説明

色素増感太陽電池を使用したモーター回路

【課題】本発明の目的は、色素増感太陽電池を使用し、屋内のような低照度条件でも、所望の間隔でモーターを駆動させることができるモーター回路を提供することにある。
【解決手段】モーター回路10は、光電変換をおこなう色素増感太陽電池12、発電された電力を蓄電するキャパシタC1、モーターM、および発光を制御する制御回路14を備える。キャパシタC1の内部抵抗が小さいことが好ましい。モーターMにファンを取り付け、ファンを回転させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池を使用したモーター回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池を使用した種々の回路が開発されている。例えば、下記の特許文献1には、太陽電池で発電された電力を利用した空気清浄機が開示されている。空気清浄機のファンを駆動させるために図6に示すモーター回路100が示されている。太陽電池102で発電された電力がキャパシタC4に充電される。充電電圧が所定電圧になると、サイリスタSCRのゲートGがオンになり、キャパシタC4の充電電流がモーターMに流れる。放電によってモーターMが駆動し、ファンが回転する。キャパシタC4の充電と放電によってファンが間欠的に回転する。
【0003】
しかし、屋内の光量は屋外の光量に比べて2桁ほど低く、シリコン系の太陽電池102は光電変換効率が著しく低下して、補助光照明を必要とするなど屋内での使用には向かない。サイリスタSCRを使用しているため、キャパシタC4の充電と放電の間隔を調節することができず、放電が完了するまでモーターMが駆動させられる。キャパシタC4の容量によって駆動時間が固定される。キャパシタC4の充電に時間が掛かれば、ファンを回転させる間隔が長くなり、空気清浄機としての機能が発揮できなくなる。キャパシタC4の充電時間を考慮してその容量を小さくすると、サイリスタSCRのオンやモーターMを駆動させるだけの充電がおこなえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録公報第2556986号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、色素増感太陽電池を使用し、屋内のような低照度条件でも、所望の間隔でモーターを駆動させることができるモーター回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
モーター回路は、光電変換によって発電する色素増感太陽電池と、前記色素増感太陽電池の発電した電力を蓄電するキャパシタと、前記色素増感太陽電池およびキャパシタからの電力によって駆動するモーターと、前記色素増感太陽電池の発電した電力によって駆動し、モーターの駆動時間および駆動間隔を制御する制御回路とを備える。
【0007】
色素増感太陽電池で発電をおこない、キャパシタを充電する。キャパシタからの放電電流を利用して、モーターを駆動させる。制御回路がモーターを停止させるとき、キャパシタの充電がおこなわれる。
【0008】
前記キャパシタにおいて、内部抵抗による電圧降下後の放電電流が、モーターの駆動電流よりも高くなるようにする。キャパシタとしてはPASキャパシタが含まれる。キャパシタからの放電電流は、モーターを駆動させるだけの駆動電流が確保される。
【0009】
前記制御回路は、キャパシタの放電が完了する前にモーターの駆動を終了させる。キャパシタを完全に放電させる前に充電をおこなう。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、色素増感太陽電池によって室内(1000Lux以下)であっても発電効率を落とすことなくモーターを駆動させることができる。従来のサイリスタを使用した回路と異なり、制御回路によってモーターの駆動時間および駆動間隔を制御することができる。完全に放電する前にモーターの駆動を停止することができ、キャパシタの充電に時間が掛からない。内部抵抗の小さいキャパシタを使用することによって、モーターの駆動電流を確保でき、モーターを駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】モーター回路の構成を示す回路図である。
【図2】色素増感太陽電池の構造を示す断面図である。
