説明

船舶用の原動機システム

【課題】補助動力装置と原動機の間に介在する連結ギアを小さく構成できる原動機システムを提供する。
【解決手段】原動機システム100は、プロペラ軸91を回転させる船舶用の原動機10と、動力を生成し、生成した動力を原動機10へ供給する補助動力装置30と、原動機10と補助動力装置30との間に介在し、補助動力装置30からの動力を原動機10へ伝える連結ギア40と、を備えている。さらに、原動機10は、原動機10で生成した動力をプロペラ軸91へ伝えるクランク軸50と、クランク軸50により駆動されクランク軸50よりも軸径が小さい回転部材60と、を有する。そして、補助動力装置30からの動力は、連結ギア40を介して回転部材60に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助動力装置を備えた船舶用の原動機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型船舶に搭載される推進駆動用の原動機システムとして、内部の原動機(低速ディーゼルエンジン)から排出される排ガスや船内で発電された電力を利用して補助動力装置を駆動させ、この補助動力装置を原動機に連結して原動機の負荷を軽減するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。通常このような原動機システムでは、補助動力装置の出力軸は連結ギアを介して原動機のクランク軸に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−242051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、補助動力装置とクランク軸の間に介在する上記の連結ギアに注目すると、その大きさは補助動力装置の出力軸とクランク軸の軸径に依存し、特に軸径の大きい方のクランク軸の軸径に依存する。大型船舶に搭載されている原動機のクランク軸の軸径は、補助動力装置の出力軸の軸径に比べてはるかに大きく、その結果、連結ギアは補助動力装置の大きさと不釣り合いな程度に大きく構成されることになる。このように連結ギアが大きくなると、エネルギの損失が大きくなり、また、広い設置場所を確保する必要が生じる。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、補助動力装置と原動機の間に介在する連結ギアを小さく構成できる原動機システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、本発明に係る原動機システムは、プロペラ軸を回転させる船舶用の原動機と、動力を生成し、生成した動力を前記原動機へ供給する補助動力装置と、前記原動機と前記補助動力装置との間に介在し、前記補助動力装置からの動力を前記原動機へ伝える連結ギアと、を備え、前記原動機は、前記原動機で生成した動力を前記プロペラ軸へ伝えるクランク軸と、前記クランク軸により駆動され前記クランク軸よりも軸径が小さい回転部材と、を有し、前記補助動力装置からの動力は、前記連結ギアを介して前記回転部材に供給される。かかる構成によれば、連結ギアはクランク軸よりも軸径が小さい回転部材に連結されるため、クランク軸に連結される場合に比べその大きさを小さく抑えることができる。
【0007】
また、上記の原動機システムにおいて、前記原動機は、前記原動機内のシリンダの弁を制御するカム軸を有し、前記カム軸が前記回転部材であるように構成してもよい。
【0008】
また、上記の原動機システムにおいて、前記原動機は、油圧駆動機器を制御するための作動油の圧力を上昇させる作動油昇圧用ポンプと、前記クランク軸と前記作動油昇圧用ポンプとの間に介在し、前記クランク軸からの動力を前記作動油昇圧用ポンプに伝える伝達機構と、を有し、前記伝達機構には回転シャフトが含まれており、前記回転シャフトが前記回転部材であるように構成してもよい。
【0009】
また、上記の原動機システムにおいて、前記原動機は、潤滑油の圧力を上昇させる潤滑油昇圧用ポンプと、前記クランク軸と前記潤滑油昇圧用ポンプとの間に介在し、前記クランク軸からの動力を前記潤滑油昇圧用ポンプに伝える伝達機構と、を有し、前記伝達機構には回転シャフトが含まれており、前記回転シャフトが前記回転部材であるように構成してもよい。
【0010】
また、上記の原動機システムにおいて、前記補助動力装置は、前記原動機の排ガスが有するエネルギを利用して駆動されるように構成してもよい。かかる構成によれば、原動機の排ガスを有効に利用できるため、原動機を効率よく運転することができる。
【0011】
また、上記の原動機システムにおいて、前記補助動力装置は、前記原動機の排ガスによって回転駆動されるパワータービンからなるように構成してもよい。
