説明

臭気成分を含む排ガスの処理方法

【課題】 排ガス中の臭気成分を、触媒の存在下に、排ガス温度が150℃以上200℃未満という低温度域で、効率よく分解除去する排ガスの処理方法を提供する。
【解決手段】 触媒として、(A)Ti−Si複合酸化物および/またはTi−Zr複合酸化物、および(B)Mn、Cu、Cr、FeおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む触媒を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は臭気成分を含む排ガスの処理方法に関し、詳しくは臭気成分を含む排ガスを150℃以上200℃未満という低温度域で処理して臭気成分を効率よく除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却炉などから排出される排ガス中には窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、アルデヒド類、硫化物類、脂肪酸類、アミン類、炭化水素類などが含まれ、これらの物質は微量であっても極めて臭気性が高く、これらの物質をいかに除去するかが課題となっている。これらの物質の除去には、一般的には、アルカリスクラバーにより排ガスを脱硫することで臭気を除く方法、排ガスにアンモニアを添加し脱硝する方法などが採用されている。しかしなから、通常用いられる脱硝触媒では、アルデヒド類、硫化物類、脂肪酸類、アミン類などの脱臭効率が低いため、これらの物質を処理するためには、脱硝処理の後、さらに脱臭用の酸化触媒を必要とするものである。
【0003】
脱臭触媒としては、例えば、チタン(Ti)およびケイ素(Si)からなる二元系複合酸化物を担体として、これに銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、および鉛(Pb)からなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物を担持してなるハニカム型脱臭触媒が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、排ガスの脱臭および脱硝処理を同時に行う触媒として、TiおよびSiからなる二元系複合酸化物を担体として、これにCu、Cr、Fe、V、W、Mn、Ni、Co、Mo、およびPbからなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)およびイリジウム(Ir)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の貴金属またはその化合物である触媒C成分とを含有することを特徴とする排ガスの脱臭および脱硝用触媒が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかし、特許文献1、2には、それぞれの触媒を200℃未満という低温度域で使用した場合の脱臭性能の発現に関しての開示はない。
【0006】
一方、火力発電所、ゴミ焼却炉などから排出される排ガス中の窒素酸化物を除去する方法としては、アンモニアまたは尿素などの還元剤を用いて排ガス中の窒素酸化物を触媒上で還元分解し、無害な窒素と水とに分解する選択的触媒還元(SCR)法が一般的である。これに用いられる窒素酸化物除去用触媒(脱硝触媒)としては、チタニア担体、TiおよびSiからなる二元複合酸化物担体などのTiを含む酸化物担体にV、W、Moなどの金属酸化物を担持してなる触媒が実用化されているが、これらの触媒は、その使用温度が200℃以上、通常は250℃以上の高温下で効率的な脱硝機能を発揮するよう設計されてなるものである。一方、近年、廃棄物のサーマルリサイクル利用が検討され、廃棄物を燃焼して得られる熱エネルギーを各種用途に利用することが図られている。この各種のサーマルリサイクル設備から排出されるガス中の窒素酸化物および臭気成分を除去する要求が多くなっているが、この種の設備の排ガス温度は200℃以下と低温であり、上記した従来の高温型の脱硝触媒では充分脱硝および脱臭の両機能を発揮できないという問題がある。
【0007】
従来、この低温型の脱硝触媒として、種々の触媒系が提案されているが、その中で、チタン酸化物を担体とし、マンガン(Mn)などの卑金属酸化物を主たる活性成分として担持してなる触媒としては、硝酸根の含有量を0.1質量%以下と極力少なくしたチタン酸化物担体にマンガン酸化物を担持した触媒が提案されている(特許文献3)。ただし、脱臭機能については全く記載されていない。
