物体が存在する場合に、その光を挟んで左右両側に存在しかつ共に上下に往復運動する一対の反射光の有無に基づいて、自車両前方に存在する物体が自転車であると判定する信頼度を変更するが、上記の強さWを有する光を照射する物体が複数存在する場合には、それぞれの物体ごとに、その光を挟んで左右両側に存在しかつ共に上下に往復運動する一対の反射光の有無に基づいて、自転車と判定する信頼度を変更することとしてもよい。
【0057】
また、上記の第2実施例においては、認識ECU18がカメラ16からの撮像画像内に含まれる光の色を識別することを行っていないが、認識ECU18は、撮像画像内で光を検出した場合に更にその検出した光の色識別を行ったうえで、検出したすべての光のうちの一つの白色光の強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である場合に、自車両前方に存在する物体が自転車であると推定すること、及び、アンバー色の一対の光がその白色光を挟んで左右に存在しつつ共に上下に往復運動するか否かに応じて、自車両前方に存在する物体が自転車であると判定する信頼度を変更することとしてもよい。かかる変形例によれば、カメラ16からの撮像画像内に含まれる光の強弱に基づいて自車両前方に存在する物体が自転車であると判定する信頼度を、一対の光の存在有無及びその上下動の有無に応じて適宜変更することができる。
【0058】
また、上記の第2実施例においては、認識ECU18が、まず、カメラ16からの撮像画像内で光の強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満であることを検出した場合に、自車両前方に存在する物体が自転車であると推定すると共に、その中心光とは別に一対の光が存在するか否かを判別し、肯定判定がなされた場合にそれら一対の光が上記の中心光を挟んで左右に存在しかつ共に上下に往復運動するか否かを判別することで、自車両前方に存在する物体が自転車であると判定する信頼度を変更することとしているが、自転車推定及び信頼度変更を行ううえでの上記した処理の順序はこれに限定されるものではなく、例えば、カメラ16からの撮像画像内で一対の光が左右に存在しかつ共に上下に往復運動することを検出した場合に、自車両前方に存在する物体が自転車であると推定すると共に、それら一対の光の間に、強さWが第2の閾値SH2以上でありかつ第1の閾値SH1未満である光が存在するか否かを判別することで、自車両前方に存在する物体が自転車であると判定する信頼度を変更することとしてもよい。
【0059】
ところで、上記の第1及び第2実施例においては、上記の第1及び第2実施例においては、自車両前方に存在する他車両又は自転車が検出された場合に前照灯22からの光の照射範囲をその他車両又は自転車が入らないように制限することとしているが、照射範囲の制限として例えばハイビーム照射からロービーム照射へ変更することとしてもよいし、或いは、照射範囲の制限に代えて、自車両前方の他車両又は自転車に前照灯22から当たる可視光の放射量を低減することとしてもよい。
【0060】
また、自車両前方に存在する他車両又は自転車が検出された場合に、前照灯22からの光の照射範囲を制限する遮光制御を実行することとしているが、自車両前方に存在する自転車が検出された場合に、自車両の運転者に対して警報や振動でその自転車についての注意喚起を行う警報制御を実行することとしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 自転車検出装置
12 照射装置
14 物体検出装置
16 カメラ
18 認識ECU
20 照射ECU
22 前照灯


【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射手段から光が照射される方向を含む領域を撮影するカメラと、
前記カメラに撮影される撮像画像内の光の強さが所定範囲内にあるか否かを判別する強度判別手段と、
前記カメラに撮影される撮像画像内の光が上下に往復運動するか否かを判別する往復運動判別手段と、
前記強度判別手段により肯定判定がなされ、かつ、前記往復運動判別手段により肯定判定がなされる場合に、前記方向に自転車が存在すると判定する自転車判定手段と、
を備えることを特徴とする自転車検出装置。
【請求項2】
前記強度判別手段は、前記カメラに撮影される撮像画像内に存在する少なくとも一つの光の強さが前記所定範囲内にあるか否かを判別することを特徴とする請求項1記載の自転車検出装置。
【請求項3】
前記往復運動判別手段は、前記カメラに撮影される撮像画像内で左右に存在する一対の光が共に上下に往復運動するか否かを判別することを特徴とする請求項1記載の自転車検出装置。
【請求項4】
前記往復運動判別手段は、前記カメラに撮影される撮像画像内で前記一つの光を挟んで左右に存在する一対の光が共に上下に往復運動するか否かを判別することを特徴とする請求項2記載の自転車検出装置。
【請求項5】
前記往復運動判別手段は、前記一対の光が互いに逆相で上下に往復運動するか否かを判別することを特徴とする請求項3又は4記載の自転車検出装置。
【請求項6】
前記カメラに撮影される撮像画像内の光の色を検出する色検出手段を備え、
前記強度判別手段は、前記カメラに撮影される撮像画像内に存在する少なくとも一つの白色光の強さが前記所定範囲内にあるか否かを判別すると共に、
前記往復運動判別手段は、前記カメラに撮影される撮像画像内で左右に存在するアンバー色の一対の光が共に上下に往復運動するか否かを判別することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載の自転車検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項記載の自転車検出装置において前記自転車判定手段により前記方向に自転車が存在すると判定された場合に、前記照射手段からの照射光が該自転車に当たらないように遮光制御を実行する遮光制御手段を備えることを特徴とする照射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−198656(P2012−198656A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61317(P2011−61317)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】