説明

芳香族ポリアミド組成物の製造方法、組成物及びそれからなるフィルム

【課題】
粗大な凝集体の形成を抑制し、不活性粒子の分散性に優れた芳香族ポリアミド組成物の製造方法、その方法により得られる粗大突起がなく不活性粒子の凝集率に優れた芳香族ポリアミド組成物及びそれからなるフイルムを提供する。
【解決手段】
ジクロリドまたはジカルボン酸と、ジアミンとから芳香族ポリアミドを製造するに際して、解離定数(pKa)が5.0以下の化合物及び平均粒子径が1nm以上の不活性粒子を含有する分散体を、不活性粒子の含有量が芳香族ポリアミドに対して0.001〜10重量%となるように添加することを特徴とする芳香族ポリアミド組成物の製造方法。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性粒子の分散性に優れ、粗大突起がなく、不活性粒子の凝集の抑制効果に優れた芳香族ポリアミド組成物の製造方法、組成物及びそれからなるフィルムに関するものであり、得られるフイルムは磁気記録媒体に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録の高密度化のために、Co、Ni、Cr、Feなどの金属やこれらの合金を真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーテイングなどの方法によりフイルム基板上に形成させた金属薄膜型磁気記録媒体の開発が盛んに行われている。金属薄膜タイプの磁性層は、従来の塗布型のものに較べ厚さが非常に薄いため、使用するベースフイルムの表面形態がそのまま磁性層の表面形態となる。そのためベースフイルムの表面粗さが粗いと例えば出力の低下やドロップアウトが増加する。逆にこれら電磁変換特性を向上させるためにフイルム表面を全くの鏡面にすると、フイルム製造工程や磁気テープ加工工程において各機材との滑りが悪く、フイルムに皺が発生したり走行抵抗が大きいためにフイルムが切断するなどの問題が発生する。これらの問題を解決する手段として不活性粒子を添加し、フイルム表面に突起を形成せしめることで、滑り性を付与することが行われている。しかしながら、添加した不活性粒子の分散性が不良となることにより、ポリマー中に粗大な凝集体を形成し、得られたフイルム表面に粗大突起が多く出現しドロップアウトが増加する問題があった。
【0003】
フイルム中の粗大な凝集体を抑制する方法としては、例えば、不活性粒子の分散方法として、攪拌式分散器、ボールミル、サンドミル、超音波分散機などで、粒子径5nm以上500nm以下となるまで分散する方法などが提案されている。(特許文献1参照)
また、不活性粒子を溶剤が10〜1000m/分の速度で流動する中に溶剤量の0.1容量%を超えない速度で溶剤に添加したり、または分散液を超音波ホモジナイザかきまぜ下の溶剤中に分散液の添加量を毎分溶剤量の0.1%を超えない速度で溶剤に加える方法などが開示されている。(特許文献2参照)
しかしながら、単に不活性粒子スラリーをボールミルや超音波分散機などによる機械的に分散する方法や、不活性粒子の添加方法を制御する方法では、ある程度、凝集の形成に対しての改善の効果があるものの情報記録の高密度化に対応するには、十分に満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開昭60−127523号公報
【特許文献2】特開平10−139895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる問題点を解決し、粗大な凝集体の形成を抑制し不活性粒子の分散性に優れた、芳香族ポリアミド組成物の製造方法、組成物及びそれからなるフイルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、ジクロリドまたはジカルボン酸と、ジアミンとから芳香族ポリアミドを製造するに際して、解離定数(pKa)が5.0以下の化合物及び平均粒子径が1nm以上の不活性粒子を含有する分散体を、不活性粒子の含有量が芳香族ポリアミドに対して0.001〜10重量%となるように添加することを特徴とする芳香族ポリアミド組成物の製造方法によって達成できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、解離定数(pKa)が5.0以下の化合物、及び平均粒子径が1nm以上の不活性粒子を含有する分散体を芳香族ポリアミドの製造に際して添加することにより、芳香族ポリアミド組成物中の不活性粒子の粗大な凝集体の形成を抑制し、かつ不活性粒子を均一に分散せしめ粗大突起削減及び凝集率を低減させることができる。さらに得られるフイルムは、粗大突起が少なくビデオ、オーディオ用にはもちろん、コンピュータのデータテープなどのデジタル記録材、アウトドアユーズのビデオカメラ用テープなどに好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の芳香族ポリアミドは、ジクロリドまたはジカルボン酸及びジアミンから製造されるものである。
