説明

舗装方法、及び保水性舗装

【課題】高い透排水機能を有しつつ、保水性能を高めることができる舗装方法、保水性舗装を提供する。
【解決手段】骨材21及びセメントペースト22(又はモルタル)からなるポーラスコンクリート2の舗設に際して、吸水ポリマーが水分散した液状の保水剤3をポーラスコンクリート2に0.25〜3l/m2で散布することで、施工性が良好であり、保水性が高く且つ保水力を長期的に維持することができる保水性舗装1を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にポーラスコンクリート舗装の施工に適した舗装方法、並びに保水性舗装に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、透水性、排水性、保水性等の機能を有する舗装体やその舗装方法、保水材等が各種提案されている。例えば、母体コンクリートに保水性モルタルを付着した舗装材を締め固めることによって形成される保水性舗装体(特許文献1参照)、多孔質コンクリート成形体の空隙中にセメントと多孔質フィラーとを混合したスラリー状充填材を注入して形成される保水性舗装体及びその形成方法(特許文献2参照)、ポルトランドセメント、軽量気泡コンクリート廃材粉砕物、砂利、水を混練し、或いはポルトランドセメント、土、砂利、水を混練し、その造塊された状態のコンクリートを敷き詰める舗装方法(特許文献3、4参照)、不織布、織布、シート、編体、紐体等として使用される所定の吸水倍率の透水性土木・建築用保水材(特許文献5参照)等が、これまでなされてきている技術として挙げられる。さらに、ポーラスコンクリート等の無機多孔質材料における内部の連続空隙の内壁に付着させることで保水性を付与するための、所定の吸水倍率を有する水分散性又は水溶性の吸水性材料からなる無機多孔質材料用保水性付与剤も考えられている(特許文献6参照)。
【特許文献1】特開2003−74005公報
【特許文献2】特開2001−303404公報
【特許文献3】特開平11−158804号公報
【特許文献4】特開平10−82011号公報
【特許文献5】特開2003−213615公報
【特許文献6】特開2003−300786公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、保水性の向上を目的とした舗装体は透排水性能が低い一方、透排水性を向上させると保水性能が低下するというように、保水性と透排水性の両立は一般に困難である。また、上述のような従来の施工方法は工程が煩雑であり、特殊な材料を使用したのでは汎用性に劣り不経済である。さらに、緑化・園芸用に適用される舗装体はそのまま道路用等に適用することはできない。また、透排水性の高いポーラスコンクリートを使用する場合、舗設中の乾燥が著しく、保水性を高めるのが一般に困難であった。そのため、ポーラスコンクリートを利用した舗装を、特に都市部等で問題となっているヒートアイランド現象を低減させるために適用するのは困難であった。
【0004】
また、吸水性材料からなる無機多孔質材料用保水性付与剤に関しては、上記特許文献7において、有効な成分等は開示されているものの、ポーラスコンクリートに対して特化した有効な吸水性材料の有効量や散布量、或いは有効な散布方法やそれらに基づいて得られる有効な保水性舗装自体に関しては明らかにされていない。
【0005】
そこで本発明は、以上のような問題に鑑みて、施工が簡単であり、保水性と排水性を両立させることができる舗装方法の提供と、透排水機能を有する保水性舗装の提供を主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の舗装方法は、骨材及びセメントペースト又はモルタルからなるポーラスコンクリートの舗設に際して、吸水ポリマーの水分散体を含有する液状の保水剤を前記ポーラスコンクリートに散布するに際し、前記保水剤をポーラスコンクリートに対して0.25〜5l/m2以上散布することを特徴としている。
【0007】
斯かる方法であれば、施工後の舗装の主体となるポーラスコンクリートによる透水性能・排水性能は維持しつつ、散布された保水剤の吸水ポリマーが保水性能を発揮するため、保水性と透排水性が両立した優れた舗装を行うことができる。また保水剤は、セメントペースト又はモルタルに付着した状態にあり、骨材同士の空隙を塞ぐこともないため透排水性が阻害されることがなく、施工方法も従来のポーラスコンクリート舗装の場合と大差ないため極めて簡便である。また、保水剤をポーラスコンクリートに対して0.25l/m2以上散布することで、散布性能の低下を防ぎ、実質的に均一な散布と好適な散布量を実現しつつ舗装の保水機能を十分に得ることができる。なお、以上の作用効果と保水剤のポーラスコンクリートからの流出ロス、コスト等を考慮すると、保水剤の散布量は0.25l/m2〜5l/m2とすることが好ましく、より望ましくは0.5l/m2〜4l/m2である。
