説明

船員位置記録システム及び船員位置記録方法

【課題】本発明の目的は、船員の事情聴取や航海日誌によらずに船員の位置情報を得ることが可能な船員位置記録システム及び船員位置記録方法を提供することである。
【解決手段】船員位置記録システムは、端末装置2−1〜2−Mが出力する電波に基づいて端末装置2−1〜2−Mを携帯する船員の位置を取得する位置取得システム6と、船員の位置を示す船員位置データ91を船員が搭乗する船舶100から陸側8に送信する船側通信装置51とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船員の位置を記録する船員位置記録システム及び船員位置記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SOLAS条約により、一部の船種に航海情報記録装置(VDR:Voyage Data Recorder)の搭載が義務付けられている。VDRは、運行データ及び船舶固有のデータをカプセルで保護された記録媒体に記録する。運行データは、日付と時刻、船の位置、速力、船首方位、船橋音響、通信音声、レーダーデータ、音響測深機データ、主警報、操舵命令と応答、主機操作命令と応答、船体開口部の状態、水密扉及び防火扉の状態、加速及び船体応力、並びに、風向及び風速を含む。船舶固有のデータは、型式承認当局及び承認番号を含む。VDRに記録されたデータは、海難事故の調査に利用される。
【0003】
一方、海難事故の発生前後に船員が船内のどこにいたのかは、海難事故の原因を解明するために有用であるにもかかわらず、船員への事情聴取又は航海日誌でしか把握できない。例えば、船員が見張りのためにしかるべき場所にいたかどうかは、事情聴取又は航海日誌でしか把握できない。船舶が沈没した場合や船員が負傷した場合、事情聴取や航海日誌による解析を迅速に実施することができない。事情聴取や航海日誌による解析を全く実施できない場合もある。更に、船員の記憶違いのため、事情聴取で得られた情報や航海日誌に記載された情報に誤りが含まれる場合がある。また、航海日誌の改ざんが疑われる場合には航海日誌の証拠力は低くなる。
【0004】
特開2005−332247号公報は、船舶内で作業する作業員が携帯する携帯端末の位置を推定する方法を開示している。
【0005】
ところで、船舶に搭載された機器の状態を陸側から監視するためのシステムが知られている。特開2004−234444号公報は、船の主機の稼動状態を、衛星回線を使用した電子メールシステムを利用して、陸側の監視センタ端末で監視するシステムを開示している。特開2007−131275号公報は、船舶用機器の診断システムを開示している。船舶用機器の診断システムによれば、船舶に搭載された船舶用機器に関するメンテナンス用データが通信衛星を介して船舶から陸側に送信される。メンテナンス用データは陸側で解析され、船舶用機器に対する対処方法が診断される。診断結果に基づいて、船舶用機器を遠隔制御によりメンテナンスするための制御データが通信衛星を介して陸側から船舶に送信される。
【0006】
【特許文献1】特開2005−332247号公報
【特許文献2】特開2004−234444号公報
【特許文献3】特開2007−131275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、船員の事情聴取や航海日誌によらずに船員の位置情報を得ることが可能な船員位置記録システム及び船員位置記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、(発明を実施するための最良の形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための最良の形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明による船員位置記録システムは、端末装置(2−1〜2−M)が出力する電波に基づいて端末装置(2−1〜2−M)を携帯する船員の位置を取得する位置取得システム(6)と、船員の位置を示す船員位置データ(91)を船員が搭乗する船舶(100)から陸側(8)に送信する船側通信装置(51)とを具備する。
【0010】
したがって、船員の事情聴取や航海日誌によらずに、陸側(8)に送信された船員位置データ(91)から船員の位置情報が得られる。
【0011】
