説明

芳香族のアルキル化プロセス

本発明は、トルエン、および/またはベンゼンと酸素含有アルキル化試薬との混合物の選択的アルキル化プロセスに関する。特にこのプロセスは、以下のうち1つ以上の条件を満たす、1つ以上の水素化成分の添加によって修飾された選択活性化モレキュラーシーブを含む触媒を使用する。すなわち、(a)選択活性化モレキュラーシーブが、水素化成分の取込みに先立って、100未満のアルファ値を有する、または、(b)選択的アルキル化プロセスにおいて使用された選択活性化および水素化モレキュラーシーブが100未満のアルファ値を有する。本発明のプロセスは、触媒の非活性化を低減しつつ、アルキル化生成物に対する高い選択性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルエン、ベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレン、およびそれらの混合物の酸素含有アルキル化試薬による選択的アルキル化プロセスに関する。特にこのプロセスは、以下のうち1つ以上の条件を満たす、1つ以上の水素化成分の添加によって修飾された選択活性化モレキュラーシーブを含む触媒を使用する。すなわち、(a)選択活性化モレキュラーシーブが、水素化成分の取込みに先立って、100未満のアルファ値を有する、または、(b)選択的アルキル化プロセスにおいて使用された選択活性化されおよび水素化されたモレキュラーシーブが100未満のアルファ値を有する。本発明のプロセスは、触媒の非活性化を低減しつつ、アルキル化生成物に対する高い選択性を提供する。
【背景技術】
【0002】
キシレン異性体、すなわちオルト、メタ、およびパラキシレンのうち、パラキシレン異性体は、大量化学中間体として特に価値がある。パラキシレン製造の一つの方法は、キシレンへのトルエンの不均化によるものである。しかし、このプロセスの不利な点は、大量のベンゼンも生産されることである。パラキシレン製造のもう1つのプロセスは、非平衡量の混合オルトおよびメタキシレン異性体を含み、パラキシレン含有量は少ない原料供給流(feedstream)の異性化である。このプロセスの不利な点は、他の異性体からのパラキシレンの分離の費用が高いことである。
【0003】
次世代のパラキシレン生産方法として、メタノールを用いたトルエンのアルキル化への関心が高まっている。この技術は、トルエン不均化プロセスと比べて、理論上はトルエンからパラキシレンの収量の2倍生産できる。そのようなトルエンメチル化プロセスの具体例には、米国特許US3,965,207号が含まれ、これはZSM-5のようなモレキュラーシーブ触媒を用いたメタノールによるトルエンのメチル化を含む。米国特許US4,670,616号は、アルミナ、シリカまたはアルミナ‐シリカのようなバインダーにより結合したホウ素ケイ酸ゼオライト触媒を用いたメタノールによるトルエンのメチル化によるキシレン生産を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知のトルエンメチル化触媒の不利益な点は、所望の生産物であるパラキシレンに対するメタノールの選択性が、50-60%の範囲と従来低かったことである。この残りはコークスおよび他の望ましくない生成物の産生で失われる。パラキシレンの選択性を増大させる試みが行なわれてきたが、パラキシレン選択性が増大するにつれ、触媒の寿命が減少することが解ってきた。急速な触媒の非活性化は、触媒へのコークスおよび多大な副産物の蓄積のためであると考えられている。限られた触媒の寿命は、通常、触媒が連続的に再生される流動床反応器の使用を必要とする。しかし、そのようなシステムは通常高い資本投資を必要とする。トルエンのメチル化に好ましいシステムは、より少ない資本投資という理由から、固定床反応器の使用である。しかしながら、所望の生産物に対する十分な選択性を伴った十分な寿命を提供する適切な触媒が発見されるまで、固定床システムは非実践的なだけである。低いパラキシレン選択性および急速な触媒の非活性化を含む従来のシステムの不利益な点を回避あるいは最小化する触媒システムを有する改善されたトルエンのメチル化プロセスが依然として必要である。本発明はこの必要を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
本発明は、アルキル化反応の条件下における触媒の存在下で、トルエン、ベンゼン、ナフタレン、アルキルンナフタレンおよびそれらの混合物からなる群より選択された芳香族化合物を含む供給原料とアルキル化試薬を反応させることを含む選択的アルキル化芳香族化合物を形成するプロセスである。ここで、前記触媒は選択活性化モレキュラーシーブおよび1つ以上の水素化金属を含み、以下の条件の1つ以上を満たす。すなわち、(a)選択活性化モレキュラーシーブは、前記1つ以上の水素化金属の取込みに先立って100未満のアルファ値を有する、または(b)選択活性化および水素化モレキュラーシーブは100未満のアルファ値を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面の簡単な説明
図1−12および14−18は、トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットである。
【0007】
図13はトルエンのメチル化プロセスにおける、メタノール分解の減少に対する水素化金属、水、およびリンの影響を示すグラフである。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、酸素含有アルキル化試薬とトルエン、ベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレン、およびそれらの混合物の選択的アルキル化プロセスに関する。このプロセスは、1つ以上の水素化成分の添加によって修飾された選択活性化モレキュラーシーブ、好ましくは、パラ選択性モレキュラーシーブを含む触媒を用いる。本発明に従って、以下の条件の1つ以上が満たされねばならない。すなわち(a)選択活性化モレキュラーシーブは、水素化成分の取込みに先立って100未満のアルファ値を有する、または(b)選択活性化および水素化モレキュラーシーブは100未満のアルファ値を有する。本プロセスにおいて使用される場合、触媒は、延長した触媒寿命を有する一方で60%より高い、より好ましくは75%より高い、より好ましくは80%、さらにより好ましくは85%、および最も好ましくは90%のパラ選択性を提供する。好ましくは前記プロセスは、これらの好ましいパラ選択性範囲において、パラキシレンを形成するトルエンまたはベンゼンのメチル化プロセスである。
【0009】
