説明

色素、色素増感太陽電池及びその製造方法

【課題】高い変換効率、耐久性にも優れた色素増感太陽電池の構成材料となる色素の提供。
【解決手段】式1で表される色素。(1):ML(Mは長周期律表上の8〜10族の元素であり、L、L、及びLはそれぞれ特定の一般式で表される二座配位子である。)例えば、式(1a)の化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素、色素増感太陽電池及びその製造方法に関し、更に詳しくは、高い変換効率を示し、耐候性及び耐熱性等の耐久性にも優れた色素増感太陽電池の構成材料となる色素、色素増感太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー問題に対する関心が高まるとともに、光、特に太陽光を効率よく電気に変換することができる太陽電池の研究が盛んになってきた。例えば、アモルファスシリコンや多結晶シリコンを利用したシリコン系の太陽電池が普及し始めている。
【0003】
しかし、シリコン系太陽電池は、製造コストが高く、また、高純度シリコンを安価かつ大量に供給することが困難であるために、一般に広く普及するには限界があるといわれている。
【0004】
そこで、近年、色素増感太陽電池が関心を集めている。色素増感太陽電池は、発電効率が高いこと、製造コストが比較的低いこと、酸化チタン等の安価な酸化物半導体を高純度に精製することなく原料として使用できること、製造に際して使用する設備が安価で済むこと等、シリコン系太陽電池と比較して多くの利点を有している。従って、次世代の太陽電池として期待されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
色素増感太陽電池は、通常の電池と同様に、陽極と、陰極と、電解質とを備えているが、陰極が、透明導電性ガラスからなる基材と、その表面に形成された酸化物薄膜電極とを有しており、この酸化物薄膜電極に特定の色素が吸着されている構造に特徴がある。
【0006】
従来、酸化物薄膜電極に吸着させる色素としては、下記式(10)で表される色素(「N719」と呼ばれる色素)、または下記式(11)で表される色素(「ブラック・ダイ」と呼ばれる色素)が知られている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
【0007】
【化1】

(但し、上記式(10)において、TBAはテトラブチルアンモニウムイオンである。)
【0008】
【化2】

(但し、上記式(11)において、TBAはテトラブチルアンモニウムイオンである。)
【0009】
【特許文献1】米国特許第4927721号明細書
【特許文献2】国際公開第98/50393号パンフレット
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,115,6382−6390(1993)
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,123,1613−1624(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記色素を用いた色素増感太陽電池、特にN719を用いた色素増感太陽電池は、高い変換効率を示すものの、耐久性(耐候性、耐熱性等)の面で十分満足できるものではなく、解決すべき課題を残すものであった。即ち、現在のところ、高い変換効率を示し、耐久性(耐候性、耐熱性等)の面でも十分満足できる色素増感太陽電池は開示されておらず、高い変換効率を示し、耐久性(耐候性、耐熱性等)に優れた色素増感太陽電池の開発が切望されている。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題に鑑みてなされたものであり、高い変換効率を示し、耐候性及び耐熱性等の耐久性にも優れた色素増感太陽電池の構成材料となる色素、この色素を用いた色素増感太陽電池、及び、この色素増感太陽電池の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決すべき鋭意検討を重ねた結果、特定構造の化合物を配位子とする色素によって、前記従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。具体的には、本発明により、以下の色素、色素増感太陽電池及びその製造方法が提供される。
【0013】
[1] 下記一般式(1)で表される色素。
(1):ML
(但し、Mは長周期律表上の8〜10族の元素であり、Lは下記一般式(2)で表される二座配位子であり、Lは下記一般式(3)で表される二座配位子であり、Lは下記一般式(4)で表される二座配位子である。)
【0014】
【化3】

