説明

芳香族カルボン酸と水性溶媒とを含有する抗菌性組成物

良好な抗菌作用と抗ウィルス作用を示す抗菌性組成物が開示されている。 この抗菌性組成物は、芳香族カルボン酸、水性溶媒、pH調整化合物、それに、水を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、良好な抗菌作用を示す、パーソナルケア用組成物などの抗菌性組成物に関する。 具体的には、本願発明は、グラム陽性細菌集団およびグラム陰性細菌集団、それに、ウィルス集団のほとんど、例えば、それらの99%以上を1分以内に削減してしまう、芳香族カルボン酸と水性溶媒とを含む抗菌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌性パーソナルケア用組成物は、当該技術分野において周知である。 その中でも、皮膚を清浄し、かつ、皮膚上、とりわけ、使用者の手、腕および顔に付着した細菌、ウィルスおよびその他の微生物を除去するために日常的に用いられている抗菌性清浄組成物が特に有用である。
【0003】
手指用消毒剤は、抗菌性パーソナルケア用組成物の一分類に属する。 この分類に属する組成物は、本来は、医療従事者の手指を消毒するためのものである。 手指用消毒剤が、手指に塗布されて、そこに擦り込まれると、組成物は皮膚から揮発する。 アルコール含量の大きな手指用消毒剤では、皮膚から組成物が迅速かつ完全に揮発するので、組成物を皮膚から頻繁に拭き取る必要はない。
【0004】
例えば、ヘスルケア産業、フードサービス産業、食肉加工産業、それに、各消費者の生活空間などでも、抗菌性組成物は利用されている。 抗菌性組成物の普及は、皮膚に付着した細菌やその他の微生物の集団を制御することの重要性を、消費者が認識していることを裏付けるものである。 しかしながら、抗菌性組成物は、毒性や皮膚刺激性に関連する現象を招かずに、微生物集団を迅速に実質的かつ多様に減少せしめることは重要である。
【0005】
通常、抗菌性清浄組成物は、その担体中に、活性抗菌剤、界面活性剤、それに、様々なその他の成分、例えば、色素、香料、濃化剤、スキンコンディショナーなどを含有している。 様々な種類の抗菌剤が、抗菌性清浄組成物に用いられている。 抗菌剤の例として、ビスグアニジン(例えば、ジグルコン酸コレキシジン)、ジフェニル化合物、ベンジルアルコール、トリハロカルバニリド、第四アンモニウム化合物、エトキシル化フェノール、および、ハロ置換フェノール性化合物、例えば、PCMX(すなわち、p-クロロ-m-キシレノール)やトリクロサン(すなわち、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル)などのフェノール性化合物がある。 このような抗菌剤を利用した今日の抗菌性組成物は、対象とする微生物および特定の抗菌性組成物に応じて、軽度から強度に至る多様なの抗菌活性を示す。
【0006】
手指用消毒剤は、エタノールのようなアルコールの含有量は大きい。 手指用消毒剤でのアルコール含有量が大きいと、アルコールそれ自体が、消毒剤として機能する。 加えて、アルコールは迅速に揮発するので、手指用消毒剤を塗布した皮膚の拭き取りや洗浄は不要となる。 しかしながら、アルコールの含量が大きな手指用消毒剤、すなわち、組成物の約40重量%を超える量のアルコールを含む手指用消毒剤は、皮膚の乾燥を促したり、皮膚に刺激を与える傾向がある。
【0007】
一般的に、市販の抗菌性組成物は、軽度〜適度の抗菌活性を示す。 抗菌活性は、ウィルスやグラム陽性およびグラム陰性細菌を含む多様な微生物に対して評価される。 抗菌性組成物がもたらした細菌集団およびウィルス集団に関する対数的減少または減少率は、抗菌活性と相関する。 特定の時間、通常は、15秒〜5分間の時間をかけて接触した後に認められる、3〜5の対数的減少が最も好ましく、また、1〜3の対数的減少が好ましいものであるのに対して、1にも満たない対数的減少は、あまり好ましくない。 つまり、非常に好ましい抗菌性組成物は、短い接触時間で、多様な微生物に対して、3〜5の対数的減少を示すのである。 これまでに、従来技術において、前述したような抗菌性組成物の実現に向けての努力はなされているものの、消費者が所望しているような、迅速に多様な微生物を制御する組成物には至っていない。
【0008】
抗菌性組成物に有機性カルボン酸を用いることは公知である。 よく利用されている芳香族カルボン酸は、サリチル酸である。 サリチル酸を利用した抗菌性組成物、特に、パーソナルケア用組成物において改善が認められていることは、すでに、多くの研究者から報告されている。 例えば、デックナーらの米国特許第5,824,666号では、滞留型の保湿剤としての利用を意図した、抗アクネ剤としてのサリチル酸と界面活性剤とを含有する水中油型乳濁液が開示されている。 ビースらの米国特許第5,968,539号は、抗菌剤(例えば、トリクロサン)、陽子供与剤(例えば、サリチル酸)、および陰イオン性界面活性剤を含有するリンス剤型の抗菌剤を開示している。 抗菌剤を含む混合物にサリチル酸を取り入れる技術思想は、その他の特許、例えば、ビースらの米国特許第6,106,851号、第6,183,757号、第6,190,674号、第6,190,675号、第6,197,315号、第6,214,363号および第6,287,577号などでも開示されている。 これら特許は、抗菌性組成物にサリチル酸を利用することを開示しているが、各特許は、(1)組成物内のトリクロサンなどに由来する抗菌活性、あるいは(2)組成物のpH、つまり、3.5またはそれ以下のpHのいずれかに依存している。 前掲のいずれの特許も、組成物に界面活性剤を取り入れることを開示している。
【0009】