本発明における使用に適切な触媒は、トルエン、ベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレンまたはそれらの混合物のアルキル化に有効な任意の触媒を含む。好ましくは前記触媒は、トルエンまたはベンゼンの好ましいメチル化プロセスに有効であるものである。本発明に使用される触媒は、天然由来の、および合成の結晶モレキュラーシーブを含む。そのようなモレキュラーシーブの具体例には、大孔のモレキュラーシーブ、中孔モレキュラーシーブ、および小孔モレキュラーシーブが含まれる。これらのモレキュラーシーブは、「ゼオライト・フレームワーク・タイプ・アトラス」(Ch.Baerlocher、W.H.MeierおよびD.H.オルソン編、エルセヴィア社、第5版、2001年)に記述されており、これらは参照により本発明に組込まれる。大孔のモレキュラーシーブは、通常約7Å以上の孔サイズを有し、IWW、LTL、VFI、MAZ、MEI、FAU、EMT、OFF、BEAおよびMOR構造型モレキュラーシーブを含む(IUPACのゼオライト命名委員会)。大孔モレキュラーシーブの具体例には、ITQ-22、マッチー沸石(mazzite)、オフレタイト(offretite)、ゼオライトL、VPI-5、ゼオライトY、ゼオライトX、オメガ、ベータ、ZSM-3、ZSM-4、ZSM-18、ZSM-20、SAPO-37、およびMCM-22が含まれる。中孔サイズのモレキュラーシーブは、通常約5Åから約7Åの孔サイズを有し、例えば、ITH、ITW、MFI、MEL、MTW、EUO、MTT、HEU、FER、MRSおよびTON構造型モレキュラーシーブを含む(IUPACのゼオライト命名委員会)。中孔サイズモレキュラーシーブの具体例には、ITQ-12、ITQ-13、ZSM-5、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-34、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-50、ZSM-57、シリカライト、およびシリカライト2が含まれる。小孔サイズモレキュラーシーブは、約3Åから約5Åの孔サイズを有し、例えば、CHA、ERI、KFI、LEV、およびLTA構造型モレキュラーシーブを含む(IUPACのゼオライト命名委員会)。小孔モレキュラーシーブの具体例には、ZK-4、SAPO-34、SAPO-35、ZK-14、SAPO-42、ZK-21、ZK-22、ZK-5、ZK-20、ゼオライトA、エリオナイト、菱沸石(Chabazite)、ゼオライトT、グメリナイト、およびクリノプチロライトが含まれる。
【0010】
中孔サイズモレキュラーシーブは一般に以下のモル関係を有する組成である:
式 X:(n)YO
ここで、Xは、アルミニウム、鉄、ホウ素、および/またはガリウムのような三価元素であり、Yはシリコン、錫、および/またはゲルマニウムのような四価元素である。nは、12より大きな値を有し、本発明に基づいて前記値は、モレキュラーシーブの特定の型および所望のモレキュラーシーブのアルファ値に依存する。中孔サイズのモレキュラーシーブがMFI構造型のモレキュラーシーブの場合、nは好ましくは10より大きく、好ましくは20:1から200:1である。
【0011】
本発明に基づいて、モレキュラーシーブ触媒は所望のアルキル化生成物の生産のために選択活性化され、ここで好ましい態様はパラキシレンである。前記触媒は、リンおよび/またはマグネシウムおよび/または、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ性土類酸化物、希土類金属酸化物、酸化ランタンおよび酸化ホウ素、チタニア、酸化アンチモン、および酸化マンガンのようなその他の金属酸化物などの種々の金属酸化物の化合物を用いて表面を処理することによって選択活性化できる。そのような処理に好ましい範囲は、触媒の重量に基づいたそのような化合物の約0.1重量パーセントから25重量パーセント、より好ましくは約1重量パーセントから約10重量パーセントである。また、選択活性化は、触媒にコークスを沈着させることによって行うことができる。コークスの選択活性化は、例えば、触媒へのコークスの沈着を可能とする条件でメチル化反応を行なうなどによりメチル化反応の間に実施することができる。また、触媒は、コークスを用いて予め選択活性化することができる。例えば、反応槽中の触媒を熱分解可能な有機化合物、例えば、ベンゼン、トルエン等に、前記化合物の分解温度を超える温度で、例えば、約400℃から約600℃、より好ましくは425℃から約550℃で、1時間当たり触媒の1ポンド当たり約0.1から約20lbsの供給原料の範囲におけるWHSVで、約1から約100気圧の範囲の圧力において、および0から約2モルの水素、より好ましくは有機化合物1モル当たり約0.1から約1モルの水素、および任意に有機化合物1モル当たり0から約10モルの窒素またはその他の不活性ガスの存在下で予め選択活性化され得る。この工程は、十分な量のコークス、通常コークスの約2重量パーセント以上、より好ましくは約8重量パーセントから約40重量パーセントが、触媒の表面に沈着されるまでの時間にわたって行なわれる。
【0012】
また、シリコン化合物も触媒を選択活性化するために使用される。このシリコン化合物は、シリコン、シロキサン、およびジシランおよびアルコキシシランを含むシランを含むポリシロキサンを含むことができる。当業者によって知られているように、様々な程度の選択活性を奏功させるために多数の処理を採用することができる。
【0013】
触媒の選択活性化に用いることができるシリコーンには以下のものが含まれる。
【0014】
【化1】

【0015】
ここでRは、水素、フッ素、ヒドロキシ、アルキル、アラルキル(aralkyl)、アルカリル(alkaryl)またはフッ化アルキルである。炭化水素置換基は通常1から約10の炭素原子を含み、および好ましくはメチルまたはエチル基である。RはRと同じ基から選ばれ、nは2以上の、通常2から約1000の範囲の整数である。採用されたシリコーンの分子量は、通常約80から約20,000の間、好ましくは約150から約10,000の間である。代表的なシリコーンには、デメチルシリコーン、ジエチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、メチル水素シリコーン、エチル水素シリコーン、フェニル水素シリコーン、フルオロプロピルシリコーン、エチルトリフルオロプロピルシリコーン、テトラクロロフェニルメチルメチルエチルシリコーン、フェニルエチルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルトリシリコーン、テトラクロロフェニルエチルシリコーン、メチルビニルシリコーンおよびエチルビニルシリコーンが含まれる。シリコーンは直鎖状である必要はなく、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサンおよびオクタフェニルシクロテトラシロキサンのように環状であることもできる。また、これらの化合物の混合物も他の官能基を有するシリコーンと同様に用いることができる。
【0016】
有用なシロキサンおよびポリシロキサンには、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、オクタエチルシクロテトラシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサンおよびオクタフェニルシクロ−テトラシロキサンのような非限定的な具体例が含まれる。
【0017】