【0012】
また、上記の原動機システムにおいて、前記原動機に圧縮空気を供給する過給機をさらに備え、前記パワータービンは前記過給機から独立して設けられるように構成してもよい。かかる構成によれば、仮にパワータービンが故障した場合であっても、過給機には影響がないため、原動機の運転自体は問題なく行うことができる。
【0013】
また、上記の原動機システムにおいて、前記補助動力装置は、前記原動機とは別に船内に設けられた発電機によって発電された電力により駆動される電動モータからなるように構成してもよい。かかる構成によれば、船内の効率化などで得られた余剰電力を有効に利用することができ、また、船内に設けられた発電機は原動機の運転状況に影響されることはないため、原動機の運転状況にかかわらず補助動力装置から原動機へ動力を安定して供給することができる。
【0014】
また、上記の原動機システムにおいて、前記電動モータは、前記原動機の排ガスが有するエネルギにより発電された電力によって駆動されるように構成してもよい。かかる構成によれば、船内の効率化などで得られた余剰電力を有効に利用することができる。また、原動機の排ガスを有効に利用できるため、原動機を効率よく運転することができる。
【0015】
また、上記の原動機システムにおいて、前記補助動力装置は、前記原動機の排ガスによって回転駆動されるパワータービンと、前記原動機とは別に船内に設けられた発電機によって発電された電力により駆動される電動モータとからなるように構成してもよい。かかる構成によれば、船内の効率化などで得られた余剰電力を有効利用できるとともに、原動機の排ガスを有効に利用できるため、原動機を効率よく運転することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る原動機システムによれば、連結ギアの大きさを小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る原動機システムの概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る原動機システムの概略図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る原動機システムの概略図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る原動機システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る原動機システムの実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0019】
(第1実施形態)
まず、図1を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る原動機システム100の構成について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る原動機システム100は、原動機10と、過給機20と、補助動力装置30と、連結ギア40と、を備えている。さらに、原動機10は、クランク軸50と、カム軸60と、を有している。以下、これらの各構成要素について説明する。なお、以下では、機械要素としてのギアを「ギア要素」と呼び、動力伝達装置としての「ギア」と区別する。
【0020】
原動機10は、原動機システム100の中心となる装置である。本実施形態に係る原動機10は、本来的には先端にプロペラ90が取り付けられたプロペラ軸91を回転させるためのものである。また、本実施形態に係る原動機10は、いわゆる低速ディーゼルエンジンである。原動機10の主な構成部材については、以下で説明する。
【0021】
クランク軸50は、原動機10で生成した動力を外部に出力するための部材である。クランク軸50は、複数のピストン11に連結されており、シリンダ12内での燃料の爆発に伴うピストン11の往復運動によって駆動される。また、シリンダ12内の排ガスは排気管13に排出され、掃気管14から掃気用の空気がシリンダ12内に供給される。なお、排気管13および掃気管14は、いずれもタンク状に形成されている。
【0022】
カム軸60は、クランク軸50の回転に同期してシリンダ12の弁を制御する部材である。上述したように、シリンダ12内には、排ガスや掃気用の空気が出入りするが、これを制御する弁(図示せず)はこのカム軸60によって駆動される。また、カム軸60はチェーンやギア要素などの動力伝達装置61を介してクランク軸50に連結されており、クランク軸50の回転速度と同じ回転速度で回転する。
【0023】
