説明

良好な貯蔵安定性を有するイソシアネート基含有プレポリマー

本発明は、湿分の影響下で硬化する、接着剤、塗料およびシーラント剤に関する。それらは、良好な貯蔵安定性を示し、広い許容差範囲で作業することができ、速硬性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿分の影響下で硬化し、長い貯蔵期限、広い範囲内で調節できる作業性、および迅速な完全硬化を示す、脂肪族プレポリマーベース一液型系を提供する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリイソシアネート(例えばTDI、好ましくはMDI)に基づく湿分硬化イソシアネート末端プレポリマーは、そのイソシアネート含量に応じ、様々な工業用途および日曜大工(DIY)用途において、接着剤、シーラントおよび塗料として使用されている。
【0003】
その例は、木材の接着;容器構造物で使用されるような断熱要素を形成するための、例えば木材シートまたはアルミニウムシートと断熱材(例えば、ロックウール、EPSまたはPU硬質フォーム)からのサンドイッチ構造物の製造;熱可塑性PUフォーム、ガラスファイバー不織布および装飾用織布からの自動車ルーフライナー構造物の製造を包含し、NCOプレポリマーは、層を結合するだけでなく、複合構造物全体、または道路建設におけるバラバラの岩石層の団結を強化する。この市場にとって好ましいNCO範囲は、約12〜18重量%のNCO含量である。
【0004】
約6〜12重量%のNCO含量を有するNCO末端プレポリマーは、硬化後、より軟質のポリウレタンを生じ、従って、より軟質の複合材料の製造(例えば、子供達の遊び場のための表面要素としてのペレット化ゴムコンパウンドの製造)に適している。
【0005】
より軟質のポリウレタンは、1〜5重量%のイソシアネート含量を有するイソシアネート末端プレポリマーを用いて得られ、例えば、フロントガラスなどを適合させるために自動車産業において構造シーラントとしてまたは接着シーラントとして広く使用されている。
【0006】
新規なタイプのPU接着剤は、2〜5重量%のイソシアネート含量を有し、使用するポリオールに応じて非常に硬質のPUを生じることもできる、反応性PUホットメルトである。
【0007】
これらプレポリマーの全てに共通していることは、水とイソシアネート基との連鎖延長反応が、高強度および優れた物理的性質(例えば、靱性、熱安定性など)を生成ポリウレタンに与えるポリウレアセグメントをもたらすという事実である。
【0008】
プレポリマーの大きな利点は、プレポリマーが一液型系であることである。なぜなら、水との反応は、極めて確実に進行し、二液型系には欠かせない面倒な化学量論を考慮する必要がないからである。大過剰の水を用いても、反応は常に硬化ポリウレタンをもたらす。存在する大気中および/または基材中の湿分は通常、反応相手として十分であるが、特に例えばアルミニウム形材のような緻密外層を伴って、水を噴霧することも可能である。
【0009】
実際の使用のため、系の開放時間を、触媒の添加によって調節する。開放時間とは、結合する基材に適用した後に、系が容易に作業できる状態を維持している時間であると理解される。用語「作業できる」は、各用途毎に定義し直さなければならない。接着剤の場合、作業性は一般に、2つの基材をまだ容易に結合できる時間と定義される。作業時間を超えれば一般に、例えば基材の再配置能のような最適な性質を得ることは、もはや不可能である。
【0010】
作業時間の終点から最適な最終特性に達するまでに要する時間は、可能な限り短くなければならない。なぜなら、例えばプレスにおけるより長い滞留時間のような、過度に長い待機時間は常に、実際問題としてより高いコストをもたらすからである。
【0011】
実際には、作業時間の長さは、触媒の使用によって、基本的に自由に調節することができるが、触媒の全ては(水の侵入を伴わずに)系の貯蔵期限に悪影響も及ぼし、従って、非常に迅速に反応するよう調節された系は限られた貯蔵期限を有し、このことは製品物流管理に悪影響を与えることがある。この限られた貯蔵期限は、主として粘度の急上昇によって示され、これはゲル化点に対応することがある。一方、一部の触媒は作業時間を非常に効果的に制御できるが、過度に長い硬化時間を系にもたらす。これにより一般に、加工を継続できるようになるまで、部品を一時的に保管しなければならなくなる。
【0012】
触媒の概説は、例えば、A. FarkasおよびG.A. Mills, Adva. Catalysis, 13, 393 (1962), J.H. Saunders and K.C. Frisch, Polyurethanes, Part I, Wiley-Interscience, New York, 1962, 第6章、K.C. FrischおよびL.P. Rumao, J. Macromol. Sci.-Revs. Macromol. Chem., C5 (1), 103 - 150 (1970)、またはG. Woods, The ICI Polyurethane Book, John Wiley & Sons, 第41〜45頁、1987に見ることができる。