従来技術は、抗菌性組成物での主要抗菌剤または唯一の抗菌剤として、特に、約3.5またはそれ以上のpH、例えば、約3.5〜約5のpHにおいて、サリチル酸またはその他の芳香族カルボン酸を使用することには言及していない。 また、従来技術は、主要抗菌剤または唯一の抗菌剤としての芳香族カルボン酸を含みながらも、界面活性剤を含んでいないか、あるいは少なくとも実質的に界面活性剤を含んでいない抗菌性組成物を使用することにも言及していない。
【発明の開示】
【0010】
従って、短時間の内に、多様なグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌、それにウィルスに対して効果を示す抗菌性組成物、すなわち、その抗菌活性が、主にまたは単に、組成物に含まれている芳香族カルボン酸および水性溶媒の存在に起因する抗菌性組成物が待望されているのである。 本願発明は、まさしく、このような抗菌性組成物に関する。
【0011】
本願発明は、生物の表面および無生物の表面をも含む表面に対して局所的に用いる抗菌性組成物に関する。 本願発明の組成物は、パーソナルケア用途に利用する抗菌性組成物として特に有用である。
【0012】
具体的には、本願発明は、約1分にも満たない短時間の内に、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌、それに、ウィルスを実質的に減少せしめる抗菌性組成物に関する。 より詳細には、本願発明は、芳香族カルボキシル基を有する成分、水性溶媒、および、水を含みながらも、界面活性剤を含んでいないか、あるいは少なくとも実質的に界面活性剤を含んでいない抗菌性組成物に関する。
【0013】
従って、本願発明の一実施態様によれば、(a)約0.1重量%〜約10重量%の芳香族カルボン酸、(b)約5重量%〜約50重量%の水性溶媒、(c)pHを約2〜約5.5に調整するに十分な量のpH調整化合物、および(d)水、を含む抗菌性組成物が提供される。また、この抗菌性組成物は、界面活性剤を含んでいないか、あるいは少なくとも実質的に界面活性剤を含んでおらず、換言すれば、0重量%〜約0.2重量%の界面活性剤を含んでいる。
【0014】
本願発明の他の実施態様によれば、そのpKaが、約2.5またはそれ以上、そして、好ましくは、約3またはそれ以上である芳香族カルボン酸、例えば、安息香酸またはサリチル酸を含む抗菌性組成物が提供される。
【0015】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、そのHansenの溶解度パラメーターが、約38またはそれ以下、好ましくは、約35またはそれ以下の水性溶媒を含む抗菌性組成物が提供される。
【0016】
本願発明の他の実施態様によれば、主たる抗菌剤、または唯一の抗菌剤として、芳香族カルボン酸および水性溶媒を利用する抗菌性組成物が提供される。
【0017】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、30秒間の接触の後に、グラム陽性細菌(すなわち、S. aureus)に関して、少なくとも約3の対数的減少を実現する抗菌性組成物が提供される。
【0018】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、30秒間の接触の後に、グラム陰性細菌(すなわち、E. coli)に関して、少なくとも約3の対数的減少を実現する抗菌性組成物が提供される。
【0019】
本願発明の他の実施態様によれば、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌に対して実質的な対数的減少を示し、かつ約2〜約5.5のpHを有する抗菌性組成物が提供される。
【0020】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、30秒間の接触の後に、ウィルス(例えば、ライノウイルスおよびロタウイルス)に関して、少なくとも約3の対数的減少を実現する抗菌性組成物が提供される。
【0021】
本願発明の他の実施態様によれば、抗菌性組成物を利用した日用品、例えば、皮膚洗浄剤、身体用スプラッシュ、外科用スクラブ、創傷保護剤、手指用消毒剤、消毒剤、洗口剤、ペット用シャンプー、硬質面消毒剤などが提供される。
【0022】
本願発明のさらに他の実施態様によれば、皮膚などの組織と本願発明の組成物とを、組織内の細菌集団を所望のレベルにまで減少させるために、十分な時間、例えば、約15秒間〜5分間かけて接触させることで、ヒトの組織を含めた動物組織でのグラム陽性細菌集団および/またはグラム陰性細菌集団、それにウィルス集団を減少せしめる方法が提供される。 この組成物は、皮膚から拭き取ることができ、また、洗い流すこともできる。 ある実施態様によれば、組成物に含まれる揮発成分が蒸発するまで、その組成物を皮膚に留めることができる。
【0023】
本願発明に関する上述した態様とその他の新規の態様および利点を、好適な実施態様に沿って以下に詳細に説明するが、それら開示に基づいて、本願発明は限定的に解釈されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
活性抗菌剤を利用したパーソナルケア製品は、古くから知られている。 抗菌性のパーソナルケア製品が登場して以来、これら製品が抗菌性を呈するとの多数の訴求がなされてきた。 しかしながら、可能な限り短い接触時間でもってして、多様な生物に対して顕著な対数的減少を実現する組成物が、最も効果的な抗菌性組成物であるといえる。 また、抗菌性組成物の残留性が良好であれば、なお好ましい。
【0025】
とりわけ、今日の製品の多くが、人体の健康に対しても特に影響のあるE. coliなどのグラム陰性細菌に対しては効果を示していない。 それ故に、本願発明は、持続的死滅とは一線を画する細菌の急速死滅(すなわち、時限死滅)によって決定された予期せぬ顕著な多様な抗菌作用を有する抗菌性組成物に関する。