【0008】
特に、市販されている吸水性ポリマーの水分散体を舗設現場等で調製してポーラスコンクリートに散布するに際しては、保水剤中における吸水性ポリマーの固形分を、0.5〜7重量%とすることが望ましく、例えば市販の前記水分散体における固形分が約9重量%である場合には、保水剤中の水分散体含有率を10〜70重量%に調製して保水剤中における吸水性ポリマーの固形分を、0.9〜6.3重量%とすることが好ましい。
【0009】
なお、本発明において水分散性の吸水性ポリマーは特に制限されるものではないが、例えば、アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート架橋重合体、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体等のポリオキシアルキレン基を有する架橋(共)重合体;(メタ)アクリルアミド/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体、N-ビニルアセトアミド架橋重合体、N-ビニルアセトアミド/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体等のアミド基を有する架橋(共)重合体;ポリアリルアミン架橋体、ポリエチレンイミン架橋体等のアミノ基を有する架橋(共)重合体;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート架橋重合体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体、ビニルアルコール/(メタ)アクリル酸(塩)架橋(共)重合体等のヒドロキシル基を有する架橋(共)重合体;2-アクリルアミド/2-メチルプロパンスルホン酸(塩)架橋重合体、2-アクリルアミド/2-メチルプロパンスルホン酸(塩)/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体、スルホアルキル(メタ)アクリレート(塩)架橋共重合体、スルホアルキル(メタ)アクリレート(塩)/(メタ)アクリル酸(塩)架橋共重合体、スルホン化ポリスチレン架橋体等のスルホン酸(塩)基を有する架橋(共)重合体;ポリビニルスルホン酸架橋体、モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート架橋(共)重合体等のリン酸(塩)基を有する架橋(共)重合体;架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピリジン、澱粉/ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のけん化物、澱粉/ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト共重合架橋体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との反応生成物、イソブチレン/マレイン酸(塩)架橋共重合体、ベタインモノマー(共)重合体、アニオン性モノマーとカチオン性モノマーとの架橋共重合体、等が例示される。これら吸水性ポリマーは、一種類のみを用いてもよいが、二種類以上を併用してもよい。これら吸水性ポリマーのなかでも、特にスルホン酸(塩)基を有する架橋(共)重合体が、長期安定性に優れているため好ましい。
【0010】
