説明

舶用二サイクルエンジン用のシステム油配合物

【課題】二サイクル・クロスヘッド舶用ディーゼルエンジンのような舶用エンジンの機械部分を潤滑に作動させるための酸化安定性、粘度増加抑制及び/又は清浄性が優れた舶用システム油組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも50モル%のアルキル基がC20以上である少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と、塩基とを含む混合物を反応させることを含む方法により製造された、カルボキシレート含有清浄剤の塩を有する舶用システム油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、舶用システム油、およびそのための方法/添加剤に関する。特には、本出願は、二サイクル・クロスヘッド舶用ディーゼルエンジン用の舶用システム油、およびそのための方法/添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
あるタイプの船舶ディーゼル推進用エンジンは、しばしばクロスヘッドエンジンと呼ばれる低速の二サイクルエンジンである。クロスヘッドエンジンでは、点火シリンダとクランクケースを別々に、シリンダ油と舶用システム油でそれぞれ潤滑下に作動させる。舶用システム油は、クロスヘッド舶用ディーゼルエンジンのクランクケースに潤滑作用を施し、またエンジンの一部、特にはピストンのアンダークラウンを冷却することができる。エンジンによっては、舶用システム油はギヤや燃料ポンプに潤滑作用を施す機能も果たす。一般にシステム油にとって重要な特性は、酸化安定性、粘度増加抑制および油の清浄性である。
【0003】
より高性能のエンジンの開発が、結果として、ピストン内でアンダークラウン堆積物形成を招くことになる潤滑油への燃料混入による障害を増大させている。その結果、二サイクルエンジン用の舶用システム油に対する要求は、より一層過酷で容赦のないものになっている。特許文献1に記載されているように、最近になって新規な「カルボキシレート」清浄剤が開発された。その発明者は、そのような清浄添加剤は、少なくとも50モル%のアルキル基がC20以上である少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性塩を含み、舶用システム油に使用することができること、そして得られた舶用システム油は、少なくとも酸化安定性、粘度増加抑制および清浄性といった領域で、今日利用できる技術よりも、特に従来のサリチレート含有清浄剤に比べて優れた性能をもたらすことを見出している。
【0004】
潤滑油に使用できる過塩基性清浄剤および他の添加剤は数多くあり、下記の文献はその一部を示している。
【0005】
特許文献1には、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とするが、アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート類、またはこれらのうちの一種以上とアルキルフェノール類との混合物を過塩基化することによって生成する過塩基性清浄剤の製造が記載されている。
【0006】
特許文献2には、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とするが、炭化水素フェノール類を促進剤の存在下でアルカリ土類金属塩基を用いて中和し、少なくとも20モル%の出発炭化水素フェノール類を炭化水素ヒドロキシベンゾエート類に変換するのに充分なカルボキシル化条件下で、炭化水素フェネート類を二酸化炭素を用いてカルボキシル化し、そして生成した生成物から少なくとも10%の出発炭化水素フェノール類を分離することによって製造される未硫化単環カルボキシレート含有添加剤が記載されている。
【0007】
特許文献3には、炭素原子数16乃至36のカルボン酸を含む芳香族カルボキシルヒドロキシ酸のアルカリ土類金属塩類を含む潤滑油添加剤が記載されている。
【0008】
特許文献4には、油、耐摩耗性添加剤、および炭化水素残基で置換されたカルシウムサリチレートのような芳香族カルボキシレートを含む唯一の油溶性過塩基性清浄剤を含有する潤滑油組成物が記載されている。
【0009】
特許文献5には、潤滑油添加剤として多価金属塩、特にはカルシウム、およびアルキル基に炭素原子を12個より多く、好ましくは14乃至18個含むアルキルサリチル酸を含有する潤滑油組成物が記載されている。
【0010】
特許文献6には、油溶性有機酸、例えばスルホン酸炭化水素、ナフテン酸またはアルキルヒドロキシ安息香酸、特には炭素原子数22までのアルキル基を持つアルキルサリチル酸の多価金属塩類が記載されている。アルキルサリチル酸類は、特許文献7、8及び9に記載された方法に従って、アルキルサリチル酸ナトリウム類から製造することができる。これらの特許文献に記載されたナトリウムアルキルサリチレート類は、アルカリ土類アルキルサリチレート類製造の合成中間体として有用であり、また潤滑油用添加剤としても有用であると記載されている。
【0011】
特許文献10には、基材油と、少量の錯体の形の油溶性過塩基性金属清浄添加剤とを混ぜ合わせることによって得られた、ディーゼルエンジンシステム用潤滑剤などの二サイクル・クロスヘッド舶用圧縮点火システム用の潤滑剤が記載されている。
【0012】
特許文献11:潤滑油組成物は、(A)主として潤滑粘度の基材油(基油)、および(B)少量の油溶性過塩基性金属清浄添加剤であって、一種以上の界面活性剤によって基本物質が安定化した錯体の形態にある清浄添加剤、を含む混合物を含有している。
【0013】
特許文献12には、40質量%以上の潤滑粘度の油、少なくとも一種の清浄剤、少なくとも一種の分散剤、および少なくとも一種の耐摩耗性添加剤を含む、舶用ディーゼル・クロスヘッドエンジンのシリンダライナおよびクランクケース用の潤滑剤が記載されている。
【0014】
特許文献13には、エンジンの性能特性を改良するために、潤滑油組成物に所望の全塩基価レベルを付与するように添加剤パッケージを選ぶことを含む内燃機関用潤滑剤が記載されている。添加剤パッケージは、粘度が2−12mm2/sで軽質ニュートラル基油を含む潤滑油組成物とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0027043号明細書
【特許文献2】米国特許第7163911号明細書
【特許文献3】米国特許第5895777号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1154012号明細書
【特許文献5】英国特許第1146925号明細書
【特許文献6】英国特許第786167号明細書
【特許文献7】英国特許第734598号明細書
【特許文献8】英国特許第734622号明細書
【特許文献9】英国特許第738359号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第1229101号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第1229102号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第1728849号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第1778824号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
総じて上記の参照文献には、潤滑油に使用できる過塩基性清浄剤および他の添加剤が記載されているが、舶用システム油に要求される環境での使用については教示されていない。従って、例えば低速二サイクル・クロスヘッド舶用ディーゼルエンジンのクランクケースでの使用に適した舶用システム油組成物を得ることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様では、舶用エンジン、例えば二サイクル・クロスヘッド舶用ディーゼルエンジンの機械部分を潤滑に作動させるための舶用システム油組成物、およびそれに舶用システム油組成物を使用するための方法/添加剤を提供する。
【0018】
本発明の一態様では、カルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0019】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物であって、TBNが3.5から20の間の範囲にあるシステム油組成物を提供する。
【0020】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物であって、清浄剤が、少なくとも50モル%のアルキル基がC20以上である少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を含み、そしてシステム油組成物のTBNが3.5から20の間の範囲にある舶用システム油組成物を提供する。
【0021】
本発明の別の態様では、主要量の潤滑粘度の基油、および少量のカルボキシレート含有清浄剤であって、TBNが100から450の間の範囲にある清浄剤を含有する舶用システム油組成物であって、TBNが3.5から20の間の範囲にあるシステム油組成物を提供する。
【0022】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0023】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0024】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩と、カルボキシレート含有清浄剤の中性塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0025】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤の金属塩であって、金属がアルカリ土類金属である清浄剤を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0026】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩であって、金属がアルカリ土類金属である清浄剤を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0027】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩であって、過塩基化されていない少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0028】
本発明の別の態様では、非過塩基性カルボキシレート含有清浄剤であるカルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0029】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の少なくとも一種の金属塩を含むカルボキシレート含有清浄剤の金属塩であって、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸が少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸とも呼ばれるものである清浄剤を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0030】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸清浄剤を過塩基化することにより製造されたカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0031】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸清浄剤の塩を過塩基化することにより製造されたカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0032】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤の金属塩を過塩基化することにより製造されたカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0033】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル基のうちの少なくとも50モル%がC20以上であるカルボン酸と、塩基とを含む混合物を反応させることを含む方法により製造された少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を含むカルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0034】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル基のうちの少なくとも50モル%がC20以上であるカルボン酸と、塩基とを含む混合物を反応させることを含む方法により製造された少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を、更に追加の塩基の存在下で少なくとも一種の過塩基化用化合物と反応させて、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性塩にしたものを含むカルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0035】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル基のうちの少なくとも50モル%がC20以上であるカルボン酸と、塩基と少なくとも一種の過塩基化用化合物とを含む混合物を反応させて、それにより少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性塩にすることを含む方法により製造された少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を含む、カルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0036】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル基のうちの少なくとも50モル%がC20以上であるカルボン酸と、塩基とを含む混合物を反応させることを含む方法により製造された少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を、更に追加の塩基の存在下で少なくとも一種の過塩基化用化合物と反応させて、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性塩にしたもの(ただし、その塩基と追加の塩基は同じ塩基である)を含む、カルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0037】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸清浄剤の塩、または少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と清浄剤の全量に基づき50モル%までのアルキルフェノールとの混合物を、過塩基化することにより製造されたカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0038】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を、炭素原子数1乃至4の少なくとも一種のカルボン酸の存在下で、モル過剰の金属塩基と少なくとも一種の酸性過塩基化用物質で過塩基化すること(ただし、金属塩基はアルカリ土類金属塩基である)により製造されたカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0039】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤の塩を、炭素原子数1乃至4の少なくとも一種のカルボン酸の存在下で、モル過剰の金属塩基と少なくとも一種の酸性過塩基化用物質で過塩基化すること(ただし、金属塩基はアルカリ土類金属塩基、例えば水酸化カルシウムである)により製造されたカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0040】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤の金属塩を、炭素原子数1乃至4の少なくとも一種のカルボン酸の存在下で、モル過剰の金属塩基と少なくとも一種の酸性過塩基化用物質で過塩基化すること(ただし、金属塩基はアルカリ土類金属塩基である)により製造された、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0041】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤の金属塩を、炭素原子数1乃至4の少なくとも一種のカルボン酸の存在下で、モル過剰の金属塩基と少なくとも一種の酸性過塩基化用物質で過塩基化すること(ただし、金属塩基は水酸化カルシウムである)により製造されたカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0042】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性アルカリ土類金属塩であって、アルカリ土類金属がカルシウムまたはマグネシウムであり、かつ少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル基が、炭素原子数20以上の(線状又は分岐アルキルまたは線状及び分岐アルキル基の混合物である)アルキル基を少なくとも50モル%含んでいるカルボン酸の金属塩を含むカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0043】
本発明の別の態様では、過塩基化用化合物を少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩と反応させること(ただし、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩は下記(I)式の構造で表される化合物又は化合物の混合物を含む)による生成物であるカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性アルカリ土類金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0044】
【化1】

【0045】
式中、i)Mは独立に、アルカリ土類金属、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウムおよびストロンチウムを表し、そして
ii)R1およびR2は各々独立に、線状及び/又は分岐アルキル基を表し、少なくともアルキル基の50モル%はC20以上である。
【0046】
本発明の別の態様では、少なくともアルキル基の50モル%がC20以上である上記(I)式で表される化合物又は化合物の混合物を含むカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性アルカリ土類金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0047】
本発明の別の態様では、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩(ただし、アルカリ金属はリチウム、ナトリウムまたはカリウムである)を含むカルボキシレート含有清浄剤の金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0048】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物であって、粘度指数が90より高いシステム油組成物を提供する。
【0049】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物であって、粘度が100℃で19cSt未満、40℃で138cSt未満、および/またはSAE粘度グレードが40以下であるシステム油組成物を提供する。
【0050】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物であって、引火点(密閉カップ)が220℃より高いシステム油組成物を提供する。
【0051】
本発明の別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物であって、流動点が−12℃未満であるシステム油組成物を提供する。
【0052】
本発明の別の態様では、唯一の過塩基性金属清浄剤であるカルボキシレート含有清浄剤を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0053】
本発明の別の態様では、唯一の過塩基性金属清浄剤であるカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を有する舶用システム油組成物を提供する。
【0054】
本発明の別の態様では、低速二サイクル・クロスヘッド舶用ディーゼルエンジンを作動させるのに舶用システム油として使用するための、カルボキシレート含有清浄剤を含む舶用システム油組成物を提供する。
【0055】
本発明の別の態様では、主要量の潤滑粘度の基油、および少量のカルボキシレート含有清浄剤であって、TBNが100から450の間の範囲にあるカルボキシレート含有清浄剤を含む、舶用システム油組成物に使用するための舶用システム油添加剤パッケージ又は濃縮物を提供する。
【0056】
本発明の別の態様では、主要量の潤滑粘度の基油、および少量のカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩であって、TBNが100から450の間の範囲にあるカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を含む、舶用システム油組成物に使用するための舶用システム油添加剤パッケージ又は濃縮物を提供する。
【0057】
本発明の別の態様では、二サイクル・クロスヘッド舶用ディーゼルエンジンを作動させる方法であって、主要量の潤滑粘度の基油および少量のカルボキシレート含有清浄剤を含む舶用システム油組成物であって、TBNが3.5から20の間の範囲にあるシステム油組成物を有する方法を提供する。
【0058】
本発明の別の態様は、二サイクル・クロスヘッド舶用ディーゼルエンジンの作動においてピストンのアンダークラウンを冷却する方法であって、主要量の潤滑粘度の基油および少量のカルボキシレート含有清浄剤を含む舶用システム油組成物であって、TBNが3.5から20の間の範囲にあるシステム油組成物を有する方法である。
【0059】
本発明の別の態様は、二サイクルクロスヘッド舶用ディーゼルエンジンの作動においてクランクケースを潤滑にする方法であって、主要量の潤滑粘度の基油、および少量のカルボキシレート含有清浄剤であって、少なくともアルキル基の50モル%がC20以上である少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含む清浄剤を含む舶用システム油組成物を用いる方法である。
【0060】
本発明の別の態様は、カルボキシレート含有清浄剤を添加することにより、TBNが3.5から20の間の範囲にある舶用システム油組成物の酸化抑制および/または安定性を改善する方法である。
【0061】
本発明の別の態様は、カルボキシレート含有清浄剤を添加することにより、TBNが3.5から20の間の範囲にある舶用システム油組成物の腐食防護を改善する方法である。
【0062】
本発明の別の態様は、カルボキシレート含有清浄剤を添加することにより、TBNが3.5から20の間の範囲にある舶用システム油組成物の粘度増加抑制を改善する方法である。
【0063】
本発明の別の態様では、主要量の潤滑粘度の基油および少量のカルボキシレート含有清浄剤を含み、TBNが3.5から20の間の範囲にある舶用システム油組成物であって、今日利用できる技術よりも、特に従来のサリチレート含有清浄剤技術に比べて、酸化安定性、粘度増加抑制または清浄性の領域の一つ以上で優れた性能をもたらす舶用システム油組成物を提供する。
【0064】
別の態様では、低速二サイクル・クロスヘッド舶用ディーゼルエンジンを作動させる方法は、カルボキシレート含有清浄剤を含む舶用システム油を供給することにより、今日利用できる技術よりも、特に従来のサリチレート含有清浄剤技術に比べて、酸化安定性、粘度増加抑制および/または清浄性の領域の一つ以上で優れた性能をもたらすことを含む。
【0065】
本発明の別の態様では、少なくとも50モル%のアルキル基がC20以上である少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含むカルボキシレート含有清浄剤を含む舶用システム油組成物は、TBNが3.5から20の間の範囲にあり、そして該舶用システム油組成物は、今日利用できる技術よりも、特に従来のサリチレート含有清浄剤技術に比べて、酸化安定性、粘度増加抑制または清浄性の領域の一つ以上で優れた性能をもたらす。
【0066】
本発明の別の態様では、主要量の潤滑粘度の基油、および少量のカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩であって、少なくとも50モル%のアルキル基がC20以上である少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含む清浄剤の過塩基性金属塩を含み、かつTBNが3.5から20の間の範囲にある舶用システム油組成物であって、今日利用できる技術よりも、特に従来のサリチレート含有清浄剤技術に比べて、酸化安定性、粘度増加抑制または清浄性の領域の一つ以上で優れた性能をもたらすシステム油組成物を提供する。
【発明の効果】
【0067】
特許文献1に記載されているように、最近になって新規な「カルボキシレート」清浄剤が開発された。その発明者は、そのような清浄添加剤は、少なくとも50モル%のアルキル基がC20以上である少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性塩を含み、舶用システム油に使用することができること、そして得られた舶用システム油は、少なくとも酸化安定性、粘度増加抑制および清浄性といった領域で、今日利用できる技術よりも、特に従来のサリチレート含有清浄剤技術に比べて優れた性能をもたらすことを見出している。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下の定義は、特に断わらない限り、本出願(特許請求の範囲を含む)全体にわたって使用する用語の意味を記載するものである。
【0069】
[定義]
「アルキルフェノール」は、1個以上のアルキル置換基を持つフェノールを意味し、アルキル置換基のうちの少なくとも一つは、フェノールに油溶性を付与するのに充分な数の炭素原子を有する。
【0070】
