説明

舶用操舵装置及び舶用操舵方法

【課題】操舵部を操作していない状況が続くときに、電動機の消費エネルギの低減を図ることができると共に、作動液の温度上昇による劣化を抑制できる舶用操舵装置及び舶用操舵方法を提供する。
【解決手段】制御部は、操舵部を操作していない状況である指令舵角と実舵角との舵角偏差が零(又は第1舵角偏差以下)であるときに、油圧ポンプから吐出される圧油の舵板駆動部への供給を止めると共に、この圧油の供給を停止している継続時間Tが設定継続時間TS以下であるときは、油圧ポンプを回転駆動する電動機を低速の第1回転速度で回転させ、継続時間Tが設定継続時間TSを越えたときは、電動機を低速の第1回転速度よりも小さい極低速の第2回転速度で回転させ又は停止させる構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機で液圧ポンプを回転駆動して、この液圧ポンプが吐出する圧液によって舵板駆動部を動作させ、この舵板駆動部によって舵板の舵角を変更することができる舶用操舵装置及び舶用操舵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の舶用操舵装置の一例として、一定の定格回転速度の定格出力で回転する電動機で油圧ポンプを回転駆動して、この油圧ポンプが吐出する圧油によって舵板駆動部を動作させ、この舵板駆動部によって舵板の舵角を変更するものがある。
【0003】
そして、この舶用操舵装置によると、舵板の舵角を変更する動作を行なっていない停止状態では、例えば方向制御弁を切換えて、油圧ポンプが吐出する作動油を舵板駆動部に供給せずに、所定の循環回路で循環させるようになっている。
【0004】
また、従来の他の舶用操舵装置では、速度制御されるサーボモータを使用することによって、舵板の動作速度を大幅に高速化することを可能にして、舵板の舵角を迅速に変更することができるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−114195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来の舶用操舵装置のうち、一定の定格回転速度の定格出力で回転する電動機によって油圧ポンプを回転駆動しているものでは、舵角を迅速に変更することができるが、舵板の舵角を変更する動作を行なっておらず舵板が停止状態であっても、電動機は、一定の回転速度で回転しているので、この状態での電動機の消費エネルギの低減が求められている。
【0007】
そして、舵板の舵角を変更する動作を行なっておらず舵板が停止状態であっても、舵角を変更する状態のときと同様に、油圧ポンプから一定流量の作動油を所定の循環回路で循環させているので、この循環する作動油の油温を無駄に上昇させ、作動油の温度上昇による劣化が早期に生じることとなり、作動油を冷却する場合は、別途冷却装置が必要となる。
【0008】
また、従来の他の舶用操舵装置では、速度制御されるサーボモータを使用して、舵板の動作速度を制御することが可能であるが、舵板の舵角変更動作を行わない舵板の停止状態が継続する場合に、電動機の消費エネルギの低減を図ることができるようにはなってはいない。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、操舵部が操作されない状況が続くときに、電動機の消費エネルギの低減を図ることができると共に、作動液の温度上昇による劣化を抑制することができる舶用操舵装置及び舶用操舵方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る舶用操舵装置は、指令舵角と対応する指令舵角信号を出力する操舵部と、前記操舵部の操作に基づいて回転駆動される電動機と、前記電動機の回転速度を制御する制御部と、前記電動機によって回転駆動される液圧ポンプと、前記液圧ポンプから吐出される圧液によって動作する舵板駆動部と、前記舵板駆動部によって作動される舵板と、前記舵板の実舵角を検出して実舵角信号を出力する舵角検出部とを備える舶用操舵装置において、前記指令舵角信号と前記実舵角信号との舵角偏差が零又は零に近い第1舵角偏差以下である状態が継続する継続時間を測定する継続時間測定タイマを備え、前記制御部は、前記舵角偏差が零又は前記第1舵角偏差以下であるときに、前記液圧ポンプから吐出される圧液の前記舵板駆動部への供給を止めると共に、前記継続時間が所定の設定継続時間以下であるときに、前記電動機を第1回転速度で回転させ、前記継続時間が前記所定の設定継続時間を越えたときに、前記電動機を前記第1回転速度よりも小さい第2回転速度で回転させ、又は停止させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る舶用操舵装置によると、操舵部が操作されると、操舵部は、指令舵角信号を出力し、制御部は、この指令舵角信号と実舵角信号との舵角偏差に基づいて電動機の回転速度を制御することができる。液圧ポンプは、電動機によって回転駆動されて、電動機の回転速度に応じた流量の圧液によって舵板駆動部を動作させることができ、この舵板駆動部によって舵板を作動させて舵角を変更することができる。
【0012】