【図3】8個のセルにした色素増感太陽電池の正面図である。
【図4】電池特性を示すグラフであり、(a)は太陽光でのIV特性であり、(b)は屋内照明でのIV特性である。
【図5】モーターを1秒間駆動させた場合の電圧変動を示す図である。
【図6】従来のモーター回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について図面を使用して説明する。
【0013】
図1に示すモーター回路10は、光電変換をおこなう色素増感太陽電池12、発電された電力を蓄電するキャパシタC1、モーターM、およびモーターの駆動時間および駆動間隔を制御する制御回路14を備える。
【0014】
色素増感太陽電池12は、金属酸化物半導体多孔膜を利用した太陽電池である。シリコン系太陽電池に比べて、高価な材料や真空成膜などのプロセスが必要でなく、安価および簡単に製造することができる。
【0015】
色素増感太陽電池12は、光電極基板16と対極基板18とを対向させて、その周辺部分がシール材で張り合わされている(図2)。光電極基板16と対極基板18との間には電解液20が充填される。
【0016】
光電極基板16は、透明樹脂フィルム22、透明樹脂フィルム22の上に形成された透明電極24、透明電極24の上に形成された金属酸化物半導体多孔膜26、および金属酸化物半導体多孔膜26に担持させた光増感色素28を備える。
【0017】
透明樹脂フィルム22は光の入射側に配置される。光を透過させて適度な強度を有すれば種々の材料を使用することができるが、金属酸化物半導体多孔膜26の成膜などで熱処理が必要なため、耐熱性が有する材料が好ましい。また、耐熱性に加えて耐薬品性の高いものも好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、透明ポリイミド、環状ポリオレフィンなどが挙げられる。透明樹脂フィルム22の厚みを約20μm〜1mmにすることによって、適度な剛性と柔軟性を持たせることができる。
【0018】
透明電極24は、例えば、ITO、SnO、ZnO、GZO、AZO、FTOなどの透明性のある酸化物半導体からなるものが挙げられる。ITOは、抵抗率が小さく安定であり、透明性が高いため好ましい。透明電極24は、スパッタリング、CVD、蒸着、イオンプレーティングなどのドライ成膜法や、上記の酸化物半導体から成る微粒子を溶媒に分散して塗布成膜するウェット成膜法によって形成することができる。
【0019】
また、溶媒に分散させた金属微粒子を塗布や印刷することにより、金属細線によるメッシュ状の電極を透明電極24としても良い。金属細線の無い部分を光が通過し、金属細線は電極として機能する。スパッタリングなどと比べて、真空チャンバーなどの成膜装置が必要でなく、製造が非常に容易である。その場合にはチタンやステンレスなどの耐食性のある金属微粒子は高い導電性を有するため好ましい
【0020】
透明樹脂フィルム22と透明電極24との間には、透明電極24の密着性向上や傷つき防止のためにハードコート層を形成しても良い。
【0021】
金属酸化物半導体多孔膜26は、ナノサイズの微小孔が内部に網目状に形成されたメソポーラスな半導体膜である。金属酸化物半導体多孔膜26の材料としては亜鉛酸化物やチタン酸化物が挙げられる。亜鉛酸化物を用いる場合、酸化亜鉛微粒子の塗布成膜法や酸化亜鉛の電析法によって、金属酸化物半導体多孔膜26を形成することができる。酸化亜鉛微粒子の塗布成膜法としては、酸化亜鉛微粒子を溶媒とバインダーに分散してペースト化し、スピンコートやバーコート等によって塗布成膜する方法や、スクリーン印刷法等で成膜した後に溶媒乾燥して成膜する方法がある。酸化亜鉛の電析法は、酸素バブリングした塩化亜鉛水溶液中で、透明電極基板に所定の電圧を印加して酸化亜鉛をめっきする方法であり、テンプレート色素を併用して多孔性を制御することができる。
【0022】
亜鉛酸化物を用いる場合、金属酸化物半導体多孔膜26の膜厚は、約2μm〜20μmである。2μm未満であると、色素担持量が少なくなるために、色素増感太陽電池12の光電変換特性が低下する。20μmを超えると、金属酸化物半導体多孔膜26の電子拡散長が限られているため、光電変換に寄与しない部分が発生したり、多孔膜中への電解液の浸入が困難になることもあり、光電変換特性が低下する。
【0023】