【0013】
通常の触媒は、ポリウレタン化学で知られている物質、例えば、第三級脂肪族アミンおよび/または金属触媒である。
【0014】
例えばジラウリン酸ジブチル錫のような金属触媒は、良好な完全硬化と合わせて、水とイソシアネート基含有プレポリマーとの反応を良好に促進するが、同時に、貯蔵期限に悪影響を及ぼす。この触媒は、EP−A 0 132 675においては、トシルイソシアネートの付加により「ブロック」することによって改良されているが、非常に僅かな湿分であってもこのブロックの解除には十分であるので、貯蔵期限は、全体としては改良されてはいるが、なお不十分である。
【0015】
全性質の可能な限り優れた組み合わせを得るために、実際には、様々な触媒の混合物を通常使用する。
【0016】
芳香族ポリイソシアネートに基づくプレポリマーの一般的な欠点は、光の影響下で最終生成物が著しく変色する傾向であり、これは多くの用途にとって許容できない。この欠点をなくすための一般に認められている方法は、適当な添加剤(例えば立体障害フェノールと立体障害脂肪族アミン(HALS型)との組み合わせ)の使用であるが、緩やかな向上しか示さない。脂肪族ポリイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、または立体異性体混合物としての4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、或いは誘導体としての前記ジイソシアネートの使用は、根本的な改良の典型である。
【0017】
しかしながら、これらのポリイソシアネートを用いると、芳香族ポリイソシアネートと比べて、水との反応が非常に緩慢にしか進行しない。
【0018】
この反応を触媒するには、とにかく、非常に高濃度の金属触媒(例えばジラウリン酸ジブチル錫またはビスマス塩)が必要である。しかしながら、このレベルの触媒濃度は常に、長期的な性能特性(例えば、ポリエステル系接着剤の耐加水分解性)に悪影響を及ぼす。芳香族ポリイソシアネート系接着剤用触媒として非常に一般的に使用されている第三級脂肪族アミン(例えば1,4−ジアザビシクロオクタンまたはジモルホリノジエチルエーテル)も同様に、触媒効果をほとんど示さないことが分かっている(L. Havenith in Paint Manufacture, 1968年12月、第33〜38頁、特に第34頁)。これらの触媒に関連する更なる問題は、硬化系からの移行能である。これは、特に食品に接触する用途に使用する系で、最も望ましくないことである。
【0019】
技術的に非常に複雑な方法もまた、文献に記載されている。この方法では、硬化する系、主に塗料薄層を、場合により高温で、高揮発性第三級脂肪族アミン(例えばトリメチルアミン)の存在下、チャンバー内で湿分硬化する。この方法では、非常に高濃度の触媒を、生成物への残留を伴わずに使用することができるので、先に記載した問題は起こらない。
【0020】
DE−A 10 2006 020 605は、一液型脂肪族ポリウレタン系の湿分との反応のための触媒として、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルを記載している。良好な貯蔵安定性と合わせて、湿分/水分との反応における高い反応速度を示す、一液型湿分硬化ポリウレタン系が得られる。しかしながら、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルは毒物に分類される。また、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルは重合体ポリウレタンに共有結合しないので、硬化ポリウレタンから移行または蒸発することもある。従って、1%を超えるビス(ジメチルアミノエチル)エーテルを含有する製剤は、毒物と表示しなければならない。一般的に言えば、健康および安全の理由から、ある種の繊細な用途では、毒性物質含有製剤は望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】EP−A 0 132 675
【特許文献2】DE−A 10 2006 020 605
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】A. FarkasおよびG.A. Mills, Adva. Catalysis, 13, 393 (1962), J.H. Saunders and K.C. Frisch, Polyurethanes, Part I, Wiley-Interscience, New York, 1962, 第6章
【非特許文献2】K.C. FrischおよびL.P. Rumao, J. Macromol. Sci.-Revs. Macromol. Chem., C5 (1), 103 - 150 (1970)
【非特許文献3】G. Woods, The ICI Polyurethane Book, John Wiley & Sons, 第41〜45頁、1987
