説明

船舶用ハイブリッド式推進システム

【課題】船舶の通常航行時に外乱によって電気推進プロペラを駆動する推進装置用電動機の実回転速度が目標回転速度よりも高くなった場合でも、不要な回生制動の発生を防ぐ船舶用ハイブリッド式推進システムを提供する。
【解決手段】インバータ制御回路6Cに回転速度指令nsと実回転速度NRとの速度偏差の極性がプラスのとき推進装置用電動機7に力行動作を行わせ、速度偏差がマイナスのとき推進装置用電動機に回生動作を行わせるようにした船舶用ハイブリッド式推進システムにおいて、回転速度設定器10が推進装置用電動機に減速度または逆転操作の指令を出力しているときは、予め定めた回生トルク制限値となるゲート信号をインバータ主回路のスイッチング素子に出力し、回転速度設定器10が推進装置用電動機に増速度または一定速度の指令を出力しているときは、回生トルクがゼロとなるゲート信号をインバータ主回路6Pのスイッチング素子に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進装置用電動機の回生制動を行うインバータユニットを備えた船舶用ハイブリッド式推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インバータユニットにより推進装置用電動機の力行制御および回生制御を行う方法として特許文献1に開示された発明がある。
以下、特許文献1に開示された回生制御を本発明と対比するために本発明の構成に準じた従来技術として、図6の構成例を参照して説明する。
【0003】
1はディーゼルエンジン等の原動機であり、発電機3を駆動する。発電機3の出力電力は船内母線5に供給され、この船内母線5から図示していない船内負荷や、インバータユニット6のインバータ主回路6Pを介して推進装置用電動機7に供給される。この推進装置用電動機7は、インバータ主回路6Pから供給される交流電力に基づいて回転し、主軸8を介して電気推進プロペラ9を駆動する。
【0004】
インバータユニット6のインバータ制御装置6Cには、速度ハンドルに取り付けられている回転速度設定器10で定められた回転速度指令ns、回転速度検出器11によって検出された推進装置用電動機7の実回転速度NR、およびインバータ主回路6Pと推進装置用電動機7との間の主回路に設置した電流検出器(CT)12で検出された電流Iとを入力する。
【0005】
インバータ制御装置6Cの基本的な機能は、回転速度設定器10により設定された回転速度指令値nsと回転速度検出器11により検出された実回転速度NRから速度偏差を算出し、その速度偏差に応じたゲート信号をインバータ主回路6Pへ出力する。インバータ主回路6Pは、インバータ制御回路6Cから出力されたゲート信号によりインバータ主回路6P内のインバータ(図示せず)をスイッチングし、ゲート信号に対応した可変電圧・可変周波数の交流によって推進装置用電動機7を駆動し、電気推進プロペラ9を回転させる。なお、13は、インバータ主回路6Pの直流回路に接続され、推進装置用電動機7からの回生電力を消費する抵抗器である。
なお、2は主機プロペラ4を駆動する主機で、発電機3を主機2により主機プロペラ4とともに駆動する所謂軸発電機とするケースもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−62676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では環境対策や、発電機および原動機の燃費対策として、燃料を抑えて運航するディーゼルエンジン(主機)と電気推進装置とにより各々推進用プロペラを駆動するようにした、所謂ハイブリッド方式の電気推進システムが有用となってきており、推進装置用電動機の負荷を低減させた燃費に配慮した運航を行う場合が多い。
【0008】
船舶用ハイブリッド式推進システムの場合、主機プロペラ4による流れの影響や海象による海流の影響を電気推進プロペラ9が受けた場合、船舶の通常航行中にも拘らず、推進装置用電動機7の実回転速度NRが回転速度指令値nsよりも大きくなる場合がある。この場合、インバータ主回路6Pには推進装置用電動機7から回生電力が流れ込むため、回生用抵抗器13でその回生電力を消費させるなど、本来必要のない回生動作を行う必要がある。この回生動作のために、船体にブレーキがかかることになり船舶の速度を低下させるとか、インバータ主回路6Pに接続された回生用抵抗器13の容量を大きく選定しておく必要がある等の欠点があった。
【0009】
