説明

船舶用汚水処理装置

【課題】船舶からのふん尿等の汚水排出規制強化に伴い水質性能向上と残留塩素による二次汚染防止を図り、船内の限られたスペースでも搭載可能な船舶用汚水処理装置を提供する。
【解決手段】接触材2とろ過膜3を同じ槽内に浸漬し(以下膜分離接触酸化槽1と言う)、ろ過膜のスクラビングと接触材のエアレーションを同一空気で行い、且つ膜分離接触酸化槽後段の処理水排出ラインには吸引ポンプ4を介して消毒薬溶解器5並びに滞留時間約15分の消毒兼逆洗タンク6を設け、且つ処理水排出ラインと消毒兼逆洗タンクから分岐した逆洗ラインに夫々自動弁並びにろ過水量とろ過膜逆洗水量を夫々制御する定流量弁を備えたものであり、さらに、膜分離接触酸化槽に液面制御手段を設け、処理水を排出完了後時限タイマーの設定時間、逆洗を行うようにした船舶用汚水処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接触材による生物膜処理とろ過膜(MF膜)によるろ過を同じ槽内で同時に行う膜分離接触酸化法による船舶用汚水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶用汚水処理装置としては全接触酸化法(接触酸化室と消毒室だけで構成され、沈殿室はない構造)がコンパクトで馴致期間も短く保守点検が容易と云う特徴を生かし主流となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら船舶からのふん尿等の排出規制が高まるにつれ、BOD除去は接触材の面積を増やすことで対応できるが、接触材から剥離した生物膜等の浮遊物質(SS)はその基準値を担保することが困難と成ってきた。
【0004】
また、消毒薬筒への流入汚水に定量性を保つ機構が無い為、溶解過多や溶解不足が発生し安定した残留塩素(0.5mg/L以下)の確保が困難であった。
【0005】
本発明は掛かる問題を解決するために成されたものであり、従来機能に加え高性能で残留塩素濃度の均一化も図れ且つ省エネ.省力を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされ、請求項1に記載の発明は、接触材とろ過膜(MF膜)を同じ槽に浸漬し、MF膜のスクラビングのエアーを接触材のエアレーションと共用し、且つ膜分離接触酸化槽後段の処理水排出ラインには吸引ポンプを介して消毒薬溶解器並びに滞留時間約15分の消毒兼逆洗タンクを設け、且つ処理水排出ラインと消毒兼逆洗タンクから分岐した逆洗ラインに夫々自動弁並びにろ過水量とろ過膜逆洗水量を夫々制御する定流量弁を設けた事を特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、膜分離接触酸化槽に液面制御手段を設け、処理水排出ごとに時限タイマーの設定時間、逆洗を行う事を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、膜分離接触酸化槽内の中央にMF膜を浸漬し、その外周を取り囲むように接触材を浸漬し、MF膜のスクラビングのエアーを接触材のエアレーションと共用することにより空気量が節約出来、曝気用ブロワの出力が少なくて済み省エネになる。
【0009】
加えて膜分離接触酸化槽後段の処理水排出ラインに吸引ポンプを介して消毒薬溶解器並びに滞留時間約15分の消毒兼逆洗タンクを設ける。一般的に有機高分子多孔質体のろ過膜は水の粘度の影響を受け透過水量が変動するが、処理水排出ラインと消毒兼逆洗タンクから分岐した逆洗ラインに夫々自動弁並びにろ過水量とろ過膜逆洗水量を夫々制御する定流量弁を設けることにより、ろ過水量(流速)が一定となり消毒殺菌効果が一様に担保できる。更にろ過膜逆洗水に定量性を持たす事により、安定した逆洗効果の維持が期待出来る。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、膜分離接触酸化槽に液面制御手段を設け、処理水排出完了ごとに時限タイマーの設定時間、自動逆洗と自動エアスクラビングを行うことにより、ろ過能力の伸延が計れ、手動薬液洗浄の回数が少なくなり省力化に繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に従って本発明の実施の最良の形態により、本発明の詳細を説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態を示す構造兼配管系統図である。図2は本発明の運転タイミングチャート図である。
