説明

色素増感型太陽電池の光電極構造及びそれを用いた色素増感型太陽電池

【課題】 集電電極に対する電解液からの腐食を保護する機能を達成しつつ、発電効率の低下を防止することが可能な色素増感型太陽電池の光電極構造を提供する。
【解決手段】 透明樹脂基材の片面に、導電性材料からなる集電電極、透明導電膜、金属酸化物半導体膜がこの順に積層して形成され、さらに金属酸化物半導体膜に有機色素が付着され、前記集電電極は、導電性の金属薄膜の細線パターンまたは、導電性の金属薄膜の細線パターンを金属メッキ層により被覆した細線パターンからなり、さらに、前記透明樹脂基材側から前記金属酸化物半導体膜に向かって入射される外部光の入射角度に応じて前記集電電極の細線パターンが影となる前記金属酸化物半導体膜の部分に隣接する前記透明導電膜の表面にのみ、樹脂製の電気絶縁層が配設されていることを特徴とする色素増感型太陽電池の光電極構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池の光電極構造に関する。さらに詳細には、発電効率が高い光電極構造及びそれを用いた色素増感型太陽電池を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来型の太陽電池と異なり、色素増感型太陽電池はシリコン(Si)などの高価な半導体を用いておらず、比較的安価に製造することができることから、将来の利用が拡大するものと有望視されている。
色素増感型太陽電池の基本構成は、透明基材に設けた透明導電電極(光電極)と、電解質層と、発色剤層(分光増感色素)と、金属酸化物半導体層と、基材に設けた対電極とからなる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
従来型の太陽電池において、電流を効率よく取り出すため、透明導電膜からなる透明電極層に電気的に接続されたグリッド状の集電電極を受光面上に設けて電流を集電する技術が知られている。
透明導電膜は、透明基材の上に加熱蒸着やスパッタ法などにより金属酸化物半導体を薄く積層したものであり、金属等の良導体に比べて比抵抗が大きいことから、セルの面積が広い場合は、透明導電膜の表面抵抗率をなるべく低くすることが求められる。
【0004】
表面抵抗率を低くするには膜の厚みをなるべく厚くするのが望ましいが、金属酸化物半導体の膜厚みを厚くすると光透過率が低下するので、透明導電膜の厚みは、光透過率と表面抵抗率との兼ね合いにより制約される。従って、透明導電膜のみでは表面抵抗率を下げるのに限界があることから、透明導電膜上に金属(良導体)からなる集電電極を配設することにより、透明電極の表面抵抗率を下げている。
【0005】
しかしながら集電電極は、表面抵抗率は透明導電膜より低いものの光透過率に劣る(不透明である)ので、集電電極の面積が大きいと、受光面の有効面積の損失につながる。このため、集電電極をインクジェット方式によって印刷することにより、細線化する技術が特許文献2に記載されている。
【0006】
一方、色素増感型太陽電池においても集電電極の効果は知られており、例えば、特許文献3には、透明基板の上に、透明導電膜、取り出し電極をいずれかの順に積層した電極基板が開示されている。取り出し電極は、チタン薄膜、白金薄膜、または所定の膜厚を有する酸化物導電性膜からなるとしていて、白金、チタン以外の金属を取り出し電極の材料として使用する場合は、透明基材の上に取り出し電極を形成し、その上に透明導電膜を保護膜として形成することが記載されている。
【0007】
また、特許文献4には、透明基板、導電性配線層及び、SnO2、TiO2、ZnOなどの金属酸化物からなる保護層を順に積層することにより、逆電子移動反応が起こらず、耐久性が高く、光電変換効率が高い光電変換素子を提供できることが記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開平1−220380号公報
【特許文献2】特開2003−297158号公報
【特許文献3】特開2000−231942号公報
【特許文献4】特開2004−220920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、色素増感型太陽電池には、従来のシリコンタイプの太陽電池とは異なり、光電極と対極との間に設ける電解質層の電解液が漏洩して、光電極自体の腐食を引き起こすなど、色素増感型太陽電池に特有の技術的課題を有することが知られている。
この点、特許文献5には、このような技術的課題を解決するために、集電電極に相当する金属配線層を有する色素増感型太陽電池にあって、金属配線層を被覆する絶縁層を設けた色素増感型太陽電池が開示されている。
【0010】
より詳細には、このような色素増感型太陽電池の電極基板には、ガラス製透明基板の上に、透明導電層と、この透明導電層上に設けられた金属配線層と、透明導電層と金属配線層を覆うように形成された金属酸化物半導体多孔膜と、この金属配線層を被覆する低融点ガラス製の絶縁層とが設けられている。
このような色素増感型太陽電池の電極基板によれば、集電電極に相当する金属配線層により電極基板の低抵抗化を達成しつつ、金属配線層を被覆する低融点ガラス製の絶縁層を設けることにより、金属配線層と電解液とが直接に接触して漏電が起きることや金属配線層の腐食による特性の劣化を抑制することが可能としている。