(但し、前記一般式(2)において、R及びRは相互に独立して、下記一般式(2−1)〜(2−3)で示される構造のうちのいずれか1つである。)
【0015】
【化4】

(但し、前記一般式(2−1)において、nは0〜5の整数であり、Aはカチオンである。)
【0016】
【化5】

(但し、前記一般式(2−2)において、nは1〜5の整数であり、Aはカチオンである。)
【0017】
【化6】

(但し、前記一般式(2−3)において、nは0〜5の整数であり、nは1〜3の整数であり、Aはカチオンである。)
【0018】
【化7】

(但し、前記一般式(3)において、Xはハロゲン原子であり、nは0〜2の整数である。)
【0019】
【化8】

(但し、前記一般式(4)において、n及びnは相互に独立して、1〜3の整数であり、R及びRは相互に独立して、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
【0020】
[2] 前記一般式(1)におけるMがルテニウムである前記[1]に記載の色素。
【0021】
[3] 陽極と、陰極と、電解質と、を備え、前記陰極は、透明導電性ガラスからなる基材と、前記基材の表面に形成された酸化物薄膜電極と、を有しており、前記酸化物薄膜電極には、前記[1]または[2]に記載の色素が吸着されている色素増感太陽電池。
【0022】
[4] 透明導電性ガラスからなる基材と、前記基材の表面に形成された酸化物薄膜電極と、を有する陰極用部材に、前記[1]または[2]に記載の色素と塩基とを含有する色素溶液を接触させて、前記酸化物薄膜電極に前記色素を吸着させた陰極を得る陰極形成工程を備える色素増感太陽電池の製造方法。
【0023】
[5] 前記塩基の濃度が0.0001〜50mNである前記色素溶液を用いる前記[4]に記載の色素増感太陽電池の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の色素は、高い変換効率を示し、耐候性及び耐熱性等の耐久性にも優れた色素増感太陽電池の構成材料となるという効果を奏するものである。
【0025】
本発明の色素増感太陽電池は、高い変換効率を示し、耐候性及び耐熱性等の耐久性にも優れるという効果を奏するものである。
【0026】
本発明の色素増感太陽電池の製造方法は、高い変換効率を示し、耐候性及び耐熱性等の耐久性にも優れた色素増感太陽電池を製造することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0028】
[1]色素:
本発明の色素の一実施形態は、下記一般式(1)で表されるものである。このような色素は、高い変換効率を示し、耐候性及び耐熱性等の耐久性にも優れた色素増感太陽電池の構成材料となるものである。
(1):ML
(但し、Mは長周期律表上の8〜10族の元素であり、Lは下記一般式(2)で表される二座配位子であり、Lは下記一般式(3)で表される二座配位子であり、Lは下記一般式(4)で表される二座配位子である。)
【0029】
一般式(1)において、「M」は中心原子であり、長周期律表上の8〜10族の元素からなる金属原子である。「8〜10族の元素」としては、具体的には、8族の元素である、鉄、ルテニウム、オスミウム、9族の元素である、コバルト、ロジウム、イリジウム、10族の元素である、ニッケル、パラジウム、白金を挙げることができる。本発明の色素は、「M」がルテニウムであるものが好ましい。Mがルテニウムであると、錯体の色を操作しやすいという利点がある。
【0030】
【化9】

(但し、前記一般式(2)において、R及びRは相互に独立して、下記一般式(2−1)〜(2−3)で示される構造のうちのいずれか1つである。)
【0031】
【化10】

(但し、前記一般式(2−1)において、nは0〜5の整数であり、Aはカチオンである。)
【0032】
【化11】

(但し、前記一般式(2−2)において、nは1〜5の整数であり、Aはカチオンである。)
【0033】
【化12】

(前記一般式(2−3)において、nは0〜5の整数であり、nは1〜3の整数であり、Aはカチオンである。)
【0034】
【化13】

(但し、前記一般式(3)において、Xはハロゲン原子であり、nは0〜2の整数である。)
【0035】
【化14】

(但し、前記一般式(4)において、n及びnは相互に独立して、1〜3の整数であり、R及びRは相互に独立して、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
【0036】
一般式(2−1)〜(2−3)中、Aはカチオンであり、カチオンの中でも、水素イオン、テトラブチルアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、またはリチウムイオンであることが好ましい。
【0037】
上述した一般式(3)で表される二座配位子(化合物)としては、例えば、2−フェニルピリジン(下記式(3a)で表される化合物)、下記一般式(3b)で表される化合物を挙げることができる。
【0038】
【化15】

【0039】
【化16】

(但し、上記一般式(3b)において、Xはハロゲン原子である。)
【0040】
下記一般式(3b)で表される化合物としては、具体的には、2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)ピリジン、2−(2,4−ジブロモフェニル)ピリジンなどを挙げることができる。
【0041】
本発明の色素の具体例としては、下記式(1a)〜(1d)で表される化合物(色素)等を挙げることができる。
【0042】
【化17】

