説明

舗装構造

【課題】非透水性舗装と樹脂系浸透型舗装とを混在させた際に、非透水性舗装側から流入する雨水で樹脂系浸透型舗装の端部が剥離するのを防止できる舗装構造を提供する。
【解決手段】非透水性舗装2と樹脂系浸透型舗装3との継目に排水性舗装5を設け、非透水性舗装2側からの雨水Wを、排水性舗装5を通じて、排水性舗装5に接続した排水枡8や排水溝に排出することにより、樹脂系浸透型舗装3側への雨水Wの流入を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装構造に関し、さらに詳しくは、非透水性舗装と樹脂系浸透型舗装とを混在させた際に、非透水性舗装側から流入する雨水によって樹脂系浸透型舗装の端部が剥離する不具合を防止できる舗装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な密粒度アスファルト舗装などのアスファルト系の非透水性舗装に、弾性骨材等をバインダで固結した浸透型舗装をつなげて施工して舗装構造を形成することがある(例えば、特許文献1参照)。このような舗装構造では、雨が降った場合、雨水が浸透し難い非透水性舗装側から浸透型舗装に向かって過大な量の雨水が流れて、継目となる浸透型舗装端部に流入する。また、一般に弾性係数の異なる材料からなる舗装の継目では、車両走行等による衝撃力やせん断力によって、上層の舗装と下地との剥離が誘発される。そのため、非透水性舗装と樹脂系浸透型舗装とを混在させた際には、浸透型舗装とその下地との剥離が生じ易くなる。そこに雨水が流入すると、さらに剥離が促進されることになる。特に、樹脂系バインダを用いて形成された樹脂系浸透型舗装では剥離が生じ易くなる。
【0003】
このように非透水性舗装と樹脂系浸透型舗装とを混在させた際に、両舗装の継目で一旦剥離が発生すれば、通行する車両等からの繰り返し外力によって、剥離が益々大きくなって大規模な補修工事が必要になる。そのため、大きな剥離の契機となる樹脂系浸透型舗装の端部の剥離を、より効果的に防止できる舗装構造が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−138504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、非透水性舗装と樹脂系浸透型舗装とを混在させた際に、非透水性舗装側から流入する雨水によって樹脂系浸透型舗装の端部が剥離する不具合を防止できる舗装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の舗装構造は、非透水性舗装と樹脂系浸透型舗装との継目に排水性舗装を設け、非透水性舗装側からの雨水を排水性舗装を通じて排出する構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非透水性舗装と樹脂系浸透型舗装との継目に排水性舗装を設け、非透水性舗装側からの雨水を排水性舗装を通じて排出する構成にしたので、非透水性舗装と樹脂系浸透型舗装とを混在させた舗装構造であっても、非透水性舗装側からの雨水が樹脂系浸透型舗装に流入し難くなる。そのため、この雨水によって樹脂系浸透型舗装の端部が剥離する不具合を防ぐことができる。
【0008】
前記樹脂系浸透型舗装の路肩側の下層に排水性下地を路面長手方向に延設し、この排水性下地と前記排水性舗装とを接続した仕様にすることもできる。この仕様では、樹脂系浸透型舗装内を浸透し、その下地面及び舗装内を路肩側に流れた雨水が排水性下地内を移動し、さらに排水性下地と排水性舗装とを接続することにより、広く排水網を得ることが出来、点在する排水枡などへの連結もスムーズになり、結果的に排水性能を向上させることができる。
【0009】
排水性舗装の下層は、雨水が地盤に浸透しないように必ず非透水性舗装になる。そのため、排水性舗装に流入した雨水は、排水性舗装と非透水性舗装の間を流れて路肩側に排出されるので、樹脂系透水性舗装の端部の剥離が生じ易くなることはない。
【0010】
排水性下地として、例えば、前記排水性舗装と同じ材料で構成して排水性舗装をそのまま使用することができる。また、前記排水性下地に排水用導水管を埋設した仕様にすることもできる。これらの仕様にすることで、さらに排水性能を向上させることができる。
【0011】
前記樹脂系浸透型舗装としては、多孔質弾性舗装を例示できる。この仕様では、多孔質弾性舗装のメリットを享受しつつ、多孔質弾性舗装の端部の剥離を防止できる。
【0012】
前記排水性舗装の路面長手方向の長さは、例えば0.5m〜10.0mとする。排水性舗装の長さが0.5m未満では、非透水性舗装側からの雨水を樹脂系浸透型舗装に流入させないようにする流入防止効果が不十分な場合がある。また、施工に際して、敷き均し作業性が悪く平坦性に劣ったり、転圧が不十分で強度に劣ったりすることがある。一方、排水性舗装の長さを10.0m超にしても、それ以上の流入防止効果を得ることができない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の舗装構造を例示する平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】本発明の変形例を示す図1のB−B断面図である。
【図5】本発明の変形例を示す図1のB−B断面図である。
【図6】排水枡の配置を変えた本発明の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の舗装構造を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図3に例示するように本発明の舗装構造1は、地盤7上に施工した非透水性舗装2と樹脂系浸透型舗装3との継目に排水性舗装5が設けられた構造になっている。舗装構造1は、一般に雨水が路面上を路肩側に流れるように、センターラインCLを挟んで、それぞれの路肩側に向かって下方に若干傾斜している。
【0016】
非透水性舗装2とは、現場透水性試験機による15秒間の浸透水量が100ml未満の舗装を指す。樹脂系浸透型舗装3は上記の浸透水量が500ml以上、排水性舗装5は900ml以上の舗装を指す。現場透水性試験機としては、ニッケン株式会社製の「排水性舗装用現場透水試験機(分離式)」MODEL NO.NKA-701が挙げられる。
【0017】
非透水性舗装2は、例えば上層の密粒度アスファルト舗装2aと下層の粗粒度アスファルト舗装2bとで構成されている。密粒度アスファルト舗装2aと粗粒度アスファルト舗装2bの厚さはそれぞれ、40mm〜60mm程度である。非透水性舗装2には雨水Wがほとんど浸透しない。非透水性舗装2としては、このような一般的なアスファルト系舗装またはセメント系舗装が挙げられる。
【0018】
アスファルト系舗装体の弾性係数は5,000〜10,000MPa、セメント系舗装体の弾性係数は10,000〜40,000MPaである。排水性舗装もアスファルト系舗装では弾性係数が5,000MPa前後(4,000〜6,000MPa)であり、密粒度アスファルト舗装では弾性係数が8,000MPa前後である。
【0019】
樹脂系浸透型舗装3は、樹脂系バインダを介して骨材等を固結して構成されていて、適度な空隙を有していて空隙どうしがつながっている。それ故、樹脂系浸透型舗装3には雨水Wが浸透し易い。樹脂系浸透型舗装3には、必要に応じて着色剤や他の添加剤が混合される。樹脂系浸透型舗装3の厚さは、20mm〜40mm程度である。尚、浸透型舗装には透水性舗装と排水性舗装が含まれる。
【0020】
樹脂系浸透型舗装3としては、弾性骨材と硬質骨材とをウレタン樹脂で固結した車道用または歩道用弾性舗装、弾性骨材をウレタン樹脂で固結した歩道用、競技場用または公園用弾性舗装、硬質骨材をウレタン樹脂で固結した車道用または歩道用弾性舗装、硬質骨材をアクリル系樹脂(MMA)で固結した車道用または歩道用舗装、硬質骨材をエポキシ樹脂で固結した車道用または歩道用舗装を例示できる。
【0021】
弾性骨材としては、廃タイヤチップ、EPDMチップ、ウレタンバンパー粉砕物、廃ゴムベルトチップ等を用いる。硬質骨材としては、砕石、硅砂、セラミックス、ガラスカレット、貝殻粉砕物、スラグ、アルミナ等を用いる。その他の骨材として、歩道用には木屑、廃プラスチック等を用いることもできる。
【0022】
この実施形態では図2に例示するように、樹脂系浸透型舗装3の下層に、非透水性舗装4aが設けられている。非透水性舗装4aとしては、開粒度アスファルト舗装にセメントミルクを充填した半たわみ性舗装などの透水性がない各種アスファルト舗装を例示できる。樹脂系浸透型舗装3の下層に、透水性舗装を設けた仕様にすることもできる。
