説明

航空機管制システム

【課題】管制室管制官が管制塔管制官に対して通知するクリアランスライトを自動化可能な航空機管制システムを提供する。
【解決手段】管制室11の情報処理装置22は、空港0に設置した空港監視レーダ13および/または精測進入レーダ14が探知した到着機2の航空機位置情報に基づいて到達距離を算出し、該到達距離があらかじめ定めた複数の規定距離に達する都度、管制塔12のクリアランスライト端末24に対して到着機2の距離通知を自動的に送信するとともに、クリアランスライト端末24から確認信号を受信するか、一定時間経過するまで、レーダ表示装置23にその旨を表示して警告音を鳴動させる。ただし、到着機2が空港0から最も遠い距離の第1回目の規定距離に達した場合は、着陸形式選択メニューをレーダ表示装置23に表示し、管制室管制官4による着陸形式の選択操作がなされるまで前記距離通知の送信を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機管制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の空港における航空機管制システムにおいては、特開平5−107354号公報「航空機位置通報装置」にも記載されているように、空港の管制室管制官が、レーダ表示装置の表示画面を見ながら、到着機の到達距離を視認し、到着機が規定距離に到達する都度、手動操作で、管制塔管制官に対してその旨を通知していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−107354号公報(第2−3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、従来の航空機管制システムにおいては、管制室管制官は、到達距離を視認することによって、該到着機が規定距離に達したものと判断すると、手動操作により、管制塔管制官に通知する仕組みになっていた。該通知は1機につき、複数回行われるため、同時に、複数機の管制を行う管制室管制官には負担となっていた。また、視認により到達距離の判定を行うため、ヒューマンエラーの可能性もあった。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、管制室管制官が管制塔管制官に対して到着機の滑走路接地点までの距離や着陸形式を通知し、管制塔管制官がセパレーション(航空機の間隔)を判断するための機能であるクリアランスライトを自動化することが可能な航空機管制システムを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明による航空機管制システムは、次のような特徴的な構成を採用している。
【0007】
(1)空港に設置されたレーダ装置により探知された到着機の管制を行う航空機管制システムであって、前記レーダ装置が探知した前記到着機の航空機位置情報に基づいて到達距離を算出し、該到達距離があらかじめ定めた複数の規定距離に達する都度、管制塔のクリアランスライト端末に対して距離通知を自動的に送信する情報処理装置を、管制室に備えている航空機管制システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の航空機管制システムによれば、以下のような効果を奏することができる。
第1の効果は、管制室の管制室管制官の負荷が軽減することである。その理由は、管制室管制官が到着機の到達距離を常に目視で監視し、到着機があらかじめ定めた規定距離(例えば、10NM(Nautical Mile)、6NM、3NM等)に達する都度、レーダ表示装置の手動操作により管制塔の管制塔管制官に対して距離通知を行う必要がなくなるためである。
【0009】
第2の効果は、航空機管制業務の安全性が向上することである。その理由は、到着機の到達距離の監視を、管制室管制官の目視確認という人間ではなく、精測進入レーダ(PAR)または空港監視レーダ(ASR)からの航空機位置情報に基づいて情報処理装置つまりコンピュータによって自動的に行うので、ヒューマンエラーの可能性が低減されるためである。
【0010】
第3の効果は、昨今の航空交通量の増加に対応することができることにある。その理由は、管制室管制官の負荷が軽減することによって、より多くの航空機を管制することが可能になるからである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る航空機管制システムの第1の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す航空機管制システムの管制室に配置されているレーダ表示装置の航空機の画面表示例を示す模式図である。