【0043】
【化18】

【0044】
【化19】

【0045】
【化20】

【0046】
本発明の色素は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、溶媒中で、長周期律表上の8〜10族の元素と一般式(2)で表される二座配位子(化合物)とを反応させて第一の反応溶液を得る。次に、得られた第一の反応溶液に一般式(4)で表される二座配位子(化合物)を加えて反応させて第二の反応溶液を得る。次に、得られた第二の反応溶液から溶媒を留去して析出物を得た後、得られた析出物と一般式(3)で表される二座配位子(化合物)とを混合して反応させて第三の反応溶液を得る。次に、得られた第三の反応溶液にアルコール、エーテルを添加し、得られた沈殿物をろ過することによって本発明の色素を製造することができる。上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノールなどを挙げることができる。また、エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどを挙げることができる。なお、これらは単独でまたは2種以上を使用することができる。
【0047】
[2]色素増感太陽電池:
本発明の色素増感太陽電池の一実施形態は、陽極と、陰極と、電解質と、を備えており、陰極は、透明導電性ガラスからなる基材と、この基材の表面に形成された酸化物薄膜電極と、を有している。そして、酸化物薄膜電極には、本発明の色素が吸着されている。このような色素増感太陽電池は、高い変換効率を示し、耐候性及び耐熱性等の耐久性にも優れるものである。
【0048】
「陽極」は、導電性を有する物質で構成されているものである。そして、構成物質の種類について特に制限はないが、例えば、透明導電性ガラスからなる基材の表面に、微量の白金または導電性カーボンを付着させたものを好適に用いることができる。「透明導電性ガラス」としては、例えば、酸化スズ、インジウム−スズ酸化物(ITO)からなるガラス等を用いることができる。
【0049】
「陰極」は、透明導電性ガラスからなる基材と、この基材の表面に形成された酸化物薄膜電極と、を有しており、酸化物薄膜電極には、既に述べた本発明の色素が吸着されているものである。「透明導電性ガラス」としては、上記陽極を構成する透明導電性ガラスと同様のものなどを用いることができる。「基材」の形状については特に制限はなく、例えば、板状のもの等を用いることができる。
【0050】
「酸化物薄膜電極」は酸化物からなる薄膜であり、この酸化物薄膜電極を構成する酸化物としては、例えば、金属酸化物、より具体的には、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン、酸化インジウム等を挙げることができる。これらの酸化物の中でも、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化スズが好ましく、酸化チタンが特に好ましい。この酸化物薄膜電極は、本発明の色素を吸着させた状態で用いる。色素を吸着させる方法は、特に制限はないが、後述する「色素の吸着」で説明する方法を採用することが好ましい。
【0051】
酸化物薄膜電極の膜厚は、例えば、2〜30μmであることが好ましく、4〜15μmであることが更に好ましく、6〜12μmであることが特に好ましい。上記膜厚が2μm未満であると、酸化物薄膜電極に色素が吸着しないおそれがある。一方、30μm超であると、酸化物薄膜電極を光が透過しないおそれがある。
【0052】
「電解質」としては、液体又は固体の電解質であり、このような電解質を含む溶液等を用いてもよい。これらの中でも、レドックス電解質を用いることが好ましい。「レドックス電解質」とは、レドックス系を構成する物質(酸化剤、還元剤)を含有する溶液であり、例えば、下記式(5)に示すようなレドックス系(I/I3−系)を構成する、ヨウ素及びヨウ素のイミダゾリウム塩を含む溶液を好適に用いることができる。この溶液の溶媒としては、電気化学的に不活性な物質、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等を好適に用いることができる。
(5):I+2e←→3I+I
【0053】
本発明の色素増感太陽電池は、陽極と陰極の間を電解質が満たすものであればよく、具体的には、容器中に電解質溶液を満たし、この電解質溶液中に、陽極と陰極とが対向するように配置して製造することができる。
【0054】
[3]色素増感太陽電池の製造方法:
本発明の色素増感太陽電池の製造方法の一実施形態は、透明導電性ガラスからなる基材と、この基材の表面に形成された酸化物薄膜電極と、を有する陰極用部材に対して、本発明の色素と塩基とを含有する色素溶液を接触させ、上記酸化物薄膜電極に上記色素を吸着させた陰極を得る陰極形成工程を備える方法である。このような方法によると、高い変換効率を示し、耐候性及び耐熱性等の耐久性にも優れた色素増感太陽電池を製造することができる。
【0055】
[3−1]酸化物薄膜電極の形成:
本発明の色素増感太陽電池の製造方法が備える陰極形成工程は、陰極を構成する酸化物薄膜電極に色素を吸着させる操作を含むものである。そのため、酸化物薄膜電極に色素を吸着させることに先立って、酸化物薄膜電極を有する陰極用部材を用意する。陰極用部材の酸化物薄膜電極は、その形成方法については特に制限はないが、例えば、上述した酸化物薄膜電極を構成するための酸化物の微粒子を、適当な分散媒に懸濁させて酸化物スラリーを調製し、このスラリーを透明導電性ガラスからなる基材の表面に塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜から溶媒を除去した後、加熱する等の方法により形成することができる。このようにして陰極用部材を得ることができる。
【0056】
なお、陰極形成工程に用いる透明導電性ガラスとしては、既に上述した透明導電性ガラスと同様のものを好適に用いることができる。酸化物スラリーの塗布量は、特に制限はないが、得られる酸化物薄膜電極の膜厚が6〜20μmとなる量であることが好ましい。
【0057】
[3−2]色素の吸着:
酸化物薄膜電極に色素を吸着させること、即ち、色素の吸着は、透明導電性ガラスからなる基材と、その表面に形成された酸化物薄膜電極とを有する陰極用部材に対して、本発明の色素と塩基とを含有する色素溶液を接触させることにより行う。
【0058】
「色素溶液」は、本発明の色素、即ち、上記一般式(1)で表される色素と塩基とを含有する溶液である。色素溶液は、本発明の色素を0.1〜10mmol/Lの濃度で含有するものが好ましい。色素の濃度を0.1mmol/L以上とすることによって、酸化物薄膜電極に十分に色素を吸着させることが可能となる。一方、10mmol以下とすることによって、色素同士が吸着してしまう不具合を抑制することができる。このような効果を、より確実に発揮させるためには、色素の濃度を0.2〜5mmol/Lとすることが更に好ましく、0.5〜2mmol/Lとすることが特に好ましい。