【0011】
しかしながら、特許文献5に開示された電極基板あるいはこのような電極基板を有する色素増感型太陽電池は、透明基板がガラス製であると供に、絶縁層が低融点ガラス製であり、この絶縁層が、集電電極を電解液からの腐食から防ぐための保護機能、および集電電極と電解液とが直接に接触して漏電が起きることを防止するための電気的絶縁機能の両機能を兼ねていることに起因して、以下のような技術的問題点を有する。
【0012】
第1に、絶縁層の面積が無駄に広くなることにより、発電に有効な受光面積が減少してしまい単位面積当たりの光電変換効率の低下を引き起こす点である。
より具体的には、特許文献5には、絶縁層の形成方法として、金属配線層の上面および両側面に対して、低融点ガラスの溶融液を印刷で塗布した後に、焼成することが開示されている。
このような印刷方法により、金属配線層の両側面をきれいにそろえて塗布することは技術的に困難である。低融点ガラスの粘度を高めれば、流動性が低下する反面、側面部への塗布が困難となり、一方低融点ガラスの粘度を低めれば、側面部への塗布は可能となる反面、流動性が高まって、塗布液の拡散領域が拡がってしまい、絶縁層の塗布面積が必要以上に拡がってしまい、そのために有効な発電領域が狭められてしまうという問題を有している。
【0013】
第2に、軽量で持ち運びに便利であり、落下時等の衝撃性に強くて取扱いが簡便な色素増感型太陽電池に不適である点である。
より具体的には、特許文献5に開示された色素増感型太陽電池は、ガラス製の透明基材を採用しており、ガラス製の透明基材は、安全性の面から基材の厚み一定以上にして荷重に耐えられるようにするために軽量化を図ることが困難であり、しかも破損しやすいという問題を有している。
【0014】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、集電電極に対する電解液からの腐食を保護する機能を達成しつつ、発電効率の低下を防止することが可能な色素増感型太陽電池の光電極構造を提供することにある。
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、発電効率の低下を防止することが可能である色素増感型太陽電池を提供することにある。
【特許文献5】特開2007−42366号公報
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記解題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る色素増感型太陽電池の光電極構造は、
透明樹脂基材の片面に、導電性材料からなる集電電極、透明導電膜、金属酸化物半導体膜がこの順に積層して形成され、さらに金属酸化物半導体膜に有機色素が付着され、前記集電電極は、導電性の金属薄膜の細線パターンまたは、導電性の金属薄膜の細線パターンを金属メッキ層により被覆した細線パターンからなり、さらに、前記透明樹脂基材側から前記金属酸化物半導体膜に向かって入射される外部光の入射角度に応じて前記集電電極の細線パターンが影となる前記金属酸化物半導体膜の部分に隣接する前記透明導電膜の表面にのみ、樹脂製の電気絶縁層が配設されている構成としている。
【0016】
以上の構成を有する色素増感型太陽電池の光電極構造によれば、電解液の漏洩に対する集電電極の保護機能を奏する保護層と、発電層である金属酸化物半導体膜のうち集電電極が影となって光起電力を発生しない部分からの逆放電を防止する機能を奏する絶縁層とを分離することにより、保護層の範囲を必要最小限に制限しつつ、絶縁層を設ける領域を外部光の入射角度との関係で必要最小限に限定することにより、発電効率の低下を防止することが可能である。
【0017】
より詳細には、集電電極において、導電性の金属薄膜の細線パターンまたは、導電性の金属薄膜の細線パターンを金属メッキ層により被覆した細線パターンの上に、透明導電膜が形成されているので、電解液に対する耐食性を持たせることが可能である。
従来の印刷法などにより絶縁保護層を形成する場合には、保護層が発電領域を浸食する領域にまで及び、それにより発電効率に悪影響を及ぼすような恐れが生じていた。しかし、本発明によれば、電解液に対して腐食等から集電電極を保護することが可能であるとともに、透明樹脂基材側から金属酸化物半導体膜に向かって入射される外部光の入射角度に応じて集電電極の細線パターンが影となる金属酸化物半導体膜の部分に隣接する前記透明導電膜の表面にのみ、樹脂製の電気絶縁層を配設することにより、集電電極が影となって光起電力を発生しない発電層からの逆放電を防止することにより、発電効率の低下を防止することが可能である。
【0018】
上記解題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る色素増感型太陽電池の光電極構造は、
透明樹脂基材の片面に、透明導電膜、導電性材料からなる集電電極、金属酸化物半導体膜がこの順に積層して形成され、さらに金属酸化物半導体膜に有機色素が付着され、前記集電電極は、導電性の金属薄膜の細線パターンを金属メッキ層により被覆した細線パターンからなり、