過給機20は、原動機10に圧縮空気を供給するための装置である。過給機20は、タービン部21と、コンプレッサ部22と、シャフト部23と、を有している。タービン部21には排気管13から排気ライン15を介して排ガスが供給され、排ガスの速度エネルギによりタービン部21は回転する。タービン部21とコンプレッサ部22はシャフト部23により連結されており、タービン部21が回転することによりコンプレッサ部22も回転する。コンプレッサ部22が回転すると、外部から取り込んだ空気が圧縮され、圧縮された空気は給気ライン16を介して掃気管14に供給される。そして、掃気管14内の圧縮空気は、シリンダ12内へと供給される。このように、シリンダ12内へ大量の空気を供給することで、燃料を多く投入することができるようになり、その結果、原動機10の出力を上げることができる。
【0024】
補助動力装置30は、原動機10の負荷の一部を負担して、原動機10の負荷を軽減するための装置である。本実施形態に係る補助動力装置30は、いわゆるパワータービンである。補助動力装置30は、タービン部31と出力軸32とを有している。タービン部31には、原動機10の排気管13から排気ライン17を介して排ガスが供給され、排ガスの速度エネルギによりタービン部31は回転駆動する。出力軸32はタービン部31の回転に伴って回転し、タービン部31で生成された動力を連結ギア40に供給する。
【0025】
なお、上記の構成とは異なり、過給機20から出力を取り出すなどして、過給機20自体を補助動力装置としてもよい。ただし、本実施形態のように過給機20とは別にパワータービンを設け、これを補助動力装置30とするのが望ましい。過給機20から独立して補助動力装置30を設ければ、補助動力装置30の不具合により過給機20を停止させるリスクを軽減することができるからである。例えば、本実施形態に係る原動機10は、過給機20が正常に稼働しないと常用の運転が不可能であるが、補助動力装置30を過給機20から独立させることで、仮に補助動力装置30が故障したとしても、原動機10の運転自体は維持することができる。
【0026】
連結ギア40は、補助動力装置30の動力を原動機10に伝達する装置である。本実施形態に係る連結ギア40は、原動機10の外側に配置されている減速機41と、原動機10の内側に配置されている追設ギア46から構成されている。このうち、減速機41の入力側には補助動力装置30の出力軸32が連結されており、出力側には追設ギア46が連結されている。これにより、減速機41は補助動力装置30からの動力を減速して追設ギア46へと供給している。また、追設ギア46の入力側は減速機41の出力軸42が連結されており、出力側はカム軸60に連結されている。これにより、追設ギア46は、減速機41から入力された補助動力装置30の動力をカム軸60へと供給している。そして、カム軸60はチェーンやギア要素などの動力伝達装置61を介してクランク軸50に連結されているのであるから、原動機10(クランク軸50)の負荷の一部が補助動力装置30の動力により軽減されることになる。
【0027】
以上が本実施形態に係る原動機システム100の構成である。連結ギア40の一部を構成する追設ギア46の大きさは、入力側と出力側に連結された軸の軸径に基づいて形成されることは上述したとおりである。ここで、通常、カム軸60は、その軸径がクランク軸50の軸径よりもはるかに小さく構成されている。例えば、カム軸60の軸径が約300mmのとき、クランク軸50の軸径が約850mmとなるように構成されている(ただし、原動機10の型式が変わればカム軸60の軸径及びクランク軸50の軸径も当然変化する)。そのため、本実施形態のように、連結ギア40の出力側をカム軸60に連結させた場合、従来のようにクランク軸50に連結していた場合に比べ、追設ギア46の大きさをはるかに小さく抑えることができ、ひいては連結ギア40全体の大きさを小さく抑えることができる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、図2を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る原動機システム200について説明する。本実施形態に係る原動機システム200の原動機10は、第1実施形態におけるカム軸60(図1参照)を有しておらず、これに代えて作動油昇圧用ポンプ70及び連結機構80を有している点で第1実施形態に係る原動機システム100と構成が異なる。また、この相違に伴って、本実施形態に係る連結ギア40についても原動機システム100の場合とは構成が異なる。以下、これらの構成要素について順に説明する。
【0029】
