説明

自転車用操作装置

【課題】自転車の1段の変速操作と複数段にわたる変速操作とを確実に行えるようにする。
【解決手段】変速操作部16は、自転車に取り付け可能な固定部材30と、巻取体32と、位置保持・解放機構34と、駆動部材42を含む駆動機構39及びレバー部材36を有する解除レバー35と、を備えている。固定部材は、自転車に取り付け可能である。巻取体は、予め決められた複数の保持位置に保持される。位置保持・解放機構は、巻取体を複数の保持位置のいずれか一つに位置決めする。駆動部材は、第1軸回りに揺動可能であり、位置保持・解放機構を動作可能である。レバー部材は、第2軸回りに揺動可能であり、駆動部材の揺動中心からの距離が異なる位置で駆動部材に接触可能な第1及び第2接触部45a,45bを有し、揺動に応じて第1及び第2接触部のいずれかが駆動部材に接触して駆動部材を揺動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作装置、特に、自転車に取り付け可能な自転車用操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車、特に、スポーツ用の自転車には、変速装置が設けられているものが多い。変速装置を操作するために、ハンドルなどの自転車のフレームには、レバーや押しボタンなどの形態の操作部材を有する変速操作装置(自転車用操作装置の一例)が設けられている。変速操作装置は、通常ボーデン型の変速ケーブルを介して変速装置と連結されており、操作部材を操作すると変速ケーブルが移動して変速装置が変速動作する。
【0003】
この種の変速操作装置において、操作部材の一回の操作でケーブル解除方向に複数の変速段まとめて変速できる多段解除可能な変速操作装置が従来知られている(たとえば、特許文献1参照)。従来の変速操作装置は、ドロップハンドルを有するロードレーサのブレーキレバーの内部に装着されたものである。変速操作装置は、ブレーキレバーの内部にブレーキ操作方向と食い違う方向に装着された回動軸と、回動軸に回動自在に装着されたケーブル係止体(可動部材の一例)と、ケーブル係止体と一体形成され外周に位置決め歯が形成された位置決め体と、外周に解放歯が形成された解放ホイールと、位置決め歯を位置決めするするとともに、解放歯により解除方向に移動する位置決め爪と位置決め体を回動規制する回動防止爪とを有する位置保持解放機構(位置決め機構の一例)とを備えている。解放ホイールは、回動軸に位置決め体と隣接して回動自在に装着されている。
【0004】
この変速操作装置では、解放ホイールを操作部材としての解除レバーの一方向の連続した操作に応じて回転させることにより、位置決め爪及び回動防止爪を有する位置保持・解放機構を連続して動作させることができる。このため、解放レバーを操作開始位置に戻すことなく複数変速段にわたる多段解除を1回の操作で行える。
【特許文献1】特開2004−231176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の構成では、解放レバーの1回の操作により複数変速段にわたる多段解除を1階の操作で行え、複数変速段にわたる変速操作を迅速に行える。しかし、1変速段だけ解除操作したい場合に、誤って解放レバーを操作しすぎて複数変速段にわたる解除操作を行ってしまうおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、自転車用操作装置において、1段の操作と複数段にわたる操作とを確実に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る自転車用操作装置は、自転車に取り付け可能な装置であって、固定部材と、可動部材と、位置決め機構と、第1揺動部材と、第2揺動部材と、を備えている。固定部材は、自転車に取り付け可能な部材である。可動部材は、固定部材に可動的に連結され、予め決められた複数の保持位置される部材である。位置決め機構は、可動部材を複数の保持位置のいずれか一つに位置決めする機構である。第1揺動部材は、第1軸回りに揺動可能であり、位置決め機構を動作可能な部材である。第2揺動部材は、第2軸回りに揺動可能であり、第1揺動部材の揺動中心からの距離が異なる位置で第1揺動部材に接触可能な第1及び第2接触部を有し、第2軸回りの第1方向への揺動に応じて記第1及び第2接触部のいずれかが第1揺動部材に接触して第1揺動部材を揺動させる部材である。
【0008】
この変速操作装置では、第2揺動部材を第1方向に操作すると、第1方向の操作に応じて第1揺動部材に第1及び第2接触部のいずれか一方が先に接触し続いて他方が接触して第1揺動部材を揺動させる。ここでは、第1及び第2接触部は、第1揺動部材の揺動中心からの距離が異なる位置で第1揺動部材に接触するので、第1揺動部材の揺動中心からの距離が遠い方の接触部が第1揺動部材に接触したときの方が、近い方の接触部が接触したときより腕の長さが長くなり弱い力で第1揺動部材を揺動させることができる。このため、距離が遠い接触部で揺動させたときの操作力が軽くなり、いずれの接触部が接触するかによって、第2揺動部材を操作する力が変化する。したがって、1段の操作のときから2段の連続操作を行う際に異なる接触部で接触するように、第1及び第2接触部の位置を設定することにより、1段の操作が終了した時点で第2操作部材の操作力を変化させることができる。これにより、操作力が変化した時点で操作をやめることにより1段の操作を行え、変化後も操作をつづけることにより、複数段にわたる操作を行える。このため、1段の操作と、複数段にわたる操作とを確実に行えるようになる。
【0009】