さらに、前記透明樹脂基材側から前記金属酸化物半導体膜に向かって入射される外部光の入射角度に応じて前記集電電極の細線パターンが影となる前記金属酸化物半導体膜の部分に隣接する前記集電電極の細線パターンの表面にのみ、樹脂製の電気絶縁層が配設されている構成としている。
【0019】
以上の構成を有する色素増感型太陽電池の光電極構造によれば、電解液の漏洩に対する集電電極の保護機能を奏する保護層と、発電層である金属酸化物半導体膜のうち集電電極が影となって光起電力を発生しない部分からの逆放電を防止する機能を奏する絶縁層とを分離することにより、保護層の範囲を必要最小限に制限しつつ、絶縁層を設ける領域を外部光の入射角度との関係で必要最小限に限定することにより、発電効率の低下を防止することが可能である。
より詳細には、集電電極において、導電性の金属薄膜の細線パターンに施した金属メッキ層の最外層を、電解液に対して耐食性を有する貴金属メッキ層により被覆することで、導電性の金属薄膜の細線パターンを被覆するに必要十分な範囲で金属メッキ層を積層することができる。
従来の印刷法などにより絶縁保護層を形成する場合には、保護層が発電領域を浸食する領域にまで及び、それにより発電効率に悪影響を及ぼすような恐れが生じていた。しかし、本発明の耐食性メッキ層を形成することにより、電解液の漏洩あるいは集電電極自体を電解液による腐食から保護することが可能であるとともに、透明樹脂基材側から金属酸化物半導体膜に向かって入射される外部光の入射角度に応じて集電電極の細線パターンが影となる金属酸化物半導体膜の部分に隣接する前記集電電極の細線パターンの表面にのみ、樹脂製の電気絶縁層を配設することにより、集電電極が影となって光起電力を発生しない発電層からの逆放電を防止することにより、発電効率の低下を防止することが可能である。
【0020】
また、前記金属薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを印刷して形成した導電性薄膜、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して形成した導電性薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、金属箔をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、のいずれかであるのがよい。
【0021】
さらにまた、前記樹脂製の電気絶縁層は、環状ポリオレフィン系樹脂を用いて形成された薄膜であるのがよい。
【0022】
上記解題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る色素増感型太陽電池は、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池の光電極構造と、この光電極構造に対向して設けられた対極と、両電極間に設けた電解質とを有する構成としている。
【0023】
以上の構成を有する色素増感型太陽電池によれば、軽量で柔軟性を有する透明樹脂基材および樹脂製の電気絶縁層を採用することにより、軽量で持ち運びに便利で、落下時等の衝撃性に強いことから、取扱いが簡便な色素増感型太陽電池を提供することが可能である。特に、室内光を利用した場合には、屋外で太陽自然光を利用するタイプと異なり、色素増感型太陽電池に対する光の入射角度を一定とすることが可能であり、金属酸化物半導体膜のうち、集電電極が影となって光起電力が発生しない部分を常時一定の部分にすることが可能であり、この意味において、逆放電を防止するための樹脂製の電気絶縁層を設ける範囲を光の入射角度との関係において、限定した部分に制限することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電解液の漏洩に対する集電電極の保護機能を奏する保護層と、発電層である金属酸化物半導体膜のうち集電電極が影となって光起電力を発生しない部分からの逆放電を防止する機能を奏する電気絶縁層とを分離することにより、保護層の範囲を必要最小限に制限しつつ、電気絶縁層を設ける領域を外部光の入射角度との関係で必要最小限に限定することにより、発電効率の低下を防止することが可能である。
特に、電気絶縁層の果たす効果としては、透明樹脂基材から視て集電電極を金属酸化物半導体に投影した影の部分は外部光が入射されず光起電力が発生しない部分であるが、この部分の金属酸化物半導体が、直接、透明導電膜または集電電極に接触するのを防止することにより、外部光が入射された他の箇所で発生した光起電力がこの部分で逆放電し、色素増感型太陽電池のセル全体としての発電効率が低下してしまうのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明による色素増感型太陽電池の光電極の第1形態例を示す概略の部分断面図であり、図2は、本発明による色素増感型太陽電池の光電極の第2形態例を示す概略の部分断面図である。図3は、従来技術による色素増感型太陽電池の光電極を示す部分断面図である。図4は、本発明の色素増感型太陽電池の光電極の細線パターンを例示する部分拡大平面図である。
【0026】
図1に示すように、本発明による色素増感型太陽電池の光電極10は、透明樹脂基材1の上に、複数の集電電極の細線パターン2,2を配設し、その上に透明導電膜3を積層したものである。さらに、透明導電膜3の上には、金属酸化物半導体膜5が積層されている。