【0008】
また、200〜500℃の温度域でアンモニアの存在下脱硝する触媒として、TiおよびSiからなる二元系複合酸化物を担体として、これにV、W、Mo、Mn、Cu、Cr、CeおよびSnからなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物を担持してなる触媒が提案されている(特許文献4参照)。しかし、この文献には上記触媒系を200℃未満の温度域で使用した場合の脱硝性能に関しての開示はない。
【0009】
また、200〜250℃の温度域で炭化水素類、アンモニアなどの還元剤の存在下、排ガス流れに対して上流側にTi−Mn系、Ti−Cr系などのNOx酸化触媒を配置し、その後流側に脱硝触媒を配置してなる触媒装置を用いて脱硝する方法が提案されている(特許文献5参照)。しかし、この文献にはTi−Mn系、Ti−Cr系などのNO酸化触媒について、触媒組成、触媒調製法などに関する具体的記載が無く、この触媒が如何なる触媒か特定できない。
【0010】
さらに、本発明者らの研究によれば、臭気成分として、例えば、アルデヒド類を含む排ガスを上記のような公知の触媒系を用いて200℃未満という低温度域で処理しようとすると、アルデヒド類は高い分解率で除去することができるが、酢酸のような望ましくない化合物が副生し、その更なる処理が必要となることがあることが判明している。
【0011】
【特許文献1】特公平4−9581号公報
【特許文献2】特許第3091820号公報
【特許文献3】特開平9−155190号公報
【特許文献4】特公平5−87291号公報(特許請求の範囲、実施例9、10、11)
【特許文献5】特開平8−103636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、アンモニアなどの還元剤の不存在下に、臭気成分を含む排ガスを処理するにあたり、排ガス温度が150℃以上200℃未満という低温度域で、効率よく臭気成分を分解除去できる方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の課題は、アルデヒド類などのような臭気成分を含む排ガスの場合も、酢酸などの望ましくない化合物の副生を抑制しながら、150℃以上200℃未満という低温度域にて、脱臭処理を効率よく行えるようにした、臭気成分を含む排ガスの処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らの研究によれば、脱臭触媒として、(A)チタン酸化物、チタンとケイ素との複合酸化物および/またはチタンとジルコニウムとの複合酸化物、および(B)マンガン、銅、クロム、鉄およびニッケルから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む触媒を用いると上記課題が解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、排ガス中の臭気成分を触媒の存在下に分解除去する排ガスの処理方法において、排ガスを150℃以上200℃未満の温度で、(A)チタン酸化物、チタンとケイ素との複合酸化物および/またはチタンとジルコニウムとの複合酸化物、および(B)マンガン、銅、クロム、鉄およびニッケルから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む触媒に接触させることを特徴とする臭気成分を含む排ガスの処理方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法によれば、150℃以上200℃未満という低温度域で、排ガス中に含まれる臭気成分を効率よく分解除去することができる。
【0017】
また、本発明の方法によれば、望ましくない副生物の生成を抑制しながら、例えば、臭気成分としてアセトアルデヒドを含む排ガスの場合、望ましくない酢酸の副生を抑制しながら、臭気成分を含む排ガスを効率よく処理することができる。
【0018】
さらに、本発明の方法によれば、排ガス中の酢酸を高効率に分解除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の「臭気成分」とは、一酸化窒素および二酸化窒素の窒素酸化物(NOx);硫黄酸化物(SOx);アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アクロレインなどのアルデヒド類;硫化水素、メルカプタン、硫化メチルなどの硫化物類;酢酸、酪酸、プロピオン酸、吉草酸などの脂肪酸類;ジメチルアミン、トリメチルアミンなどのアミン類;脂肪族、脂環族、芳香族などの炭化水素類など微量であっても臭気性のあるものを意味する。