発明2に係る自転車用操作装置は、発明1に係る装置において、第1接触部は第2接触部より揺動中心から離れた位置で第1操作部材に接触し、第2揺動部材が第1方向に揺動するとき最初に第1接触部が第1揺動部材を揺動させ、続いて第2接触部が第1揺動部材を揺動させる。この場合には、最初に第1操作部材の揺動中心から離れた位置で接触する第1接触部が第1揺動部材を揺動させるので、軽い力で第2揺動部材を操作できる。続いて、揺動中心に近い位置で接触する第2接触部が第1揺動部材を揺動させるので、1段の操作が終了するときに第1接触部から離れて第2接触部で接触するように両接触部を配置することにより、第2揺動部材の操作に要する力が大きくなり、操作が重くなる。操作が重くなったことにより、ライダーは1段の操作が終了したことを認識でき、操作が重くなった時点で操作を終了することにより、1段の操作を確実に終了でき、重くなってからさらに操作をつづけることにより複数段にわたる操作を行える。このように1段の操作が終わると操作が重くなるように設定することができるので、1段の操作を容易に認識できるとともに、複数段にわたる操作を行おうとすると操作が重くなるので、複数段にわたる操作は意識的に行わなければならない。このため、1段の操作と、複数段にわたる操作とをより確実に行えるようになる。
【0010】
発明3に係る自転車用操作装置は、発明2に記載の装置において、第1接触部による第1揺動部材の揺動により、可動部材の保持位置は一つ移動する。この場合には、第1接触部による第1揺動部材の揺動により可動部材を1段階移動させ、1段の保持位置の変更操作を行うことができる。
【0011】
発明4に係る自転車用操作装置は、発明3に記載の装置において、第2接触部による第1揺動部材の揺動により、可動部材の保持位置はさらに一つ移動する。この場合には、第2接触部による重い操作力で第1揺動部材を揺動させることにより、可動部材の保持位置がさらに一つ移動するので、合計2段の可動部材の保持位置の変更を1回の操作で行える。
【0012】
発明5に係る自転車用操作装置は、発明1から4のいずれかに記載の装置において、第2揺動部材は、第1方向と異なる第2方向にも揺動可能であり、かつ第2方向の揺動に応じて第1揺動部材を揺動させる。この場合には、第2揺動部材を第2方向に揺動させても第1揺動部材を揺動させることができるので、第2揺動部材の両方向の揺動により可動部材を移動させることができる。
【0013】
発明6に係る自転車用操作装置は、発明5に記載の装置において、第2揺動部材は、第1揺動部材の揺動中心からの距離が異なる位置で第1揺動部材に接触可能な第3及び第4接触部をさらに有し、第2方向の揺動に応じて第3及び第4接触部のいずれかが第1揺動部材に接触して第1揺動部材を揺動させる。この場合には、第2揺動部材の第2方向の揺動に際しても第1方向への揺動と同様に、1段の操作のときから2段の連続操作を行う際に異なる接触部で接触するように、第3及び第4接触部の位置を設定することにより、1段の操作が終了した時点で操作力を変化させることができ、第2方向に第2操作部材を操作しても1段の操作と、複数段にわたる操作とを確実に行えるようになる。
【0014】
発明7に係る自転車用操作装置は、発明6に記載の装置において、第3接触部は第4接触部より揺動中心から離れた位置で第1揺動部材に接触し、第2揺動部材が第2方向に揺動するとき最初に第3接触部が第1揺動部材を揺動させ、続いて第4接触部が第1揺動部材を揺動させる。この場合には、第1方向の揺動と同様に、最初に揺動中心から離れた位置で接触する第3接触部で第1揺動部材に第2揺動部材からの力が伝達されるので、軽い力で第2揺動部材を操作できる。続いて、揺動中心に近い位置で接触する第4接触部が第1揺動部材を揺動させるので、1段の操作が終了するときに第3接触部から離れて第4接触部で接触するように両接触部を配置することにより、第2揺動部材の操作に要する力が大きくなり、操作が重くなる。操作が重くなったことにより、ライダーは1段の操作が終了したことを認識でき、操作が重くなった時点で操作を終了することにより、1段の操作を確実に終了でき、重くなってからさらに操作をつづけることにより複数段にわたる操作を行える。このように、第2方向に第2揺動部材を揺動させても、1段の操作が終わると操作が重くなるように設定することができるので、1段の操作を容易に認識できるとともに、複数段にわたる操作を行おうとすると操作が重くなるので、複数段にわたる操作は意識的に行わなければならない。このため、第2揺動部材を第2方向に揺動させても、1段の操作と、複数段にわたる操作とをより確実に行えるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1及び第2接触部は、第1揺動部材の揺動中心からの距離が異なる位置で第1揺動部材に接触するので、第1揺動部材の揺動中心からの距離が遠い方の接触部が第1揺動部材に接触したときの方が、近い方の接触部が接触したときより腕の長さが長くなり、弱い力で第1揺動部材を揺動させることができる。このため、距離が遠い接触部で揺動させたときの操作力が軽くなり、いずれの接触部が接触するかによって、第2揺動部材を操作する力が変化する。したがって、1段の操作のときから2段の連続操作を行う際に異なる接触部で接触するように、第1及び第2接触部の位置を設定することにより、1段の操作が終了した時点で第2操作部材の操作力を変化させることができる。これにより、操作力が変化した時点で操作をやめることにより1段の操作を行え、変化後も操作をつづけることにより、複数段にわたる操作を行える。このため、1段の操作と、複数段にわたる操作とを確実に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1において、本発明の一実施形態が搭載された自転車1は、サスペンションフォーク3及びサスペンションフォーク3の上部に固定されたハンドルバー4を有するフレーム2を備えている。フレーム2の中間部には、外装変速装置を構成するフロントディレーラ17が装着され、フレーム2の後端部には、リアディレーラ18が装着されている。フロントディレーラ17は、たとえばフレーム2のシートチューブ2bの下部に配置されており、たとえば3枚のスプロケットを有するフロントギア19aのいずれかのスプロケットにチェーン23を案内する。リアディレーラ18は、フレーム2のチェーンスティ2cの後端部に配置されており、たとえば、9枚のスプロケットを有するリアギア19bのいずれかのスプロケットにチェーン23を案内する。フロントディレーラ17及びリアディレーラ18は、フロント及びリア変速ケーブル25,26を介してフロント及びリア変速操作部(自転車用操作装置の一例)15,16に連結されている。
