説明

航空機アクチュエータの油圧装置

【課題】機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータを駆動可能であって、機体効率の低下を防止できるとともに装置の温度上昇を抑制でき、装置構成の小型化及び軽量化を図ることができる、航空機アクチュエータの油圧装置を提供する。
【解決手段】バックアップ用油圧ポンプ11は、舵面103が設けられる翼102の内部に配置され、機体側油圧源(105、106)の機能の喪失又は低下が発生したときにアクチュエータ104aに対して圧油を供給する。電動モータ12は、翼102の内部に配置され、バックアップ用油圧ポンプ11を駆動する。ドライバ13は、翼102の内部に配置され、電動モータ12を駆動する。冷却機器14は、翼102の内部に配置され、バックアップ用油圧ポンプ11と電動モータ12とドライバ13とを同時に冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の舵面を駆動する油圧作動式のアクチュエータに対して圧油を供給する、航空機アクチュエータの油圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機においては、動翼(操縦翼面)として形成されて、補助翼(エルロン)や昇降舵(エレベータ)等として構成される舵面が設けられている。そして、このような舵面を駆動するアクチュエータとして、油圧作動式のアクチュエータがよく用いられている。また、このようなアクチュエータに対しては、航空機の機体側に設置された油圧源である機体側油圧源から圧油が供給される。しかしながら、機体側油圧源の機能(圧油供給機能)の喪失又は低下が発生することがあり、これに対し、特許文献1においては、機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生した場合にもアクチュエータに対して圧油を供給することが可能な油圧装置(航空機アクチュエータの油圧装置)が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された航空機アクチュエータの油圧装置には、機体側油圧源とは独立して設けられたポンプが備えられ、更に、このポンプを駆動する電動モータと電動モータを駆動するドライバとが備えられることになる。ポンプは、アクチュエータから排出される圧油を昇圧してアクチュエータに供給可能に設けられている。電動モータは、機体側油圧源において圧力低下が生じてその機能の喪失又は低下が発生したときに上記ポンプを駆動するように構成されている。尚、特許文献2においては、航空機に搭載された電子機器を冷却する冷却機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−46790号公報
【特許文献2】特開平10−30857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
航空機において機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生した場合であっても、特許文献1に開示されたような航空機アクチュエータの油圧装置を作動させることによってアクチュエータを駆動することができる。しかし、機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時には、上記の油圧装置の連続運転が行われることになるため、この油圧装置におけるポンプ、電動モータ及びドライバの温度が上昇することになる。このため、油圧装置の温度上昇を抑制するため、ポンプ、電動モータ及びドライバのそれぞれを冷却する冷却機器が必要となる。
【0006】
一方、特許文献2においては、前述のように、航空機に搭載された電子機器を冷却する冷却機器が開示されている。しかしながら、この冷却機器は、機体の外部のエアを電子機器まで誘導して冷却した後に外部へと排出する機構として構成されているため、飛行の際における抵抗が増大することになり、航空機の機体効率を低下させてしまうことになる。よって、機体効率の低下を招くことを防止できる冷却機器が望ましい。
【0007】
また、近年においては、航空機の更なる軽量化が要求されており、上記の油圧装置についても、小型化及び軽量化が図られることが望ましく、冷却機器も含めた油圧装置としての小型化及び軽量化が図られることが望ましい。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータを駆動可能であって、機体効率の低下を防止できるとともに装置の温度上昇を抑制でき、装置構成の小型化及び軽量化を図ることができる、航空機アクチュエータの油圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1発明に係る航空機アクチュエータの油圧装置は、航空機の舵面を駆動する油圧作動式のアクチュエータに対して圧油を供給する、航空機アクチュエータの油圧装置に関する。そして、第1発明に係る航空機アクチュエータの油圧装置は、前記航空機における前記舵面が設けられる翼の内部に配置されるとともに、前記航空機の機体側に設置されて前記アクチュエータに対して圧油を供給する油圧源である機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生したときに前記アクチュエータに対して圧油を供給可能なバックアップ用油圧ポンプと、前記翼の内部に配置されるとともに、前記バックアップ用油圧ポンプを駆動する電動モータと、前記翼の内部に配置されるとともに、前記電動モータを駆動するドライバと、前記翼の内部及び前記機体の内部のうちの少なくともいずれかに配置され、前記バックアップ用油圧ポンプ、前記電動モータ、及び前記ドライバ、を同時に冷却する冷却機器と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この発明によると、機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生した場合であっても、翼の内部に配置されたバックアップ用油圧ポンプから圧油が供給され、アクチュエータを駆動することができる。そして、バックアップ用油圧ポンプ、電動モータ及びドライバは、舵面が設置された翼の内部に配置されるため、アクチュエータにより近い領域に設置されることになり、機体側に設置される場合のような長大な配管系統等が不要となる。このため、航空機アクチュエータの油圧装置(以下、単に「油圧装置」ともいう)の小型化及び軽量化を図ることができる。更に、本発明の油圧装置では、装置の温度上昇を抑制するための冷却機器が、バックアップ用油圧ポンプ、電動モータ及びドライバを同時に冷却するように構成されている。このため、バックアップ用油圧ポンプ、電動モータ及びドライバを同じ冷却機器によって効率よく冷却できる。これにより、装置の温度上昇を抑制することができるとともに、冷却機器について、効率よく共用化することによって、小型化及び軽量化することができる。よって、冷却機器も含めた油圧装置として更に小型化及び軽量化を図ることができる。また、冷却機器は、航空機の機体内又は翼内に配置されるため、機体効率の低下を招いてしまうことも防止できる。