「舶用システム油」は、低速二サイクル・クロスヘッド船舶ディーゼル推進用エンジンのクランクケースを潤滑に作動させ、またエンジンの一部、特にはピストンのアンダークラウンを冷却することができる潤滑油組成物を意味する。クロスヘッドエンジンでは、点火シリンダとクランクケースとを別々に、シリンダ油と舶用システム油とでそれぞれ潤滑にする。舶用システム油組成物のTBNは、例えば3.5から20の間の範囲にある。
【0071】
「基油」は、本明細書で使用するとき、天然、合成、未精製、精製及び再精製原料油を含む基材油または基材油のブレンド物と定義される。用いられる基油は、多種多様な潤滑粘度の油のうちのいずれであってもよい。このような組成物に使用される潤滑粘度の基油は、天然潤滑油、合成油またはそれらの混合物から誘導することができる。例えば好適な基油としては、粘度が100℃で少なくとも約4cSt、例えば100℃動粘度が約4センチストークス(cSt)乃至約20cStであるものが挙げられ、および/または流動点が20℃より下、好ましくは0℃以下であることが望ましい。
【0072】
天然の潤滑油としては、動物油、植物油(例えば、ナタネ油、ヒマシ油およびラード油)、石油、鉱油、および石炭または頁岩から誘導された油を挙げることができる。本発明に基油として使用される鉱油としては例えば、パラフィン系、ナフテン系、および潤滑油組成物に通常使用されるその他の油を挙げることができる。
【0073】
「清浄剤」は、油溶性の界面活性剤であり、例えば、少なくとも1個の比較的低分子量の非極性尾部(分散剤に比べて比較的低い)と、極性頭部とを含む有機酸である。好適な清浄剤は例えば、「中性」清浄剤であってもよいし、あるいは「過塩基性」清浄剤であってもよい。非極性尾部の分子量は、界面活性剤を油溶性にするか、あるいは得られた清浄剤を油溶性にして他の添加剤と混合できるようにするほど充分大きくなければならない。一般に非極性尾部の分子量は、少なくとも120ダルトン(すなわち、約C9)であってよく、例えば少なくとも約150ダルトン(すなわち、約C12)、少なくとも約220ダルトン(すなわち、約C16)、又は約560ダルトン(すなわち、約C40)未満である。尾部は一般に炭化水素であり、線状であっても分岐していても、または線状と分岐の混合物であってもよい。尾部は例えば、オレフィン化合物、例えばエチレン、プロピレン又はブチレンのオリゴマー、またはオレフィン単量体の混合物から誘導することができ、あるいはろうの熱分解から誘導されたオレフィンのような他の原料から誘導することもできる。あるいは、芳香族潤滑油基材油から非極性部分を誘導することもできる。界面活性剤の極性頭部は例えば、金属と塩を作る如何なる極性部であってもよい。例えば極性部としては、スルホン酸基、例えばアリールスルホン酸基;ヒドロキシ芳香族基、例えばフェノール基;ヒドロキシ芳香族カルボン酸基、例えばヒドロキシ安息香酸基、およびカルボン酸基を挙げることができ、これらは例えば脂肪酸、ナフテン酸または石油酸化生成物から供給することができる。
【0074】
「従来のサリチレート含有清浄剤」及び「サリチレート含有清浄剤」は、少なくとも50モル%のアルキル基がC14-18又はそれ以下である、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を含むアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸清浄剤を意味する。
【0075】
「カルボキシレート含有清浄剤」は、少なくとも50モル%のアルキル基がC20以上である、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を含むアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸清浄剤を意味する。好ましいアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸としては、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。そのようなアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸およびアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の塩はそれぞれ、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボキシレートおよびアルキル置換ヒドロキシベンゾエートと呼ばれる。
【0076】
例えばカルボキシレート含有清浄剤は、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を含んでいて、清浄剤は、アルキル基のうちの少なくとも50モル%がC20以上である、例えば少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも96モル%、少なくとも97モル%、少なくとも98モル%又は少なくとも99モル%がC20以上である少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含んでいて、また全ての清浄剤が、100モル%のアルキル基がC20以上である少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を含んでいる場合すらある。少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル基は、線状基、分岐基、または線状基と分岐基の混合物を含んでいてもよい。例えば線状アルキル基は、例えばノルマルアルファオレフィン類から誘導されたC20−C22、C20−C24、C20−C28、C20−C30及び/又はC20−C36のアルキルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれた線状アルキル基の混合物であってよい。
【0077】
「カルボキシレート含有清浄剤の金属塩」は、上記カルボキシレート含有清浄剤の金属塩を意味し、金属はアルカリ金属でもアルカリ土類金属でもよく、例えばカルボキシレート含有清浄剤のアルカリ金属塩、またはカルボキシレート含有清浄剤のアルカリ土類金属塩である。好適なアルカリ金属またはアルカリ土類金属は、それに対応した金属水酸化物から供給することができる。例えば水酸化ナトリウムと水酸化カリウムは、アルカリ金属のナトリウムとカリウムそれぞれの原料になり、一方水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムは、アルカリ土類金属のカルシウムとマグネシウムそれぞれの原料になる。
【0078】
「過塩基化」は、カルボキシレート含有清浄剤組成物の金属塩に存在する得られた金属含量が、カルボン酸を中和するのに要する化学量論量よりも過剰になる操作方法を意味する。好適な過塩基化用金属としては、アルカリ土類金属、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウムおよびストロンチウムが挙げられる。好適な過塩基化用金属は、それらに対応した金属水酸化物から供給することができ、例えば水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムは、アルカリ土類金属のカルシウムとマグネシウムそれぞれの原料になる。それ以上の過塩基化は、酸性過塩基化用化合物、例えば二酸化炭素およびホウ酸の添加によって達成することができる。カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩としては、TBNが大きいもの、例えばTBNが100より大きい、例えば100から450の間にあるものが挙げられる。
【0079】
舶用システム油組成物の「石鹸分」は、組成物中の一種以上の清浄剤によって配合物に寄与する界面活性剤の濃度を意味する。例えば、本発明の一態様では舶用システム油組成物に適した石鹸分は、界面活性剤6ミリモル/kgシステム油組成物(ミリモル/kg)より多くてもよく、例えば7ミリモル/kgより多い、8ミリモル/kg、9ミリモル/kg又は10ミリモル/kgより多い。石鹸分は単一の清浄剤によって導入されてもよいし、清浄剤の混合物によって導入されてもよい。例えば石鹸分は、単にカルボキシレート含有清浄剤の金属塩、カルボキシレート含有清浄剤の中性金属塩、又はカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩またはそれらの混合物を用いることにより導入されてもよいし、あるいはカルボキシレート含有清浄剤の金属塩、中性金属塩又は過塩基性金属塩と他の清浄剤との混合物を用いることにより導入されてもよい。
【0080】
「全塩基価」又は「TBN」は、油試料のアルカリ度レベルを意味し、ASTM D2896に従い、組成物が腐食性の酸を中和し続ける能力を示している。試験では導電率の変化を測定して、その結果をmgKOH/gで表示する(生成物1グラムを中和するのに要するKOHのミリグラムと等価な値)。従って、高いTBNは、生成物の過塩基性が強く、結果として酸を中和できる塩基の保有が高いことを反映している。生成物のTBNは、ASTM規格D2896または同等の方法により決定することができる。
【0081】
[舶用システム油組成物]
本発明は、舶用システム油組成物、および該組成物を舶用ディーゼルエンジン、例えば二サイクル・クロスヘッド舶用ディーゼルエンジンに使用する方法を提供する。本発明のある態様では、主要量の潤滑粘度の基油と少量のカルボキシレート含有清浄剤の塩とを含む舶用システム油組成物を提供する。舶用システム油組成物のTBNは、例えば3.5から20の間の範囲にあり、例えば3.5から18の間、3.5から14の間、3.5から10の間、3.5から9の間、3.5から7の間、3.5から6の間、3.5から5の間、4から16の間、4から12の間、4から10の間、4から8の間、4から7の間、4から6の間、4から5の間、4.5から15の間、5から13の間、5から9の間、5から8の間、5から7の間、5.5から11の間、6から10の間、7から12の間又は10から12の間の範囲にある。
【0082】
好適な潤滑粘度の基油としては、I種またはII種、もしくはI種油又はII種油のブレンド、もしくはI種油(ブレンドを含む)とII種油(ブレンドを含む)の混合物を挙げることができる。態様によっては基油は、40質量%から97質量%の間、例えば少なくとも40質量%、少なくとも45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%又は少なくとも90質量%の量で存在していてよい(質量パーセントは、システム油組成物の全質量に対する基油の質量パーセントを意味する)。
【0083】
(基油)
好適な基油としては、API公報1509、第14版、補遺I、1998年12月に規定されたAPI分類I及びIIに含まれるものが挙げられる。(第1表に、I−V種基油の特徴の要約を記す)。
【0084】
第 1 表
─────────────────────────────────────
種 飽和度(ASTM 硫黄分(ASTM 粘度指数(ASTM
D2007で測定) D2270で測定) D4294、ASTM
D4297又はASTM
D3120で測定)
─────────────────────────────────────
I 飽和度90%未満 硫黄分0.03%以上 80以上、120未満
II 飽和度90%以上 硫黄分0.03%以下 80以上、120未満
III 飽和度90%以上 硫黄分0.03%以下 120以上
IV ポリアルファオレフィン類(PAO)として規定
V I、II、III又はIV種に含まれないその他全ての基材油
─────────────────────────────────────
【0085】
I種基油は、真空蒸留塔からの軽質塔頂留分およびより重質な副留分を含んでいてよく、例えばライトニュートラル、ミディアムニュートラル及びヘビーニュートラル基材油も挙げることができる。石油誘導基油としては、残留原料油または塔底留分、例えばブライトストックも挙げられる。好適なI種基材油としては例えば、エクソンモービル(ExxonMobil)CORE(商標)100、エクソンモービルCORE(商標)150、エクソンモービルCORE(商標)600及びエクソンモービルCORE(商標)2500基材油を挙げることができる。
【0086】
好適なII種基材油としては例えば、シェブロン・プロダクツ社(Chevron Products Co.、カリフォルニア州サンラモン)製の、シェブロン(Chevron)100R、220R、600R及び5RII種基材油を挙げることができる。
【0087】
ある態様では基油は、分子量および粘度の異なる二種以上、三種以上又は四種以上の基材油のブレンド又は混合物であってよく、ブレンドは好適な特性の基油を作るために任意の好適な方法で処理されている。
【0088】
基材油は、蒸留、溶剤精製、水素化処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を含むが、これらに限定されない各種の異なる方法を用いて製造することができる。好適な基油の例としては、未精製、精製、再精製の油またはそれらの混合物から誘導されたものを挙げることができる。
【0089】
未精製油は、天然原料または合成原料(例えば、石炭、頁岩またはタール・サンド・ビチューメン)から、それ以上の精製や処理することなく直接得られる。未精製油の例としては、レトルト操作により直接得られた頁岩油、蒸留により直接得られた石油、および/またはエステル化処理により直接得られた油が挙げられ、それらの各々はその後それ以上の処理をすることなく使用することができる。
【0090】
精製油は、一つ以上の特性を改善するために一以上の精製工程で処理されていることを除いては、未精製油と同様である。好適な精製方法としては、蒸留、水素化分解、水素化処理、脱ろう、溶剤抽出、酸又は塩基抽出、ろ過、およびパーコレートが挙げられ、それらは全て当該分野の熟練者であれば知悉するところである。