【0023】
樹脂系浸透型舗装3の路肩側の下層には、図3に例示するように排水性下地4bが路面長手方向に延設されている。即ち、センターラインCL側の路面よりも下がっている路肩側では、地盤7上に排水性下地4bが配置され、その上に樹脂系浸透型舗装3が配置されている。そして、排水性下地4bと排水性舗装5とは接続するように配置されている。
【0024】
排水性下地4bは、空隙を有して空隙どうしがつながっていることにより、雨水Wを浸透、通過させることができる下地であり、既述した現場透水性試験機による15秒間の浸透水量が500ml以上の排水機能を有する。例えば、排水性下地4bとして排水性舗装5の材料をそのまま使用して、排水性舗装5と連続させることもできる。
【0025】
排水性舗装5は、空隙を有していて空隙どうしがつながっていることにより、雨水Wを浸透、通過させることができる舗装であり、例えば、5mm〜13mmに調整された砕石や改質されたアスファルトにより形成される。そのため、排水性舗装5には雨水Wが浸透し易い。この実施形態では、排水枡8が排水性舗装5に連結するように設置されている。
【0026】
図2、図3に例示するように排水性舗装5の下層には非透水性下地6が設置されている。排水性舗装5の下層は、雨水Wが地盤7に浸透しないように必ず非透水性舗装(非透水性下地6)になる。
【0027】
非透水性下地6としては、密粒度アスファルト舗装などの透水性がない各種アスファルト舗装を例示できる。排水性舗装5の下層に非透水性下地6を配置する理由は、雨水Wが地盤7に浸透すると地盤7が流動しやすくなり、ポットホールなどが発生する危険性があるからである。地盤7が非透水性である場合は、排水性舗装5の下層に非透水性下地6を設ける必要はない。
【0028】
この舗装構造1は、路面がセンターラインCL側から路肩側に向かって下方に傾斜しているので、雨が降るとその雨水Wは、全体的に路肩側に向かって流れる。したがって、樹脂系浸透型舗装3に浸透した雨水Wは、樹脂系浸透型舗装3内部を流れて、路肩側の排水性下地4bを通じて路肩に設置された排水枡8や排水溝等に排出される。
【0029】
図1のように、排水枡8が排水性舗装5と通じている場合は、非透水性舗装2の表面を流れる雨水W、樹脂系浸透型舗装3の表面を流れる雨水W、非透水性舗装4a上の浸透した雨水Wが排水性舗装5に流入して排水枡8に排出される。さらに、排水性下地4b内を流れる浸透した雨水Wも排水性舗装5に流入して排水枡8に排出される。
【0030】
このように本発明の舗装構造1では、非透水性舗装2側からの雨水Wが、排水性舗装5を通じて排水枡8や排水溝に排出されるようになっている。即ち、非透水性舗装2側からの雨水Wは、排水性舗装5によって遮断されるようになるので、樹脂系浸透型舗装3には流入にし難くなる。そのため、非透水性舗装2と樹脂系浸透型舗装3とを混在させた舗装構造であっても、雨水Wによって樹脂系浸透型舗装3の端部(排水性舗装5との継目となる端部)が剥離する不具合を防止することができる。
【0031】
排水性舗装5の路面長手方向の長さCは、例えば0.5m〜10.0mとするのが好ましい。排水性舗装5の長さCが0.5m未満では、非透水性舗装2側からの雨水Wを樹脂系浸透型舗装3に流入させないようにする流入防止効果が不十分な場合がある。また、施工に際して、敷き均し作業性が悪く平坦性に劣ったり、転圧が不十分で強度に劣ったりすることがある。一方、排水性舗装5の長さCを10.0m超にしても、それ以上の流入防止効果を得ることができない。
【0032】
また、良好な排水性能を確保するには、排水性下地4bの幅Dは50mm〜300mm程度にするのが好ましい。
【0033】
樹脂系浸透型舗装3としては、例えば、多孔質弾性舗装を用いる。多孔質弾性舗装の弾性係数は20〜50MPa程度である。多孔質弾性舗装は、例えば、廃タイヤ粉砕品などの弾性骨材、硅砂などの硬質骨材、ウレタン樹脂により形成される。この仕様にすると、排水性に優れ、適度な弾性を有している多孔質弾性舗装のメリットを享受できる。また、非透水性舗装2側からの雨水Wは、排水性舗装5によって遮断されるので、剥離が懸念される多孔質弾性舗装(樹脂系浸透型舗装3)の端部には雨水Wが流入し難くなり、剥離の発生を防止できる。