【0017】
フロント及びリア変速操作部15,16は、ハンドルバー4において、ブレーキレバー12,11の内側にブレーキレバー12,11と近接して配置されている。フロント変速操作部15とリア変速操作部16とは、鏡像関係にあるものであり、変速段数を除いて略同様な構成及び動作を行うため、以降の構成及び動作の説明ではリア変速操作部16について説明する。
【0018】
<リア変速操作部16の構成>
リア変速操作部16は、図2に示すように、フロントブレーキレバー11の内側でハンドルバー4に取り付け可能な固定部材30を有している。なお、固定部材30がフロントブレーキレバー11のブラケットに一体的に固定されていてもよい。固定部材30は、バンド29によりハンドルバー4に固定されている。
【0019】
また、リア変速操作部16は、図3に示すように、固定部材30の後述する取付ブラケット41にケーブル引張方向とケーブル解除方向とに可動的に連結され、予め決められた複数の保持位置で保持される巻取体(可動部材の一例)32と、巻取体32を複数の保持位置のいずれか一つに位置決めする位置保持・解除機構(位置決め機構の一例)34と、ケーブル解除方向の操作を行うための解除レバー(第1及び第2揺動部材の一例)35と、ケーブル引張方向の操作を行うための巻取レバー38と、を有している。
【0020】
なお、図3では、本発明に係るリア変速操作部16の主要部を図2と上下を逆にして示している。
【0021】
<固定部材30の構成>
固定部材30は、図2から図5に示すように、ハンドルバー4に装着可能であり内部に空間を有する、たとえば合成樹脂製のケーシング40(図2)と、ケーシング40の空間内に設けられた取付ブラケット41(図3及び図4)とを主に有している。また、固定部材30は、取り付けブラケット41に連結された支持軸31を有している。取付ブラケット41は、金属製の板状部材あり、そこには、支持軸31が回転不能に連結されている。また、取付ブラケット41には、巻取体32,位置保持・解放機構34、解除レバー35、巻取レバー38が移動可能に連結されている。これらの構成と取付ブラケット41との詳細な連結構造については、各部の説明とともに説明する。
【0022】
支持軸31は、図3において、取付ブラケット41のスロット形状の開口41aを貫通する第3軸線X3方向に沿って配置されている。支持軸31の基端(図3上端)には、円形の頭部31aが形成され、中間部には、下端に互いに平行な面取り部31bが形成された回動支持部31cが形成されている。また、下部には雄ねじ部31dが形成され、頭部31aには、雌ねじ部31eが形成されている。この雌ねじ部に図示しないボルトがケーシング40を貫通してねじ込まれて支持軸31は、ケーシング40に固定されている。支持軸31は、面取り部31bが開口41aに係合して取付ブラケット41に回転不能に連結される。
【0023】
<巻取体32の構成>
巻取体32は、たとえば、ポリアセタールなどの合成樹脂製の部材であり、取付ブラケット41の第1面(図3上面)に配置され、ブッシュ52を介して支持軸31の回動支持部31cにケーブル巻取方向とケーブル解除方向とに第3軸芯X3回りに回動自在に装着されている。巻取体32は、リア変速ケーブル26のインナーケーブル26aの先端に固定されたケーブルニップル26cを係止するインナー係止部32aと、インナーケーブル26aを巻き取るためのケーブル巻取溝32bとを外周面に有している。巻取体32は、たとえば、渦巻きばねの形態のばね部材50によりケーブル解除方向(図3時計回り)に付勢されている。ばね部材50は、一端が巻取体32に係止され他端が取付ブラケット41に係止されている。巻取体32の上面には、位置保持・解放機構34の後述する位置決め体54を連動して回動させるための、たとえば4つの係合突起32cが形成されている。4つの係合突起32cのうち一つは周方向長さが異なる。これにより、位置決め体54と巻取体32との回転位相を間違いなく合わせることができる。
【0024】
<位置保持・解放機構34の構成>
位置保持・解放機構34は、取付ブラケット41の第1面側に配置されている。位置保持・解放機構34は、たとえば9つの位置決め歯62及び8つの送り歯64を有し、巻取体32と連動する位置決め体54と、位置決め歯62に係合する図4に示す第1係合位置と、位置決め歯62と係合しない図10に示す第1解放位置との間を揺動する位置決め爪56を有している。また、位置保持・解放機構34は、位置決め歯62に位置決め爪56と異なる位置で係合する図10に示す第2係合位置と、位置決め歯62と係合しない図4に示す第2解放位置との間を揺動する回転防止爪57と、送り歯64に係合及び離反する送り爪59と、を有している。
【0025】
位置決め体54は、巻取体32の図3上面に接触して配置されている。位置決め体54は、巻取体32の係合突起32cに係合する係合孔54aを有しており、巻取体32と一体的に回動する。位置決め歯62及び送り歯64は、リアディレーラ18の変速位置に応じた数だけ設けられており、位置決め体54の外周面に径方向に突出して形成されている。位置決め体54は、巻取体32とともに、ばね部材50によりケーブル解除方向(図3時計回り)に付勢されている。位置決め歯62及び送り歯64は、リアディレーラ18の変速位置に応じて設定されたケーブル移動量に基づいて間隔が定められている。
【0026】