また、図1において、透明樹脂基材1に向かって入射される外部光の入射角度に応じて細線パターン2,2が影となる金属酸化物半導体膜5の部分に隣接する透明導電膜3の表面にのみ、電気絶縁層4,4が配設されている。より具体的には、透明導電膜3の表面のうち、細線パターン2,2が設けられている位置に対応する凸形状をなす部分は、上面および両側面を有するが、その上面にのみ、電気絶縁層4,4が配設されている。
【0027】
図2に示すように、本発明による別の実施形態の色素増感型太陽電池の光電極20は、透明樹脂基材11の上に透明導電膜13を積層し、その上に複数の集電電極の細線パターン12,12を配設したものである。さらに、集電電極の細線パターン12,12の上には、金属酸化物半導体膜15が積層されている。
また、図2において、透明樹脂基材11に向かって入射される外部光の入射角度に応じて細線パターン12が影となる金属酸化物半導体膜15の部分に隣接する細線パターン12の表面にのみ、電気絶縁層14が配設されている。より具体的には、細線パターン12の凸形状をなす部分は、上面および両側面を有するが、その上面にのみ、電気絶縁層14が配設されている。
【0028】
透明樹脂基材1、11としては、可視領域で透明性を有し、一般に全光線透過率が90%以上のものが好ましい。具体的には、透明樹脂フィルム、透明樹脂板などが使用できる。
中でも、フレキシブル性を有する透明樹脂フィルムは、色素増感型太陽電池の取扱い性が優れている点で、好適に用いられる。
透明樹脂1,11に使用される透明樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの単層フィルム又は前記透明樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。
なお、必要に応じて、透明樹脂基材1,11の外面(図1,図2の下面)に、耐候性を付与するための樹脂をコートしてもよい。
【0029】
図1、2に示すように、光電極10、20は、透明導電膜3、13と、透明導電膜3、13に接続された集電電極の細線パターン2、12、及び金属酸化物半導体膜5,15とから構成されている。
なお、集電電極の細線パターン2,12は、金属酸化物半導体膜5,15に付着させた増感色素(図示は省略)で発生した光起電力を透明導電膜3,13に導いてから集電するものであって、一般的には色素増感型太陽電池の内部に貯蔵されている電解液(図示は省略)に接触しないようにするため、図1に示す構成では、集電電極の細線パターン2,2を透明導電膜3が覆うように配設され、一方図2に示す構成では、透明導電膜3の表面に集電電極の細線パターン2,2が形成されている。
図4に、本発明の色素増感型太陽電池の光電極のグリッド状の細線パターンを例示している。集電電極の細線パターン2,12の形状は、特に制限されないが、単純なパターン図形が簡単に作成できることから好ましい。
【0030】
透明導電膜3,13としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)等が好ましいが、膜の導電性、透明性、エッチングによるパターニングが容易なことからITOが特に好ましい。
透明導電膜3,13の形成は、加熱蒸着法、スパッタ法、CVD法、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、ゾル−ゲル法、ウェットコーティング法などの、公知の薄膜形成方法によって行うことができる。透明導電膜3,13の厚さは、200nm以下、好ましくは100nm以下である。
高い発電効率を得るためには、透明導電膜3,13の全光線透過率はなるべく高く、表面抵抗率はなるべく低いことが望ましい。全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。表面抵抗率は、好ましくは100Ω/□以下、より好ましくは10Ω/□以下である。
【0031】
導電性材料からなる集電電極の細線パターン2,12は、透明導電膜3,13よりも導電性の良い材料から構成することが好ましく、具体例としては、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、アルミニウム、鉄等の金属、前記金属を1種以上含む合金、カーボンなどが挙げられる。
また、集電電極の細線パターン2,12は、導電性の金属薄膜の細線パターン、または導電性の金属薄膜の細線パターンの上にメッキ層を積層した、メッキ積層の細線パターンからなる。
このようなメッキ層について、電解液に対する耐食性の観点から、図2に示す構成においては、透明導電膜3の表面に集電電極の細線パターン2,2が形成されているため、メッキ層の最外層に耐食性を有する貴金属メッキ層を被覆する必要があるが、図1に示す構成においては、透明導電膜3が集電電極の細線パターン2,2を覆うように配設されているため、このような耐食性を有する貴金属メッキ層は必ずしも必要ではない。
【0032】
また、この金属薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを印刷して形成した導電性薄膜、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して形成した導電性薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、金属箔をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜からなる群の中から選択されたいずれかの方法で形成されたものからなる。