位置取得システム(6)は、船舶(100)に設けられる船舶警報通報装置(54)が出力する緊急事態を示す信号(92)に応答して船員の位置を取得する。
【0012】
したがって、船舶(100)に緊急事態が発生したときの船員の位置が取得される。
【0013】
位置取得システム(6)は、船員位置データ(91)を船舶(100)に搭載された航海情報記録装置(55)に送信する。
【0014】
航海情報記録装置(55)がカプセルで保護された記録媒体を備えるため、船舶(100)が沈没した場合であっても、航海情報記録装置(55)に記憶された船員位置データ(91)が利用可能である。更に、航海情報記録装置(55)に記憶された船員位置データ(91)の改ざんが防がれる。
【0015】
位置取得システム(6)は、ある時刻における船員の位置を取得する。船員位置データ(91)は、時刻を世界標準時又は船内ローカルタイム(現地時間)で示す。
【0016】
時刻が世界標準時で示される場合、船舶(100)の航路が複数のタイムゾーンにまたがっている場合であっても、船員位置データ(91)が示す船員の位置が何時のものであるかが明確である。
【0017】
位置取得システム(6)は、船員の位置を定期的に取得する。船側通信装置(51)は、船員位置データ(91)を定期的に送信する。
【0018】
したがって、船員位置データ(91)が陸側(8)に蓄積される。蓄積された船員位置データ(91)は、業務効率の改善に役立つ。
【0019】
本発明による船員位置記録システムは、端末装置(2−1〜2−M)が出力する電波に基づいて端末装置(2−1〜2−M)を携帯する船員の位置を取得する位置取得システム(6)と、船員の位置を示す船員位置データ(91)を記憶する航海情報記録装置(55)とを具備する。
【0020】
したがって、船員の事情聴取や航海日誌によらずに、航海情報記録装置(55)に記憶された船員位置データ(91)から船員の位置情報が得られる。
【0021】
本発明による船員位置記録方法は、端末装置(2−1〜2−M)が出力する電波に基づいて端末装置(2−1〜2−M)を携帯する船員の位置を取得するステップと、船員の位置を示す船員位置データ(91)を船員が搭乗する船舶(100)から陸側(8)に送信するステップとを具備する。
【0022】
したがって、船員の事情聴取や航海日誌によらずに、陸側(8)に送信された船員位置データ(91)から船員の位置情報が得られる。
【0023】
船員の位置を取得するステップにおいて、船舶(100)に設けられる船舶警報通報装置(54)が出力する緊急事態を示す信号(92)に応答して船員の位置を取得する。
【0024】
したがって、船舶(100)に緊急事態が発生したときの船員の位置が取得される。
【0025】
上記船員位置記録方法は、船員位置データ(91)を船舶(100)に搭載された航海情報記録装置(55)に送信するステップを更に具備する。
【0026】
航海情報記録装置(55)がカプセルで保護された記録媒体を備えるため、船舶(100)が沈没した場合であっても、航海情報記録装置(55)に記憶された船員位置データ(91)が利用可能である。更に、航海情報記録装置(55)に記憶された船員位置データ(91)の改ざんが防がれる。
【0027】
船員の位置を取得するステップにおいて、ある時刻における船員の位置を取得する。船員位置データ(91)は、時刻を世界標準時又は船内ローカルタイム(現地時間)で示す。
【0028】
時刻が世界標準時で示される場合、船舶(100)の航路が複数のタイムゾーンにまたがっている場合であっても、船員位置データ(91)が示す船員の位置が何時のものであるかが明確である。
【0029】
船員の位置を取得するステップにおいて、船員の位置を定期的に取得する。船員位置データ(91)を船員が搭乗する船舶(100)から陸側(8)に送信するステップにおいて、船員位置データ(91)を定期的に送信する。
【0030】
したがって、船員位置データ(91)が陸側(8)に蓄積される。蓄積された船員位置データ(91)は、業務効率の改善に役立つ。
【0031】
本発明による船員位置記録方法は、端末装置(2−1〜2−M)が出力する電波に基づいて端末装置(2−1〜2−M)を携帯する船員の位置を取得するステップと、船員の位置を示す船員位置データ(91)を航海情報記録装置(55)が記憶するステップとを具備する。
【0032】
