説明

芯材付きセラミックス建材

【課題】曲がり部を有し、かつ中空部に芯材が挿通された芯材付きセラミックス建材を提供する。
【解決手段】セラミックス建材10は四角筒形を有し、長手方向における中央部は弧状の湾曲部12となり、その両端は直線状の一端部11及び他端部13となっている。該セラミックス建材10の中空部14に芯材20が配置されている。この芯材20は、セラミックス建材10の長手方向の一端側から他端側にわたり延在する長板部21と、該長板部21の両端部の上側及び下側の長側辺に連なる耳片部22A及び耳片部22Bとを備えている。該長板部21は、該中空部14の内径面10aに対面している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に延在する中空部を有するセラミックス建材と、該中空部に配置された芯材とを有する芯材付きセラミックス建材に関する。
【背景技術】
【0002】
直線状のセラミックス建材の長手方向に中空部を設け、該中空部に芯材を配置してなる芯材付きセラミックス建材は周知である。
【0003】
例えば、特開2001−317137号には、長尺の筒状レンガの連通孔内の全長にわたり金属芯材を配置し、これら筒状レンガと芯材とを接着剤で接着してなる芯材付き長尺レンガが記載されている。
【0004】
また、特開2002−180627号には、長手方向に延在する貫通孔を有する耐火材料よりなる化粧羽根に形鋼が挿通され、該形鋼が建物構造体に支持されてなるルーバーが記載されている。
【特許文献1】特開2001−317137号
【特許文献2】特開2002−180627号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2001−317137号の芯材付き長尺レンガ及び特開2002−180627号のルーバーは直線形となっている。これら直線形のセラミックス建材を建物の角部等に施工する場合、各建材の一端部を45°にカットした形状とし、該角部をなす2つの壁面のそれぞれにセラミックス建材を配置し、これらセラミックス建材の該一端部同士を該角部において突き合わせる必要がある。しかしながら、この場合、該突き合わせ部分に隙間が生じることになり、美観に劣ると共に、該隙間から雨水等が浸入するという問題がある。
【0006】
また、建物の角部に合わせて屈曲させたセラミックス建材を用いる場合、該セラミックス建材の中空部に芯材を挿通する際に該屈曲部に芯材が引っ掛かり、芯材を挿通させることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、曲がり部を有し、かつ中空部に芯材が挿通された芯材付きセラミックス建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の芯材付きセラミックス建材は、長手方向に延在する中空部を有するセラミックス建材と、該中空部に配置された芯材とを有する芯材付きセラミックス建材において、該セラミックス建材の少なくとも一部が弧状に曲がった湾曲部となっていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の芯材付きセラミックス建材は、請求項1において、該セラミックス建材は、全体が円弧状であるか又は両端を除いて円弧状であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の芯材付きセラミックス建材は、請求項2において、該芯材は、該セラミックス建材の長手方向の一端側から他端側にわたり延在する長板部と、該長板部の少なくとも長手方向の両端部に一方の長側辺に連なる耳片部とを備えており、該長板部は、該中空部の内壁面のうち該湾曲部の内径側を構成する内径面又は外径側を構成する外径面に対面しており、該耳片部は、該内径面又は外径面に隣接する内壁面に対面していることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の芯材付きセラミックス建材は、請求項2又は3において、該長板部の少なくとも長手方向の両端部に他方の長側辺に連なる耳片部をさらに備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の芯材付きセラミックス建材は、請求項1ないし4のいずれか1項において、該セラミックス建材と芯材とが少なくとも前記長手方向の両端部で固着されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の芯材付きセラミックス建材は、請求項1ないし5のいずれか1項において、該中空部の内壁面に接着剤及びライニングが付着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の芯材付きセラミックス建材は、セラミックス建材の少なくとも一部が弧状に曲がった湾曲部となっているため、L字形のような屈曲部を有するセラミックス建材と比べて、中空部への芯材の挿入が容易である。また、セラミックス建材に芯材が挿通されているため、万一セラミックス建材が破損した場合、破片が芯材によって保持されることになり、該破片の飛散が防止される。
【0015】
本発明において、セラミックス建材は、全体が円弧状であるか又は両端を除いて円弧状であることが好ましく、この場合、中空部に芯材をより容易に挿入することができる。
【0016】
本発明において、芯材は、セラミックス建材の長手方向の一端側から他端側にわたり延在する長板部と、該長板部の少なくとも長手方向の両端部に一方の長側辺に連なる耳片部とを備えている場合、該長板部及び耳片部によって中空部の内壁面の2面を支持することができる。このため、これら長板部及び耳片部とセラミックス建材とを接着剤等で固着することにより、セラミックス建材と芯材とが強固に固定される。