特に、吸水ポリマーとしては、ミクロヒドロゲル水性分散体を適用するのが有効である。ここで、ヒドロゲルとは、水溶性又は親水性重合体に架橋構造を付与して得られる実質的に水不溶性且つ水膨潤性の物質の総称であり、ミクロヒドロゲルとは100mm以下の微細粒子径を有するヒドロゲルを指す。このミクロヒドロゲル水性分散体としては、例えば、酸性基及び架橋構造を含有するアクリロニトリル系重合体(以下、アクリロニトリルを必要に応じて「AN」と略称することがある)からなり、さらにニトリル基の加水分解反応により塩型カルボキシル基{ −COOX(X:アルカリ金属又はアンモニウムイオン)で示される}が導入され、少なくとも0.1mmol/gの塩型カルボキシル基を含有し、且つ絶乾状態で100mm以下の粒子系を有するヒドロゲルが水系媒体中に安定に分散したもの、を挙げることができる。斯かる吸水性ポリマーを使用した場合には、時間の経過に伴った吸水性ポリマーの減少が認められないため、長期間に亘る保水効果の持続が可能となる。この現象は、例えば塩型カルボキシル基を吸水性ポリマーに導入していることにより、コンクリート成分中のカルシウムイオンとの間でイオン交換反応が生じることに起因するものと考えられる。このような点で、水分散性の吸水性ポリマーを用いる場合と水溶性の吸水性ポリマーを用いる場合とを比較すると、舗設後に雨水等で吸水性ポリマーが流失しにくい水分散性の吸水性ポリマーの方が優れているといえる。
【0011】
さらに、ミクロヒドロゲル又はその水性分散体を得るための出発物質として使用されるAN系重合体とは、ANと他の1種又は2主以上のエチレン系不飽和化合物とを共重合させた重合体であって、酸性基及び架橋構造を含有する重合体の総称である。斯かるAN計重合体におけるANの含有率は、ANの含有率を構成する単量体全体に対して30重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上でることが望ましく、これらの範囲に満たないAN含有率の重合体を出発物質として使用する場合には、アルカリ物質を作用させることによって十分親水化されないか、親水化し得ても所望の吸水倍率を有するヒドロゲルが形成され難いため好ましくない。
【0012】
なお、ANに共重合するエチレン系不飽和化合物には、ANと共重合可能な公知の不飽和化合物、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン類;アリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコール及びこれらのエーテル類;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸及びこれらの塩類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル類;メチルビニルケトンの不飽和ケトン類、蟻酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリルアミド及びそのアルキル置換体;N-メチロールアクリルアミド;p-スチレンスルホン酸等の不飽和炭化水素スルホン酸及びこれらの塩類;アクリル酸スルホブチル、メタクリル酸スルホエチル等のアクリル酸若しくはメタクリル酸のスルホアルキルエステル及びこれらの塩類;スチレン、a-メチルスチレン、クロロステレン等のスチレン及びそのアルキル又はハロゲン置換体;ビニルピリジン等の塩基性ビニル化合物類;メタクリロニトリル、ヒドロキシエチルアクリロニトリル等のビニル系ニトリル化合物類;アクロレイン、メタクロレイン等のビニル系アルデヒド化合物類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;グリシジルアリルスルホネート等の不飽和スルホン酸のグリシジルエステル類;ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル類;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート等のアクリル酸若しくはメタクリル酸のジエステル類;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のアクリル酸若しくはメタクリル酸のトリエステル類;ジアリルフタレート、ジアリルマレート等の多価カルボン酸のジアリルエステル類;無水メタクリル酸等のジビニル系酸無水物類;ジビニルベンゼン及びそのアルキル又はハロゲン置換体、等を例示することができる。
【0013】
以上のような本発明の舗装方法において、保水剤の散布を、ポーラスコンクリートがフレッシュな未硬化の状態で行うと、保水剤中の吸水性ポリマーが効率よくポーラスコンクリートに付着するため事後の雨水等による保水剤の流失を低減できることとなり、舗設後のコンクリートの乾燥を抑制することができる。なお本発明に係る舗装方法においては、当該保水剤の散布をポーラスコンクリートの舗設後に行うことを妨げるものではない。舗装後に保水剤の散布を行うことで、コンクリートの乾燥を抑制でき、さらに通常の舗装よりも温度低減を図ることができる。したがって、保水剤の散布は、舗設中又は舗設後のいずれか、又はその両方で行うことが可能である。また、既に舗設されているポーラスコンクリートに対しても保水剤を散布することで保水性を強化できるため、後施工による保水性能の付与も可能である。
