説明

色を向上させるナノ粒子含有化粧品組成物

本発明は、化粧的、皮膚科学的、及び薬学的組成物に関する。該組成物は、有効量のナノ粒子又は1または2以上の顔料を、皮膜形成剤及びワックスを含有する許容できる媒材又はキャリアに含む。本発明はまた、生体表面の視覚的特性を変化させることにより、生体表面の外観を改善する方法に関する。本発明の該組成物は、色を向上させ、生体表面に有効量を適用することにより、生体表面の審美上及び自然の外観を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、化粧品組成物、皮膚科学的組成物、及び薬学的組成物、ならびにそれらの使用に関する。本発明は、より具体的には生体表面の外観を改善するための化粧品組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現代のスキンケア処方では、高いレベルの効果、皮膚への適合性、及び審美性向上が求められる。消費者は、年齢による老化、ホルモン分泌による老化、又は紫外線による老化の皮膚科学的なサイン(小じわ、しわ、乾燥、皮膚のたるみ、及びスキンマトリックスの減少が進行することによるその他の状態)を軽減させ、遅延させることに関心がある。消費者は、例えば、皮膚、唇、爪及び毛髪といった、生体表面にある色を与えることで、外観を改善することに関心がある。そうすることで、明白な欠点のない、均一で、生き生きとした、滑らかな、及び平らな表面の外観が、理想的に作り上げられる。それゆえ、生体表面の外観を改善させるための、完璧で、長持ちする、生き生きとした色を作り出すことができる化粧品が求められている。
【0003】
ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウ、リップスティック、コンシーラー、頬紅、マスカラ、アイライン、リップペンシル、アイペンシル、又はマニキュアといった、生体表面にある色を与えるために適用されるメイクアップ組成物により、完璧で、生き生きとした着色を実現させることは、現時点では難しい。所望の色とカバー力を与える着色剤といった化粧品成分が、概して、多くの欠点を有するからである。
【0004】
前述のようなメイクアップ組成物に使われる着色剤としては、レーキ、無機顔料もしくは有機顔料、及び/又は真珠光沢顔料、ならびに選択的な染料が挙げられ得る。無機顔料、及び特に無機酸化物は、比較的安定的であるという利点はある。しかし、着色されたマテリアルが、むしろくすんだ青白い色となってしまうという欠点を有する。有機顔料は、生き生きとした色を与えるという利点はある。しかし、光、温度、又はpHに比較的不安定であるという欠点を有する。また、これらの着色剤のいくつかは、塗布後、皮膚又は爪に見苦しい塗り後を残してしまうという欠点を有する。真珠光沢顔料は、変化に富む、かといって強烈ではない色を与え、これにより虹色効果が得られる。さらには、いくつかの着色剤は、メイクアップ組成物にフリーラジカルを生成させてしまうという欠点を有する。フリーラジカルは、メイクアップ後の色を変化させ、組成物の安定性を損ねる。フリーラジカルは、皮膚に存在すると、しわ、小じわ、及び皮膚の黄変といった、皮膚の老化の外観を促進させる。
【0005】
それゆえ、無機顔料のような高い安定性を有する一方で、有機レーキのように色の彩度を上げることが可能な化粧品処方が求められている。
【0006】
昆虫の複眼は、個眼からなる。個眼は滑らかな表面を有するが、蛾及び蝶といった数種の昆虫では、これらは、小さく、わずかに先細状となる突起に覆われている。これらの構造体は、直径高さとも約200nmであり、個眼の表面上に配列することで規則正しい亀甲模様を呈する。これらの構造体は、1962年、W.H.Millerらによって初めて、夜行性の蛾において観察された(非特許文献1)。このような構造体は、例えば、非特許文献2のFig.7に示されている。
【0007】
このような構造体を有する種は、夜行性の傾向があるため、利用し得る光を可能な限り吸収することが重要である。このような突起物の機能により、個眼表面の光の反射が低下し、表面下のレセプター細胞の光吸収が促進されると考えられる。大部分の昆虫の外骨格と同様に、各々の個眼の表面はキチンからなる。キチンは、屈折率1.55であり、空気(1.00)よりも高い屈折率を有する。
【0008】
突起物は、屈折率を空気から個眼へと穏やかに推移させることにより機能する。個眼に入射するそれぞれの個々の光子が、突起物のより細い先端に接触し、空気よりもわずかに高いだけの効果的な屈折率を作り出す。突起物が底辺に近づき太くなるにつれて、表面の屈折率は純粋なキチンの屈折率に近づいていく。突起物のサイズと周期性が、吸収された光波長(<〜500nm)のそれよりも小さいので、それぞれの個々の光子がこの穏やかな推移に接触し、表面からの反射が減弱する。これは、“モスアイ原理”又は“モスアイ効果”として知られている。
【0009】
モスアイ構造は、多くの反射防止用途に適する。本発明の化粧配合品は、比較的安定的でありながら、光吸収を増加させ、色の彩度を向上させ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Bernhard C.G.and Miller W.H.“A corneal nipple pattern in insect compound eyes,”Acta Physiol.Scand.1962;56:385−386
【非特許文献2】Vukusic,et al.,Nature 2003,424:852−856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、生体表面の外観を改善するのに効果がある、有効量のナノ粒子マテリアル及び1又は2以上の顔料を、皮膜形成剤及び/又はワックスを含有する許容できるキャリアに含む組成物を提供することである。該組成物は、光透過、吸収、及び散乱をコントロールする。本発明のさらなる目的は、高い色の彩度を可能する化粧配合品を提供することである。該配合品が黒色である場合、本発明のさらなる目的として、光透過及び吸収を増加させ、光反射を減弱させ得る。
【0012】
本発明の他方の目的は、ナノ粒子マテリアル及び顔料を、許容できる媒材又はキャリアに含む組成物を製造する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、有効量のナノ粒子を含む組成物を提供することである。該組成物により、モスアイ効果で観察される視覚的効果を得ることができ、キャリアに1又は2以上の顔料を含むことにより、さらに皮膚において特有の視覚的効果を得ることができる。さらに他方の目的は、生体表面に組成物を適用することにより、生体表面の審美上及び自然の外観を向上させる方法を提供することである。該組成物は、有効量のナノ粒子を含むことにより、モスアイ効果で観察される視覚的効果を得ることができ、キャリアに有効量の1又は2以上の顔料を含むことにより、生体表面の審美上及び自然の外観を向上させ得る。該組成物は、ダメージを受け、又は年齢による老化、ホルモン分泌による老化、もしくは紫外線による老化といった皮膚科学的なサインの外観に適用され、小じわ、しわ、皮膚のたるみ、皮膚表面の欠点、及び染みなどを減弱させる。
【0014】
本発明の他方の目的は、組成物を生体表面に適用することにより、生体表面を美化し、デコレートする方法を提供することである。該組成物は、有効量のナノ粒子及び1又は2以上の顔料を、皮膜形成剤及び/又はワックスを含有するキャリアに含み、モスアイ効果で観察される視覚的効果を作り出すことができる。該組成物を生体表面に適用することにより、色を加え、皮膚表面の欠点を隠し、紫外線防止剤として機能し、及び皮膚表面を滑らかに見せる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明及びそれの均等物についての前述及びその他の目的及び利点は、有効量のナノ粒子と顔料、及びそれらの組み合わせを含有する組成物、ならびに生体表面の審美上の外観を向上させるために該組成物を局所適用するのに用いる方法により実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】反射防止効果を有する“モスアイ”表面の略図である。モスアイ構造のサイズは、180nmから240nmである。目には見えない表面での光波長の変化により、光の反射率が低下する。結果として、モスアイは黒色に見え、あらゆる方向からの光を吸収し得る。
【図2】反射率を示す(4システムにおける全反射(SCI)及び拡散反射(SCE):(1)カーボンブラック6.94%と疎水性シリカ2.78%;(2)カーボンブラック6.94%と疎水性ヒュームドシリカ2.78%;(3)カーボンブラック6.94%とヒュームドシリカ2.78%;及び(4)カーボンブラック7.14%)。各システムの組成物の組成は、表2に示す。図は、どのシリカを添加しても全反射(SCI−鏡面成分を含む)が減少したことを示す。
【図3】図2における4システムの吸収率を示す。図は、どのシリカを添加しても吸収率が増加したことを示す。表2に記載の各システムの反射率及び吸収率の値は、表3に示す。
【図4】反射率を示す(5システムにおける全反射(SCI)及び拡散反射(SCE):(5)カーボンブラック6.94%とヒュームドシリカ5.00%;(6)カーボンブラック6.94%とヒュームドシリカ7.00%;(9)カーボンブラック9.00%とヒュームドシリカ2.78%;(11)カーボンブラック9.00%とヒュームドシリカ5.00%;及び(4)カーボンブラック7.14%)。各システムの組成物の組成は、表2に示す。図は、ヒュームドシリカをカーボンブラックに加えることにより、全反射が減少したことを示す。
