説明

芳香族ポリマーの製造方法

【課題】高分子量であり分子量分布が狭い(重量平均分子量/数平均分子量の値が小さい)芳香族ポリマーを容易に製造することができる芳香族ポリマーの製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される芳香族化合物を、塩基と、重合触媒と、界面活性剤又は相間移動触媒との存在下で重縮合することを含む芳香族ポリマーの製造方法。


〔式中、Arは芳香環を含む二価の基であり、Xはハロゲン原子、ニトロ基又は−SO3Q(ここで、Qは置換又は非置換の炭化水素基を表す)で示される一価の基である。2個のQ1はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であるか、結合して環を形成する。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリマーは、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に用いられる発光材料として有用である。特に、この芳香族ポリマーの分子量や分子量分布は、発光特性に大きな影響を与えるため、それらを制御した芳香族ポリマーを製造する方法が求められている。このような製造方法としては、芳香族モノマーを、塩基及び重合触媒の存在下で、鈴木カップリング反応させることにより芳香族ポリマーを製造する方法が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.129,7236(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記方法では、反応系が油相と水相等に分離しやすく、発光材料として求められる高分子量であり分子量分布が狭い芳香族ポリマーを製造することは困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、高分子量であり分子量分布が狭い芳香族ポリマーを容易に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記式(I)で表される芳香族化合物を、塩基と、重合触媒と、界面活性剤又は相間移動触媒との存在下で重縮合することを含む芳香族ポリマーの製造方法を提供する。

〔式中、Arは芳香環を含む二価の基であり、Xはハロゲン原子、ニトロ基又は−SO3Q(ここで、Qは置換又は非置換の炭化水素基を表す)で示される一価の基である。2個のQ1はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であるか、結合して環を形成する。〕
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、高分子量であり分子量分布が狭い(重量平均分子量/数平均分子量の値が小さい)芳香族ポリマーを容易に製造することができる。この芳香族ポリマーは、通常、ポリスチレン換算の数平均分子量が4.5×103以上(典型的には、5×103以上)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。本明細書及び特許請求の範囲の記載において、以下の用語は次の定義する意味で使用する。
【0009】
「炭化水素オキシ基」とはRO−で表される一価の基、「炭化水素メルカプト基」とはRS−で表される一価の基、「炭化水素カルボニル基」とはR−C(=O)−で表される一価の基、「炭化水素オキシカルボニル基」とはR−O−C(=O)−で表される一価の基、そして、「炭化水素スルホニル基」とは、R−S(=O)2−で表される一価の基を示す。「炭化水素二置換アミノ基」とは(R)2N−で表され2個のRは同一でも異なってもよい一価の基、「炭化水素二置換アミノカルボニル基」とは、(R)2N−C(=O)−で表され2個のRは同一でも異なってもよい一価の基を意味する。ここで、Rは炭化水素基を表す。
【0010】
−芳香族化合物−
本発明の製造方法では、モノマーとして、前記式(I)で表される芳香族化合物が用い
られる。
【0011】
前記式(I)におけるArは、芳香環を含む二価の基である。ここで、「芳香環を含む二価の基」とは、芳香族環式化合物中に存在する1又は2以上の芳香環の環構成員である異なる2個の原子(これらは炭素原子及び/又はヘテロ原子であり、好ましくは炭素原子である)の各々に結合した計2個の水素原子を取り除くことにより形成される二価の残基を含む二価の基を意味する。ここで、芳香族環式化合物は炭素環式芳香族化合物及び複素環式芳香族化合物を包含する。
【0012】
前記芳香環としては、ベンゼン環、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、アザジアゾール環等の単環式芳香環;該単環式芳香環の中から互いに独立に選んだ2個以上が縮合した縮合多環式芳香環;該単環式芳香環及び/又は該縮合多環式芳香環の中から互いに独立に選んだ2個以上の環を、単結合、メチレン基、エチレン基、エテニレン基、エチニレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、カルボニル基、スルホニル基等の2価の原子又は基で連結した芳香環集合;該縮合多環式芳香環又は該芳香環集合の隣り合う2個の芳香環をメチレン基、エチレン基、カルボニル基、スルホニル基等の二価の基で橋架けした架橋を1個以上有する有橋多環式芳香環が挙げられる。
【0013】
該縮合多環式芳香環において、縮合する単環式芳香環の数は、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、2がさらに好ましい。該芳香環集合において、連結される単環式芳香環及び/又は縮合多環式芳香環の数として、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、2がさらに好ましい。該有橋多環式芳香環において、橋架けされる単環式芳香環及び/又は縮合多環式芳香環の数として、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0014】
前記芳香環をそれらの基本構造で(即ち、非置換状態で)例示する。前記単環式芳香環
としては、