位置決め爪56は、取付ブラケット41を貫通して設けられ第3軸芯X3と平行な第4軸芯X4に沿って配置された揺動軸65に揺動自在に装着されている。揺動軸65は、取付ブラケット41の第1面(図3上面)に立設されている。位置決め爪56は、第1係合位置に配置されるように、たとえば、捩じりコイルばねの形態のばね部材58により図3反時計回りに付勢されている。ばね部材58は、一端が取付ブラケット41に形成されたばね受け41c(図3)に係止され、他端が位置決め爪56に係止されている。
【0027】
位置決め爪56は、位置決め歯62の係止面62aに接触して、図3時計回りに付勢された位置決め体54のケーブル解除方向の回転を阻止するする第1爪部56aと、回動防止爪57の揺動範囲を規制するための1対の規制突起56b,56cと、駆動機構39に係合する係合突起56dとを有している。第1爪部56aは回動中心から位置決め体54に沿って延びた先端に位置決め体54に向かって突出して形成されている。1対の規制突起56b,56cは、第1爪部56aと逆側に間隔を隔てて延びている。規制突起56bは、位置決め爪56が第1係合位置にあるとき、回動防止爪57が第2解放位置に配置されるような位置に形成されている。規制突起56cは、所定範囲内の揺動により後述する駆動機構39の第2アーム部材71と位置決め爪56との係合を回動防止爪57が解除できるように設けられている。係合突起56dは、第2アーム部材71の2つの動作部71a,71bに係合可能なように第2アーム部材71に向かって僅かに突出している。
【0028】
回転防止爪57は、位置決め爪56の下方で揺動軸65に回転自在に装着され位置決め爪56に対して所定範囲(たとえば、5度から10度の範囲)揺動自在になっている。これを実現するために、回動防止爪57は、位置決め爪56の図3下方から上方に折れ曲がり、位置決め歯62に係合する第2爪部57aと、1対の規制突起56b,56cの間に配置されるように上方に折れ曲がった規制部57bと、第2アーム部材71の2つの動作部71a,71bに当接可能な解除カム部57cとを有している。
【0029】
規制部57bは、位置決め爪56が図10に示す第1解放位置から図4に示す第1係合位置に移動するとき、規制突起56bに接触して、回動防止爪57が第2係合位置から第2解放位置に移動できるように形成されている。
【0030】
解除カム部57cは、位置決め爪56が駆動機構39により第1係合位置から第1解放位置に移動させられるとき、位置決め爪56とともに第2解放位置から第2係合位置に向けて移動するように形成されている。また、解除カム部57cは、第2係合位置にある場合に、位置決め歯62が第2爪部57aに接触して回動防止爪57が所定範囲回動するとき、位置決め爪56に対する駆動機構39の係合を解除するために設けられている。なお、解除カム部57cは、図10に示すように、規制部57bが規制突起56bに接触しているときは、規制突起56cと重なって隠れている。
【0031】
回転防止爪57は、第2係合位置に移動すると、図10に示すように、位置決め爪56が接触していた位置決め歯62bより一つだけケーブル解除方向上流側の位置決め歯62cに接触し、位置決め爪56が離反した後に位置決め体54がケーブル解除方向に一気に連続して回転するのを防止する。また、回転防止爪57が第2係合位置にあるとき、位置決め爪56は、図4に示すように、係合していた位置決め歯62bを乗り越えた位置に配置される。
【0032】
送り爪59は、図4に示すように、巻取レバー38に立設された揺動軸69に揺動自在に装着されている。送り爪59は、送り爪59が送り位置に配置されるように捩じりコイルばねなどのばね部材(図示せず)により図4反時計回りに付勢されている。送り爪59は、取付ブラケット41に設けられた保持板61により、巻取レバー38が操作開始位置にあるとき、送り歯64から離反した位置に配置される。そして、巻取レバー38が操作されると、保持板の端部から送り歯64に噛み合って位置決め体54をケーブル引張方向(図4反時計回り)に回動させる。
【0033】
<解除レバー35の構成>
解除レバー35は、ケーブル解除操作を行うためのレバー部材(第2揺動部材の一例)36と、レバー部材36の1回の操作で位置保持・解放機構34を複数変速段にわたり解除動作を行わせる駆動機構39と、を有している。駆動機構39は、レバー部材36の揺動により揺動する駆動部材(第1揺動部材の一例)42を含んでいる。
【0034】
レバー部材36は、図3及び図5に示すように、取付ブラケット41の第2面(図3下面)に配置されている。レバー部材36は、取付ブラケット41の第2面に第2軸芯X2に沿って立設された揺動軸66に揺動自在に支持されている。
【0035】
レバー部材36は、図5に示す中立位置から第2揺動軸66を中心に第1方向(図5反時計回り)と第2方向(図5時計回り)とに揺動する。また、レバー部材36は、駆動機構39を介して中立位置に付勢されている。
【0036】
レバー部材36は、図3及び図5に示すように、操作用のつまみ部43と、基端につまみ部43が連結されたレバー部44と、レバー部44に設けられ駆動部材42に接触可能な第1〜第4接触部45a〜45dと、を有している。つまみ部43は、たとえば合成樹脂やダイカスト金属製であり、第1及び第2方向の操作を容易行えるようにするために、両側に第1及び第2方向の操作のための第1及び第2操作面43a,43bを有している。
【0037】
レバー部44は、たとえばステンレス合金や鋼鉄などの金属製の板状部材であり、途中で支持軸31を避けるように僅かに湾曲しており、湾曲部分の先端側に揺動軸66に支持される貫通孔の形態の揺動支持部44aが形成されている。揺動支持部44aより先端側には、先端が尖ったくちばし形状の揺動動作部44bが形成されている。この揺動動作部44bには、駆動部材42を避けるように凹部44cが形成されている。この凹部44cの両側に第1〜第4接触部45a〜45dが形成されている。
【0038】