そして、舵角検出部は、舵板の実舵角を検出して実舵角信号を出力することができる。また、継続時間測定タイマは、指令舵角信号と実舵角信号との舵角偏差が零又は零に近い第1舵角偏差以下である状態が継続する継続時間を測定することができる。これによって、この継続時間測定タイマは、舵板が作動して指令舵角と実舵角が一致したときから、指令舵角と実舵角が不一致となるまでの時間、つまり操舵部を操作していない時間を測定することができる。
【0013】
また、制御部は、舵角偏差が零又は第1舵角偏差以下であるときに、液圧ポンプから吐出される圧液の舵板駆動部への供給を止めることができる。これによって、液圧ポンプから吐出される圧液によって舵板が指令舵角の位置からずれないようにすることができる。
【0014】
そして、制御部は、指令舵角と実舵角が一致したときから、指令舵角と実舵角が不一致となるまでの時間、つまり舵角偏差が零又は第1舵角偏差以下である継続時間が所定の設定継続時間以下であるときは、電動機を第1回転速度で回転させることができる。また、制御部は、舵角偏差が零又は第1舵角偏差以下である継続時間が所定の設定継続時間を越えたときは、電動機を第1回転速度よりも小さい第2回転速度で回転させ、又は停止させることができる。
【0015】
また、制御部が、液圧ポンプから吐出される圧液の舵板駆動部への供給を止めるときの判定基準を舵角偏差が零であるときとせずに、舵角偏差が第1舵角偏差以下であるときとすることによって、この舶用操舵装置の動作の安定性を向上させることができる。
【0016】
この発明に係る舶用操舵装置において、前記制御部は、前記舵角偏差が零又は前記第1舵角偏差よりも大きいときに、前記電動機を前記舵角偏差に応じた回転速度で回転させて前記舵板を作動させるものとすることができる。
【0017】
これによって、操舵部を操作したときに、つまり、舵角偏差が零よりも大きい又は第1舵角偏差よりも大きくなったときに、電動機を舵角偏差に応じた回転速度で回転させて舵板を作動させることができる。例えば舵板の指令舵角と実舵角との舵角偏差が大きいときは、電動機を高速で回転させて舵板の舵角を高速で変更することができる。これによって、舵角偏差が大きいときでも、比較的短時間で舵板を指令舵角に向けることができる。そして、舵板の指令舵角と実舵角との舵角偏差が小さいときは、電動機を低速で回転させて舵板を低速で作動させることができる。これによって、舵板を指令舵角の位置に大きな衝撃を発生させないよう支障なく滑らかに停止させることが可能である。
【0018】
この発明に係る舶用操舵装置において、前記制御部は、前記舵角偏差が零よりも大きいときに、又は前記第1舵角偏差よりも大きい第2舵角偏差以上であるときに、前記電動機を前記第1回転速度よりも大きい第3回転速度で回転させて前記舵板を作動させ、前記舵角偏差が前記第2舵角偏差未満であって、零又は前記第1舵角偏差よりも大きいときに、前記電動機を前記第1回転速度で回転させて前記舵板を作動させるものとすることができる。
【0019】
このようにすると、舵角偏差が零よりも大きいときは、又は第1舵角偏差よりも大きい第2舵角偏差以上であるときは、制御部は、電動機を第1回転速度よりも大きい第3回転速度で回転させて舵板を作動させることができる。例えば操作部が操作されて、舵板の指令舵角と実舵角との舵角偏差が比較的大きいときは、制御部は、電動機を高速(第3回転速度)で回転させて舵板の舵角を高速で変更して、比較的短時間で舵板を指令舵角に向けることができる。
【0020】
そして、舵角偏差が第2舵角偏差未満であって、零又は第1舵角偏差よりも大きいときは、制御部は、電動機を第1回転速度で回転させて舵板を作動させることができる。例えば、舵板の指令舵角と実舵角との舵角偏差が小さいとき又は小さくなったときは、電動機を低速(第1回転速度)で回転させて舵板の舵角を低速で変更することができ、これによって、舵板を指令舵角の位置に大きな衝撃を発生させないよう支障なく滑らかに停止させることが可能である。
【0021】
この発明に係る舶用操舵装置において、前記制御部は、インバータを介して前記電動機の回転速度を制御するものとすることができる。
【0022】
このように、制御部は、インバータを使用して電動機の回転速度を制御すると、例えば既設の電動機の速度制御を行うことができて経済的である。
【0023】
本発明に係る舶用操舵方法は、指令舵角と対応する指令舵角信号を出力する操舵部と、前記操舵部の操作に基づいて回転駆動される電動機と、前記電動機の回転速度を制御する制御部と、前記電動機によって回転駆動される液圧ポンプと、前記液圧ポンプから吐出される圧液によって動作する舵板駆動部と、前記舵板駆動部によって作動される舵板と、前記舵板の実舵角を検出して実舵角信号を出力する舵角検出部と、前記指令舵角信号と前記実舵角信号との舵角偏差が零又は零に近い第1舵角偏差以下である状態が継続する継続時間を測定する継続時間測定タイマを備える舶用操舵装置を使用する舶用操舵方法であって、前記制御部は、前記舵角偏差が零又は前記第1舵角偏差以下であるときに、前記液圧ポンプから吐出される圧液の前記舵板駆動部への供給を止めると共に、前記継続時間が所定の設定継続時間以下であるときに、前記電動機を第1回転速度で回転させ、前記継続時間が前記所定の設定継続時間を越えたときに、前記電動機を前記第1回転速度よりも小さい第2回転速度で回転させ、又は停止させることを特徴とするものである。
【0024】