光増感色素28は、光エネルギーにより電荷分離を発生し、電子を金属酸化物半導体多孔膜26に効率よく注入するものである。光増感色素28としては、ルテニウム等の金属を含有しない有機色素が挙げられる。有機色素としては、金属酸化物半導体多孔膜26に強固に吸着させるために官能基を有するものが好ましい。上記官能基としては例えば、カルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が挙げられる。有機色素としては、具体的には例えば、キサンテン系色素、クマリン系色素、トリフェニルメタン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、フラノシアニン系色素、アゾ色素、スクアリリウム系色素等が挙げられる。
【0024】
光増感色素28を担持させる方法としては、光増感色素28を含有する溶液に、金属酸化物半導体多孔膜26が形成された樹脂フィルム22を浸漬した後、乾燥を行なう方法が挙げられる。浸漬時間は約5分〜2時間である。5分未満であると、光増感色素28の溶液が金属酸化物半導体多孔膜26の内部にまで充分に浸透しないことがあり、2時間を越えると、金属酸化物半導体多孔膜26への光増感色素28の吸着が多くなり、吸着色素の積層吸着が発生し、発電に寄与しない色素の増加や、金属酸化物半導体多孔膜26への電子の流れの阻害、金属酸化物半導体多孔膜26への電解液20の浸入の阻害等が起こり、光電変換特性が低下することがある。
【0025】
また、光増感色素28を担持させるために使用する光増感色素28の溶液に使用する溶媒としては、光増感色素28を溶解して、透明樹脂フィルム22や透明電極24を劣化させないものを使用する。例えばエタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル等が挙げられる。
【0026】
対極基板18は、樹脂フィルム30の上に電極32と触媒層34を順番に積層形成したものである。対極基板18の樹脂フィルム30と電極32は光電極基板16と同様の透明樹脂フィルム22と透明電極24を使用してもよいが、光透過の必要性はないため、透明でなくても良い。例えば電極32は、チタン、タングステン、ステンレス等の耐食性のある金属やカーボン、グラファイト等の炭素材料を用いることができる。触媒層34は、白金、カーボン、ポリチオフェンやポリアニリン等の導電性ポリマーを用いることができる。
【0027】
シールは、光電極基板16と対極基板16を貼り合せてセルを構成し、内部に電解液20を保持するための物である。シールを構成する材料としては、各種の接着剤や粘着剤が使用可能であるが、電解液20と反応せず、電解液20の溶媒に対して不活性な材料であり、フィルム基板と密着性の良いシリコーン系やフッ素系の接着剤、粘着剤が好適に使用できる。また、アイオノマー樹脂フィルムによる熱融着も好適に使用される。
【0028】
電解液20は、電子がリークしない絶縁性であって、イオン導電性の電解質溶液であり、ヨウ素イオンを含むものである。光反応により光増感色素28で発生し、透明電極24に拡散した電子を補充するため、ヨウ素イオンの酸化還元反応とイオンの拡散により、対極電極32から電子を伝えることで太陽電池回路を構成する。
【0029】
ヨウ素イオンを含む電解質溶液としては、ヨウ化リチウム、テトラ-n-プロピルアンモニウムヨージド、フェニルトリメチルアンモニウムヨージド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド、ヨウ素イオンをアニオンとするイミダゾリウム塩である1,2−ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムイオダイド、1−メチル-3-プロピルイミダゾリウムイオダイド、1-メチル-2,3−ジメチルイミダゾリウムイオダイド、1-ブチルー2,3−ジメチルイミダゾリウムイオダイド、1-プロピルー3−メチルイミダゾリウムイオダイド、1-ブチルー3−メチルイミダゾリウムイオダイド等がある。
【0030】
電解液20は有機溶媒溶液をイオン導電性の電解質溶液としたものを用いても良い。例えば、エタノール等の低級アルコール、ニトリル系のアセトニトリル、メトキシプロピオニトリルや炭化水素系のプロピレンカルボナート、ジエチルカルボナート、γーブチロラクタンやポリエチレングリコール等の多価アルコール、イミダゾリウム塩等のイオン液体が挙げられる。