そこで、本発明は、船舶の通常航行時は主機プロペラによる流れの影響や海象による海流の影響等の外乱によって推進装置用電動機7の実回転速度NRが回転速度指令値nsよりも高くなった場合でも、インバータユニット6として不要な回生動作を行うことのない船舶用ハイブリッド式推進システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、主機と、前記主機によって駆動される主機プロペラと、前記主機あるいは別個設けた原動機によって駆動されて発電し、発電した交流電力を船内母線に供給する発電機と、前記船内母線を電源とし、インバータユニットのインバータ主回路を介して駆動される推進装置用電動機と、前記推進装置用電動機によって駆動される電気推進プロペラと、前記推進装置用電動機の回転速度指令を設定する回転速度設定器と、前記推進装置用電動機の実回転速度を検出する回転速度検出器と、前記回転速度指令と前記実回転速度を入力して速度偏差を演算し、その速度偏差に応じて前記インバータユニットのインバータ主回路にゲート信号を与えるインバータ制御回路と、インバータ主回路を介して前記推進装置用電動機からの回生電力を消費する回生用抵抗器とからなる船舶用ハイブリッド推進システムにおいて、前記実回転速度が回転速度指令より大きくなった時の速度偏差が予め定めた回生トルク制限値を超えないように制限をかけるリミット回路を前記インバータ制御回路に設けると共に、前記回転速度設定器からの信号を入力して回転速度設定器から増速度または一定速度の指令が出力されていることを判別したときは、前記リミット回路の回生トルク制限値をゼロに設定変更する回生トルク制限値制御器を設け、実回転速度が回転速度指令より大きくなった時の速度偏差に応じたゲート信号が前記インバータユニットのインバータ主回路に出力されないように制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主機プロペラによる電気推進プロペラ側への影響や海象条件等の外乱が発生したとしても、通常航行時に不要な回生動作が発生せず、不必要に船体にブレーキがかかることもなく船舶速度の低下防止がはかれ、また、インバータユニットに接続された回生用抵抗器の容量も大きく選定する必要もない船舶用ハイブリッド式推進システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1による船舶用ハイブリッド式推進システムを示す構成図。
【図2】実施形態1の回生トルク制限値制御器の機能ブロック図。
【図3】実施形態1のインバータユニットの概略構成図。
【図4】実施形態1のインバータユニットによるインバータ制御時の速度制御の作用説明図。
【図5】本発明の実施形態2によるインバータ主回路の結線図。
【図6】従来システムの実施形態の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、図6に記載された従来のシステム構成図中の部品と同一部品には同一符号を付けて、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
[実施形態1]
図1は本発明の実施形態1による船舶用ハイブリッド式推進システムの構成図、図2は実施形態1の回生トルク制限値制御器の内部構成例を示す図、図3は本実施形態1で採用したインバータユニットの概略を示す構成図である。
【0015】
(構成)
本実施形態1の図1が従来例の図6と相違する主な点は、インバータ制御回路6Cにリミッタ回路を付加したことと、新たに回生トルク制限値制御器14を設けた点である。その他の構成は図6と同じである。
【0016】
まず図1において、本実施形態1で新たに設けた回生トルク制限値制御器14は、速度ハンドルに設けられた回転速度設定器10からの信号10sを入力してその速度ハンドル位置に応じた回生トルク制限値を出力するように構成されている。
【0017】
図2は回生トルク制限値制御器14の機能ブロック図である。
回生トルク制限値制御器14は、回転速度設定器(速度ハンドル)10からの信号10sを入力し、ハンドル操作状態判定手段14において回転速度設定器(速度ハンドル)10の位置情報10sが「増速または一定速度」の位置に対応したものであるのか、それとも「減速(逆転)」の位置に対応したものであるのかを判定する。
【0018】
このハンドル操作状態判定手段14によって回転速度設定器(速度ハンドル)10の位置が「増速操作または一定速度操作」の位置であると判定された場合、第1の設定手段14が選択されてこの第1の設定手段14に設定されている「回生トルク制限値=0%」に対応した値が次段の回生トルク制限値設定手段14に出力される。この回生トルク制限値設定手段14は、第1の設定手段14から出力された値を最終的に設定値に置き換えるための手段である。したがって、回生トルク制限値設定手段14は、第1の設定手段14から「回生トルク制限値=0%」に対応した値を入力すると、推進装置用電動機7の回生トルク制限値が0%に変更されるような回生トルク制限指令14sをインバータ制御回路6Cのリミッタ回路に出力する。