【図3】図1に示す航空機管制システムの管制塔に配置されているクリアランスライト端末の表示およびボタン配置例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る航空機管制システムの第2の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による航空機管制システムの好適な実施例について添付図を参照して説明する。
【0013】
(本発明の特徴)
従来、管制室管制官がレーダ表示画面を見ながら、到着機があらかじめ定めた規定距離に到達したことを視認した際に、手動操作にて、管制塔管制官へ伝達していたクリアランスライト機能を、精測進入レーダ(PAR:Precision Approach Radar)や空港監視レーダ(ASR:Airport Surveillance Radar)の探知結果を利用して、コンピュータによって自動化し、到着機があらかじめ定めた規定距離に到達したことを、管制室管制官を介することなく、自動的に、管制塔管制官へ伝達することを可能としている点に、本発明の特徴がある。
【0014】
而して、管制室管制官の負荷の軽減やヒューマンエラーの低減が可能となる。さらに、本発明は、既設の装置や伝送経路を利用することができるため、導入コストが小さいという利点もある。
【0015】
(第1の実施形態の構成)
次に、本発明に係る航空機管制システムの第1の実施形態の構成例について図1を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係る航空機管制システムの第1の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示す航空機管制システム100は、空港0と、滑走路1と、空港0への到着機2と滑走路1上の航空機3と、管制室11と、管制塔12と、空港監視レーダ(ASR:Airport Surveillance Radar)13と、精測進入レーダ(PAR:Precision Approach Radar)14とから構成されている。
【0017】
管制室11は、空港監視レーダ(ASR)13および精測進入レーダ(PAR)14から送信されてくる航空機情報を処理する情報処理装置22と、情報処理装置22で処理した航空機情報等を表示するレーダ表示装置23と、レーダ表示装置23の画面を見ながら航空機管制を行う管制室管制官4とを少なくとも含んで構成される。
【0018】
管制塔12は、管制室11の情報処理装置22から通知されてくる到着機2のTOL(Type Of Landing:着陸形式)および到達距離を表示するクリアランスライト端末24と、目視にて、空港0内や空港0周辺の空域を監視し航空機管制を行う管制塔管制官5とを少なくとも含んで構成される。ここで、TOL(着陸形式)には複数の形式があり、例えば、T/G(Touch and Go)、L/A(Low Approach)、F/S(Full Stop)等がある。
【0019】
図2は、図1に示す航空機管制システム100の管制室11に配置されているレーダ表示装置23の到着機の画面表示例を示す模式図であり、図2(A)ないし図2(G)は、到着機2(航空機識別符号:ABC1234)に対する管制状況に応じて状態表示31から状態表示37への順次遷移するレーダ表示装置23の画面表示例を示している。図2において、符号31〜37は航空機の情報および状態を示す状態表示であり、符号Fは管制席シンボル、ABC1234は航空機識別符号、XXXは高度、YYは対地速度をそれぞれ示す。
【0020】
また、図3は、図1に示す航空機管制システム100の管制塔12に配置されているクリアランスライト端末24の表示およびボタン配置例を示す模式図である。図3において、クリアランスライト端末24はタッチパネル式の表示画面を備えており、タッチパネル40は、航空機識別符号表示部41と、着陸形式表示部42と、到着機到達距離表示部43と、着陸許可(LANDING)ボタン44と、着陸不可(CLEAR)ボタン45と、確認(ACK)ボタン46とで構成される。
【0021】
(第1の実施形態の動作の説明)
次に、図1〜3を参照しながら、本発明の第1の実施形態の動作の一例について詳細に説明する。
