説明

航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システム

【課題】航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システムにおいて、検査のための作業時間を短くし、また、検査対象の構造体内の製造過程の接着剤などが、水と混同されるような問題などを改善し解決する。
【解決手段】航空機用のサンドイッチ構造体(1)内の水を検知し、その位置を突き止めるシステムであり、そのサンドイッチ構造体の中間層の中にある水を加熱する手段と、そのサンドイッチ構造体の表面で、その中間層の中の水のありかに対応する目立っている部位を示す表面画像を少なくとも一枚、撮影するための手段(5)を備え、その水を加熱する手段に、そのサンドイッチ構造体の内部に水の微粒子の共振周波数にほぼ等しい周波数のマイクロ波を発するための装置(2、3、6)を具備しているシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の箱型化構造体内、そして特に、サンドイッチ型の複合構造体内に水があることを検知し、その位置を特定するシステムに関するものである。本発明は、航空機産業分野、そして特に、航空機の構造を非破壊検査で保守する分野において、応用される。本発明は、特に、いわゆる箱型化構造体、すなわち、カーボン製の外被体一つと、蜂の巣状、つまり、ハニカム状の内部層とを有する、複合材でできた閉鎖構造体に応用される。
【背景技術】
【0002】
航空機産業の分野、そして特に、運行中の航空機の保守の分野において重要なのは、その航空機のサンドイッチ構造体中に水があることを検知することである。事実、水は、航空機の幾つかの部材の中、特に、サンドイッチ型の複合材でできた部材の中にある可能性がある。サンドイッチ型の材料はハニカム状の構造から成り立っており、それが内部の一層を成す。この内部層の両側が表皮で覆われている。そのハニカム状の構造は、Nomex(登録商標)のような、カートン製のハニカム状の一層、あるいは、グラス・ファイバー製もしくは発泡材製のハニカム状の一層である可能性もある。表皮の材料は、防水性のものであってもよい。そのような表皮を、その部材の縁の上で纏まるように加工して、それがそのハニカム状の構造の周りに外被体一つを形成するようにしてもよい。そのようにして形成された部材を箱型化構造体と呼ぶ。例えば、着陸装置のハッチ、昇降舵、レーダー用ドームであるレドーム、あるいはまた、昇降機などが、サンドイッチ複合材で製作されることの多い部材である。
【0003】
ところで、そのような部材、特に、箱型化構造体の中間層を形成する内部層の中に、水があると、サンドイッチ構造体の堅牢度と重さに影響し、それがひいては、飛行中の航空機の望ましくない挙動を引き起こしたりすることになりかねない。
【0004】
現在、そのようなサンドイッチ構造体の中に水があることは、保守の際の定期的な検査や、水があることの現れ(そのようなサンドイッチ構造体が膨らんだり、凝縮の染みができたりするなど)や、もっとも極端な場合には、そのサンドイッチ構造体の重量が増すことにより機械的作動装置に影響がでたりすることで、検知される。
【0005】
現在、航空機の保守業務の際の検査の場合には、サンドイッチ構造体の中に水があることは、一般的に、外部の熱源を用いて、検知される。この従来の検出技術は、要するに、外部の熱源により、サンドイッチ構造体内部にある水を加熱するというものである。この熱源は、恒温槽あるいは加熱カバー、すなわち、前記カバーで覆われた表面全体を加熱することのできる電熱用抵抗器を通したカバーであってもよい。水を加熱すると、そのサンドイッチ構造体が変形したり、あるいは、そのサンドイッチ構造体の表面温度が上がったりすることになる。航空機の保守の際に、その構造の変形や、その構造の表面温度の上昇が検出されると、保守要員は、そのことから、干渉観測装置(シェアログラフィシステム)や赤外線に感応するカメラを用いて、前記構造の中に水があるという結論を導き出す。
【0006】
サンドイッチ構造体の変形を検出することは、ホログラフィー干渉観測法により行われる。ホログラフィー干渉観測法は、二枚のホログラフィー画像を重ねて用いることを主とする位置決定方法であり、そのような二枚の画像で、一つの部材の、応力が形となって現れる部分が明らかになる。言い換えると、ホログラフィー干渉観測法というのは、要するに、ホログラフィー画像を二枚、つまり立体画像を二枚、製作し、その二枚を重ねることにより、そのような二枚の画像間の違いを浮かび上がらせるという方法である。そのような違いは、サンドイッチ構造体の変形に対応するものである。そのことから、その変形のあるところには、そのサンドイッチ構造体の中間層の中に水があるという結論を導き出す。
【0007】