【0031】
色素増感太陽電池12の製造は、まず下記(1)から(4)の順番で光電極基板16を製造する。(1)透明樹脂フィルム22を準備する。例えば、PENフィルム(帝人デュポン製、厚み200μm)を所望の大きさに切断し、UV硬化アクリル樹脂のハードコートを施す。
【0032】
(2)透明樹脂フィルム22の上に透明電極24を形成する。透明樹脂フィルム22の上にITO膜の透明電極24を形成する場合、DCスパッタリング法によって形成する。例えば、アルゴンガス流量50sccm、酸素ガス流量1.5sccm、電圧370V、電流2Aの条件で20分成膜した場合、表面抵抗は24Ω/□である。ITO膜は、所望形状にパターンニングしても良い。例えば、図3に示すように、8個のセル36になるようにパターニングする。
【0033】
(3)金属酸化物半導体多孔膜26を形成する。形成方法は、酸化亜鉛微粒子のペーストの印刷により金属酸化物半導体多孔膜26を成膜する方法が挙げられる。具体的には、まず酸化亜鉛微粒子(テイカ製MZ-500)を溶媒とバインダーに混合分散してペーストを作製し、このペーストをスクリーン印刷し、溶媒を乾燥させる。スクリーン印刷する際、セルの形状に合わせてスクリーン印刷する。後述する8セルの色素増感太陽電池12であれば、8×82mmの矩形状を8面並べたパターンでスクリーン印刷する。溶媒の乾燥を100℃、30分でおこなう。
【0034】
(4)光増感色素28を担持させる。上記(3)で溶媒を乾燥させた後、色素溶液に金属酸化物半導体多孔膜26を浸積させる。例えば、三菱製紙製有機色素D149 0.5mMとデオキシコール酸1mM/Lとをt-ブタノールとアセトニトリルの1:1混合溶媒に溶解した色素溶液に40分浸積して、光増感色素28を担持させる。
【0035】
また、下記の(5)から(7)の順番で対極基板18を製造する。(5)樹脂フィルム30を準備し、(6)樹脂フィルム30の上に電極32を形成する。(5)と(6)は上記(1)と(2)と同様の方法であっても良い。
【0036】
(7)電極32の上に触媒層34を形成する。触媒層34として白金を使用する場合、スパッタリング法によって成膜する。
【0037】
最後に色素増感太陽電池12の組み立てとして、(8)光電極基板16と対極基板18とを対向させ、光電極基板16と対極基板18との間に電解液20を満たしながら、両基板16、18の周辺部分を封止する。具体的には、(a)光電極基板16と対極基板18と重ねて、その周辺部を封止して空セルを制作する。空セルには電解液20の注入口を設けておく。封止は、シールとしてアイオノマー樹脂フィルムを使用し、それを熱溶着する。(b)注入口から電解液20を注入し、注入口を封止する。空セルに電解液(ヨウ素0.1mol/L、1,2−ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムイオダイド1.0mol/L、溶媒としてプロピレンカルボナート)を注入し、UV硬化樹脂で注入口を封止する。
【0038】
以上の工程(1)〜(8)によって製造した色素増感太陽電池12は、シリコン系太陽電池に比べて製造が容易である。また、低照度の屋内であっても、出力電圧が落ちにくく(図4(a)、(b))、シリコン型太陽電池のように屋内で急激な光電変換効率の低下がおきない。
【0039】
上記の製造方法で、大きさ100×87mm、厚み250μmの色素増感太陽電池12を製造した。図3のように8つのセル36を直列接続しており、1つのセル36は82×8mmである。この色素増感太陽電池12について、光源の輝度を1sun(100mW/cm)にして、ソーラーシュミレーター(山下電装社製YSS-50)で測定した特性は、開放電圧Vocが4.45V、短絡電流Jscが24.39mA、曲線因子FFが0.48、変換効率ηが1.01%であった。また同じ色素増感太陽電池12について、一般的な屋内における照度に近い450lxの明るさでの光電変換特性を測定した。得られたIV曲線より(図4(b))、最適動作条件は、1.8Vの150μAになることがわかった。なお、色素増感太陽電池12は、必要な電力に応じて色素増感太陽電池12の数、セル36の大きさおよびセル36の数を変更しても良い。
【0040】