【0011】
従って、本発明によると、機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータを駆動可能であって、機体効率の低下を防止できるとともに装置の温度上昇を抑制でき、装置構成の小型化及び軽量化を図ることができる、航空機アクチュエータの油圧装置を提供することができる。
【0012】
第2発明に係る航空機アクチュエータの油圧装置は、第1発明の航空機アクチュエータの油圧装置において、前記冷却機器は、前記電動モータにおける回転軸とともに回転するファンであることを特徴とする。
【0013】
この発明によると、電動モータに設置されてその回転軸とともに回転する冷却用のファンを効率よく活用して、バックアップ用油圧ポンプ及びドライバも冷却することができる。よって、更に、冷却機器を効率化でき、油圧装置としての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0014】
第3発明に係る航空機アクチュエータの油圧装置は、第2発明の航空機アクチュエータの油圧装置において、前記電動モータ、前記バックアップ用油圧ポンプ及び前記ドライバは、前記ファンによって発生する冷却空気の下流側に配置されるとともに、前記ドライバは、前記電動モータ及び前記バックアップ用油圧ポンプに対して更に下流側に配置されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によると、モータ回転軸とともに回転する電動モータの冷却用のファンによる冷却空気の下流側に、電動モータ、バックアップ用油圧ポンプ及びドライバが配置される。このため、電動モータの冷却用のファンによる冷却空気を、電動モータに連結されるバックアップ用油圧ポンプに加えてドライバにまで効率よく流動させることができ、更に効率の良い冷却を実現できる。これにより、冷却機器の更なる効率化が図れ、油圧装置としての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0016】
第4発明に係る航空機アクチュエータの油圧装置は、第2発明又は第3発明の航空機アクチュエータの油圧装置において、前記電動モータ、前記バックアップ用油圧ポンプ及び前記ファンは、一体に設けられた筐体に設置されていることを特徴とする。
【0017】
この発明によると、電動モータ、バックアップ用油圧ポンプ及びファンが一体の筐体に設置されるため、電動モータ及びバックアップ用油圧ポンプ間の熱伝導による温度の一様化が促進されて温度分布のむらが発生し難い状態で、更に効率よくファンによって冷却することができる。よって、冷却機器の更なる効率化が図れ、油圧装置としての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0018】
第5発明に係る航空機アクチュエータの油圧装置は、第1発明の航空機アクチュエータの油圧装置において、前記冷却機器は、前記バックアップ用油圧ポンプ及び前記電動モータに対して熱交換可能に設置されるとともに、前記ドライバに対しても熱交換可能に設置された油配管であることを特徴とする。
【0019】
この発明によると、油配管として構成された冷却機器が、バックアップ用油圧ポンプ、電動モータ及びドライバのいずれに対しても熱交換可能に設置される。このため、電動モータ、バックアップ用油圧ポンプ及びドライバで発生した熱を油配管を介して抜熱でき、電動モータ、バックアップ用油圧ポンプ及びドライバを効率よく冷却することができる。また、種々の油配管を利用して冷却機器を構成できるため、更に設備の効率化を図ることができる。よって、油圧装置としての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0020】
第6発明に係る航空機アクチュエータの油圧装置は、第5発明の航空機アクチュエータの油圧装置において、前記油配管は、前記バックアップ用油圧ポンプから供給されて当該バックアップ用油圧ポンプと前記アクチュエータとの間で循環する圧油が流動する配管であることを特徴とする。
【0021】
この発明によると、バックアップ用油圧ポンプから供給されて循環する圧油用の配管を冷却機器として兼用させて用いることができる。このため、更に設備の効率化を図ることができ、油圧装置としての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0022】
第7発明に係る航空機アクチュエータの油圧装置は、第6発明の航空機アクチュエータの油圧装置において、前記油配管は、前記航空機の燃料が貯留される燃料タンクの内部を通過するように設置されていることを特徴とする。
【0023】
この発明によると、冷却機器として兼用される圧油用の配管が航空機の燃料タンクの内部を通過するため、燃料タンク内の燃料との間で熱交換が行われ、バックアップ用油圧ポンプ等から発生した熱量を抜熱して配管を流動する圧油から燃料タンク内の燃料へと放熱が行われることになる。これにより、冷却機器としての圧油用の配管を流動する圧油を燃料タンク内の燃料を活用して効率よく冷却することができる。
【0024】
第8発明に係る航空機アクチュエータの油圧装置は、第1発明乃至第7発明のいずれかの航空機アクチュエータの油圧装置において、前記電動モータ、前記バックアップ用油圧ポンプ及び前記ドライバは、互いに熱伝導可能に一体に設けられていることを特徴とする。
【0025】
この発明によると、電動モータ、バックアップ用油圧ポンプ及びドライバが熱伝導可能に一体に構成されるため、電動モータ、バックアップ用油圧ポンプ及びドライバ間の温度の一様化が促進されて温度分布のむらが発生し難い状態で、更に効率よく冷却することができる。よって、冷却機器の更なる効率化が図れ、油圧装置としての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータを駆動可能であって、機体効率の低下を防止できるとともに装置の温度上昇を抑制でき、装置構成の小型化及び軽量化を図ることができる、航空機アクチュエータの油圧装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る航空機アクチュエータの油圧装置が適用される航空機の一部を示す模式図である。
【図2】図1に示す航空機アクチュエータの油圧装置を含む油圧回路について、舵面及びアクチュエータとともに示す模式図である。
【図3】図1に示す航空機アクチュエータの油圧装置について翼の一部とともに示す図であって、A−A線矢視位置から見た図である。