その構造の表面の温度上昇の検出は、一枚の画像上に、その構造の表面で温度が異なる部位を際立たせることを特徴とする、感熱カメラまたは赤外線カメラを用いて行われる。そのような部位のあるところには、そのサンドイッチ構造体の中間層の中に水がある。
【0008】
しかしながら、このような技法では、検査対象のサンドイッチ構造体の中間層の中に浸透しているかも知れない水を加熱するために、前記サンドイッチ構造体全体を加熱しなければならない。ところで、忘れてならないのは、樹脂や接着剤を使いすぎているというような、そのサンドイッチ構造体を製造する過程での欠陥の幾つかには、内部に水を含むハニカム状の構造と、熱的な固有特徴を示す熱的シグナチャが同じものがあるということである。そういうわけで、熱を与えた結果、そのような欠陥は、カメラで撮影した画像の上では、水が浸透しているのと、見た目は同じことになってしまう。それゆえ、この技法では、そのような欠陥を区別することは全くできないことになる。樹脂や接着剤が過剰に存在することは、ハニカム状の構造内に水が存在するものとして検知される。その場合、保守要員は、必要のない修理をしてしまうことになる。
【0009】
さらに、検査対象のサンドイッチ構造体全体を加熱するということは、そのためには、比較的、嵩張り、重くて使いにくい装置を用いることを余儀なくされる。恒温槽で加熱する場合には、その恒温槽の中に、検査対象の部材を引き離して入れる必要がある。加熱カバーの場合には、その検査対象の部材に対してその加熱カバーを平らに広げて設置し、それを電源に接続しなければならない。
その上、サンドイッチ構造体の検査を行うためには、どんな修理を行うのでも、その前にあらかじめ、その航空機を動かなくして、その構造の中に水が浸透しているかいないかを決定する必要がある。航空機の検査に必要な時間は比較的長くなり、8時間程度になる。ところが、航空機一機を動かなくすることは高くつく。検査用に動かなくする、その時間だけでなく、そのサンドイッチ構造体を準備するのに必要な時間が約32時間もかかることになる上に、その航空機に取り付けられた状態では検査できない部材を分解し、再び取り付け、そして調整する時間もかかる。それゆえ、その航空機を動かさずにいる時間を合計すると、比較的、長時間となり、それにより費用も高くつくことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はまさに、以上に述べた技術的な不都合、すなわち、検査のためには検査対象のサンドイッチ構造体全体を加熱しなければならず、その場合にはその航空機を長時間動かなくするという総作業時間の長さと費用の問題、あるいは、測定用の赤外線カメラなどに関係して検査対象のサンドイッチ構造体内の製造過程の接着剤などが、水と混同される検査上の欠陥などを改善し解決することを目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明で提案するシステムは、そのサンドイッチ構造体内に浸透した水のみを加熱することができるものである。そのサンドイッチ構造体の表皮全体が加熱されるわけではないが、それは、そのサンドイッチ構造体の製造上の欠陥、過剰の接着剤など、がたとえあったとしても、そのようなものが加熱されることはなく、それゆえ、カメラによって検出することがないようにするためである。そのために、本発明が提案するのは、検査対象のサンドイッチ構造体の中に電磁波のマイクロ波を発生させることにより、一つのサンドイッチ構造体の中にある水を加熱することであり、そのようなマイクロ波によりその水が加熱されることになる。つぎに、水の検知は、感熱カメラまたはホログラフィー干渉観測装置によって行われる。
【0012】
このシステムの利点は、航空機を長く動かさずにおく必要もなく、そのサンドイッチ構造体の中に水があることを容易に検知できることであり、それにより、早期の修理を行うことができるので、費用も安く済むということである。
【0013】
さらに詳細には、本発明は、
航空機用のサンドイッチ構造体内の水を検知し、その位置を突き止めるシステムであり、そのサンドイッチ構造体の中間層の中にある水を加熱する手段と、そのサンドイッチ構造体の表面で、その中間層の中の水のありかに対応する目立っている部位を示す表面画像少なくとも一枚を撮影するための手段を備え、
その水を加熱する手段に、そのサンドイッチ構造体の内部に水の微粒子の共振周波数にほぼ等しい周波数のマイクロ波を発するための装置(2、3、6)を具備していることを特徴とする、航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システムに関するものである。
【0014】
本発明はまた、以下の特徴のうちの一つまたは複数を備えていてもよい。
−そのマイクロ波を発する装置が、そのサンドイッチ構造体の外部にある、マイクロ波発生器と、そのサンドイッチ構造体の内部に位置する、マイクロ波発射器を少なくとも一つと、そのようなマイクロ波をそのマイクロ波発生器からそのマイクロ波発射器に伝えるための導波管を少なくとも一つ、備えていること。