本発明に係る舶用操舵方法によると、本発明に係る舶用操舵装置と同様に作用する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る舶用操舵装置及び舶用操舵方法によると、制御部は、舵角偏差が零又は第1舵角偏差以下である継続時間、つまり操舵部が操作されない継続時間が所定の設定継続時間以下であるときは、電動機を第1回転速度で回転させることができる構成であるので、液圧ポンプから吐出される圧液を、電動機の回転速度に対応する流量に保持することができ、次に、操舵部が操作されたときに、舵板を滑らかにしかも優れた応答性で作動させることができる。
【0026】
そして、制御部は、舵角偏差が零又は第1舵角偏差以下である継続時間が所定の設定継続時間を越えたときは、電動機を第1回転速度よりも小さい第2回転速度で回転させ、又は停止させることができる構成であるので、操舵部が操作されず、指令舵角と実舵角が一致(又は略一致)している状況が設定継続時間を越えて続くときに、設定継続時間以降の電動機の消費エネルギの低減を図ることができる。つまり、電動機の加減速の回数を減らし、加速による消費電力の増加を抑えることが可能になる。更に、これによって液圧ポンプから吐出される圧液の液温の上昇による作動液の性能劣化を抑制することができ、作動液を冷却するための冷却装置が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態に係る舶用操舵装置の油圧回路図である。
【図2】同実施形態に係る舶用操舵装置のブロック図である。
【図3】同実施形態に係る舶用操舵装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】同実施形態に係る舶用操舵装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】同発明の実施形態に係る舶用操舵装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る舶用操舵装置及び舶用操舵方法の一実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。この舶用操舵装置16は、図1に示すように、船舶の船尾に回動自在に取付けられる舵柄17を備え、この舵柄17に、舵軸17aを介して舵板18が固定されている。また、舵柄17には旋回アーム19の一端部が固定され、この旋回アーム19の他端部に、略U字状の凹部から形成された受部20が設けられている。
【0029】
また、この舶用操舵装置16は、舵柄17を回動駆動するための舵板駆動部21を備えている。この舵板駆動部21は、一対の第1及び第2シリンダ機構22、23と、第1及び第2シリンダ機構22、23の出力部を構成するラム24とを有している。第1及び第2シリンダ機構22、23は、相互に対向して配置された第1及び第2シリンダ25、26を有し、一方の第1シリンダ25にラム24の一端部が伸縮自在に装着され、また他方の第2シリンダ26にラム24の他端部が伸縮自在に装着されている。
【0030】
このラム24の軸線方向中央部にはラムピン27が設けられ、このラムピン27が旋回アーム19の受部20に装着されている。従って、ラム24が矢印28で示す方向(図1において右方向)に移動すると、これと共にラムピン27が移動し、これによって旋回アーム19、舵柄17、舵軸17a、及び舵板18が一体的に矢印29で示す反時計方向に回動される。そしてこれとは逆に、ラム24が矢印30で示す方向(図1において左方向)に移動すると、これと共にラムピン27が移動し、これによって旋回アーム19、舵柄17及び舵板18が一体的に矢印31で示す時計方向に回動される。
【0031】
そして、この舶用操舵装置16は、図1に示すように、舵板駆動部21(第1及び第2シリンダ機構22、23)を駆動するための操舵用油圧ポンプ(以下、単に、「油圧ポンプ」と言うこともある。)32を備えている。この油圧ポンプ32は、例えば固定容量型の油圧ポンプである。
【0032】
また、図1に示すように、この油圧ポンプ32は、電動機33によって所定方向に回転駆動され、この電動機33は、インバータ34によって速度制御される。そして、このインバータ34は、図2に示す制御部35によって制御される。
【0033】
また、油圧ポンプ32には、操舵用油圧回路36が設けられ、油圧ポンプ32は、この操舵用油圧回路36を介して舵板駆動部21と油圧回路的に接続している。
【0034】
この操舵用油圧回路36は、油圧ポンプ32から吐出される圧油によって舵板駆動部21を動作させて、舵板18を所望の方向に回動させて、舵板18が所望の指令舵角となるように作動させることができるものである。この操舵用油圧回路36は、図1に示すように、方向制御弁37、方向操作弁38、及びリリーフ回路39を備えている。
【0035】
方向制御弁37は、油圧ポンプ32の吐出口から吐出される圧油を第1シリンダ25又は第2シリンダ26に供給することができると共に、第2シリンダ26又は第1シリンダ25から排出される作動油を油圧ポンプ32の吸込み口に戻すことができるように切り換えることができるものである。
【0036】