図6に示すように、第1接触部45aは、揺動動作部44bの先端に丸められた形状で形成されている。第1接触部45aは、レバー部材36が第1方向に揺動したとき、第2接触部45bより先に駆動部材42の揺動中心である第1軸芯X1から距離R1の位置で駆動部材42に接触する。また、第2接触部45bは、揺動動作部44bの凹部44cの一端側に駆動部材42に向けて突出して形成されている。第2接触部45bは、第1接触部45aが駆動部材42に接触した状態で揺動した後に第1軸芯X1から距離R1より短い距離R2の位置で駆動部材42に接触する。第2接触部45bが接触した後にさらにレバー部材36が第1方向に揺動すると、図7に示すように、第1接触部45aは、駆動部材42から離反する。第2接触部45bが駆動部材42に接触する時点は、後述する解除操作により1段解除方向に変速操作された時点である。
【0039】
図8に示すように、第3接触部45cは、揺動動作部44bの凹部44cの他端側に丸められた形状で形成されている。第3接触部45cは、レバー部材36が第2方向に揺動したとき、第4接触部45dより先に駆動部材42の揺動中心である第1軸芯X1から距離R3の位置で駆動部材42に接触する。また、第4接触部45dは、第3接触部45cより第2軸芯X2から離反した位置で駆動部材42に向けて突出して形成されている。第4接触部45dは、第3接触部45cが駆動部材42に接触した状態でレバー部材36が揺動した後に第1軸芯X1から距離R3より短い距離R4の位置で駆動部材42に接触する。第4接触部45dが接触した後にさらにレバー部材36が第2方向に揺動すると、図9に示すように、第3接触部45cは、駆動部材42から離反する。第2接触部45bが駆動部材42に接触する時点は、後述する解除操作により1段解除方向に変速操作された時点である。
【0040】
駆動機構39は、図3に示すように、駆動部材42を除いて支持軸31から離反した位置で取付ブラケット41の第1面に移動自在に連結されている。駆動部材42は、図3及び図5に示すように、取付ブラケット41の第2面に揺動軸67に一体回動自在に連結されている。揺動軸67は、第1軸芯X1に沿って取付ブラケット41を貫通して配置され、取付ブラケット41に回動自在に支持されている。揺動軸67は、中央部に取付ブラケット41に回動自在に支持される支持部67aを有し、一端側(図3上端側)に後述する第1アーム部材70が一体回動可能に連結される1対の互いに平行な面取り部67cを有し、他端側に駆動部材42が一体回転可能に連結される1対の互いに平行な面取り部67bが形成された軸部材である。
【0041】
駆動部材42は、中央に揺動軸67の面取り部67bに一体回動可能に係合するスリット42eを有し、スリット42eを挟んで第1軸芯X1から離反する方向に延びている。この延びた一方の部分にレバー部44の第1及び第2接触部45a,45bが接触する第1及び第2被接触部42a,42bが形成され、他方にレバー部44の第3及び第4接触部45c,45dが接触する第3及び第4被接触部42c,42dが形成されている。
【0042】
また、駆動機構39は、図3及び図4に示すように、揺動軸67に一体回動可能に連結された第1アーム部材70と、第1アーム部材70に揺動自在に連結された第2アーム部材71とをさらに有している。第1アーム部材70は、揺動軸67の面取り部67bに一体回転可能に係合するスリット70aと、第2アーム部材71を揺動自在に連結する連結部70bと、第1及び第2アーム部材70,71の揺動時のがたつきを抑えるための支持部70cとを有している。第1アーム部材70は、レバー部材36の操作により揺動する駆動部材42と一体に揺動する。第1アーム部材70は、第2アーム部材71に係止されたばね部材74により図4反時計回りに位置決め体54に接近する方向に付勢されている。この付勢力は揺動軸67及び駆動部材42を介してレバー部材36に伝達され、レバー部材36が中立位置(図5)に向けて付勢される。連結部70bには、揺動軸68が立設されている。支持部70cは、第2アーム部材71が揺動する範囲と重なるように延びており、第2アーム部材71に接触して第2アーム部材71ががたつかないようにしている。また、支持部70cの下面には、取付ブラケット41の第1面に接触する接触突起70dが形成されている。これにより、第1アーム部材70も揺動時のがたつきが小さくなる。なお第1アーム部材70は図14に示す位置まで揺動するように揺動範囲が規制されている。
【0043】
第2アーム部材71は、先端に複数(たとえば2つ)の動作部71a,71bを有している。この2つの動作部71a,71bにより、駆動機構39はレバー部材36の第1方向又は第2方向の1回の操作で最大2回の多段解除動作、すなわち、2変速段にわたる連続した変速処理が可能である。たとえば、ケーブル解除方向のインナーケーブル26aの移動によりリアディレーラ18がシフトアップし、現在の変速段が7段の場合、9段まで一気に変速操作できる。なお、動作部の数は2つに限定されず、動作部の数を増やせば動作部の数に応じた多段解除動作を行える。
【0044】
各動作部71a,71bは、図10に示すように、位置決め爪56の係合突起56dに係合する係合部72と、回動防止爪57の所定範囲の揺動により、解除カム部57cが接触して係合部72での位置決め爪56との係合を解除する係合解除部73とをそれぞれ有している。係合解除部73は、係合部72と隣接して設けられている。第2アーム部材71は、たとえばコイルばねの形態のばね部材74により位置決め爪56に接近する方向に付勢されている。このばね部材74により前述したように第1アーム部材70も位置決め体54に接近する方向に付勢され、さらにはレバー部材36が中立位置に付勢されている。ばね部材74は一端が第2アーム部材71の動作部71aの近くで取付ブラケット41に向けて突出した係止ピン71dに係止され、他端が取付ブラケット41のばね受け41bに係止されている。したがって、ばね部材74は3つの部材71,70,36をまとめて付勢している。
【0045】
<巻取レバー38の構成>