【図5】図4における5システムの吸収率を示す。図は、ヒュームドシリカをカーボンブラックに加えることにより、吸収率が増加したことを示す。
【図6A】図6Aは、3システムの吸収率示す。3システムはそれぞれ、ナノ粒子を含まないカーボンブラック4.00%のコントロール、カーボンブラック4.00%とシリカシェルナノ粒子4.00%、及びカーボンブラック4.00%とヒュームドシリカナノ粒子4.00%である。図は、ヒュームドシリカナノ粒子4.00%又はシリカシェルナノ粒子4.00%の何れか一方の添加により、吸収率が増加し、ルミネセンスが減少した結果、ナノ粒子を含まないカーボンブラックのコントロールに比して、コントラストが増強(より暗くなる)したことを示す。各システムの組成物の組成は、表5に示す。
【図6B】図6Bは、3システムのルミネセンス(L)データを示す。3システムはそれぞれ、ナノ粒子を含まないカーボンブラック4.00%のコントロール、カーボンブラック4.00%とシリカシェルナノ粒子4.00%、及びカーボンブラック4.00%とヒュームドシリカナノ粒子4.00%である。図は、ヒュームドシリカナノ粒子4.00%又はシリカシェルナノ粒子4.00%の何れか一方の添加により、吸収率が増加し、ルミネセンスが減少した結果、ナノ粒子を含まないカーボンブラックのコントロールに比して、コントラストが増強(より暗くなる)したことを示す。各システムの組成物の組成は、表5に示す。
【図7A】図7Aは、3システムの全透過率を示す。3システムはそれぞれ、ナノ粒子を含まないカーボンブラック4.00%のコントロール、カーボンブラック4.00%とシリカシェルナノ粒子4.00%、及びカーボンブラック4.00%とヒュームドシリカナノ粒子4.00%である。図は、ヒュームドシリカナノ粒子4.00%の添加により、透過率が増加し、全反射及び散乱反射が減少したことを示す。各システムの組成物の組成は、表5に示す。表5に記載の各システムの反射率及び吸収率の数値は、表6に示す。
【図7B】図7Bは、3システムの全反射及び散乱反射データを示す。3システムはそれぞれ、ナノ粒子を含まないカーボンブラック4.00%のコントロール、カーボンブラック4.00%とシリカシェルナノ粒子4.00%、及びカーボンブラック4.00%とヒュームドシリカナノ粒子4.00%である。図は、ヒュームドシリカナノ粒子4.00%の添加により、透過率が増加し、全反射及び散乱反射が減少したことを示す。各システムの組成物の組成は、表5に示す。表5に記載の各システムの反射率及び吸収率の数値は、表6に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前述の本発明の目的及び本明細書のその他の記載に基づき、本発明は、有効量のナノ粒子及び顔料を、皮膜形成剤及び/又はワックスを含有する許容できる媒材に含む組成物を提供する。該組成物により、モスアイ効果で観察される視覚的効果を得ることができ、生体表面の審美上の外観を向上させ得る。該組成物は、例えば、年齢による老化のプロセス、環境、又は先天的な欠陥によってダメージを受けた生体表面の外観を改善する。該組成物はまた、生体表面を美化し、及びデコレートする。該組成物を表面、例えば生体表面に適用することにより、吸収率を増加させ、透過率を増加させ、及び反射率を減少させ、表面の外観を改善する。本発明の該組成物を生体表面に毎日、又は自然な外観もしくは色の付加を所望するときに局所適用することにより、生体表面の審美上の外観を向上させ得る。生体表面には、限定されることなく、ケラチン組織、皮膚、毛髪、唇、まつげ、眉、及び爪が含まれる。
【0018】
本発明の該組成物は、生体表面に入射する光をコントロールすることで、隠蔽、不透明化、及びカバーを実現させる。本発明の該組成物には、透明又は半透明のナノ粒子が化粧品顔料とともに含まれる。化粧品組成物に顔料とともに含まれる該ナノ粒子は、生体表面への適用に適している。
【0019】
本明細書で使用される“ナノ粒子”という用語は、ナノメーターサイズの粒子を指し、その直径は、約1nm〜約999nmである。本明細書で使用される“ナノ粒子”という用語は、ナノメーターサイズの粒子、ナノクラスター、クラスター、粒子、小粒子、及びナノ構造のマテリアルを指す。
【0020】
許容できるキャリア中の有効量のナノ粒子マテリアルは、キャリアにおけるナノ粒子と顔料の皮膜形成剤及び/又はワックスに対する重量比、それぞれのナノ粒子の表面積、ナノ粒子の物理学的特性、及びナノ粒子の該顔料に対する重量比を含むファクターに依存する。該顔料、キャリア、及びナノ粒子は、光の拡散の特性をコントロールできるよう、それぞれ異なる屈折率を有し得る。該顔料の屈折率がナノ粒子マテリアルの屈折率よりも大きい場合、最適な水平光拡散が得られる。それぞれのナノ粒子のサイズは、吸収率を増加させ、反射率を減少させるために、可視光の波長より小さいのが好ましい。
【0021】
本発明の顔料は、好ましくは粒子サイズが約100nmから約10μmである。より好ましくは、顔料の粒子サイズが約100nmから約2μmである。本発明で用いられる無機顔料は、隠蔽、カバー、及び/又は着色のために、個人的なケア又は化粧品産業で一般的に使用されているものが好ましい。本発明のひとつの実施態様において、該顔料マテリアルは、約0.5μmであり、本発明の他方の実施態様においては、該顔料マテリアルは、約1.0μmである。顔料又はナノ粒子のサイズは、顔料又はナノ粒子の最も大きい直線の寸法(長さ)を表す。例示すると、球状の顔料のサイズは、直径で表され、球状のナノ粒子のサイズは、直径で表される。
【0022】
該顔料の屈折率は、約1.38から約3.52であり、より好ましくは、約1.40から約3.50;より好ましくは、約1.42から約3.40;より好ましくは、約1.60から約3.40である。約1.38から約3.52の屈折率を有する顔料は、限定されることなく、二酸化チタン(ルチル又はアナターゼ)、酸化亜鉛、及び酸化鉄を含む。種々のマテリアルの屈折率は、屈折計を用いて測定してもよい。屈折の原理に関する詳細は、Optics(Fourth Edition)(Eugene Hecht著、2002年)を参照にしてもよい。マテリアルの屈折率に関する詳細は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,86th Edition(2005−2006年)を参照にしてもよい。その内容は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0023】
ひとつの実施態様において、該組成物は、異なる屈折率を有する顔料の組み合わせからなる。本発明の他方の実施態様において、該組成物は、単一の顔料からなる。
【0024】
適する無機顔料には、限定されることなく、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、及びフェリックブルーを含む。適する有機顔料には、限定されることなく、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、アルミニウムレーキ、及びカーボンブラックを含む。本発明においては、所望の効果が得られる顔料マテリアルであれば、いかなるものをも用いることができ、一例を挙げると、酸化金属、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、及び酸化アルミニウムである。化粧品産業において典型的に用いられる顔料については、the Cosmetic Ingredient Dictionary(INCI)and Handbook,10th Edition(the Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association(CTFA)、2004年)を参照にしてもよい。
【0025】
ひとつの実施態様において、該組成物は、二酸化チタンを含む。他方の実施態様において、該組成物は、酸化鉄を含む。他方の実施態様において、該組成物は、カーボンブラックを含む。
【0026】
本発明に適する有機顔料及び無機顔料は、実質的には固体又は多孔質である。ひとつの実施態様において、該顔料の外表面は、実質的には固体であり、均一な外形を呈する。
【0027】
本発明において、モスアイで観察される、所望の視覚的効果を作り出すのに適したナノ粒子は、約1nmから約900nmのサイズ;より好ましくは約7nmから約700nmのサイズ;より好ましくは約10nmから約500nmのサイズである。本発明において、ナノ粒子の平均粒子サイズは、約10nmから約700nmのサイズ;より好ましくは約20nmから約500nmのサイズ;より好ましくは約30nmから約500nmのサイズである。本発明の種々の実施態様において、該ナノ粒子の平均粒子サイズは、約10nm、約20nm、約50nm、約75nm、約100nm、約125nm、約150nm、約175nm、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、約475nm、約500nmとなり得る。好ましくは、該ナノ粒子は、光の波長よりも短い直径を有する。そうすることで、それらが相互作用し、所望の効果を作り出し得る。