つまり、方向制御弁37は、図1に示すように、P1ポート、T1ポート、A1ポート、及びB1ポートを備えている。このP1ポートは、上流側の圧油供給ライン40を介して油圧ポンプ32の吐出口と接続し、T1ポートは、下流側の作動油戻りライン41を介して油圧ポンプ32の吸込み口と接続している。そして、A1ポートは、圧油給排ライン42を介して第2シリンダ26と接続し、B1ポートは、圧油給排ライン43を介して第1シリンダ25と接続している。
【0037】
この方向制御弁37によると、図1に示すように、スプール44が中立位置の状態では、P1ポートとT1ポートとが接続した状態となり、油圧ポンプ32の吐出口から吐出された圧油が、圧油供給ライン40及び作動油戻りライン41を通って油圧ポンプ32の吸込み口に戻される。この中立位置の状態では、舵板18は、停止した状態が維持される。
【0038】
そして、方向制御弁37のスプール44が中立位置から図1の右側に移動して右側位置に切り換わると、P1ポートとA1ポートとが接続した状態となり、油圧ポンプ32から吐出された圧油が、圧油供給ライン40及び圧油給排ライン42を通って第2シリンダ26に供給されて、舵板18を矢印31の方向に回動させることができる。
【0039】
そしてこのときは、第1シリンダ25内の作動油は、圧油給排ライン43及び作動油戻りライン41を通って油圧ポンプ32の吸込み口に戻される。
【0040】
また、方向制御弁37のスプール44が中立位置から図1の左側に移動して左側位置に切り換わると、P1ポートとB1ポートとが接続した状態となり、油圧ポンプ32から吐出された圧油が、圧油供給ライン40及び圧油給排ライン43を通って第1シリンダ25に供給されて、舵板18を矢印29の方向に回動させることができる。
【0041】
そしてこのときは、第2シリンダ26内の作動油は、圧油給排ライン42及び作動油戻りライン41を通って油圧ポンプ32吸込み口に戻される。
【0042】
次に、方向操作弁38を説明する。方向操作弁38は、電磁弁であり、操舵者が、図2に示す操舵部46を操作することによって、この方向操作弁38のスプール45の位置を中立位置、右側位置、及び左側位置に切り換えることができ、これによって、方向制御弁37のスプール44の位置を所望の中立位置、左側位置、及び右側位置に切り換えることができるものである。
【0043】
つまり、方向操作弁38は、図1に示すように、P2ポート、T2ポート、A2ポート、及びB2ポートを備えている。このP2ポートは、パイロットライン47及び圧油供給ライン40を介して油圧ポンプ32の吐出口と接続している。T2ポートは、タンクライン48を介してタンク49と接続している。そして、A2ポートは、パイロットライン50を介して方向制御弁37のパイロットポートXと接続し、B2ポートは、パイロットライン51を介して方向制御弁37のパイロットポートYと接続している。
【0044】
この方向操作弁38によると、図1に示すように、スプール45が中立位置の状態では、圧油が方向制御弁37のパイロットポートX、Yのいずれにも供給されないため、方向制御弁37のスプール44は、中立位置の状態が維持され、舵板18は、停止した状態が維持される。
【0045】
そして、操舵部46が操作されて、方向操作弁38のスプール45が中立位置から図1の右側に移動して右側位置に切り換わると、P2ポートとB2ポートとが接続した状態となり、油圧ポンプ32から吐出された圧油を、パイロットライン47、51を通って方向制御弁37のパイロットポートYに供給することができる。これによって、方向制御弁37のスプール44が左側位置に切り換わり、舵板18を矢印29の方向に回動させることができる。
【0046】
また、操舵部46が操作されて、方向操作弁38のスプール45が中立位置から図1の左側に移動して左側位置に切り換わると、P2ポートとA2ポートとが接続した状態となり、油圧ポンプ32から吐出された圧油を、パイロットライン47、50を通って方向制御弁37のパイロットポートXに供給することができる。これによって、方向制御弁37のスプール44が右側位置に切り換わり、舵板18を矢印31の方向に回動させることができる。
【0047】
なお、図1に示すリリーフ回路39は、リリーフ弁52を有するものであり、油圧ポンプ32の吐出圧を制御することができる。
【0048】
次に、図2に示す舶用操舵装置16のブロック図を説明する。この舶用操舵装置16は、制御部35を備えている。この制御部35は、中央演算処理装置を備えており、記憶部に予め記憶されている所定のプログラムに従って、種々の演算や処理を行うことができるものである。そして、この制御部35は、操舵部46及び舵角検出部53が電気的に接続されている。
【0049】
操舵部46は、操舵者によって操作されて舵板18を所望の方向に回動させて所望の指令舵角に設定することができるものであって、その所望の指令舵角に対応する指令舵角信号を制御部35に出力することができるものである。
【0050】
舵角検出部53は、図1に示す舵板18の実際の舵角(実舵角)を検出して実舵角信号を制御部35に出力することができるものである。
【0051】
また、この制御部35には、方向操作弁38(電磁弁)及びインバータ34が電気的に接続されており、これらの動作を制御することができる。なお、インバータ34には、電動機33(例えば誘導電動機)が電気的に接続されている。そして、方向操作弁38は、制御部35が出力する信号に基づいて作動するようになっている。