【0014】
また、上述のような方法により形成される保水性及び透排水性に優れた本発明の保水性舗装は、骨材及びセメントペースト又はモルタルからなるポーラスコンクリートと、該ポーラスコンクリートの舗設中又は舗設後若しくは舗設中及び舗設後に散布された保水剤とを具備して構成され、該保水剤を、ポーラスコンクリートに対して0.25l/m2〜5l/m2で散布したものであることを特徴とするものである。このような保水性舗装は、上述のように高い保水機能を長期間に亘って奏し、ヒートアイランド現象の対策に用いることで非常に有益なものであって、施工も極めて簡便に行うことができるものである。特にポーラスコンクリートに散布された保水剤は、吸水性ポリマーの固形分を0.5〜7重量%含有するものであることが好ましく、さらに吸水性ポリマーにはミクロヒドロゲル水性分散体を適用することが望ましい。また保水剤は、ポーラスコンクリートが未硬化の状態で散布したものが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポーラスコンクリートに対し、吸水性ポリマーの水分散体を含有する保水剤を散布するだけという簡便且つ低コストな施工で、透水性・排水性と保水性を両立させた保水性舗装を得ることができ、特に、保水剤のポーラスコンクリートに対する散布量を0.25l/m2〜5l/m2とすることで、施工後に得られる保水性舗装に極めて高く且つ持続性のある保水機能を付与することができる。斯かる保水性舗装を利用すれば、長期間に亘りヒートアイランド現象の低減に関して多大な貢献をなすことができる。
【0016】
特に、保水剤中における吸水性ポリマーの固形分を0.5〜7重量%としている場合や、吸水性ポリマーとして、ミクロヒドロゲル水性分散体を適用している場合には、上記の効果を非常に高いものとすることが可能である。
【0017】
また、未硬化状態のポーラスコンクリートに前記保水剤を散布した場合には、ポーラスコンクリートの乾燥抑制効果を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
図1に概念図を示す本実施形態に係る保水性舗装1は、骨材21とセメントペースト22(セメントペーストに代えてモルタルを適用してもよい)とからなるポーラスコンクリート2に対して、吸水ポリマーの水分散体を含有する保水剤3を散布したものである。
【0020】
本実施形態において吸水ポリマーには、ミクロヒドロゲル水性分散体を適用している。具体的には、ミクロヒドロゲル水性分散体として吸水性に優れる東洋紡績株式会社製「エスペックL」(商品名)を使用している。このものは、水に均一に分散した水分散体の状態で提供されており、当該水分散体におけるミクロヒドロゲル水性分散体(吸水性ポリマー)の固形分は約9%であって、水中での平衡膨潤状態におけるミクロヒドロゲル水性分散体粒子の平均粒子径が約0.1〜10mmである。また、水への分散性を考慮し、吸水倍率が80〜120倍にコントロールされており、流動性のある水分散体として使用可能となっている。そしてポーラスコンクリート2への散布に先立ち、流動性及びポーラスコンクリート2の連続空隙sへの浸透性を考慮して、この水分散体を10〜70重量%含有するように更に水に均一に分散させて調製することにより、保水剤3を得ている。すなわちこの保水剤3中におけるミクロヒドロゲル水性分散体の固形分含有率は、0.9〜6.3重量%である。このような保水剤3の調製は、例えば舗設現場において簡便に行うことができる。
【0021】
さらに上述のミクロヒドロゲル水性分散体は、詳述すると、AN系重合体水性エマルジョンを所定条件下でアルカリ処理することにより得られるポリアクリル酸ソーダ架橋共重合体である。ここで、AN系重合体水性エマルジョンの単量体組成は、AN、ジビニルベンゼン、メタクリル酸メチル、p-スチレンスルホン酸ソーダが重量%で80:5:10:5、平均粒子径は90nm、酸性基(-COONa基)量は3.0X10-4mol/g・重合体である。また、アルカリ処理の条件は、例えば、重合体濃度を10%にした水性エマルジョン20重量%を5%の苛性ソーダ水溶液80重量%に添加し、95℃で25分間撹拌する、というものである。なお、ここに例示した条件の場合に得られるミクロヒドロゲル水性分散体の酸性基量は、3.0X10-4mol/gであり、吸水倍率は約105倍である。このようにして得られるミクロヒドロゲル水性分散体は、微細粒子状態にて水中に安定的に分散する。