【0059】
「色素溶液」が含有する塩基は、無機塩基であってもよいし、有機塩基であってもよい。
【0060】
「無機塩基」としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の硫化物、アルカリ土類金属の水酸化物等を挙げることができる。
【0061】
「アルカリ金属の水酸化物」としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。「アルカリ金属の炭酸塩」としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を挙げることができる。「アルカリ金属の硫化物」としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム等を挙げることができる。「アルカリ土類金属の水酸化物」としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0062】
「有機塩基」としては、例えば、一級〜三級アミン化合物、四級アンモニウムの水酸化物、四級アンモニウムの炭酸塩、四級アンモニウムの硫化物、四級ホスホニウムの水酸化物、四級ホスホニウムの炭酸塩、四級ホスホニウムの硫化物、芳香環中に窒素原子を有する含窒素ヘテロ芳香族化合物、芳香族アミン化合物等を挙げることができる。
【0063】
「一級〜三級アミン化合物」としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン等の一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン等を挙げることができる。
【0064】
「四級アンモニウムの水酸化物」としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。「四級アンモニウムの炭酸塩」としては、例えば、テトラメチルアンモニウムカルボネート、テトラブチルアンモニウムカルボネート等を挙げることができる。「四級アンモニウムの硫化物」としては、例えば、テトラメチルアンモニウムスルフェート、テトラブチルアンモニウムスルフェート等を挙げることができる。
【0065】
「四級ホスホニウムの水酸化物」としては、例えば、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド等を挙げることができる。「四級ホスホニウムの炭酸塩」としては、例えば、テトラメチルホスホニウムカルボネート、テトラブチルホスホニウムカルボネート等を挙げることができる。「四級ホスホニウムの硫化物」としては、例えば、テトラメチルホスホニウムスルフェート、テトラブチルホスホニウムスルフェート等を挙げることができる。
【0066】
「含窒素ヘテロ芳香族化合物」としては、例えば、ピリジン、ピロール、ルチジン等を挙げることができる。「芳香族アミン化合物」としては、例えば、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン等を挙げることができる。
【0067】
これらの塩基の中でも、ブレンステッド塩基を用いることが好ましく、有機塩基を用いることが更に好ましく、四級アンモニウムの水酸化物、四級アンモニウムの炭酸塩を用いることが特に好ましく、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムカルボネート、テトラブチルアンモニウムカルボネートを用いることが最も好ましく、最も好ましいものの中でも、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0068】
色素溶液は、上記塩基を0.0001〜50mNの濃度で含有するものが好ましく、0.001〜20mNの濃度で含有するものが更に好ましく、0.01〜10mNの濃度で含有するものが特に好ましい。
【0069】
色素溶液の溶媒としては、例えば、水、極性有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることが好ましい。極性有機溶媒としては、例えば、エーテル、アルコール、ニトリル、アミド、スルホキシド等を挙げることができる。
【0070】
「エーテル」としては、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等を挙げることができる。「アルコール」としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等を挙げることができる。「ニトリル」としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピオノニトリル等を挙げることができる。「アミド」としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げることができる。「スルホキシド」としては、例えば、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
【0071】
これらの溶媒の中でも、アルコール、ニトリル、またはアミドを用いることが好ましく、エタノール、メタノール、ブタノール、またはアセトニトリルを用いることが更に好ましい。また、溶媒の混合溶媒としては、アルコールとニトリルとの混合溶媒を用いることが好ましく、ブタノールとアセトニトリルとの混合溶媒を用いることが更に好ましい。
【0072】
陰極用部材と色素溶液とを接触させる方法については、特に制限はないが、陰極用部材を色素溶液に浸漬する方法などを挙げることができる。
【0073】
陰極用部材を色素溶液に浸漬する場合、浸漬時間は、0.5〜100時間とすることが好ましく、2〜50時間とすることが更に好ましく、12〜24時間とすることが特に好ましい。また、浸漬の際の温度は、0〜100℃とすることが好ましく、温度を10〜50℃とすることが更に好ましい。
【0074】
[3−3]色素増感太陽電池の形成:
本発明の色素増感太陽電池の製造方法は、上記陰極形成工程の後、容器中に電解質溶液を満たし、この電解質溶液中に、対向する陽極と陰極とを配置するようにして色素増感太陽電池を得る電池形成工程を行うことができる。
【0075】
電解質溶液は、既に上述した電解質を含有する溶液である。また、陽極は、既に上述したものを好適に用いることができる。
【0076】
陽極と陰極とは、これらの間にスペーサーを挟み込ませると、陽極と陰極とを所望の間隔で離隔させた状態で対向させることができる。また、電解質として固体電解質を用いる場合には、例えば、陰極、固体電解質、及び陽極を、この順番で順次積層させることによって、陽極と陰極とを所望の間隔で離隔させた状態で対向させることができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0078】
(実施例1)[色素の合成]:
下記式(1a)で示される化合物(以下、「色素T1」と記す場合がある)を合成した。
【0079】
【化21】