有用なシラン、ジシラン、またはアルコキシシランには、下記一般式を有する有機置換シランが含まれる。
【0018】
【化2】

【0019】
ここでRは、水素、アルコキシ、ハロゲン、カルボキシ、アミノ、アセトアミド、トリアルキルシルオキシであり、R、RおよびRはRと同じであり得、または1から約40の炭素原子のアルキル、アルキルの有機部分が1から約30炭素原子を含み、アリール基が更に置換され得る約6から約24炭素を含むアルキルまたはアリールカルボル酸、約7から約30炭素原子を含むアルキルアリールおよびアリールアルキル基を含み得る有機基で有り得る。好ましくは、アルキルシランについてのアルキル基は、鎖長において約1から約4の間の炭素原子である。混合物もまた用いることができる。
【0020】
前記シランまたはジシランには、非限定的な具体例として、ジメチルフェニルシラン、フェニルトリメチルシラン、トリエチルシランおよびヘキサメチルジシランが含まれる。有用なアルコキシランは1つ以上のシリコン−水素結合を有するものである。
【0021】
好ましい態様において前記モレキュラーシーブ触媒は、モレキュラーシーブをシリコン化合物と接触させ、マグネシウムおよび/またはリンで処理する、結合された選択活性化技術を用いて選択活性化される。
【0022】
通常前記モレキュラーシーブは、そのプロセスで採用される温度およびその他の諸条件への耐性のある結合剤材料を用いて取込まれることになる。適切な結合剤材料の具体例は、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシアおよびシリカ−マグネシア−ジルコニアのような3元組成物だけでなく、粘土、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア(beryllia)、およびシリカ−チタニアが含まれる。また、前記モレキュラーシーブも、米国特許US5,993,642号において開示されているゼオライト材料のように、ゼオライト材料を用いて合成することが可能である。
【0023】
モレキュラーシーブおよび結合剤材料の相対比率は、約1から約99重量パーセントの間の範囲で、より好ましくはモレキュラーシーブの約10から約70重量パーセントの間、なお一層好ましくは約20から約50%の間でモレキュラーシーブ含有量に従って広範に変動することになる。
【0024】
メチル化反応に特に適切な触媒は、ゼオライト結合ゼオライト触媒である。これらの触媒は、それらの調製方法と同様、米国特許US5,994,603号において記述されており、参照により本発明に組み込まれる。ゼオライト結合ゼオライト触媒は、酸性中孔サイズ第一モレキュラーシーブの第一結晶および第二モレキュラーシーブの第二結晶を包む結合剤を含むことになる。好ましくは、ゼオライト結合ゼオライト触媒は、非ゼオライト結合剤、例えばアモルファス結合剤の第一および第二ゼオライトの総重量に基づいて10重量パーセント未満を含む。そのような触媒の例には、MFIまたはMEL構造型の第一結晶、例えばZSM-5またはZSM-11、およびMFIまたはMEL構造型の第二結晶、例えばシリカライト1またはシリカライト2を含む結合剤を含む。
【0025】
本発明に従って有用な水素化金属は、元素状態(すなわち、ゼロ価)における、または酸化物、硫化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩等のようないくつかの他の触媒活性における1つまたは複数のそのような金属を含む。好ましくは前記金属はその元素状態で用いられる。適切な水素化金属の具体例には、VIIIA族金属(すなわち、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ニッケル、コバルトおよび鉄)、IVB族金属(すなわち、錫および鉛)、VB族金属(すなわち、アンチモンおよびビスマス)およびVIIA族金属(すなわち、マンガン、テクネチウムおよびレニウム)が含まれる。貴金属(すなわち、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムおよびルテニウム)が好ましい場合があり、最も好ましくはロジウムである。水素化成分もまた他の金属プロモータを伴うことが可能である。
【0026】
触媒に存在するVIIIA群の水素化金属の量は、通常、触媒の重量に基づいて約0.1重量パーセントから約5重量パーセントの水素化金属からのものである。水素化金属の取込みは当業者に既知の種々の技術を用いて行なうことができる。例えば、金属は注入により、または適切な塩を含んだ水溶液のイオン交換により、またはこれらの方法の組合わせにより触媒に組み込むことができる。一例として、イオン交換工程においてプラチナは、テトラアンミン−プラチナ(II)硝酸塩のようなカオチン性プラチナ錯体を用いて導入することができる。さらに水素化機能は、物理的に密な混合(admixing)によって存在できる。すなわち、水素化機能は活性化触媒を用いて物理的に混合または押し出すことが可能である。物理的に密な混合はまた、活性化触媒から分離された粒子に水素化機能を組み込むことによって行われ、次に水素化機能を保有する粒子が触媒に接近して置かれる。例えば、水素化金属は、米国特許US.Re31,919号でバター(Butter)他により記述され、参照により本発明に取り込まれる活性化モレキュラーシーブ触媒と混合されたアモルフォス支持体に含浸することができる。
【0027】
典型的なアルキル化試薬には、メタノール、ジメチルエーテル、塩化メチル、臭化メチル、炭酸メチル、アセトアルデヒド、ジメトキシエタン、アセトン、およびジメチルスルフィドが含まれる。トルエンまたはベンゼンのメチル化プロセスに好ましいメチル化試薬は、メタノールおよびジメチルエーテルである。前記メチル化試薬はまた、合成ガスから形成できる。例えば、この試薬は合成ガスのH2、COおよび/またはCO2から形成できる。前記メチル化試薬はメチル化反応ゾーン内の合成ガスから形成できる。当業者は、その他のメチル化試薬が本発明で示された記載に基づいてベンゼンおよび/またはトルエンのメチル化に採用できることを認識することになる。
【0028】
本発明に従って、アルキル化工程で使用される(a)選択活性化モレキュラーシーブまたは(b)選択活性化および水素化されたモレキュラーシーブは、100未満の、より好ましくは50未満の、より一層好ましくは25未満の、最も好ましくは10未満のアルファ値を有することになる。本発明で用いられるように、アルファ値は、選択活性化モレキュラーシーブのブレンステッド酸活性の測定値であり、すなわち、それはモレキュラーシーブのアルファ値への水素化成分の添加の影響を差し引いている。前記アルファテストは、米国特許US3,354,078号およびジャーナル・オブ・キャタリシス、4巻、522−529頁(1965年)、6巻、278頁(1966年)、および61巻、395頁(1980年)に記述されており、それぞれ本発明に参照により組み込まれる。アルファテストの実験条件は、好ましくは538℃の一定温度およびジャーナル・オブ・キャタリシス、61巻、395頁(1980年)に詳細が記述されている可変流動速度(variable flow rate)を含む。典型的にはより高いシリカ/アルミナ比を有するモレキュラーシーブは、より低いアルファ値を有することになる。にも関わらず、触媒のアルファ活性は、当業者に既知の技術に従って低減できる。例えば、触媒のアルファ活性は、(1)適切な条件における触媒のスチーミング、または(2)アルカリ金属鉄のような陽イオンを持つ触媒のイオン交換によって低減できる。