本発明において用いられるジクロリドとしては、例えばテレフタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジクロリド、4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジクロリド、2,6’−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド、2−クロロテレフフタル酸ジクロリド、2,5’−ジクロロテレフタル酸ジクロリド、2,6’−ジクロロテレフタル酸ジクロリド等が挙げられる。これらの中で、ポリマーの溶媒への溶解性及び吸湿性の改善の点から2−クロロテレフタル酸ジクロリドが好ましい。
【0008】
また、ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、モノクロロテレフタル酸、ジクロロテレフタル酸、テトラクロロテレフタル酸、メチルテレフタル酸、イソフタル酸、2・6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
【0009】
また、ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4’−ジアミノクロロベンゼン、2,6’−ナフチレンジアミン、4,4’−ビフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、2,5’−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、2,6’−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。これらの中で、ポリマーの溶媒への溶解性、吸湿性及び剛性の改善の点から、2−クロロ−p−フェニレンジアミンまたは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。これらのジアミンは単独または2種類以上用いることもできる。
【0010】
本発明における芳香族ポリアミドの製造方法としては、例えば低温溶液重合法、界面重合法、脱水触媒を用い直接重合させる方法等が挙げられる。これらの中で、高重合度のポリマーを得やすい点から低温溶液重合法が好ましい。この場合、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性有機極性溶媒中の溶液重合で合成される。また、溶解助剤として、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、硝酸リチウムなどの存在下に重合してもよい。
【0011】
上記重合反応に用いる重合槽としては、竪型重合槽の場合、ダブルヘリカルリボン型、パドル型、プロペラ型等の撹拌翼を用いることができる。また、ニーダの場合は、フィッシュテール型またはゼット型等のブレードを取り付けたものを用いることができる。
【0012】
本発明において、ジクロリドまたはジカルボン酸と、ジアミンの反応により副生する塩化水素を、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機系中和剤、あるいはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機系中和剤で中和してもよい。また、重合工程と中和工程は、同一槽で可能である。
【0013】
得られたポリマー溶液は、そのまま製膜原液として使用してもよいが、ポリマーを一旦再沈などで単離し再度上記有機溶媒や硫酸などの無機溶媒に再溶解して製膜原液を調製してもよい。製膜原液としては、さらに溶解助剤として、無機塩たとえば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、硝酸リチウムなどを添加する場合もある。また、フィルムの物性を損なわない程度に、酸化防止剤その他の添加剤などがブレンドされていてもよい。この製膜原液中の溶媒はポリマー溶液に対して、70重量%以上97重量%以下であることが好ましい。
【0014】
上記方法で製造した芳香族ポリアミドの固有粘度ηinh(ポリマー0.5gを硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した値)は、0.5dl/g以上であることがフィルムに加工した場合に十分な強度を有し好ましい。
【0015】
本発明における不活性粒子を含有する分散体は、不活性粒子の分散性、得られるフイルムの粗大突起削減、凝集率低減の点から、解離定数(pKa)が5.0以下の化合物を含有する必要がある。好ましくは解離定数(pKa)が3.0以下、より好ましくは1.0以下である。解離定数(pKa)が5.0を超えた化合物の場合は、不活性粒子の分散性に劣り、得られるフイルムは粗大突起数が多く不活性粒子の凝集率が高くなる。
【0016】