したがって、船員の事情聴取や航海日誌によらずに、航海情報記録装置(55)に記憶された船員位置データ(91)から船員の位置情報が得られる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、船員の事情聴取や航海日誌によらずに船員の位置情報を得ることが可能な船員位置記録システム及び船員位置記録方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
添付図面を参照して、本発明による船員位置記録システム及び船員位置記録方法を実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る船員位置記録システムは、船舶100に設けられる船側システム1と、通信衛星7と、陸に設けられる陸側システム8を備える。船側システム1は、位置取得システム6と、船側通信装置51と、衛星アンテナ52と、GPS(Global Positioning System)装置53を備える。位置取得システム6は、複数(M台)の端末装置2−1〜2−Mと、複数(N台)の中継器3−1〜3−Nと、無線管理装置4と、位置情報管理装置10を備える。端末装置2−1〜2−Mは、船舶100に搭乗する複数(M人)の船員にそれぞれ携帯される。中継器3−1〜3−Nは、船舶100の複数(N箇所)の場所(例えば部屋又は区画)にそれぞれ配置される。端末装置2−1〜2−Mは、例えば、携帯電話機である。中継器3−1〜3−Nは、例えば、端末装置2−1〜2−Mの通話及びデータ通信を中継する機能を有する。位置情報管理装置10は、制御部11と、記憶部12と、送受信ポート13を備える。制御部11は、位置情報管理装置10の動作を制御する。送受信ポート13は、無線管理装置4、船側通信装置51、及びGPS装置53との送受信を実行する。GPS装置53は、世界標準時又は船内ローカルタイム(現地時間)で表された現在時刻を位置情報管理装置10に通知する。衛星アンテナ52は船側通信装置51に接続されている。陸側システム8は、陸側通信装置81と、衛星アンテナ82と、端末装置84を備える。衛星アンテナ82は陸側通信装置81に接続されている。端末装置84は記憶部85を備える。端末装置84はインターネット83を介して陸側通信装置81に接続される。船側通信装置51及び陸側通信装置81は、例えばメールサーバである。陸側通信装置81や端末装置84は、船舶100を管理する船舶管理会社に設けられる。陸側通信装置81や端末装置84は、船舶管理会社に情報サービスを提供する情報サービス会社や所轄の公的機関に設けられてもよい。
【0036】
図2は、記憶部12が格納するテーブル15を示す。テーブル15は、端末装置2−1〜2−Mと複数(M人)の船員を対応付けている。複数の船員は、船長と、第1船員と、第2船員と、第3船員を含む。端末装置2−1は船長に携帯され、端末装置2−2は第1船員に携帯され、端末装置2−3は第2船員に携帯され、端末装置2−4は第3船員に携帯される。テーブル15は、端末装置2−1と船長を対応付け、端末装置2−2と第1船員を対応付け、端末装置2−3と第2船員を対応付け、端末装置2−4と第3船員を対応付けている。
【0037】
図3は、記憶部12が格納するテーブル16を示す。テーブル16は、複数の船員の各々について、何時、何処にいたかを示している。
【0038】
図4は、無線管理装置4の記憶部(不図示)が格納するテーブル40を示す。テーブル40は、中継器3−1〜3−Nと複数(N箇所)の場所を対応付けている。複数の場所は、操舵室と、機関室と、Aデッキ〜Gデッキを含む。中継器3−1は操舵室に配置され、中継器3−2は機関室に配置され、中継器3−3〜3−9はそれぞれAデッキ〜Gデッキに配置される。また、同一デッキ(例えばAデッキ)に複数の中継器が配置されてもよい。テーブル40は、中継器3−1と操舵室を対応付け、中継器3−2と機関室を対応付け、中継器3−3〜3−9とAデッキ〜Gデッキをそれぞれ対応付けている。
【0039】
以下、本実施形態に係る船員位置記録方法を説明する。
【0040】
位置情報管理装置10は、無線管理装置4に対し、端末装置2−1〜2−Mの位置を定期的に問い合わせる。
【0041】
無線管理装置4は、位置情報管理装置10からの問い合わせに応答して、中継器3−1〜3−Nの各々に対し、端末装置2−1〜2−Mとの通信(接続)状態を問い合わせる。以下の説明では、端末装置2は端末装置2−1〜2−Mを代表し、中継器3は中継器3−1〜3−Nを代表する。中継器3は、無線管理装置4の問い合わせに応答して、端末装置2との通信状態に基づいて自己の識別子と端末装置2から取得した端末装置2の識別子を関連付けて無線管理装置4に送信する。