【0052】
更に、制御部35は、第1舵角偏差判定部(ステップS102)、第2舵角偏差判定部(ステップS110)、速度制御部(ステップS112、S120、S148)、継続時間測定タイマ(ステップS138)、及び継続時間判定部(ステップS144)を備えている。
【0053】
第1舵角偏差判定部は、操舵部46が操作されてこの操舵部46から出力される指令舵角信号(指令舵角)と、舵角検出部53から出力される実舵角信号(実舵角)との舵角偏差が零であるか否かを判定するものである。
【0054】
ただし、第1舵角偏差判定部は、舵角偏差が零であるか否かを判定したが、これに代えて、例えば舵角偏差が零に近い第1舵角偏差以下であるか否かを判定するようにしてもよい。このようにすると、舵板18(実舵角信号)の振動等に基づき方向操作弁38及び方向制御弁37が頻繁に作動することを抑制することができる。これによって、この舶用操舵装置16の動作の安定性を大きくすることができる。
【0055】
第2舵角偏差判定部は、舵角偏差が零ではない(又は第1舵角偏差よりも大きい)と、第1舵角偏差判定部が判定したときに、第2舵角偏差以上であるか否かを判定するものである。この第2舵角偏差は、零よりも大きい(又は第1舵角偏差よりも大きい)偏差である。
【0056】
速度制御部は、舵角偏差が第2舵角偏差以上(舵角偏差が比較的大きい)と第2舵角偏差判定部が判定したときに、第3回転速度信号を生成することができるものである。これによって、電動機33(及び油圧ポンプ32)を第3回転速度(高速)で回転させることができ、舵板18を高速で指令舵角に変更することができる。
【0057】
そして、速度制御部は、舵角偏差が第2舵角偏差未満(舵角偏差が比較的小さい)と第2舵角偏差判定部が判定したときに、第1回転速度信号を生成することができる。これによって、電動機33(及び油圧ポンプ32)を第1回転速度(低速)で回転させることができ、舵板18を低速で指令舵角に変更することができる。
【0058】
継続時間測定タイマは、指令舵角信号と実舵角信号との舵角偏差が零(又は零に近い第1舵角偏差以下)であると第1舵角偏差判定部が判定したときに、舵角偏差が零(又は第1舵角偏差以下)である状態が継続する継続時間Tを測定することができるものである。つまり、舵板18の実舵角が指令舵角と一致(又は略一致)しており、この状態で操舵者が操舵部46を操作していない時間を測定するものである。
【0059】
なお、第1舵角偏差判定部が、舵角偏差が零(又は第1舵角偏差以下)であると判定したときは、図1に示す方向制御弁37のスプール44が中立位置となるようにして、油圧ポンプ32から吐出される圧油の舵板駆動部21への供給を止めるようになっている。
【0060】
継続時間判定部は、継続時間測定タイマによって測定されている継続時間Tが所定の設定継続時間TS(例えば3秒〜3分程度の間の所定の設定された時間)以下であるか否かを判定するものである。
【0061】
そして、速度制御部は、継続時間Tが設定継続時間TS以下であるとこの継続時間判定部が判定したときに、電動機33を第1回転速度(低速)で回転させるようになっている。
【0062】
また、速度制御部は、継続時間Tが設定継続時間TSを越えたときに、電動機33を停止(又は第1回転速度(低速)よりも小さい第2回転速度(極低速)で回転)させるようになっている。
【0063】
次に、この舶用操舵装置16の動作を、図3及び図4に示すフローチャートを参照して説明する。まず、図3に示すように、操舵者が操舵部46を操作して舵角命令を行なうと(ステップS100)、加算器54は、操舵部46が生成する指令舵角信号(目標舵角信号)と、舵角検出部53が生成する実舵角信号とを加算して舵角偏差を演算する。
【0064】
そして、第1舵角偏差判定部は、この舵角偏差が零(又は零に近い第1舵角偏差以下)であるか否かを判定する(ステップS102)。このとき、舵角偏差が零(又は第1舵角偏差以下)でありYESと判定したときは、制御部35は、舵角偏差の例えば正又は負の値に応じて図1に示す方向操作弁38に通電して(ステップS104)、スプール45を右側位置又は左側位置に移動させる。これによって、舵板18の舵角を指令舵角の位置に向かって回動させることができる。
【0065】
このときは、舵板18を回動させているので、制御部35は、継続時間測定タイマをOFFにしてリセットする(ステップS106)。そして、インバータ34に異常が無いか否かを判定する(ステップS108)。
【0066】
次に、インバータ34に異常が無くNOと判定したときは、第2舵角偏差判定部は、この舵角偏差が第2舵角偏差以上(舵角偏差が比較的大きい)であるか否かを判定する(ステップS110)。このとき、舵角偏差が第2舵角偏差以上(舵角偏差が比較的大きい)でありYESと判定したときは、制御部35は、第3回転速度信号をインバータ34に出力して(ステップS112)、電動機33を第3回転速度(高速)で回転させて、油圧ポンプ32を第3回転速度(高速)で回転させることができ(ステップS114)、舵板18を第3速度(高速)で所定の方向に回動させることができる(ステップS116)。そして、この舵板18の実舵角は、舵角検出部53によって検出され、舵角検出部53は、実舵角信号を制御部35に出力することができる(ステップS118)。
【0067】