巻取レバー38は、図3には図示していないが、位置決め体54の図3上方に配置されており、操作開始位置から操作終了方向に向けて支持軸31に揺動自在に装着されている。図4に示すように、巻取レバー38の途中に前述したように送り爪59が揺動自在に配置されている。巻取レバー38は図示しないばね部材により操作開始位置側に付勢されている。
【0046】
なお、フロント変速操作部15は、変速段数を除いてリア変速操作部16と鏡像関係にある同様な構造であり、リアブレーキレバー12の内側に設けられている。
【0047】
<リア変速操作部16の変速動作>
ケーブル解除方向の動作は以下の通りである。
【0048】
レバー部材36が図5に示す中立位置から第1方向に操作されると、図6に示すように、レバー部材36は、揺動軸66を中心に図6反時計回りに揺動する。レバー部材36が揺動すると、その揺動により第1接触部45aが駆動部材42の第1被接触部42aに接触した状態でばね部材74の付勢力に抗して駆動部材42を押圧し、駆動部材42を図5反時計回りに揺動させる。駆動部材42が揺動すると揺動軸67を介して第1アーム部材70が位置決め体54から離反する方向に第1軸芯X1回りに図4時計回りに揺動する。
【0049】
第1アーム部材70が位置決め体54から離反する方向に揺動すると、第2アーム部材71の動作部71aの係合部72が位置決め爪56の係合突起56dに係合して、位置決め爪56を、図4に示す第1係合位置から図10に示す第1解放位置に第2揺動軸65の図4時計回りに揺動させる。このとき、動作部71aは、回動防止爪57の解除カム部57cにも接触して回動防止爪57を図4に示す第2解放位置から図10に示す第2係合位置に揺動させる。この結果、巻取体32を介してばね部材50により図10時計回りのケーブル解除方向に付勢された位置決め体54がケーブル解除方向に回転し、位置決め爪56に位置決めされた位置決め歯62bよりひとつ回転方向下流側の位置決め歯62cが回動防止爪57の第2爪部57aに接触する。すると、回動防止爪57は所定範囲で位置決め爪56に対して揺動自在であるので、位置決め歯62cにより押圧された回動防止爪57は、図10反時計回りに揺動する。すると、図11に示すように、回動防止爪57の解除カム部57cが動作部71aの係合解除部73を押圧し、第2アーム部材71において係合部72での位置決め爪56との係合が解除される。これにより、ばね部材58により付勢された位置決め爪56が第1解放位置から第1係合位置に移動し、1段ケーブル解除側の位置決め歯62dに係合し1変速段の解除動作が終了する。この状態を図12に示す。図12では、位置決め体54が図4に比べて1変速段分ケーブル解除方向に回転している。
【0050】
この状態では、図6に示すように、レバー部材36の第1及び第2接触部45a,45bが駆動部材42の第1及び第2被接触部42a,42bに接触するように、第1及び第2接触部45a,45b並びに第1及び第2被接触部42a,42bは形成されている。
【0051】
この状態で、レバー部材36をさらに続けて第1方向に揺動させると、図7に示すように、第1接触部45aは、第1被接触部42aから離反し、第2接触部45bが第2被接触部42bに接触した状態でレバー部材36が駆動部材42を押圧してさらに図7反時計回りに揺動させる。これにより、第1アーム部材70がさらに位置決め体54から離反する方向に揺動する。
【0052】
第1アーム部材70がさらに位置決め体54から離反する方向に揺動すると、図13及び図14に示すように、前述した動作と同様に動作部71bが位置決め爪56を第1解放位置に揺動させ、位置決め体54がケーブル解除方向に回転し、さらに位置決め歯62bが回動防止爪57を押圧して回動防止爪57を所定範囲揺動させ、動作部71bと位置決め爪56との係合を解除する。この結果、位置決め歯62eに位置決め爪56が接触するまでさらに1変速段ケーブル解除方向に位置決め体54が回転する。
【0053】
この2段目の解除操作のとき、第2接触部45bは、第1接触部45aより駆動部材42の揺動中心である第1軸芯X1に接近した第2非接触部42bで駆動部材42を押圧するので、第1接触部45aで押圧するときの腕の長さ(距離R1)より第2接触部45bで押圧するときの腕の長さ(距離R2)が短くなる。このため、ばね部材74の付勢力に抗して第1アーム部材70及び駆動部材42の回動に要する、レバー部材36の操作力が大きくなり、2段目の解除操作が急に重くなる。具体的には、1段解除の操作時にもレバー部材36の操作ストロークに応じて操作に要する力は徐々に大きくなるが、第2接触部45bが駆動部材42を押し始めた時点、すなわち2段目の解除操作に入った時点で操作力が不連続に変化する。このような操作力の不連続な変化でライダーは1段分のケーブル解除操作が完了したことを認識できる。このため、操作が急に重くなった時点でレバー部材36による変速操作を終わることにより、1段の解除操作を確実に行える。このとき、駆動部材42とレバー部材36とは図7に示すような状態になる。
【0054】
また、レバー部材36が図5に示す中立位置から第2方向に操作されると、図8に示すように、レバー部材36は、揺動軸66を中心に図8時計回りに揺動する。レバー部材36が図8時計回りに揺動すると、その揺動により第3接触部45cが駆動部材42の第3被接触部42cに接触した状態でばね部材74の付勢力に抗して駆動部材42を押圧し、駆動部材42を図5反時計回りに揺動させる。駆動部材42が揺動すると、第1方向の操作と同様に揺動軸67を介して第1アーム部材70が位置決め体54から離反する方向に第1軸芯X1回りに図4時計回りに揺動する。第1アーム部材70が図4時計回りに揺動すると、前述した動作と同様に図12に示す位置まで揺動すると、位置決め体54が図4に比べて1変速段分ケーブル解除方向に回転する。
【0055】
この状態では、図8に示すように、レバー部材36の第3及び第4接触部45c,45dが駆動部材42の第3及び第4被接触部42c,42dに接触するように第3及び第4接触部45c,45d並びに第3及び第4被接触部42c,42dは形成されている。