【非特許文献4】L. Havenith in Paint Manufacture, 1968年12月、第33〜38頁、特に第34頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、系の貯蔵期限に僅かな悪影響しか与えずに作業時間を良好に制御でき、同時に、迅速な完全硬化を可能にし、後に系から移行せず、毒性ではない触媒に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そこで、本発明は、1〜20重量%のイソシアネート含量を有する脂肪族ポリイソシアネートベースイソシアネート基含有プレポリマーに基づく、一液型系であって、触媒としてのN,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビス(アミノエチル)エーテルを、単独触媒として使用するかまたは他の触媒と一緒に配合することを特徴とする一液型系を提供する。
【0025】
意外なことに、触媒としてのN,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビス(アミノエチル)エーテルは、脂肪族ポリイソシアネート系イソシアネート基末端プレポリマーの熱安定性に僅かな影響しか及ぼさず、作業時間と完全硬化時間とのバランスのとれた比を示す。この選択した触媒は、ヒドロキシル基を介してプレポリマーに結合することが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1〜20重量%、好ましくは2〜16重量%のイソシアネート含量を有するNCO末端プレポリマーは、脂肪族ポリイソシアネートと、ヒドロキシルポリカーボネート、ヒドロキシルポリエステルおよび/またはヒドロキシルポリエーテルとの反応生成物であると理解される。前記プレポリマー自体、または可塑剤、充填材、レオロジー助剤を配合した前記プレポリマーは、大気中湿分および/または基材中湿分との反応によって硬化し、高分子量ポリウレタンポリウレアを生成する。
【0027】
適当な脂肪族ポリイソシアネートは特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、および立体異性体混合物としての4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンであると理解される。本発明ではもちろん、誘導体、例えば、ウレタン、ビウレット、アロファネート、ウレトジオンおよび三量体、並びにこれら誘導体の混合物としての前記ジイソシアネートの使用または配合も包含される。
【0028】
ヒドロキシルポリカーボネートは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ブタンジオール−1,4、ネオペンチルグリコールまたはヘキサンジオール−1,6タイプのグリコールおよび/またはトリオール、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはソルビトールと、ジフェニルカーボネートおよび/またはジメチルカーボネートとの反応生成物であると理解される。反応は、フェノールおよび/またはメタノールが除去される縮合反応である。組成に依存して、生成物は、−40℃より高いTg値を有する液体または蝋質の非晶質タイプ、或いは40〜90℃の範囲に融点を有する結晶性ポリカーボネートポリオールである。分子量範囲は200〜10,000である。400〜5000の分子量範囲が好ましい。500〜3000の分子量範囲が特に好ましい。
【0029】
ヒドロキシルポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸および/またはドデカン二酸)および/または芳香族ジカルボン酸(例えば、o−フタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸)と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ブタンジオール−1,4、ネオペンチルグリコールまたはヘキサンジオール−1,6タイプのグリコールおよび/またはポリオール、例えば、グリセロールまたはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはソルビトールとの反応生成物であると理解される。反応は、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, "Polyester", 第4版、Verlag Chemie, Weinheim, 1980に記載されているような標準的な溶融縮合である。組成に依存して、生成物は、−40℃より高いTg値を有する液体非晶質タイプ、或いは40〜90℃の範囲に融点を有する結晶性ポリエステルポリオールである。分子量範囲は200〜30,000である。400〜5000の分子量範囲がとりわけ好ましい。500〜5000の分子量範囲が特に好ましい。