【0026】
本願発明の組成物は、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌の双方、それに、ウィルスに対して優れた作用を呈する抗菌性組成物である。 本願発明の組成物は、微生物の急速死滅においても優れている。 本願発明の抗菌性組成物は、(a)約0.1重量%〜約10重量%の抗菌剤としての芳香族カルボン酸、(b)約0.1重量%〜約40重量%の水性溶媒、(c)pHを約2〜約5.5に調整するに十分な量のpH調整化合物、および(d)水を含む。 この組成物は、界面活性剤を含んでいないか、あるいは少なくとも実質的に界面活性剤を含んでいない。 この組成物は、30秒間の接触の後に、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌、それに、ウィルスに関して、少なくとも約3の対数的減少を示す。 また、この組成物は穏和で、また、持続的死滅の作用を示すので、この組成物を、皮膚から拭き取ったり、洗い流す必要はない。
【0027】
本願発明によれば、活性抗菌剤(すなわち、芳香族カルボン酸)、水性溶媒、pH調整化合物、および水を含んでなる担体を含む抗菌性組成物が提供される。 芳香族カルボン酸は、この組成物における、唯一の抗菌剤または主要な抗菌剤である。 水性溶媒も、抗菌性を示す。 本願発明の組成物は、界面活性を奏する界面活性剤を含んでいないか、あるいは少なくとも実質的に界面活性剤を含んでおらず、換言すれば、組成物の0重量%〜約0.2重量%の界面活性剤を含んでいる。 この組成物は、屈水性誘発物質や、後述する、色素、スキンコンディショナー、ビタミン類および香料などの任意成分をさらに含むことができる。
【0028】
以下に、本願発明の実施態様、それに、本願発明の抗菌性組成物に利用する様々な成分を例示するが、それら開示に基づいて、本願発明は限定的に解釈されるべきではない。
【0029】
抗菌剤
本願発明の組成物には、組成物の約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは、約0.1重量%〜約5重量%の量で抗菌剤が存在する。 本願発明における最大限の効果を引き出すために、組成物の約0.2重量%〜約5重量%の量の抗菌剤を用いる。
【0030】
抗菌性組成物の内でも、組成物の0.1重量%〜約7重量%、好ましくは、0.2重量%〜約5重量%、そして、最も好ましくは、約0.2重量%〜約3重量%の量の抗菌剤を含有する組成物は、調製を要さずに即座に使用することができる。 この抗菌性組成物は、濃縮物として調製することもでき、その場合、使用時に、1〜100部の水で希釈して、最終用途の組成物が調製される。 通常、この濃縮組成物は、約0.1重量%を超えて、約10重量%までの量の抗菌剤を含んでいる。 7重量%を超える量の抗菌剤を含む最終用途の組成物も意図している。
【0031】
本願発明で用いる抗菌剤とは、そのpKaが、約2.5またはそれ以上、好ましくは、約3またはそれ以上の芳香族カルボン酸である。 本願発明の特徴を最大限に引き出すために、芳香族カルボン酸のpKaは、約3.5またはそれ以上とする。 有用な芳香族カルボン酸は、以下の構造式;
【0032】
【化2】

式中、Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ハロ、フェニルおよびベンジルからなるグループから独立的に選択され、そして、nは、0、1または2である式で表される。
【0033】
有用な芳香族カルボン酸として、サリチル酸(すなわち、o-ヒドロキシ安息香酸、pKaは約3)、安息香酸(pKaは4.19)、o-アミノ安息香酸(pKaは6.97)、m-アミノ安息香酸(pKaは4.78)、p-アミノ安息香酸(pKaは4.92)、o-ブロモ安息香酸(pKは2.84)、m-ブロモ安息香酸(pKaは3.86)、o-クロロ安息香酸(pKaは2.92)、m-クロロ安息香酸(pKaは3.82)、p-クロロ安息香酸(pKaは3.98)、2,4-ジヒドロキシ安息香酸(pKaは2.94)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(pKaは2.97)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸(pKaは4.48)、3,5-ジヒドロキシ安息香酸(pKaは4.04)、エチル安息香酸(pKaは4.35)、m-ヒドロキシ安息香酸(pKaは4.06)、p-ヒドロキシ安息香酸(pKaは4.48)、o-ヨード安息香酸(pKaは2.85)、m-ヨード安息香酸(pKaは3.80)メチル-o-アミノ安息香酸(pKaは5.34)、メチル-m-アミノ安息香酸(pKaは5.10)、メチル-o-アミノ安息香酸(pKaは5.04)、o-フェニル安息香酸(pKaは3.46)、イソプロピル安息香酸(pKaは4.48)、およびこれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。 好ましい芳香族カルボン酸として、サリチル酸、安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、およびこれらの組み合わせがある。
【0034】
この組成物は、フェノール、ビスグアニジン、第四塩化アンモニウムなどの、その他の標準的な抗菌剤は含んでいない。
【0035】
水性溶媒
本願発明の組成物は、芳香族カルボン酸以外に、水性溶媒も含む。 本願発明の組成物には、組成物の約5重量%〜約50重量%、好ましくは、約7重量%〜約45重量%の量で水性溶媒が存在する。 本願発明における最大限の効果を引き出すために、本願発明の組成物は、組成物の約10重量%〜約40重量%の量の水性溶媒を含む。
【0036】