【0022】
まず、空港0に設置された空港監視レーダ(ASR)13および精測進入レーダ(PAR)14は、探知した到着機2の距離や方位を航空機位置情報として管制室11の情報処理装置22に送信する。次に、航空機位置情報を受信した情報処理装置22は、受信した航空機位置情報を処理し、航空機情報をレーダ表示装置23に表示する。
【0023】
管制室管制官4は、レーダ表示装置23の画面を監視し、航空機管制を行う。管制室管制官4は、空港監視レーダ(ASR)13からの探知情報により、到着機2の到達距離があらかじめ定めた規定距離のうち空港0から最も遠い第1回目の規定距離である15NM(Nautical Mile)に達したことを確認すると、管制室管制官4の手動操作により、管制塔管制官5に対する第1回目の距離通知となる15NMイニシャルを行う。以降の距離通知は、精測進入レーダ(PAR)14からの航空機位置情報に基づいて、情報処理装置22が自動的に到達距離を算出し、到着機2が規定距離(例えば、10NM、6NM、3NM等)に達する都度、情報処理装置22からレーダ表示装置23および管制塔12のクリアランスライト端末24へ自動的に通知する。
【0024】
次に、図2のレーダ表示装置23の航空機の画面表示例を参照しながら、本実施形態における画面表示の遷移および管制室管制官4の動作についてさらに詳細に説明する。
【0025】
空港監視レーダ(ASR)13や精測進入レーダ(PAR)14により到着機2を探知すると、探知した到着機2の距離や方位を航空機位置情報として管制室11の情報処理装置22に送信してくるので、情報処理装置22は、受信した航空機位置情報を処理し、図2(A)に示すように、管制席シンボルFから見て、右上の方位に航空機識別符号“ABC1234”の到着機2が高度“XXX”、対地速度“YY”で飛行中であることをレーダ表示装置23に表示する。
【0026】
レーダ表示装置23により航空機識別符号“ABC1234”の到着機2の飛行を確認した管制室管制官4は、到着機2(航空機識別符号:ABC1234)の到達距離が15NMに達したことを空港監視レーダ(ASR)13からの情報に基づいて確認すると、レーダ表示装置23に表示されている図2(A)の状態表示31上で右クリックする。これにより、レーダ表示装置23の表示は、図2(B)に示す状態表示32に移行し、ポップアップメニューとしてTOL(着陸形式)選択メニュー32aが表示される。ここで、TOL(着陸形式)選択メニュー32aには、FS(Full Stop)、TG(Touch and Go)、LA(Low Approach)、NG(着陸拒否)、CLEAR(着陸不可)の各項目が表示されている例を示している。
【0027】
管制室管制官4が、TOL(着陸形式)選択メニュー32aの中からいずれかのTOL(着陸形式)を選択して、該当する項目例えばFS(Full Stop)をクリックすると、航空機識別符号“ABC1234”と選択した当該機のTOL(着陸形式)例えばFS(Full Stop)とが管制塔12のクリアランスライト端末24へ到着機2の第1回目の距離通知として通知される。これを15NMイニシャルとする。このとき、レーダ表示装置23の表示は、図2(C)に示す状態表示33に移行し、到着機2(航空機識別符号:ABC1234)の到達距離15NMを表す「15」が点滅するとともに、警告音(ピー・ピー・)が鳴動する。さらに、レーダ表示装置23には、選択した当該機のTOL(着陸形式)例えばFS(Full
Stop)が表示される。
【0028】
しかる後、あらかじめ定めた一定時間後あるいは管制塔管制官5の確認(ACK)ボタン46の押下情報を受け取ることによって、レーダ表示装置23に表示されている到達距離表示と警告音鳴動とは止まり、図2(D)に示す状態表示34に移行する。状態表示34においては、到達距離15NMを表す「15」の表示は消えて、選択した当該機のTOL(着陸形式)例えばFS(Full Stop)が表示されている状態になる。
【0029】
ここで、当該機(航空機識別符号:ABC1234)に対して管制塔管制官5が着陸許可を行う場合は、クリアランスライト端末24の着陸許可(LANDING)ボタン44の押下操作によって、該着陸許可を示す着陸許可信号がクリアランスライト端末24から情報処理装置22に送信されてくるので、レーダ表示装置23の表示は、図2(E)に示す状態表示35に移行する。状態表示35においては、到着機2(航空機識別符号:ABC1234)の着陸形式FSによる着陸許可を示す「L」が点滅表示するとともに、「ピー・ピー・ピー」の警告音が鳴動する。該点滅表示および警告音は、管制室管制官4による特定の操作またはあらかじめ定めた経過時間後に停止される。