【0013】
本発明の実施形態は船舶内で発生するふん尿W1を浄化するものにして、膜分離接触酸化槽1の中央にろ過膜(MF膜)3を浸漬し、その外周を取り囲むように接触材2を浸漬する。
【0014】
MF膜3の下部より曝気ブロワ8からの空気を自動弁V5を介して吹き込む。この空気はMF膜3表面をスクラビングする傍ら、汚水中に溶け込み溶存酸素となって接触材2表面の生物膜に酸素を与える。またその回流力でスクリーン9の固形物を破砕する。
【0015】
膜分離接触酸化槽1の後段の処理水排出ラインには自動弁V1並びに定流量弁FC1を介して吸引ポンプ4が有り、膜分離接触酸化槽1に装填した液面制御手段(時限タイマー内蔵)7の信号で吸引ポンプ4は自動発停を繰り返す。
【0016】
吸引ポンプ4の後段には自動弁V2を介して消毒薬溶解器5及び滞留時間約15分の消毒兼逆洗タンク6を設け、定流量弁FC1で流量制御したろ過水は一定流速で消毒薬溶解器5に流入し固形消毒薬を定量溶かして消毒兼逆洗タンク6内を約15分掛けて通過する間に完全に殺菌され、残留塩素濃度も規制値内で船外に排出される。
【0017】
吸引ポンプ4は膜分離接触酸化槽1に設けた液面制御手段7が上水位を検知すると自動起動し、下水位を検知するまで吸引ろ過を行い、処理水W2を船外に排出する。この間自動弁V1,V2,V5は開でV3,V4は閉となる。
【0018】
液面制御手段7が下水位を検知すると自動弁V3.V4が開きV1,V2,V5は閉となるも、引き続き吸引ポンプ4は運転を続け、消毒兼逆洗タンク6内の処理水を定流量弁FC2を介してろ過膜(MF膜)に一定時間(T1)送水し膜の逆洗を行う、このとき曝気ブロワ8は停止する。T1がタイムアウトすると吸引ポンプ4は停止し、曝気ブロワ8は再び起動しろ過膜(MF膜)3に空気を供給し、一定時間(T2)膜表面の異物を掻き落す(エアスクラビング)。T2タイムオウト後は液面制御手段7の上水位検知信号による再起動に備える。
【0019】
この一連の運転サイクルは別途設けた制御盤内(図示せず)の時限タイマーT1,T2及び液面制御手段7により運転制御する。
【0020】
これらの一連の動作を運転タイミングチャートとして図2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は船舶から発生する糞尿からの海洋汚染を防止する規制強化に対応出来るものであり、省スペース、省エネ、省力と言う特徴を持ち合わせる高性能船舶用汚水処理装置としての利用に適す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明の実施形態を示す構造兼配管系統図である。
【図2】図2は本発明の運転タイミングチャート図である。
【符号の説明】
【0023】
W1 糞尿原水
W2 処理水
1 膜分離接触酸化槽
2 接触材
3 ろ過膜(MF膜)
4 吸引ポンプ(P1)
5 消毒薬溶解器
6 消毒兼逆洗タンク
7 液面制御手段(タイマーT1,T2付)
8 曝気ブロワ(B1)
9 スクリーン
V1 自動弁
V2 自動弁
V3 自動弁
V4 自動弁
V5 自動弁
FC1 定流量弁
FC2 定流量弁





【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触材とろ過膜を同じ槽内に浸漬し(以下膜分離接触酸化槽と言う)、ろ過膜のスクラビングと接触材のエアレーションを同一空気で行い、且つ膜分離接触酸化槽後段の処理水排出ラインには吸引ポンプを介して消毒薬溶解器並びに滞留時間約15分の消毒兼逆洗タンクを設け、且つ処理水排出ラインと消毒兼逆洗タンクから分岐した逆洗ラインに夫々自動弁並びにろ過水量とろ過膜逆洗水量を夫々制御する定流量弁を有する事を特徴とする船舶用汚水処理装置。
【請求項2】
膜分離接触酸化槽に液面制御手段を設け、処理水を排出完了後時限タイマーの設定時間、逆洗を行う事を特徴とする請求項1の船舶用汚水処理装置。




























【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−221166(P2010−221166A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73059(P2009−73059)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(309008963)
【Fターム(参考)】