【0019】
つまり、実回転速度NRが回転速度指令nsより大きくなった時の速度偏差に応じたゲート信号がインバータユニット6のインバータ主回路6Pに出力されないように作用する。
【0020】
一方、ハンドル操作状態判定手段14によって回転速度設定器(速度ハンドル)10の位置が「減速操作(逆転操作)」の位置であると判定された場合は、第2の設定手段14が選択され、この第2の設定手段14で予め設定されている「回生トルク制限値=30%」に対応した値が前記回生トルク制限値設定手段14に出力される。回生トルク制限値設定手段14は、第2の設定手段14から出力された値が最終的に推進装置用電動機7の回生トルク制限値=30%となるように、回生トルク制限指令14sをインバータ制御回路6Cのリミッタ回路に出力する。
【0021】
つまり、実回転速度NRが回転速度指令nsより大きくなった時の速度偏差に応じたゲート信号が30%に制限されインバータユニット6のインバータ主回路6Pに出力されるように作用する。
【0022】
この回生トルク制限値=30%という設定値は、船舶用ハイブリッド式推進システムを搭載している船体に必要な回生量として予め算出した値である。
なお、本実施形態では減速操作(逆転操作)時の回生トルク制限値を30%と定めたが、この30%という値は一例に過ぎず、船体の大きさや推進力によって変わり得る。
【0023】
次に、図3を参照して本実施形態1で採用したインバータユニット6について説明する。まず、インバータ制御回路6Cについて説明する。
インバータユニット6のインバータ制御回路6Cは、回転速度検出器11で検出した推進装置用電動機7の実回転速度NRを同制御装置6C内で処理しやすい実回転速度信号nrに変換する第1の信号変換器6Cと、推進装置用電動機7に回転速度指令を設定するための回転速度設定器10から出力された回転速度指令nsと前記信号変換器6Cから出力された実回転速度信号nrとの速度偏差nc(nc=ns−nr)を求める第1の加算部6Cと、この第1の加算部6Cから出力された速度偏差ncを入力してこれを比例積分(PI制御)により増幅することにより電流指令iを作成する自動速度制御器6Cと、この速度制御手段6Cから出力された電流指令iを入力し、この電流指令が予め定めた力行トルク制限値(プラス側の制限値)あるいは回生トルク制限値(マイナス側の制限値)の範囲から逸脱することのないように、すなわち、力行トルク制限値を上回る大きさの電流指令iとか、回生トルク制限値を下回る大きさの電流指令iが出力されることがないように制限をかけて出力するリミッタ回路6Cと、電流検出器(CT)12で測定された推進装置用電動機7に流れる電流Iを処理しやすい形に変換して電流検出値iを出力する第2の信号変換器6Cと、この第2の信号変換器6Cで得られた電流検出値iを前記リミッタ回路6Cを通過した電流指令iと付き合わせて電流偏差を求める第2の加算部6Cと、この第2の加算部6Cで求めた電流偏差を入力してこれを比例積分(PI制御)により増幅する自動電流制御器6Cと、この自動電流制御器6Cの出力に応じてインバータ主回路6Pの半導体制御素子(例えば、IGBT)にゲート信号を与える第3の信号変換器6Cと、を備えている。
【0024】
なお、前記リミッタ回路6Cに設定されている力行トルク制限値、回生トルク制限値のいずれの制限値も電流偏差iが電動機の定格以上になったり、または回生抵抗器の容量を超えたりしないように予め設定されている。
【0025】
次にインバータ主回路6Pについて説明する。
インバータ主回路6Pは、ダイオードのブリッジ結線によって構成され、交流端子を船内母線5に接続されたダイオードコンバータ回路6Pと、このダイオードコンバータ回路6Pの直流端子間に接続された平滑用コンデンサ6Pと、IGBT等のスイッチング素子のブリッジ結線によって構成され、直流端子を前記平滑用コンデンサ6Pに接続され、交流端子を前記推進装置用電動機7に接続されたインバータ回路6Pとから構成されている。なお、インバータ主回路6Pの構成部品ではないが、インバータ回路6Pの直流側端子間には、インバータユニット6の回生動作時に回生用抵抗器13を接続するためのスイッチング素子6Pが接続されている。
【0026】