【0030】
一方、当該機(航空機識別符号:ABC1234)が着陸不可となった場合は、管制塔管制官5によるクリアランスライト端末24の着陸不可(CLEAR)ボタン45の押下操作によって、該着陸不可を示す着陸不可信号がクリアランスライト端末24から情報処理装置22に送信されてくるので、レーダ表示装置23の表示は、図2(F)に示す状態表示36に移行する。状態表示36においては、到着機2(航空機識別符号:ABC1234)の着陸形式FSによる着陸不可を示す「C」が点滅表示するとともに、「ピー・ピー・ピー」の警告音が鳴動する。該点滅表示および警告音は、管制室管制官4による特定の操作またはあらかじめ定めた経過時間後に停止される。
【0031】
次に、精測進入レーダ(PAR)14からの航空機位置情報に基づいて、情報処理装置22において、当該機(航空機識別符号:ABC1234)が、あらかじめ定めた複数の規定距離のうち、次の規定距離(例:10NM)に達したことを確認すると、レーダ表示装置23の表示は、図2(G)に示す状態表示37に移行する。状態表示37においては、到着機2(航空機識別符号:ABC1234)の到達距離10NMを表す「10」が点滅するとともに、警告音(ピー・ピー・ピー)が鳴動する。さらに、情報処理装置22は、航空機識別符号“ABC1234”と到達距離10NMとを示す情報を第2回目の距離通知としてクリアランスライト端末24に自動的に送信する。
【0032】
以降の距離通知は、前述のように、精測進入レーダ(PAR)14からの航空機位置情報に基づいて、情報処理装置22が自動的に到達距離を算出し、到着機2(航空機識別符号:ABC1234)があらかじめ定めた規定距離(例えば、6NM、3NM等)に達する都度、レーダ表示装置23および管制塔12のクリアランスライト端末24へ通知する動作を繰り返す。
【0033】
なお、図2の説明においては、管制室管制官4は、図2(B)に示す状態表示32つまり15NMイニシャル時においてのみTOL(着陸形式)を選択して、選択したTOLを、管制室11のレーダ表示装置23に表示するとともに、管制塔12のクリアランスライト端末24へ通知することにより、管制塔管制官5へ通知する例を示したが、例えば、15NMイニシャル時のみならず、あらかじめ定めた複数の規定距離(例えば、10NM、6NM、3NM等)に達する都度、あるいは、管制室管制官4によりTOL(着陸形式)の変更指示を行う判断がなされる都度、TOL(着陸形式)の選択画面を表示させて、選択したTOLを、管制室11のレーダ表示装置23に表示するとともに、管制塔12のクリアランスライト端末24へ通知することにより、管制塔管制官5へ通知するようにしても良い。
【0034】
次に、図3のクリアランスライト端末24の表示およびボタン配置例を参照しながら、本実施形態における管制塔管制官5の動作についてさらに詳細に説明する。
【0035】
管制室管制官4からの第1回目の距離通知となる15NMイニシャルが行われて、管制室11の情報処理装置22から、航空機識別符号“ABC1234”と管制室管制官4が選択した当該機のTOL(着陸形式)例えばFS(Full Stop)とが通知されてくると、クリアランスライト端末24には、当該機の航空機識別符号“ABC1234”が航空機識別符号表示部41にセットされ、管制室管制官4により選択されたTOL例えばFS(Full
Stop)が着陸形式表示部42にセットされ、かつ、到着機到達距離表示部43の「15」が点滅して、あらかじめ定めた規定距離のうち空港0から最も遠い規定距離である15NMに達していることを示すとともに、「ピー・ピー・ピー」の警告音が鳴動する。
【0036】
航空機識別符号“ABC1234”の航空機に関する15NMイニシャルを確認した管制塔管制官5が、確認(ACK)ボタン46を押下し、自分が認識したことを、管制室11の情報処理装置22に返送することにより、管制室管制官4に伝える。また、確認(ACK)ボタン46を押下することにとって、到着機到達距離表示部43の15NMに到達したことを示す「15」の点滅が停止し、「ピー・ピー・ピー」の警告音の鳴動も停止する。
【0037】
