説明

花粉除去方法

【課題】人体に付着した花粉をより確実に除去することを可能にする花粉除去方法を提供する。
【解決手段】人体に付着した花粉3を除去する方法であって、接地した導電体を備える静電気除去装置に人Mが触れることによって人体に帯電した静電気を導電体を介して除電する。これとともに、送風装置2の吹出口2aから人体に風4を吹き付けることによって人体に付着した花粉3を吹き飛ばして除去するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に付着した花粉を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の花粉が鼻や目などの粘膜に接触することにより、発作性、反復性のくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどの一連の症状を引き起こす花粉症患者が増大している。一方、建築基準法によって、シックハウス対策などの観点から建物に24時間換気システム(0.5回/時の換気回数を確保)を設置することが義務化され、外気フィルターを通じて室内に外気を取り入れながら換気を行うことで、花粉等の建物内への侵入も少なくなる効果が得られている。
【0003】
また、外出によって花粉が衣類などに付着した状態で自宅などの建物に入ることで、居室などの建物内に花粉が飛散し、二次的に花粉症を発症する場合もある。このような人体に付着した花粉は、単に物理的な付着に加え、静電気によって付着しており、建物内に入る前に衣服などを手で払ったり、エアシャワー装置を設置し、このエアシャワー装置から人体に向けて吹出風を吹き付けるようにしても、十分に花粉を取り除くことが難しい。このため、人体付着由来の花粉をより確実に除去する手法が望まれている。
【0004】
これに対し、特許文献1には、微細な水滴を噴霧させる微細水噴霧手段と、吹出風により人体に付着した花粉や粉塵を吹き飛ばす花粉分離手段とを備えて構成した花粉除去装置及び花粉除去システムが開示されている。そして、特許文献1では、例えばクリーンルームやマンション、ホテルなどの出入り口に花粉除去装置を設置し、微細水噴霧手段で微細な水滴を噴霧することで人体に帯電した静電気を空気中に放電させて除去することができ、人体に付着した花粉や粉塵を花粉分離手段の吹出風によって除去できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−20130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、水滴を噴霧して静電気を除去するようにしているため、微細水の粒子径を10μm以下にしても濡れによる不快感が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、人体に付着した花粉をより確実に除去することを可能にする花粉除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明の花粉除去方法は、人体に付着した花粉を除去する方法であって、接地した導電体を備える静電気除去装置に人が触れることにより、人体に帯電した静電気を前記導電体を介して除電するとともに、送風装置の吹出口から人体に風を吹き付けることにより、人体に付着した花粉を吹き飛ばして除去するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の花粉除去方法によれば、例えば、建物のドアノブなど、建物や室内に入る際に必ず人が触れるものに導電体を取り付けて接地して静電気除去装置を構成することにより、建物や居室の出入り口で人体に帯電した静電気を除電することが可能になる。そして、建物や居室の出入り口に設けた送風装置(エアシャワー装置)で人体に風を吹き付けることにより、人体に物理的に付着した花粉だけでなく、静電気によって付着した花粉を吹き飛ばして除去することが可能になる。
【0011】
これにより、従来の水滴を噴霧して人体に帯電した静電気を除電する場合と比較して、濡れによる不快感を生じさせることなく、確実に人体に付着した花粉を除去することができ、建物や居室内に花粉が入り込んで、二次的に花粉症を発症することを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】建物(高層集合住宅)の平断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る花粉除去方法を適用したエントランスを示す図である。
【図3】図2のX1−X1線矢視図である。
【図4】花粉除去機能を備えたエレベータを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る花粉除去方法を適用した玄関を示す図である。
【図6】花粉除去機能を備えたクローゼットを示す図である。
【図7】花粉除去機能を備えた下足入れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1から図7を参照し、本発明の一実施形態に係る花粉除去方法について説明する。本実施形態は、集合住宅などの建物内に人体に付着した花粉が持ち込まれることを防ぐための花粉除去方法に関するものである。
【0014】
本実施形態の花粉除去方法を、図1に示す高層集合住宅(建物T)での代表的なプランによって説明する。そして、本実施形態では、人体に付着した花粉を、建物Tに出入りするためのエントランス、エレベータT1、玄関(集合住宅Tでは各住戸、ビルでは各フロアやテナント別の入り口を示す)、クローゼット、下足入れで除去して、花粉等の人体依存の住戸T2内(建物内、室内)侵入を防ぐ効果を得るようにしている。