本願明細書に記載の「水性溶媒」とは、少なくともその一部が水に可溶であり、また、1個〜6個、通常は、1個〜3個の水酸基を有する有機化合物である。 本願発明において有用な水性溶媒は、約38またはそれ以下、好ましくは、約35またはそれ以下のHansenの溶解度パラメーターを示す。 本願発明における最大限の効果を引き出すために、この水性溶媒は、約30またはそれ以下、例えば、18にまで低下したHansenの溶解度パラメーターを示す。 Hansenの溶解度パラメーターは、当業者にとって周知の事項であり、このパラメーターに関しては、例えば、Allan F. M. Barton, CRC Press, Boca Raton (1991)での「CRC Handbook. of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters, 2nd Edition,」に記述されている。
【0037】
通常、水性溶媒は、25℃の100gの水において、少なくとも0.1gの水溶性を示す。 水性溶媒の水溶性に上限はなく、例えば、水性溶媒と水とは、どのような比率でも可溶化することができる。
【0038】
従って、「水性溶媒」の語は、水溶性アルコール、ジオール、トリオール、およびポリオールを含む。 水性溶媒の具体例として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、n-プロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、1,2,5-ヘキサントリオール、ソルビトール、PEG-4、ベンジルアルコール、同様の水酸基含有化合物、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。
【0039】
pH調整化合物
本願発明の抗菌性組成物は、抗菌剤と水性溶媒に加えて、組成物のpHを約2〜約5.5、好ましくは、約2〜約5、そして、より好ましくは、約2.25〜約5に調整するに十分な量のpH調整化合物を含む。 本願発明の組成物には、組成物の約1重量%〜約5重量%、好ましくは、約1重量%〜約4重量%の量でpH調整化合物が存在する。 本願発明における最大限の効果を引き出すために、本願発明の組成物には、組成物の約1.5重量%〜約3.5重量%の量でpH調整化合物が存在する。
【0040】
塩基性pH調整化合物の例として、アンモニア、モノ-、ジ-、およびトリアルキルアミン、モノ-、ジ-、およびトリアルカノールアミン、アルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物、リン酸アルカリ金属、硫酸アルカリ、炭酸アルカリ金属、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。 特定の塩基性pH調整剤に限定されるものではなく、当該技術分野で周知の酸性pH調整化合物も利用できる。 塩基性pH調整化合物の具体例として、アンモニア;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウム;一水素リン酸塩および二水素リン酸塩の形態をも含むリン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム;炭酸/重炭酸ナトリウムおよび炭酸/重炭酸カリウム;硫酸/重硫酸ナトリウムおよび硫酸/重硫酸カリウム;モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなどがあるが、これらに限定されない。
【0041】
いずれの酸性のpH調整化合物でも利用可能であり、当該技術分野で周知の酸性のpH調整化合物を、単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。 酸性のpH調整化合物の例として、無機酸とポリカルボン酸がある。 無機酸として、塩酸、硝酸、リン酸および硫酸があるが、これらに限定されない。 ポリカルボン酸として、クエン酸、グリコール酸および乳酸があるが、これらに限定されない。
【0042】
担 体
本願発明の組成物で用いられている担体は、水を含む。
【0043】
任意成分
本願発明の抗菌性組成物に、当業者に周知の任意成分を取り入れることもできる。 例えば、本願発明の組成物に、屈水性誘発物質を用いることができる。 この組成物は、その抗菌作用に悪影響を及ぼさず、かつ、所望の機能を発現するに十分な量のその他の任意成分、例えば、色素や香料も含むことができる。 通常、本願発明の抗菌性組成物には、組成物の0重量%〜約5重量%の量で個別の任意成分が存在し、また、組成物の0重量%〜約20重量%の量で任意成分全体が存在する。
【0044】
任意成分の種類として、色素、香料、ゲル化剤、緩衝剤、抗酸化体、スキンコンディショナーおよび保護剤、キレート化剤、乳白剤、ビタミン類、および当業者に周知の同様の任意成分などがあるが、これらに限定されない。 任意成分の具体例として、ビタミン類に属するビタミンA、EおよびCや、キレート化剤に属するEDTA化合物などがある。
【0045】
本願発明の組成物に、任意の屈水性誘発物質を用いることもできる。 屈水性誘発物質とは、他の化合物の水溶性を改善する作用を示す化合物である。 本願発明で用いる屈水性誘発物質は、界面活性作用を呈さず、通常は、短鎖のアルキルアリールスルホン酸塩である。 屈水性誘発物質の具体例として、クメンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸アンモニウム、キシレンスルホン酸アンモニウム、トルエンスルホン酸カリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸、およびキシレンスルホン酸などがあるが、これらに限定されない。 その他の有用な屈水性誘発物質として、ポリナフタレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、およびコハク酸二ナトリウムなどがある。