−そのマイクロ波発生器が、水の微粒子の共振周波数にほぼ等しい周波数のマイクロ波を発すること。
−その画像撮影手段が、そのサンドイッチ構造体の表面で、マイクロ波で加熱された水のありかに対応する熱のある部位を検知するのに適した、赤外線カメラまたは感熱カメラであること。
−その画像撮影手段が、そのサンドイッチ構造体の表面で、マイクロ波で加熱された水のありかに対応する変形した部位を検知するのに適した、ホログラフィー干渉観測装置であること。
−そのマイクロ波発射装置には、マイクロ波発射器が二つあること。
−そのような二つのマイクロ波発射器が発する周波数が異なっていること。
−マイクロ波発射器が、固定アンテナであること。
−固定アンテナが、そのサンドイッチ構造体上に固定された基電極と、そのサンドイッチ構造体の内部に位置する導電性のロッドとからなるものであること。
−マイクロ波発射器が、取り外し可能なアンテナであること。
−取り外し可能なアンテナが、そのサンドイッチ構造体の孔の中に導電性のロッドを一本、設置したものであり、その孔が、飛行中は、気密性の栓で塞がれること。
【0015】
本発明は、また、
航空機用のサンドイッチ構造体内の水を検知する方法であり、
−そのサンドイッチ構造体の内部にマイクロ波を発射する操作と、
−そのサンドイッチ構造体の表面の画像を少なくとも一枚、撮影する操作と、
−前記サンドイッチ構造体のその表面の画像の上で、前記サンドイッチ構造体の中間層の中の水のありかに対応する、目立つ部位を検知する操作と、
からなることを特徴とする、航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知方法に関するものでもある。
【0016】
以下に、各図面について簡単に説明する。
図1は、本発明による水を検知するシステムの一例を概略的に示すものである。
図2は、本発明により赤外線カメラで撮影した画像の一例を示すものである。
図3は、本発明のシステムで撮影した一つの画像の例を示すものであり、この場合は、熱的シグナチャが一様ではない。
図4は、本発明のシステムで撮影したもう一つの画像の例を示すものであり、この場合は、熱的シグナチャが一様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、サンドイッチ構造体内に水があることを、前記構造内にマイクロ波を注入することにより、検知するシステムに関するものである。そのようなシステムの概略を図1に示している。この図1は、検査対象のサンドイッチ構造体に、本発明のシステムを装備した一例を示すものである。検査対象のサンドイッチ構造体1は、ハニカム状の心材を一つまたは複数備える、閉じられた一つのサンドイッチ構造体または部材である。図1の例では、検査対象のサンドイッチ構造体1は、矩形である。当然ながら、その形状には様々なものが考えられるのであり、特に、航空機の構造に適合した形であればよい。この検査対象のサンドイッチ構造体は、例えば、航空機の前輪脚用のハッチとなることもある。
【0018】
検査対象のサンドイッチ構造体は、表皮がカーボン製で、ハニカム状の中間層を有するサンドイッチ構造体である。ハニカム状であることの利点は、電磁波を吸収しないことである。カーボンの利点は、電磁波を通さないことである。そういうわけで、そのような構造により、サンドイッチ構造体の内部に注入された電磁波は、カーボン製の二枚の表皮の間の、そのハニカム状の層の中を伝播していく。そのような電磁波は、水と出会うと、その水を加熱することになる。
【0019】
図1に示されるように、本発明のシステムには、検査対象のサンドイッチ構造体の内部にマイクロ波を発するための装置が一つある。この発射装置には、検査対象のサンドイッチ構造体1の外部に位置する電磁波発生器2が一つある。その電磁波発生器2が生じさせる電磁波はマイクロ波である。この発射装置にはまた、サンドイッチ構造体1の中に設置された、マイクロ波発射器3、あるいはアンテナが一本ある。その航空機の検査対象の部材のそれぞれの中に、少なくとも一つ、マイクロ波発射器が取り付けられている。検査対象の部材1のマイクロ波発射器3は、導波管6を介して、マイクロ波発生器2に接続されている。この導波管は同軸ケーブルでもよい。
【0020】
導波管6がマイクロ波発射器3に伝えるのは、マイクロ波発生器2が生成したマイクロ波である。マイクロ波発射器3は、そのようなマイクロ波を、サンドイッチ構造体1の内部の層、つまり、ハニカム状の層の中に伝える。内部の層の中を伝播しながら、マイクロ波は、サンドイッチ構造体1の中にある水を加熱する。
【0021】