本発明における解離定数(pKa)が5.0以下の化合物は、特に限定されるものでないが、例えばギ酸、酒石酸、酢酸、塩酸、硫酸、リンゴ酸を挙げることができる。中でも不活性粒子の分散性の点から酸化合物が好ましく、より好ましくはギ酸、酒石酸、塩酸、硫酸であり、特に不活性粒子の分散性、得られるフイルムの粗大突起及び凝集率の点から、解離定数(pKa)が−8.0の塩酸が好ましい。
【0017】
本発明の分散体中の解離定数(pKa)が5.0以下の化合物の含有量は、不活性粒子の分散性、得られるフイルムの粗大突起及び凝集率の点から、不活性粒子に対して5000ppm以下が好ましく、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。含有量が5000ppmを超える場合は、不活性粒子の分散性の効果が変わらないばかりか、逆に不活性粒子の凝集が起こりフイルム粗大突起に劣る場合もある。
【0018】
本発明の解離定数(pKa)が5.0以下の化合物を不活性粒子を含有する分散体に含有せしめる方法は、特に限定されないが、例えばあらかじめ純水、または分散体の分散媒などで、0.01〜10重量%に希釈した後に分散体に添加する方法を挙げることができる。化合物濃度が10重量%を越えると分散体に添加する際に、不活性粒子が凝集したりする場合がある。
【0019】
本発明における不活性粒子を含有する分散体において、不活性粒子の分散性及び粗大突起削減、凝集率低減の点から、不活性粒子の平均粒子径は1nm以上とする必要がある。好ましくは1〜1000nm、より好ましくは10〜100nmである。不活性粒子の平均粒子径がかかる範囲外であると、不活性粒子の分散性に劣り、得られるフイルムは粗大突起数が多く、凝集率が高くなる。
【0020】
本発明において、芳香族ポリアミドを製造するに際しての不活性粒子を含有する分散体の添加量は、走行性及び粗大突起削減の点から、不活性粒子の含有量が芳香族ポリアミドに対して0.001〜10重量%となるようにするのがよく、好ましくは0.01〜5.0重量%である。0.001重量%未満であるとフイルムにした場合、走行性が不良となり、10重量%を超えると粒子が粗大な凝集体を形成し粗大突起が多くなる。
【0021】
本発明における不活性粒子を含有する分散体の分散媒は、不活性粒子の分散性、フイルムの粗大突起の点から、有機溶媒が好ましい。例えばN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などを挙げることができる。中でも不活性粒子の分散性の点からN−メチルピロリドン(NMP)が好ましい。
【0022】
本発明における不活性粒子は特に限定されないが、例えば酸化ケイ素、酸価チタン、酸価アルミニウム、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、酸価ジルコニウム、硫化カルシウム、硫化バリウム、ゼオライトなどの金属化合物、カーボンブラック、金属微粉末などの無機粒子や、シリコン粒子、ポリイミド粒子、架橋共重合体粒子、架橋ポリエステル粒子、テフロン(登録商標)粒子などの有機粒子などを挙げることができる。中でも本発明の効果の点から無機粒子が好ましく、特に好ましくはコロイダルシリカである。
【0023】
本発明において、解離定数(pKa)が5.0以下の化合物、及び平均粒子径が1nm以上の不活性粒子を含有する分散体を芳香族ポリアミドに添加する前に、不活性粒子の分散体をホモジナイザー、超音波分散機、攪拌式分散機、ボールミル、サンドミルなどで機械的に分散処理してもよく、また不活性粒子の分散体をフイルター等で濾過し、あらかじめ凝集した不活性粒子を除去してもよい。
【0024】
本発明において、解離定数(pKa)が5.0以下の化合物、及び平均粒子径が1nm以上の不活性粒子を含有する分散体を芳香族ポリアミドに添加する方法は、特に限定されないが例えば芳香族ポリアミドの重合前に添加、あるいは重合終了後に添加する方法を挙げることができ、目的に応じて適宜選択することができる。
【0025】
本発明は、上述したように解離定数(pKa)が5.0以下の化合物、及び平均粒子径が1nm以上の不活性粒子を含有する分散体を芳香族ポリアミドに添加することで、不活性粒子の分散性に優れ、粗大突起がなく、不活性粒子の凝集率に優れた芳香族ポリアミド組成物及びフイルムを得ることができる。不活性粒子の分散体に解離定数(pKa)が5.0以下の化合物を含有せしめることにより、不活性粒子の分散性が向上する理由は、定かでないが次の通りと推定される。不活性粒子は、分散媒中で粒子のまわりに界面を持ちその界面は、特定の電荷を帯びていると考えられ、特定の化合物を添加含有することで、電荷に変化が生じ不活性粒子の分散性に影響を及ぼすと考えられる。
【0026】
このようにして製造された芳香族ポリアミド組成物と溶媒からなるポリマー溶液は製膜原液として、いわゆる溶液製膜法によりフィルムに加工される。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがあり、いずれの方法で製膜してもよいが、ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