【0029】
アルキル化反応は、気相において実施することができる。本発明での使用に適切な反応条件は、約300℃から約700℃の、好ましくは約400℃から約700℃の温度を含む。反応は、好ましくは約1psig(108kPa)から1000psig(6996kPa)、より好ましくは約1psig(108kPa)から150psig(1136kPa)、またさらにより好ましくは約1psig(108kPa)から50psig(446kPa)の圧力で行なわれる。反応は、好ましくは、時間当たり、触媒の重量当たり約0.1および約200の間の、より好ましくは約1から約20の間の、またさらに好ましくは約6および12の間の、および好ましくは約1および100の間の負荷の重量時間当たり空間速度において行なわれる。トルエンおよびベンゼンのアルキル化試薬に対するモル比は変動でき、通常約0.1:1から約20:1となる。操作にとって好ましい比率は2:1から約4:1までの範囲である。前記アルキル化試薬は通常複数の供給原料地点、例えば3から6の供給原料地点を通じて、反応ゾーンへ供給される。前記プロセスは、好ましくは5psi(34kPa)以上の分圧で、水素の存在下で行なわれる。好ましくは、このシステムは、供給原料における芳香族化合物およびアルキル化試薬に対する水素および/または添加される水のモル比が約0.01から約10の間であるように、供給原料に添加される水も含む。
【0030】
ある態様において、本発明に従って用いられるモレキュラーシーブは、ロジウムを含む水素化金属を有する。水素化成分としてのロジウムの使用は、アルキル化試薬(すなわち好ましい態様におけるメタノール)の分解のために形成される合成ガスの量を低減することが知られている。
【0031】
他の態様において、本発明に従って用いられるモレキュラーシーブは、プラチナを含む水素化金属、およびリンを含む選択活性化された化合物を有する。そのようなモレキュラーシーブが本発明のプロセスにおいて用いられるときに、水が反応槽に一緒に送り込まれる場合、アルキル化試薬(すなわち好ましい態様におけるメタノール)の分解のために形成される合成ガスの量が低減されることがわかる。
【実施例】
【0032】
実施例1 4Xシリカ選択活性化0.1%プラチナ含浸H-ZSM-5/SiO2(触媒 A)
シリカ結合H-ZSM-5(0.4μm、 26:1 Si:Al2)押出物(extrudate)(65/35 ZSM-5/SiO2, 1/16”円筒形)は、テトラアンミンプラチナ硝酸塩を用いて0.1重量%プラチナ(Pt)に含浸され、660°F(349℃)で焼成された。この物質は次に、デカンの中で7.8重量%ダウ(商標)−550シリコーン(ジメチルフェニルメチルポリシロキサン)で含浸することによりシリカで選択活性化され、デカンを剥離し、および1000°F(538℃)で焼成した。このシリカ選択活性化の操作は、さらに3回繰り返された。最終材料はアルファ値225を有した。
【0033】
実施例2 蒸気負荷された4Xシリカ選択活性化0.1%プラチナ含浸H-ZSM-5/SiO2
(触媒 B)
シリカ結合H-ZSM-5(0.4μm, 26:1 Si:Al2)押出物(65/35 ZSM-5/SiO2, 1/16”円筒形)は、テトラアンミンプラチナ硝酸塩を用いた初期湿気含浸、それに続く250°F(121℃)での乾燥および660°F(349℃)での空気中における1時間にわたる焼成により0.1重量%プラチナ(Pt)を負荷された。プラチナ含有押出物は次に、デカンの中で7.8重量%ダウ(商標)−550シリコンを含浸することによりシリカを用いて選択活性化され、デカンを剥離し、および焼成した。この操作は、さらに3回繰り返された。4X選択活性化物質は、次に1000°F(538℃)で24時間にわたり大気圧下で100%蒸気中で蒸気負荷された。最終材料はアルファ値17を有した。
【0034】
実施例3 蒸気負荷された3Xシリカ選択活性化H-ZSM-5/SiO2(触媒 C)
シリカ結合H-ZSM-5(0.4μm, 26:1 Si:Al2)押出物(65/35 ZSM-5/SiO2, 1/16”円柱)は、デカンの中で7.8重量%ダウ(商標)−550シリコンを含浸することによりシリカを用いて選択活性化され、デカンを剥離し、および1000°Fで焼成した。この操作は、さらに3回繰り返された。3X選択活性化物質は、次に1000°F(538℃)で24時間にわたり大気圧下で100%蒸気中で蒸気負荷された。最終材料はアルファ値15を有した。
【0035】
実施例4. 蒸気負荷された0.1%プラチナ含浸3Xシリカ選択活性化、H-ZSM-5/SiO2(触媒 D)
実施例3の触媒は、テトラアンミンプラチナ硝酸塩を用いた初期湿気含浸、それに続く250°F(121℃)での乾燥および660°F(349℃)での空気中における3時間にわたる焼成により0.1重量%プラチナ(Pt)を負荷された。触媒は水素化金属の取込みに先立って、アルファ値15を有する。
【0036】
実施例5. 蒸気負荷された3Xシリカ選択活性化0.1%プラチナ含浸H-ZSM-5/SiO2(触媒 E)
シリカ結合H-ZSM-5(0.4μm、26:1 Si:Al2)押出物(65/35ZSM-5/SiO、1/16”円筒形)は、テトラアンミンプラチナ硝酸塩を用いた初期湿気含浸、それに続く250°F(121℃)での乾燥および660°F(349℃)での空気中における3時間にわたる焼成により0.1重量%プラチナ(Pt)を負荷された。プラチナ含有押出物は次に、デカンの中で7.8重量%ダウ(商標)550シリコーンを含浸することによりシリカを用いて選択活性化され、デカンを剥離し、および1000°F(538℃)で焼成した。この操作は、さらに2回繰り返された。3X選択活性化物質は、次に1000°F(538℃)で18時間にわたり大気圧下で100%蒸気中で蒸気負荷された。最終材料はアルファ値14を有した。
【0037】
実施例6. 触媒AおよびBの触媒評価
特記のない限り、以下の触媒データは、以下の操作条件で下向流固定床反応槽を用いて得られた。すなわち、温度=500℃、圧力=15psig(205kPa)、H2/炭化水素モル比=0.8、1:3のモル比での純メタノールおよびトルエン供給原料、シーブ含有基本ケース触媒に基づいてWHSV=3.9h−1。触媒の装填量は、基本触媒運転について2gであった。1:3モル供給原料混合物について、メタノールを用いた反応から予想される最大トルエン変換率は、約33%となる。メタノールの利用は、(形成されるキシレンのモル−形成されるベンゼンのモル)/(変換されるメタノールのモル)と報告されている。ベンゼンは、キシレンとベンゼンへのトルエンの不均化により形成された任意のキシレンを説明するために差し引かれる。
【0038】