【0020】
本発明で用いる脱臭触媒は、(A)チタン酸化物、チタンとケイ素との複合酸化物(以下、Ti−Si複合酸化物という。)および/またはチタンとジルコニウムとの複合酸化物(以下、Ti−Zr複合酸化物という。)、および(B)マンガン、銅、クロム、鉄およびニッケルから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含むものである。なかでも、成分(B)が、マンガンの酸化物か、あるいはマンガンの酸化物と銅、クロム、鉄およびニッケルから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物とからなるものが好適に用いられる。
【0021】
上記成分(A)のうちの、Ti−Si複合酸化物およびTi−Zr複合酸化物はともに一般によく知られているものであり、従来から知られている方法に従って容易に調製することができる。
【0022】
チタン源としては、酸化チタンのほか、焼成してチタン酸化物を生成するものであれば、無機および有機のいずれの化合物も使用することができる。例えば、四塩化チタン、硫酸チタンなどの無機チタン化合物、またはシュウ酸チタン、テトライソプロピルチタネートなどの有機チタン化合物を用いることができる。
【0023】
ケイ素源としては、コロイド状シリカ、水ガラス、微粒子ケイ素、四塩化ケイ素などの無機ケイ素化合物、およびテトラエチルシリケートなどの有機ケイ素化合物を用いることができる。
【0024】
また、ジルコニウム源としては、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウムなどの無機ジルコニウム化合物、およびシュウ酸ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物を用いることができる。
【0025】
上記Ti−Si複合酸化物は、例えば、以下の手順(a)〜(d)によって調製することができる。
(a)シリカゾルとアンモニア水を混合し、硫酸チタンの硫酸水溶液を添加して沈殿を生じさせ、得られた沈殿物を洗浄・乾燥し、次いで300〜700℃で焼成する。
(b)硫酸チタン水溶液にケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、反応して沈殿を生じさせ、得られた沈殿物を洗浄・乾燥し、次いで300〜700℃で焼成する。
(c)四塩化チタンの水−アルコール溶液にエチルシリケート(テトラエトキシシラン)を添加し、次いで加水分解することにより沈殿を生じさせ、得られた沈殿物を洗浄・乾燥し、次いで300〜700℃で焼成する。
(d)酸化塩化チタン(オキシ三塩化チタン)とエチルシリケートとの水−アルコール溶液に、アンモニアを加えて沈殿を生じさせ、得られた沈殿物を洗浄・乾燥し、次いで300〜700℃で焼成する。
【0026】
上記の方法のうち、(a)の方法が特に好ましく、具体的には、アンモニア源、ケイ素源およびチタン源を水溶液またはゾル状態で各量が所定量(アンモニア源はNHに、ケイ素源はSiOに、そしてチタン源はTiOに、それぞれ換算)になるように取る。ついで、アンモニア源とケイ素源とを混合し、この混合液を10〜100℃に保ちながら、この混合液にチタン源を滴下して、pH2〜10で1〜50時間保持することにより、チタン−ケイ素の共沈物を生成し、この沈殿物をろ過し、充分に洗浄した後、80〜140℃で10分間から3時間乾燥し、300〜700℃で1〜10時間焼成することにより、目的とするTi−Si複合酸化物を得ることができる。
【0027】
また、Ti−Zr複合酸化物の調製は上記Ti−Si複合酸化物の調製法に準じて行えばよく、シリカ源の代わりに水溶性ジルコニウム化合物などをジルコニウム源として使用して調製すればよい。
【0028】
上記Ti−Si複合酸化物またはTi−Zr複合酸化物における、ケイ素またはジルコニウムの酸化物の含有量は、チタン酸化物に対し、0.5 60モル%、好ましくは1.5〜60モル%、より好ましくは1.5〜45モル%である(チタン、ケイ素およびジルコニウムはそれぞれTiO、SiOおよびZrOとして換算)。
【0029】