【0028】
本発明のひとつの実施態様において、該ナノ粒子は、該顔料のサイズよりも小さい。本発明の他方の実施態様において、該ナノ粒子は、該顔料とほぼ同じサイズである。本発明のさらなる他方の実施態様において、該ナノ粒子は、該顔料のサイズよりも大きい。
【0029】
本発明において、適したナノ粒子は、限定されることなく、ヒュームドシリカ、酸化アルミニウムといった酸化金属、ヒュームドアルミナ、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)といったナノ粒子ポリマー、ナイロン、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン、又はセルロース誘導体から作られるナノ粒子を含む。該ナノ粒子の屈折率は、約1.30から約3.50となり得る。本発明におけるひとつの実施態様において、該ナノ粒子は、約1.46の屈折率を有するヒュームドシリカである。ひとつの実施態様において、該組成物は、異なる屈折率を有するナノ粒子の組み合わせからなる。
【0030】
該組成物の該ナノ粒子は、吸収を増加させ、及び/又は可視光の散乱を改善することができる。化粧品顔料とナノ粒子マテリアルの屈折率の違いは、約0.01から約2.0であってもよい。本発明のひとつの実施態様において、該化粧品顔料とナノ粒子マテリアルの屈折率の違いは、約2.0である。本発明の他方の実施態様において、該化粧品顔料とナノ粒子マテリアルの屈折率の違いは、約1.0である。本発明の他方の実施態様において、該化粧品顔料とナノ粒子マテリアルの屈折率の違いは、約0.7である。本発明の他方の実施態様において、該化粧品顔料とナノ粒子マテリアルの屈折率の違いは、約0.5である。
【0031】
低い屈折率を有するナノ粒子とともに高い屈折率を有する顔料を含む組成物は、表面界面における光の方向に変化をもたらす。光吸収及び拡散を増加させ、光反射及び散乱を減少させる。その結果、光沢抑制効果、自然色又は付加色によるコントラスト効果、及びぼかし効果により高いカバー力を発揮する。本発明のひとつの実施態様において、該化粧品顔料の屈折率は、約2.02であり、本発明の他方の実施態様において、該顔料の屈折率は、約2.19である。
【0032】
本発明の該組成物における、該ナノ粒子の該顔料粒子に対する重量比は、約10.0:1.0から約1.0:10.0である。重量比は、ナノ粒子の該顔料粒子に対する割合で決まり、該組成物の屈折率に影響を及ぼす。本発明のひとつの実施態様において、該組成物のナノ粒子の顔料粒子に対する重量比は、約4.0:1.0である;本発明の他方の実施態様において、該組成物のナノ粒子の顔料粒子に対する重量比は、約1.0:4.0である;本発明の他方の実施態様において、該組成物のナノ粒子の顔料粒子に対する重量比は、約1.0:1.0である;本発明の他方の実施態様において、該組成物のナノ粒子の顔料粒子に対する重量比は、約1.0:1.4である;本発明のさらに他方の実施態様において、該組成物のナノ粒子の顔料粒子に対する重量比は、約1.0:1.8である;本発明のさらに他方の実施態様において、該組成物のナノ粒子の顔料粒子に対する重量比は、約1.0:3.0である。本発明の好ましい実施態様において、該組成物のナノ粒子の顔料粒子に対する重量比は、約1.0:1.4である。
【0033】
該キャリアにおけるナノ粒子と顔料粒子の皮膜形成剤及び/又はワックスに対する重量比は、約100.0:1.0から約1.0:5.0をとり得るが、より好ましくは約100.0:1.0から約1.0:1.75、より好ましくは約100.0:1.0から約1.05:1.0、より好ましくは約20.0:1.0から約1.05:1.0、より好ましくは約10.0:1.0から約1.05:1.0、より好ましくは約2.0:1.0から約1.05:1.0である。キャリアにおけるナノ粒子と顔料粒子の皮膜形成剤及び/又はワックスに対する重量比は、該組成物におけるナノ粒子の相対的な割合で決まる。それにより、モスアイで観察される視覚的効果を作り出すことができ、光吸収を増加させる。
【0034】
色空間(CIELABとして知られる)において、Lは明度、a及びbは色の方向性を示す。Lは、0(黒)から100(白)の値をとる。a及びb値は、xy座標面にプロットされる。例えば、+aは赤、−aは緑、+bは黄色、及び−bは青である。a平面の始点(中心)は、無彩色であり、(+/−)a又は(+/−)bが増加すると、色の彩度は増加する。本発明の配合品が色のついた顔料を含む場合、該配合品は色の彩度を増加させ、(+/−)a又は(+/−)b値が増加する。本発明の配合品が黒の場合、該配合品は光吸収を増加させ、光反射を減少させ、L値は減少する(例えば、より強い黒)。表1は、マスカラの処方例及びそれら各々のL値を示す。疎水性非晶質ヒュームドシリカを含有する該マスカラ配合品は、低いL値を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
本発明のひとつの実施態様において、キャリアにおけるナノ粒子と顔料粒子の皮膜形成剤及び/又はワックスに対する重量比は、約1.0:1.0であり;本発明の他方の実施態様において、キャリアにおけるナノ粒子と顔料粒子の皮膜形成剤及び/又はワックスに対する重量比は、約1.4:1.0である。本発明のひとつの実施態様において、キャリアにおけるナノ粒子と顔料粒子の皮膜形成剤及び/又はワックスに対する重量比は、約1.7:1.0であり;本発明の他方の実施態様において、キャリアにおけるナノ粒子と顔料粒子の皮膜形成剤及び/又はワックスに対する重量比は、約2.0:1.0である。
【0037】
本発明の組成物に適した皮膜形成剤は、限定されることなく、スルホポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールポリマー、アクリル樹脂、シリコーンアクリレートポリマー(例えば、信越化学より入手可能)、ポリビニルピロリドン、高分子量シリコーン、オルガノシロキサン、ポリウレタン、疎水性アクリレートコポリマー、及びその他当業者に知られる皮膜形成剤(例えば、WO03/105790で開示されている皮膜形成剤)を含む。該皮膜形成剤は、該組成物の全重量中、約0.01重量%から約20重量%含むのが好ましい。ひとつの実施態様において、該皮膜形成剤は、ポリマーである。ひとつの実施態様において、該皮膜形成剤は、シリコーンアクリレートコポリマーである。
【0038】
本発明のひとつの実施態様において、該皮膜形成剤は、1もしくは2以上のワックス、ガム、又はこれらの混合物を含む。適したワックスは、炭化水素ベースのワックス、フルオロワックス、及び/又は植物、鉱物、動物もしくは合成したシリコーンワックスを含む。特に、該ワックスの融点は、25℃より高く、好ましくは、45℃より高い。本発明の該組成物は、該組成物の全重量に対して、約0.1重量%から約20重量%のワックスを含み得る。該ガムは、一般的に高分子量のポリジメチルシロキサン(PDMSs)、セルロースガム、又はポリサッカライドである。半個体状の該マテリアルは、一般的に炭化水素ベースの化合物であり、限定されることなく、ラノリン及びこれらの誘導体、又はPDMSsが例示される。本発明の該組成物は、該組成物の全重量中、約0.1重量%から約20重量%のガムを含んでいてもよく、典型的には、約0.5重量%から約10重量%のガムを含んでいてもよい。
【0039】
本発明の組成物の該ナノ粒子の表面積は、約20m/gから約700m/g、より好ましくは約50m/gから約500m/g、より好ましくは約70m/gから約400m/gをとり得る。ナノ粒子の表面積は、該組成物における光の多重散乱に影響を及ぼす。
【0040】
本発明の該組成物は、特定量の顔料、ナノ粒子、事前に溶媒に混合してあるキャリア、1または2以上の皮膜形成剤及び/又はワックス、ならびに所望の他の物質を組み合わせることにより調製され得る。これらの成分は、均一な混合物にするために、十分な時間、高速のシャーブレードミキサーを用いて混合される。混合時間と化合物を加える順番は、組成物の所望の該成分により変化する。
【0041】
本発明の該組成物は、顔料の種類に関わらず、用いる顔料により色の彩度を上昇させることができる。したがって、本発明の該組成物は、有機レーキと同様、有機顔料により色の彩度を上昇させることができる。このような組成物は、通常は有機顔料の作用に基づき色の彩度を上昇させるという利点を有するが、無機顔料のような安定性をも有するだろう。
【0042】
本発明の組成物に顔料を添加しない場合、該組成物は、光透過を増加させ、該組成物を適用した生体表面の色の彩度を上昇させるであろう。このような本発明の組成物の態様においては、生体表面の自然色を向上させるのに有用である。本発明の組成物に顔料を添加しない場合、キャリアにおけるナノ粒子の皮膜形成剤及び/又はワックスに対する重量比は、約100.0:1.0から約1.0:5.0、より好ましくは、約20.0:1.0から約1.05:1.0、より好ましくは、約10.0:1.0から約1.05:1.0、より好ましくは、約2.0:1.0から約1.05:1.0をとり得る。
【0043】
モスアイにおいては、直径500nm以下の円錐形の突出構造の間に光が入り込む(図1)。本発明の組成物は、屈折率が低いナノ粒子を含み得る;本発明の組成物は、モスアイにおいて観察される視覚的効果を作り出すことができる、目に見えない光波長サイズのナノ粒子を含むのが好ましい。
【0044】