次に図1を参照すると、触媒Aはプラチナ水素化成分で含浸されたが、しかし、試験データは10時間の弱い安定性を示す。図2を参照すると、触媒が低いアルファ値を有するとき、水素化成分の含浸は高いパラ‐キシレン選択性を維持しながらも、トルエンのメチル化プロセスの触媒安定性を高めることをこのデータは示している。
【0039】
実施例7. 触媒C、D、およびEの触媒評価
図3‐5は触媒C、D、およびEの能力の比較を示す。このデータは、アルファ値が本発明の範囲内であるとき、酸性モレキュラーシーブ触媒へのプラチナの取込みは触媒安定性、パラ‐キシレン選択性、およびトルエンのメチル化反応のメタノール利用を増強することを示す。
【0040】
実施例8. 触媒F
450:1、Si:Al2、HSLS ZSM-5モレキュラーシーブを、シリカ/アルミナ/粘土/リンのマトリックスにおいて噴霧乾燥し、続いて540℃の空気中で焼成する。次に、基材を、高温(約1060℃)での蒸気処理による選択活性化をする。その結果、材料はアルファ値2を有した。
【0041】
実施例9. 0.1%プラチナ含浸触媒F(触媒G)
実施例8の触媒は、テトラアンミンプラチナ硝酸塩を用いた初期湿気含浸、それに続く250°F(121℃)での乾燥および660°F(349℃)での空気中における3時間にわたる焼成により0.1重量%プラチナ(Pt)を負荷された。
【0042】
実施例10
下記に示した触媒データは、図に特記のない限り、以下の操作条件で下向流固定床反応槽を用いて、触媒FおよびGに関して得られた。すなわち、温度=500‐585℃、圧力=40psig(377kPa)、H2/炭化水素モル比=2、水/炭化水素のモル比=2、1:2のモル比での純メタノールおよびトルエン供給原料、シーブ含有基本ケース触媒に基づいてWHSV=2-8h−1。触媒の装填量は2gであった。1:2モル供給原料混合物について、メタノールを用いた反応から予想される最大トルエン変換率は約50%になる。メタノールの利用は(生成されるキシレンのモル−生成されるベンゼンのモル)/(変換されるメタノールのモル)と報告されている。ベンゼンは、キシレンとベンゼンへトルエンの不均化により形成された任意のキシレンを説明するために差し引かれる。
【0043】
触媒Fの触媒能力を図6に示す。このデータは、トルエン変換が、蒸気で13時間以内に25%から12%に減少したことを示す。
【0044】
触媒Gの触媒能力を図7に示す。このデータは、プラチナを用いた触媒Fの含浸が触媒の寿命を劇的に延ばすことを示す。触媒活性は150時間で維持される。
【0045】
実施例11.触媒H
触媒Hは、シリカと結合した(結合剤含量は最終触媒の30%)ZSM-5(70-75:1 Si:Al2)を含むコア・ゼオライト結晶を有するゼオライト‐結合‐ゼオライトであり、そこでシリカ結合剤はシリカライトに変換される(>900:1 Si:Al2)。そのようなゼオライト‐結合‐ゼオライトの調製は、米国特許US5,665,325号および5,993,642号に記述される。最終材料はアルファ値630を有した。
【0046】
実施例11-16の触媒データは、特記のない限り、以下の操作条件で下向流固定床反応槽を用いて得られた。すなわち、温度=500℃、圧力=15psig(205kPa)‐150psig(1136kPa)、H2/炭化水素モル比=2、1:3のモル比での純メタノールおよびトルエン供給原料、シーブ含有基本ケース触媒に基づいてWHSV=8hr−1。触媒の装填量は、基本触媒運転について2gであった。1:3モル供給原料混合物について、メタノールを用いた反応から予想される最大トルエン変換率は約33%となる。メタノールの利用は(変換されるメタノールのモル)/(生成されるキシレンのモル−生成されるベンゼンのモル)と報告されている。ベンゼンは、キシレンとベンゼンへのトルエンの不均化により形成された任意のキシレンを説明するために差し引かれる。
【0047】
図8を参照すると、参照触媒Hの触媒能力は良好な安定性およびメタノール利用を示すが、パラ‐選択性の強化は示していない。トルエンの不均化反応のために、高い初期ベンゼン生成(7%)が得られた。トルエン変換率は、蒸気で時間とともに低下する。この低下は、主にトルエン不均化反応による触媒活性の喪失のためである。ベンゼン生成は24時間以内に7%から2%未満まで減少した。
【0048】
実施例12.7重量パーセントマグネシウム含浸触媒H(触媒I)
触媒Hを、以下の方法により7重量%のマグネシウム(Mg)で選択活性化した。アンモニウム硝酸塩6水和物(55.4g)を、27.95gの脱イオン水に溶解した。この溶液を回転含浸器(rotary impregnator)において100gの触媒Hに徐々に加えた。触媒を、室温(ambient)条件で一晩乾燥した。触媒をフルエア中(3容積/容積/分)で3時間660°F(349℃)で焼成した。その結果得られた材料はアルファ値20を有した。
【0049】
次に図9を参照すると、マグネシウム含浸処理はパラ‐キシレン選択性を約30%から約60%まで高める。しかしながら、触媒安定性、トルエン変換およびメタノール利用へのわずかな効果が示される。また図9は、50psig(446kPa)に対するより高い反応圧力(150psig(1136kPa))が、より低いパラ‐キシレン選択性(65%に対して58%)をもたらすことを示す。
【0050】
実施例13.1.5重量%リン、7重量%マグネシウム含浸触媒H(触媒J)
実施例12の触媒を、1.5重量%のリン(P)で修飾し、結果として得られた材料はアルファ値37を有した。図10に関連して、触媒Jは、異なった反応温度で、ともに供給する水を用いて、および用いないで、異なった時間当たり空間速度でトルエンのメチル化反応で評価した。データは、4から8までの時間当たり空間速度の増大が、より高いパラ‐キシレン選択性(63%に対して78%)を生じたことを示す。さらに、トルエン変換およびメタノール利用はわずかに改善した。
【0051】
実施例14.2.5重量%リン、7重量%マグネシウム含浸触媒H(触媒K)
実施例12の触媒を、2.5重量%のリン(P)で修飾し、その結果、アルファ値37を有する最終材料を得た。次に図11に関連して、リン含量の実施例13で示された1.5重量%以上への増大が、パラ‐キシレン選択性を同一条件で75%から93まで改善する。しかしながら、触媒の安定性は、実施例13のより低いリン含有触媒よりも速く触媒を非活性化するこの実施例14のより高いリン含量に影響される。
【0052】
実施例15.0.1重量%ロジウム、2.5重量%リン、7重量%マグネシウム含浸触媒H(触媒L)
実施例14の触媒を、水素化成分として0.1重量%のロジウム(Rh)で修飾した。塩化ロジウム水和物を脱イオン水に溶解した。この溶液を回転含浸器にて、実施例14の触媒に徐々に加えた。触媒を充分に混合し、次に250°F(121℃)で一晩乾燥した。触媒を、次に3時間(3容積/容積/分)660°F(349℃)で焼成した。
【0053】
図12に示すように、有意な触媒安定性は、高いパラ‐キシレン選択性を維持しながらも、水素化成分、ロジウムを加えることにより達成された。
【0054】