【0091】
再精製油は、精製油を得るために用いたのと同様の方法で、使用済の油を処理することにより得られる。再精製油は、再生又は再処理油としても知られていて、しばしば使用された添加剤や油分解生成物の除去を目的とする方法により更に処理される。
【0092】
好適な基油としては、合成ろうおよび粗ろうの異性化により得られた基材油、並びに原油の芳香族及び極性成分を(溶剤抽出というよりはむしろ)水素化分解することにより生成した水素化分解基材油を挙げることができる。基油の例としては、ろうの水素異性化から誘導されたものを単独で、あるいは前記天然及び/又は合成基油と組み合わせて挙げることができる。そのようなろう異性体油は、天然又は合成ろうまたはそれらの混合物を水素異性化触媒で水素異性化することにより生成する。基油は、精製パラフィン系基油、精製ナフテン系基油、潤滑粘度の合成炭化水素油及び/又は非炭化水素油であってよい。また、基油は天然油と合成油の混合物であってもよい。
【0093】
好適な合成油としては例えば、炭化水素合成油、合成エステル類、ケイ素系基油およびハロ置換炭化水素油、具体的には重合及び共重合オレフィン類、アルキルベンゼン類、ポリフェニル類、アルキル化ジフェニルエーテル類、アルキル化ジフェニルスルフィド類、並びにそれらの誘導体、それらの類似物及び同族体、および所望の粘度のそれらの混合物を挙げることができる。
【0094】
好適な炭化水素合成油としては例えば、エチレンの重合により製造された油、ポリアルファオレフィン又はPAO油、あるいはフィッシャー・トロプシュ法のような一酸化炭素ガスと水素ガスを用いた炭化水素合成法により製造された油を挙げることができる。また、合成潤滑油としては、アルキレンオキシド重合体、真の共重合体、共重合体、および末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって変性したそれらの誘導体も挙げることができる。合成炭化水素油としては、適正な粘度のアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なのはC6乃至C12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマー類、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン類、例えばジドデシルベンゼンも使用することができる。
【0095】
好適な合成エステル類としては、モノカルボン酸及びポリカルボン酸とモノヒドロキシアルカノール及びポリオールとのエステル類が挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリトリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。好適なモノヒドロキシアルカノール及びポリオール合成エステル油のそれ以上の例としては、C5乃至C12のモノカルボン酸とポリオールとポリオールエーテルとから製造されたものが挙げられる。トリアルキルリン酸エステル油、例えばトリ−n−ブチルホスフェートおよびトリ−イソブチルホスフェートで例示されるものも、基油として使用するのに適している。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から製造された複合エステル類も使用することができる。鉱油と合成油のブレンド物も使用できる。
【0096】
好適なケイ素系の油としては例えば、ポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ又はポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリケート油が挙げられる。その他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液体エステル類、高分子量テトラヒドロフラン類、およびポリアルファオレフィン類等が挙げられる。
【0097】
(カルボキシレート含有清浄剤)
本発明に使用される好適なカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩としては、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性アルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0098】
本発明に使用することができる好適なカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩の例としては、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を含むものがある。ただし、アルキル基のうちの少なくとも50モル%はC20以上であり、例えばアルキル基のうちの少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも90モル%、又は少なくとも95モル%、少なくとも96モル%、少なくとも97モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%又は100モル%がC20以上である。カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩は、存在する清浄剤の全量に対して清浄剤の量のうちの少なくとも50モル%を占めていて、例えば存在する清浄剤の全量に対して清浄剤の量のうちの少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも90モル%、又は少なくとも95モル%、少なくとも96モル%、少なくとも97モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%又は100モル%を占めている。また、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩は、アルキルフェノールを存在する清浄剤の全量に対して例えば50モル%未満で含んでいてもよく、例えば存在するカルボキシレート含有清浄剤とアルキルフェノールの全量に対してアルキルフェノールを35モル%未満、25モル%未満、20モル%未満、10モル%未満、又は5モル%未満、例えば2モル%未満で含んでいてもよい。
【0099】
本発明に使用することができる好適なカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩の例としては、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩が、過塩基化用化合物を少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩と反応させることによる生成物であり、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩が、下記(I)式の構造で表される化合物又は化合物の混合物からなるようなものが挙げられる。
【0100】
【化2】

【0101】
式中、i)Mは独立に、アルカリ土類金属、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウムおよびストロンチウムを表し、
ii)各カルボキシレート基は独立に、ヒドロキシル基に対してオルト、メタ又はパラ位、またはそれらの混合位にあってよく、そして
iii)R1およびR2は各々独立に、線状及び/又は分岐アルキル基を表し、少なくとも50モル%のアルキル基はC20以上である。
【0102】
ある態様ではカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩は、(I)式の構造で表される化合物又は化合物の混合物を反応させた生成物を含んでいてもよく、ここで、R1およびR2で独立に表されるアルキル基は、炭素原子数少なくとも20、例えば炭素原子数20乃至40又は炭素原子数20乃至30の線状及び/又は分岐アルキル基であってよく、またアルキル基は、C20−C22、C20−C24、C20−C28、C20−C30及び/又はC20−C36アルキルおよびそれらの混合物からなる群より選ぶことができる。
【0103】
ある態様ではR1およびR2で独立に表されるアルキル基は例えば、ノルマルアルファオレフィン、例えばエチレン、プロピレンまたはブテンのオリゴマーからから誘導されてもよい。別の態様ではアルキル基は、線状基の混合物を含んでいても、また分岐基の混合物を含んでいても、あるいは線状基と分岐基の混合物を含んでいてもよい。よって、アルキル基は、例えばノルマルアルファオレフィン類から誘導されたC20−C22、C20−C24、C20−C28、C20−C30及び/又はC20−C36アルキルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれた線状アルキル基の混合物であってもよい。これらの混合物は、上述したタイプのアルキル基を少なくとも80モル%含んでいてもよく、例えば少なくとも85モル%、90モル%、93モル%、95モル%、97モル%、98モル%、99モル%又は100モル%含んでいてもよい。
【0104】
別の態様ではR1およびR2で独立に表されるアルキル基は、アルファオレフィン留分より製造されたものを含んでいてもよく、そしてアルキル基は、例えば、少なくとも90モル%のC20以上のノルマルアルファオレフィン類を含むノルマルアルファオレフィンの残留物、具体的にはシェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー(Chevron Phillips Chemical Company)のノルマルアルファオレフィンC26−C28又はノルマルアルファオレフィンC20−C24の商品名で、ブリティッシュ・ペトロリウム(British Petroleum)社のC20−C26オレフィンの商品名で、シェル・チミィ(Shell Chimie)社のSHOPC20−C22の商品名で市販されているもの、またはこれらの会社製の炭素原子数約20乃至28のこれら留分又はオレフィン類の混合物、から誘導されたアルキル基の混合物であってもよい。
【0105】
本発明の舶用システム油組成物に使用される好適なカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩の例としては、例えば少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を含むカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩が挙げられる、ただし、アルキル基はC20以上であり、そして少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩のうちの少なくとも50モル%は(I)式の構造で含まれ、例えば少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも90モル%、少なくとも92モル%、少なくとも94モル%、少なくとも95モル%、少なくとも96モル%、少なくとも97モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%は(I)式の構造で含まれ、あるいは全ての清浄剤が(I)式の構造で表される場合すらある。
【0106】
ある態様ではカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩としては、(I)式の構造で表される清浄剤の混合物、例えば(I)式の構造で表される少なくとも一種又はそれ以上の清浄剤の混合物を含むものが挙げられる、ただし、(I)式の構造で表される清浄剤の混合物のカルボキシレート基は主として、ヒドロキシル基に対してパラ位にあってよく、例えば(I)式の構造で表される清浄剤の混合物のカルボキシレート基のうちの少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%又は少なくとも95モル%は、ヒドロキシル基に対してパラ位にあってよい。
【0107】
本発明の舶用システム油組成物に使用される好適なカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩の例としては、例えばTBNが100より高い、例えば100から450の間、100から400の間又は125から375の間にあるカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩が挙げられ、そして一般に粗沈降物は3容量%未満、例えば2容量%未満又は1容量%未満である。好適なカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩としては、高過塩基性又は中過塩基性の清浄剤が挙げられる。例えば、カルボキシレート含有清浄剤の高過塩基性金属塩としては、例えばTBNが250より高い、例えば250から450の間、300から400の間又は325から375の間にあるものが挙げられ、そして一般に粗沈降物は3容量%未満、例えば2容量%未満又は1容量%未満であり;また、カルボキシレート含有清浄剤の中過塩基性金属塩としては、例えばTBNが100から250の間、例えば100から200の間又は125から175の間にあるものが挙げられ、そして一般に粗沈降物は3容量%未満、例えば2容量%未満、1容量%未満又は0.5容量%未満である。
【0108】