【0034】
樹脂系浸透型舗装3の路肩側の下層には、図4に例示するように、路面長手方向に延びる排水用導水管4cを排水性下地4bに埋設することもできる。排水用導水管4cは、排水性舗装5と接続させる。
【0035】
排水用導水管4cは管壁が透水性を有する仕様であり、例えば、樹脂製三次元立体網状体または金属製スプリングにより形成される。排水用導水管4cを設置する場合は、排水用導水管4cを配置した後、排水性下地4bの材料や樹脂系浸透型舗装3の材料を敷設する。このように排水用導水管4cを設置すると、周囲からの雨水Wを管壁を通じて排水用導水管4cの空洞部に多量に流入させることができるので、より排水性が向上する。
【0036】
排水性舗装5と排水性下地4bとの連結部の水の流れを良くするために、排水性舗装5の下層の非透水性下地6の路肩側では、排水性下地4bとの連結部のみ薄くして、排水性舗装5と排水性下地4bの接続面積を増大させた仕様にすることも可能である。
【0037】
図5に例示するように、樹脂系浸透型舗装3の路肩側の下層に排水用導水管4cを設けない場合も、排水性舗装5の下層の非透水性下地6の路肩側では、排水性下地4bとの連結部のみ薄くして、排水性舗装5と排水性下地4bの接続面積を増大させた仕様にするとよい。これにより、排水性舗装5と排水性下地4bとの連結部の水の流れが向上する。
【0038】
排水枡8や排水溝は、図6に例示するように、樹脂系浸透型舗装3の路肩側に設置することもできる。このように排水枡8が排水性下地4bと通じている場合は、非透水性舗装2の表面を流れる雨水W、樹脂系浸透型舗装3の表面を流れる雨水W、非透水性舗装4a上の浸透した雨水Wが排水性舗装5に流入する。排水性舗装5に流入した雨水は、その内部から排水性下地4bに流入して排水枡8に排出される。
【0039】
また、本発明では、排水性舗装5が樹脂系浸透型舗装3よりも低い位置にあり、樹脂系浸透型舗装3が排水性舗装5に向かって路面長手方向で傾斜している路面の場合は、排水性下地4bを設けない仕様にすることができる。この仕様の場合は、樹脂系浸透型舗装3の内部を流れる浸透した雨水Wと非透水性舗装4aの表面を流れる雨水Wは、路面長手方向に排水性舗装5に向かって流れる。流れた雨水Wは、排水性舗装5へ流入して排水枡8や排水溝に排出される。
【符号の説明】
【0040】
1 舗装構造
2 非透水性舗装
2a 密粒度アスファルト舗装
2b 粗粒度アスファルト舗装
3 樹脂系浸透型舗装
4a 非透水性舗装
4b 排水性下地
4c 排水用導水管
5 排水性舗装
6 非透水性下地
7 地盤
8 排水枡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非透水性舗装と樹脂系浸透型舗装との継目に排水性舗装を設け、非透水性舗装側からの雨水を排水性舗装を通じて排出する構成にしたことを特徴とする舗装構造。
【請求項2】
前記樹脂系浸透型舗装の路肩側の下層に排水性下地を路面長手方向に延設し、この排水性下地と前記排水性舗装とを接続した請求項1に記載の舗装構造。
【請求項3】
前記排水性下地が前記排水性舗装と同じ材料からなる請求項2に記載の舗装構造。
【請求項4】
前記排水性下地に排水用導水管を埋設した請求項2または3に記載の舗装構造。
【請求項5】
前記樹脂系浸透型舗装が多孔質弾性舗装である請求項1〜4のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項6】
前記排水性舗装の路面長手方向の長さを0.5m〜10.0mにした請求項1〜5のいずれかに記載の舗装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−17609(P2012−17609A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155951(P2010−155951)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(000232508)日本道路株式会社 (48)
【Fターム(参考)】