次に、管制塔管制官5は、空港0内および空港0周辺空域を確認し、着陸可能である場合には、着陸許可(LANDING)ボタン44を押下し、着陸不可である場合は着陸不可(CLEAR)ボタン45を押下する。これにより、着陸の可否が、管制室11の情報処理装置22に送信されて、レーダ表示装置23の表示が、図2(E)の状態表示35または図2(F)の状態表示36に切り替わることによって、管制室管制官4へ伝えられる。着陸の可否の通知結果に応じた指示が、管制室管制官4から当該機(航空機識別符号:ABC1234)のパイロットに対してなされる。
【0038】
以降、到着機2(航空機識別符号:ABC1234)があらかじめ定めた規定距離(例えば、10NM、6NM、3NM等)に達する都度、管制室11の情報処理装置22から、その旨の通知が自動的にクリアランスライト端末24に送信されてきて、到着機到達距離表示部43の該当する表示(例えば、10NM、6NM、3NM等)が点滅し、「ピー・ピー・ピー」の警告音が鳴動するので、管制塔管制官5は、確認(ACK)ボタン46による確認操作を繰り返す。さらに、その都度、管制塔管制官5は、空港0内および空港0周辺空域を確認し、着陸可能である場合には、着陸許可(LANDING)ボタン44を押下し、着陸不可である場合は着陸不可(CLEAR)ボタン45を押下する操作を繰り返す。
【0039】
以上に説明したように、本第1の実施形態においては、管制室11のレーダ表示装置23の表示画面において、到着機2の到達距離が15NMとなった時点で、管制室管制官4は、手動操作により、管制塔12の管制塔管制官5に対してTOL(着陸形式)の通知を15NMイニシャル(第1回目の距離通知)として行う。第2回目以降の距離通知は、以下のように、管制室管制官4が介在することなく、管制室11の情報処理装置22から自動的に通知する。
【0040】
つまり、精測進入レーダ(PAR)14から管制室11の情報処理装置(コンピュータ)22に送信されてくる航空機位置情報に基づいて、情報処理装置22は、到着機2の到達距離を自動的に算出し、あらかじめ定めた規定距離(例えば、10NM、6NM、3NM等)に到着機2が到達したものと判定すると、自動的に、管制室11のレーダ表示装置23にその旨を表示するとともに、管制塔12のクリアランスライト端末24へ通知することにより、管制塔12の管制塔管制官5に対して距離通知を行う。
【0041】
なお、15NMイニシャル(第1回目の距離通知)について、レーダ表示装置23の画面にて到着機2の15NM(Nautical Mile)到達を確認した管制室管制官が、レーダ表示装置23の画面の手動操作により、管制塔管制官5に対して通知することとし、情報処理装置22から、自動的に、管制塔管制官5に対して通知しない理由は、15NMイニシャルを行う時点では、到着機2は「可変コース(遠距離)」の領域にあって、情報処理装置22は、到着機2の航空機位置情報から到達距離を自動的に算出することが不可能であるからである。
【0042】
つまり、「可変コース(遠距離)」の領域においては、到着機2がどのルートを通って着陸するかは、そのときの気象状態やその他の航空機の飛行状態によって、空港の管制官が判断するため、当該到着機2の航空機位置情報だけに基づいて、情報処理装置22(コンピュータ)によって、到達距離を自動的に算出することが不可能である。
【0043】
これに対して、あらかじめ定めた規定距離のうち、第2回目以降の規定距離(例えば、10NM、6NM、3NM等)に達した場合には、到着機2は、いわゆる「不変コース(最終進入コース)」を飛行している状態にあって、滑走路から一定範囲内の距離として、すべての到着機が、一様に、同一のコースを通って滑走路へ向かって直進する状態にあるので、到着機2の航空機位置情報に基づいて、情報処理装置22(コンピュータ)によって、到達距離を自動的に算出することが可能である。
【0044】
(第1の実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本発明の第1の実施形態においては、以下のような効果が得られる。
【0045】
第1の効果は、管制室11の管制室管制官4の負荷が軽減することである。その理由は、管制室管制官4が到着機2の到達距離を常に目視で監視し、到着機2があらかじめ定めた規定距離(例えば、10NM、6NM、3NM等)に達する都度、レーダ表示装置23の手動操作により管制塔12の管制塔管制官5に対して距離通知を行う必要がなくなるためである。
【0046】