【0033】
集電電極の細線パターン2,12は、透明樹脂基材1,11または透明導電膜3、13の上に設けられる。集電電極の細線パターン2,12の配線パターンを形成する方法には特に制限はなく、例えば、フォトリソによるエッチング法によるパターン化、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット方式など印刷によるパターン化、銀写真法でのフォトマスクを用いた露光による現像銀のパターン化、およびフォトマスクを用いた蒸着膜及びスパッタ膜のパターン化などの公知の方法を用いることができる。
【0034】
フォトリソによるエッチング法によれば、例えば、集電電極の細線パターン2,12の配線パターンは、透明樹脂基材1,11または透明導電膜3、13上に、加熱蒸着法、スパッタ法、CVD法、あるいは金属箔を積層して金属薄膜を形成し、フォトリソによるエッチング法により配線パターンを形成する。
また、印刷によるパターン化によれば、透明樹脂基材1,11または透明導電膜3,13の上に、インクジェット方式による印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷などの公知の方法にて導電ペーストを印刷して配線パターンを形成し、さらに、必要に応じて加熱焼成して導電ペーストに含有されるバインダーを除去することにより、集電電極の細線パターン2,12の導電性を高めてもよい。
導電性ペーストの材料としては、金、銀、銅、白金、ニッケルなどの電気伝導度の高い金属微粉末を混入させたものが用いられる。
【0035】
また、透明樹脂基材1,11または透明導電膜3,13の上に、インクジェット方式による印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷などの公知の方法にてメッキ触媒を印刷して配線パターンを形成し、その上に無電解メッキを施して導電性の配線パターンを形成してもよい。
また、銀写真法によるパターン化によれば、透明樹脂基材1,11の上に、銀写真法による露光・現像により現像銀の配線パターンを形成し、さらに必要に応じてその上に無電解メッキまたは電解メッキを施して、導電性の配線パターンを形成してもよい。
【0036】
集電電極の細線パターン2,12は、厚さt(図1参照)が15μm以下、好ましくは0.5〜7μmであって、線幅w(図1参照)が200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは40〜150μmである。集電電極2,12の厚さtが15μmを超えると、透明樹脂基材1,11に対して斜めに入射する光が遮られるため好ましくない。また、集電電極2,12の線幅wが200μmを超えると、開口率が小さくなり過ぎて太陽電池の発電効率が低下すると共に、金属線が見え易くなり好ましくない。
集電電極の細線パターン2,12の線幅wを細線化することで、光の回折、散乱等により、線幅wが大きい場合に比して電極基板の全光線透過率が向上し、太陽電池の発電効率を向上させることができる。
また、集電電極の細線パターン2,12の配線間隔p(図1参照)は、通常0.2〜50mmであり、好ましくは5〜30mmである。集電電極の細線パターン2,12の線幅wおよび配線間隔pについては、線幅wを広くし、配線間隔pを狭くするほど光起電力を集電し易くなる。しかし、集電電極の占める面積割合が大きくなる(開口率が低下する)と、入射光が遮られて発電効率が低下するので、発電効率を最適化できるように、集電電極の細線パターン2,12の線幅wおよび配線間隔pの最適値が決められる。
【0037】
電気絶縁層4,14は、上述のように、図1においては、透明導電膜3の上に形成され、一方図2においては、集電電極の細線パターン2,12の上に形成されており、透明樹脂基材1、11から金属酸化物半導体層5,15に向かって入射される外部光の入射角度に応じて集電電極の細線パターン2,12が影となる金属酸化物半導体層5,15の部分に隣接する透明導電膜3(図1)および細線パターン12(図2)の表面にのみ形成されている。
このことにより、色素増感型太陽電池の光電極において、透明樹脂基材から視て集電電極の細線パターンを金属酸化物半導体に投影した影の部分は外部光が入射されず、光起電力が発生しない部分であり、この部分を通して他の箇所で発生した光起電力が放電され、発電効率の低下が生じることを低減することが可能となる。
【0038】
電気絶縁層4,14は、環状ポリオレフィン系樹脂の組成物を塗布し、硬化させることにより形成することができる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂と非晶性樹脂の性質を合わせたような性質を示していて、耐熱性、アルコール等の耐極性溶剤性、寸法安定性、誘電特性に優れていて、吸湿性が極めて低い。また、環状ポリオレフィン系樹脂は、色素増感型太陽電池の電解液に使用される腐食性のヨウ素に対して、耐食性を持っていることから、本発明の電気絶縁層として好適に使用することができる。