【0030】
とりわけ本発明では、グリセロールと、ヒドロキシル脂肪酸、特にひまし油およびその誘導体、例えば一脱水ひまし油との反応生成物に由来する生成物を挙げることもできる。
【0031】
ポリエーテルポリオールは、特に、スターター分子(例えば、水、プロパンジオール−1,2、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、アンモニア、メチルアミンまたはエチレンジアミン)へのプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドの塩基触媒付加により通常調製される、200〜6000、特に200〜5000の分子量を有するポリエーテルポリオールを包含する。とりわけ、複金属シアン化物触媒を用いることにより得られ、25,000までの分子量を有する非常に高分子量のよく規定されたポリエーテルポリオールの合成を可能にするポリプロピレンエーテルポリオールもまた適している。分散有機充填剤(例えば、ヒドラジン水和物へのトルイレンジイソシアネートの付加生成物、またはコポリマー、例としてスチレンおよびアクリロニトリルのコポリマー)を含有するポリエーテルポリオールももちろん可能である。
【0032】
テトラヒドロフランの重合により得ることができ、400〜4000の分子量を有するポリテトラメチレンエーテルグリコールを使用することもでき、同様に、ヒドロキシル基含有ポリブタジエンを使用することもできる。
【0033】
前記ポリオール混合物はもちろん、低分子量ポリオール(例えば、エチレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコールまたはブタンジオール−1,4)と混合して使用することもできる。
【0034】
前記ポリオールはもちろん、ウレタン変性ヒドロキシル化合物を生成するための実際の予備重合前に、芳香族および脂肪族両方のポリイソシアネートの全てと反応させることができる。
【0035】
イソシアネート末端プレポリマーの製造は、30〜150℃、好ましくは60〜140℃の温度での、ポリオールと化学量論的に過剰の脂肪族ポリイソシアネートとの反応による既知の方法によって実施する。これは、反応容器内で不連続的に、或いは一連の反応器内でまたはミキサーを用いて連続的に実施することができる。
【0036】
ヒドロキシル化合物を大過剰のジイソシアネートと反応させること、および残留単量体ジイソシアネートを(例えば、高温減圧下での短行程蒸発器または薄膜蒸発器を用いて)既知の方法によってプレポリマーから除去することが特に好ましい。このようにして、モノマー含量の低いプレポリマーが得られ、一部のケースでは、残留モノマー含量に応じて、特別な表示を必要としない。
【0037】
性質を最適化するため、反応前、反応中または好ましくは反応後に、変性脂肪族ポリイソシアネートを、これら生成物の全てに添加することもできる。そのような製品は、例えば、Bayer MaterialScience AGから、Desmodur(登録商標) N 100(HDIビウレット変性品)またはDesmodur(登録商標) N 3300およびDesmodur(登録商標) N 3600(HDI三量体)またはDesmodur(登録商標) Z 4470(IPDI三量体)の商品名で市販されている。
【0038】
組成によって低粘度から高粘度まで変化できる予想最終粘度に応じて、様々な凝集体が可能である。
【0039】
プレポリマー生成の終点前、終点時または好ましくは終点後に、触媒であるN,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビス(アミノエチル)エーテルをプレポリマーに添加する。
【0040】
添加するこの触媒の量は、所望の作業時間によって決定される。プレポリマーに対して、一般的には0.01〜3.0重量%、好ましくは0.05〜2.0重量%、特に好ましくは0.1〜1.5重量%が十分である。
【0041】
実際に知られているような溶媒、充填材、染料およびレオロジー助剤を、プレポリマーに、付加的に添加することができる。
【0042】
充填材として、例えば、チョーク、バライト、およびポリアミド繊維またはポリアクリロニトリル繊維のような繊維充填材を挙げることができる。レオロジー助剤の例は、産業において通常使用されている添加剤(例えば、アエロジル、ベントナイトまたは水素化ひまし油)に加えて、低分子量アミンも包含し、低分子量アミンは、ポリイソシアネートと組み合わせると、非常に迅速に擬似塑性を確立する。これらの添加剤の全てについて、湿分を含まないことが必要不可欠である。なぜなら、湿分は、容器内で尚早の反応を招くからである。
【0043】
接着剤、塗料およびシーラントは、例えば、ナイフ塗布、こて塗、噴霧、ロール塗、はけ塗、フラットフィルム押出によって、或いはビーズとしてよりコンパクトな形状で適用される。
【0044】