【0046】
本願発明の組成物に、任意のゲル化剤を含めることもできる。 この抗菌性組成物は、必要に応じて、皮膚への塗布および擦り込みが容易な粘液状、ゲル状または半固形状の組成物を得る上で十分な量のゲル化剤を含む。 当業者であれば、所望の粘度または稠度を有する組成物を得るために必要なゲル化剤の種類および量は、容易に見当がつくであろう。
【0047】
本願明細書で用いる「ゲル化剤」の語は、水性組成物の粘度を増大せしめたり、あるいは水性組成物をゲル状または半固形状に変化させる物質を指す。 従って、ゲル化剤としては、天然有機物、例えば、天然ガム、または合成ポリマー、あるいは天然無機物などが利用可能である。
【0048】
先述したように、本願発明の組成物には界面活性剤が含まれていない。 本願発明の抗菌性組成物には、意図的に界面活性剤を加えていないが、市販のゲル化剤には、水中へのゲル化剤の分配を補助するための界面活性剤が存在しているため、0重量%〜約0.2重量%の量の界面活性剤が存在する場合もある。 界面活性剤が、添加物として、あるいは他の構成成分での副産物として存在する場合もある。 その他の有用なゲル化剤は、本願明細書の一部を構成するものとして援用した米国特許第6,136,771号に開示されている。
【0049】
任意のスキンコンディショナーとして、例えば、ミリスチン酸セチル、ジオレイン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン、ラウリン酸メチル、PPG-9ラウレート、パルミチン酸オクチル、およびPPG-5ラノエートなどがある。 このスキンコンディショナーとして、湿潤剤、例えば、グルカミンおよびピリドキシングリコールを用いることもできる。 閉塞性スキンコンディショナー、例えば、ラノリン酸アルミニウム、トウモロコシ油、ココナッツ油、ステアリン酸ステアリル、トリミリスチン、オリーブ油および合成ワックスなども使用可能である。 当業者に周知のスキンコンディショナーの他にも、様々な種類のスキンコンディショナーの組み合わせを、それ単独であるいはさらにそれらを組み合わせて使用することができる。 それらスキンコンディショナーの例が、本願明細書の一部を構成するものとして援用した米国特許第6,136,771号に開示されているが、それらに限定されない。
【0050】
本願発明の抗菌性組成物が奏する新規かつ予想外の結果を実証するために、以下の実施例および比較例を調製し、そして、対照のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌、それに、ウィルスに対する組成物の効果を検証した。 以下の各実施例で示した重量%は、本願発明の組成物に含まれる各成分の実際の重量、または活性が認められる重量を指すものである。 この組成物は、後述するように、当業者が理解可能な手順で成分を混合することによって調製された。
【0051】
本願実施例での試験において、以下の方法を用いた。
【0052】
抗菌製品の急速殺菌(時限死滅)活性の検定。 抗菌組成物に曝された被験微生物の生存性を時間との関係で決定する時限死滅法によって、抗菌性組成物の活性を測定した。 この試験では、組成物の希釈画分は、特定の温度下で、特定の時間をかけて、既知の供試細菌集団と接触する。 試験終期になれば、この試験組成物を中和して、組成物の抗菌活性を阻害する。 当初の細菌数からの減少率あるいは対数的減少を計算する。 一般に、時限死滅法は、当業者に周知の方法である。
【0053】
本願発明の組成物は、0%〜100%のいずれの濃度でも試験することができる。 濃度の選択は、研究者の裁量に依存しており、また、当業者であれば、好適な濃度を容易に決定することができる。 例えば、通常、粘性の試料は、希釈された状態で試験されるため、試料が希釈されることはない。 磁気攪拌子を具備した250ml容の滅菌済ビーカーに試験試料を置き、そして、必要に応じて、試料の体積を、滅菌脱イオン水で100mlに調整する。 各試験を三度実施して、得られた結果を集計し、そして、対数的減少度の平均値を報告する。
【0054】
接触時間も、研究者の裁量で決定される。 接触時間に関して、特に制限はない。 一般的な接触時間は、15秒間〜5分間の範囲であるが、30秒間〜1分間に設定されることが多い。 接触温度についても特に制限はないが、一般的には、室温または約25℃に設定されている。
【0055】
細菌懸濁物または試験用接種物は、好適な固形培地(例えば、寒天)にて細菌培養物を生長させて調製する。 次いで、この細菌集団を、滅菌済生理食塩水を用いて寒天から洗い流して、細菌懸濁物での個体数を、約108のコロニー形成単位/ml(cfu/ml)になるまで調整する。
【0056】
以下の表には、後出の試験で用いた細菌培養物を列挙しており、また、利用した微生物の名称に関係する細菌名、ATCC(アメリカン タイプ カルチュア コレクション)受託番号、そして、その略称も併記している。
【0057】
【表1】

S. aureusは、グラム陽性細菌であるが、E. coli、K. pneumおよびS. choler.は、グラム陰性細菌である。
【0058】