【0017】
また、この芯材にあっては、長板部は、該中空部の内壁面のうち該湾曲部の内径側を構成する内径面又は外径側を構成する外径面に対面しており、該耳片部は、該内径面又は外径面に隣接する内壁面に対面していることが好ましい。この場合、仮にセラミックス建材の湾曲部の曲率と長板部の曲率とに多少の差異があり、芯材を中空部に挿入する際に長板部を多少変形させたとしても、該耳片部が長手方向に短いため、該耳片部が該長板部の変形を拘束する力は小さい。このため、芯材を中空部に容易に挿通させることができる。
【0018】
本発明において、前記耳片部が前記長手方向に間隔をあけて3個以上設けられている場合、セラミックス建材が該芯材によってより確実に支持される。
【0019】
本発明において、該長板部の少なくとも長手方向の両端部に他方の長側辺に連なる耳片部をさらに備えている場合、セラミックス建材がセラミックス建材が該芯材によってより確実に支持される。
【0020】
本発明において、該セラミックス建材と芯材とが少なくとも前記長手方向の両端部で固着されていることが好ましい。この場合、芯材の両端部を構造物や隣接する芯材付きセラミックス建材の芯材に取り付けることにより、該芯材付きセラミックス建材を精度よく設置することができる。
【0021】
本発明において、中空部の内壁面に接着剤及びライニングが付着されている場合、セラミックス建材に割れが生じてもセラミックスの破片が飛散しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。第1図は実施の形態に係る芯材付きセラミックス建材を建物の外壁に設置した状態を示す水平断面図、第2図は第1図のセラミックス建材10の斜視図、第3図は第1図の芯材20の斜視図である。
【0023】
第1図の通り、建物1の第1の壁面2及び第2の壁面3のそれぞれに、T字形のレール5が上下方向に延設されている。なお、符号4は建物1の角部である。
【0024】
この建物1が鉄骨式建物である場合、このレール5は鉄骨に取り付けられている。建物1が鉄筋コンクリート建物である場合、このレール5はコンクリート壁に取り付けられている。この建物1が木造軸組みの建物である場合、このレール5は柱に取り付けられている。
【0025】
以下に説明する通り、これらレール5に対して、セラミックス建材10の中空部14に芯材20が配置されてなる芯材付きセラミックス建材30が取り付けられている。
【0026】
第2図の通り、セラミックス建材10は、内径面10a、上面10b、外径面10c及び下面10dよりなり、長手方向に中空部14が延在する四角筒形を有している。このセラミックス建材10の長手方向における中央部は、内径面10aを内径側とし、外径面10cを外径側とする弧状の湾曲部12となっている。本実施の形態では、この湾曲部12は円弧方向に90°の範囲にわたって延在する四分円弧状になっている。
【0027】
該湾曲部12の両端に連なる一端部11及び他端部12は、長手方向に直線状に延在している。該内径面10aの一端部11及び他端部12に、後述するスペーサ8を挿通するためのスペーサ挿通孔15が設けられている。
【0028】
このセラミックス建材10を製造するには、例えば、成形ダイスの押出口のうち一方の側辺からの押出速度が他方の側辺からの押出速度よりも小さくなるようにして押出成形を行い、該一方の側辺側に湾曲した成形体を製造する。次いで、該成形体の長手方向の両端部近傍を直線状に整える。その後、該成形体を焼成することにより、湾曲部12を有するセラミックス建材10が製造される。
【0029】
該セラミックス建材10の中空部14に芯材20が配置されている。この芯材20は、セラミックス建材10の長手方向の一端側から他端側にわたり延在する長板部21と、該長板部21の両端部の上側の長側辺に連なる耳片部22(22A)と、下側の長側辺に連なる耳片部22(22B)とを備えている。該長板部21は内径面10aに対面し、上側の耳片部22(22A)は上面10bに対面し、下側の耳片部22(22B)は下面10dに対面している。
【0030】
該長板部21の両端近傍であって前記ボルト挿通孔23と対応する位置に、厚み方向に貫通するボルト挿通孔23が設けられている。
【0031】
この芯材20としてはアルミ、ステンレス等の金属製のものが好適に用いられる。
【0032】
この芯材20の長板部21がセラミックス建材10の内径面10aと対面し、耳片部22が上面10bと対面するようにして、この芯材20がセラミックス建材10の中空部14内に挿入され、配置されている。
【0033】
なお、セラミックス建材10の湾曲部12の曲率と長板部21の曲率とに多少の差異があり、芯材20を中空部14に挿入する際に、長板部21を該セラミックス建材10の寸法に合わせて多少変形させるときがある。このとき、耳片部22が長手方向に短いため、該耳片部22が該長板部21の変形を拘束する力は小さく、芯材20を容易に変形させることができる。このため、芯材20を中空部21に容易に挿通させることができる。
【0034】
このセラミックス建材10のスペーサ挿通孔15内にスペーサ8が配置されている。該スペーサ8の外径はスペーサ挿通孔15の孔径よりも小さく、かつボルト挿通孔23の孔径よりも大きくなっている。ボルト6がボルト挿通孔23、スペーサ8及びレール5のボルト挿通孔(図示略)に挿通され、ナット7によって締結されている。このようにして、セラミックス建材10及び芯材20が建物1に固定されている。
【0035】