【0015】
まず、図2及び図3を参照してエントランスT3での花粉除去について説明する。そして、エントランスT3には、例えばドアノブなど、入館の際に必ず接触する(接触する可能性が高い)箇所にアース線などの導電体1aを繋いで接地してなる静電気除去装置1が設けられている。また、エントランスT3の出入り口付近に吹出口2aを配した送風装置(エアシャワー装置)2が設けられている。なお、ここでは、風除室T4があるものとして説明を行うが、必ずしも区切られた空間であるゾーンが必要なわけではない。勿論、このようなゾーンが存在した方が効果の増大が期待できる。
【0016】
そして、人MがエントランスT3から建物T内に入ろうとしたときに例えばドアノブなどに触れると、静電気除去装置1によって人体に帯電して蓄積された静電気が除電される。これにより、花粉3を吸着する力の一つである静電気が取り除かれ、花粉3を除去しやすくなる。
【0017】
また、建物T内に入る最初のエントランスT3では、人感センサー5で人Mを感知するとともに送風装置2のブロアー(送風機)2bが駆動し、吹出口2aから吹き出した風4が頭上から大風量、大風速で人体に当てられ、人体に付着した花粉3などを吹き落とす。このとき、静電気除去装置1で除電して花粉3が除去しやすくなっているため、確実に人体から花粉3が吹き飛ばされて除去される。そして、この花粉3などを大量に含んだ空気は、下部に設けた吸込口2cからプレフィルター2d、高機能フィルター2eを通って清浄化され、再度吹出口2aから人体に吹き付けるように流通して循環する。
【0018】
なお、本実施形態の高機能フィルター2eは、中性能、高性能、HEPA、ULPAなどのフィルターと併用して、活性炭などによる化学吸着や光触媒を利用した空気浄化機能をもつフィルターユニットである。また、集めた花粉3などを光触媒、その他の触媒、紫外線、プラズマ、熱などで分解したり、フィルターをパッケージ化し、取替え時に集めた花粉3などが再放散しないようにするなどの機構を備えていることが望ましい。
【0019】
さらに、このエントランスT3での花粉除去機能を省エネルギー化するために、例えば、(1)エントランスT3の屋外側の庇の軒天部分などに設置し、外から入ってくる人Mに対してのみ作動するようにしたり、(2)花粉3の問題の少ない季節には停止させる機能を備えるようにするなどの対策を講じることが好ましい。
【0020】
次に、図4を参照してエレベータT1での花粉除去について説明する。図1及び図4に示すように、チューブタイプ(センターコア)形式の建物Tでは、エレベータT1の使用率も高く、居住階に降りたら既に建物T内部である。そこで、このエレベータT1では、図4に示すように、エレベータT1内の人Mに付着した花粉3などを、コンプレッサーなどの送風装置6により頭上から大風量、大風速で人体に風4を当てることで吹き落とす。
【0021】
また、エレベータT1の上部に高機能フィルター7を組み込んだ室外機一体型パッケージエアコンなどの送風装置(エアコン機能はなくてもよい)8により、大風量、高風速で人体に風4を当て、その還気を床面から例えば還気チャンバ9、還気ガラリ10を通じて逃がす。この床面はフリーアクセスフロア状になっており、床材はパンチングメタル、グレーチングなど(さらにその上に通風カーペットを敷いた方が望ましい)で構成されている。そして、還気は花粉3などを含んだ状態でシャフト内に捨てられ、送風装置6、8への給気はそれらが含まれるエレベータシャフト内から行われ、送風装置8の高機能フィルター7によって清浄化され、再度エレベータT1のカゴの中に送風される。
【0022】
ここで、このエレベータT1での花粉除去機能を省エネルギー化するために、例えば、(1)1Fでボタンを押した際、すなわち外から入ってきた際にのみ送風装置7、8が運転するように制御すること、さらに、1Fの建物T内に行き、外に出ずに戻ってくることも考慮して、手元スイッチにより送風を停止できるようにする対策を講じることが好ましい。また、(2)人感センサー11を具備することにより、呼び出されて空で上階へ向かう際は運転しないように制御すること、(3)花粉問題が少ない季節には風量を落としたり、停止させたりすることなどの対策を講じることが好ましい。
【0023】
次に、図5を参照して玄関T5での花粉除去について説明する。住戸T1やフロア、テナントに入る最終段階として、玄関T5手前で、送風装置12により大風量、大風速で人体に風4を当て、人体に付着した花粉3などを吹き落とす。さらに、除電マット13や除電パッド14で人体に蓄積された静電気を除電するようにし、花粉3を落としやすくする。また、吹き落ちた花粉などを大量に含んだ空気は、下部の吸込口12aからプレフィルター12b、高機能フィルター12cを通って清浄化され、再度ブロアー(送風機)12dなどによって吹出口12eから人体に当てるように吹き出され循環する。
【0024】
ここで、この玄関T5での花粉除去機能を省エネルギー化するために、例えば、(1)人感センサー15により人が立つと自動的に運転するようにする対策を講じることが好ましい。この場合には人Mが入ってきた際にのみ作動するように設定することがより好ましい。また、(2)手元スイッチ16により必要性を感じたときのみ運転する対策などを講じることが好ましい。
【0025】
次に、図6を参照してクローゼットT6での花粉除去について説明する。屋外で着衣してきた衣類17には、上記のステップを踏んでもやはり若干の花粉3などが付着している可能性がある。そして、本実施形態では、これを除去するために、着衣した衣類17を仕舞うクローゼットT6内で、送風装置18により大風量の風4を衣服17に当て、花粉3を落とす。なお、衣服17を掛けるバー19もハンガー20も導電体材料とし、バー19に繋げて接地した導電体(アース線など)21によって除電することで、花粉3を落としやすくすることが好ましい。また、落ちた花粉3は、プレフィルター18a、高機能フィルター18bにより除去され、清浄化した空気が再度衣服17に吹き当てられるように循環する。これにより、循環系の中で花粉3が微量化する。