が挙げられる。
【0015】
縮合多環式芳香環としては、

が挙げられる。
【0016】
芳香環集合としては、

が挙げられる。
【0017】
有橋多環式芳香環としては、

が挙げられる。
【0018】
これらの芳香環の中でも、好ましくは、1、2、7、8、9、11、12、13、14、18、19、22、23、26、27、28、29、36、37、38、39、40、41、42、43、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、59、60、68、69であり、より好ましくは、1、2、7、9、18、22、36、38、39、43、48、49、51、52、53、55、57、60であり、さらに好ましくは、1、2、7、18、36、39、48、53、55、57、60であり、特に好ましくは、1、2、18、39、55、60である。
【0019】
前記芳香環は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子のみからなることが好ましく、水素原子、炭素原子、酸素原子のみからなることがより好ましく、水素原子と炭素原子のみからなることがさらに好ましい。
【0020】
前記芳香環は、それを構成する炭素原子に結合した水素原子が、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素二置換アミノカルボニル基、炭化水素スルホニル基により置換されてもよい。このとき、置換基としては、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基がより好ましく、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基がさらに好ましい。また、芳香環を構成する窒素原子に結合した水素原子が、炭化水素基で置換されてもよい。さらに、このような炭素原子上の置換基及び/又は窒素原子上の置換基が2個以上存在する場合には、それらから選ばれる2個の置換基が結合して環を形成してもよい。
【0021】
前記炭化水素基、並びに前記炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素二置換アミノカルボニル基、及び炭化水素スルホニル基に含まれる炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜50程度のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素原子数3〜50程度の環状飽和炭化水素基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素原子数2〜50程度のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素原子数6〜50程度のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数7〜50程度のアラルキル基等が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜8の炭化水素基である。
【0022】
前記炭化水素基、並びに前記炭化水素オキシ基等に含まれる炭化水素基は、ヒドロキシル基、フッ素基、ニトロ基、シアノ基等により置換されていてもよい。
【0023】
前記式(I)中のXは、ハロゲン原子、ニトロ基又は−SO3Qで示される基(ここで、Qは置換又は非置換の炭化水素基を表す)であり、ハロゲン原子、−SO3Qで示される基(ここで、Qは置換又は非置換の炭化水素基を表す)が好ましい。
【0024】
ここでいうハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0025】
−SO3Qで示される基において、Qで表される非置換の炭化水素基としては、前述した基が挙げられ、置換の炭化水素基としては、それらをフッ素原子で置換した基が挙げられる。−SO3Qで示される基の例としては、メチルスルホ基、フェニルスルホ基、p-トリルスルホ基、トリフルオロメチルスルホ基が挙げられる。
【0026】
Xとして、好ましくは、ハロゲン原子、−SO3Qで示される基であり、より好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−SO3Qで示される基であり、さらに好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチルスルホ基である。
【0027】
−B(OQ1)2におけるQ1は水素原子又は炭化水素基であり、2個のQ1は同じであっても異なってもよく、あるいは結合して環を形成してもよい。Q1における炭化水素基としては、前記の炭化水素基が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基がさらに好ましい。環を形成する場合には、2個のQ3から形成される2価の炭化水素基として、1,2−エチレン基、1,1,2,2−テトラメチル−1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,2−フェニレン基が好ましい。
【0028】
前記式(I)で表される芳香族化合物の例としては、以下の化合物が挙げられる。





【0029】
なお、前記芳香族化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
−重合触媒−
本発明の製造方法に用いられる重合触媒としては、Chem.Rev.102,1359(2002)記載の錯体のうち下記式で表される配位子を含む、銅錯体、パラジウム錯体、ニッケル錯体等が挙げられる。