本発明の好ましい実施態様の一つにおいては、マイクロ波は、水の微粒子の共振にほぼ等しい周波数で生成され、それにより、水の微粒子を励起させる。この励起が、つまりは、水の温度を上げることになる。水のこの温度上昇により放出される熱が、検査対象のサンドイッチ構造体の表面に伝わる。この熱が、そのサンドイッチ構造体の表面の一つの部位を加熱し、変形させることになる。
【0022】
本発明のシステムには、また、検査対象のサンドイッチ構造体1の外部に位置し、そのサンドイッチ構造体の表面の画像を少なくとも一枚撮影する、撮影装置5が一つある。本発明の実施態様の一つにおいては、その撮影装置は、検査対象のサンドイッチ構造体の画像を製作する感熱カメラまたは赤外線カメラである。感熱カメラと赤外線カメラには、さまざまな撮影要素をそれらの熱放射に応じて分析するという特性がある。どちらも、一枚の画像上で熱のある箇所を識別することができる。本発明では、そのようなカメラにより、検査対象のサンドイッチ構造体1の熱のある部位を識別することができる。熱のある各部位は、そのサンドイッチ構造体の内部の層の中で水が浸透している箇所の位置に、それぞれ対応している。
【0023】
もう一つの実施態様においては、その撮影装置は、検査対象のサンドイッチ構造体1の表面のホログラフィー画像を二枚製作する、ホログラフィー干渉観測装置である。それらのホログラフィー画像を重ね合わせると、変形した部位を検出することができる。本発明では、このホログラフィー干渉観測装置は、サンドイッチ構造体1の表面の、熱の作用で変形した部位を検出する。そのような変形部位は、それぞれが、そのサンドイッチ構造体の内部層の中での水が浸透している箇所に対応している。
【0024】
その撮影装置がどのようなタイプをものか(ホログラフィー干渉観測装置かカメラか)を問わず、検査対象のサンドイッチ構造体の表面を撮影して得られた画像は、前記表面の目立つ部位を示しているのであり、それはつまり、熱をもった部位か変形した部位であって、そのような部位は、そのサンドイッチ構造体の内部の水のある箇所に対応している。
【0025】
本発明のシステムの一例においては、マイクロ波発生器2が発するマイクロ波の周波数は2.45GHzである。マイクロ波は、サンドイッチ構造体のカーボン製の表皮を通らず、閉じられたサンドイッチ構造体の内部に閉じ込められたままになる。それゆえ、マイクロ波の発射は、保守要員の安全を脅かすおそれなしに行える。
【0026】
本発明の実施態様の一つにおいては、そのマイクロ波発射器は固定アンテナである。それゆえ、そのアンテナは、そのサンドイッチ構造体の内部に固定して設置される。この場合には、航空機で、検査する可能性のある部材のそれぞれに、少なくとも一本、固定アンテナを装備する。そのようなアンテナには、以下のようなものが付いていてもよい。
−検査対象のサンドイッチ構造体のカーボン製表皮に固定された基電極。その基電極には導波管6を受け取るのに適した入力端子が付いている。
−その基電極上に固定され、その検査対象のサンドイッチ構造体の内部の層の中で突起となる導電性のロッド。この導電性のロッドにより、マイクロ波がサンドイッチ構造体1の内部に伝わる。この導電性のロッドの長さは、その検査対象のサンドイッチ構造体に適合している。例えば、その導電性のロッドの長さは30mm程度とすることができる。
【0027】
もう一つの実施態様においては、そのマイクロ波発射器は取り外し可能なアンテナである。この場合には、その検査対象のサンドイッチ構造体のカーボン製の表皮に事前に孔を作る。検査の際には、そのアンテナを、この孔の中に設置する。保守の際を除いて、その孔は、気密性の栓で塞いでおく。この栓は、例えば、そのサンドイッチ構造体の中にねじ込むようにしてもよい。そうすることにより、そのサンドイッチ構造体を検査する際には、その栓のネジを緩めて抜いて、マイクロ波発射器をその栓に代わってその孔の中に設置する。検査が終われば、その栓をまたその孔の中にねじ込む。そのようなマイクロ波発射器の利点は、飛行中、特に、そのサンドイッチ構造体が気流の中に置かれているときに、まったく空気抵抗を生じさせないということころである。
【0028】
もう一つの実施態様においては、そのサンドイッチ構造体の検査が終わるとすぐに、樹脂でその孔を埋めてしまうというのもある。
【0029】
固定式であれ、取り外し式であれ、マイクロ波発射器は、特に、マイクロ波の発射出力が高い場合には、放射状のアンテナ、つまり、一つの平面の全方向に発射するアンテナであってよいし、特に、使用可能な出力が控えめである場合には、指向性ビームアンテナであってもよい。
【0030】