【0022】
保水剤3の散布は、ポーラスコンクリート2の表面側から舗設中及び舗設後に行い、その散布量は0.25l/m2以上(好ましくは0.25〜5l/m2)としている。なお、ポーラスコンクリート2の舗設中における保水剤3の散布は、ポーラスコンクリート2が未硬化でフレッシュな状態において行う。また、表面にセメントペースト22及び保水剤3が付着した骨材21同士の間には、連続空隙sが生じた状態となっており、この連続空隙sによって保水性舗装1の透排水機能が確保されている。
【0023】
ここで、最大粗骨材粒径を5mmとした空隙率25%のポーラスコンクリート(M5)、又は、最大粗骨材粒径を13mmとした空隙率20%のポーラスコンクリート(M13)を用い、散布水溶液中の保水剤濃度及び散布量の異なる保水性舗装の実施例1〜5を作成し、透水量及び熱照射後の表面温度低下試験(試験1)と、表面乾燥試験(試験2)を行った。
【0024】
まず、各実施例の構成について簡単に説明する。
<実施例1>ポーラスコンクリート(M5)を用い、保水剤濃度を10重量%、保水剤散布量を0.5l/m2としたものである。
<実施例2>ポーラスコンクリート(M5)を用い、保水剤濃度を30重量%、保水剤散布量を0.5l/m2としたものである。
<実施例3>ポーラスコンクリート(M5)を用い、保水剤濃度を50重量%、保水剤散布量を0.5l/m2としたものである。
<実施例4>ポーラスコンクリート(M13)を用い、保水剤濃度を10重量%、保水剤散布量を0.5l/m2としたものである。
<実施例5>ポーラスコンクリート(M5)を用い、保水剤濃度を30重量%、保水剤散布量を0.25l/m2としたものである。
<実施例6>ポーラスコンクリート(M5)を用い、保水剤濃度を70重量%、保水剤散布量を2l/m2としたものである。
<実施例7>ポーラスコンクリート(M13)を用い、保水剤濃度を50重量%、保水剤散布量を5l/m2としたものである。
【0025】
但し、上記各実施例及び下記各比較例において「保水剤濃度」とは、保水剤3に占めるミクロヒドロゲル水性分散体の水分散体の重量換算比率を意味している。
【0026】
このような本実施形態の各種実施例に対して、上述した試験における比較のために、次に説明するような7種の比較例を用いた。
<比較例1>密粒度アスコン、保水剤は不使用である。
<比較例2>コンクリート版、保水剤は不使用である。
<比較例3>開粒度アスコンに鉱物系保水剤を混合したものである。
<比較例4>ポーラスコンクリート(M5)、保水剤は不使用である。
<比較例5>ポーラスコンクリート(M5)を用い、保水剤濃度を5重量%、保水剤散布量を0.5l/m2としたものである。
<比較例6>ポーラスコンクリート(M13)を用い、保水剤濃度を5重量%、保水剤散布量を0.5l/m2としたものである。
<比較例7>ポーラスコンクリート(M5)を用い、保水剤濃度を30重量%、保水剤散布量を0.1l/m2としたものである。
<比較例8>ポーラスコンクリート(M13)を用い、保水剤濃度を90重量%、保水剤散布量を6l/m2としたものである。
【0027】
次に、上述した各実施例及び比較例を用いた試験について説明する。
【0028】
<試験1>では、実施例1〜5、比較例1〜7を供試体として、浸透水量の計測、表面温度の低下状態を計測した。浸透水量は、15秒当たりに浸透した水の量を計測した。表面温度の低下については、500Wの赤外線ライトを供試体表面より高さ30cmから照射し、照射120分後の表面温度を熱電対にて計測した。また、比較例1との温度差、比較例2との温度差についても算出している。以上の試験結果を図2に示す。
【0029】