そして、この実舵角信号は、加算器54にフィードバックされて、上記と同様に、加算器54による演算、及びステップS102〜S118の処理を繰り返し行なう。
【0068】
そして、実舵角が指令舵角に近づき、ステップS110において、第2舵角偏差判定部による判定が、舵角偏差が第2舵角偏差未満(舵角偏差が比較的小さい)でありNOと判定したときは、制御部35は、第1回転速度信号をインバータ34に出力して(ステップS120)、電動機33を第1回転速度(低速)で回転させて、油圧ポンプ32を第1回転速度(低速)で回転させることができ(ステップS122)、舵板18を第1速度(低速)で所定の方向に回動させることができる(ステップS124)。そして、この舵板18の実舵角は、舵角検出部53によって検出され、舵角検出部53は、実舵角信号を制御部35に出力することができる(ステップS126)。
【0069】
そして、この実舵角信号は、加算器54にフィードバックされて、上記と同様に、加算器54による演算、ステップS102〜S110、及びステップS120〜S126の処理を繰り返し行なう。
【0070】
そして、実舵角が指令舵角に一致して、ステップS102において、第1舵角偏差判定部による判定が、舵角偏差が零(又は零に近い第1舵角偏差以下)でありNOと判定したときは、図4に示すように、制御部35は、図1に示す方向操作弁38に対してアンロード信号を出力して方向操作弁38のスプール45を中立位置に戻す(ステップS136)。これによって、油圧ポンプ32から吐出される圧油が舵板駆動部21に供給されず、舵板18を指令舵角の位置に停止させておくことができる(ステップS140)。
【0071】
このときは、舵板18を停止させているので、制御部35は、継続時間測定タイマをONにする(ステップS138)。そして、インバータ34に異常が無いか否かを判定する(ステップS142)。
【0072】
次に、インバータ34に異常が無くNOと判定したときは、継続時間判定部は、継続時間測定タイマ(ステップS138)によって測定されている継続時間Tが所定の設定継続時間TS以下であるか否かを判定し(ステップS144)、継続時間Tが設定継続時間TS以下でありYESと判定したときは、実舵角を検出して(ステップS146)加算器54に戻り、上記の処理を繰り返し行なう。
【0073】
そして、ステップS144において、継続時間Tが設定継続時間TSを越えて、継続時間判定部がNOと判定したときは、制御部35は、インバータ34に停止信号を出力して(ステップS148)、電動機33及び油圧ポンプ32を停止させる(ステップS150)。そして、実舵角を検出して加算器54に戻り、上記の処理を繰り返し行なう(ステップS152)。
【0074】
なお、この実施形態では、インバータ34に停止信号を出力させ(ステップS148)、電動機33及び油圧ポンプ32を停止させたが(ステップS150)、これに代えて、制御部35が、インバータ34に第2回転速度信号(極低速信号)を出力して(ステップS148)、電動機33及び油圧ポンプ32を第2回転速度(極定速)で回転させてもよい(ステップS150)。このようにすることによって、次に操舵部46を操作したときに、舵板18を滑らかにしかも優れた応答性で作動させることができる。
【0075】
ただし、図3に示すステップS108において、インバータ34に異常がありYESと判定したときは、制御部35は、インバータ34が異常である旨の信号を出力して、例えば操舵スタンドの表示部にその旨を表示させる(ステップS128)。そして、図1に示す方向操作弁38に対してアンロード信号を出力して方向操作弁38のスプール45を中立位置に戻す(ステップS130)。これによって、油圧ポンプ32から吐出される圧油が舵板駆動部21に供給されず、舵板18を指令舵角の位置に停止させておくことができる(ステップS134)。
【0076】
このときは、インバータ34に異常があるので、継続時間測定タイマをOFFにし、リセットして操舵処理を終了する(ステップS132)。
【0077】
そして、図4に示すステップS142において、インバータ34に異常がありYESと判定したときは、制御部35は、継続時間測定タイマをOFFにし、リセットする(ステップS154)。そして、インバータ34が異常である旨の信号を出力して、例えば操舵スタンドの表示部にその旨を表示させて(ステップS156)、操舵処理を終了する。このようにして、舶用操舵装置16が動作する。
【0078】
次に、この舶用操舵装置16の作用を説明する。図1及び図2に示す舶用操舵装置16によると、操舵者が操舵部46を操作すると、操舵部46は、指令舵角信号を出力し、制御部35は、この指令舵角信号に基づいて電動機33の回転速度を制御することができる。油圧ポンプ32は、電動機33によって回転駆動されて、電動機33の回転速度に応じた流量の圧油を吐出して、この圧油によって舵板駆動部21を動作させることができる。そして、この舵板駆動部21によって舵板18を作動させて舵角を変更することができる。
【0079】
そして、舵角検出部53は、舵板18の実舵角を検出して実舵角信号を出力することができる。また、継続時間測定タイマは、指令舵角信号と実舵角信号との舵角偏差が零(又は零に近い第1舵角偏差以下)である状態が継続する継続時間Tを測定することができる。これによって、この継続時間測定タイマは、舵板18が作動して指令舵角と一致したときから、舵角偏差が零でなくなる(又は零に近い第1舵角偏差以上)までの時間、つまり次に操舵部46を操作するまでの時間を測定することができる。