図2に示したのは、水が浸透したサンドイッチ構造体の表面の画像を赤外線カメラで撮影した一例である。この画像で目を引くのは、複数の染みがあることで、そのそれぞれがそのサンドイッチ構造体の表面で熱のある部位を検出しているのに対応している。そのような染みの一つに、取り分け丸みを帯びた形のものがある。それはマイクロ波発射器3であるアンテナに対応している。そのアンテナのあるところは分かっており、その画像の上で、他の染みとの関係で、そのアンテナに対応する染みの正確な位置を突き止めるのはたやすい。検出されたその他の染み7は、そのサンドイッチ構造体の表面の熱のある箇所に対応している。熱のある箇所のそれぞれが、そのサンドイッチ構造体内部に浸透した水のありかに対応している。そういうわけで、赤外線カメラで撮影した画像により、熱をもった部位の正確な位置を、サンドイッチ構造体の表皮の上で、突き止めることができるのであり、そのような熱のある部位の箇所が、内部の層の中の水のありかに対応している。水だけがマイクロ波に感応するのだから、そのサンドイッチ構造体の表面で検出される熱のある部位は、すべて、水が浸透している部位に対応している。過剰の接着剤などの製造過程上の欠陥は検出されない。
【0031】
以上に述べた実施態様においては、検査対象の表面の内部の層の中にマイクロ波を伝達するのに用いるマイクロ波発射器は一つだけである。マイクロ波発射器を一つしか用いないことにより、そのサンドイッチ構造体の中のマイクロ波の電磁界が一様でなくなる可能性がある。この場合には、水が浸透した部位の温度上昇も同じではなくなる。その画像の上での染みも外観が違ってくる。図3に示すのは、赤外線カメラで撮影した画像で、熱的シグナチャが一様でないものの一例である。この例では、そのマイクロ波発射器により、800mmの距離の部位に水を検知することができる。この部位においては、アンテナ3に加えて、直線Lに沿って四つの熱のある箇所8a、9a、10a、11a、12aが検出される。400mmの距離の熱のある箇所9aは他のものよりも大きい。800mmの距離の熱のある箇所11aは他のものよりも小さい。
【0032】
画像上の複数の染みがほぼ同じであるのに対応して、熱的シグナチャを一様にするために、本発明で提案する実施態様の一つでは、検査対象のサンドイッチ構造体の中に二つのマイクロ波発射器を設置しており、その結果、そのサンドイッチ構造体の中でのマイクロ波の電磁界は一様になっている。第二のマイクロ波発射器の周波数は、第一のマイクロ波発射器のものと異なっていてもよい。その場合、水の浸透した各部位の温度上昇は、似通ったものになる。それゆえ、画像上の熱のある各箇所の大きさも、図4の例で示すように、似たりよったりである。そういうわけで、画像上での熱のある各箇所8b、9b、10b、11b、12bの検出も容易になる。
【0033】
図3、4の例は、赤外線カメラで撮影した画像に対応している。当然ながら、水が浸透した部位であって、熱的シグナチャが一様なものを検出するのは、既に述べたように、ホログラフィー干渉観測装置で行うこともできる。
【0034】
以上に述べた本発明のシステムの利点は、浸透した水の加熱時間が早いことである。この加熱時間は、10秒から1分程度である。それゆえ、検査対象のサンドイッチ構造体の表面の温度上昇もまた、先行技術よりも急速であって、それにより、まったく分解しなくとも、部材の検査を迅速に行うことができる。そういうわけで、開始から結果を出すまでにかかる時間も、最初から最後までで、三十分未満である。このような検出時間の短縮により、検査をより頻繁に行うことができることから、修理をするにしても、そのサンドイッチ構造体が過度に劣化してしまわないうちに早めに行えるので、軽いもので済む。
【0035】
さらに、このシステムの利点は、比較的に嵩張らないことである。というのは、水を加熱するのに必要なのは、コンパクトになったマイクロ波発生器が一つと、その検査対象のサンドイッチ構造体の内部に位置するマイクロ波発射器が一つまたは複数だけだからである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による水を検知するシステムの一例を概略的に示す図
【図2】本発明により赤外線カメラで撮影した画像の一例を示す図
【図3】本発明のシステム得た画像で、熱的シグナチャが一様でない例
【図4】本発明のシステム得た画像で、熱的シグナチャが一様である例
【符号の説明】
【0037】
1 サンドイッチ構造体
2 マイクロ波発生器
3 マイクロ波発射器
5 感熱カメラ
6 導波管
7 染み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用のサンドイッチ構造体(1)内の水を検知し、その位置を突き止めるシステムであり、そのサンドイッチ構造体の中間層の中にある水を加熱する手段と、そのサンドイッチ構造体の表面で、その中間層の中の水のありかに対応する目立っている部位を示す表面画像少なくとも一枚を撮影するための手段を備え、
その水を加熱する手段に、そのサンドイッチ構造体の内部に水の微粒子の共振周波数にほぼ等しい周波数のマイクロ波を発するための装置(2、3、6)を具備していることを特徴とする、航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システム。