【0080】
まず、減圧脱気を行った後、窒素雰囲気下においた無水N,N−ジメチルホルムアミド25mLに、二塩化(p−シメン)ルテニウム(II)100mg及び減圧乾燥した下記式(6)で表される化合物148mgを添加して溶液を調製し、この溶液を、10分間、窒素気流下においた。その後、窒素雰囲気下で、上記溶液を撹拌しながら100℃にて4時間反応させて、第一の反応溶液を得た。この第一の反応溶液に、下記式(7)で表される化合物76mgを加え、10分間、窒素気流下においた。その後、引き続き撹拌しながら、窒素雰囲気下で、150℃にて4時間反応させて第二の反応溶液を得た。
【0081】
【化22】

【0082】
【化23】

【0083】
反応終了後、第二の反応溶液を放冷して室温まで降温させ、溶媒を留去させた後、N,N−ジメチルホルムアミド5mLを加え、その溶液を水100mLに滴下して、析出物を得た。減圧脱気を行った後、窒素雰囲気下においたエチレングリコール20mLに、濾過によって得られた上記析出物100mg及び減圧乾燥した2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン(一般式(3b)で表される化合物)42mgを添加して反応させて第三の反応溶液を調製し、10分間窒素気流下においた。窒素雰囲気下で、第三の反応溶液を撹拌しながら160℃にて2時間反応させて反応液を得た。この反応液に、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド266mgを加え、引き続き撹拌しながら、窒素雰囲気下、160℃にて4時間反応させた。
【0084】
反応終了後、反応液を放冷して室温まで降温させ、0.1N硝酸を滴下してpHを5.0に調整し、ジエチルエーテル50mL、及びメタノール15mLを加えて、析出物を得た。一晩静置した後、濾過して析出物を得、得られた析出物を乾燥することにより、55mgの精製物を得た。この精製物をH−NMRで分析したところ、上記式(1a)で表される化合物(色素T1)であることが確認できた。本実施例のH−NMRの分析結果を以下に示す。
【0085】
H−NMR(CDOD、400MHz、δ(ppm));δ=9.05(1H)、8.95(1H)、8.60(2H)、8.30(2H)8.10(1H)、7.90(1H)、7.85(1H)、7.80(1H)、7.78(1H)、7.68(1H)、7.62(1H)、7.58(1H)、7.40(1H)、7.38(1H)、7.25(1H)、7.00(1H)、6.85(4H)、6.10(1H)、3.25(12H)、3.24(1H)、3.22(12H)、3.19(12H)、3.02(16H)、2.56−1.25(36H)
【0086】
(実施例2)
下記式(1c)で表される化合物(以下、「色素T2」と記す場合がある)を合成した。
【0087】
【化24】