別の態様では本発明は、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩の製造方法に関する。例えば、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩の製造方法は次の工程を含んでいる:a)前述したアルキル置換フェノール(又はアルキルフェノール)を、アルカリ金属塩基と反応させて、アルカリ金属アルキル置換フェネートを生成させる工程、b)工程a)で得られたアルカリ金属アルキル置換フェネートを、カルボキシル化剤、例えば二酸化炭素でカルボキシル化して、アルカリ金属アルキル置換ヒドロキシベンゾエートを生成させる工程、c)アルカリ金属アルキル置換ヒドロキシベンゾエートを、充分強い酸の水溶液で酸性にして、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸を生成させる工程、そしてd)アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を中和又は過塩基化する工程。好ましい態様では過塩基化は、工程c)で得られたアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を、炭素原子数約1乃至4の少なくとも一種のカルボン酸と混合する工程、e)工程d)からのアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と少なくとも一種のカルボン酸との混合物を、金属塩基(例えば、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩基)、そして芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、モノアルコール類及びそれらの混合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の溶媒を用いて中和して、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の金属塩と少なくとも一種の金属カルボン酸塩にする工程により行われる。次いで、工程e)からの少なくとも一種の金属カルボン酸塩、そして芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、モノアルコール類及びそれらの混合物からなる群より選ばれた溶媒の存在下で、モル過剰の金属塩基(例えば、工程e)と同じ金属塩基、または他の任意のアルカリ土類金属塩基、例えば石灰)、および少なくとも一種の酸性過塩基化用物質(例えば、二酸化炭素および/またはホウ酸)を導入することにより、中和した混合物を過塩基化する。
【0109】
別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩の製造方法は次の工程を含んでいる:a)前述したアルキル置換フェノール(又はアルキルフェノール)を、アルカリ金属塩基と反応させて、アルカリ金属アルキル置換フェネートを生成させる工程、b)工程a)で得られたアルカリ金属アルキル置換フェネートを、カルボキシル化剤、例えば二酸化炭素でカルボキシル化して、アルカリ金属アルキル置換ヒドロキシベンゾエートを生成させる工程、c)アルカリ金属アルキル置換ヒドロキシベンゾエートを、充分強い酸の水溶液で酸性にして、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸を生成させる工程、d)アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸を、炭素原子数約1乃至4の少なくとも一種のカルボン酸と混合する工程、e)アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸と少なくとも一種のカルボン酸との混合物を、金属塩基(例えば、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩基)、そして芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、モノアルコール類及びそれらの混合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の溶媒を用いて中和して、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の金属塩と少なくとも一種の金属カルボン酸塩にする工程、そしてf)工程e)からの少なくとも一種の金属カルボン酸塩、そして芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、モノアルコール類及びそれらの混合物からなる群より選ばれた溶媒の存在下で、モル過剰の金属塩基(例えば、工程e)と同じ金属塩基、または他の任意のアルカリ土類金属塩基、例えば石灰)、および少なくとも一種の酸性過塩基化用物質(例えば、二酸化炭素および/またはホウ酸)を導入することにより、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の金属塩と少なくとも一種の金属カルボン酸塩を過塩基化する工程。
【0110】
別の態様では、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩の製造方法は次の工程を含んでいる:a)前述したアルキル置換フェノール(又はアルキルフェノール)を、アルカリ金属塩基と反応させて、アルカリ金属アルキル置換フェネートを生成させる工程、b)工程a)で得られたアルカリ金属アルキル置換フェネートを、酸性過塩基化用物質、例えば二酸化炭素でカルボキシル化して、アルカリ金属アルキル置換ヒドロキシベンゾエートを生成させる工程、c)アルカリ金属アルキル置換ヒドロキシベンゾエートを、充分強い酸の水溶液で酸性にして、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸を生成させる工程、d)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸を、モル過剰のアルカリ土類金属塩基、例えば水酸化カルシウム、そして芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、モノアルコール類及びそれらの混合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の溶媒を用いて中和して、アルカリ土類金属アルキル置換ヒドロキシベンゾエートにする工程、e)芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、モノアルコール類及びそれらの混合物からなる群より選ばれた溶媒の存在下で、工程d)からのアルカリ土類金属アルキル置換ヒドロキシベンゾエートとアルカリ土類金属塩基を、炭素原子数約1乃至4の少なくとも一種のカルボン酸と混合して、アルカリ土類金属アルキル置換ヒドロキシベンゾエートと少なくとも一種のアルカリ土類金属カルボン酸塩の混合物にする工程、そしてf)工程e)からの少なくとも一種のアルカリ土類金属カルボン酸塩、および芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、モノアルコール類及びそれらの混合物からなる群より選ばれた溶媒の存在下で、工程e)からのアルカリ土類金属アルキル置換ヒドロキシベンゾエートを、モル過剰のアルカリ土類金属塩基(例えば、工程e)と同じ金属塩基、または他の任意のアルカリ土類金属塩基、例えば石灰)、および少なくとも一種の酸性過塩基化用物質(例えば、二酸化炭素および/またはホウ酸)を用いて過塩基化する工程。
【0111】
本発明の別の態様では、舶用システム油組成物に存在するカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩の量は、システム油組成物の全質量に対して0.1質量%から35質量%の間、例えば35質量%未満であり、又はシステム油組成物の全質量に対して例えば0.25質量%から34質量%の間、0.5質量%から33質量%の間、0.75質量%から32質量%の間、1質量%から31質量%の間、1.25質量%から30質量%の間、1.5質量%から29質量%の間、1.75質量%から28質量%の間、2質量%から27質量%の間、2.25質量%から26質量%の間、2.5質量%から25質量%の間、0.25質量%から25質量%の間、2質量%から30質量%の間、3質量%から25質量%、4質量%から25質量%、0.1質量%から20質量%の間、0.5質量%から20質量%の間、1質量%から20質量%の間、2.5質量%から20質量%の間、5質量%から20質量%、6質量%から20質量%、0.1質量%から10質量%の間、0.46質量%から10質量%の間、1質量%から10質量%の間、0.1質量%から5質量%の間、0.25質量%から5質量%の間、0.5質量%から5質量%の間、1質量%から5質量%の間、0.1質量%から15質量%の間、0.5質量%から15質量%の間、1質量%から15質量%、5質量%から15質量%、10質量%から15質量%、10質量%から35質量%、10質量%から30質量%、10質量%から25質量%、10質量%から20質量%、10質量%から15質量%、15質量%から35質量%、15質量%から25質量%又は15質量%から35質量%の間にある。
【0112】
別の態様ではカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩は、例えば米国特許出願公開第2007/0027043号明細書の実施例1に記載された方法に従って製造されたアルキルヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性カルシウム塩であってよく、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0113】
別の態様では舶用システム油組成物は、好適な清浄剤を一種より多く、例えば二種以上、三種以上又は四種以上の好適な清浄剤を含んでいてもよい。例えば好適な清浄剤は、上述したカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩、カルボキシレート含有清浄剤の中性金属塩またはそれらの組合せ又は混合物のうちの何れかを含んでいてもよい。
【0114】
(その他の添加剤成分)
分散剤は、不溶性の混入物を潤滑油に懸濁させるように機能し、それにより潤滑油に接触する表面を清浄に保つ。また、分散剤には潤滑油中の大きな混入粒子の成長を防ぐことによって、潤滑油粘度の変動を軽減する機能もある。
【0115】
分散剤は例えば、少なくとも一個の数平均分子量の大きな炭化水素基、少なくとも一個の極性基、および極性基と非極性基を連結する少なくとも一個の結合基を含有している。分散剤は一般に金属を含まず、普通は炭素、水素、窒素および酸素を含有し、場合によってはホウ素も含有している。
【0116】
分散剤の数平均分子量の大きな炭化水素基は一般に、ポリオレフィン、例えばポリエチレン基、エチレン−プロピレン共重合体などのオレフィン共重合体、ポリブテン重合体、またはポリイソブテン重合体である。別の態様では炭化水素基は、ポリイソブテン重合体、例えばメチルビニリデンオレフィン基を高比率で、具体的には少なくとも70モル%のメチルビニリデンポリイソブテン、又は少なくとも80モル%のメチルビニリデンを含有するポリイソブテン重合体であってもよい。そのような物質は、例えばBASF社よりグリッソパル(Glissopal、商標)ポリイソブテンとして市販されている。
【0117】
炭化水素基の数平均分子量は少なくとも500ダルトンであり、好ましくは少なくとも700ダルトンである。炭化水素基の数平均分子量は約5000ダルトン未満であり、好ましくは3000ダルトン未満である。分子量の範囲は、500から5000の間、例えば約600−2800、約700−2700、約800−2600、約900−2500、約1000−2400、約1100−2300、約1200−2200、約1300−2100又は約1400−2000であってよい。別の態様では炭化水素基として、分子量が1000から2500の間にある高メチルビニリデンポリイソブテンが挙げられる。
【0118】
極性基は一般に、混入粒子の表面に引き付けられる極性の低分子量化合物である。普通極性基は、アミン類、アルコール類、特にはポリアミン類およびポリアルコール類である。別の態様ではポリアミン類として、ポリアルキレンポリアミン類、例えばジエチレントリアミンおよびトリエチレンポリアミン等が挙げられる。別の態様ではポリアルキレンポリアミン類として、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、およびより軽質なポリアルキレンポリアミン類蒸留の塔底生成物であるいわゆる「重質ポリアミン類」を挙げることができ、またポリアミン類の混合物も挙げられる。
【0119】
結合基は、極性化合物(類)を炭化水素基に連結する任意の好適な結合基であってよい。別の態様では結合基として、コハク酸イミド基、コハク酸エステル基およびフェノール基が挙げられる。普通は結合基を最初に炭化水素基に結合する。
【0120】
本発明の舶用システム油組成物に使用することができる分散剤は、潤滑油に使用するのに適した任意の分散剤又は複数の分散剤の混合物であってよい。本発明の一態様では分散剤として、無灰分散剤、例えば、ポリアルキレンコハク酸イミド(好ましくは、ポリイソブテンコハク酸イミド)などのアルケニル又はアルキルコハク酸イミド又はその誘導体を含む無灰分散剤を挙げることができる。
【0121】
本発明の別の態様では分散剤として、アルカリ金属又は混合アルカリ金属、アルカリ土類金属のホウ酸塩、水和アルカリ金属ホウ酸塩の分散物、アルカリ土類金属ホウ酸塩の分散物、ポリアミド無灰分散剤、ベンジルアミン、マンニッヒ型分散剤、リン含有分散剤、またはそれらの組合せ又は混合物を挙げることができる。これら及び他の好適な分散剤については、モーリア(Morier)、外著、「潤滑剤の化学と技術(Chemistry and Technology of Lubricants)」、第2版、ロンドン、スプリンガー(Springer)、第3章、p.86−90(1996年)、およびレスリー・R.ルドニック(Leslie R.Rudnick)著、「潤滑油添加剤:化学と用途(Luburicant Additives: Chemistry and Applications)」、ニューヨーク、マーセル・デッカー(Marcel Dekker)、第5章、p.137−170(2003年)に記載されていて、それら両方とも全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0122】