試験組成物が入ったビーカーを、(一定温度が所望される場合には)水浴上に置くか、あるいは、ビーカーに(実験室温度が所望される場合には)磁気攪拌子を装備する。 次いで、1.0mlの試験用細菌懸濁液を、この試料に接種する。 所定の接触時間をかけて、試験組成物と共に接種物を攪拌する。 接触時間が終了すれば、1.0mlの試験組成物/細菌混合物を、9.0mlのトリプトン-ヒスティジン-トゥイーン中和液(THT)に加える。 計測可能な範囲にまで、十倍希釈を行う。 この希釈度は、由来生物に応じて変えることができる。 プレート、すなわち、TSA+プレート(TSA+とは、レシチンとポリソルベート80とを含むトリプチケースソイ寒天である)を用いて、希釈度の選択を三度行った。 次いで、これらプレートを、25±2時間かけてインキュベーションし、そして、生存しているコロニーの固体数を計数して、減少率または対数的減少値を算出する。 対照値(対照数)は、試験組成物に代えてTHTを用いた以外は前述した手順を踏む手法を実施することで、決定される。 対照試料および試験試料の各々で得られたプレート計数値は、標準的な微生物学的方法によって、cfu/ml単位に換算される。
【0059】
対数的減少は、以下の公式を用いて算出される。
【0060】
対数的減少値=log10(対照での生存数)−log10(試験試料での生存数)
以下の表は、細菌集団およびウィルス集団での減少率と対数的減少との相関関係を示しており、本明細書では、以後、抗微生物作用指数(AEI)と称する。
【0061】
【表2】

本願発明の組成物は、少なくとも3のAEIを示しており、このAEI値は、上述したような、多様な細菌(すなわち、多様な細菌とは、少なくとも一種のグラム陽性細菌と少なくとも一種のグラム陰性細菌と定義される)に対する時限死滅試験によって決定された30秒間の接触時間での対数的(log10)減少値と等価値である。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、本願発明の組成物が奏する新規かつ予想外の効果を明示するものである。 各実施例で示したAEIは、四つの別異の細菌種、すなわち、グラム陽性細菌であるS. aureusと、グラム陰性細菌に属する三つの別異の細菌種に対して試験を行って決定したものである。 また、本願発明の組成物のAEIは、三つの別異のウィルス種、すなわち、ライノウイルス1A、ライノウイルス2AおよびロタウイルスWaについても試験を行って決定した。
【0063】
実施例1
本実施例は、広範なpH条件下において良好な抗菌作用を示す本願発明の組成物を例示している。 本実施例の組成物は、3.3重量%のサリチル酸、11重量%のエタノール、27重量%のジプロピレングリコール、それに、以下の表に示したpH値に移行せしめるに十分なリン酸ナトリウムを含んだ水性溶液であった。
【0064】
【表3】

本実施例は、芳香族カルボン酸を唯一の抗菌剤とする本願発明の組成物が、pH値が 5.04に至るまでは、少なくとも3のAEI値を維持していることを示している。 さらに別の抗菌剤や、3.5またはそれ以下のpHを必要とする従来の組成物を鑑みれば、これは改善といえる。
【0065】
実施例2(比較例)
本願発明の組成物が奏する効果における芳香族カルボン酸の役割を実証するために、幾つかの検証用組成物を調製し、そして、以下の表に記した様々なpHレベルにおいて試験を行った。 本実施例の検証用組成物は、サリチル酸を含んではいないが、11重量%のエタノール、27重量%のジプロピレングリコール、それに、以下の表に示したpH値に移行せしめるに十分なリン酸緩衝液は含んでいた。
【0066】
【表4】

意図している組成物から芳香族カルボン酸を抜いた組成を有する検証用組成物は、2〜5.5のpH値にあっては、そのいずれもが、少なくとも3のAEIを示すまでには至らなかった。
【0067】
実施例3
本実施例は、本願発明の組成物での水性溶媒の効果を示すものである。 脱イオン水に含まれる様々な濃度のサリチル酸に起因する抗菌作用を、所定の範囲のpH値において決定した。 適量のリン酸ナトリウムを用いて、pH値の調整を行った。 以下の表に、この試験の結果をまとめてある。
【0068】
【表5】

これら試験結果は、本願発明の組成物に水性溶媒を取り込むことの意義を示すものに他ならず、特に、サリチル酸単独では、試験で用いたいずれのpH値でも、少なくとも3のAEI値を示すには至らなかった。
【0069】
実施例4
本実施例は、一定濃度のサリチル酸と所定のpH値という条件下で、水性溶媒の量を変化させた場合の効果を示すものである。 本実施例の全組成物は、2重量%のサリチル酸、以下の表に示した重量%のジプロピレングリコール(DPG)、4のpH値を維持するための十分量のリン酸ナトリウム、それに、脱イオン水を含んでいる。
【0070】
【表6】

本実施例は、DPG濃度が20重量%またはそれ以上である組成物において、AEIが3を超えていることを示している。 組成物が、少なくとも3のAEIを実現する上で、最小量の水性溶媒が必要であり、また、この最小量は、水性溶媒の種類、溶液のpH、そして、芳香族カルボン酸の濃度にも関係しているものと考えられる。 水性溶媒の最小量は、いかなる組成物に関しても、本実施例で示した試験基準によって、容易に決定することができる。
【0071】
実施例5
本実施例は、本願発明のその他の組成物、すなわち、3.3重量%のサリチル酸、11重量%のベンジルアルコール、27重量%のジプロピレングリコール、そして、3.97のpH値を維持するための十分量のリン酸ナトリウムを含有している組成物を開示している。 この組成物を、上述した時限死滅法で試験したところ、3を超えるAEIを示した。
【0072】
実施例6
本実施例は、本願発明のその他の組成物、すなわち、3.3重量%のサリチル酸、22重量%のイソプロパノール、そして、3.97のpH値を維持するための十分量のリン酸ナトリウムを含有している組成物を開示している。 この組成物を、上述した時限死滅法で試験したところ、3を超えるAEIを示した。
【0073】
実施例7
本実施例は、サリチル酸以外の芳香族カルボン酸が、本願発明の組成物に利用可能であることを示している。 本実施例での全組成物は、3.3重量%の安息香酸、11重量%のエタノール、27重量%のジプロピレングリコール、そして、以下の表に示した所定の組成物pH値を維持するための十分量のリン酸ナトリウムを含有している。