特定の理論又はメカニズムに縛られることを望むものではないが、本発明の組成物を生体表面の層に適用すると、該ナノ粒子が外表層(生体表面に近接する表面とは反対側の表面)上で凝集すると考えられる。このような凝集が起こった場合、外表層において、モスアイの表層と形態学に同様の表層を生じることになる。外表層における該ナノ粒子の凝集は、キャリアにおけるナノ粒子と顔料の皮膜形成剤及び/又はワックスに対する重量比に依存する。本明細書に記載の特定の重量比の場合、入射する光は、本発明の組成物の該ナノ粒子に当たる。入射する光が該ナノ粒子に当たると、光は吸収及び散乱され、光反射率が低下すると考えられる。
【0045】
ナノ粒子のデザイン及び選択によっては、全内部反射の臨界角よりも入射角を大きくし、ナノ粒子と顔料の界面の光拡散を増加させ得る。低い屈折率を有するナノ粒子を用いることで、色を向上させるとともに、高いカバー力が実現する。高い屈折率を有する顔料とともに、低い屈折率を有するナノ粒子を含有する組成物を皮膚に適用することで、光透過が増加し、より自然な外観をもたらすことができる。
【0046】
本発明の組成物の利点は、限定されることなく、化粧品として許容できる顔料及びキャリア用いることで、簡便に色を向上させることを含む。
【0047】
本発明の組成物のナノ粒子が、例えば約100nm又はそれ以下に小さい場合、皮膜及びコーティングが形成され得る。これは、モスアイで観察される視覚的効果を作り出すのに加えて、紫外線(UV)プロテクト効果をももたらし得る。該ナノ粒子の他方の利点としては、油、皮脂、及び水分を吸収し得ることである。これらの特性は、化粧品として及び皮膚科学的な配合品又は組成物において、付加的な利益をもたらし、生体表面の審美上及び自然の外観を向上させる。
【0048】
本発明の組成物は、顔料又は染料の色を向上させることにより、生体表面の審美上及び自然の外観を向上させるという視覚的特性を有する。本発明の組成物を生体表面に適用することにより、ぼかし効果、光透過増加効果、及び光散乱減少効果が得られる。その結果、年齢による老化、紫外線による老化、ホルモン分泌による老化、及び/もしくは光線による老化に基づく皮膚科的なサインの外観を低減し;小じわ及び/もしくはしわの外観を低減し;顔の小じわ及びしわ、顔の頬、額のしわ、目の間の垂直線のしわ、目の上の水平線のしわ、口の周りのしわ、マリオネットライン、特に深いしわもしくはひだの外観を低減し;小じわ及び/もしくはしわの外観及び/もしくは深さを低減し;眼窩下のしわ及び/もしくは眼窩周囲のしわの外観を改善し;目尻のしわの外観を低減し;若返り及び/もしくは回復しつつある皮膚の外観を向上させ、皮膚の老化の外観を低減し;皮膚の脆弱性を表す外観を低減し;グリコサミノグリカン及び/もしくはコラーゲンの喪失による外観を低減し;エストロゲンのアンバランスによる外観を低減し;皮膚の萎縮による外観を低減し;皮膚の色素過剰による外観を低減し;皮膚の変色による外観を低減し;皮膚のトーン、輝き、透明度、及び/もしくは張りの外観を改善し;皮膚のたるみの外観を低減し:皮膚の堅さ、膨らみ、柔軟性、及び/もしくは柔らかさを表す外観を改善し;プロコラーゲン及び/もしくはコラーゲン生成物よる外観を改善し;皮膚のきめ及び/もしくは再組織化の外観を改善し;皮膚バリアの修復、及び/もしくはその機能による外観を改善し;皮膚の輪郭の外観を改善し;皮膚の輝き及び/もしくは明るさの低下による外観を改善し;疲労及び/もしくはストレスによる皮膚科学的なサインの外観を改善し;環境的なストレスによる外観を改善し;細胞の老化による外観を改善し;皮膚の乾燥よる外観を改善し;皮膚の伸縮性及び/もしくは弾力性の外観を改善し;微小循環の外観を改善し;セルライト形成による外観を改善し;又はこれらの組み合わせを改善する。
【0049】
本発明の他方の実施態様において、本発明は、生体表面の審美上及び自然の外観を向上させる方法に関する。該方法は、生体表面に適用することを含み、該生体表面は、限定されることなく、ケラチン組織、皮膚、毛髪、及び爪を含む。本発明の組成物は、本明細書に記載するところの特徴及び特性を有し、有効量の該組成物を適用することで、生体表面の審美上又は自然の外観を向上させる。
【0050】
該生体表面は、化粧品、個人用ケア製品、皮膚科学的組成物、及び薬学的組成物が局所適用される、いかなる表面をも含む。該生体表面は、限定されることなく、皮膚、唇、毛髪、爪などを含む。皮膚に適用される該組成物は、年齢に伴う老化、変色、慢性的な及び累積した生体表面へのダメージ、ならびに表面の欠点をカモフラージュすることで、皮膚の審美上の外観を改善し又は向上する。ケラチン表面又は粘膜に適用される該組成物は、該顔料により自然色及び付加色が向上されることで、審美上の外観を改善し、又は向上させる。
【0051】
本発明の実施態様は、モスアイにおいて観察される視覚的効果を作り出すことができる組成物中のナノ粒子が、生体表面の欠点をカモフラージュし、及び、生体表面に色を付加し、彩度を上げることができる、という発見に関する。本発明の組成物の視覚的特性により、生体表面の欠点をカモフラージュし、ならびに色及び影をつけて彩度を上げることが可能となる。それにより、生体表面の審美上及び自然の外観を向上させることができる。本発明の組成物の視覚的特性により、生体表面を美化し、及びデコレートすることが可能となる。
【0052】
本発明のひとつの実施態様は、皮膚の適用範囲に特許請求の範囲に記載の組成物を適用する方法に関する。該組成物は、好ましくは、一日のうちユーザーが好む回数、皮膚に局所適用され、皮膚の適用範囲にとどまる。皮膚の該適用範囲は、限定されることなく、顔、首、足、大腿部、頭皮、及び身体全体を含む。局所適用組成物は、好ましくは、前述のナノ粒子と顔料とを組み合わせて含み、皮膚の化粧上及び/又は審美上の外観、特に老化及び/又は炎症による皮膚の外観を改善する。
【0053】
本発明の該組成物は、皮膚、唇、毛髪、及び爪を含む生体表面の審美上及び自然の外観を向上させるのに有用であり、好ましくはユーザーの必要に応じて何度でも生体表面に局所適用される。本発明の該組成物はまた、キャリア又は媒材に加えて、一例を挙げると、老化、炎症、及び生体表面の変性に基づく医学的及び/又は化粧上のコンディションを低減させ、減弱させ、又はカモフラージュさせるのに有用である有効成分を含んでいてもよい。本明細書で記載の該コンディションは、一般的に、限定されることなく、皮膚科学的な老化(年齢による老化、ホルモン分泌による老化、及び/又は光線による老化)、皮膚炎、皮膚及び毛髪の脆弱化、多毛症、酒さ、皮膚の染み、敏感肌、色素沈着又は低色素沈着、薄皮、荒れ、角化症、皮膚の萎縮、しわ、小じわ、過形成、線維症、ならびにこれらの組み合わせを含む。本発明の有効成分はまた、全体的な健康、生命力、コンディション及び皮膚の審美上の外観を向上させ得る。
【0054】
本発明の組成物はまた、抗酸化剤、抗炎症剤、サンスクリーン剤、メイクアップ用を含む化粧品、ならびにしわ、小じわ、及び皮膚のたるみなどの老化による皮膚科学的なサインを低減する製剤といった、所望の特性を有する局所適用配合剤であってもよい。また、本発明によれば、組成物は種々の製品形態により製造され得る。該組成物は、クリーム、ローション、モイスチャー剤、ゲル、トナー、美容液、スプレー、泡、パウダーなど、特に局所適用及び局所投与に適した形態のデリバリーシステムにより調製され得る。
【0055】
本発明の該組成物は、好ましくは著しい刺激を与えることなく、局所投与され、又はターゲットにデリバリーされる。本発明の該組成物は、正常、乾燥、又はオイリー、好ましくは乾燥敏感肌、及び老化肌といったすべてのタイプの皮膚に適している。特定の実施態様において、該組成物は、乾燥肌に適している。該組成物は、皮膚の自然の及び審美上の外観を向上させるのに十分な期間、皮膚に適用される。該組成物は、限定されることなく皮膚、唇、及び毛髪を含む生体表面に、1日1回、2回、又は3回以上適用してもよい。
【0056】
該局所適用組成物は、ほかの添加物もしくは物質を含み、及び/又は適用後に作用部位に到達し、もしくはとどまるように、より特化して改良されたリポソームに封入されて製造されてもよい。本発明の実施態様における該組成物は、前述のコンディションもしくはそれらの組み合わせの少なくとも1つをカモフラージュし、又は改善することにより、審美上の外観を向上する。
【0057】
本発明の該組成物は、このような組成物の慣習的な適用テクニックにより、本明細書に記載のように局所適用され得る。局所適用される該化粧品組成物、該皮膚科学的組成物、又は該薬学的組成物は、好ましくは1日1回又は複数回適用される。該化粧品組成物は、好ましくは顔及び首に適用され、審美的改善を必要とする範囲の皮膚にも適用され得る。該化粧品組成物は、皮膚の適用範囲にとどまり、好ましくは除去又は洗い流されない。慣習的及び一般的に行われているテクニックは、クリーム、ローション、ゲル、美容液、軟膏、メイクアップ化粧品、サンスクリーン組成物などを皮膚に適用することを含む。該化粧品組成物は、好ましくは生体表面より離れたところから局所適用され、適用形態としては、スプレーも想定される。
【0058】