【0042】
無線管理装置4は、中継器3の識別子に基づいて中継器3が配置されている場所をテーブル40から検出し、検出した配置場所を示す配置場所データと端末装置2の識別子を関連付けて位置情報管理装置10に送信する。
【0043】
制御部11は、端末装置2の識別子に基づいて端末装置2を携帯する船員をテーブル15から検出することで、配置場所データが示す配置場所をその船員の位置として取得する。記憶部12は、取得された船員の位置を船員名及び位置情報管理装置10が無線管理装置4に対して問い合わせを行った時刻に対応付けてテーブル16に追加する。位置情報管理装置10が無線管理装置4に対して問い合わせを行った時刻として、GPS装置53から通知された世界標準時又は船内ローカルタイム(現地時間)で表される時刻が用いられる。
【0044】
例えば、位置情報管理装置10は、無線管理装置4に対し、端末装置2−1〜2−Mの位置を22時15分10秒に問い合わせる。無線管理装置4は、位置情報管理装置10からの問い合わせに応答して、中継器3−1〜3−Nの各々に対し、端末装置2−1〜2−Mとの通信状態を問い合わせる。このとき、端末装置2−1〜2−4は、それぞれ中継器3−3、3−1、3−2、及び3−8から通信状態が所定の条件を満たす範囲に存在している。中継器3−3は、無線管理装置4の問い合わせに応答して端末装置2−1との通信状態が所定の条件を満たすと判断し、中継器3−3の識別子と端末装置2−1の識別子を関連付けて無線管理装置4に送信する。中継器3−1は、無線管理装置4の問い合わせに応答して端末装置2−2との通信状態が所定の条件を満たすと判断し、中継器3−1の識別子と端末装置2−2の識別子を関連付けて無線管理装置4に送信する。中継器3−2は、無線管理装置4の問い合わせに応答して端末装置2−3との通信状態が所定の条件を満たすと判断し、中継器3−2の識別子と端末装置2−3の識別子を関連付けて無線管理装置4に送信する。中継器3−8は、無線管理装置4の問い合わせに応答して端末装置2−4との通信状態が所定の条件を満たすと判断し、中継器3−8の識別子と端末装置2−4の識別子を関連付けて無線管理装置4に送信する。
【0045】
無線管理装置4は、中継器3−3の識別子に基づいて中継器3−3が配置されているAデッキをテーブル40から検出し、Aデッキを示す配置場所データと端末装置2−1の識別子を関連付けて位置情報管理装置10に送信する。無線管理装置4は、中継器3−1の識別子に基づいて中継器3−1が配置されている操舵室をテーブル40から検出し、操舵室を示す配置場所データと端末装置2−2の識別子を関連付けて位置情報管理装置10に送信する。無線管理装置4は、中継器3−2の識別子に基づいて中継器3−2が配置されている機関室をテーブル40から検出し、機関室を示す配置場所データと端末装置2−3の識別子を関連付けて位置情報管理装置10に送信する。無線管理装置4は、中継器3−8の識別子に基づいて中継器3−8が配置されているFデッキをテーブル40から検出し、Fデッキを示す配置場所データと端末装置2−4の識別子を関連付けて位置情報管理装置10に送信する。
【0046】
制御部11は、端末装置2−1の識別子に基づいて端末装置2−1を携帯する船長をテーブル15から検出することで、Aデッキを22時15分10秒における船長の位置として取得する。記憶部12は、Aデッキを22時15分10秒における船長の位置としてテーブル16に追加する。同様に、制御部11は操舵室を22時15分10秒における第1船員の位置として取得し、記憶部12は操舵室を22時15分10秒における第1船員の位置としてテーブル16に追加する。制御部11は機関室を22時15分10秒における第2船員の位置として取得し、記憶部12は機関室を22時15分10秒における第2船員の位置としてテーブル16に追加する。制御部11はFデッキを22時15分10秒における第3船員の位置として取得し、記憶部12はFデッキを22時15分10秒における第3船員の位置としてテーブル16に追加する。
【0047】
23時15分10秒においても、位置情報管理装置10は、無線管理装置4に対して端末装置2−1〜2−Mの位置の問い合わせを実行し、23時15分10秒における各船員の位置をテーブル16に追加する。翌日の0時15分10秒においても、位置情報管理装置10は、無線管理装置4に対して端末装置2−1〜2−Mの位置の問い合わせを実行し、0時15分10秒における各船員の位置をテーブル16に追加する。