【図4】変形例に係る航空機アクチュエータの油圧装置について翼の一部とともに示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る航空機アクチュエータの油圧装置を含む油圧回路について、アクチュエータ及び航空機の燃料タンクとともに示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明の実施形態は、航空機の舵面を駆動する油圧作動式のアクチュエータに対して圧油を供給する航空機アクチュエータの油圧装置として広く適用することができるものである。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る航空機アクチュエータの油圧装置1(以下、単に「油圧装置1」ともいう)が適用される航空機100の一部を示す模式図であって、航空機100の機体101の後部の部分と一対の水平尾翼(102、102)とを図示したものである。尚、図1の模式図では、機体101の後部の垂直尾翼についての図示を省略している。
【0030】
一対の水平尾翼(102、102)には、航空機100の舵面を構成する動翼(操縦翼面)として、エレベータ(昇降舵)103がそれぞれ設けられている。そして、各水平尾翼102におけるエレベータ103は、図1に例示するように、複数(例えば、2つ)のアクチュエータ104(104a、104b)によって駆動されるように構成されている。各水平尾翼102の内部には、各エレベータ103を駆動するアクチュエータ(104a、104b)と、そのうちの一方のアクチュエータ104aに対して圧油を供給するように構成された油圧装置1とが設置されている。
【0031】
尚、一対の水平尾翼(102、102)のそれぞれに設置されるアクチュエータ(104a、104b)及び油圧装置1は、同様に構成される。そこで、以下の説明においては、一方の水平尾翼102に設置されるアクチュエータ(104a、104b)及び油圧装置1について説明し、他方に設置されるアクチュエータ(104a、104b)及び油圧装置1の説明を省略する。
【0032】
図2は、一方の水平尾翼102に設けられたエレベータ103を駆動するアクチュエータ(104a、104b)と、そのうちの一方のアクチュエータ104aに対して圧油を供給するように構成された油圧装置1とを含む油圧回路を模式的に示す油圧回路図である。アクチュエータ(104a、104b)のそれぞれは、シリンダ107、ピストン108aが設けられたロッド108、等を備え、シリンダ107内がピストン108aによって2つの油室(107a、107b)に区画されて構成されている。そして、アクチュエータ104aのシリンダ107における各油室(107a、107b)は、制御弁109aを介して第1機体側油圧源105及びリザーバ回路110と連通可能に構成されている。一方、アクチュエータ104bのシリンダ107における各油室(107a、107b)は、制御弁109bを介して第2機体側油圧源106及びリザーバ回路111と連通可能に構成されている。
【0033】
第1機体側油圧源105及び第2機体側油圧源106のそれぞれは、圧油を供給する油圧ポンプを有し、互いに独立した系統として機体101側に(機体101の内部に)設置されている。そして、第1及び第2機体側油圧源(105、106)のそれぞれは、エレベータ103のアクチュエータ104とエレベータ103以外の各舵面を駆動するアクチュエータ(図示せず)とに対して圧油を供給する油圧源である機体側油圧源として設けられている。また、アクチュエータ104に対しては、第1機体側油圧源105は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ104aと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ104bとに圧油を供給可能に接続されている。一方、第2機体側油圧源106は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ104bと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ104aとに対して圧油を供給可能に接続されている。
【0034】
リザーバ回路110は、圧油として供給された後にアクチュエータ104から排出される油(作動油)が流入して戻るタンク(図示せず)を有するとともに、第1機体側油圧源105に連通するように構成されている。また、リザーバ回路110から独立した系統として構成されるリザーバ回路111は、圧油として供給された後にアクチュエータ104から排出される油(作動油)が流入して戻るタンク(図示せず)を有するとともに、第1機体側油圧源105から独立した系統として構成される第2機体側油圧源106に連通するように構成されている。尚、リザーバ回路110は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ104aと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ104bとに接続されるとともに、第1機体側油圧源105に接続されている。これにより、リザーバ回路110に戻った油が第1機体側油圧源105で昇圧され、所定のアクチュエータ104に供給される。一方、リザーバ回路111は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ104bと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ104aとに接続されるとともに、第2機体側油圧源106に接続されている。これにより、リザーバ回路111に戻った油が第2機体側油圧源106で昇圧され、所定のアクチュエータ104に供給される。
【0035】
制御弁109aは、第1機体側油圧源105に連通する供給通路105a及びリザーバ回路110に連通する排出通路110aと、油室(107a、107b)との接続状態を切り替えるバルブ機構として設けられている。また、制御弁109bは、第2機体側油圧源106に連通する供給通路106a及びリザーバ回路111に連通する排出通路111aと、油室(107a、107b)との接続状態を切り替えるバルブ機構として設けられている。制御弁109aは、例えば、電磁切換弁として構成され、アクチュエータ104aの動作を制御するアクチュエータコントローラ21aからの指令信号に基づいて駆動される。また、制御弁109bは、例えば、電磁切換弁として構成され、アクチュエータ104bの動作を制御するアクチュエータコントローラ21bからの指令信号に基づいて駆動される。
【0036】
尚、アクチュエータコントローラ21aは、エレベータ103の動作を指令する更に上位のコンピュータであるフライトコントローラ22からの指令信号に基づいてアクチュエータ104aを制御する。また、アクチュエータコントローラ21bは、フライトコントローラ22からの指令信号に基づいてアクチュエータ104bを制御する。
【0037】