【0080】
また、制御部35は、舵板18が指令舵角と一致して、舵角偏差が零(又は第1舵角偏差以下)であるときに、油圧ポンプ32から吐出される圧油の舵板駆動部21への供給を止めることができる。これによって、油圧ポンプ32から吐出される圧油によって舵板18が指令舵角の位置からずれないようにすることができる。
【0081】
そして、制御部35は、舵角偏差が零(又は第1舵角偏差以下)である継続時間T、つまり操舵部46を操作していない継続時間Tが所定の設定継続時間TS以下であるときは、電動機33を第1回転速度(低速)で回転させることができる。よって、油圧ポンプ32から吐出される圧油を、電動機33の第1回転速度(低速)に対応する流量に保持することができ、次に、操舵部46を操作したときに、舵板18を滑らかにしかも優れた応答性で作動させることができる。そして、操舵部46を次に操作するまでの間、油圧ポンプ32の回転速度を低速の第1回転速度にしておくことで、電動機33の消費エネルギの削減を図ることができる。
【0082】
また、制御部35は、舵角偏差が零(又は第1舵角偏差以下)である継続時間Tが所定の設定継続時間TSを越えたときは、電動機33を第1回転速度(低速)よりも小さい第2回転速度(極低速)で回転させ、又は停止させることができる。よって、操舵部46を操作せず、指令舵角と実舵角とが一致(又は略一致)している状況が設定継続時間TSを越えて続くときに、設定継続時間TS以降の電動機33の消費エネルギの更なる低減を図ることができる。そして、これによって油圧ポンプ32から吐出される圧油の油温の上昇を抑えることができ、作動油の温度上昇による劣化を抑制することができるし、作動油を冷却するための冷却装置を不要とすることが可能となる。
【0083】
そして、図3に示すステップS110において、操舵部46が操作されて舵角命令があったときに、舵角偏差(指令舵角と実舵角との偏差)が第2舵角偏差以上であるときは、制御部35は、電動機33を高速の第3回転速度で回転させて舵板18を作動させることができる。つまり、舵板18の指令舵角と実舵角との舵角偏差が比較的大きいときは、制御部35は、電動機33を高速で回転させて舵板18の舵角を高速で変更して、比較的短時間で舵板18を指令舵角に向けることができる。
【0084】
そして、舵角偏差が第2舵角偏差未満であって、零ではないとき(又は第1舵角偏差よりも大きいとき)は、制御部35は、電動機33を低速の第1回転速度で回転させて舵板18を作動させることができる。つまり、舵板18の指令舵角と実舵角との舵角偏差が小さいとき又は小さくなったときは、電動機33を低速で回転させて舵板18の舵角を低速で変更することができ、これによって、舵板18を指令舵角の位置に大きな衝撃を発生させずに停止させることが可能である。
【0085】
また、図2に示すように、制御部35は、インバータ34を使用して電動機33の回転速度を制御しているので、例えば既設の定速度電動機の速度制御を行うことができて経済的である。
【0086】
ただし、上記実施形態では、電動機33をインバータ34で速度制御したが、これ以外の速度制御モータを使用して速度制御してもよい。例えばサーボモータを制御部で速度制御して、油圧ポンプ32の回転速度を制御してもよい。
【0087】
そして、上記実施形態では、図3に示すステップS110、S112、S120に示すように、制御部35(第2舵角偏差判定部)は、舵角偏差が第2舵角偏差以上であるか否かによって、2段階の回転速度(第3回転速度及び第1回転速度)で電動機33及び油圧ポンプ32の回転速度を変更したが、これに代えて、制御部35は、舵角偏差が零よりも大きいときに(又は第1舵角偏差よりも大きいときに)、電動機33を舵角偏差に応じた回転速度で回転させて舵板18を作動させるようにしてもよい。そして、この回転速度は、3段階以上に変更するようにしてもよいし、無段階で変更するようにしてもよい。
【0088】
これによって、操舵部46を操作したときに、つまり、舵角偏差が零よりも大きくなったときに(又は第1舵角偏差よりも大きくなったときに)、電動機33を舵角偏差に応じた回転速度で回転させて舵板18を作動させることができる。例えば舵板18の指令舵角と実舵角との舵角偏差の大きさに応じて、電動機33を複数段の速度で回転させて、舵板18の舵角を高速、中速、及び低速等の多段階で変更することができる。その結果、舵角偏差の大きさに応じて、比較的短時間で舵板18を指令舵角に向けたり、合理的な速度で舵板18を指令舵角に向けることができるし、舵板18を指令舵角の位置に大きな衝撃を発生させずに低速にして停止させることも可能である。
【0089】
また、上記実施形態では、図3に示すステップS108において、インバータ34に異常が無くNOと判定したときは、制御部35は、電動機33を第3回転速度(高速)又は第1速度(低速)で回転させて、舵板18を第3速度(高速)又は第1速度(低速)で所望の方向に回動させることができるようにしたが、これに代えて、図5に示すように、ステップS110〜S118を省略して、ステップS108において、インバータ34に異常が無くNOと判定したときに、制御部35が、電動機33を第4回転速度で回転させて、舵板18を第4速度で所望の方向に回動させるようにしてもよい。