図4はインバータユニット6の制御による速度制御を説明するための図であり、リミット回路の制限値を変更しないときの特性を示している。
制御対象となる推進装置用電動機7の実回転速度NR(実線)が回転速度指令ns(破線)より高い場合は、インバータユニット6はインバータ回路6Pに回生動作(電力は電動機からインバータの方向へ発生)を行なわせ、スイッチング素子6Pを介して回生用抵抗器13で電力消費することによって推進装置用電動機7に電気ブレーキをかけ、回転速度NRを目標回転速度nsと一致するように制御する。
【0027】
一方、制御対象となる推進装置用電動機7の実回転速度NRが回転速度指令nsより低い場合は、インバータユニット6はインバータ回路6Pに力行動作(電力はインバータから電動機の方向へ発生)を行なわせ、インバータ回路6Pの出力を増加させることで推進装置用電動機7の回転速度を増加させ回転速度指令nsと一致するように制御する。
【0028】
(作用)
図1において、船舶の通常航行中は、速度ハンドルに設けられた回転速度設定器10から回生トルク制限値制御器14へ入力する信号10sが、増速または一定速度の操作状態を示す信号であるため、回生トルク制限値制御器14からは、インバータ制御回路6Cのリミッタ回路6Cに回生トルク制限値ゼロ(0%)の回生トルク制限指令14sを出力する。
【0029】
従って、自動速度制御器6Cから実回転速度NRと回転速度指令値nsとの速度偏差に応じた電流指令iが出力されてもリミッタ回路6Cによって0%に制限され、第2の加算器6Cへは電流指令iが出力されなくなる。
【0030】
つまり、電気推進プロペラ9への外乱によって回転速度NRが目標回転速度nsよりも上昇しても、リミッタ回路6Cにより回生トルク制限値ゼロ(0%)の回生トルク制限が行われているため回生トルクが発生せず、推進装置用電動機7に電気的なブレーキが発生しない。
【0031】
尚、速度ハンドルが減速(逆転)位置にあるときは、回転速度設定器10からの信号10sによって、回生トルク制限値制御器14からインバータ制御回路6Cのリミッタ回路6Cに回生トルク制限値(30%)の回生トルク制限指令14sが出力され、リミッタ回路6Cにより回生トルク制限値(30%)の回生トルク制限が行われる。従って、実回転速度NRと回転速度指令nsの偏差に応じた制限値(30%)に制限された回生トルクが発生し、推進装置用電動機7に電気的なブレーキが発生する。
【0032】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態1によれば、回生トルク制限値制御器14により、速度ハンドルの操作に応じて増速または一定速時で航行中はインバータ制御回路6C内のリミッタ回路6Cの制限値を0(ゼロ)%に切換えるようにしたので、万一、外乱によって推進装置用電動機7の実回転速度NRが回転速度指令nsよりも高くなったとしても、従来システムで発生していたような不要な回生制動の発生を防ぐことが可能となる。
【0033】
[実施形態2]
次に図5を参照して本発明の実施形態2によるインバータ主回路について説明する。
本実施形態2が前述の実施形態1と異なる点は、インバータ主回路6Pのコンバータ回路6Pにある。
【0034】
本実施形態2のインバータ主回路6Pは、IGBT等のスイッチング素子をブリッジ結線して構成されたコンバータ回路6Pと、このコンバータ回路6Pの直流端子間に接続された平滑用コンデンサ6Pと、スイッチング素子をブリッジ結線して構成され、交流端子を前記推進装置用電動機側に接続されたインバータ回路6Pとから構成されており、図1の回生用抵抗器13は撤去してある。
【0035】
この実施形態2の場合、推進装置用電動機7の実回転速度NRが回転速度指令nsより高い場合、回生電力は推進装置用電動機7からインバータ主回路6Pを介して船内母線5に回生されるようになる。その他は、実施形態1と同じなので説明を省略する。
【0036】
本実施形態2の場合も、前述した実施形態1同様に万一、外乱によって電気推進プロペラ9の実回転速度NRが回転速度指令nsよりも高くなったとしても、従来システムで発生していたような不要な回生制動を防ぐことができるほかに、実施形態1に比べて回生電力を消費するための回生用抵抗器13を設置する必要がないので、回生電力を抵抗器で無駄に消費することなく、船内母線5側に有効に回生することができる。
【0037】
また、回生用抵抗器13を必要としない分、回生用抵抗器13専用の冷却装置とか、回生用抵抗器13の熱が他の部品や機器に影響が出ないようにするための船内レイアウトも特に考慮する必要がないという長所がある。
【符号の説明】
【0038】