【0039】
本発明に使用できる環状ポリオレフィン系樹脂とは、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンをモノマー単位として構成されるポリマーの総称である。具体的には、エチレン・環状オレフィン系共重合体、環状オレフィンの開環重合体、2種以上の環状オレフィンの開環重合体等及び上記重合体と各種ゴム状ポリマー、アミド系ポリマー及びエステル系ポリマー、弾性エラストマー等とのポリマーブレンド物が例示される。 このような、環状オレフィン開環重合体や環状オレフィン系共重合体を構成する代表的な環状オレフィンとしては、シクロペンタジエンおよびその誘導体、ジシクロペンタジエンおよびその誘導体、または、ノルボルナジエンおよびその誘導体等の環状ジエンのポリマ−ないしコポリマ−からなる透明な環状ポリオレフィン系樹脂が、耐候性、耐水性等に優れていることから好ましい。
具体的には、ノルボネン類とシクロペンタジエンとを縮合することにより製造される1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン類、ヘキサシクロ[6.6.1.1.1.0.0]ヘプタデセン−4類、エチレンとシクロペンタジエンから合成される5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が挙げられる。
【0040】
また、環状オレフィン共重合としては、環状オレフィン系化合物又は架橋多環式炭化水素系化合物とエチレンなどのアルキル誘導体やアクリレート誘導体を付加重合してなる共重合体、または前記重合体に炭化水素系重合体、塩素含有重合体、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、不飽和酸、不飽和アルコール誘導重合体、アミン誘導重合体などの重合体を混合したものを含む。
また、本発明に使用できる環状ポリオレフィン系樹脂には、上記に挙げた環状ポリオレフィン系樹脂に、他の樹脂をブレンドして形成したポリマーアロイを用いることも好ましい。
【0041】
電気絶縁層4,14は、環状オレフィン系樹脂組成物である熱硬化性樹脂溶液、または、さらにシリカ粉末、テフロンコート剤などの添加物を溶解させた塗布液などをインクジェット方式による印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷などの公知の方法にて印刷して形成することができる。
例えば、図2に示す光電極においては、まず、透明樹脂基材11の上に透明導電膜13を形成し、さらに集電電極の細線パターン12,12を形成した、光電極板を用意する。
次に、この光電極板の集電電極12,12の上面に、集電電極の細線パターン12,12の配線パターンに応じた位置になるように、環状オレフィン系樹脂組成物の熱硬化性樹脂溶液を、インクジェット方式による印刷、スクリーン印刷などの方法にて塗布した後、加熱処理を行い、硬化性樹脂を反応硬化させて、電気絶縁層14となる硬化被膜を形成する。
なお、硬化性樹脂の代わりにシリカ粉末を溶解させた塗布液を、集電電極の細線パターン12,12の配線パターンに応じた位置になるように、インクジェット方式による印刷、スクリーン印刷などの方法にて塗布した後、加熱処理を行い電気絶縁層14となる硬化被膜を形成してもよい。
【0042】
図1、図2に示すように、色素増感型太陽電池の発電層は、分光増感色素が担持された金属酸化物半導体膜5,15と、電解質(特に電解液)とからなる(図示を省略)。金属酸化物半導体膜5,15は光電極10,20の透明導電膜3,13の上に膜状に形成されている。電解質は、光電極10,20と図示していない対極との間に封入されており、金属酸化物半導体膜5,15と対極との間の空隙を充填するのみならず、金属酸化物半導体膜5,15の内部にも浸透している。
【0043】
前記金属酸化物半導体膜5,15としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化マグネシウム(MgO)等の公知の1種以上の金属酸化物半導体からなる多孔質の膜を用いることができる。金属酸化物半導体としては、安定性や安全性の点から、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸等の各種の酸化チタン又は水酸化チタン、含水酸化チタンの微粒子からなるものが好ましい。
この金属酸化物半導体膜5の膜厚としては、一般的には10nm以上であり、100nm〜20μmが好ましい。
【0044】
前記分光増感色素は、金属酸化物半導体膜5,15を構成する金属酸化物半導体の表面に、単分子膜として吸着されるものである。この分光増感色素は、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つものであり、種々の金属錯体や有機色素を1種以上用いることができる。例えば、分光増感色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基の官能基を有するものが、金属酸化物半導体膜5への吸着が速いため、好ましい。また、分光増感の効果や耐久性に優れている観点から、金属錯体が好ましい。この金属錯体としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミンや、公知のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛等の錯体を用いることができる。