成分(B)のマンガン源としては、マンガン酸化物のほかに、焼成によって酸化物を生成するものであれば、無機および有機のいずれの化合物も用いることができる。例えば、マンガンを含む水酸化物、アンモニウム塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸などを用いることができる。
【0030】
また、銅、クロム、鉄およびニッケル源としては、各々の酸化物のほかに、焼成によって酸化物を生成するものであれば、無機および有機のいずれの化合物も用いることができる。例えば、各々の元素を含む水酸化物、アンモニウム塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸などを用いることができる。
【0031】
本発明の上記成分(A)、(B)を含む触媒の調製法としては、通常の含浸担持法、混練法、浸漬法など通常この分野で採用されている公知の方法から適宜選択することができる。例えば、成分(A)および(B)の混合物の粉体を得た後、所望の形状に成形する。その際、それぞれの成分を粉体またはスラリーの状態で混合して調製してもよいし、各々の塩類の溶液の混合物から共沈させることによって調製してもよい。また、成分(A)に成分(B)を担持させる方法としては、成分(A)の粉体またはスラリーの混合物に成分(B)の塩類またはその溶液を添加する方法や、成分(A)からなる成形体に成分(B)の塩類の溶液を含浸担持させる方法を用いることができる。
【0032】
本発明の触媒の組成については、成分(B)は、成分(A)の質量基準で、0.1〜40質量%、好ましくは1〜40質量%である(Ti−Si複合酸化物、Ti−Zr複合酸化物は全質量、チタン、マンガン、銅、クロム、鉄およびニッケルは、それぞれ、TiO、MnO、CuO、Cr、FeおよびNiOとして換算)。成分(B)の含有量が、成分(A)の0.1質量%より少ないと脱硝活性が低く、一方40質量%を超えてもそれほど大きな活性の向上は認められず、場合によっては活性が低下することもある。
【0033】
本発明の触媒のなかでも、前記のとおり、次の組成の触媒、特に<例1>の触媒が好適に用いられる。
<例1>成分(A):Ti−Si複合酸化物および/またはTi−Zr複合酸化物;成分(B):マンガン酸化物
<例2>成分(A):Ti−Si複合酸化物および/またはTi−Zr複合酸化物;成分(B):マンガン酸化物と銅、クロム、鉄およびニッケルから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物との組合せ
上記脱臭触媒の水銀圧入法で測定した全細孔容積は、0.2〜0.6cm3 /gの範囲にあることが好ましい。触媒の全細孔容積が0.2cm3/gよりも小さいと脱硝活性が低く、一方0.6cm3/gを超えると触媒の機械的強度が低くなるため、好ましくない。脱硝触媒のBET法による比表面積は30〜250m2/g、好ましくは40〜200m2/gの範囲にあるのがよい。触媒の比表面積が30m2/gより小さいと脱硝活性が低くなり、一方250m2/gを超えてもそれほど大きな活性の向上は認められず、場合によっては触媒被毒成分の蓄積量が多くなって、触媒寿命に悪影響を及ぼすこともある。
【0034】
したがって、上記脱臭触媒においては、成分(B)、特にマンガン酸化物を成分(A)の0.1〜40質量%の割合で含み、しかも、水銀圧入法で測定した全細孔容積が0.2〜0.6cm3/gの範囲にあり、BET法による比表面積が30〜250m2/gの範囲にある触媒が特に好適に用いられる。
【0035】
上記脱臭触媒の形状については特に制限はなく、板状、波板状、網状、ハニカム状、円柱状、円筒状などのうちから選んだ所望の形状に成型して用いてもよく、またアルミナ、シリカ、コーディライト、チタニア、ステンレス金属などよりなる板状、波板状、網状、ハニカム状、円柱状、円筒状などのうちから選んだ所望の形状の担体に担持して使用してもよい。
【0036】
上記脱臭触媒は、臭気成分を含む各種排ガスの処理に用いられる。排ガスの組成については特に制限はないが、ボイラ、焼却炉、ガスタービン、ディーゼルエンジンおよび各種工業プロセスから排出される、アルデヒド類、硫化物類、脂肪酸類、アミン類、炭化水素類、二酸化窒素などの脱臭成分の分解活性に優れるため、これら臭気成分を含む排ガスの処理に好適に用いられる。
【0037】
本発明の方法によれば、脱臭成分を含む排ガスを、150℃以上200℃未満の温度で上記脱臭触媒に接触させて脱臭処理を行う。この脱臭処理の条件については、排ガスの温度を150℃以上200℃未満の範囲に維持する点を除けば、脱臭処理に一般に用いられている条件から適宜選択して決定することができる。