1…原動機、2…主機、3…発電機、4…主機プロペラ、5…船内母線、6…インバータユニット、6P…インバータ主回路、6P…コンバータ回路、6P…平滑用コンデンサ、6P…インバータ回路、6P…スイッチング素子、6C…インバータ制御回路、6C…加算部、6C…速度制御手段、6C…リミッタ回路、6C…加算部、6C…電流制御手段、7…推進装置用電動機、8…主軸、9…電気推進プロペラ、10…速度ハンドル(回転速度設定器)、11…回転速度検出器、12…電流検出器(CT)、13…回生用抵抗器、14…回生トルク制限値制御器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主機と、
前記主機によって駆動される主機プロペラと、
前記主機あるいは別個設けた原動機によって駆動されて発電し、発電した交流電力を船内母線に供給する発電機と、
前記船内母線を電源とし、インバータユニットのインバータ主回路を介して駆動される推進装置用電動機と、
前記推進装置用電動機によって駆動される電気推進プロペラと、
前記推進装置用電動機の回転速度指令を設定する回転速度設定器と、
前記推進装置用電動機の実回転速度を検出する回転速度検出器と
前記回転速度指令と前記実回転速度を入力して速度偏差を演算し、その速度偏差に応じて前記インバータユニットのインバータ主回路にゲート信号を与えるインバータユニットの制御回路と、
前記インバータ主回路を介して前記推進装置用電動機からの回生電力を消費する回生用抵抗器とからなる船舶用ハイブリッド推進システムにおいて、
前記実回転速度が回転速度指令より大きくなった時の速度偏差が予め定めた回生トルク制限値を超えないように制限をかけるリミット回路を前記インバータ制御回路に設けると共に、前記回転速度設定器からの信号を入力して回転速度設定器から増速度または一定速度の指令が出力されていることを判別したときは、前記リミット回路の回生トルク制限値をゼロに設定変更する回生トルク制限値制御器を設け、前記実回転速度が回転速度指令より大きくなった時の速度偏差に応じたゲート信号が前記インバータユニットのインバータ主回路に出力されないように制限することを特徴とする船舶用ハイブリッド式推進システム。
【請求項2】
前記インバータユニットのインバータ制御回路は、前記回転速度設定器の回転速度指令と前記回転速度検出器の実回転速度との偏差を入力して速度制御演算を行い電流指令を出力する速度制御手段と、この速度制御手段から出力された電流指令を入力しその電流指令を予め定めた上限値および下限値の範囲内に制限して出力するリミッタ回路と、このリミッタ回路から出力された電流指令と電流検出器で検出された推進装置用電動機に流れる出力電流との電流偏差に応じて電流制御を行なう電流制御手段を備え、前記回生トルク制限値制御器によって前記回転速度設定器が増速度または一定速度の指令を出力していることを判別したとき、前記リミッタ回路の下限値を予め定めた制限値をゼロに設定変更し、前記速度制御手段から出力された電流指令のマイナス分が次段の電流制御手段に入力されないように制御することを特徴とする請求項1記載の船舶用ハイブリッド式推進システム。
【請求項3】
前記インバータの主回路は、ダイオードをブリッジ結線して構成されたダイオードコンバータ回路と、このダイオードコンバータ回路の直流端子間に接続された平滑用コンデンサと、スイッチング素子をブリッジ結線して構成され直流端子を前記平滑用コンデンサ側に接続され、交流端子を前記推進装置用電動機側に接続されたインバータ回路と、前記インバータ回路の直流側端子間にスイッチング素子を介して接続された回生用抵抗器とを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の船舶用ハイブリッド推進システム。
【請求項4】
前記インバータの主回路は、スイッチング素子をブリッジ結線して構成されたコンバータ回路と、このコンバータ回路の直流端子間に接続された平滑用コンデンサと、スイッチング素子をブリッジ結線して構成され、交流端子を前記推進装置用電動機側に接続されたインバータ回路と、からなることを特徴とする請求項1または2記載の船舶用ハイブリッド推進システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245887(P2012−245887A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119236(P2011−119236)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000195959)西芝電機株式会社 (172)
【Fターム(参考)】