また、有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン色素を用いることができる。
【0045】
また、光電極2、12と対極との間に封入する電解質としては、I/I系や、Br/Br系、キノン/ハイドロキノン系等のレドックス電解質を含む電解液が挙げられる。このような電解液は、エタノールやアセトニトリルなどの溶媒にヨウ化リチウムやヨウ素などを溶解させるなど、従来公知の方法によって得ることができる。また、電解質は、液体電解質又はこれを高分子物質中に含有させた固体高分子電解質であってもよい。
【0046】
本形態例の色素増感型太陽電池の光電極を製造する手順は、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示す代表的な光電極の製造は、次の手順による。
まず、透明樹脂基材1の上に、集電電極の細線パターン2,2が形成され、その上に透明導電膜3、さらに電気絶縁層4,4が形成された光電極基板を用意する(図1参照)。
この光電極基板の上に分光増感色素が担持された金属酸化物半導体膜5を形成する。
金属酸化物半導体膜5の形成には、気相成膜法(真空成膜法)、物理蒸着法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、マグネトロンスパッタリング法、CVD法等の公知の薄膜形成法を用いることができる。
また、分光増感色素の担持は、分光増感色素を適宜の有機溶媒に溶解した溶液中に、常温又は加熱下で金属酸化物半導体膜5を設けた光電極基板を浸漬させればよい。
【0047】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、電気絶縁層4,14は、図1および図2において、集電電極の細線パターン2,12の上方部分のみに配設されているが、色素増感型太陽電池の光電極10,20の受光面積が極度に狭くならない範囲において、外部入射光の入射角度に応じて電気絶縁層4,14が集電電極の細線パターン2,12の側面部分を覆うように配設してもよい。
また、本発明の色素増感型太陽電池において、軽量で柔軟性を有する透明樹脂基材および樹脂製の絶縁層を採用することにより、軽量で持ち運びに便利であり、落下時等の衝撃性に強いことから、屋内用のポータブルな色素増感型太陽電池ユニットとして利用すればより有利である。特に、室内光を利用することにより、屋外で太陽自然光を利用するタイプと異なり、太陽電池に対する光の入射角度を一定にすることが可能であり、金属酸化物半導体膜のうち、集電電極が影となって光起電力が発生しない部分を常時一定の部分にすることが可能であり、この意味において、逆放電を防止するための樹脂製の絶縁層を設ける範囲を光の入射角度との関係において、限定した部分に制限することが可能である。
【実施例】
【0048】
図1に示した、本発明の色素増感型太陽電池の光電極を作成し、事前に準備した対極と組み合わせて色素増感型太陽電池セルとし、以下に示すような試験・測定装置および測定方法にて、光電変換効率などの発電性能を測定した。
(試験・測定装置)
(1)標準光源:ソーラシュミレーター(ペクセル・テクノロジーズ(株)、型式:PEC−L11)
(2)試験装置:電流電圧特性計測装置(ペクセル・テクノロジーズ(株)、型式:PECK2400−N)
(測定方法)
色素増感型太陽電池セルの発電性能の測定:キセノンランプを光源としたソーラシュミレーター(ペクセル・テクノロジーズ(株)、型式:PEC−L11)を用いて、UVカットフィルターと太陽光標準スペクトル(AM1.5)フィルターを通して100mW/cm2の強度の疑似太陽光を、色素増感型太陽電池セルに当てることにより発電性能(短絡電流、開放電圧、フィルファクター(形状因子)、光電変換効率)の測定を行った。
【0049】
(実施例1)
次に示す手順により、図1及び図4に示した色素増感型太陽電池の光電極を用意した。
透明樹脂基材として、厚みが100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂フィルムを用いた。図4に示した、色素増感型太陽電池セル用の集電電極の細線パターンを作成するため、集電電極の細線パターンは、線幅Wが150μm、集電電極の細線パターンの間隔Pが5mmであって、縦方向の長さL2が100mm、横方向の長さL1が20mm(図4参照)の細線パターンを、スクリーン印刷による印刷方法にて作成した。
次に、スズをドープした酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜を、スパッタ装置を用いて作成した。次に、集電電極の細線パターンの上に、スクリーン印刷の印刷方法により、厚み3μmの電気絶縁層を形成した。今回用いた電気絶縁層は、環状ポリオレフィン系樹脂のうち、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解したコート剤を用いて形成したものである。