アクチュエータコントローラ21a及びアクチュエータコントローラ21bは、例えば、集中制御方式のコントローラとして、又は分散処理方式のコントローラとして設置される。集中制御方式の場合、機体101側に設置された1つの筐体(図示せず)にアクチュエータコントローラ21a及びアクチュエータコントローラ21bが設置され、アクチュエータコントローラ21aがアクチュエータ104aを制御し、アクチュエータコントローラ21bがアクチュエータ104bを制御するように構成される。分散処理方式の場合、アクチュエータ104aに搭載された筐体(図示せず)にアクチュエータコントローラ21aが設置され、アクチュエータ104bに搭載された筐体(図示せず)にアクチュエータコントローラ21bが設置され、アクチュエータコントローラ21aがアクチュエータ104aを制御し、アクチュエータコントローラ21bがアクチュエータ104bを制御するように構成される。尚、本実施形態では、複数の異なるアクチュエータコントローラ(21a、21b)に対して1つのフライトコントローラ22からの指令信号が入力されるように構成されている場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、複数の異なるアクチュエータコントローラ(21a、21b)に対して、それぞれ異なるフライトコントローラからの指令信号が入力されるように構成されていてもよい。
【0038】
また、前述した制御弁109aは、アクチュエータコントローラ21aからの指令に基づいて切り替えられることで、供給通路105aから油室(107a、107b)の一方に圧油が供給され、油室(107a、107b)の他方から排出通路110aに油が排出される。これにより、シリンダ107に対してロッド108が変位し、エレベータ103が駆動される。また、図示を省略するが、制御弁109aとアクチュエータ104aとの間には、油室(107a、107b)間の連通状態(モード)を切り替えるモード切替弁が設けられている。尚、制御弁109bについては、上述した制御弁109aと同様に構成されるため、説明を省略する。
【0039】
次に、本実施形態に係る油圧装置1について詳しく説明する。図1及び図2に示す油圧装置1は、エレベータ103を駆動する油圧作動式のアクチュエータ104aに対して圧油を供給するように構成されている。尚、本実施形態では、油圧装置1が、エレベータ103として構成された舵面を駆動するアクチュエータ104aに対して圧油を供給する形態を例にとって説明するが、この通りでなくてもよい。即ち、油圧装置1が、エルロン(補助翼)等のエレベータ以外の舵面を駆動するアクチュエータに対して圧油を供給する油圧装置として用いられてもよい。
【0040】
図3は、油圧装置1について水平尾翼102の一部とともに示す図であって、図1のA−A線矢視位置から見た図である。図1乃至図3に示す油圧装置1は、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12、ドライバ13、ファン14、ハウジング15、等を備えて構成されている。尚、図3では、水平尾翼102の一部については、ハウジング15等の側方から見た状態における断面を含む図として透視図法に基づいて図示している。また、図3では、水平尾翼102及び油圧装置1以外の要素についての図示を省略している。
【0041】
図3に示すように、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12、ドライバ13、ファン14、ハウジング15は、航空機100におけるエレベータ103が設けられる翼である水平尾翼102の内部に配置される。そして、ハウジング15は、一体に設けられた筐体(例えば、金属製、セラミック製、SiC製、等の筐体)として構成されており、このハウジング15に、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びファン14が設置されている。尚、図3にて破線で示す電動モータ12及びファン14は、ハウジング15の内側に収容され、バックアップ用油圧ポンプ11は、ハウジング15から突出した状態でこのハウジング15に固定されている。また、ハウジング15及びドライバ13は、水平尾翼102を構成する構造体の下面側の部材に固定されて設置されている。
【0042】
バックアップ用油圧ポンプ11は、例えば、可変容量式の油圧ポンプとして構成されている。このバックアップ用油圧ポンプ11は、その吸込み側が排出通路110aに連通するように接続され、その吐出側が逆止弁16を介して供給通路105aに圧油を供給可能に連通するように接続されている。そして、バックアップ用油圧ポンプ11は、第1機体側油圧源105における油圧ポンプの故障や油漏れ等によって第1機体側油圧源105の機能(圧油供給機能)の喪失又は低下が発生したときにアクチュエータ104aに対して圧油を供給可能な油圧ポンプとして設けられている。
【0043】
また、供給通路105aにおけるバックアップ用油圧ポンプ11の吐出側が接続する箇所の上流側(第1機体側油圧源105側)には、アクチュエータ104aへの圧油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する逆止弁17が設けられている。そして、排出通路110aにおけるバックアップ用油圧ポンプ11の吸込み側が接続する箇所の下流側(リザーバ回路110側)には、アクチュエータ104aから排出された油の圧力が上昇した際にリザーバ回路110へ圧油を排出するリリーフ弁18が設けられている。また、このリリーフ弁18には、供給通路105aに連通するとともにバネが配置されたパイロット圧室が設けられている。供給通路105aから供給される圧油の圧力が所定の圧力値よりも低下すると、パイロット圧油として供給通路105aから上記のパイロット圧室に供給されている圧油の圧力(パイロット圧)も所定の圧力値より低下し、排出通路110aがリリーフ弁20によって遮断されることになる。第1機体側油圧源105の機能の喪失時又は低下時には、上述した逆止弁(16、17)及びリリーフ弁18が設けられていることにより、アクチュエータ104aから排出された油がリザーバ回路110に戻ることなくバックアップ用油圧ポンプ11で昇圧され、その昇圧された圧油がアクチュエータ104aに供給されることになる。
【0044】
電動モータ12は、バックアップ用油圧ポンプ11に対して、図示しないカップリングを介して連結され、又はカップリングを介さずに直結され、このバックアップ用油圧ポンプ11を駆動するように構成されている。尚、この電動モータ12は、ドライバ13を介して、エレベータ103の動作を指令する上位のコンピュータであるフライトコントローラ22からの指令信号に基づいて運転状態が制御される。また、ドライバ13は、フライトコントローラ22からの指令信号に基づいて電動モータ12へ供給される電力及び電動モータ12の運転速度(回転速度)を制御してこの電動モータ12を駆動する回路基板等を備えて構成されている。
【0045】
尚、フライトコントローラ22は、第1機体側油圧源105の吐出圧力又は供給通路105aを通過する圧油の圧力を検知する圧力センサ(図示せず)に対して、その圧力センサで検知された圧力検知信号が入力されるように接続されている。そして、フライトコントローラ22は、上記の圧力検知信号に基づいて、第1機体側油圧源105の機能の喪失又は低下を検知するように構成されている。