【請求項2】
前記マイクロ波を発する装置が、
−そのサンドイッチ構造体の外部にある、マイクロ波発生器(2)と、
−そのサンドイッチ構造体の内部に位置する、マイクロ波発射器(3)を少なくとも一つと、
−そのようなマイクロ波をそのマイクロ波発生器からそのマイクロ波発射器に伝えるための導波管(6)を少なくとも一つ、
備えていることを特徴とする、請求項1に記載の航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システム。
【請求項3】
前記画像撮影手段が、そのサンドイッチ構造体の表面で、マイクロ波で加熱された水のありかに対応する熱のある部位を検知するのに適した、赤外線カメラまたは感熱カメラ(5)であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システム。
【請求項4】
前記画像撮影手段が、そのサンドイッチ構造体の表面で、マイクロ波で加熱された水のありかに対応する変形した部位を検知するのに適した、ホログラフィー干渉観測装置であることを特徴とする、請求項1または2に記載の航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システム。
【請求項5】
前記マイクロ波発射装置には、マイクロ波発射器が二つあることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一つに記載の航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システム。
【請求項6】
前記二つのマイクロ波発射器が発する周波数が異なっていることを特徴とする、請求項5に記載の航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システム。
【請求項7】
前記マイクロ波発射器が、固定アンテナであることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一つに記載の航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システム。
【請求項8】
前記固定アンテナが、そのサンドイッチ構造体上に固定された基電極と、そのサンドイッチ構造体の内部に位置する導電性のロッドとからなるものであることを特徴とする、請求項7に記載の航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システム。
【請求項9】
前記マイクロ波発射器が、取り外し可能なアンテナであることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一つに記載の航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システム。
【請求項10】
前記取り外し可能なアンテナが、そのサンドイッチ構造体の孔の中に導電性のロッドを一本、設置したものであり、その孔が、飛行中は、気密性の栓で塞がれることを特徴とする、請求項9に記載の航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システム。
【請求項11】
航空機用のサンドイッチ構造体(1)内の水を検知し、その位置を突き止める方法であり、
−そのサンドイッチ構造体の内部に水の微粒子の共振周波数にほぼ等しい周波数のマイクロ波を発射する操作と、
−そのサンドイッチ構造体の表面の画像を少なくとも一枚、撮影する操作と、
−前記サンドイッチ構造体のその表面の画像の上で、前記サンドイッチ構造体の中間層の中の水のありかに対応する、目立つ部位を検知する操作と、
からなることを特徴とする、航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一つに記載の、航空機用のサンドイッチ構造体内の水の検知及び位置特定化システムを備えていることを特徴とする航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−516161(P2009−516161A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539481(P2008−539481)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051158
【国際公開番号】WO2007/057599
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(507189703)エアバス フランス (35)
【氏名又は名称原語表記】AIRBUS FRANCE
【Fターム(参考)】