【0090】
なお、この第4回転速度は、上記実施形態における第2回転速度よりも大きい速度であり、舵板18を速やかに指令舵角に向けることができる速度である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明に係る舶用操舵装置及び舶用操舵方法は、操舵部を操作していない状況が続くときに、電動機の消費エネルギの低減を図ることができると共に、作動液の温度上昇による劣化を抑制することができる優れた効果を有し、このような舶用操舵装置及び舶用操舵方法に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0092】
16 舶用操舵装置
17 舵柄
17a 舵軸
18 舵板
19 旋回アーム
20 受部
21 舵板駆動部
22 第1シリンダ機構
23 第2シリンダ機構
24 ラム
25 第1シリンダ
26 第2シリンダ
27 ラムピン
28、29、30、31 矢印
32 操舵用油圧ポンプ
33 電動機
34 インバータ
35 制御部
36 操舵用油圧回路
37 方向制御弁
38 方向操作弁
39 リリーフ回路
40 圧油供給ライン
41 作動油戻りライン
42、43 圧油給排ライン
44、45 スプール
46 操舵部
47、50、51 パイロットライン
48 タンクライン
49 タンク
52 リリーフ弁
53 舵角検出部
54 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令舵角と対応する指令舵角信号を出力する操舵部と、
前記操舵部の操作に基づいて回転駆動される電動機と、
前記電動機の回転速度を制御する制御部と、
前記電動機によって回転駆動される液圧ポンプと、
前記液圧ポンプから吐出される圧液によって動作する舵板駆動部と、
前記舵板駆動部によって作動される舵板と、
前記舵板の実舵角を検出して実舵角信号を出力する舵角検出部とを備える舶用操舵装置において、
前記指令舵角信号と前記実舵角信号との舵角偏差が零又は零に近い第1舵角偏差以下である状態が継続する継続時間を測定する継続時間測定タイマを備え、
前記制御部は、前記舵角偏差が零又は前記第1舵角偏差以下であるときに、前記液圧ポンプから吐出される圧液の前記舵板駆動部への供給を止めると共に、
前記継続時間が所定の設定継続時間以下であるときに、前記電動機を第1回転速度で回転させ、
前記継続時間が前記所定の設定継続時間を越えたときに、前記電動機を前記第1回転速度よりも小さい第2回転速度で回転させ、又は停止させることを特徴とする舶用操舵装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記舵角偏差が零又は前記第1舵角偏差よりも大きいときに、前記電動機を前記舵角偏差に応じた回転速度で回転させて前記舵板を作動させることを特徴とする請求項1記載の舶用操舵装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記舵角偏差が零よりも大きいときに、又は前記第1舵角偏差よりも大きい第2舵角偏差以上であるときに、前記電動機を前記第1回転速度よりも大きい第3回転速度で回転させて前記舵板を作動させ、
前記舵角偏差が前記第2舵角偏差未満であって、零又は前記第1舵角偏差よりも大きいときに、前記電動機を前記第1回転速度で回転させて前記舵板を作動させることを特徴とする請求項1又は2記載の舶用操舵装置。
【請求項4】
前記制御部は、インバータを介して前記電動機の回転速度を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の舶用操舵装置。
【請求項5】
指令舵角と対応する指令舵角信号を出力する操舵部と、
前記操舵部の操作に基づいて回転駆動される電動機と、
前記電動機の回転速度を制御する制御部と、
前記電動機によって回転駆動される液圧ポンプと、
前記液圧ポンプから吐出される圧液によって動作する舵板駆動部と、
前記舵板駆動部によって作動される舵板と、
前記舵板の実舵角を検出して実舵角信号を出力する舵角検出部と、
前記指令舵角信号と前記実舵角信号との舵角偏差が零又は零に近い第1舵角偏差以下である状態が継続する継続時間を測定する継続時間測定タイマを備える舶用操舵装置を使用する舶用操舵方法であって、
前記制御部は、前記舵角偏差が零又は前記第1舵角偏差以下であるときに、前記液圧ポンプから吐出される圧液の前記舵板駆動部への供給を止めると共に、
前記継続時間が所定の設定継続時間以下であるときに、前記電動機を第1回転速度で回転させ、
前記継続時間が前記所定の設定継続時間を越えたときに、前記電動機を前記第1回転速度よりも小さい第2回転速度で回転させ、又は停止させることを特徴とする舶用操舵方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−136148(P2012−136148A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289870(P2010−289870)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】