上記の試験結果から、比較例1〜3については、供試体内部に空隙がないため透水しないことは明らかである。また、比較例2については、コンクリートであるため色効果により比較例1よりも温度低減するが、50℃と高水準である。比較例4については、保水剤が付与されていないため、比較例5については、保水剤濃度が小さく十分な保水ができていないため、いずれも比較例2に対しての温度差は小さい。これらに対して、実施例1〜3については、保水剤の寄与により温度低減効果が十分に現れているといえる。また、比較例6については、粗骨材最大粒度を大きくしたポーラスコンクリートでも比較例4と同様の傾向が見られたが、実施例4のように保水剤濃度が大きくなるとその効果により十分な温度低減が認められた。また、保水剤散布量を少なくした比較例7では、十分な保水ができないため温度低減効果は小さいが、保水剤散布量を0.25l/m2に増加した実施例5であれば保水剤による効果が認められ、温度低減効果が得られている。
【0030】
以上から、骨材及び空隙の大きさに拘わらず、十分な透水機能を確保しつつ、高い保水効果と良好な温度低減効果を得るためには、保水剤濃度を10%〜70%とし、散布量を0.25l/m2〜5l/m2とするのが好ましいといえる。
【0031】
<試験2>では、実施例1及び5、比較例4、5及び7を供試体として、表面乾燥状態の試験を行った。具体的には、フレッシュ状態(未乾燥)の供試体を敷き均し、強制的に15分間送風した後、供試体の表面の状態が乾燥であるか湿潤であるかの判定を行った。この試験結果を図3に示す。
【0032】
上記の試験結果から、保水剤を適用していないもの(比較例4)、保水剤濃度が低いもの(比較例5)、保水剤散布量が少ないもの(比較例7)のいずれの比較例でも、保水剤効果がないかあっても小さいため、表面のコンクリート中の水分は送風により蒸発して乾燥したが、保水剤濃度及び散布量が十分な実施例1、5の場合には、散布した保水剤の保水効果によってコンクリート表面は湿潤状態が維持された。
【0033】
以上から、ポーラスコンクリートの舗設時、舗設後に保水剤を十分量、具体的には10重量%以上の水溶液とした保水剤を0.25l/m2〜0.5l/m2散布することによって、コンクリート表面の早期乾燥を防止することが可能であるといえる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態、各実施例に限られるものではなく、具体的な保水剤の濃度、散布量、組成比等については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態を示す概念図。
【図2】試験1の結果を一覧表にして示す図。
【図3】試験2の結果を一覧表にして示す図。
【符号の説明】
【0036】
1…保水性舗装
2…ポーラスコンクリート
3…保水剤
21…骨材
22…セメントペースト(又はモルタル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性ポリマーの水分散体を含有する液状の保水剤を、骨材及びセメントペースト又はモルタルからなるポーラスコンクリートに対して0.25〜5l/m2散布することを特徴とする舗装方法。
【請求項2】
前記保水剤中における吸水性ポリマーの固形分を0.5〜7重量%含としている請求項1記載の舗装方法。
【請求項3】
前記吸水性ポリマーとして、ミクロヒドロゲル水性分散体を適用している請求項1又は2記載の舗装方法。
【請求項4】
前記保水剤を、ポーラスコンクリートが未硬化の状態で散布する請求項1、2又は3記載の舗装方法。
【請求項5】
骨材及びセメントペースト又はモルタルからなるポーラスコンクリートと、該ポーラスコンクリートに散布された保水剤とを具備して構成され、前記保水剤が、吸水性ポリマーの水分散体を含有する液状のものであって、該保水剤を前記ポーラスコンクリートに対して0.25〜5l/m2以上散布していることを特徴とする保水性舗装。
【請求項6】
前記保水剤中における吸水性ポリマーの固形分は0.5〜7重量%である請求項5記載の保水性舗装。
【請求項7】
前記吸水性ポリマーとして、ミクロヒドロゲル水性分散体を適用している請求項5又は6記載の保水性舗装。
【請求項8】
前記保水剤は、前記ポーラスコンクリートが未硬化の状態で散布されたものである請求項5、6又は7記載の保水性舗装。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−274743(P2006−274743A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98658(P2005−98658)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(000181354)鹿島道路株式会社 (46)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】