【0074】
【表7】

これら本願発明の各組成物は、広範なpH値において、3を超えるAEIを示した。
【0075】
芳香族カルボン酸を欠いた比較例の組成物でのAEIは、3.02のpH値において、3を超えることはなかった。
【0076】
実施例8(比較例)
本実施例は、脂肪族カルボン酸が、抗菌成分として機能しないことを実証するものである。 まず、0.2重量%のシクロヘキサンカルボン酸、11重量%のエタノール、そして、27重量%のジプロピレングリコールを含有している組成物を調製した。 溶液のpH値を4に維持し、そして、組成物のAEIを決定するための試験を行った。 本比較例の組成物でのAEIは、3を超えることはなかった。
【0077】
実施例9
2重量%のサリチル酸、25重量%のジプロピレングリコール、水、そして、3.7のpH値を維持する上で十分なリン酸ナトリウムを混合して、本願発明の組成物(すなわち、「活性」組成物)を調製した。 さらに、サリチル酸を含んでいない以外は同一の組成である「プラシーボ」組成物も調製された。 活性組成物およびプラシーボ組成物の双方について、懸濁液での抗ウィルス活性(すなわち、ウィルスの不活性化作用)を決定するために、ライノウイルス1A(ATCC VR1364)、ライノウイルス2A(ATCC VR382)およびロタウイルスWa(1型血清、臨床分離株)に対して試験を行った。 この試験は、ASTM試験法E1052-96(「懸濁液に含まれるウィルスに対する抗菌剤の評価に関する標準的試験法」)に、抗ウィルス活性の評価試験に精通した当業者にとって自明な変更、すなわち、ウィルス種と接触時間に変更を加えた修正法に従って実施した。 この試験で得られた抗ウィルス活性は、試験に用いた接触時間内での、ウィルス粒子の対数的減少値として報告される。 以下の表には、様々な接触時間(秒数)における、活性組成物およびプラシーボ組成物についての活性評価結果(対数的減少値)がまとめてある。
【0078】
【表8】

試験に用いた三種のウィルスに対して活性組成物が示した対数的減少値が、プラシーボ組成物と比較して顕著であったことが実証されているので、実施例9は、サリチル酸を含有している本願発明の組成物が、ウィルス集団を減少せしめる上で非常に効果的であることを明確に示すものであるといえる。 ライノウイルスが風邪を、そして、ロタウイルスが胃腸病を引き起こすウィルスであることから、抗菌性組成物の技術分野において、ウィルス集団を減少できることは重要である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本願発明の抗菌性組成物は、手指用洗浄剤、洗口剤、外科用スクラブ、身体用スプラッシュ、手指用消毒剤、それに、スキンコンディショナーなどの同様のパーソナルケア製品を含めた様々な実用的な最終用途を有している。 その他の形態の組成物として、クリームやムースなどの泡状組成物、それに、エマルジョン、ローション、クリーム、ペーストなどの有機性および無機性増量剤を含んだ組成物などがある。 さらに、この組成物は、硬質表面、例えば、病院、フードサービス加工場および食肉加工場で利用されている流しや調理台のための抗菌性洗浄剤として使用することができる。 本願発明の抗菌性組成物は、即座に使用可能な希釈組成物として、あるいは、使用時に希釈する濃縮物として製造することができる。
【0080】
本願発明の組成物を、織布材に保持せしめて、抗菌性拭取材を提供することも可能である。 この拭取材は、皮膚や無生物表面を清浄および消毒するために使用することができる。
【0081】
本願発明の抗菌性組成物の効果は、短時間の接触でもってして、多種多様のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌、それに、ウィルスに対しても及ぶ。 皮膚や無生物表面を清浄および消毒するための時間が、本願発明の場合、15秒〜60秒である点に鑑みれば、細菌やウィルスについての実質的な対数的減少をもたらす短時間の接触は、重要であるといえる。
【0082】
これまで説明してきた本願発明に、本願発明の趣旨を逸脱せずに、多くの修正や変更を加えることが可能であることは自明であり、従って、特許請求の範囲の欄に記載の限定事項のみが本願発明に付加されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性組成物、すなわち;
(a) 約0.1重量%〜約10重量%の芳香族カルボン酸;
(b) 約5重量%〜約50重量%の水性溶媒;
(c) pHを約2〜約5.5に調整するに十分な量のpH調整化合物;および
(d) 水を含む担体、
を含む抗菌性組成物。
【請求項2】
約0.1重量%〜約5重量%の芳香族カルボン酸を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記芳香族カルボン酸のpKaが、約2.5〜約7である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記芳香族カルボン酸が、以下の式;
【化1】