本発明の一態様では分散剤としてコハク酸イミド又はその誘導体が挙げられる。別の態様では分散剤として、ポリブテニルコハク酸無水物とポリアミンの反応により得られたコハク酸イミド又はその誘導体が挙げられる。また別の態様では分散剤として、ポリブテニルコハク酸無水物とポリアミンの反応により得られたコハク酸イミド又はその誘導体が挙げられ、ポリブテニルコハク酸無水物は、ポリブテンと無水マレイン酸から(例えば、塩素も塩素原子含有化合物も用いない熱反応法により)生成する。
【0123】
本発明の別の態様では分散剤として、ポリイソブテニルコハク酸無水物(PIBSA)と一種以上のアルキレンポリアミンとの縮合反応による、コハク酸イミド反応生成物が挙げられる。この態様でPIBSAは、高メチルビニリデンポリイソブテン(PIB)と無水マレイン酸の熱反応生成物であってよい。
【0124】
別の態様では分散剤は、数平均分子量(Mn)が約500−3000、例えば約600−2800、約700−2700、約800−2600、約900−2500、約1000−2400、約1100−2300、約1200−2200、約1300−2100又は約1400−2000のPIBから誘導された、主にビスコハク酸イミド反応生成物である。
【0125】
別の態様では分散剤として、Mnが少なくとも約600、少なくとも約800、少なくとも約1000、少なくとも約1100、少なくとも約1200、少なくとも約1300、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600、少なくとも約1700、少なくとも約1800、少なくとも約1900、少なくとも約2000、少なくとも約2100、少なくとも約2200、少なくとも約2300、少なくとも約2400、少なくとも約2500、少なくとも約2600、少なくとも約2700、少なくとも約2800、少なくとも約2900、少なくとも約3000のPIBから誘導された、主にビスコハク酸イミド反応生成物が挙げられる。
【0126】
ある態様では例えば分散剤として、Mn1000のPIBから誘導された主にビスコハク酸イミド反応生成物が挙げられ、別の態様ではそのコハク酸イミドをその後ホウ酸化して、コハク酸イミド中のホウ素濃度を約0.1−3質量%(例えば約1−2質量%、例えば1.2質量%)にする。
【0127】
別の態様では分散剤として、Mn1300のPIBから誘導された主にビスコハク酸イミド反応生成物が挙げられ、別の態様ではそのコハク酸イミドをその後ホウ酸化して、コハク酸イミド中のホウ素濃度を約0.1−3質量%(例えば約1−2質量%、例えば1.2質量%)にする。別の態様では分散剤として、Mn2300のPIBから誘導された主にビスコハク酸イミド反応生成物が挙げられ、別の態様ではそのコハク酸イミドをその後エチレンカーボネートと反応させる。
【0128】
別の態様では分散剤として、高分子量アルケニル又はアルキル置換コハク酸無水物と、分子当り窒素原子数4乃至10(平均値)、好ましくは窒素原子数5乃至7(平均値)のポリアルキレンポリアミンとの反応により製造されたコハク酸イミドが挙げられる。これに関してアルケニル又はアルキルコハク酸イミド化合物のアルケニル又はアルキル基は、数平均分子量が約900−3000、例えば約1000−2500、約1200−2300又は約1400−2100のポリブテンから誘導することができる。態様によっては、ポリブテニルコハク酸無水物製造のためのポリブテンと無水マレイン酸との反応を、塩素を用いる塩素化法により行うこともできる。従って態様によっては、得られたポリブテニルコハク酸無水物、並びにポリブテニルコハク酸無水物から生成したポリブテニルコハク酸イミドは、塩素含量がおよそ2000乃至3000ppm(質量)の範囲にある。反対に、塩素を用いない熱的方法では、塩素含量が例えば30ppm(質量)未満の範囲にあるポリブテニルコハク酸無水物およびポリブテニルコハク酸イミドが生じる。よって、潤滑油組成物中の塩素含量を少なくするために、態様によっては熱的方法により生成したコハク酸無水物から誘導されたコハク酸イミドが好ましい。
【0129】
別の態様では分散剤は、ホウ酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート)、有機酸、コハク酸アミド、コハク酸エステル、コハク酸エステル−アミド、ペンタエリトリトール、フェネート−サリチレートおよびそれらの後処理類似物等、またはそれらの組合せ又は混合物から選ばれた化合物で後処理された、変性アルケニル又はアルキルコハク酸イミドを含んでいてもよい。好ましい変性コハク酸イミドは、ホウ酸化アルケニル又はアルキルコハク酸イミド類、例えばホウ酸又はホウ素含有化合物で後処理されたアルケニル又はアルキルコハク酸イミド類である。別の態様では分散剤は、後処理されていないアルケニル又はアルキルコハク酸イミドを含んでいる。
【0130】
特許請求に係る本発明に用いることができるその他の分散剤としては、これらに限定されるものではないが、ポリアルコールとポリイソブテニルコハク酸無水物のエステル類、フェネート−サリチレート類及びそれらの後処理類似物、アルカリ金属又は混合アルカリ金属、アルカリ土類金属のホウ酸塩類、水和アルカリ金属ホウ酸塩の分散物、アルカリ土類金属ホウ酸塩の分散物、ポリアミド無灰分散剤等、またはそのような分散剤の混合物を挙げることができる。
【0131】
分散用添加剤(「分散剤」)は任意の好適な形態であってよい。ある態様では分散剤を、任意の好適なプロセス油又は希釈油(例えば、任意のI種油、II種油またはそれらの組合せ又は混合物)と分散剤とを含む濃縮物の形で、舶用システム油組成物に混合又はブレンドする。ある態様ではプロセス油又は希釈油は、舶用システム油組成物の基油(例えばI種基油)とは異なる油、例えば異なるI種基油、II種基油またはそれらの混合物又は組合せである。別の態様ではプロセス油又は希釈油は、舶用システム油組成物の基油(例えばI種基油)と同じ油である。
【0132】
本発明の舶用システム油組成物(又は濃縮物)中の一種以上の分散剤の濃度は、システム油組成物の全質量に対して少なくとも約1.0質量%、例えば少なくとも1.25質量%、少なくとも1.5質量%、少なくとも1.75質量%、少なくとも2.0質量%又は少なくとも2.5質量%であってよい。舶用システム油添加剤組成物中の一種以上の分散剤の活性分に基づく濃度は、少なくとも約10質量%、より好ましくは少なくとも12.5質量%、少なくとも15質量%、少なくとも17.5質量%、少なくとも20質量%又は少なくとも25質量%である。
【0133】
以下の添加剤成分は、本発明の舶用システム油組成物(又は濃縮物)に含まれていてもよい成分の例である。これら添加剤の例は、所望の機能を達成するのに適した任意の量で存在することができ、例えば添加剤は本発明の舶用システム油組成物(又は濃縮物)中にシステム油組成物の全質量に対して0.1乃至20質量%の量で、例えば0.5質量%、1質量%、1.5質量%、2質量%より多い量で、又は3質量%より多い量で存在することができる。
【0134】
摩耗防止剤
添加剤によっては同時に多くの機能をもたらすように機能する。別の態様では本発明の舶用システム油組成物に使用することができる摩耗防止剤として、アリール及びアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)が挙げられ、それらは同時に耐摩耗性、極圧性および酸化防止性をもたらすことができる。例えば摩耗防止剤は、アルカリール、第一級アルキル又は第二級アルキルジチオリン酸亜鉛、例えば第一級アルキルジチオリン酸亜鉛であってもよい。
【0135】
酸化防止剤
酸化防止剤は、油が酸素や熱にさらされて劣化する傾向を低減する。この劣化の証拠は、スラッジやワニス状堆積物の生成、油の粘度増加および腐食又は摩耗の増加にある。本発明の態様である舶用システム油組成物に使用することができる酸化防止剤の例としては、フェノール型(フェノール系)酸化防止剤、例えば2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−1−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)を挙げることができる。ジフェニルアミン型酸化防止剤としては、これらに限定されるものではないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル化アルファ−ナフチルアミンを挙げることができる。硫黄含有酸化防止剤としては、無灰スルフィド及びポリスルフィド類、金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、および15−メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)が挙げられる。リン化合物、特にはアルキル亜リン酸エステル類、硫黄−リン化合物、および銅化合物も酸化防止剤として使用することができる。
【0136】
耐摩耗剤
耐摩耗性添加剤は、継続的な中位の負荷条件で可動金属部分の摩耗を低減する。本発明の態様である舶用システム油組成物に使用することができる耐摩耗剤の例としては、リン酸エステル類及びチオリン酸エステル類およびそれらの塩類、カルバメート類、エステル類、およびモリブデン錯体を挙げることができる。特に好ましい耐摩耗性化合物はリン酸アミン類である。
【0137】
さび止め添加剤(さび止め剤)
さび止め添加剤は、鉄金属の腐食を改善する。本発明の態様である舶用システム油組成物に使用することができるさび止め添加剤の例としては、(a)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート;および(b)その他の化合物、例えばステアリン酸および他の脂肪酸類、ジカルボン酸類、金属石鹸類、脂肪酸アミン塩類、重質スルホン酸の金属塩類、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステルを挙げることができる。
【0138】
抗乳化剤
抗乳化剤は、混入によって油と接触するようになる水からの油の分離を促進する。本発明の態様である舶用システム油組成物に使用することができる抗乳化剤の例としては、アルキルフェノールとエチレンオキシドの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステルを挙げることができる。
【0139】
極圧剤(EP剤)
極圧剤は、高負荷条件で可動金属部分の摩耗を低減する。本発明の態様である舶用システム油組成物に使用することができる極圧剤の例としては、硫化オレフィン類、ジアルキル1ジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル型、第二級アルキル型及びアリール型)、ジフェニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛、中和又は部分中和リン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、および無硫黄リン酸エステル類を挙げることができる。
【0140】
低融点有機摩擦緩和剤
融点が30℃未満の摩擦緩和剤も、本発明に用いることができる。本発明の態様である舶用システム油組成物に使用することができる低融点有機摩擦緩和剤の例としては、ある種の脂肪アルコール類、脂肪酸類、脂肪酸の部分エステル類、脂肪酸アミド類、アルキルアミン類、アルキルアミンアルコキシレート類、およびこれらをホウ酸化したものを挙げることができる。他の摩擦緩和剤としては、金属有機摩擦緩和剤、例えば硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノリンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン・モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物を挙げることができる。銅含有摩擦緩和剤も使用することができる。
【0141】
粘度指数向上剤
粘度指数向上剤は、潤滑油の粘度指数を増加させるために使用され、それにより温度の上昇による油の粘度低下を軽減する。本発明の態様である舶用システム油組成物に使用することができる粘度指数向上剤の例としては、ポリメタクリレート重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水素化スチレン・イソプレン共重合体、およびポリイソブチレンを挙げることができ、全て粘度指数向上剤として使用できる。特に好ましい粘度指数向上剤はポリメタクリレート重合体である。窒素及び酸素官能基を持つ重合体、いわゆる分散型粘度指数向上剤も使用することができる。
【0142】
流動点降下剤
流動点降下剤は、ろうが潤滑油から析出する温度を下げて、それにより油の流れが妨げられる前に潤滑油が作用できる温度範囲を広げる。本発明の態様である舶用システム油組成物に使用することができる流動点降下剤の例としては、ポリメチルメタクリレート類、エステル・オレフィン共重合体、特にはエチレン・酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
【0143】
消泡剤
消泡剤は、作動中に潤滑剤に混入した気体の放出を促すように作用する。本発明の態様である舶用システム油組成物に使用することができる消泡剤の例としては、アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシロキサン重合体を挙げることができる。