【0048】
位置情報管理装置10は、定期的に、各船員について、最新の船員位置データ91をテーブル16から抽出して、船側通信装置51に送信する。船員位置データ91は、船員名と、船員の位置と、船員の位置を取得するために位置情報管理装置10が無線管理装置4に問い合わせを行った時刻を示す。ここで、船員の位置は位置情報管理装置10が無線管理装置4に問い合わせを行った時刻における位置である。船側通信装置51は、定期的に(例えば、位置情報管理装置10から船員位置データ91を受信するごとに)、通信衛星7を介して陸側通信装置81に船員位置データ91を送信する。陸側通信装置81は、インターネット83を介して端末装置84に船員位置データ91を送信する。端末装置84の記憶部85は、船員位置データ91を記憶する(蓄積する)。
【0049】
本実施形態によれば、船員の位置情報が陸に設けられた端末装置84に記憶される。したがって、船舶100に海難事故が発生した場合において、船員の事情聴取や航海日誌の解析を行わなくても、事故時に船員が船内の何処にいたかが把握される。したがって、事故調査を正確且つ迅速に実施することが可能になる。更に、端末装置84に記憶された情報から船員の船内位置が分かるため、船舶100から船員を救助することが容易になる。船舶100の通信設備が事故により破損した場合であっても、救助隊は端末装置84に記憶された情報から船員の船内位置を知ることができる。
【0050】
本実施形態によれば、上述した海難事故発生時の利点に加えて、記憶部12又は端末装置84に蓄積された情報を分析することで船舶100における業務効率を改善することができる。記憶部12又は端末装置84に蓄積された情報を分析することで得られる知見は、船舶100と航路が共通する船舶における業務効率の改善や船舶100と船種が共通する船舶における業務効率の改善に利用することができる。
【0051】
陸側通信装置81や端末装置84が公的機関に設置される場合、陸側通信装置81や端末装置84に保存された船員位置データ91の改ざんが防がれる。
【0052】
本実施形態においては、無線管理装置4が船員の位置を検出してもよい。この場合、無線管理装置4がテーブル15及び16を格納する。
【0053】
(第2の実施形態)
図5に示すように、本発明の第2の実施形態に係る船員位置記録システムは、船側システム1に船舶警報通報装置(SSAS:Ship Security Alert System)54が追加されている点が第1の実施形態に係る船員位置記録システムと異なり、他の点は第1の実施形態に係る船員位置記録システムと同様である。
【0054】
船舶警報通報装置54は、海賊に襲われた場合など船舶100に緊急事態が生じたときに緊急事態を示す信号92を出力する。
【0055】
本実施形態に係る船員位置記録方法は、第1の実施形態に係る船員位置記録方法の動作に以下の動作が追加されたもの、又は、第1の実施形態に係る船員位置記録方法の動作のかわりに以下の動作が行われるものである。
【0056】
以下、本実施形態に係る船員位置記録方法を説明する。
【0057】
位置情報管理装置10は、緊急事態を示す信号92に応答して、無線管理装置4に対し、端末装置2−1〜2−Mの位置を問い合わせる。
【0058】
位置情報管理装置10からの問い合わせに続いて、無線管理装置4、中継器3、位置情報管理装置10は第1の実施形態の場合と同様に動作する。ここで、記憶部12は、制御部11が取得した船員の位置を船員名及び船舶警報通報装置54が緊急事態を示す信号92を出力した時刻に対応付けてテーブル16に追加する。船舶警報通報装置54が緊急事態を示す信号92を出力した時刻として、GPS装置53から通知された世界標準時又は船内ローカルタイム(現地時間)で表される時刻が用いられる。
【0059】
その直後、位置情報管理装置10は、各船員について、最新の船員位置データ91をテーブル16から抽出して、船側通信装置51に送信する。船員位置データ91は、船員名と、船員の位置と、船舶警報通報装置54が緊急事態を示す信号92を出力した時刻を示す。ここで、船員の位置は船舶警報通報装置54が緊急事態を示す信号92を出力した時刻における位置である。船側通信装置51は、通信衛星7を介して陸側通信装置81に船員位置データ91を送信する。陸側通信装置81は、インターネット83を介して端末装置84に船員位置データ91を送信する。端末装置84の記憶部85は、船員位置データ91を記憶する(蓄積する)。