作動油昇圧用ポンプ70は、原動機10を制御する作動油の圧力を上昇させる装置である。第1実施形態に係る原動機システム100では、シリンダ12内の弁(図示せず)をカム軸60で駆動していたが、本実施形態に係る原動機システム200ではその弁を作動油によって駆動する。なお、この作動油は、シリンダ12内に燃料を供給する燃料ポンプ(図示せず)を駆動する。場合によっては船内のポンプなど原動機10に設けられていない油圧駆動機器を駆動してもよい。近年の大型船舶用の原動機システムにおいては、原動機10の制御をカム軸に代えて上記のような作動油によって行うものが増えてきている。
【0030】
連結機構80は、クランク軸50の動力を上記の作動油昇圧用ポンプ70に伝達するための機構である。連結機構80は、チェーン、スプロケット、回転シャフト、ギア要素等を組み合わせて構成されている。連結機構80は、一端側がクランク軸50に連結されており、他端側が作動油昇圧用ポンプ70の入力軸71に連結されている。これにより、連結機構80は、クランク軸50から動力を受け取り、作動油昇圧用ポンプ70に伝え、作動油昇圧用ポンプ70を回転駆動する。連結機構80を構成するチェーン、スプロケット、回転シャフト、ギア要素等の組み合わせは特に限定されないが、本実施形態では、クランク軸50にスプロケット81が取り付けられており、このスプロケット81にチェーン82を掛けて、他方のスプロケット83を回転するように構成されている。そして、回転させられたスプロケット83は回転シャフト84を介してその反対側に位置するギア要素85を回転させ、必要によりさらに複数のギア要素を介して、作動油昇圧用ポンプ70の入力軸71を駆動している。なお、図2では、クランク軸50に取り付けられたスプロケット81は、ピストン11から見てプロペラ軸91側に位置しているが、ピストン11から見てプロペラ軸91と反対側に位置させてもよい。
【0031】
また、本実施形態に係る連結ギア40は、減速機41と追設ギア46から構成されているが、連結機構80の一部であるギア要素85が追設ギア46の一部を構成している。本実施形態のように、連結ギア40を構成するギア要素は連結ギア40にのみ用いられる必要はなく、連結ギア40以外のギアの一部であってもよい。追設ギア46の入力側(補助動力装置30側)は減速機41の出力軸42が連結されており、出力側(原動機10側)は連結機構80の回転シャフト84に連結されている。これにより、追設ギア46は、減速機41から入力された補助動力装置30の動力を連結機構80の回転シャフト84へと供給している。そして、回転シャフト84はチェーン82等を介してクランク軸50に連結されているのであるから、原動機10(クランク軸50)の負荷の一部が補助動力装置30の動力により軽減されることになる。
【0032】
以上が本実施形態に係る原動機システム200の構成である。ここで、連結機構80の回転シャフト84は、その軸径がクランク軸50の軸径よりもはるかに小さく構成されている。そのため、本実施形態のように、連結ギア40の出力側を連結機構80の回転シャフト84に連結させた場合、従来のようにクランク軸50に連結していた場合に比べ、追設ギア46の大きさをはるかに小さく抑えることができ、ひいては連結ギア40全体の大きさを小さく抑えることができる。なお、別の見方をすれば、追設ギア46は連結機構80とギア要素85を共有しているため、実質的に追設ギア46はギア要素85を省略することができる。そのため、追設ギア46を小さく抑えることができ、ひいては連結ギア40全体を小さく抑えることができる。
【0033】
以上のように、連結ギア40の出力側に連結する回転部材は第1実施形態のようなカム軸60である必要はなく、クランク軸50により駆動されクランク軸50よりも軸径が小さい回転部材であれば、本実施形態のような連結機構80の回転シャフト84であってもよい。なお、連結ギア40に連結される回転部材としては、原動機の駆動に必要な既存の部材(部品)を用いればよく、連結ギア40に連結するためだけの回転部材を設ける必要はない。
【0034】
なお、本実施形態の連結機構80は、クランク軸50の動力を作動油昇圧用ポンプ70に伝達するものであるが、連結機構80は当該動力を作動油昇圧用ポンプ70以外の装置に伝達するものであってもよい。例えば、原動機10は、原動機10を駆動させるために必要な潤滑油の圧力を上昇させる潤滑油昇圧用ポンプを有している場合があるが、連結機構80はクランク軸50の動力をこの潤滑油昇圧用ポンプに伝達するものであっても良い。
【0035】
(第3実施形態)
次に、図3を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る原動機システム300について説明する。本実施形態に係る原動機システム300は、補助動力装置30が電動モータである点で、第1実施形態に係る原動機システム100と構成が異なる。その他の点については、第1実施形態に係る原動機システム100の構成と基本的に同じである。より具体的には次の通りである。