【0027】
乾湿式法で製膜する場合は、製膜原液を口金からドラム、エンドレスベルトなどの支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を蒸散させ薄膜が自己保持性を持つまで乾燥する。乾燥条件は、好ましくは、室温以上220℃以下、60分以内であり、より好ましくは室温以上200℃以下である。
【0028】
乾燥されたフィルムは支持体から剥離されて、凝固浴(通常は水系)内で脱塩、脱溶媒、縦延伸などが行なわれ、さらにテンター内で延伸、乾燥、熱処理が行なわれてフィルムとなる。延伸倍率は面倍率(延伸後のフィルム面積を延伸前のフィルム面積で除した値で定義する。1未満はリラックスを意味する)で0.8以上8.0以下が好ましく、1.1以上5.0以下がより好ましい。
【0029】
また、本発明の芳香族ポリアミド組成物からなるフィルムは、積層フィルムであってもよい。たとえば2層の場合には、重合した芳香族ポリアミド溶液を二分し、それぞれ異なる粒子を添加した後に積層すればよい。3層以上の場合でも同様であり、積層方法としては、周知の技術たとえば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層を形成してからその上に他の層を形成する方法などがある。
【0030】
本発明の芳香族ポリアミド組成物からなるフイルムの粗大突起は、20個/cm2以下が好ましく、より好ましくは10個/cm2以下、さらに好ましくは5個/cm2以下である。
本発明のフイルムが適用される高密度記録媒体の磁性層は、特に限定されないが、強磁性金属薄膜層であれば好ましい。強磁性金属薄膜層の形成手段としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が好ましく用いられるが、強磁性粉と有機バインダからなる磁性層を塗布法により形成してもよい。強磁性金属材料としては、Co、Ni、Cr、Feなどの金属やこれらを主成分とする合金などを用いることができる。
【0031】
磁性層を形成後、ダイヤモンドライクコーテングの付与及び潤滑保護層の付与を行うことは磁気記録媒体の耐久性向上の点で好ましい。さらに磁性層と反対側の面により走行性を向上させるために、バックコート層を設けてもよい。
【0032】
こうして得られた磁気記録媒体は、小型化、薄膜化が可能であり、コンパクトで大容量のデータを記録することができ、ビデオ、オーディオ用にはもちろん、湿度、温度による寸法変化が少ないので、特にコンピュータのデータテープなどのデジタル記録材として好適である。また高温、高湿下での走行性及び電磁変換特性に優れるので、屋外使用向きビデオカメラ用テープなどにも好適に用いることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、実施例中の特性の測定は、以下の通りである。
(1)不活性粒子の平均粒子径(nm)
不活性粒子をNMP中に均一に分散してスラリーとして、遠心沈降式粒子径測定装置(島津製作所製SA−CP2型)で測定する。得られた粒子径分布を対数確率紙にプロットし、積算通過百分率が50%となった点のメジアン径を、その不活性粒子の平均粒子径とした。
(2)粗大突起(個/100cm2
作成したフイルムのフイルム表面100cm2の範囲を実体顕微鏡にて偏光下、異物を観測しマーキングする。マーキングした異物の高さを波長546nmで多重干渉計を用いて観測し、干渉縞の数をカウントする。一重環以上のものを粗大突起とした。
(3)凝集率(%)
作成したフイルムのフイルム表面を電界放射型走査型反射型電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)を用いて下記の条件で10カ所撮影し、凝集ユニット数(2個以上凝集している粒子のひとかたまりをひとつと数えたときの値)及び全粒子数(凝集の有無に関わらずフイルム表面に突起を形成している全ての粒子数)をカウントし、下記の式から凝集率を求めた。凝集率が低いほどフイルム中での不活性粒子の分散性が優れる。
装置 :株式会社日立製作所S−900H
加速電圧:5kV
試料調製:直接法、Agシャドーイング、傾斜角5°
倍率 :3万倍
得られた写真から、凝集率を下記の式から求めた。
凝集率(%)=(凝集ユニット数/全粒子数)×100
実施例1
解離定数(pKa)−8.0の塩酸を純水を用いて0.2%濃度に調整した。次に、平均粒子径70nmのコロイダルシリカ粒子10重量部、N−メチルピロリドン(NMP)90重量部を分散した分散体に、上記の塩酸水溶液をコロイダルシリカ粒子に対し塩酸濃度が30ppmになるように添加し含有させた。
【0034】