本発明の該組成物は、生きている哺乳類の組織(ヒトの組織を含む)、又はその合成同等物に、実質上、ユーザーに生理的な副作用を呈することなく、接触させるのに適している。本発明で採用される組成物は、化粧上及び/又は皮膚科学的に適する形態で供給され得る。好ましくは、無水もしくは水性ベースのローション、又はクリーム、及びスプレー可能な液状の形態をとり得る。本発明の該組成物において、他の適する化粧品製品の形態は、限定されることなく、例えば、エマルション、クリーム、香油、グロス、ローション、フォーム、マスク、美容液、トナー、軟膏、ムース、パッチ、ポマード、液剤、スプレー、ワックスベースのスティック、又はウェットティッシュ(towelette)を含む。加えて、本発明で言及される該組成物は、混合可能な化粧品として許容可能な1又は2以上のアジュバントを含み得る。該アジュバントは、当業者に通常使用され、及び知られているもので、香料、エモリエント、保湿剤、防腐剤、ビタミン剤、キレート剤、増粘剤、エゴマ油、又はエゴマ種子油など、アロエ、カモミールといった他の植物、及び前述の成分が例示される。
【0059】
本発明の該ナノ粒子と顔料は、化粧的、皮膚科学的、生理学的、及び薬学的に許容可能な媒材、溶媒、希釈剤、又はキャリアに含まれ得、生体表面の老化及び炎症による皮膚科学的なサインを低減し、改善し、又は防止するのに有用である。局所適用のひとつの態様において、本発明の該組成物は、皮膚、唇、毛髪及び爪を含む哺乳類の生体表面に適する溶媒(媒材、希釈剤、又はキャリア)を含む。該組成物は、水相、油相、アルコール、水/アルコールベースの液剤、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、水中水滴型エマルション、油中水滴型エマルション、水中油滴型エマルション、水/油/水三相のエマルション(クリームもしくはゲルの特性を有する)、マイクロエマルション、又はエアロゾルの形態をとり得る。
【0060】
該水相は、1又は2以上の水溶性又は水分散性の成分の混合物であり、室温(25℃)で液体、半固体、又は固体となり得る。該媒材は、水又は水/アルコール媒材中で、懸濁、分散、又は溶解の形態をとり得、増粘剤又はゲル化剤を含んでいてもよい。当業者は、通常の技術常識に基づき、該成分を含む最適な化粧品の形態及びその調製方法を選択し得る。
【0061】
ひとつの実施態様において、該組成物は、水、又は水及び少なくともひとつの親水性有機溶媒の混合物を含有し得る、水相を含み得る。該親水性有機溶媒は、特に、アルコール、とりわけ、炭素数2〜5の直鎖モノアルコール又は分岐モノアルコール(例えば、エタノール又はプロパノール)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、ソルビトール、グリセロール、ジグリセロール、パンテノール、又はポリエチレングリコール)、及びこれらの混合物を含む。該水相は、該組成物の全重量中、約0.5重量%から約99.99重量%で含まれ得る。
【0062】
他方の実施態様において、本発明の該組成物がエマルションの形態である場合、該組成物はまた、付加的に界面活性剤を含み得る。該界面活性剤は、該組成物の全重量中、好ましくは約0.1重量%から約30重量%、特に好ましくは約1重量%から約20重量%で含まれ得る。
【0063】
本発明のさらなる実施態様において、該組成物はまた、両親媒性のポリウレタン、ポリアクリル酸のホモポリマーもしくはコポリマー、ポリエステル、又は炭化水素ベースの樹脂といった、増粘ポリマーを含み得る。ポリマーの一例を挙げると、ビニルアセテートといった、炭素数1〜18の脂肪酸のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、及びメタクリル酸ブチルといった、炭素数1〜18のアルコールのアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル;ならびにエチレン、イソブチレン、スチレン、及び脂肪族ジエン(ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレンを含む)を含むモノエチレン系及びジエチレン系不飽和炭化水素のホモポリマー又はポリマーである。
【0064】
さらに本発明のひとつの実施態様は、油溶性もしくは油分散性成分(室温(25℃)では液体である)を含有する油相、及び/又は油状もしくはろう状物質(室温では固体であり、ワックス、半固形物、ガム、及びこれらの混合物が例示される)を含む組成物に関連する。該油相はまた、有機溶媒を含み得る。
【0065】
適する油性マテリアルは、室温で液体であり、例えば、ペルヒドロスクワレンといった、動物由来の炭化水素ベースの油;炭素数4〜10の脂肪酸の液状のトリグリセリド(例えば、ヘプタン酸トリグリセリドもしくはオクタン酸トリグリセリド)、又はひまわり油、コーン油、大豆油、ブドウ種子油、ヒマシ油、アボカド油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ホホバ油といった油で例示される炭化水素ベースの植物油;液状パラフィン及びその誘導体、ワセリンといった鉱物の又は合成した直鎖又は分岐の炭化水素;合成したエステル及びエーテル、特に脂肪アルコールのエステル;例えば、イソプロピルミリステート、2−エチルヘキシルパルミテート、2−オクチルドデシルステアレート、イソステアリルイソステアレート;イソステアリルラクテート、オクチルヒドロキシステアレート、オクチルドデシルヒドロキシステアレート、脂肪アルコールのヘプタノエート、オクタノエート、及びデカノエートといった、水酸基を有するエステル;プロピレングリコールジオクタノエート、ネオペンチルグリコールジヘプタノエート、ジエチレングリコールジイソノナノエート、及びペンタエリトリトールエステルといったポリオールエステル;オクチルドデカノール、2−ブチルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコールといった炭素数12〜26の脂肪アルコール;部分的に炭化水素ベースのフルオロ油及び/又はフルオロシリコーン油;シクロメチコン及びジメチコン、フェニル基が付加された、例えば、フェニルトリメチコンといった直鎖又は環状のポリジメチルシロキサン(PDMSs)(室温では液体状又は半固形状である)、シロキサン、ならびにこれらの混合物で例示される揮発性又は不揮発性のシリコーン油を含んでいてもよい。これらの油は、油相重量で、約0重量%から約90重量%、好ましくは約1重量%から約80重量%を含んでいてもよい。
【0066】
本発明の該組成物の油相はまた、1又は2以上の化粧品として許容可能な有機溶媒を含み得る。これらの溶媒は、該組成物の全重量中、約0.1重量%から約80重量%、好ましくは約1重量%から約50重量%含まれ、脂溶性有機溶媒、両親媒性有機溶媒、及びこれらの混合物からなる群より選択され得る。本発明の該組成物に用いるのに適した溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、又は酢酸2−メトキシエチルといった酢酸エステル;酢酸イソプロピル;トルエン、キシレン、p−キシレン、ヘキサン又はヘプタンといった炭化水素;少なくとも炭素数3のエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
本発明の該組成物はさらに、化粧品の分野において一般的に用いられる成分を含んでいてもよい。これらの成分は、保存料、水相増粘剤(ポリサッカライドバイオポリマー、合成ポリマー)及び油相増粘剤、香料、親水性及び脂溶性活性剤、ならびこれらの混合物を含む。これら種々の成分は、所望の効果を得るために化粧品の分野では一般的に用いられる量で含まれ、該組成物の全量中、典型的には約0.1重量%から約20重量%含まれる。これらの成分の性質及び量は、本発明の該組成物の製品に適合する。
【0068】
本発明の該組成物はまた、粒子相を付加的に含んでいてもよく、該組成物の全量中、典型的には約0.1重量%から約30重量%、好ましくは約0.5重量%から約20重量%含まれる。該粒子相には、化粧品組成物に用いられる真珠光沢剤及び/又は増量剤を含んでいてもよい。適する真珠光沢剤は、二酸化チタン又は酸化鉄でコートされたマイカを含む。
【0069】
増量剤は、該組成物の全量中、典型的には約0.1重量%から約30重量%、好ましくは約0.5重量%から約15重量%含まれる。適する増量剤には、タルク、シリカ、ステアリン酸亜鉛、マイカ、カオリン、ナイロン(特に、オルガソル)パウダー、ポリエチレンパウダー、テフロン(登録商標)、澱粉、窒化ホウ素、Expancel(登録商法)(Nobel Industrie;スウェーデン)といったコポリマーミクロスフェア、Polytrap(登録商標)(Dow Corning,Inc.;ミッドランド、MI)、及びシリコーン樹脂微粒子(Tospearl(登録商標);東芝GEシリコーン;日本)が含まれる。
【0070】
さらに局所適用のための該組成物は、皮膚の保護ケア組成物の形態をとり得る。該皮膚は、好ましくは顔、首、手、足又は身体の他の部分を含む。一例を挙げると、日中用クリームもしくはローション、夜用クリームもしくはローション、モイスチャー剤、軟膏(salves)、サンスクリーンクリーム、ローションもしくは油、軟膏(ointments)、ゲル、ボディミルク、メイクアップ料(ファンデーション、ブロンザー)、タンニング組成物、脱毛剤、パッチ、乳化剤、又はスティックもしくはディッシュとして流し込まれもしくは成形された固体である。本発明の組成物は、理想的にはファンデーション製品に用いられる。それは、カモフラージュ及びぼかし効果が高く、自然な外観をもたらすことができるからである。
【0071】