【0056】
この状態で、レバー部材36をさらに続けて第2方向に揺動させると、図9に示すように、第3接触部45cは、第3被接触部42cから離反し、第4接触部45dが第4被接触部42dに接触した状態でレバー部材36が駆動部材42を押圧してさらに図9反時計回りに揺動させる。これにより、第1アーム部材70がさらに位置決め体54から離反する方向に揺動する。
【0057】
第1アーム部材70がさらに位置決め体54から離反する方向に揺動すると、位置決め歯62eに位置決め爪56が接触するまでさらに1変速段ケーブル解除方向に位置決め体54が回転する。
【0058】
この2段目の解除操作のとき、第4接触部45dも、第3接触部45cより駆動部材42の揺動中心である第1軸芯X1に接近した第4被接触部42dで駆動部材42を押圧するので、第3接触部45cで押圧するときの腕の長さ(距離R3)より第4接触部45dで押圧するときの腕の長さ(距離R4)が短くなる。このため、ばね部材74の付勢力に抗して第1アーム部材70及び駆動部材42の回動に要する、レバー部材36の操作力が大きくなり、2段目の解除操作が急に重くなる。このような不連続な操作力の変化でライダーは1段分のケーブル解除操作が完了したことを認識できる。このため、操作が急に重くなった時点でレバー部材36による変速操作を終わることにより、1段の解除操作をやはり確実に行える。このとき、駆動部材42とレバー部材36とは図9に示すような状態になる。
【0059】
レバー部材36から手を離して解除操作を終了すると、ばね部材74により付勢された第2アーム部材71が図4に示す位置まで戻る。このとき、位置決め爪56の規制突起56cの外周部に接触しながら図4の位置に戻るが、第2アーム部材71は位置決め爪56に対して何ら作用しない。また、回動防止爪57の解除カム部57cは、この状態では規制突起56cに隠れるように形成されているので、回動防止爪57にも何ら作用しない。このため、ケーブル解除動作が行われることはない。
【0060】
ケーブル巻取方向の動作は以下の通りである。
【0061】
巻取レバー38を操作開始位置から操作終了位置の方向に操作すると、送り爪59が送り歯64を押圧して位置決め体54がケーブル巻取方向(図4反時計回りの方向)に回転する。すると、位置決め爪56に位置決め歯62が接触して位置決め爪56を第1解放位置側に押圧する。しかし、押圧した位置決め歯62が位置決め爪56を通過すると、位置決め歯56は、第1係合位置に戻る。巻取レバー38の操作終了位置まで操作すると、たとえば4段の多段巻取動作を行える。このケーブル巻取方向の操作では、操作力は1段変速操作の場合と多段変速操作の場合とで変化しない。
【0062】
ここでは、支持軸31から離反した位置にある駆動機構39の第2アーム部材71に並べて配置された複数の動作部71a,71bを位置決め爪56に係合することにより、位置決め爪56を第1解放位置に揺動させ、回動防止爪57の所定範囲の移動により、第2アーム部材71と位置決め爪56との係合を解除して位置決め爪56を第1係合位置に揺動させるようにしたので、位置決め体54や巻取体32が配置される支持軸31に多段解除のための構造が配置されない。このため、支持軸31の軸方向長さの増加を抑えることができ、リア変速操作部16の厚みを厚くすることなく多段解除できるようになる。
【0063】
また、第1及び第2接触部45a,45b並びに第3及び第4接触部45c,45dは、駆動部材42の揺動中心(第1軸芯X1)からの距離が異なる位置で駆動部材42に接触するので、駆動部材42の揺動中心からの距離が遠い方の第1又は第3接触部45a,45cが駆動部材42に接触したときの方が、近い方の第2又は第4接触部45b,45dが接触したときより腕の長さが長くなり、弱い力で駆動部材42を揺動させることができる。このため、距離が遠い第1又は第3接触部45a,45cで揺動させたときの操作力が軽くなり、いずれの接触部が接触するかによって、第2揺動部材を操作する力が変化する。したがって、1段の操作のときから2段の連続操作を行う際に異なる接触部で接触するように、第1及び第2接触部45a,45b並びに第3及第4接触部45c,45dの位置を設定することにより、1段の操作が終了した時点でレバー部材36の操作力を変化させることができる。これにより、操作力が変化した時点で操作をやめることにより1段の操作を行え、変化後も操作をつづけることにより、複数段にわたる操作を行える。このため、1段の操作と、複数段にわたる操作とを確実に行えるようになる。
【0064】
<他の実施形態>
(a)前記実施形態では、接触部を第2揺動部材(レバー部材36)に設けた突出部で構成したが、第1揺動部材(駆動部材42)側に突出部を設け、接触部を平坦な面等で構成してもよい。
【0065】
(b)前記実施形態では、ケーブル解除方向の操作を第1方向と第2方向との両方向いずれの操作によっても行えるようにしたが、一方向の操作だけでケーブル解除方向の操作を行うようにしてもよい。
【0066】
(c)前記実施形態では、第1アーム部材70と駆動部材42とを揺動軸67を介して一体回転可能に連結したが、第1アーム部材70と駆動部材42とを一体で形成してもよい。
【0067】
(d)前記実施形態では、巻取レバー38では1段操作と多段操作とで操作力が変化しないように構成したが、巻取レバー38でも操作力を変化させるようにしてもよい。
【0068】