【0088】
まず、減圧脱気を行った後、窒素雰囲気下においた無水N,N−ジメチルホルムアミド25mLに、二塩化(p−シメン)ルテニウム(II)100mg及び減圧乾燥した上記式(6)で表される化合物148mgを添加して溶液を調製し、10分間、窒素気流下においた。その後、窒素雰囲気下で、上記溶液を撹拌しながら100℃にて4時間反応させて第一の反応溶液を得た。この第一の反応溶液に、下記式(8)で表される化合物76mgを加え、10分間、窒素気流下においた。その後、引き続き撹拌しながら、窒素雰囲気下、150℃にて4時間反応させて第二の反応溶液を得た。
【0089】
【化25】

【0090】
反応終了後、第二の反応溶液を放冷して室温まで降温させ、溶媒を留去させた後、N,N−ジメチルホルムアミド5mLを加え、その溶液を水100mLに滴下して、析出物を得た。減圧脱気を行った後、窒素雰囲気下においたエチレングリコール20mLに、濾過によって得られた上記析出物100mg及び減圧乾燥した2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン(一般式(3b)で表される化合物)42mg添加して反応させて第三の反応溶液を調製し、10分間窒素気流下においた。窒素雰囲気下で、第三の反応溶液を撹拌しながら160℃にて2時間反応させて反応液を得た。この反応液に、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド266mgを加え、引き続き撹拌しながら、窒素雰囲気下、160℃にて4時間反応させた。
【0091】
反応終了後、反応液を放冷して室温まで降温させ、0.1N硝酸を滴下してpHを5.0に調整し、ジエチルエーテル50mL、及びメタノール15mLを加えて、析出物を得た。一晩静置した後、濾過して析出物を得、得られた析出物を、実施例1に準じた方法で処理することにより、55mgの精製物を得た。この精製物をH−NMRで分析したところ、上記式(1c)で表される化合物(色素T2)であることが確認できた。本実施例のH−NMRの分析結果を以下に示す。
【0092】
H−NMR(CDOD、400MHz、δ(ppm));δ=9.05(1H)、8.95(1H)、8.60(2H)、8.30(2H)8.10(1H)、8.05(2H)、7.90(1H)、7.87(2H)、7.85(1H)、7.80(1H)、7.78(1H)、7.68(1H)、7.62(1H)、7.58(1H)、7.40(1H)、7.38(1H)、7.25(1H)、7.00(1H)、6.85(4H)、6.10(1H)、3.25(12H)、3.24(1H)、3.22(12H)、3.19(12H)、3.02(16H)、2.56−1.25(36H)
【0093】
下記式(1d)で表される化合物(以下、「色素T3」と記す場合がある)を合成した。
【0094】
【化26】

【0095】
まず、減圧脱気を行った後、窒素雰囲気下においた無水N,N−ジメチルホルムアミド25mLに、二塩化(p−シメン)ルテニウム(II)100mg及び減圧乾燥した上記式(6)で表される化合物148mgを添加して溶液を調製し、この溶液を、10分間、窒素気流下においた。その後、窒素雰囲気下で、上記溶液を撹拌しながら100℃にて4時間反応させて、第一の反応溶液を得た。この第一の反応溶液に、下記式(9)で表される化合物76mgを加え、10分間、窒素気流下においた。その後、引き続き撹拌しながら、窒素雰囲気下で、150℃にて4時間反応させて第二の反応溶液を得た。
【0096】
【化27】