色素増感太陽電池12の陽極には、キャパシタC1が接続される。キャパシタC1の容量は、0.2〜1.0Fが好ましい。1.0F以上では、充電にかかる時間が長くなる。0.2F以下では、充電量が不十分であり、モーターを所望の時間駆動させ難い。色素増感太陽電池12とキャパシタC1の間には、逆流防止用のダイオードD1が接続される。キャパシタC1は複数個であっても良く、複数のキャパシタC1が直列、並列、または直並列に接続されてもよい。キャパシタC1として、内部抵抗の小さいPASキャパシタを使用することができる。PASキャパシタの形状としては、円筒型、ボタン型、薄膜型など種々の形状が使用できる。
【0041】
キャパシタC1の内部抵抗が小さいことが好ましく、例えば内部抵抗は4Ω以下である。内部抵抗を小さくすることによって、キャパシタC1での電圧降下を小さくし、電圧降下後の放電電流がモーターMの駆動電流よりも高く維持することができる。
【0042】
モーターMは、光電池用の直流モーターである。モーターMの回転は、制御回路14によって制御される。制御回路14の端子PにモーターMの一端が接続されている。制御回路14の内部において、端子PにMOSFETなどのスイッチング素子を接続し、スイッチング素子のオンとオフの時間を制御することによって、モーターMの駆動時間と駆動間隔(停止時間)を制御する。モーターMが停止している間にコンデンサC1の充電がおこなわれる。
【0043】
制御回路14によってモーターMをオン・オフしたときのモーター端子間電圧V1とキャパシタ端子間電圧V2の変化を図5に示す。モーターMはマブチモーター製RF330TKであり、光照度が450lx、色素増感太陽電池12は図3のように8つのセル36を直列接続したものである。モーターMがオンになっている時間は1秒である。モーターMがオンになったとき、キャパシタ端子間電圧V2が降下している。モーターMがオフになったとき、キャパシタ端子間電圧V2が徐々に上昇する。なお、モーターMがオンになったとき、キャパシタC1以外に色素増感太陽電池12で発電中の電力もモーターMの駆動に利用される。
【0044】
制御回路14の電源入力端子Vccは色素増感太陽電池12に接続されており、色素増感太陽電池12の発電電力の一部を使用して駆動する。そのため、制御回路14は低消費電力のマイクロコントローラが好ましい。例えば、0.5μAで駆動可能なテキサスインスツルメンツ社製のMSP430G2001を例示できる。MSP430G2001は、上述したモーターMのオン・オフ時間をプログラミングによって変更することができる。なお、端子Vssは電源入力端子Vccと対で使用される端子であり、色素増感太陽電池12の陰極に接続されている。
【0045】
制御回路14のリセット入力のために、抵抗R1とキャパシタC2からなるCR回路が設けられる。CR時定数で決定される立ち上がりの電圧がリセットRSTに入力され、その電圧が所定の閾値を超えたときに制御回路14がオンになる。
【0046】
制御回路14の電源入力端子Vccには、制御回路14の電源の安定化のために、キャパシタC3が接続される。キャパシタC3としてはセラミックコンデンサなどが挙げられる。色素増感太陽電池12の発電量の変化が起きても制御回路14に対する急激な電圧変動を起こさせないようにする。例えば、容量が0.1μFのセラミックコンデンサなどを使用する。
【0047】
また、制御回路14の電源入力端子Vccには、電気二重層コンデンサやリチウムイオンなどの二次電池(図示せず)を接続してもよい。二次電池によって色素増感太陽電池12の発電が停止しても制御回路14を駆動させることができる。二次電池は、一気に電荷を放出することがない。徐々に電荷を放出することにより、制御回路14の駆動できる時間を長くできる。
【0048】
モーターMは種々の物を間欠的に駆動させる駆動源となる。例えば上記のモーター回路10は、商品展示具において、モーターMの回転軸に動作部分を取り付け、動作部分を間欠的に駆動させ、アイキャッチ効果を得ることができる。
【0049】
次に、上記図1のモーター回路10において、マブチモーター株式会社製のRF330TKの直流モーターを使用した実験結果を表1および表2に示す。実験は上述した図4の特性を有する図3の色素増感太陽電池12を4個直列したものを使用し、キャパシタC1の種類を変更している。制御回路14はテキサスインスツルメンツ社製のMSP430G2001である。表1はモーターMが駆動しており、表2はモーターMが駆動しなかった場合である。表1において駆動開始時間は、色素増感太陽電池12への光照射を開始してから最初にモーターMが駆動するまでの時間である。1回のモーターMの駆動は1秒であり、間欠的に駆動する。