第2の効果は、航空機管制業務の安全性が向上することである。その理由は、到着機2の到達距離の監視を、管制室管制官4の目視確認という人間ではなく、精測進入レーダ(PAR)14からの航空機位置情報に基づいて情報処理装置22つまりコンピュータによって自動的に行うので、ヒューマンエラーの可能性が低減されるためである。
【0047】
第3の効果は、昨今の航空交通量の増加に対応することができることにある。その理由は、管制室管制官4の負荷が軽減することによって、より多くの航空機を管制することが可能になるからである。
【0048】
(第2の実施形態の構成)
次に、本発明に係る航空機管制システムの第2の実施形態の構成例について図4を用いて説明する。図4は、本発明に係る航空機管制システムの第2の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【0049】
図4に示す航空機管制システム100Aは、第1の実施形態として図1に示した航空機管制システム100から精測進入レーダ(PAR)14を削除して、空港監視レーダ(ASR)13のみがレーダ装置として備えられている場合を示している。精測進入レーダ(PAR)14が設置されていない空港においては、本実施形態の航空機管制システム100Aにより、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0050】
ただし、航空機の位置精度は、空港監視レーダ(ASR)13と比較して、精測進入レーダ(PAR)14の方が高いので、精測進入レーダ(PAR)14が設置されている空港の場合は、第1の実施形態のシステム構成のように、精測進入レーダ(PAR)14を併用することが望ましい。
【0051】
なお、空港監視レーダ(ASR)13を利用しないで、精測進入レーダ(PAR)14のみを利用するというシステム構成は、精測進入レーダ(PAR)14の覆域では、現状、15NMまでの到達距離しか監視することができないので、空港の航空機管制用システムとして構成することは不可能である。
【0052】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施態様は、課題を解決するための手段における構成(1)に加えて、次のような構成として表現できる。
(2)前記情報処理装置は、算出した前記到着機の到達距離が前記規定距離に達していた場合、前記管制室に備えているレーダ表示装置にその旨を表示するとともに、警告音を鳴動させる上記(1)の航空機管制システム。
(3)前記情報処理装置は、前記クリアランスライト端末から前記距離通知を受信した旨を示す確認信号が返送されてきた際に、あるいは、あらかじめ定めた時間が経過した際に、前記警告音を停止させるとともに、前記レーダ表示装置に表示されている前記規定距離に達した旨の表示を消去する上記(2)の航空機管制システム。
(4)前記情報処理装置は、あらかじめ定めた前記規定距離として、当該空港から最も遠い距離になる第1回目の規定距離に前記到着機の到達距離が達したことを前記レーダ装置の探知結果に基づいて管制官が認識した場合、該管制官の操作により、前記到着機の着陸形式を前記管制官が選択するための着陸形式選択メニューを前記レーダ表示装置に表示させ、該着陸形式選択メニューからいずれかの着陸形式の選択操作が前記管制官によってなされるまで、前記クリアランスライト端末に対する前記距離通知の送信を抑止する上記(1)ないし(3)のいずれかの航空機管制システム。
(5)前記情報処理装置は、前記レーダ表示装置に前記規定距離に達した旨を表示する際に、前記到着機の着陸形式を管制官が選択するための着陸形式選択メニューを前記レーダ表示装置に表示させることを可能とし、該着陸形式選択メニューを前記レーダ表示装置に表示した場合には、該着陸形式選択メニューからいずれかの着陸形式の選択操作が前記管制官によってなされるまで、前記クリアランスライト端末に対する前記距離通知の送信を抑止する上記(1)ないし(3)のいずれかの航空機管制システム。
(6)前記情報処理装置は、前記到着機の着陸形式として前記管制室管制官が前記着陸形式選択メニューの中から着陸形式を選択する操作を行った際に、選択した前記着陸形式を前記レーダ表示装置に表示するとともに、前記クリアランスライト端末に対して前記距離通知を送信する上記(4)または(5)の航空機管制システム。
(7)前記情報処理装置は、前記クリアランスライト端末から前記距離通知に対する着陸許可信号または着陸不可信号が返送されてきた際に、その旨を示す情報を前記レーダ表示装置に表示するとともに、警告音を鳴動させる上記(1)ないし(6)のいずれかの航空機管制システム。