【0036】
上述したように、本実施形態の補助動力装置30は電動モータであり、電動モータ本体33と出力軸34とを有している。電動モータ本体33は電力により駆動するが、電動モータ本体33の電源は、上記の原動機10とは別に船内に設けられた発電機によって発電されたものであってもよく、原動機10の排ガスのエネルギを利用して発電されたものであってもよく、または、これらを合わせたものであってもよい。このうち、排ガスのエネルギを利用して発電する場合は、排気管13から直接排ガスを取り出し、排ガスの運動エネルギにより発電用のタービンを回転して発電してもよく、又は過給機20から取り出した排ガスの熱エネルギで蒸気を生成し、発電用の蒸気タービンを回転して発電するようにしてもよい。また、過給機20から動力を取り出して発電機を駆動することで発電してもよい。なお、出力軸34は、電動モータ本体33の回転に伴って回転し、電動モータ本体33で生成された動力を連結ギア40に出力する。
【0037】
本実施形態に係る原動機システム300のように、補助動力装置30に電動モータを用いた場合であっても、補助動力装置30からの動力が連結ギア40を介してクランク軸50よりも軸径が小さい回転部材(カム軸60)へと伝達するように構成すれば連結ギア40の大きさを小さく抑えることができる。さらに、電動モータ本体33を駆動する電力が、船内に備えられた発電機によって発電されたものであれば、得られた余剰電力を有効に利用することができる。また、この場合、船内に設けられた発電機は原動機の運転状況に影響されることはないため、原動機10の運転状況にかかわらず、補助動力装置30からの動力を安定して原動機10に供給することができる。さらに、電動モータ本体33を駆動する電力が、排ガスのエネルギを利用して発電されたものであれば、原動機10の排ガスを有効に利用できるため、原動機10を効率よく運転することができる。
【0038】
(第4実施形態)
次に、図4を参照しながら、本発明の第4実施形態に係る原動機システム400について説明する。本実施形態に係る原動機システム400は、補助動力装置30としてパワータービンと電動モータから構成されている点で、第1実施形態に係る原動機システム100と構成が異なる。その他の点については、第1実施形態に係る原動機システム100の構成と基本的に同じである。より具体的には次の通りである。
【0039】
上述したように、本実施形態の補助動力装置30は、パワータービンと電動モータから構成されている。補助動力装置30は、タービン部31、タービン部31に連結する出力軸32、電動モータ本体33、および電動モータ本体33に連結する出力軸34を有しており、それぞれ第1実施形態や第3実施形態で説明したタービン部31、出力軸32、電動モータ本体33、および出力軸34と同じものである。パワータービン側の出力軸32はタービン部31の回転に伴って回転し、タービン部31で生成された動力を連結ギア40に出力する。また、電動モータ側の出力軸34は、電動モータ本体33の回転に伴って回転し、電動モータ本体33で生成された動力を連結ギア40に出力する。
【0040】
本実施形態では、タービン部31には、原動機10の排気管13から排気ライン17を介して排ガスが供給され、排ガスの速度エネルギによりタービン部31は回転駆動される。また、電動モータ本体33には、原動機10とは別に船内に設けられた発電機によって発電された電力が供給され、この電力により電動モータ本体33は回転駆動される。
【0041】
本実施形態に係る原動機システム400のように、補助動力装置30がパワータービンと電動モータから構成されている場合であっても、補助動力装置30からの動力が連結ギア40を介してクランク軸50よりも軸径が小さい回転部材(カム軸60)へと伝達するように構成すれば連結ギア40の大きさを小さく抑えることができる。さらに、本実施形態に係る原動機システム400によれば、タービン部31は排ガスを利用して駆動されることで原動機10は効率のよい運転をすることができ、かつ、電動モータ本体33は船内の発電機が発電した電力により駆動されることで得られた余剰電力を有効活用できるとともに、原動機10の状況にかかわらず補助動力装置30から安定した動力を連結ギア40に供給することができるという2つの利益を同時に得ることができる。
【0042】