【0144】
金属不活性化剤
金属不活性化剤は、金属表面の腐食を妨げ、また潤滑油では溶液中の金属イオンをキレート化し、それにより金属イオンの触媒効果によって起こる酸化を低減する。本発明の態様である舶用システム油組成物に使用することができる金属不活性化剤の例としては、サリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、メルカプトベンゾチアゾール類、チアジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾール類を挙げることができる。
【0145】
他の金属清浄剤
本発明の態様である舶用システム油組成物に使用することができる他の金属清浄剤の例としては、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート類、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート類、カルシウムスルホネート類、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩類、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート類、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート類、アルカノール酸の金属塩類、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩類、およびそれらの化学的及び物理的混合物を挙げることができる。本発明の舶用システム油組成物に使用することができる他の金属清浄剤としては例えば、金属スルホネート類、フェネート類、サリチレート類、ホスホネート類、チオホスホネート類、およびそれらの組合せが挙げられる。金属は、スルホネート、フェネート、サリチレート又はホスホネート清浄剤を製造するのに適した任意の金属であってよく、例えば金属はアルカリ金属、アルカリ金属および/または遷移金属である。別の態様では金属は、Ca、Mg、Ba、K、NaまたはLi等である。
【0146】
別の態様では舶用システム油組成物は更に、例えば米国特許出願公開第2004/0235686号明細書の実施例1に記載された方法に従って製造された、多重界面活性で未硫化、非炭酸化、非過塩基性のカルボキシレート含有添加剤を含むカルボキシレート含有清浄剤を含有していてもよく、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0147】
別の態様では舶用システム油組成物は、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を含まない清浄剤を含有しない。別の態様では舶用システム油組成物は、スルホン酸の金属塩を含有しない。別の態様では舶用システム油組成物中に存在する唯一のアルキルフェノール清浄剤は、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩の一部として導入されたアルキルフェノール類である。別の態様では舶用システム油組成物は、サリチレート含有清浄剤を含有しない。別の態様では舶用システム油組成物の清浄剤は、アルキルフェネート類を含まない。
【0148】
(舶用システム油の性状)
本発明の舶用システム油組成物は、下記の性状のうちの一つ以上を有することができる。
(a)粘度が100℃で19cSt未満、例えば10−18cSt、10−13cSt、11−12cSt、9−14cSt、8−15cStの間の範囲、又は10−15cStの間の範囲であり、
(b)SAE粘度グレードがSAE規格J300で規定して40以下、例えば30−40の間、20−40の間の範囲、又は30であり、
(c)粘度が40℃で138cSt未満、例えば100−135cSt、90−115cStの間の範囲、又は95−105cStの間の範囲であり、
(d)粘度指数が90以上、例えば90より上、95より上、又は100より上であり、
(e)引火点(密閉カップ)が220℃より高い、例えば220−230℃の間の範囲、又は220−235℃の間の範囲であり、
(f)流動点が−10℃未満、例えば−12℃、−13℃、−14℃、−15℃、−16℃、−17℃未満、又は−18℃未満であり、
(g)TBNが3.5から20の間の範囲、例えば3.5から18の間、3.5から14の間、3.5から10の間、3.5から9の間、3.5から7の間、3.5から6の間、3.5から5の間、4から16の間、4から12の間、4から10の間、4から8の間、4から7の間、4から6の間、4から5の間、4.5から15の間、5から13の間、5から9の間、5から8の間、5から7の間、5.5から11の間、6から10の間、7から12の間の範囲、又は10から20の間の範囲であり、そして
(h)石鹸分が界面活性剤6ミリモル/kgシステム油組成物(ミリモル/kg)より多く、例えば7ミリモル/kg、8ミリモル/kg、9ミリモル/kg又は10ミリモル/kgより多い。
【0149】
[舶用システム油添加剤又は濃縮物]
本発明の別の態様では、前述したカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩と、一般には前述した基油とを含む舶用システム油添加剤パッケージ又は添加剤濃縮物を、追加の添加剤と共に又は無しで加えることによって、舶用システム油組成物を供する。舶用システム油添加剤パッケージ又は添加剤濃縮物は、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を、舶用システム油組成物中に一般に存在するよりも多い質量%で含有し、例えば濃縮組成物の全質量に基づき35質量%より多く、例えば40質量%から90質量%の間、50質量%から80質量%の間、又は60質量%から75質量%の間で含有している。濃縮物を次いで基油と、任意に他の成分と混ぜ合わせて、TBNが3.5から20の間の範囲、例えば3.5から18の間、3.5から14の間、3.5から10の間、3.5から9の間、3.5から7の間、3.5から6の間、3.5から5の間、4から16の間、4から12の間、4から10の間、4から8の間、4から7の間、4から6の間、4から5の間、4.5から15の間、5から13の間、5から9の間、5から8の間、5から7の間、5.5から11の間、6から10の間、7から12の間の範囲、又は10から20の間の範囲である舶用システム油組成物にすることができる。
【0150】
[TBNが350のカルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩試料の製造]
この実施例は、米国特許出願公開第2007/0027043号明細書から抜粋したものであり、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0151】
A)アルカリ金属塩基アルキルフェネートの生成:
線状ノルマルアルファオレフィンの混合物(シェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー製のC20−C28アルファオレフィン類)から合成したアルキルフェノール類(1000g)、キシレン(500g)を反応器に入れ、15分かけて60℃に加熱し、次いで45%KOH水溶液290g(2.325モル)、およびロドルシル(Rhodorsil)47V300(ロジア(Rhodia)社製)という商品名の消泡剤0.2gを加えた。次に、反応器を更に2時間かけて145℃まで加熱しながら、圧力を徐々に大気圧(絶対圧1013mbar−1×105Pa)から絶対圧800mbar(8×104Pa)に下げた。これらの条件で還流を開始して3時間維持した。この間に水およそ179mLを取り除いた。
【0152】
B)カルボキシル化:
工程A)からのアルカリ金属アルキルフェネートを含む反応器を140℃まで放冷した。次に、反応器をCO2で4bar(4×105Pa)(絶対圧)に加圧し、これらの条件で4時間維持した。この期間の最後に、CO2抜きをして反応器が大気圧に達するようにした。この段階でCO282gを導入して、アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートにした。
【0153】
C)酸性化:
工程B)からのアルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートを、下記のようにして20モル%過剰の10%硫酸水溶液と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸に変換した。
【0154】
10%に希釈した硫酸溶液1397gを得るために、98%硫酸140gと水1257gとの混合物を6リットル反応器に入れ、250rpmで撹拌しながら50℃に加熱し、工程B)からのアルキルヒドロキシベンゾエート、およびキシレン(1500g)を30分かけて充填した。キシレンは相分離に役立った。反応器を継続して250rpmで撹拌しながら、60℃乃至65℃に加熱して2時間維持した。この期間の最後に撹拌は止めたが、反応器を60℃乃至65℃で2時間維持して相分離を起こさせた。相分離したら直ちに、水と硫酸カリウムを含む下部水性相をデカントした。アルキルヒドロキシ安息香酸とキシレンを含む上部有機相を、次の工程のために捕集した。アルキルヒドロキシ安息香酸の濃度を、KOH/gのmgと等価な値、ASTM D664に記載されているように全酸価(TAN)としても知られている値、として測定した。
【0155】
D)中和:
工程C)からのアルキルヒドロキシ安息香酸(TAN35mgKOH/g)を含む上部有機相(3045g)を、撹拌しながら10分かけて反応器に充填した。次に、メタノール(573g)と石灰(573g)とキシレン(735g)のスラリーを導入した。発熱反応のために温度が約20℃から28℃に上がった。一旦スラリーを添加したら、反応器を30分かけて40℃に加熱し、そしてギ酸(14.65g):酢酸(14.65g)の混合物を添加して反応器の内容物と反応させた。5分経過後に、反応器を30分かけて30℃まで冷却した。
【0156】
E)過塩基化:
一旦反応器の温度が30℃に下がったら、CO2(70.3g)を1.37g/分の流量で15分かけて反応器に導入し、次いでCO2171gを1.62g/分の流量で105分かけて導入した。メタノール(109g)と石灰(109g)とキシレン(145g)のスラリーを加えた。次に、追加のCO2(128.4g)を1.62g/分の流量で79分かけて加えた。反応により、過塩基性アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートが生じた。この段階でASTM D2273の方法に従って、粗沈降物のパーセント1.2容量%を測定した。
【0157】
F)予備蒸留、遠心分離及び最終蒸留:
反応器に含まれた混合物を、110分かけて段階的に65℃から128℃の間の温度にした。この操作によって、メタノール、水および一部のキシレンを取り除いた。一旦128℃に達したら、希釈油(775g)を加えた。次いで、粗沈降物を測定した。過塩基性アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート中の粗沈降物の量は、非常に少なかった(1.2容量%)。
【0158】
反応混合物を遠心分離にかけて粗沈降物を取り除き、次いで204℃、絶対圧50mbar(50×102Pa)の減圧下で10分間蒸留して残りのキシレンを取り除いて、TBNが350の過塩基性アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートが生じた。
【実施例】
【0159】
以下の実施例を本発明の特定の態様として、その利点を示すために記す。実施例は、説明のために記載するのであって、決して明細書またはその後に続く特許請求の範囲を限定しようとするものではない。
【0160】
本発明の舶用システム油組成物の優れた性能を実証するために、カルボキシレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を含む組成物を、サリチレート含有清浄剤の過塩基性金属塩を含む舶用システム油組成物と比較した。黒スラッジ堆積物(BSD)試験、MAO62分散試験、示差走査熱量測定(DSC)酸化試験、および改定英国石油協会48(MIP−48)試験を用いて、油組成物の評価を行った。
【0161】
以降に記載する実施例において下記の成分を使用した。
【0162】
(基油)
I種:
エクソンモービルCORE(ExxonMobil CORE、商標)600N:I種系潤滑油は、エクソンモービル(ExxonMobil)社(テキサス州アービング)製のエクソンモービルCORE600N基材油であった。
【0163】
エクソンモービルCORE(商標)150N:I種系潤滑油は、エクソンモービル社(テキサス州アービング)製のエクソンモービルCORE150N基材油であった。
【0164】
(過塩基性清浄剤)
過塩基性カルボキシレート含有清浄剤
カルボキシレート150:TBNが150でアルキル置換ヒドロキシ安息香酸のカルシウム塩を含む、過塩基性カルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤の油添加剤濃縮物、ただし、清浄剤は、少なくとも90モル%のアルキル基がC20以上であるアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸から誘導され、そして清浄剤はCa約5.35質量%を含有し、米国特許出願公開第2007/0027043号明細書の実施例3に記載された方法に従って製造されたものであり、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0165】