(8)前記情報処理装置は、管制官が確認した旨を示す操作をした際に、あるいは、あらかじめ定めた時間が経過した際に、前記警告音を停止させるとともに、前記レーダ表示装置に表示されている着陸許可または着陸不可の旨の表示を消去する上記(7)の航空機管制システム。
(9)前記クリアランスライト端末に送信する前記距離通知として、該当する到着機を特定する航空機識別符号、1ないし複数の前記規定距離のうち、前記到着機が到達した規定距離、を示す情報が少なくとも含まれている上記(1)ないし(8)のいずれかの航空機管制システム。
(10)前記クリアランスライト端末は、航空機識別符号表示部、着陸形式表示部、到着機到達距離表示部、着陸許可ボタン、着陸不可ボタン、確認ボタンを少なくとも有するタッチパネル形式の表示画面を備え、前記情報処理装置から前記距離通知を受信した際に、該距離通知に含まれている前記航空機識別符号、選択された着陸形式、到達した前記規定距離を示す情報を、前記航空機識別符号表示部、前記着陸形式表示部、前記航空機識別符号表示部にそれぞれ表示するとともに、警告音を鳴動させる上記(9)の航空機管制システム。
(11)前記クリアランスライト端末は、前記表示画面上の前記確認ボタンが押下された際に、到達した前記規定距離を示す情報を前記航空機識別符号表示部から消去し、前記警告音の鳴動を停止させるとともに、その旨を示す確認信号を前記情報処理装置に返送する上記(10)の航空機管制システム。
(12)前記クリアランスライト端末は、前記表示画面上の前記着陸許可ボタンまたは前記着陸不可ボタンが押下された際に、その旨を示す着陸許可信号または着陸不可信号を前記情報処理装置に送信する上記(10)の航空機管制システム。
(13)前記レーダ装置は、空港監視レーダと精測進入レーダとの双方または空港監視レーダからなっている上記(1)ないし(12)のいずれかの航空機管制システム。
【符号の説明】
【0053】
0 空港
1 滑走路
2 到着機
3 航空機
4 管制室管制官
5 管制塔管制官
11 管制室
12 管制塔
13 空港監視レーダ(ASR:Airport Surveillance Radar)
14 精測進入レーダ(PAR:Precision Approach Radar)
22 情報処理装置
23 レーダ表示装置
24 クリアランスライト端末
31 状態表示
31 状態表示
32 状態表示
32a TOL(着陸形式)選択メニュー
33 状態表示
34 状態表示
35 状態表示
36 状態表示
37 状態表示
40 タッチパネル
41 航空機識別符号表示部
42 着陸形式表示部
43 到着機到達距離表示部
44 着陸許可ボタン(LANDINGボタン)
45 着陸不可ボタン(CLEARボタン)
46 確認ボタン(ACKボタン)
100 航空機管制システム
100A 航空機管制システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空港に設置されたレーダ装置により探知された到着機の管制を行う航空機管制システムであって、前記レーダ装置が探知した前記到着機の航空機位置情報に基づいて到達距離を算出し、該到達距離があらかじめ定めた複数の規定距離に達する都度、管制塔のクリアランスライト端末に対して距離通知を自動的に送信する情報処理装置を、管制室に備えていることを特徴とする航空機管制システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、算出した前記到着機の到達距離が前記規定距離に達していた場合、前記管制室に備えているレーダ表示装置にその旨を表示するとともに、警告音を鳴動させることを特徴とする請求項1に記載の航空機管制システム。
【請求項3】
前記情報処理装置は、前記クリアランスライト端末から前記距離通知を受信した旨を示す確認信号が返送されてきた際に、あるいは、あらかじめ定めた時間が経過した際に、前記警告音を停止させるとともに、前記レーダ表示装置に表示されている前記規定距離に達した旨の表示を消去することを特徴とする請求項2に記載の航空機管制システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、あらかじめ定めた前記規定距離として、当該空港から最も遠い距離になる第1回目の規定距離に前記到着機の到達距離が達したことを前記レーダ装置の探知結果に基づいて管制官が認識した場合、該管制官の操作により、前記到着機の着陸形式を前記管制官が選択するための着陸形式選択メニューを前記レーダ表示装置に表示させ、該着陸形式選択メニューからいずれかの着陸形式の選択操作が前記管制官によってなされるまで、前記クリアランスライト端末に対する前記距離通知の送信を抑止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の航空機管制システム。