【0097】
反応終了後、第二の反応溶液を放冷して室温まで降温させ、溶媒を留去させた後、N,N−ジメチルホルムアミド5mLを加え、その溶液を水100mLに滴下して、析出物を得た。減圧脱気を行った後、窒素雰囲気下においたエチレングリコール20mLに、濾過によって得られた上記析出物100mg及び減圧乾燥した2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン(一般式(3b)で表される化合物)42mgを添加して反応させて第三の反応溶液を調製し、10分間窒素気流下においた。窒素雰囲気下で、第三の反応溶液を撹拌しながら160℃にて2時間反応させて反応液を得た。この反応液に、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド266mgを加え、引き続き撹拌しながら、窒素雰囲気下、160℃にて4時間反応させた。
【0098】
反応終了後、反応液を放冷して室温まで降温させ、0.1N硝酸を滴下してpHを5.0に調整し、ジエチルエーテル50mL、及びメタノール15mLを加えて、析出物を得た。一晩静置した後、濾過して析出物を得、得られた析出物を、実施例1に準じた方法で処理することにより、55mgの精製物を得た。この精製物をH−NMRで分析したところ、前記式(1d)で表される化合物(色素T3)であることが確認できた。本実施例のH−NMRの分析結果を以下に示す。
【0099】
H−NMR(CDOD、400MHz、δ(ppm));δ=9.04(1H)、8.95(1H)、8.58(2H)、8.28(2H)8.10(1H)、8.05(2H)、7.90(1H)、7.87(2H)、7.84(1H)、7.80(1H)、7.78(1H)、7.65(1H)、7.62(1H)、7.58(1H)、7.40(1H)、7.38(1H)、7.25(1H)、7.00(1H)、6.85(4H)、6.10(1H)、3.25(12H)、3.24(1H)、3.22(12H)、3.19(12H)、3.02(16H)、2.56−1.25(36H)
【0100】
(実施例4)[色素増感太陽電池の製造]:
(1)陽極の製造:
まず、透明導電性ガラスからなる基材(厚さ4mm、酸化スズ製、抵抗値=10Ω/cm)の表面に白金を焼結して陽極を得た。
【0101】
(2)酸化物薄膜電極の製造:
アセチルアセトン0.4mLとイオン交換水20mLの混合媒体中に、酸化チタン微粒子12g及び分散剤(商品名「Triton X−100」、アルドリッチ社製)0.2gを添加し、酸化物スラリーを調製した。この酸化物スラリーを、上記陽極の製造に用いたのと同じ透明導電性ガラスからなる基材の表面に塗布し、空気雰囲気中、500℃で0.5時間加熱することにより、透明導電性ガラスからなる基材の表面に、酸化チタンからなる酸化物薄膜電極を形成して、陰極用部材を得た。
【0102】
(3)色素溶液の調製:
実施例1で合成した色素T1と塩基とをエタノールに溶解させて、色素の濃度が0.5mmol/Lである色素溶液を調製した。
【0103】
(4)陰極の製造:
上記陰極用部材を上記色素溶液中に、23℃にて24時間浸漬することにより、陰極用部材の酸化物薄膜電極に色素を吸着させて陰極を製造した。
【0104】
(5)電解質溶液の製造:
アセトニトリル/バレロニトリル混合溶媒(体積比:85/15)に、グアニジウムチオシアネートを0.1mol/L、ヨウ素を0.03mol/L、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨードニウム塩を0.6mol/L、及び、t−ブチルピリジンを0.5mol/Lの濃度で溶解させて電解質溶液E1(表1中、「E1」と示す)を製造した。
【0105】
(6)色素増感太陽電池の製造:
まず、陽極の白金焼結面と陰極の酸化物薄膜電極形成面とが対向し、両電極の間隔が25μmとなるように、陽極と陰極を容器中に配置した。その後、この容器中に電解質溶液E1を注入し、色素増感太陽電池を製造した。製造した色素増感太陽電池について以下の評価を行った。
【0106】
変換効率(発電効率):
製造した色素増感太陽電池に対して、ソーラーシミュレーターを用いて、疑似太陽光を100mW/cmの照度で照射し、変換効率(%)を測定した。また、測定した変換効率(%)について、変換効率が9%以上の場合は「○」(良好)とし、9%未満で6%以上の場合は「△」とし、6%未満の場合は「×」(不良)として評価を行った。
【0107】
本実施例の色素増感太陽電池は、変換効率(発電効率)が9.56%であり、その評価が「○」であった。なお、評価結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
(実施例5〜9、比較例1,2)
表1に示す色素及び電解質溶液を用いた以外は、実施例4と同様にして色素増感太陽電池を製造した。製造した色素増感太陽電池について変換効率(発電効率)の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0110】
なお、表1中、「N719」は、市販の色素「N719」(上記式(12)で表される色素)である。また、「E2」は、アセトニトリル/バレロニトリル混合溶媒(体積比:85/15)に、リチウムヨードニウム塩を0.1mol/L、ヨウ素を0.05mol/L及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨードニウム塩を0.6mol/Lの濃度で溶解させて製造した電解質溶液である。
【0111】
(実施例10〜12、比較例3)
表2に示す色素及び電解質溶液を用いた以外は、実施例4と同様にして色素増感太陽電池を製造した。製造した色素増感太陽電池について以下の評価を行った。
【0112】
変換効率及び耐久性:
製造した色素増感太陽電池を、333K、100mW/cmの雰囲気下で保持した。保持後の色素増感型太陽電池に対して、ソーラーシミュレーターを用いて、疑似太陽光を100mW/cmの照度で30日間照射し、当初変換効率(変換効率A)と30日経過後の変換効率(変換効率B)を測定した。そして、変換効率A(表2中、「変換効率(当初)」と示す)の値が、4%以上の場合は「○」(良好)とし、4%未満の場合は「×」(不良)として評価した。また、変換効率B(表2中、「変換効率(30日経過後)」と示す)の値が、2%以上の場合は「○」(良好)とし、2%未満の場合は「×」(不良)として評価した。
【0113】
また、測定した変換効率Aの値及び変換効率Bの値から、変換効率Aに対する変換効率Bの百分率(表2中、「B/A(%)」と示す)を算出して耐久性の評価を行った。評価基準は、上記百分率の値が60%以上の場合は「○」(良好)とし、60%未満の場合は「×」(不良)とした。評価結果を表2に示す。
【0114】
【表2】