たとえば、図15及び図16に示すように、巻取レバー138は、送り爪59が揺動軸69を介して揺動自在に装着された第1レバー部材(第1揺動部材の一例)138aと、第1レバー部材138aと異なる位置で取付ブラケット141に揺動自在に支持された第2レバー部材(第2揺動部材の一例)138bとを有している。第1レバー部材138aは、支持軸131に揺動自在に支持されている。第1レバー部材138aは図示しないばね部材により操作開始位置側に付勢されている。第2レバー部材138bは、支持軸131と離反した位置で取付ブラケット141に立設された揺動軸180に揺動自在に支持されている。揺動軸180は、支持軸131の第1レバー部材138aの先端と逆側に配置されている。第2レバー部材138bは、第1レバー部材138aに接触可能な第1及び第2接触部145a,145bを有している。第1接触部145aは、第1レバー部材138aの揺動中心である支持軸131の第3軸芯X3との距離が第2接触部145bより離れた位置で第1レバー部材138aに接触する。また、第2レバー部材138bを操作すると、最初に第1接触部145aが接触し、1段の変速操作が終わると、第2接触部145bが接触する。これにより、前記実施形態と同様に巻取操作でも、1段の変速操作と2段目以降の変速操作とで操作力が変化する。具体的には、1段の変速操作を軽い操作力で行え、2段目以降は操作が重くなる。
【0069】
(e)前記実施形態では、フロントディレーラとリアディレーラとを有する外装変速装置の変速操作装置について例示したが、内装変速ハブを有する内装変速装置の変速操作装置にも本発明を適用できる。また、本発明に係る自転車用操作装置は変速操作装置に限定されず、自転車に関する操作を複数段階に操作するものであればどのような操作装置でもよい。たとえば、サスペンションの特性(たとえば、硬軟)を複数段階に操作する装置にも本発明を適用できる。
【0070】
(f)前記実施形態では、可動部材としてケーブルを巻き取る巻取体32を例示したが、本発明にかかる可動部材としては、ケーブルに限らず例えば油圧による変速システムにおける油圧ピストンであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態が装着された自転車の側面図。
【図2】本発明の一実施形態によるリア変速操作部の斜視図。
【図3】その一部を示す分解斜視図。
【図4】位置決め爪が第1係合位置にあるときのリア変速操作部の平面図。
【図5】解除レバーが中立位置にあるときのリア変速操作部の背面図。
【図6】解除レバーが1段階第1方向に移動したときのリア変速操作部の背面図。
【図7】解除レバーが2段階第1方向に移動したときのリア変速操作部の背面図。
【図8】解除レバーが1段階第2方向に移動したときのリア変速操作部の背面図。
【図9】解除レバーが2段階第2方向に移動したときのリア変速操作部の背面図。
【図10】ケーブル解除動作を示す平面部分図。
【図11】ケーブル解除動作を示す平面部分図。
【図12】ケーブル解除動作を示す平面部分図。
【図13】ケーブル解除動作を示す平面部分図。
【図14】ケーブル解除動作を示す平面部分図。
【図15】他の実施形態の図4に相当する図。
【図16】他の実施形態の1段巻取状態を示す図4に相当する図。
【符号の説明】
【0072】
15,16 フロント及びリア変速操作部(自転車用操作装置の一例)
30 固定部材
32 巻取体(可動部材の一例)
34 位置保持・解放機構(位置決め機構の一例)
35 解除レバー(第1及び第2揺動部材の一例)
36 レバー部材(第2揺動部材の一例)
42 駆動部材(第1揺動部材の一例)
45a〜45d 第1〜第4接触部
X1 第1軸芯(第1軸の一例)
X2 第2軸芯(第2軸の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車に取り付け可能な自転車用操作装置であって、
前記自転車に取り付け可能な固定部材と、
前記固定部材に可動的に連結され、予め決められた複数の保持位置で保持される可動部材と、
前記可動部材を前記複数の保持位置のいずれか一つに位置決めする位置決め機構と、
第1軸回りに揺動可能であり、前記位置決め機構を動作可能な第1揺動部材と、
第2軸回りに揺動可能であり、前記第1揺動部材の揺動中心からの距離が異なる位置で前記第1揺動部材に接触可能な第1及び第2接触部を有し、前記第2軸回りの第1方向への揺動に応じて前記第1及び第2接触部のいずれかが前記第1揺動部材に接触して前記第1揺動部材を揺動させる第2揺動部材と、
を備えた自転車用操作装置。
【請求項2】
前記第1接触部は前記第2接触部より前記揺動中心から離れた位置で前記第1揺動部材に接触し、
前記第2揺動部材が前記第1方向に揺動するとき最初に第1接触部が前記第1揺動部材を揺動させ、続いて第2接触部が前記第1揺動部材を揺動させる、請求項1に記載の自転車用操作装置。
【請求項3】
前記第1接触部による前記第1揺動部材の揺動により、前記可動部材の保持位置は一つ移動する、請求項2に記載の自転車用操作装置。
【請求項4】
前記第2接触部による前記第1揺動部材の揺動により、前記可動部材の保持位置はさらに一つ移動する、請求項3に記載の自転車用操作装置。
【請求項5】
前記第2揺動部材は、前記第1方向と異なる第2方向にも揺動可能であり、かつ第2方向の揺動に応じて前記第1揺動部材を揺動させる、請求項1から4のいずれか1項に記載の自転車用操作装置。
【請求項6】
前記第2揺動部材は、前記第1揺動部材の揺動中心からの距離が異なる位置で前記第1揺動部材に接触可能な第3及び第4接触部をさらに有し、前記第2方向の揺動に応じて前記第3及び第4接触部のいずれかが前記第1揺動部材に接触して前記第1揺動部材を揺動させる、請求項5に記載の自転車用操作装置。
【請求項7】
前記第3接触部は前記第4接触部より前記揺動中心から離れた位置で前記第1揺動部材に接触し、
前記第2揺動部材が前記第2方向に揺動するとき最初に第3接触部が前記第1揺動部材を揺動させ、続いて第4接触部が前記第1揺動部材を揺動させる、請求項6に記載の自転車用操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−265586(P2008−265586A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112562(P2007−112562)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】