【0050】
なお、各実験に用いたコンデンサは、No.1、No.3〜No.7及びNo.11が太陽誘電株式会社製PAS0815LR2R3105、No.2が太陽誘電株式会社製PAS2126FR2R5504、No.8〜No.10及びNo.16〜No.17がニチコン株式会社製JUMT1474MED、No.12がパナソニック株式会社製EECS0HD224V、No.13が太陽誘電株式会社製PAS409HR-VA5R、No.14が太陽誘電株式会社製PAS414SR-VA5R、No.15が太陽誘電株式会社製PAS414HR-VA5R、No.18がNECトーキン株式会社製FYD0H224ZF、No.19がパナソニック株式会社製EECS0HD104V、No.20がパナソニック株式会社製EECS0HD474Vである。
【0051】
【表1】

【表2】

【0052】
表1と表2より内部抵抗が4Ω以下の場合にモーターMを駆動させることができることがわかる。キャパシタC1の容量が小さくなれば最初のモーターMの駆動までの時間を短くすることができる。
【0053】
また、表1のNO.7の条件でモーターMを変更した場合の駆動の有無を表3に示す。モーターMのコイルインダクタンスや端子間抵抗の測定はHP製4284Aを使用しおり、測定周波数1kHz、電圧1Vである。
【0054】
【表3】

【0055】
表3よりコイルインダクタンスが24mHより大きくなるとモーターMが駆動することが分かる。
【0056】
以上のように、電源に色素増感太陽電池12を使用することによって、光量の少ない屋内の使用であっても、シリコン系太陽電池よりも出力電圧を落としにくく、モーターMを駆動させることができる。キャパシタC1の内部抵抗を小さくすることによって、モーターMに流れる駆動電流を確保できる。キャパシタC1を完全に放電せずにモーターMの駆動を停止させることによって、次のモーター駆動までの時間を短くすることも可能であり、モーターMの駆動間隔を適宜調節することができる。
【0057】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0058】
10:モーター回路
12:色素増感太陽電池
14:制御回路
16:光電極基板
18:対極基板
20:電解液
22:透明樹脂フィルム
24:透明電極
26:金属酸化物半導体多孔膜
28:色素
30:樹脂フィルム
32:電極
34:触媒層
36:セル
C1,C2,C3:キャパシタ
M:モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換によって発電する色素増感太陽電池と、
前記色素増感太陽電池の発電した電力を蓄電するキャパシタと、
前記色素増感太陽電池およびキャパシタからの電力によって駆動するモーターと、
前記色素増感太陽電池の発電した電力によって駆動し、モーターの駆動時間および駆動間隔を制御する制御回路と、
を備えたモーター回路。
【請求項2】
前記キャパシタにおいて、内部抵抗による電圧降下後の放電電流が、モーターの駆動電流よりも高い請求項1のモーター回路。
【請求項3】
前記制御回路は、キャパシタの放電が完了する前にモーターの駆動を終了させる請求項1または2のモーター回路。
【請求項4】
前記キャパシタは、PASキャパシタを含む請求項1から3のいずれかのモーター回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−9507(P2013−9507A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140186(P2011−140186)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22〜24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽エネルギー技術研究開発/太陽光発電システム次世代高性能技術の開発/フィルム型軽量低価格色素増感太陽電池の研究開発(フィルム型モジュールの研究開発)」に係る委託研究、産業技術力強化法第19の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】