【請求項5】
前記情報処理装置は、前記レーダ表示装置に前記規定距離に達した旨を表示する際に、前記到着機の着陸形式を管制官が選択するための着陸形式選択メニューを前記レーダ表示装置に表示させることを可能とし、該着陸形式選択メニューを前記レーダ表示装置に表示した場合には、該着陸形式選択メニューからいずれかの着陸形式の選択操作が前記管制官によってなされるまで、前記クリアランスライト端末に対する前記距離通知の送信を抑止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の航空機管制システム。
【請求項6】
前記情報処理装置は、前記到着機の着陸形式として前記管制室管制官が前記着陸形式選択メニューの中から着陸形式を選択する操作を行った際に、選択した前記着陸形式を前記レーダ表示装置に表示するとともに、前記クリアランスライト端末に対して前記距離通知を送信することを特徴とする請求項4または5に記載の航空機管制システム。
【請求項7】
前記情報処理装置は、前記クリアランスライト端末から着陸許可信号または着陸不可信号が返送されてきた際に、その旨を示す情報を前記レーダ表示装置に表示するとともに、警告音を鳴動させることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の航空機管制システム。
【請求項8】
前記情報処理装置は、管制官が確認した旨を示す操作をした際に、あるいは、あらかじめ定めた時間が経過した際に、前記警告音を停止させるとともに、前記レーダ表示装置に表示されている着陸許可または着陸不可の旨の表示を消去することを特徴とする請求項7に記載の航空機管制システム。
【請求項9】
前記クリアランスライト端末に送信する前記距離通知として、該当する到着機を特定する航空機識別符号、複数の前記規定距離のうち、前記到着機が到達した規定距離、を示す情報が少なくとも含まれていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の航空機管制システム。
【請求項10】
前記クリアランスライト端末は、航空機識別符号表示部、着陸形式表示部、到着機到達距離表示部、着陸許可ボタン、着陸不可ボタン、確認ボタンを少なくとも有するタッチパネル形式の表示画面を備え、前記情報処理装置から前記距離通知を受信した際に、該距離通知に含まれている前記航空機識別符号、選択された着陸形式、到達した前記規定距離を示す情報を、前記航空機識別符号表示部、前記着陸形式表示部、前記航空機識別符号表示部にそれぞれ表示するとともに、警告音を鳴動させることを特徴とする請求項9に記載の航空機管制システム。
【請求項11】
前記クリアランスライト端末は、前記表示画面上の前記確認ボタンが押下された際に、到達した前記規定距離を示す情報を前記航空機識別符号表示部から消去し、前記警告音の鳴動を停止させるとともに、その旨を示す確認信号を前記情報処理装置に返送することを特徴とする請求項10に記載の航空機管制システム。
【請求項12】
前記クリアランスライト端末は、前記表示画面上の前記着陸許可ボタンまたは前記着陸不可ボタンが押下された際に、その旨を示す着陸許可信号または着陸不可信号を前記情報処理装置に送信することを特徴とする請求項10に記載の航空機管制システム。
【請求項13】
前記レーダ装置は、空港監視レーダと精測進入レーダとの双方または空港監視レーダからなっていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の航空機管制システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−203920(P2010−203920A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49798(P2009−49798)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】