さらに図13に示すように、気相分析は、本発明に従ってモレキュラーシーブについての水素化成分としてのロジウムの使用は、特に水を反応槽にともに供給する場合、好ましくない合成ガスへのメタノール分解を低減させることを示す。図13で使われる「MTPX」という用語は、4Xシリカ選択活性化H−ZSM−5/SiOモレキュラーシーブのことを言う。さらに、図13は、共に供給される水が他の水素化成分と共に用いられた場合、好ましくない合成ガスへのメタノール分解を抑制する間、リンを用いたモレキュラーシーブの選択活性化を示す。例えば、水素化成分としてプラチナを、および選択活性化成分としてリンを有する本発明の限定事項に従ったモレキュラーシーブ触媒は、水が反応槽に共に供給される場合の合成ガスへのメタノール分解を低減させた。
【0055】
実施例16.触媒 M
シリカ結合H-ZSM-5 (0.4μm、26:1 Si:Al2)押出物(65/35ZSM-5/SiO、1/16”円筒形)は、デカンの中で7.8重量%ダウ(商標)−550シリコーンを含浸することによりシリカを用いて選択活性化し、デカンを剥離し、および1000°F(538℃)で焼成した。この操作はさらに2回繰り返された。3X選択活性化材料は、次に925°F(496℃)で12時間にわたり大気圧下100%蒸気中で蒸気負荷された。
【0056】
硝酸マグネシウム6水和物(3.61g)を、13.23gの脱イオン水に溶解し、45gの蒸気負荷した触媒に加えた。混合後に、前記触媒を250°F(121℃)で一晩乾燥した。次に、触媒をフルエア中で1時間(5容積/容積/分)、1000°F(538℃)で焼成した。
【0057】
リン酸アンモニウム(2.08g)を、13.46gの脱イオン水に溶解し、37.22gの上記触媒に徐々に加えた。混合後に、触媒を250°F(121℃)で2時間乾燥した。次に、触媒を、フルエア中で3時間(3容積/容積/分)、660°F(349℃)で焼成した。
【0058】
塩化ロジウム水和物(0.076g)を、9.49gの脱イオン水に溶解し、30gの上記触媒に徐々に加えた。前記触媒を充分に混合し、次に250°F(121℃)で4時間乾燥した。次に、触媒をフルエア中で3時間(容積/容積/分)、660°F(349℃)で焼成した。
【0059】
結果として触媒は、水素化成分の取込みに先立って、0.1重量%のロジウム、0.76重量%のマグネシウムおよび1.5重量%のプラチナという組成およびアルファ値15を有した。
【0060】
図14は、共に供給される水を用いておよび用いないで、異なった圧力で試験した触媒を示す。前記触媒は安定的で、選択的である。
【0061】
実施例17. 蒸気負荷された3Xシリカ選択活性化H−ZSM−5/SiO
シリカ結合H−ZSM−5(0.4μm、26:1 Si:Al2)押出物(65/35ZSM-5/SiO、1/16”円筒形)を、デカンの中で7.8重量%ダウ(商標)−550シリコーンを含浸することによりシリカを用いて選択活性化し、デカンを剥離し、および1000°F(538℃)で焼成した。この処理をさらに2回繰り返した。次に3X選択活性化材料を、それぞれアルファ値51、32および15を有する3つの触媒を生成するため、925°F(496℃)、975°F(524℃)および1000°F(538℃)で24時間大気圧下100%蒸気中で蒸気負荷した。
【0062】
実施例18.0.1%Pt/Al
アルミナ押出物(100% Al2O3 1/16”円筒形)に、テトラアミンプラチナ硝酸塩を用いた初期湿気含浸、それに続く250°F(121℃)での乾燥および660°F(349℃)での空気中における3時間の焼成により、0.1重量%プラチナ(Pt)を充填した。
【0063】
実施例19. 触媒評価
特記のない限り、本発明の触媒データは以下の操作条件で下向流固定床反応槽を用いて得た。すなわち、温度=500℃、圧力=15psig(205kPa)、H/炭化水素モル比=0.8、1:3のモル比での純メタノールおよびトルエン供給原料、シーブ含有基本ケース触媒に基づいてWHSV=3.9h−1。前記触媒の装填物は、実施例18の0.4から0.8gの0.1%Pt/Alおよび実施例17の2gの各蒸気負荷された触媒との混合物であった。
【0064】
触媒Nは、実施例18の押出物0.8gおよび実施例17のアルファ値51を有す蒸気負荷された触媒2gの触媒装填量を有する。
【0065】
触媒Oは、実施例18の押出物0.8gおよび実施例17のアルファ値32を有す蒸気負荷された触媒2gの触媒装填量を有する。
【0066】
触媒Pは、実施例18の押出物0.4gおよび実施例17のアルファ値15を有す蒸気負荷された触媒2gの触媒装填量を有する。
【0067】
1:3モル供給原料混合物について、メタノールを用いた反応から予想される最大トルエン変換は、約33%になる。メタノールの利用は(生成されるキシレンのモル−生成されるベンゼンのモル)/(変換されるメタノールのモル)と報告されている。ベンゼンは、キシレンとベンゼンへのトルエンの不均化により生成された任意のキシレンを説明するために差し引かれる。
【0068】
図15−17で示されるように、触媒N、OおよびPはそれぞれ良好な安定性を示す。触媒Oは、7%のトルエン変換を伴う85%の最高パラ−キシレン選択性を維持するように思われる。触媒Pは、73%という良好なパラ−キシレン選択性を伴う14%の最高トルエン変換を示す。この実施例は、水素化機能がモレキュラーシーブに近接している限り、本発明に従って有効であるモレキュラーシーブに水素化機能が直接位置される必要がないことを示している。この実施例に示されるように、水素化金属は活性モレキュラーシーブ触媒と入り混ったアモルファス支持体へ含浸できる。
【0069】
実施例20. 0.1%ロジウム、3Xシリカ選択活性化1%プラチナ含浸ZSM−5/SiO(触媒 Q)
シリカ結合H−ZSM−5(450:1 Si:Al2)押出物(50/50 ZSM-5/SiO、1/16” 円筒形)に、リン酸アンモニウム用いた初期湿気含浸、250°F(121℃)での乾燥および1000°F(538℃)での空気中における3時間の焼成により、1重量%のリンを充填した。次に、押出物を含んだリンをデカンの中で7.8重量%ダウ(商標)−550シリコーンを含浸することによりシリカを用いて選択活性化し、デカンを剥離し、および1000°F(538℃)で焼成した。この操作をさらに2回繰り返した。次に、3X選択活性化材料に塩化ロジウム水和物を用いた初期湿気含浸、250°F(121℃)での乾燥、および660°F(349℃)での空気中における3時間の焼成により、0.1重量%ロジウムを充填した。結果として触媒は、水素化成分の取込みに先立って0.1重量%のロジウムおよび1重量%のプラチナの組成、およびアルファ値1を有した。
【0070】