式中、Rは、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、ハロ、フェニルおよびベンジルからなるグループから独立的に選択され、そして、nは、0、1または2である式で表される請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記芳香族カルボン酸が、サリチル酸、安息香酸、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、o-ブロモ安息香酸、m-ブロモ安息香酸、o-クロロ安息香酸、m-クロロ安息香酸、p-クロロ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、エチル安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、o-ヨード安息香酸、m-ヨード安息香酸、メチル-o-アミノ安息香酸、メチル-m-アミノ安息香酸、メチル-o-アミノ安息香酸、o-フェニル安息香酸、イソプロピル安息香酸、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗菌剤が、サリチル酸、安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、またはこれらの組み合わせを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記芳香族カルボン酸が、そこに含まれる唯一の抗菌剤である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤を実質的に含まない請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
約7重量%〜約45重量%の水性溶媒を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記水性溶媒が、約18〜約38のHansenの溶解度パラメータを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記水性溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、n-プロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、1,2,5-ヘキサントリオール、ソルビトール、PEG-4、ベンジルアルコール、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記水性溶媒が、ジプロピレングリコール、ベンジルアルコール、イソプロパノール、エタノールまたはこれらの組み合わせを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記pH調整化合物が、組成物の約1重量%〜約5重量%の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
約2〜約5のpHを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記pH調整化合物が、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはこれらの組み合わせを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
以下の成分、すなわち;
(a) 唯一の抗菌剤としての約0.2重量%〜約5重量%の芳香族カルボン酸;
(b) 約10重量%〜約40重量%の水性溶媒;
(c) pHを約2.25〜約5に調整するに十分な量のpH調整化合物
を含み、かつ界面活性剤を実質的に含まない請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
表面に存在する細菌集団を減少させる方法であって、当該表面と請求項1に記載の組成物とを30秒間にわたって接触させて、S. aureus に関して、少なくとも3の対数的減少、またはE. coli に関して、少なくとも3の対数的減少を実現する、ことを含む表面に存在する細菌集団を減少させる方法。
【請求項18】
前記組成物が、S. aureusに関して、少なくとも3の対数的減少、およびE. coliに関して、少なくとも3の対数的減少を実現する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも3の対数的減少が、ウィルス集団において実現される請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ウィルス集団が、ライノウイルス1A、ライノウイルス2A、ロタウイルスWa、およびこれらの組み合わせを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記表面が、哺乳動物の皮膚である請求項17に記載の方法。
【請求項22】
表面に存在するウィルス集団を減少させる方法であって、当該表面と請求項1に記載の組成物とを30秒間にわたって接触させて、ウィルスに関して、少なくとも3の対数的減少を実現する、ことを含む表面に存在するウィルス集団を減少させる方法。
【請求項23】
前記ウィルス集団が、ライノウイルス1A、ライノウイルス2A、ロタウイルスWa、およびこれらの組み合わせを含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記表面が、哺乳動物の皮膚である請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2007−512356(P2007−512356A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541511(P2006−541511)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/041188
【国際公開番号】WO2005/051342
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506174946)ザ ダイアル コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】