【0046】
例えば、フライトコントローラ22は、圧力検知信号の圧力値が所定の第1圧力値以下となったタイミングに応じて第1機体側油圧源105の機能の低下を検知し、圧力検知信号の圧力値が第1圧力値よりも更に低い所定の第2圧力値以下となったタイミングに応じて第1機体側油圧源105の機能の喪失を検知するように構成されている。そして、フライトコントローラ22にて第1機体側油圧源105の機能の喪失又は低下が検知されると、このフライトコントローラ22からの指令信号に基づいて電動モータ12の運転が開始され、前述のように、アクチュエータ104aに対する圧油の供給が行われることになる。
【0047】
ファン14は、電動モータ12における回転軸とともに回転する冷却用のファンとして設けられ、バックアップ用油圧ポンプ11と電動モータ12とドライバ13とを同時に冷却する本実施形態における冷却機器を構成している。そして、このファン14は、例えば、軸流ファン、シロッコファン等として設けられている。
【0048】
また、ファン14は、電動モータ12の回転軸に対してバックアップ用油圧ポンプ11側と反対側で連結されるように設置され、前述のように、電動モータ12の回転駆動力によって回転駆動されるように構成されている。そして、ハウジング15の端部におけるファン14が対向する部分には、空気を吸い込むためのスリット状の多くの開口が形成されている。ファン14は、図3において一点鎖線の矢印として図示する矢印W1で示すようにハウジング15の端部の開口から空気を吸込み、ハウジング15の内部を経てバックアップ用油圧ポンプ11へ向かって流れる冷却空気の流れを発生させるように構成されている。
【0049】
また、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13は、ファン14によって発生する冷却空気の下流側に配置されるとともに、ドライバ13は、電動モータ12及びバックアップ用油圧ポンプ11に対して更に下流側に配置されている。これにより、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13が、ファン14によって発生した冷却空気によって冷却されることになる。尚、図3では、電動モータ12及びバックアップ用油圧ポンプ11を冷却した後にドライバ13に向かって流れる冷却空気の流れを一点鎖線の矢印W2で示している。
【0050】
次に、油圧装置1の作動について説明する。尚、油圧装置1の作動については、上述した油圧装置1の構成についての説明と同様に、第1機体側油圧源105に接続された油圧装置1についてのみ説明し、第2機体側油圧源106に接続された油圧装置1の作動については同様であるため説明を省略する。
【0051】
第1機体側油圧源105の機能の喪失及び低下が発生していない状態では、バックアップ用油圧ポンプ11の運転は行われない。この状態では、アクチュエータ104aに対しては、制御弁109aを介して第1油圧供給源105からの圧油が油室(107a、107b)の一方に供給され、油室(107a、107b)の他方から油が排出されて制御弁109aを介してリザーバ回路110に戻されることになる。また、アクチュエータコントローラ21aからの指令信号に基づいて制御弁109aの接続状態が切り替えられることで、圧油の供給及び圧油の排出が行われる油室(107a、107b)の切り替えが行われ、アクチュエータ104aが作動してエレベータ103が駆動される。
【0052】
一方、第1機体側油圧源105の機能の喪失及び低下が発生すると、フライトコントローラ22からの指令信号に基づいて、ドライバ13を介して電動モータ12に電力が供給されて電動モータ12の運転が開始され、バックアップ用油圧ポンプ11の運転が開始される。そして、アクチュエータ104aに対しては、制御弁109aを介してバックアップ用油圧ポンプ11からの圧油が油室(107a、107b)の一方に供給され、油室(107a、107b)の他方から圧油が排出されて制御弁109aを介してバックアップ用油圧ポンプ11に吸い込まれて昇圧されることになる。また、アクチュエータコントローラ21aからの指令信号に基づいて制御弁109aの接続状態が切り替えられることで、圧油の供給及び圧油の排出が行われる油室(107a、107b)の切り替えが行われ、アクチュエータ104aが作動してエレベータ103が駆動される。
【0053】
そして、上記のように油圧装置1が作動すると、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12及びドライバ13が発熱し、冷却が不十分であれば、これらの温度が過度に上昇してしまうことになる。しかしながら、油圧装置1においては、ファン14として構成されてバックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12及びドライバ13を同時に冷却する冷却機器が設けられているため、これらの温度上昇が抑制されることになる。即ち、ファン14によって発生した冷却空気の流れが、ハウジング15内を通過して電動モータ12で発生した熱量を抜熱し、この電動モータ12を冷却する。そして、この冷却空気が更に下流側に流れることで、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13で発生した熱量が抜熱され、これらのバックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13の冷却も図られることになる。
【0054】
以上説明したように、油圧装置1によると、機体側油圧源(105、106)の機能の喪失又は低下が発生した場合であっても、水平尾翼102の内部に配置されたバックアップ用油圧ポンプ11から圧油が供給され、アクチュエータ104aを駆動することができる。そして、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12及びドライバ13は、エレベータ103が設置された水平尾翼102の内部に配置されるため、アクチュエータ104aにより近い領域に設置されることになり、機体側に設置される場合のような長大な配管系統等が不要となる。このため、油圧装置1の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0055】
更に、油圧装置1では、装置の温度上昇を抑制するための冷却機器であるファン14が、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12及びドライバ13を同時に冷却するように構成されている。このため、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12及びドライバ13を同じ冷却機器(ファン14)によって効率よく冷却できる。これにより、装置の温度上昇を抑制することができるとともに、冷却機器(ファン14)について、効率よく共用化することによって、小型化及び軽量化することができる。よって、冷却機器(ファン14)も含めた油圧装置1として更に小型化及び軽量化を図ることができる。また、冷却機器(ファン14)は、航空機100の水平尾翼102内に配置されるため、機体効率の低下を招いてしまうことも防止できる。