次に、スクリーン印刷の印刷方法により、酸化物半導体層の積層を行なった後、酸化物半導体層に、増感色素(品番:N719)を吸着させた。次に、接着剤を介して光電極と、事前に準備した対極を組み合わせ、最後に電解液を入れて色素増感型太陽電池セルを作成した。
作成した太陽電池セルに、ソーラーシミュレータを用いて試験した結果、出力電圧は0.71V、出力電流は176.0mAであり、フィルファクター(形状因子)は0.72であり、光電変換効率は4.5%であった。
【0050】
(比較例1)
実施例1において、集電電極の細線パターンの上に電気絶縁層を設けない以外は、同様の方法にて色素増感型太陽電池セルを作成し、図3に示すような従来構造を比較例1とした。
作成した比較例1の色素増感型太陽電池セルを試験した結果、出力電圧は0.70V、出力電流は24.6mAであり、フィルファクター(形状因子)は0.58であり、光電変換効率は0.5%であった。
【0051】
以上のことから、実施例1と比較例1とを比較すると、出力電圧は略同じであるが、出力電流は、約7倍、フィルファクターは、約1.2倍となっており、実施例1の光電変換効率は、比較例1に比べて著しく向上していることが分かった。
従って、本発明による色素増感型太陽電池の光電極において、透明樹脂基材側から視て少なくとも前記集電電極の細線パターンの形状が投影される部分に電気絶縁層を設けることにより、色素増感型太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、発電効率が高い色素増感型太陽電池の光電極構造、及びそれを用いた色素増感型太陽電池に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の色素増感型太陽電池の光電極の第1形態例を示す部分断面図である。
【図2】本発明の色素増感型太陽電池の光電極の第2形態例を示す部分断面図である。
【図3】従来技術による色素増感型太陽電池の光電極を示す部分断面図である。
【図4】本発明の色素増感型太陽電池の光電極の細線パターンを例示する部分拡大平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1,11,31…透明樹脂基材、2,12,32…集電電極の細線パターン、3,13,33…透明導電膜、4,14…電気絶縁層、5,15,35…金属酸化物半導体、10,20…本発明の光電極、30…従来技術の光電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂基材の片面に、導電性材料からなる集電電極、透明導電膜、金属酸化物半導体膜がこの順に積層して形成され、さらに金属酸化物半導体膜に有機色素が付着され、前記集電電極は、導電性の金属薄膜の細線パターンまたは、導電性の金属薄膜の細線パターンを金属メッキ層により被覆した細線パターンからなり、さらに、前記透明樹脂基材側から前記金属酸化物半導体膜に向かって入射される外部光の入射角度に応じて前記集電電極の細線パターンが影となる前記金属酸化物半導体膜の部分に隣接する前記透明導電膜の表面にのみ、樹脂製の電気絶縁層が配設されていることを特徴とする色素増感型太陽電池の光電極構造。
【請求項2】
透明樹脂基材の片面に、透明導電膜、導電性材料からなる集電電極、金属酸化物半導体膜がこの順に積層して形成され、さらに金属酸化物半導体膜に有機色素が付着され、前記集電電極は、導電性の金属薄膜の細線パターンを金属メッキ層により被覆した細線パターンからなり、
さらに、前記透明樹脂基材側から前記金属酸化物半導体膜に向かって入射される外部光の入射角度に応じて前記集電電極の細線パターンが影となる前記金属酸化物半導体膜の部分に隣接する前記集電電極の細線パターンの表面にのみ、樹脂製の電気絶縁層が配設されていることを特徴とする色素増感型太陽電池の光電極構造。
【請求項3】
前記金属薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、金属粒子、カーボンナノ粒子もしくはカーボンファイバーの中から選択された1種以上を含有する導電性ペーストを印刷して形成した導電性薄膜、無電解メッキ触媒を含有するペーストを印刷して形成した導電性薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、金属箔をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池の光電極構造。
【請求項4】
前記樹脂製の電気絶縁層は、環状ポリオレフィン系樹脂を用いて形成された薄膜である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池の光電極構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池の光電極構造と、この光電極構造に対向して設けられた対極と、両電極間に設けた電解質とを有する色素増感型太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−34158(P2010−34158A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192662(P2008−192662)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】