【0038】
排ガスの空間速度は、通常、100〜100000Hr- 1(STP)であり、好ましくは200〜50000Hr- 1(STP)である。100Hr- 1未満では、処理装置が大きくなりすぎるため非効率となり、一方100000Hr- 1を超えると分解効率が低下する。
【0039】
本発明の脱臭処理を行う際の排ガスの温度は、150℃以上200℃未満であり、好ましくは170〜200℃未満である。排ガス温度が150℃より低いと脱硝効率が低下して好ましくない。
【0040】
なお、排ガス中の硫黄酸化物(SOx)濃度は1%以下であるのがよい。排ガス中のSOx濃度が1%を超えると触媒の活性劣化が大きくなるからである。
【0041】
本発明の有利な実施態様を示している以下の実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
【触媒調製例1】
【0042】
10質量%アンモニア水700リットルにスノーテックス−20(日産化学(株)製シリカゾル、約20質量%のSiO含有)21.3kgを加え、攪拌、混合した後、硫酸チタニルの硫酸溶液(TiOとして125g/リットル、硫酸濃度550g/リットル)340リットルを攪拌しながら徐々に滴下した。得られたゲルを20時間放置した後、ろ過、水洗し、続いて150℃で10時間乾燥した。これを500℃で焼成し、粉体を得た。得られた粉体の組成は、TiO:SiO=8.5:1.5(モル比)であり、粉体のX線回折チャートではTiOやSiOの明らかな固有ピークは認められず、ブロードな回折ピークによって非晶質な微細構造を有するチタンとケイ素との複合酸化物(Ti−Si複合酸化物)であることが確認された。
【0043】
上記Ti−Si複合酸化物10kgに有機バインダー(デンプン0.5kg)を加えて混合し、さらに適量の水を加えつつブレンダーでよく混合した後、連続ニーダーで充分混練りし、ハニカム状に押出成形した。形状は目開き4.35mm、肉厚0.6mm、長さ500mmの格子状に成形した。次いで、得られた成形物を80℃で乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下において焼成した。
【0044】
上記成形体を硝酸マンガン[Mn(NO・6HO]水溶液(300g−Mn/リットル)に含浸し、その後120℃で乾燥し、420℃で3時間焼成して触媒(a)を得た。この触媒(a)の組成は、Ti−Si複合酸化物:MnO=75:25(質量比)(成分(B)/成分(A)=33.3質量%)であった。
【触媒調製例2】
【0045】
触媒調製例1で得られたTi−Si複合酸化物10kgに硝酸マンガン[Mn(NO・6HO]水溶液(200g−Mn/リットル)を9.15kg加え、さらに適量の水を加えつつブレンダーでよく混合した後、連続ニーダーで充分混練りし、ハニカム状に押出成形した。形状は目開き4.35mm、肉厚0.6mm、長さ500mmの格子状に成形した。次いで、得られた成形体を80℃で乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下に焼成して触媒(b)を得た。この触媒(b)の組成は、Ti−Si複合酸化物:MnO=75:25(質量比)(成分(B)/成分(A)=33.3質量%)であった。
【触媒調製例3】
【0046】
触媒調製例1において、硝酸マンガンの使用量を変更した以外は同様にして、Ti−Si複合酸化物:MnO=85:15(質量比)(成分(B)/成分(A)=17.6質量%)の組成の触媒(c)を得た。
【触媒調製例4】
【0047】
触媒調製例1において、硝酸マンガンに替えて硝酸銅(Cu(NO・3HO)を用いた以外は同様にして、Ti−Si複合酸化物:CuO=90:10(質量比)(成分(B)/成分(A)=11.1質量%)の組成の触媒(d)を得た。
【触媒調製例5】
【0048】
触媒調製例1において、硝酸マンガンに替えて硝酸クロム(Cr(NO・9HO)を用いた以外は同様にして、Ti−Si複合酸化物:Cr=90:10(質量比)(成分(B)/成分(A)=11.1質量%)の組成の触媒(e)を得た。
【触媒調製例6】
【0049】
触媒調製例1において、硝酸マンガンに替えて硝酸鉄(Fe(NO・9HO)を用いた以外は同様にして、Ti−Si複合酸化物:Fe=90:10(質量比)(成分(B)/成分(A)=11.1質量%)の組成の触媒(f)を得た。
【触媒調製例7】
【0050】