以上、本発明に係る第1〜4実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、以上では補助動力装置30として、パワータービンを用いたもの、電動モータを用いたもの、およびこれらを併用したものについて説明したが、補助動力装置はこれらに限定されない。例えば、油圧モータを補助動力装置として用いるなど、上述した以外の装置を補助動力装置として用いたものも本発明に含まれる。
【0043】
また、以上では、連結ギア40は減速機41と追設ギア46とから構成されていたが、両者を一体化して構成してもよく、また、減速機41が不要であれば減速機41を省いて連結ギアを構成してもよい。さらに、以上では、連結ギア40の一部である追設ギア46が原動機10の内側に位置していたが、連結ギア40は機能上補助動力装置30と原動機10の間に介在していればよく、連結ギア40の具体的な設置位置については特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る原動機システムによれば、原動機と補助動力装置の間に介在する連結ギアの大きさを小さく抑えることができるため、補助動力装置を備えた原動機システムの技術分野において有益である。
【符号の説明】
【0045】
10 原動機
20 過給機
30 補助動力装置
31 タービン部
33 電動モータ本体
40 連結ギア
50 クランク軸
60 カム軸(回転部材)
70 作動油昇圧用ポンプ
80 連結機構
84 回転シャフト(回転部材)
91 プロペラ軸
100、200、300、400 原動機システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラ軸を回転させる船舶用の原動機と、
動力を生成し、生成した動力を前記原動機へ供給する補助動力装置と、
前記原動機と前記補助動力装置との間に介在し、前記補助動力装置からの動力を前記原動機へ伝える連結ギアと、を備え、
前記原動機は、
前記原動機で生成した動力を前記プロペラ軸へ伝えるクランク軸と、
前記クランク軸により駆動され前記クランク軸よりも軸径が小さい回転部材と、を有し、
前記補助動力装置からの動力は、前記連結ギアを介して前記回転部材に供給される、原動機システム。
【請求項2】
前記原動機は、前記原動機内のシリンダの弁を制御するカム軸を有し、
前記カム軸が前記回転部材である、請求項1に記載の原動機システム。
【請求項3】
前記原動機は、
油圧駆動機器を制御するための作動油の圧力を上昇させる作動油昇圧用ポンプと、
前記クランク軸と前記作動油昇圧用ポンプとの間に介在し、前記クランク軸からの動力を前記作動油昇圧用ポンプに伝える伝達機構と、を有し、
前記伝達機構には回転シャフトが含まれており、
前記回転シャフトが前記回転部材である、請求項1に記載の原動機システム。
【請求項4】
前記原動機は、
潤滑油の圧力を上昇させる潤滑油昇圧用ポンプと、
前記クランク軸と前記潤滑油昇圧用ポンプとの間に介在し、前記クランク軸からの動力を前記潤滑油昇圧用ポンプに伝える伝達機構と、を有し、
前記伝達機構には回転シャフトが含まれており、
前記回転シャフトが前記回転部材である、請求項1に記載の原動機システム。
【請求項5】
前記補助動力装置は、前記原動機の排ガスが有するエネルギを利用して駆動される、請求項1乃至4のうちいずれか一の項に記載の原動機システム。
【請求項6】
前記補助動力装置は、前記原動機の排ガスによって回転駆動されるパワータービンからなる、請求項1乃至4のうちいずれか一の項に記載の原動機システム。
【請求項7】
前記原動機に圧縮空気を供給する過給機をさらに備え、
前記パワータービンは前記過給機から独立して設けられている、請求項6に記載の原動機システム。
【請求項8】
前記補助動力装置は、前記原動機とは別に船内に設けられた発電機によって発電された電力により駆動される電動モータからなる、請求項1乃至4のうちいずれか一の項に記載の原動機システム。
【請求項9】
前記補助動力装置は、前記原動機の排ガスが有するエネルギにより発電された電力によって駆動される電動モータからなる、請求項1乃至4のうちいずれか一の項に記載の原動機システム。
【請求項10】
前記補助動力装置は、前記原動機の排ガスによって回転駆動されるパワータービンと、前記原動機とは別に船内に設けられた発電機によって発電された電力により駆動される電動モータからなる、請求項1乃至4のうちいずれか一の項に記載の原動機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−116234(P2012−116234A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265411(P2010−265411)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】