【0056】
従って、本実施形態によると、機体側油圧源(105、106)の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータ104aを駆動可能であって、機体効率の低下を防止できるとともに装置の温度上昇を抑制でき、装置構成の小型化及び軽量化を図ることができる、航空機アクチュエータの油圧装置1を提供することができる。
【0057】
また、油圧装置1によると、電動モータ12に設置されてその回転軸とともに回転する冷却用のファン14を効率よく活用して、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13も冷却することができる。よって、更に、冷却機器を効率化でき、油圧装置1としての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0058】
また、油圧装置1によると、モータ回転軸とともに回転する電動モータ12の冷却用のファン14による冷却空気の下流側に、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13がこの順番で配置される。このため、電動モータ12の冷却用のファン14による冷却空気を、電動モータ12に連結されるバックアップ用油圧ポンプ11に加えてドライバ13にまで効率よく流動させることができ、更に効率の良い冷却を実現できる。これにより、冷却機器の更なる効率化が図れ、油圧装置1としての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0059】
また、油圧装置1によると、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びファン14が一体の筐体であるハウジング15に設置されるため、電動モータ12及びバックアップ用油圧ポンプ11間の熱伝導による温度の一様化が促進されて温度分布のむらが発生し難い状態で、更に効率よくファン14によって冷却することができる。よって、冷却機器の更なる効率化が図れ、油圧装置1としての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0060】
尚、本実施形態では、冷却機器としてのファン14が、電動モータ12とともにハウジング15に収容された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ファン14が、ハウジング15から分離されて配置されていてもよい。この場合、ファン14が、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13を同時に冷却可能な位置に配置されていてればよい。また、本実施形態では、冷却機器としてファン14を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、ファン以外の形態の冷却機器を備えた油圧装置を実施してもよい。例えば、水平尾翼102内の空気を冷却することで電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13を同時に冷却可能な空調装置として構成された冷却機器を備えた油圧装置を実施してもよい。
【0061】
また、図4は、第1実施形態の変形例に係る航空機アクチュエータの油圧装置1a(以下、単に「油圧装置1a」という)を示す図である。この図4は、油圧装置1aについて水平尾翼102の一部とともに示しており、図3に対応する状態で油圧装置1aを示している。油圧装置1aは、油圧装置1と同様に、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12、ドライバ13、ファン14及びハウジング15を備えて構成されている。但し、油圧装置1aは、ドライバ13が配置される形態において、油圧装置1とは異なっている。尚、図4に示す油圧装置1aの説明においては、油圧装置1と異なる点について説明し、油圧装置1と同様に構成される要素と、ファン14によって吸い込まれる冷却空気の流れ(矢印W1方向の冷却空気の流れ)とについては、図面において同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0062】
油圧装置1aにおいては、図4に示すように、ドライバ13は、ハウジング15に設置されている。これにより、油圧装置1aでは、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13は、互いに熱伝導可能に一体に設けられている。即ち、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13は、ハウジング15を介して熱伝導可能に一体化されている。尚、油圧装置1aでは、ファン14によって発生した冷却空気によって、電動モータ12及びバックアップ用油圧ポンプ11で発生した熱量が抜熱され、電動モータ12及びバックアップ用油圧ポンプ11が冷却される。そして、ドライバ13で発生してハウジング15に伝導した熱量についてもファン14によって発生した冷却空気によって抜熱され、これにより、ドライバ15も冷却されることになる。
【0063】
上述した油圧装置1aによると、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13が熱伝導可能に一体に構成されるため、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13間の温度の一様化が促進されて温度分布のむらが発生し難い状態で、更に効率よく冷却することができる。よって、冷却機器の更なる効率化が図れ、油圧装置1aとしての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。尚、油圧装置1aの更なる変形例として、ファン14又はファン以外の形態の冷却機器が、ハウジング15から分離され、互いに熱伝導可能に配置された電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13から離れて配置された油圧装置を実施してもよい。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る航空機アクチュエータの油圧装置2(以下、単に「油圧装置2」ともいう)について説明する。油圧装置2は、第1実施形態の油圧装置1と同様に、航空機100の水平尾翼102に設けられたエレベータ103を駆動する油圧作動式のアクチュエータ104aに対して圧油を供給するように構成されている。そして、油圧装置2は、第1実施形態の油圧装置1と同様に、第1機体側油圧源105、リザーバ回路110、制御弁109aに対して接続されている。また、油圧装置2は、油圧装置1と同様に、フライトコントローラ22からの指令信号に基づいて作動するように構成されている。