8リットルの水にメタバナジン酸アンモニウム1.29kg、パラタングステン酸アンモニウム1.12kg、シュウ酸1.67kgおよびモノエタノールアミン0.85kgを混合して溶解させ、均一なバナジウムおよびタングステン含有溶液を調製した。
【0051】
触媒調製例1で得られたTi−Si複合酸化物18kgにニーダーに投入した後、有機バインダー(デンプン0.5kg)とともに、上記バナジウムおよびタングステン含有溶液全量を加え、よく攪拌した。さらに適量の水を加えつつブレンダーでよく混合した後、連続ニーダーで充分混練りし、ハニカム状に押出成形した。形状は目開き4.35mm、肉厚0.6mm、長さ500mmの格子状に成形した。次いで、得られた成形物を60℃で乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下において焼成して比較用触媒(g)を得た。
【0052】
この比較用触媒(g)の組成は、Ti−Si複合酸化物:V:W= 90:5:5(質量比)であった。
【触媒調製例8】
【0053】
触媒調製例7で得られた比較用触媒(f)の成形体を硝酸白金水溶液に含浸し、その後100℃で乾燥し、450℃で3時間焼成して比較用触媒(h)を得た。この比較用触媒(h)の組成は、Ti−Si複合酸化物:V:W:Pt=89.8:5:5:0.2(質量比)であった。
【触媒調製例9】
【0054】
触媒調製例7で得られた比較用触媒(f)の成形体を硝酸パラジウムに含浸し、その後100℃で乾燥し、450℃で3時間焼成して比較用触媒(i)を得た。この比較用触媒(i)の組成は、Ti−Si複合酸化物:V:W:Pd=89.8:5:5:0.2(質量比)であった。
【実施例1】
【0055】
触媒調製例1〜5で得られた触媒(a)〜(f)、および比較用触媒(g)〜(i)について活性試験を行った。各ハニカム型触媒を外形15.5mm(3×3セル)、長さ126mmに切断し、これを直径35mmの触媒反応装置にガスの流れ方向に対して平行となるように充填した。この装置に下記組成−1と組成−2との2種類の合成ガスを0.5Nm3/hで流した。
(ガス組成−1)アセトアルデヒド:50ppm、SO:0ppm、HO:10%、N:バランス
(ガス組成−2)酢酸:50ppm、SO:0ppm、HO:10%、N:バランス
(ガス温度)150℃、180℃、195℃
NOx除去率、アセトアルデヒド除去率および酢酸除去率、それに酢酸生成率は、下記式に従って求めた。
NOx除去率(%)=[(反応器入口NOx濃度)−(反応器出口NOx濃度)]÷(反応器入口NOx濃度)×100
アセトアルデヒド除去率(%)=[(反応器入口アセトアルデヒド濃度)−(反応器出口アセトアルデヒド濃度)]÷(反応器入口アセトアルデヒド濃度)×100
酢酸除去率(%)=[(反応器入口酢酸濃度)−(反応器出口酢酸濃度)]÷(反応器入口酢酸濃度)×100
酢酸生成率(%)=(反応器出口酢酸濃度)÷(反応器入口アセトアルデヒド濃度)×100
ガス組成−1およびガス組成−2の結果をそれぞれ表1および表2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の臭気成分を触媒の存在下に分解除去する排ガスの処理方法において、排ガスを150℃以上200℃未満の温度で、(A)チタン酸化物、チタンとケイ素との複合酸化物および/またはチタンとジルコニウムとの複合酸化物、および(B)マンガン、銅、クロム、鉄およびニッケルから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む触媒に接触させることを特徴とする臭気成分を含む排ガスの処理方法。
【請求項2】
成分(B)がマンガンの酸化物である請求項1記載の臭気成分を含む排ガスの処理方法。
【請求項3】
成分(B)がマンガンの酸化物と銅、クロム、鉄およびニッケルから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物とからなる請求項1記載の臭気成分を含む排ガスの処理方法。
【請求項4】
臭気成分がアルデヒド類、硫化物類、脂肪酸類、アミン類、炭化水素類および二酸化窒素から選ばれる少なくとも1種である請求項1、2または3に記載の排ガスの処理方法。


【公開番号】特開2006−68662(P2006−68662A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256699(P2004−256699)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】