他方の実施態様において、本発明の該局所適用組成物はまた、皮膚浸透促進剤、皮膚軟化剤、皮膚プランパー剤、ディフューザー、サンスクリーン剤、角質除去剤、抗酸化剤のうちの1又は2以上を含み得る。これら及び他の適する化粧品成分に詳細については、International Cosmetic Ingredient Dictionary(INCI)and Handbook,10th Edition,pp.2177−2299(the Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association(CTFA),2004年)を参照にしてもよい。その内容は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0072】
皮膚軟化剤は、皮膚を滑らかにし、小じわ及び粗いしわの外観を軽減し、ならびに潤いを与えるといった機能的恩恵をもたらす。皮膚軟化剤の一例を挙げると、イソプロピルミリステート、ペトロラタム、イソプロピルラノレート、シリコーン(例えば、メチコン、ジメチコン)、油、鉱物油、脂肪酸エステル、又はこれらの混合物である。該皮膚軟化剤は、該組成物の全量中、好ましくは約0.1重量%から約50重量%含まれる。
【0073】
皮膚プランパー剤は、皮膚のコラーゲンを亢進させる。適する皮膚プランパー剤の一例として、好ましくはパルミトイルオリゴペプチドが挙げられる。他の皮膚プランパー剤として、コラーゲン及び/又はグリコサミノグリカン(GAG)亢進剤が挙げられる。該皮膚プランパー剤は、該組成物の全量中、好ましくは約0.1重量%から約20重量%含まれる。
【0074】
該ナノ粒子及び顔料に加えて、ディフューザー又はソフトフォーカスマテリアルが含まれ得る。これらは、皮膚表面の視覚的特性を変化させ、例えば、小じわ及びしわを視覚的にぼかし、及びやわらげる効果を有する。本発明において用いられ得るディフューザーの例としては、限定されることなく、窒化ホウ素、マイカ、ナイロン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリウレタンパウダー、セリサイト、シリカ、シリコーンパウダー、タルク、テフロン(登録商標)、二酸化チタン、酸化亜鉛又はこれらの混合物が含まれる。該ディフューザーは、該組成物の全量中、好ましくは約0.01重量%から約20重量%含まれる。
【0075】
サンスクリーン剤は、紫外線によるダメージから皮膚を保護する。本発明の実施態様においては、該サンスクリーン剤は、単独又は組み合わせで使用することにより、UVA及びUVBの両方から保護し得る。本発明の組成物に用いられる該サンスクリーン剤は、アボベンゾン、桂皮酸誘導体(例えば、オクチルメトキシシナメート)、オクチルサリチレート、オキシベンゾン、メソ多孔性ではない二酸化チタン、酸化亜鉛、又はこれらの混合物を含む。該サンスクリーン剤は、該組成物の全量中、約1重量%から約30重量%含まれ得る。サンスクリーン剤を添加することで、紫外線から皮膚を保護する。上述のとおり、100nm又はそれ以下のナノ粒子を用いることによっても、UV保護効果が得られ得る。
【0076】
本発明の組成物がサンスクリーン剤を含有する場合、付加的に皮膚の審美上の外観が改善される。該改善には、日焼けによる炎症を低減させ、日焼けによる黒化を低減させ、及び日焼けによる発赤を減弱させるといった作用が少なくともひとつ含まれる。
【0077】
本発明のひとつの実施態様において、組成物はまた、1又は2以上の角質除去剤を含み得る。該組成物に用いられる、適する角質除去剤の例としては、アルファヒドロキシ酸(AHA);過酸化ベンゾイル;ベータヒドロキシ酸;ピルビン酸、2−オキソプロパン酸、2−オキソブタン酸、及びオキソペンタン酸といったケト酸;米国特許5,847,003及び5,834,513に記載のオキサ酸(oxa acids)(その内容は、本明細書に参考として組み込まれる);サリチル酸;尿素;又はこれらの混合物が挙げられる。好ましい角質除去剤としては、3,6,9−トリオキサウンデカン二酸、グリコール酸、乳酸、又はこれらの混合物が挙げられる(INCI p.2205参照)。
【0078】
本発明の組成物が角質除去剤を含有する場合、該角質除去剤は、該組成物の全量中、約0.1重量%から約30重量%、好ましくは約1重量%から約15重量%、より好ましくは約1重量%から約10重量%含まれる。
【0079】
抗酸化剤は特に、皮膚のフリーラジカルを捕捉することで、環境的な攻撃から皮膚を保護する。本発明の組成物に用いられ得る抗酸化剤を例示すると、アスコルビン酸及びその誘導体/エステルといった、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物;ベータカロテン;カテキン;クルクミン;フェルラ酸誘導体(例えば、フェルラ酸エチル、フェルラ酸ナトリウム);没食子酸誘導体(例えば、没食子酸プロピル);リコピン;還元酸;ロスマリン酸;タンニン酸;テトラヒドロクルクミン;トコフェロール及びその誘導体;尿酸;又はこれらの混合物が挙げられる。他の適する抗酸化剤としては、グルタチオン、リポ酸、チオグリコール酸、及びその他のスルフヒドリル化合物といった、1又は2以上のチオール基(−SH)を有する化合物(還元型又は非還元型)が挙げられる。該抗酸化剤は、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩、亜硫酸塩といった無機物、又はその他の硫黄原子を含む無機塩及び酸であってもよい。該抗酸化剤は、該組成物の全量中、好ましくは約0.001重量%から約10重量%、より好ましくは約0.01重量%から約5重量%含まれ得る(INCI p.2184照)。
【0080】
本発明のひとつの実施態様において、該組成物はまた、麻酔剤、エリスロマイシン及びテトラサイクリンといった抗生剤、サリチル酸、抗アレルギー剤、抗真菌剤、防腐剤、抗刺激剤、抗炎症剤、抗菌剤、鎮痛剤(analgesics)、一酸化窒素合成酵素阻害剤、防虫剤、タンニング剤、皮膚浸透促進剤、皮膚冷却剤、キレート剤、染料を含む着色剤、処理されずもしくは表面を化学的に処理されることにより湿潤性もしくはその他の特性を改善したレーキ及び顔料、鎮痛剤(demulcents)、皮膚軟化剤、乳化剤、香料、保湿剤、潤滑油、皮膚保護剤、モイスチャー剤、pH調整剤、防腐剤、安定化剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、粘度調整剤、ビタミン、又はこれらの組み合わせといった化粧品及び薬学的な活性剤、増量剤、成分、又はアジュバントを1又は2以上含んでいてもよい。これら種々の物質の量は、所望の効果を得るために、化粧品又は医薬品の分野では一般的に用いられている量であり、該組成物の全量中、約0.01重量%から約20重量%含まれ得る。
【0081】
本発明の該組成物に含有する活性剤は、限定されることなく、しわ及び/又は小じわの処置に効果を奏する成分を含む。加えて、剥離効果、角質除去効果、もしくはスクラブ効果を有する角質溶解剤、又は皮膚の角質層を柔らかくする作用を有する活性剤をも含み得る。しわ及び/又は小じわの処置に効果を奏する他の成分としては、ヒドロキシ酸及びレチノイドが挙げられる。これらの剤は、例示すると、該組成物の全量中、約0.01重量%から約5重量%含まれ得る。
【0082】
適するヒドロキシ酸は、例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、2−ヒドロキシアルカン酸、マンデル酸、サリチル酸、及び5−n−オクタノイルサリチル酸、5−n−ドデカノイルサリチル酸、5−n−デカノイルサリチル酸、5−n−オクチルサリチル酸、5−n−ヘプチルオキシサリチル酸、4−n−ヘプチルオキシサリチル酸といったそのアルキル誘導体、ならびに2−ヒドロキシ−3−安息香酸メチル、又は2−ヒドロキシ−3−オキシ安息香酸メチルといったそのアルコキシ誘導体を含む。
【0083】
本発明の該組成物の乳化剤は、該組成物の全量中、典型的には約0.01重量%から約30重量%、好ましくは約0.1重量%から約30重量%含まれる。しかし、すべての組成物に乳化剤を含む必要があるわけではない(例えば、INCI p.2276−2285参照)。
【0084】
適する増粘剤の一例としては、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボマー、アカシアガム、Sepigel 305(Seppic Co.(フランス)より購入可能)、及びケイ酸マグネシウムアルミニウムといった粘土が挙げられる(例えば、INCI p.2293−2299参照)。
【0085】
本発明の該局所適用組成物は、その有用性を向上させるべく、尿素、ピロリドンカルボン酸、アミノ酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリオール、及び吸水特性を有する他の化合物といった保湿剤を1又は2以上含んでいてもよい(INCI p.2244参照)。
【0086】
該局所適用組成物の一般的な活性及び低刺激性は、約pH3.5から約pH7.0、最も好ましくは約pH3.7から約pH5.6に調製(中性化)することで向上し得る。水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アルギニンもしくは他のアミノ酸、及び/又はトリエタノールアミンのうちの1又は2以上を用いて調製(中性化)するのが好ましい。
【0087】