【0065】
図5は、油圧装置2を含む油圧回路について、アクチュエータ104a及び航空機100の燃料タンク112とともに簡略化して示す模式図である。油圧装置2は、第1実施形態の油圧装置1と同様に、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12、ドライバ13、冷却機器23を備えて構成されている。但し、油圧装置2は、冷却機器23の構成が、第1実施形態の油圧装置1における冷却機器(ファン14)とは異なっている。以下、油圧装置2の説明においては、第1実施形態と構成が異なる点について説明し、第1実施形態と同様に構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、又は同一の符号を引用することで、説明を省略する。
【0066】
冷却機器23は、バックアップ用油圧ポンプ11から供給されてこのバックアップ用油圧ポンプ11とアクチュエータ104aとの間で循環する圧油が流動する配管である油配管(以下、「油配管23」ともいう)として構成されている。そして、この冷却機器23は、水平尾翼102の内部と機体101の内部とに亘って配置され、航空機100のエンジンで用いられる燃料113が貯留される燃料タンク112の内部を通過するように設置されている。
【0067】
また、冷却機器である油配管23には、コイル状に屈曲形成された第1コイル部23a、第2コイル部23b及び第3コイル部23cが設けられている。第1コイル部23aは、油配管23におけるドライバ13の表面に接触して配置された部分に設けられており、ドライバ13と効率よく熱交換可能なようにドライバ13に接触する多くの表面積を確保するための部分として設けられている。これにより、第1コイル部23aは、ドライバ13で発生した熱量を効率よく抜熱してこのドライバ13を冷却可能に構成されている。
【0068】
また、第2コイル部23bは、油配管23における電動モータ12の表面に接触して配置された部分に設けられており、電動モータ12と効率よく熱交換可能なように電動モータ12に接触する多くの表面積を確保するための部分として設けられている。これにより、第2コイル部23bは、電動モータ12で発生した熱量を効率よく抜熱してこの電動モータ12を冷却可能に構成されている。尚、油配管23は、バックアップ用油圧ポンプ11の吸込み側と吐出側とに接続され、バックアップ用油圧ポンプ11で昇圧される油(作動油)がアクチュエータ104aとの間で循環する管経路として設けられている。このため、油配管23を流動する油がバックアップ用油圧ポンプ11を通過することで、バックアップ用油圧ポンプ11で発生した熱量が抜熱され、このバックアップ用油圧ポンプ11が冷却されることになる。
【0069】
また、第3コイル部23cは、油配管23における燃料タンク112内に配置された部分に設けられており、燃料タンク112内に貯留された燃料113と効率よく熱交換可能なように多くの表面積を確保するための部分として設けられている。これにより、第3コイル部23cは、ドライバ13、電動モータ12及びバックアップ用油圧ポンプ11から抜熱した熱量を燃料タンク112の内部の燃料113中に放熱するように構成されている。
【0070】
上記のように、油配管23は、第1コイル部23a、第2コイル部23b及び第3コイル部23cを有するとともにバックアップ用油圧ポンプ11を通過するように構成されている。これにより、油配管23は、バックアップ用油圧ポンプ11及び電動モータ12に対して熱交換可能に設置されるとともに、ドライバ13に対しても熱交換可能に設置されている。
【0071】
以上説明した油圧装置2によると、第1実施形態の油圧装置1と同様に、機体側油圧源(105、106)の機能の喪失又は低下が発生した場合であっても、水平尾翼102の内部に配置されたバックアップ用油圧ポンプ11から圧油が供給され、アクチュエータ104aを駆動することができる。そして、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12及びドライバ13は、エレベータ103が設置された水平尾翼102の内部に配置されるため、アクチュエータ104aにより近い領域に設置されることになり、機体側に設置される場合のような長大な配管系統等が不要となる。このため、油圧装置2の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0072】
そして、油圧装置2では、装置の温度上昇を抑制するための冷却機器である油配管23が、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12及びドライバ13を同時に冷却するように構成されている。このため、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12及びドライバ13を同じ冷却機器23によって効率よく冷却できる。これにより、装置の温度上昇を抑制することができるとともに、冷却機器23について、効率よく共用化することによって、小型化及び軽量化することができる。よって、冷却機器23も含めた油圧装置2として更に小型化及び軽量化を図ることができる。また、冷却機器23は、航空機100の機体101内又は水平尾翼102内に配置されるため、機体効率の低下を招いてしまうことも防止できる。
【0073】
従って、本実施形態によると、機体側油圧源(105、106)の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータ104aを駆動可能であって、機体効率の低下を防止できるとともに装置の温度上昇を抑制でき、装置構成の小型化及び軽量化を図ることができる、航空機アクチュエータの油圧装置2を提供することができる。
【0074】
また、油圧装置2によると、油配管23として構成された冷却機器23が、バックアップ用油圧ポンプ11、電動モータ12及びドライバ13のいずれに対しても熱交換可能に設置される。このため、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13で発生した熱を油配管23を介して抜熱でき、電動モータ12、バックアップ用油圧ポンプ11及びドライバ13を効率よく冷却することができる。また、油配管23を利用して冷却機器23を構成できるため、更に設備の効率化を図ることができる。よって、油圧装置2としての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0075】
また、油圧装置2によると、バックアップ用油圧ポンプ11から供給されて循環する圧油用の配管を冷却機器23として兼用させて用いることができる。このため、更に設備の効率化を図ることができ、油圧装置2としての更なる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0076】