【0060】
本実施形態によれば、船舶100に緊急事態が発生したときの船員の位置が取得され、陸側に通知される。船舶100に緊急事態が発生したときの船員の位置は、船員の救出活動に役立てられる。
【0061】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る船員位置システムは、船側システム1に航海情報記録装置(VDR:Voyage Data Recorder)55が追加されている点が第1又は第2の実施形態に係る船員位置記録システムと異なり、他の点は第1又は第2の実施形態に係る船員位置記録システムと同様である。
【0062】
図6は、第2の実施形態に係る船側システム1に航海情報記録装置55が追加された場合における本実施形態に係る船側システム1を示す。航海情報記録装置55は、カプセル(不図示)で保護された記録媒体(不図示)を備える。カプセルは、規格で定められる耐熱性及び耐圧性を有し、水中音響ビーコンを備える。カプセルが浮揚型である場合、無線送信機と発光機能を更に備える。水中音響ビーコン、無線送信機及び発光機能は、カプセルの発見を容易にする。
【0063】
本実施形態に係る船員位置記録方法は、第1又は第2の実施形態に係る船員位置記録方法の動作に以下の動作が追加されたものである。
【0064】
位置情報管理装置10は、船員位置データ91を船側通信装置51に送信する場合、同時に、航海情報記録装置55にも船員位置データ91を送信する。航海情報記録装置55は、船員位置データ91をカプセルで保護された記録媒体に記憶する(蓄積する)。
【0065】
なお、位置情報管理装置10は、最新の船員位置データ91をテーブル16から抽出して航海情報記録装置55に送信することを連続的に(常に)行ってもよい。この場合、航海情報記録装置55が船員位置データ91を記録媒体に記憶するタイミングを決定してもよい。
【0066】
本実施形態によれば、船舶100が沈没した場合であっても、カプセルを回収することによりカプセルで保護された記録媒体に記憶されたデータを利用可能である。更に、航海情報記録装置55の記録媒体に記憶されたデータは、改ざんが防がれる。
【0067】
なお、本実施形態において、位置情報管理装置10は、船員位置データ91を航海情報記録装置55のみに送信してもよい。
【0068】
上記各実施形態において船舶100の複数の場所(例えば部屋又は区画)に中継器3−1〜3−Nを一つずつ配置する場合を説明したが、中継器の数を場所の数より少なくすることも可能である。この場合、無線管理装置4は、複数の中継器3の各々における端末装置2が出力する電波の受信強度、到達時間差等に基づいて複数の中継器3の各々と端末装置2との距離を推定し、端末装置2と複数の中継器3の距離及び複数の中継器3の座標に基づいて端末装置2の座標を演算し、演算結果に基づいて端末装置2の場所を検出することが可能である。
【0069】
上記各実施形態において、船員位置データ91は、テーブル16に示すような表形式のデータでもよく、動画データでもよい。船員位置データ91が動画データの場合、船員の位置情報を示す動画データが陸側の端末装置84の記憶部85などに記録される。この場合、動画データが記述する動画として、船員の位置を表すプロットが時間の経過に伴って画面に表示された船内を移動する動画が考えられる。
【0070】
また、船員位置データ91が動画データの場合、位置情報管理装置10はある単位時間(例えば、10分間)分の動画データを記録することが考えられる。位置情報管理装置10はそれぞれが単位時間分の動画データを含む複数のファイルを保存することが考えられる。
【0071】
上記各実施形態において、世界標準時又は船内ローカルタイム(現地時間)で表された現在時刻を位置情報管理装置10に通知する装置は、GPS装置53に限定されない。世界標準時又は船内ローカルタイム(現地時間)で表された現在時刻を位置情報管理装置10に通知する装置として、舶用親時計(Master Clock)を用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る船員位置記録システムのブロック図である。
【図2】図2は、船員位置記録システムが備える位置情報管理装置が格納するテーブルを示す。
【図3】図3は、位置情報管理装置が格納する他のテーブルを示す。