このセラミックス建材10の両隣に、直線状の芯材付きセラミックス建材30Aが配置され、レール5に固定されている。これら芯材付きセラミックス建材30Aは、芯材20A及びセラミックス建材10Aが直線状であることの他は上記芯材付きセラミックス建材30と同様であり、ボルト6、ナット7及びスペーサ8を介してレール5に固定されている。
【0036】
本実施の形態において、直線状となっている一端部11及び他端部13の長さは湾曲部12の外周面の周長の半分以下とするのが好ましく、さらには、中空部14の内径の接線と中空部14の外径の面とが交叉する2点間の長さの半分以下であることが好ましい。また、これら一端部11及び他端部13を省略し、セラミックス建材10の全体を弧状にしてもよい。
【0037】
本実施の形態では中空部14の断面形状を方形としたが、これに限定されるものではなく、平行四辺形、三角形又は五角形以上であってもよい。この場合、長板部と耳片部とのなす角度は、中空部の内径面又は外径面と該面に隣接する面とのなす角度と同一にする。
【0038】
本実施の形態において、芯材20とセラミックス建材10は接着剤によって固定されていてもよい。
【0039】
本実施の形態において、中空部14の内壁面にエポキシやブチルゴム等よりなる接着剤やライニングが付着されていてもよい。
【0040】
本実施の形態では芯材20がレール5に固定されているが、これと共に又はこれに代えて、芯材20が隣り合う芯材20Aに連結されていてもよい。
【0041】
上記実施の形態では、第3図に示す芯材20を用いたが、芯材の形状はこれに限定されるものではない。例えば、第4図の通り、第3図の芯材20において下側の長側辺に連なる耳片部22(22B)を省略した芯材20Bであってもよい。また、第5図の通り、耳片部22が該長板部21の長手方向に間隔をあけて3個以上(第5図では7個)設けられた芯材20Cであってもよい。さらに、第3図の芯材20は、耳片部22が略弧状の長板部21の外径方向を指向し、該長板部21がセラミックス建材10の内径面10aと対面する形状となっているが、第6図の芯材20Dのように、耳片部22が略弧状の長板部21の内径方向を指向し、該長板部21がセラミックス建材10の外径面10cと対面する形状としてもよい。
【0042】
また、レールが芯材付きセラミックス建材の側部にあるような場合は、第7図のような芯材を用いてもよい。第7図の芯材10Eは、その長手方向の両端に、先端側が閉止された四角筒形の耳部22Cが連なっている。該耳部22Cの一側面が該長板部21に連なっている。該耳部の先端側の閉止部にボルト挿通孔22Dが設けられている。該ボルト挿通孔22Dにボルトを挿通し、該ボルト及びナットによって該芯材10Eがレールに取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態に係る芯材付きセラミックス建材を建物の外壁に設置した状態を示す水平断面図である。
【図2】第1図のセラミックス建材10の斜視図である。
【図3】第1図の芯材20の斜視図である。
【図4】異なる芯材20Bの斜視図である。
【図5】異なる芯材20Cの斜視図である。
【図6】異なる芯材20Dの斜視図である。
【図7】異なる芯材20Eの斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 建物
2 第1の壁面
3 第2の壁面
4 角部
5 レール
10、10A セラミックス建材
11 一端部
12 湾曲部
13 他端部
20、20A、20B、20C、20D、20E 芯材
21、21A 長板部
22 耳片部
30、30A 芯材付きセラミックス建材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延在する中空部を有するセラミックス建材と、該中空部に配置された芯材とを有する芯材付きセラミックス建材において、
該セラミックス建材の少なくとも一部が弧状に曲がった湾曲部となっていることを特徴とする芯材付きセラミックス建材。
【請求項2】
請求項1において、該セラミックス建材は、全体が円弧状であるか又は両端を除いて円弧状であることを特徴とする芯材付きセラミックス建材。
【請求項3】
請求項2において、該芯材は、該セラミックス建材の長手方向の一端側から他端側にわたり延在する長板部と、該長板部の少なくとも長手方向の両端部に一方の長側辺に連なる耳片部とを備えており、
該長板部は、該中空部の内壁面のうち該湾曲部の内径側を構成する内径面又は外径側を構成する外径面に対面しており、該耳片部は、該内径面又は外径面に隣接する内壁面に対面していることを特徴とする芯材付きセラミックス建材。
【請求項4】
請求項2又は3において、該長板部の少なくとも長手方向の両端部に他方の長側辺に連なる耳片部をさらに備えたことを特徴とする芯材付きセラミックス建材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該セラミックス建材と芯材とが少なくとも前記長手方向の両端部で固着されていることを特徴とする芯材付きセラミックス建材。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該中空部の内壁面に接着剤及びライニングが付着されていることを特徴とする芯材付きセラミックス建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−303162(P2007−303162A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132722(P2006−132722)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】