また、油圧装置2によると、冷却機器23として兼用される圧油用の配管が航空機100の燃料タンク112の内部を通過するため、燃料タンク112内の燃料113との間で熱交換が行われ、バックアップ用油圧ポンプ11等から発生した熱量を抜熱して配管(油配管23)を流動する圧油から燃料タンク112内の燃料113へと放熱が行われることになる。これにより、冷却機器23としての圧油用の配管を流動する圧油を燃料タンク112内の燃料113を効率よく活用して冷却することができる。
【0077】
尚、本実施形態では、冷却機器23としての油配管がバックアップ用油圧ポンプ11から供給されて循環する圧油用の配管である形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。冷却機器としての配管が、上記の圧油用の配管とは独立した系統としての油配管として構成されていてもよい。また、この場合、冷却機器として設けられて圧油用の配管とは独立した系統の油配管が燃料タンクの内部を通過するように設置されていてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、燃料タンク112の内部に配置される第3コイル部23cが1つ設けられている油配管23の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、油配管23において離れた位置における複数個所に第3コイル部23cが設けられている形態を実施してもよい。この場合、例えば、油配管23において油タンク112の内部に配置される第3コイル部23cが、アクチュエータ104aに接続する部分及びドライバ13に接触する部分の間と、バックアップ用油圧ポンプ11に接続する部分及びアクチュエータ104aに接続する部分の間との複数個所に設けられている形態であってもよい。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した第1及び第2の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、エルロン等のエレベータ以外の舵面を駆動するアクチュエータに対して圧油を供給する航空機アクチュエータの油圧装置を実施してもよい。また、航空機アクチュエータの油圧装置と機体側油圧源とを接続する油圧回路形態については、種々変更して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、航空機の舵面を駆動する油圧作動式のアクチュエータに対して圧油を供給する、航空機アクチュエータの油圧装置として、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0081】
1 航空機アクチュエータの油圧装置
11 バックアップ用油圧ポンプ
12 電動モータ
13 ドライバ
14 ファン(冷却機器)
100 航空機
102 水平尾翼(翼)
103 エレベータ(舵面)
104、104a アクチュエータ
105 第1機体側油圧源(機体側油圧源)
106 第2機体側油圧源(機体側油圧源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の舵面を駆動する油圧作動式のアクチュエータに対して圧油を供給する、航空機アクチュエータの油圧装置であって、
前記航空機における前記舵面が設けられる翼の内部に配置されるとともに、前記航空機の機体側に設置されて前記アクチュエータに対して圧油を供給する油圧源である機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生したときに前記アクチュエータに対して圧油を供給可能なバックアップ用油圧ポンプと、
前記翼の内部に配置されるとともに、前記バックアップ用油圧ポンプを駆動する電動モータと、
前記翼の内部に配置されるとともに、前記電動モータを駆動するドライバと、
前記翼の内部及び前記機体の内部のうちの少なくともいずれかに配置され、前記バックアップ用油圧ポンプ、前記電動モータ、及び前記ドライバ、を同時に冷却する冷却機器と、
を備えていることを特徴とする、航空機アクチュエータの油圧装置。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機アクチュエータの油圧装置であって、
前記冷却機器は、前記電動モータにおける回転軸とともに回転するファンであることを特徴とする、航空機アクチュエータの油圧装置。
【請求項3】
請求項2に記載の航空機アクチュエータの油圧装置であって、
前記電動モータ、前記バックアップ用油圧ポンプ及び前記ドライバは、前記ファンによって発生する冷却空気の下流側に配置されるとともに、前記ドライバは、前記電動モータ及び前記バックアップ用油圧ポンプに対して更に下流側に配置されていることを特徴とする、航空機アクチュエータの油圧装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の航空機アクチュエータの油圧装置であって、
前記電動モータ、前記バックアップ用油圧ポンプ及び前記ファンは、一体に設けられた筐体に設置されていることを特徴とする、航空機アクチュエータの油圧装置。
【請求項5】
請求項1に記載の航空機アクチュエータの油圧装置であって、
前記冷却機器は、前記バックアップ用油圧ポンプ及び前記電動モータに対して熱交換可能に設置されるとともに、前記ドライバに対しても熱交換可能に設置された油配管であることを特徴とする、航空機アクチュエータの油圧装置。
【請求項6】
請求項5に記載の航空機アクチュエータの油圧装置であって、
前記油配管は、前記バックアップ用油圧ポンプから供給されて当該バックアップ用油圧ポンプと前記アクチュエータとの間で循環する圧油が流動する配管であることを特徴とする、航空機アクチュエータの油圧装置。
【請求項7】
請求項6に記載の航空機アクチュエータの油圧装置であって、
前記油配管は、前記航空機の燃料が貯留される燃料タンクの内部を通過するように設置されていることを特徴とする、航空機アクチュエータの油圧装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の航空機アクチュエータの油圧装置であって、
前記電動モータ、前記バックアップ用油圧ポンプ及び前記ドライバは、互いに熱伝導可能に一体に設けられていることを特徴とする、航空機アクチュエータの油圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−81828(P2012−81828A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228357(P2010−228357)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】