次に、図18を参照すると、触媒データは触媒Qが高いパラ選択性および優れた触媒安定性を維持することを示す。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図2】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図3】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図4】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図5】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図6】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図7】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図8】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図9】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図10】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図11】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図12】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図13】トルエンのメチル化プロセスにおける、メタノール分解の減少に対する水素化金属、水、およびリンの影響を示すグラフである。
【図14】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図15】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図16】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図17】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。
【図18】トルエンのメチル化プロセスにおける種々の触媒のパラ選択性を示すプロットを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル化反応条件下の触媒の存在下において、トルエン、ベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレンおよびそれらの混合物からなる群より選択される芳香族化合物を含む供給原料とアルキル化試薬を反応することを含む選択的アルキル化芳香族化合物の生成方法であって、前記触媒が選択活性化モレキュラーシーブおよび1つ以上の水素化金属を含み、ここで以下の条件
a. 前記選択活性化モレキュラーシーブが、前記1つ以上の水素化金属の取込みに先立って100未満のアルファ値を有する、および
b. 前記選択活性化および水素化モレキュラーシーブが100未満のアルファ値を有する、
の少なくとも一つを満たすことを特徴とする方法。
【請求項2】
アルキル化反応条件下の触媒の存在下において、トルエン、ベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレンおよびそれらの混合物からなる群より選択される芳香族化合物を含む供給原料とアルキル化試薬を反応することを含む選択的アルキル化芳香族化合物の生成方法であって、前記触媒がリンおよびシリコン化合物を用いた処理により選択活性化された中孔サイズモレキュラーシーブを含み、さらに1つ以上の水素化金属を含み、ここで以下の条件
a. 前記選択活性化モレキュラーシーブが、前記1つ以上の水素化金属の取込みに先立って100未満のアルファ値を有する、および
b. 前記選択活性化および水素化モレキュラーシーブが100未満のアルファ値を有する、
の少なくとも一つを満たすことを特徴とする方法。
【請求項3】
アルキル化反応条件下の触媒の存在下において、トルエン、ベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレンおよびそれらの混合物からなる群より選択される芳香族化合物を含む供給原料とアルキル化試薬を反応することを含む選択的アルキル化芳香族化合物の生成方法であって、前記触媒がリン、マグネシウムおよびシリコン化合物を用いた処理によって選択活性化された中孔サイズモレキュラーシーブを含み、さらに1つ以上の水素化金属を含み、ここで以下の条件
a. 前記選択活性化モレキュラーシーブが、前記1つ以上の水素化金属の取込みに先立って100未満のアルファ値を有する、および
b. 前記選択活性化および水素化モレキュラーシーブが100未満のアルファ値を有する、
の少なくとも一つを満たすことを特徴とする方法。
【請求項4】
アルキル化反応条件下の触媒の存在下において、トルエン、ベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレンおよびそれらの混合物からなる群より選択される芳香族化合物を含む供給原料とアルキル化試薬を反応することを含む選択的アルキル化芳香族化合物の生成方法であって、前記触媒がリンおよびマグネシウムを用いた処理によって選択活性化されたゼオライト結合ゼオライトモレキュラーシーブを含み、さらに1つ以上の水素化金属を含み、ここで以下の条件
a. 前記選択活性化モレキュラーシーブが、前記1つ以上の水素化金属の取込みに先立って100未満のアルファ値を有する、および
b. 前記選択活性化および水素化モレキュラーシーブが100未満のアルファ値を有する、
の少なくとも一つを満たすことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記反応条件が、約300℃から約700℃までの温度範囲、約1psig(108kPa)から1000psig(6996kPa)までの圧力範囲、および約0.1および約200の間の重量時間当り空間速度を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、1および20の間の範囲における重量時間当り空間速度で行なわれることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応が、2:1の水素と炭化水素の比率で行なわれることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記反応条件が、さらに5psig(34kPa)以上の分圧での水素添加を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記供給原料が、供給原料における(a)前記水素および前記水と(b)前記芳香族化合物および前記アルキル化試薬のモル比率が約0.01から約10の間となるように水をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記選択的なアルキル化芳香族化合物がパラ−キシレンを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法がトルエンまたはベンゼンのメチル化を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記パラ−キシレン選択性が60%より大きいことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記パラ−キシレン選択性が75%より大きいことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記パラ−キシレン選択性が80%より大きいことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記パラ−キシレン選択性が85%より大きいことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記パラ−キシレン選択性が90%より大きいことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項17】