【図4】図4は、船員位置記録システムが備える無線管理装置が格納するテーブルを示す。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態に係る船側システムのブロック図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施形態に係る船側システムのブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
1…船側システム
10…位置情報管理装置
11…制御部
12…記憶部
13…送受信ポート
15、16…テーブル
2(2−1〜2−M)…端末装置
3(3−1〜3−N)…中継器
4…無線管理装置
40…テーブル
51…船側通信装置
52…衛星アンテナ
53…GPS装置
54…船舶警報通報装置
55…航海情報記録装置
6…位置取得システム
7…通信衛星
8…陸側システム
81…陸側通信装置
82…衛星アンテナ
83…インターネット
84…端末装置
85…記憶部
91…船員位置データ
92…緊急事態を示す信号
100…船舶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置が出力する電波に基づいて前記端末装置を携帯する船員の位置を取得する位置取得システムと、
前記船員の位置を示す船員位置データを前記船員が搭乗する船舶から陸側に送信する船側通信装置と
を具備する
船員位置記録システム。
【請求項2】
前記位置取得システムは、前記船舶に設けられる船舶警報通報装置が出力する緊急事態を示す信号に応答して前記船員の位置を取得する
請求項1の船員位置記録システム。
【請求項3】
前記位置取得システムは、前記船員位置データを前記船舶に搭載された航海情報記録装置に送信する
請求項1又は2の船員位置記録システム。
【請求項4】
前記位置取得システムは、ある時刻における前記船員の位置を取得し、
前記船員位置データは、前記時刻を世界標準時又は船内ローカルタイム(現地時間)で示す
請求項1乃至3のいずれかに記載の船員位置記録システム。
【請求項5】
前記位置取得システムは、前記船員の位置を定期的に取得し、
前記船側通信装置は、前記船員位置データを定期的に送信する
請求項1の船員位置記録システム。
【請求項6】
端末装置が出力する電波に基づいて前記端末装置を携帯する船員の位置を取得する位置取得システムと、
前記船員の位置を示す船員位置データを記憶する航海情報記録装置と
を具備する
船員位置記録システム。
【請求項7】
端末装置が出力する電波に基づいて前記端末装置を携帯する船員の位置を取得するステップと、
前記船員の位置を示す船員位置データを前記船員が搭乗する船舶から陸側に送信するステップと
を具備する
船員位置記録方法。
【請求項8】
前記船員の位置を取得する前記ステップにおいて、前記船舶に設けられる船舶警報通報装置が出力する緊急事態を示す信号に応答して前記船員の位置を取得する
請求項7の船員位置記録方法。
【請求項9】
前記船員位置データを前記船舶に搭載された航海情報記録装置に送信するステップを更に具備する
請求項7又は8の船員位置記録方法。
【請求項10】
前記船員の位置を取得する前記ステップにおいて、ある時刻における前記船員の位置を取得し、
前記船員位置データは、前記時刻を世界標準時又は船内ローカルタイム(現地時間)で示す
請求項7乃至9のいずれかに記載の船員位置記録方法。
【請求項11】
前記船員の位置を取得する前記ステップにおいて、前記船員の位置を定期的に取得し、
前記船員位置データを前記船員が搭乗する前記船舶から前記陸側に送信する前記ステップにおいて、前記船員位置データを定期的に送信する
請求項7の船員位置記録方法。
【請求項12】
端末装置が出力する電波に基づいて前記端末装置を携帯する船員の位置を取得するステップと、
前記船員の位置を示す船員位置データを航海情報記録装置が記憶するステップと
を具備する
船員位置記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120561(P2010−120561A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297524(P2008−297524)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】