【0115】
なお、表2中、「E3」は、3−メトキシプロピオニトリルに、グアニジウムチオシアネートを0.1mol/L、ヨウ素を0.15mol/L、1−メチル3−プロピルイミダゾリウムヨードニウム塩を1.0mol/L、N−ブチルベンジミダゾル(N−Butylbenzimidazole)を0.5mol/Lの濃度で溶解させて製造した電解質溶液である。
【0116】
表1に示すように、実施例1〜3の色素(色素T1〜T3)を用いた、実施例4〜9の色素増感太陽電池は、N719を用いた、比較例1及び2の色素増感太陽電池と同等の高い変換効率を示すことが確認できた。また、表2に示すように、実施例1〜3の色素(色素T1〜T3)を用いた、実施例10〜12の色素増感太陽電池は、N719を用いた比較例3の色素増感太陽電池に比して、高い耐久性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の色素は、色素増感太陽電池の材料として好適に用いることができる。
【0118】
本発明の色素増感太陽電池は、高い変換効率を示し、耐候性及び耐熱性等の耐久性にも優れるため、シリコン系太陽電池に代わる次世代の太陽電池として好適に用いることができる。
【0119】
本発明の色素増感太陽電池の製造方法は、高い変換効率を示し、耐候性及び耐熱性等の耐久性にも優れるため、シリコン系太陽電池に代わる次世代の色素増感太陽電池を好適に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される色素。
(1):ML
(但し、Mは長周期律表上の8〜10族の元素であり、Lは下記一般式(2)で表される二座配位子であり、Lは下記一般式(3)で表される二座配位子であり、Lは下記一般式(4)で表される二座配位子である。)
【化1】

(但し、前記一般式(2)において、R及びRは相互に独立して、下記一般式(2−1)〜(2−3)で示される構造のうちのいずれか1つである。)
【化2】

(但し、前記一般式(2−1)において、nは0〜5の整数であり、Aはカチオンである。)
【化3】

(但し、前記一般式(2−2)において、nは1〜5の整数であり、Aはカチオンである。)
【化4】

(但し、前記一般式(2−3)において、nは0〜5の整数であり、nは1〜3の整数であり、Aはカチオンである。)
【化5】

(但し、前記一般式(3)において、Xはハロゲン原子であり、nは0〜2の整数である。)
【化6】

(但し、前記一般式(4)において、n及びnは相互に独立して、1〜3の整数であり、R及びRは相互に独立して、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるMがルテニウムである請求項1に記載の色素。
【請求項3】
陽極と、陰極と、電解質と、を備え、
前記陰極は、透明導電性ガラスからなる基材と、前記基材の表面に形成された酸化物薄膜電極と、を有しており、前記酸化物薄膜電極には、請求項1または2に記載の色素が吸着されている色素増感太陽電池。
【請求項4】
透明導電性ガラスからなる基材と、前記基材の表面に形成された酸化物薄膜電極と、を有する陰極用部材に、請求項1または2に記載の色素と塩基とを含有する色素溶液を接触させて、前記酸化物薄膜電極に前記色素を吸着させた陰極を得る陰極形成工程を備える色素増感太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記塩基の濃度が0.0001〜50mNである前記色素溶液を用いる請求項4に記載の色素増感太陽電池の製造方法。

【公開番号】特開2010−84003(P2010−84003A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254292(P2008−254292)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(501300470)エコール ポリテクニーク フェデラル ドゥ ローザンヌ(エーペーエフエル) (3)
【Fターム(参考)】