【0026】
ここで、このクローゼットT6での花粉除去機能を省エネルギー化するために、例えば、(1)扉を閉めて一定時間のみ作動する機能を具備したり、(2)必要性を感じたときのみ任意の時間運転するための発停スイッチ22を設ける対策などを講じることが好ましい。
【0027】
次に、図7を参照して下足入れT7での花粉除去について説明する。屋外を歩いてきた下足には多量の花粉、塵埃などが付着しているものである。そこで、クローゼットT6での花粉除去と同様に、送風装置23(ブロアー(送風機)23a、プレフィルター23b、高性能フィルター23c)によって風4を下足に当て、花粉や粉塵を落とす。また、空気を循環させることで、下足に付着した花粉等を微量化する。
【0028】
ここで、この下足入れT7での花粉除去機能を省エネルギー化するために、例えば、(1)扉を閉めて一定時間のみ作動する機能を具備したり、(2)必要性を感じたときのみ任意の時間運転するための発停スイッチ24を設けるなどの対策を講じることが好ましい。
【0029】
したがって、本実施形態の花粉除去方法によれば、例えば、建物Tのドアノブなど、建物Tや室内に入る際に必ず人が触れるものに導電体1aを取り付けて接地して静電気除去装置1を構成することにより、建物Tや居室の出入り口で人体に帯電した静電気を除電することが可能になる。そして、建物Tや居室の出入り口に設けた送風装置(エアシャワー装置)2で人体に風を吹き付けることにより、人体に物理的に付着した花粉3だけでなく、静電気によって付着した花粉3を吹き飛ばして除去することが可能になる。
【0030】
これにより、従来の水滴を噴霧して人体に帯電した静電気を除電する場合と比較して、濡れによる不快感を生じさせることなく、確実に人体に付着した花粉3を除去することができ、建物Tや居室内に花粉が入り込んで、二次的に花粉症を発症することを防止することが可能になる。
【0031】
また、本実施形態の花粉除去方法においては、大勢の人が困っており、ディベロッパーからのニーズも高い花粉問題を解消する技術として大いに活用できる。
【0032】
さらに、エレベータT1内ではエアコンを用いることで快適性が増す。また、エレベータT1にこもったごみや食事のにおいなどを強制運転で除去することも可能である。
【0033】
各種センサーを併用することで極めて少ない電力料金で、常時運転と同等の花粉3などの除去機能を期待できる。また、集合住宅Tだけではなく、オフィスビル、宿泊施設、飲食店、宴会場、病院、学校など全ての種類の用途建築にも適用できる。
【0034】
クローゼットT6で本機能を使用することにより、副次的に衣服17に付着したにおいなども除去できる。また、下足入れT7に適用することで、下足の悪臭も高機能フィルター23cにより緩和できる。
【0035】
以上、本発明に係る花粉除去方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明に係る花粉除去方法をエントランスT3、エレベータT1、玄関T5、クローゼットT6、下足入れT7に単独もしくは併用して、人体に付着した花粉を除去するようにしてもよい。また、図1に示すような建物T(平面)の場合には、エントランスT3に入ったらもう人体が外気に接することはない。このため、本実施形態の花粉除去方法は有効性を増すが、本発明に係る花粉除去方法は、建物T及び平面を特定するものではなく、あらゆる建物用途に採用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 静電気除去装置
1a アース線(導電体)
2 送風装置
2a 吹出口
2b 送風機(ブロアー)
2c 吸込口
2d プレフィルター
2e 高性能フィルター
3 花粉
4 風
5 人感センサー
6 送風装置
7 高性能フィルター
8 送風装置(エアコン)
11 人感センサー
12 送風装置
12a 吸込口
12b プレフィルター
12c 高性能フィルター
12d 送風機(ブロアー)
12e 吹出口
13 除電マット
14 除電パッド
15 人感センサー
16 手元スイッチ
17 衣類
18 送風装置
19 バー
20 ハンガー
21 導電体(アース線)
22 発停スイッチ
23 送風装置
23a 送風機(ブロアー)
23b プレフィルター
23c 高性能フィルター
24 発停スイッチ
T 建物(集合住宅)
T1 エレベータ
T2 住戸(室内)
T3 エントランス
T4 風除室
T5 玄関
T6 クローゼット
T7 下足入れ
M 人

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に付着した花粉を除去する方法であって、
接地した導電体を備える静電気除去装置に人が触れることによって人体に帯電した静電気を前記導電体を介して除電するとともに、
送風装置の吹出口から人体に風を吹き付けることによって人体に付着した花粉を吹き飛ばして除去するようにしたことを特徴とする花粉除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−21792(P2011−21792A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165952(P2009−165952)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】