そのような系の種々の硬化段階を評価するのに適した方法は、例えば、塗料、接着剤およびシーラント産業で広く使用されている市販デバイス、例えばBK 10乾燥記録計(The Mickle Laboratory Engineering Co. Ltd.)の使用を包含する。この方法では、必要ならば負荷をかけてよい針を、支持体(例えばガラス板)上の評価するプレポリマー薄膜を等して一定速度で移動させる。3つの段階が観察され、それらを用語「作業時間」および「完全硬化時間」によって定義する。
【0045】
初期には、液膜を通して針を動かすと、針によって残された痕跡はほぼ完全に消失する。この段階は、作業時間に相当する。皮張り時間、開放時間または接触粘着時間としても知られている作業時間終点は、針によって残された連続痕跡の初めての発現によって示される。
【0046】
作業時間終点の後、針が痕跡を残し、(経過時間に相当する)長さが変動する区分が続く。塗膜が十分完全に硬化すると、針はもはやポリマー塗膜を貫通することはできず、針は痕跡を残さずにポリマー塗膜上を通り過ぎる。度量衡学的には、これを、完全硬化時間と称する。度量衡学的観点から、この状態の開始はもちろん、接着剤の一般組成および針にかけられた負荷の両方と関連しており、従って、完全硬化時間は、ポリマーがその最終性質に達する時間と同義ではないこともある。しかしながら、完全硬化時間は、例えば「ジグ強度」、「屈曲耐久性」などに達する期間と非常によく相関している。
【0047】
当業者の狙いは、作業時間終点から完全硬化時間に達するまでの時間を可能な限り短くすることである。
【0048】
本発明は、この期間の短縮に、可能な限り制限されない作業時間およびNCO末端プレポリマー貯蔵期限への可能な限り少ない悪影響を組み合わせる。
【0049】
本発明はまた、このように触媒を加えたプレポリマーの、接着剤および/またはシーラントおよび/または塗料としての使用であって、脂肪族イソシアネート基が湿分で硬化する使用を提供する。可能な用途は、特に、木材要素(例えば、あり継ぎ、合板製品または梁)の接着を包含する。シートまたは成形品を形成するための木材チップ、木材繊維または木材粉塵の接着も可能である。約10〜20%のイソシアネート含量を有するプレポリマーが、これらの用途に特に適している。より低いイソシアネート含量が、例えば変色しない淡色目地材に使用するため或いは反応性PUホットメルト分野のための、低分子量ポリマーにより適しており、そのようなプレポリマーは、80℃を超える温度で適用され、物理的過程により冷えると強度が発現し、その後、湿分との最終的な反応が起こる(EP−A 0 354 527参照)。
【0050】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図している。
【実施例】
【0051】
実験の部
実施例1
プレポリマーの調製(HDI)
30ppmのイソフタロイルジクロリドで安定化され、515mgKOH/gのヒドロキシル価を有するポリプロピレングリコール1000g(4.59mol)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)11581g(68.85mol)を、約90〜100℃で反応させた。3時間の反応時間の終点で、プレポリマーは42.6%の一定NCO含量を有していた。
205ppmのエチルヘキサン酸亜鉛を90℃で添加し、プレポリマーをアロファネート化した。2時間の反応時間の終点で、アロファネートは36.9%の一定NCO含量を有していた。次いで、230ppmのイソフタロイルジクロリドで安定化されたアロファネートを、140℃および0.1mmHgで短行程蒸発器において蒸留することにより、過剰HDIモノマーをほとんど除去した。
17.6%のイソシアネート含量および23℃で3260mPasの粘度を有する低粘度のプレポリマーを得た。残留HDIモノマー含量は0.05%であった。
【0052】
実施例2
プレポリマーの調製(HDI)
515mgKOH/gのヒドロキシル価を有するポリプロピレングリコール1000g(4.59mol)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)3850g(22.94mol)を、約80〜90℃で反応させた。
9時間の反応時間の終点で、プレポリマーは13.2%の一定NCO含量を有していた。次いで、プレポリマーを、180℃および0.1mmHgで短行程蒸発器において蒸留することにより、過剰HDIモノマーをほとんど除去した。
【0053】
12.5%のイソシアネート含量および23℃で4500mPasの粘度を有する中粘度のプレポリマーを得た。残留HDIモノマー含量は0.35%であった。
【0054】
実施例3
プレポリマーの調製(Desmodur(登録商標) N 3400)
56mgKOH/gのヒドロキシル価を有するポリプロピレングリコール1000g(0.5mol)、およびDesmodur(登録商標) N 3400(21.8%のNCO含量および0.5%の遊離HDIモノマー含量を有するヘキサメチレンジイソシアネート二量体、Bayer MaterialScience AG製)2815g(7.3mol)を、ジラウリン酸ジブチル錫20ppmで触媒して約40℃で反応させた。