次に、アンカー型攪拌翼を有する冷却ジャケット付き重合槽を使用して、N−メチルピロリドン(NMP)に芳香族ジアミン成分として85モル%に相当する2−クロロ−p−フェニレンジアミンと、15モル%に相当する4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを溶解させ、これに上記分散体を不活性粒子としてポリマーに対して0.05重量%になるように添加した。これに芳香族ジアミンに対して98.4モル%に相当する2−クロロテレフタル酸ジクロリドを添加し、線速度4.0m/秒で攪拌しながら重合を開始した。溶液温度が上昇するに従い、槽内温度を35℃以下に保持できるよう段階的に攪拌速度を下げ、最終的に線速度2.0m/秒にし、2時間攪拌し重合を完了した。副生した塩化水素を炭酸リチウムで中和し、ポリマー濃度10.5wt%、溶液粘度3610ポイズのポリマー溶液を得た。
【0035】
この原液を5μmカットのフィルターを通した後、径が30μm以上の表面欠点の頻度が0.006個/mmのベルト上に流延し、180℃の熱風で2分間加熱して溶媒を蒸発させ、自己保持性を得たフィルムをベルトから連続的に剥離した。次にNMP濃度勾配のつけた水槽(3槽)内へフィルムを導入して残存溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行ない、テンターで水分の乾燥と熱処理を行なって、厚さ6μmのフィルムを得た。この間にフィルムの長手方向と幅方向にそれぞれ1.2倍、1.3倍延伸を行ない、280℃で1.5分間乾燥と熱処理を行なった後、20℃/秒の速度で徐冷した。得られた芳香族ポリアミドフイルムの凝集率及び粗大突起を評価し特性を表1に示す。フイルムの凝集率及び粗大突起ともに良好であった。
【0036】
実施例2〜5
不活性粒子の分散体及び分散体に含有する化合物を表1に示した通りに変更した以外は、実施例1と同様にして芳香族ポリアミド組成物を製造し、フイルムを得た。得られた芳香族ポリアミドフイルムの粗大突起及び凝集率を実施例1と同様に評価した。使用した不活性粒子、不活性粒子の分散体に含有する化合物及びフイルム特性を表1に示す。実施例2〜5ともに本発明の範囲内であり、フイルムの粗大突起及び凝集率ともに良好であった。
【0037】
比較例1
平均粒子径70nmのコロイダルシリカ粒子10重量部、N−メチルピロリドン(NMP)90重量部を分散した、不活性粒子の分散体を得た。
【0038】
次に、実施例1と同様にして上記不活性粒子の分散体を不活性粒子としてポリマーに対し0.05重量%となるように添加したのち、実施例1と同様にして芳香族ポリアミド組成物を製造しフイルムを得た。得られた芳香族ポリアミドフイルムの特性を表1に示す。不活性粒子の分散体に含有する本発明の化合物が無添加であり、フイルムの粗大突起及び凝集率ともに不良であった。
【0039】
比較例2、3
使用した不活性粒子、不活性粒子の分散体に含有する化合物を表1に示した通りに変更した以外は、実施例1と同様にして芳香族ポリアミド組成物を製造し、フイルムを得た。得られた芳香族ポリアミドフイルムの粗大突起及び凝集率を実施例1と同様に評価した。使用した不活性粒子、不活性粒子の分散体に含有する化合物及びフイルム特性を表1に示す。比較例2は、不活性粒子の分散体に含有する化合物の解離定数(pKa)が本発明の範囲外であり、フイルムの粗大突起及び凝集率ともに不良であった。比較例3は、不活性粒子の分散体の分散媒が本発明の範囲外であり、フイルムの粗大突起及び凝集率ともに不良であった。
【0040】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジクロリドまたはジカルボン酸と、ジアミンとから芳香族ポリアミドを製造するに際して、解離定数(pKa)が5.0以下の化合物及び平均粒子径が1nm以上の不活性粒子を含有する分散体を、不活性粒子の含有量が芳香族ポリアミドに対して0.001〜10重量%となるように添加することを特徴とする芳香族ポリアミド組成物の製造方法。
【請求項2】
解離定数(pKa)が5.0以下の化合物の分散体中での含有量が、不活性粒子に対して5000ppm以下であることを特徴とする、請求項1記載の芳香族ポリアミド組成物の製造方法。
【請求項3】
分散体の分散媒が有機溶媒であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の芳香族ポリアミド組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかの1項に記載の製造方法により得られた芳香族ポリアミド組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の芳香族ポリアミド組成物からなるフィルム。

【公開番号】特開2006−265375(P2006−265375A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85633(P2005−85633)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】