レチノイドは、典型的には、限定されることなく、レチノイン酸(例えば、all−trans又は13−cis)及びその誘導体、レチノール(ビタミンA)及びレチノールパルミテート、レチノールアセテート、及びレチノールプロピオネートといったそのエステル、ならびにそれらの塩を含む。
【0088】
本発明の該ナノ粒子及び顔料は、化粧上又は皮膚科学的に許容可能な媒材、溶媒、希釈剤、又はキャリアに含まれ得る。本発明の組成物はさらに、当業者に知られている方法により製造され、エマルション、ゲル、クリーム、ローション、マスク、トナー、美容液、油、油中水滴型エマルション、水中油滴型エマルション、水/油/水三相のエマルション(クリーム又はゲルの特性を有する)、マイクロエマルション、軟膏、ペースト、スティック、ケーキ(cakes)、ペンシル、エアロゾル、エッセンス、及び他の局所適用化粧品の媒材といった化粧品組成物が提供される。本発明の局所適用化粧品は、リポソーム、ならびに局所用のパッチ、テープ、及びスプレーといったデリバリーシステムに組み込まれ得る。
【0089】
加えて、該組成物は、上述のようなイオン性及び/又は非イオン性脂質を含有する気泡分散体(vesicular dispersion)の形態をとり得る。このような組成物の適する用量は、当業者に一般的に用いられる知識及び技術により定められる。
【0090】
次に述べる実施例では、本発明を解説し、及び当業者が実施する方法を提供するために、本発明の特定の態様を記載する。本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本実施例は単に、本発明の理解を深めるための方法論及び本発明の種々の態様を提供するにすぎない。
【0091】
(実施例)
本実施例では、着色顔料を含有する組成物にナノ粒子をどれくらいの濃度で加えることで、モスアイで観察される視覚的効果を作り出すことができるかについて検討した。透過率、反射率、及び吸収率を測定するために、分光光度計(Color Eye 7000A,Gretag MacBeth社)を用いた(吸収率=100−(全透過率+SCI反射率))。
【0092】
ナノ粒子を含有する組成物は、スピードミキサーを用いて、シリコーンアクリレートコポリマー(KP−550,信越化学)(イソドデカン(IDD)がポリマー中40%含まれる)と混合した。溶液を、クリーン(光学的に透明/色の無い)なガラスプレートに流し込み、約125μmの厚さのウェットフィルムを得た。一晩乾燥させ、固形ベースで21−25μmの厚さのドライフィルムを得た。各々2サンプルずつ調製した。平均ルミネセンス(L)は、全反射(鏡面成分を含む−SCI)及び散乱反射(鏡面成分を除く−SCE)と同じサンプルエリアを用いて直接に測定した。各サンプルにおいて2つの異なるエリアで、つまり、サンプルごとに4データポイントで、データを測定した。データポイントの誤りを除去するために、Q−テストを行った。すべてのエラーバーは、±標準偏差で表示した。調製したサンプルの概要を、表1(前述)及び表2に示す。表1及び表2のサンプルでは、該着色顔料はカーボンブラック(D&C Black #2)を用いており、全組成物中の重量%の値が記載されている。
【0093】
図2では、表2に記載の組成物1、2、3、及び4(コントロール)の反射率(全反射(SCI)及び散乱反射(SCE))を示す。図2において、いかなる種類のナノ粒子を添加しても、散乱反射(SCE−鏡面成分を除く)は変化させずに、全反射(SCI−鏡面成分を含む)を減少させることが示された(誤差範囲内)。
【表2】

【0094】
図3では、表2に記載の組成物1、2、3、及び4(コントロール)の吸収率を示す。図2において、いかなる種類のシリカを添加しても、顔料のみ(組成物4)と比較して、吸収率が増加することが示された。
【0095】
図4では、表2に記載の組成物5、6、9、11、及び4(コントロール)の反射率(全反射(SCI)及び散乱反射(SCE))を示す。図4において、カーボンブラックにヒュームドシリカを添加することで、全反射及び散乱反射が減少することが示された。
【0096】
図5では、表2に記載の組成物5、6、9、11、及び4(コントロール)の吸収率を示す。図5において、カーボンブラックにヒュームドシリカを添加することで、吸収率が増加することが示された。
【0097】
表3では、表2で記載の全組成物の反射率及び吸収率を示す。
【表3】

【0098】
図2〜5では、色の彩度への影響及び光沢度減少効果は、ナノ粒子の含有量(重量%)に依存し、テストした種類のシリカでそれらがもたらされた一方で、シリカ(ナノ粒子)とカーボンブラック(顔料)の比を約1.0:1.4にすることで、吸収率が大幅に増加することが示された。
【0099】
表4では、ヒュームドシリカ(Aeroxide LE 3、ヒュームドシリカ、デグッサ)ナノ粒子を含有する本発明の組成物の3バッチ、及びナノ粒子を含有しないコントロールバッチの概要を記載する(それぞれの全組成は、表2に記載する)。表4では、組成物中にナノ粒子を添加することにより、吸収率が増加したことを示す。加えて、ナノ粒子と顔料の皮膜形成剤に対する重量比が増加するにつれて、反射率が減少したことを示す。
【表4】

【0100】
図6Aでは、カーボンブラック4.00%、ナノ粒子無しのコントロール(バッチ14)、カーボンブラック4.00%とシリカシェルナノ粒子4.00%(バッチ15)、カーボンブラック4.00%とヒュームドシリカナノ粒子4.00%(バッチ16)の3システム(表5のとおり調製した)の吸収率を示す。図6Bでは、図6Aの3システムのルミネセンス(L)のデータを示す。図6A、図6Bでは、ヒュームドシリカナノ粒子4.00%又はシリカシェルナノ粒子4.00%のいずれかを添加することで、カーボンブラックのコントロール(ナノ粒子無し)に比して、吸収率が増加し、ルミネセンスが減少した結果、コントラストが増強(より暗くなる)したことが示された。
【表5】

【0101】
表6では、表5のとおり調製される全組成物の反射率及び吸収率を記載する。
【表6】

【0102】
図7Aでは、カーボンブラック4.00%、ナノ粒子無しのコントロール(バッチ14)、カーボンブラック4.00%とシリカシェルナノ粒子4.00%(バッチ15)、カーボンブラック4.00%とヒュームドシリカナノ粒子4.00%(バッチ16)の3システムの全透過率を示す。図7Bでは、図7Aの3システムの全反射及び散乱反射のデータを示す。図7A、図7Bでは、ヒュームドシリカナノ粒子4.00%を添加することで、透過率が増加し、全反射及び散乱反射が減少したことを示す。
【0103】
本明細書において引用された、特許、特許出願、刊行物、アブストラクト、書籍、及び説明書を含む全ての文献は、本発明をより十分に記載するために、それぞれ個々の文献の記載全体が本明細書に記載されているものとみなされる。本明細書及び特許請求の範囲に記載されるすべての濃度は、特に言及のない限り、重量%で表される。
【0104】
これまでの記載は、本発明の態様を記載したにすぎないと理解される。当業者によって、本発明から逸脱することなく、種々の代替及び修正が加えられ得る。したがって、このような代替、修正、及び変更は、本発明の特許請求の範囲の範囲内として、本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数のナノ粒子
(b)顔料;及び
(c)皮膜形成剤又はワックスを含む化粧品又は医薬品として許容できるキャリアからなり、ナノ粒子と顔料の該皮膜形成剤又はワックスに対する重量比が、約100.0:1.0から約1.0:5.0であり;
ナノ粒子の顔料に対する重量比が、約10.0:1.0から約1.0:10.0であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
該ナノ粒子がヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、ポリ(メタクリル酸メチル)、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、及びセルロース誘導体、又はこれらの混合物からなる群より選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該顔料が二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、フェリックブルー、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、アルミニウムレーキ、及びカーボンブラック、又はこれらの混合物からなる群より選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該皮膜形成剤がスルホポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールポリマー、アクリル樹脂、シリコーンアクリレートポリマー、ポリビニルピロリドン、高分子量シリコーン、オルガノシロキサン、ポリウレタン、及び疎水性アクリレートコポリマー、又はこれらの混合物からなる群より選択される、ことを特徴とする皮膜形成剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該皮膜形成剤がシリコーンアクリレートコポリマーである、ことを特徴とする皮膜形成剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