カルボキシレート350:TBNが350でアルキル置換ヒドロキシ安息香酸のカルシウム塩を含む、過塩基性カルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤の油添加剤濃縮物、ただし、清浄剤は、少なくとも90モル%のアルキル基がC20以上であるアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸から誘導され、そして清浄剤はCa約12.5質量%を含有し、米国特許出願公開第2007/0027043号明細書の実施例1に記載された方法に従って製造されたものであり、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0166】
(過塩基性サリチレート含有清浄剤)
サリチレート170:TBNが170でC14−C18サリチレートのカルシウム塩を含む、サリチレート含有清浄剤の過塩基性カルシウム塩の市販低分子量油添加剤濃縮物、ただし、清浄剤は、95モル%を越えるアルキル基がC14−C18であるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸から誘導され、そして清浄剤はCa約6質量%を含有する。
【0167】
サリチレート280:TBNが280でC14−C18サリチレートのカルシウム塩を含む、サリチレート含有清浄剤の過塩基性カルシウム塩の市販低分子量油添加剤濃縮物、ただし、清浄剤は、95モル%を越えるアルキル基がC14−C18であるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸から誘導され、そして清浄剤はCa約10質量%を含有する。
【0168】
(耐摩耗性ZnDTP添加剤)
ZnDTP(a):C4/C5アルコールから誘導された第一級ZnDTPの油添加剤濃縮物。
【0169】
ZnDTP(b):C4及びC6アルコールの混合物から誘導された第二級ZnDTPの油添加剤濃縮物。
【0170】
ZnDTP(c):C4及びC8アルコールの混合物から誘導された第一級ZnDTPの油添加剤濃縮物。
【0171】
ZnDTP(d):2−エチルヘキサノールから誘導された第一級ZnDTPの油添加剤濃縮物。
【0172】
(分散剤)
MW1000のポリブテンとHPA/DETAから誘導されたビスコハク酸イミド分散剤。
【0173】
[組成物I及びII]
過塩基性清浄剤を変えて、二種類の試料舶用システム油組成物を製造した。第2表:舶用システム油組成物に、試料舶用システム油組成物を製造するための成分および量を示す。試験組成物に過塩基性清浄剤を使用したにもかかわらず、これら組成物のTBNを5mgKOH/gで維持し、また完成油粘度を100℃で11−12cStで維持した。
【0174】
[実施例1−3および比較例A−C]
第3表:舶用システム油組成物の試験結果に、試料舶用システム油組成物の試験結果を、使用した特定の過塩基性清浄剤およびこれら組成物の石鹸分(ミリモル/kg)と共に示す。
【0175】
【表1】

【0176】
【表2】

【0177】
[試験法]
(黒スラッジ堆積物(BSD)試験)
この試験を用いて、舶用潤滑剤が残さ油中の不安定な−未燃焼アスファルテンをうまく処理する能力について評価する。試験では、重油と潤滑剤の混合物に酸化熱負荷を加えることにより、潤滑剤が試験片に堆積物を生じる傾向を測定する。
【0178】
舶用システム油組成物の試料を特定量の舶用残さ油と混ぜ合わせて、試験混合物とした。試験混合物を試験の間中ポンプで金属試験片板にかけて薄膜とし、試験片を規定時間(12時間)試験温度(200℃)に制御した。試験油・残さ油混合物を試料容器に再循環させた。試験後、試験片を冷却し、次いですすいで乾燥した。次に、試験板を計量した。このようにして試験板に残った堆積物の重さを、試験板の重さの変化として測定して記録した。
【0179】
(アスファルテン分散試験)
この試験では、ろ紙上の油と黒色物質の分散性を測定することにより、舶用システム油が、アスファルテン及び炭質物質を分散させておく能力について評価する。様々な処理加熱条件で、水の添加有りと無しで、新油と劣化油両方の分散性を測定する。
【0180】
新鮮な試料は、大部分の新鮮な舶用システム油と重油とカーボンブラックとの混合物からなる。劣化した試料は、新鮮な舶用システム油と、酸化条件で高温に加熱することで劣化した重油との混合物からなる。劣化工程後に、カーボンブラックを劣化試料に加える。
【0181】
次に、新油試料と劣化油試料両方を、三つの異なる熱処理に水の添加有りと無しで掛けて、全部で六つの異なる処理を行う。その後、処理した試料の一滴を一枚のろ紙につけ、定温器で48時間展開する。展開後、液滴は、軽質油部分で囲まれた小さな黒い環状のスラッジを形成している。油及びスラッジ部分の直径を測定して、油:スラッジの直径比を計算する。試験結果を6Xとして記すが、それは六つの異なる処理からの油:スラッジ直径比の合計である。
【0182】
(改定英国石油協会48(MIP48)試験)
この試験では、潤滑剤の酸化による粘度増加に対する安定度を測定する。試験は熱部と酸化部とからなる。試験の両部の間中、試験試料を規定時間加熱する。試験の熱部では加熱した油試料に窒素を24時間通し、並行して試験の酸化部では加熱した油試料に空気を24時間通す。次いで両試料とも冷却して、試料の粘度を求めた。酸化によって生じた試験油のBN消耗および粘度増加を求め、熱による影響の補正をする。空気吹込み試料の200℃動粘度から窒素吹込み試料の200℃動粘度を引き算し、そして引き算の結果を窒素吹込み試料の200℃動粘度で割ることにより、各舶用システム油組成物の酸化による粘度増加を算出した。
【0183】
(示差走査熱量測定(DSC)試験)
この試験を用いて、ASTM D−6186に従って試験油の薄膜酸化安定性の評価を行う。試験の間中、試料カップ内の試験油の熱移動を基準カップと比較する。酸化開始温度は試験油の酸化が始まる温度である。酸化誘導時間は試験油の酸化が始まる時間である。酸化反応の結果、熱移動によって明白である発熱反応が生じる。酸化誘導時間を計算して試験油の薄膜酸化安定性を評価する。
【0184】
この明細書に記した全ての出版物及び特許出願明細書は、各々個々の出版物又は特許出願明細書を参照内容として記載すると明確かつ個別に指示したのと同程度に、参照内容として本明細書の記載とする。
【0185】
本発明の好ましい態様について本明細書に示して説明したが、当該分野の熟練者であれば、そのような態様を実施例によってのみ提供していることが明らかであろう。以降の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定すること、また、この特許請求の範囲の範囲内の方法及び構造およびそれらと同等なものも特許請求の範囲に包含されることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含む舶用システム油組成物:
a)主要量の潤滑粘度の基油、および
b)少量のカルボキシレート含有清浄剤であって、下記の物質を含む混合物を反応させることを含む方法により製造された少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を含む清浄剤:
i)少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル基のうちの少なくとも50モル%がC20以上であるカルボン酸、および
ii)塩基。
【請求項2】
少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を更に、追加の塩基の存在下で少なくとも一種の過塩基化用化合物と反応させることにより、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性塩にする請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項3】
混合物が更に、少なくとも一種の過塩基化用化合物を含み、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性塩にする請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項4】
塩基と追加の塩基が同じである請求項2に記載の舶用システム油組成物。
【請求項5】
システム油組成物のTBNが3.5から20の間の範囲にある請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項6】
基油がI種及び/又はII種基油を含む請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項7】
カルボキシレート含有清浄剤が、システム油組成物の全質量に対して35質量%未満の量で含まれる請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項8】
少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩が、過塩基化されていない請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項9】
カルボキシレート含有清浄剤が、非過塩基性カルボキシレート含有清浄剤である請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項10】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸が、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸である請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項11】
システム油組成物の石鹸分が6ミリモル/kgより多い請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項12】
カルボキシレート含有清浄剤のTBNが100から450の間の範囲にある請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項13】
塩基が金属塩基である請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項14】
金属がアルカリ土類金属である請求項13に記載の舶用システム油組成物。
【請求項15】
アルカリ土類金属がカルシウムである請求項14に記載の舶用システム油組成物。
【請求項16】
少なくとも一種の過塩基化用化合物が二酸化炭素である請求項2に記載の舶用システム油組成物。
【請求項17】
少なくとも一種の過塩基化用化合物が二酸化炭素である請求項3に記載の舶用システム油組成物。
【請求項18】
追加の塩基が水酸化カルシウムを含む請求項2に記載の舶用システム油組成物。
【請求項19】
水酸化カルシウム源が石灰である請求項18に記載の舶用システム油組成物。
【請求項20】
少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩が、組成物の唯一の清浄剤である請求項1に記載の舶用システム油組成物。
【請求項21】
少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性塩が、組成物の唯一の過塩基性清浄剤である請求項2に記載の舶用システム油組成物。
【請求項22】
少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性塩が、組成物の唯一の過塩基性清浄剤である請求項3に記載の舶用システム油組成物。
【請求項23】
i)過塩基化用化合物が二酸化炭素を含み、そして
ii)塩基が水酸化カルシウムを含んでいて、
少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性カルシウム塩にする請求項2に記載の舶用システム油組成物。
【請求項24】
i)塩基が水酸化カルシウムを含み、そして
ii)少なくとも一種の過塩基化用化合物が二酸化炭素を含んでいて、
少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基性カルシウム塩にする請求項3に記載の舶用システム油組成物。
【請求項25】
カルボキシレート含有清浄剤を35質量%より多く含む舶用システム油添加剤濃縮物。
【請求項26】
低速二サイクル・クロスヘッド舶用ディーゼルエンジンのクランクケースを潤滑下に作動させる方法であって、請求項1に記載の舶用システム油組成物を用いてエンジンを作動させることを含む方法。
【請求項27】
下記の成分を一緒に混合することを含む、舶用システム油組成物の製造方法:
a)主要量の潤滑粘度の基油、および
b)少量のカルボキシレート含有清浄剤であって、下記の物質を含む混合物を反応させることを含む方法により製造された少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩を含む清浄剤:
i)少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸であって、少なくとも一種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルキル基のうちの少なくとも50モル%がC20以上であるカルボン酸、および
ii)塩基。

【公開番号】特開2011−74387(P2011−74387A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219474(P2010−219474)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(501381217)シェブロン・オロナイト・テクノロジー・ビー.ブイ. (11)
【Fターム(参考)】