以下の条件
a. 前記選択活性化モレキュラーシーブが、前記1つ以上の水素化金属の取込みに先立って50未満のアルファ値を有する、および
b. 前記選択活性化および水素化モレキュラーシーブが50未満のアルファ値を有する、
の少なくとも1つが満たされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
以下の条件
a. 前記選択活性化モレキュラーシーブが、前記1つ以上の水素化金属の取込みに先立って25未満のアルファ値を有する、および
b. 前記選択活性化および水素化モレキュラーシーブが25未満のアルファ値を有する、
の少なくとも1つが満たされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
以下の条件
a. 前記選択活性化モレキュラーシーブが、前記1つ以上の水素化金属の取込みに先立って10未満のアルファ値を有する、および
b. 前記選択活性化および水素化モレキュラーシーブが10未満のアルファ値を有する、
の少なくとも1つが満たされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
必要なら、前記選択活性化モレキュラーシーブの蒸気負荷およびカオチンを有するモレキュラーシーブのイオン交換の少なくとも1つにより、前記選択活性化モレキュラーシーブの前記アルファ値を減少させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記モレキュラーシーブが、リン、マグネシウム、金属酸化物、コークス、シリコン化合物およびそれらの組合せを用いた処理の1つ以上により選択活性化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記モレキュラーシーブが、リン、マグネシウムおよびシリコン化合物を用いた処理により選択活性化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記モレキュラーシーブが、リンおよびシリコン化合物を用いた処理により選択活性化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記モレキュラーシーブが、マグネシウムおよびシリコン化合物を用いた処理により選択活性化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記シリコン化合物がシリコーンを含むことを特徴とする請求項2、3、21、22、23および24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記シリコーンを用いた処理が、前記シリコーンを用いた複数の処理を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上の水素化金属の前記取込みが、含浸、イオン交換、物理的密着(physical intimate)混合およびそれらの組み合わせの1つ以上によることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記1つ以上の水素化金属が、VIIIA族金属、IVB族金属、VB族金属、VIIA族金属およびそれらの混合物の1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記1つ以上の水素化金属が、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト、鉄、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、マンガン、テクネチウム、レニウムおよびそれらの混合物の1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ以上の水素化金属がプラチナを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記1つ以上の水素化金属がロジウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記触媒がさらに結合剤材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記触媒がゼオライト結合ゼオライトを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記アルキル化試薬が、メタノール、ジメチルエチル、塩化メチル、臭化メチル、炭酸メチル、アセトアルデヒド、ジメトキシエタン、アセトン、およびジメチルスルフィドの1つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記アルキル化試薬が合成ガスより生成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記モレキュラーシーブがZSM−5モレキュラーシーブを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ゼオライト結合ゼオライトが、前記シリカ結合剤がシリカライトに変換された、シリカで結合されたZSM−5コアゼオライト結晶を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項38】
前記ZSM−5コアゼオライト結晶が、約70−75:1 Si:Alからのシリカとアルミナの比率を有することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記結合剤が、前記ゼオライト結合ゼオライトの重量に基づいて約25重量%から約45重量%を含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記ゼオライト結合ゼオライトが900:1 Si:Alより大きいシリカとアルミナの比率を有することを特徴とする請求項37に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公表番号】特表2007−517030(P2007−517030A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546993(P2006−546993)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/037785
【国際公開番号】WO2005/068406
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】