該ワックスが植物、鉱物、動物又は合成由来の炭化水素ベースのワックス、フルオロワックス、及びシリコーンワックスからなる群より選択される、ことを特徴とするワックスを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
高分子量のポリジメチルシロキサン、セルロースガム、ポリサッカライド、ラノリン、又はこれらの誘導体であるガムをさらに含む、ことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
該ワックスの融点が25℃よりも高い、ことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
該ナノ粒子がヒュームドシリカであり、該顔料が二酸化チタン、酸化鉄、又はカーボンブラックである、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
該キャリアが疎水性であり、該ナノ粒子が疎水性である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
該キャリアが親水性であり、該ナノ粒子が親水性である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
該キャリアが疎水性であり、該ナノ粒子が親水性である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
該キャリアが親水性であり、該ナノ粒子が疎水性である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
該顔料の屈折率が約1.38から約3.50であり、該ナノ粒子の屈折率が約1.30から約3.50である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
該ナノ粒子の屈折率が約1.46である、ことを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
該ナノ粒子のサイズが約10nmから約900nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
該ナノ粒子の平均粒子サイズが約200nmである、ことを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
ナノ粒子の顔料に対する重量比が約4.0:1.0から約1.0:1.0である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
ナノ粒子の顔料に対する重量比が約10.0:1.0から約1.0:5.0である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
ナノ粒子の顔料に対する重量比が約1.0:1.4である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
ナノ粒子と顔料の皮膜形成剤又はワックスに対する重量比が約100.0:1.0から約1.05:1.0である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
ナノ粒子と顔料の皮膜形成剤又はワックスに対する重量比が約2.0:1.0から約1.4:1.0である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
ナノ粒子と顔料の皮膜形成剤又はワックスに対する重量比が約1.2:1.0から約1.0:1.3である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
生体表面に請求項1に記載の組成物を塗布することによる、前記組成物を使用する方法。
【請求項25】
皮膚に請求項1に記載の組成物を塗布することによる、皮膚の外観を改善する方法。
【請求項26】
前記生体表面に請求項1に記載の組成物を塗布することによる、生体表面の光反射を低下させる方法。
【請求項27】
(a)ヒュームドシリカナノ粒子
(b)カーボンブラック;及び
(c)皮膜形成剤のポリマーを含む化粧品又は医薬品として許容できるキャリアからなり、ヒュームドシリカナノ粒子とカーボンブラックの該皮膜形成剤のポリマーに対する重量比が、約100.0:1.0から約1.05:1.0であり;
ヒュームドシリカナノ粒子のカーボンブラックに対する重量比が、約4.0:1.0から約1.0:4.0であることを特徴とする組成物。
【請求項28】
ヒュームドシリカナノ粒子のカーボンブラックに対する重量比が約1.0:1.4であある、ことを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
該ヒュームドシリカナノ粒子のサイズが約100nmから約300nmである、ことを特徴とする請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
該ヒュームドシリカナノ粒子の平均粒子サイズが約200nmである、ことを特徴とする請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
該キャリアが疎水性であり、該ヒュームドシリカナノ粒子が疎水性である、ことを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
該キャリアが親水性であり、該ヒュームドシリカナノ粒子が親水性である、ことを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項33】
該キャリアが疎水性であり、該ヒュームドシリカナノ粒子が親水性である、ことを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項34】
該キャリアが親水性であり、該ヒュームドシリカナノ粒子が疎水性である、ことを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項35】
前記生体表面に請求項27に記載の組成物を塗布することによる、生体表面の光反射を低下させる方法。
【請求項36】
(a)平均粒子サイズが約200nmであるヒュームドシリカナノ粒子
(b)粒子サイズが約0.3μmから約300.0μmである顔料;及び
(c)皮膜形成剤のポリマー又はワックスを含む化粧品又は医薬品として許容できるキャリアからなり、ヒュームドシリカナノ粒子の屈折率が、約1.46であり;
ヒュームドシリカナノ粒子と顔料の皮膜形成剤のポリマー又はワックスに対する重量比が、約100.0:1.0から約1.05:1.0であり;
ヒュームドシリカナノ粒子の顔料に対する重量比が、約10.0:1.0から約1.0:5.0であることを特徴とする組成物。
【請求項37】
顔料のヒュームドシリカナノ粒子に対する重量比が、約4.0:1.0から約1.0:1.0である、ことを特徴とする請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
ヒュームドシリカナノ粒子と顔料の皮膜形成剤のポリマー又はワックスに対する重量比が、約2.0:1.0から約1.4:1.0である、ことを特徴とする請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
(a)粒子サイズが約10nmから約500nmであるヒュームドシリカナノ粒子
(b)二酸化チタン、酸化鉄、及びカーボンブラックからなる群より選択される顔料;及び
(c)シリコーンアクリレートコポリマーを含む化粧品又は医薬品として許容できるキャリアからなり、ヒュームドシリカナノ粒子と顔料のシリコーンアクリレートコポリマーに対する重量比が、約2.0:1.0から約1.4:1.0であり;
ヒュームドシリカナノ粒子の顔料に対する重量比が、約1.0:1.4であることを特徴とする組成物。
【請求項40】
顔料を約6.94重量%、ナノ粒子を約5.0重量%、皮膜形成剤を約6.94重量%、及び溶媒を含む組成物。
【請求項41】
該顔料がカーボンブラックからなり、該ナノ粒子がヒュームドシリカからなり、該皮膜形成剤がシリコーンアクリレートコポリマーからなる、ことを特徴とする請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記生体表面に請求項41に記載の組成物を塗布することによる、生体表面の光反射を低下させる方法。
【請求項43】
複数のナノ粒子、及び皮膜形成剤をナノ粒子の該皮膜形成剤に対する重量比が、約100.0:1.0から約1.0:5.0の範囲で含有する化粧品又は医薬品として許容できるキャリアを含む組成物を、生体表面に塗布することを含む、生体表面の自然色を向上させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2011−509256(P2011−509256A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541462(P2010−541462)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/085216
【国際公開番号】WO2009/088584
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(399130393)エイボン プロダクツ インコーポレーテッド (75)
【Fターム(参考)】