6時間の反応時間の終点で、プレポリマーは14.9%の一定NCO含量を有していた。次いで、プレポリマーを、20ppmのリン酸ジブチルで安定化した。
【0055】
14.9%のイソシアネート含量および23℃で663mPasの粘度を有する低粘度のプレポリマーを得た。遊離HDIモノマー含量は0.19%であった。
【0056】
実施例4
乾燥記録計を用いた試験(試験の記載)
塗膜を、予め酢酸エチルで清浄化したガラス板にナイフ(250μm)で適用し、直ちに乾燥記録計内に配置した。針に10gの負荷をかけ、360分間、35cm区画を移動させた。
乾燥記録計を、23℃および50%相対湿度の温度湿度調節室内に配置した。
乾燥記録計により約25〜60分の作業時間が得られる(塗膜に針の連続痕跡が可視的に発現する)ように、実施例1のプレポリマー100gを、種々の市販触媒と混合した。
完全硬化時間を、針の連続痕跡が塗膜から消失する時間として与えた。
【0057】
【表1】

【0058】
表に示されているように、著しく短縮された完全硬化時間は、0.5〜1.5重量%の量で使用した本発明の触媒N,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビス(アミノエチル)エーテルを伴った場合(実施例4E〜4G、4I〜4Kおよび4M)にのみ達成された。
【0059】
実施例5
アルミニウム製フラスコ内における50℃での長期貯蔵試験を、実施例4Aおよび4E〜4Mの触媒を用いて実施した。50℃で14日間貯蔵した場合に2倍未満の粘度にしかならなければ、脂肪族プレポリマーは、貯蔵安定なものとして分類することができる。
NCO含量および25℃での粘度を測定した。
【0060】
【表2】

【0061】
Jeffcat(登録商標) ZF 10触媒を用いた場合、触媒未添加プレポリマーと比べて、貯蔵安定性への僅かな悪影響が観察された。しかしながら、応用に関する観点から見れば、Jeffcat(登録商標) ZF 10で触媒されたプレポリマーの全ては、十分貯蔵安定であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2〜20重量%のイソシアネート含量を有し、触媒としてN,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビス(アミノエチル)エーテルを含有する、脂肪族ポリイソシアネートに基づく湿分硬化イソシアネート基含有プレポリマー。
【請求項2】
触媒がプレポリマーに対して0.01〜3.0重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項3】
触媒がプレポリマーに対して0.5〜1.5重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項4】
プレポリマーのイソシアネート基含量が3〜17重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のプレポリマー。
【請求項5】
単量体ジイソシアネートとしておよび/またはその誘導体としてのヘキサメチレンジイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートとして使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のプレポリマー。
【請求項6】
イソシアネートとしておよび/またはその誘導体としてのイソホロンジイソシアネートが使用されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のプレポリマー。
【請求項7】
1.0%未満の単量体ジイソシアネート含量を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のプレポリマー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のプレポリマーの、接着剤、塗料およびシーラントを製造するための使用。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のプレポリマーの、高温で適用でき、冷えるにつれて強度を発現し、その後、湿分と反応する反応性ポリウレタンホットメルト系としての使用。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のプレポリマーを含有する、ポリウレタンホットメルト系。

【公表番号】特表2013−501828(P2013−501828A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524126(P2012−524126)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004616
【国際公開番号】WO2011/018162
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】