(式中、Phはフェニル基を表し、Etはエチル基を表す。)
【0031】
これらの中でも同文献記載のホスフィン又はカルベンを配位子として含むパラジウム錯体等が好ましい。さらに好ましいパラジウム錯体としては、ホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体であり、特に好ましくは、下記式(II)で表されるホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体である。
P(R1)3 (II)
(式中、3個のR1は、同一又は異なり、下記式(III)で表される基、又は下記式(IV)で表される基である。)
−C(R2)3 (III)
(式中、3個のR2は、同一又は異なり、水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基である。但し、3個のR2のうちの2個のR2が結合して環を形成してもよい。)

(式中、R3〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素二置換アミノカルボニル基、又は炭化水素スルホニル基である。これらの基は、置換基を有していてもよい。R3とR5、R5とR7、R4とR6、及びR6とR7からなる群から選ばれる少なくとも1組において、当該2個の基は結合して環を形成してもよい。)
【0032】
前記式(II)中のR1は、前記式(III)で表される基又は前記式(IV)で表される基であり、3個のR1は同じでも異なっていてもよい。
【0033】
前記式(IV)において、R3〜R7はそれぞれ独立に、好ましくは水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基である。
【0034】
前記式(III)中のR2で表される置換又は非置換の炭化水素基としては、前記式(I)中のArにおける芳香環の置換基として例示した置換又は非置換の炭化水素基が挙げられる。
【0035】
前記式(III)で表される基としては、t−ブチル基、3−エチル−3−ペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基、3−ペンチル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシル基が好ましく、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基がより好ましく、t−ブチル基、シクロヘキシル基がさらに好ましい。
【0036】
前記式(IV)中のR3〜R7で表される置換又は非置換の炭化水素基のうち、非置換炭化水素基としては、前記式(I)中のArにおける芳香環の置換基として例示した炭化水素基を挙げることができる。該炭化水素基として、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基が好ましく、炭素原子数6〜12のアリール基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。置換炭化水素基は、このような非置換の炭化水素基が、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素二置換アミノカルボニル基、炭化水素スルホニル基等により置換された基が挙げられる。これらの置換基の中でも、炭素原子数1〜12の炭化水素オキシ基、炭素原子数2〜12の炭化水素二置換アミノ基、炭素原子数1〜12の炭化水素メルカプト基が好ましく、炭素原子数1〜8の炭化水素オキシ基、炭素原子数2〜8の炭化水素二置換アミノ基がより好ましい。
【0037】
また、R3〜R7により表される非置換の、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素二置換アミノカルボニル基及び炭化水素スルホニル基の例及び好ましい例は、前記式(I)中のArにおける芳香環の置換基として説明したとおりである。これらが有していてもよい置換基は、前記の置換又は非置換の炭化水素基における置換基と同じ定義であり、例及び好ましい例も同じである。
【0038】
前記式(IV)中のR3〜R7としては、水素原子、置換又は非置換の炭化水素基、置換又は非置換の炭化水素オキシ基、置換又は非置換の炭化水素二置換アミノ基が好ましく、水素原子、置換又は非置換の炭化水素基、置換又は非置換の炭化水素オキシ基がより好ましく、水素原子、置換又は非置換の炭化水素基がさらに好ましい。
【0039】
前記式(IV)で表される基としては、2−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2、6−ジイソプロピルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、2−フェニルフェニル基、2、6−ジフェニルフェニル基、2−メトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、2,4,6−トリメトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、2,6−ジエトキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、2、6−ジイソプロポキシフェニル基、2−t−ブトキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基、2、6−ジフェノキシフェニル基、2−(2−メチルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジメチルフェニル)フェニル基、2−(2−エチルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジエチルフェニル)フェニル基、2−(2−イソプロピルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)フェニル基、2−(2−t−ブチルフェニル)フェニル基、2−(2−メトキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジメトキシフェニル)フェニル基、2−(2,4,6−トリメトキシフェニル)フェニル基、2−(2−エトキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジエトキシフェニル)フェニル基、2−(2−イソプロポキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジイソプロポキシフェニル)フェニル基、2−(2−t−ブトキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−t−ブトキシフェニル)フェニル基が挙げられ、好ましくは、2−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、2−フェニルフェニル基、2−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、2−t−ブトキシフェニル基、2−フェニノキシフェニル基、2−(2−メチルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジメチルフェニル)フェニル基、2−(2−エチルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジエチルフェニル)フェニル基、2−(2−イソプロピルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)フェニル基、2−(2−t−ブチルフェニル)フェニル基、2−(2−メトキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジメトキシフェニル)フェニル基、2−(2,4,6−トリメトキシフェニル)フェニル基、2−(2−エトキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジエトキシフェニル)フェニル基、2−(2−イソプロポキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジイソプロポキシフェニル)フェニル基、2−(2−t−ブトキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−t−ブトキシフェニル)フェニル基が挙げられ、より好ましくは2−(2−メチルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジメチルフェニル)フェニル基、2−(2−エチルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジエチルフェニル)フェニル基、2−(2−イソプロピルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)フェニル基、2−(2−t−ブチルフェニル)フェニル基、2−(2−メトキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジメトキシフェニル)フェニル基、2−(2,4,6−トリメトキシフェニル)フェニル基、2−(2−エトキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジエトキシフェニル)フェニル基、2−(2−イソプロポキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジイソプロポキシフェニル)フェニル基、2−(2−t−ブトキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−t−ブトキシフェニル)フェニル基であり、さらに好ましくは2−(2,6−ジメチルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジエチルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)フェニル基、2−(2−t−ブチルフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジメトキシフェニル)フェニル基、2−(2−エトキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジエトキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−ジイソプロポキシフェニル)フェニル基、2−(2,6−t−ブトキシフェニル)フェニル基である。
【0040】
前記式(II)で表されるホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体としては、前記配位子の例の名称を用いて表すと、Pd(PPh2Me)2、Pd(P(t−Bu)32、Pd(PEt32、Pd(PCy32、Pd(dppb)、Pd(dppe)、Pd(dppp)、Pd(BINAP)が好ましい。また、前記式(II)で表されるホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体としては、Pd(P(t−Bu)3)(Ph)Brも好ましい。
【0041】
前記パラジウム錯体は、前記式(II)で表されるホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体の場合は、該ホスフィン化合物とパラジウム(0)・ジベンジリデンアセトン錯体のような可溶化したパラジウム(0)錯体を混合することにより製造することができる。また、該ホスフィン化合物存在下にパラジウム(II)の酢酸塩や塩化物を還元してパラジウム(0)を生成させて製造することができる。該パラジウム錯体の製法として、Chem.Rev.102,1359(2002)及びその参照文献に記載されている方法が例示される。これらの製造方法により反応溶液として得られたホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体は単離せずに、そのまま重縮合に用いてもよいし、単離して用いてもよい。
【0042】
該ホスフィン化合物の使用量は、パラジウム(0)に対する該ホスフィン化合物の使用量(モル比)として、0.5〜10が好ましく、0.8〜5がより好ましく、0.9〜3がさらに好ましい。
【0043】
前記金属錯体の使用量は、前記式(I)で表される芳香族化合物に対して、好ましくは0.0001〜10モル%であり、より好ましくは0.001〜5モル%であり、さらに好ましくは0.01〜5モル%である。
【0044】
なお、前記金属触媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0045】
−その他の芳香族化合物−
本発明の製造方法において、得られる芳香族ポリマーの分子量分布をより狭くする観点から、前記重縮合は、下記式(V)で表される芳香族化合物の共存下で行われることが好ましく、前記式(I)で表される芳香族化合物を、前記式(II)で表されるホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体の存在下で重縮合する際に、下記式(V)で表される芳香族化合物を共存させることがより好ましい。

(式中、Araは、芳香環を含む1価の基である。Xaは、ハロゲン原子又は−SO3aで示される基(ここで、Qaは置換されていてもよい炭化水素基を表す)である。)
【0046】
前記式(V)中のAraは、芳香環を含む1価の基である。該有機基の基本骨格としては、前記式(I)のArにおける芳香環を含む2価の基の基本骨格と、例及び好ましい例は同じである。
【0047】
前記Araの芳香環を含む有機基における基本骨格において、水素原子の結合した芳香環上の炭素原子1個から、水素原子を1個取り除くことにより、芳香環を含む1価の基となる。
【0048】
前記Araの芳香環を含む1価の基において、水素原子の結合した炭素原子に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素二置換アミノカルボニル基、炭化水素スルホニル基が置換してもよく、水素原子の結合した窒素原子に、炭化水素基が置換してもよく、それら2個の置換基が連結して環を形成してもよい。
【0049】
前記炭化水素基とは、前記式(I)中のArで表される芳香環を含む二価の基の置換基における炭化水素基と例及び好ましい例は同じである。
【0050】
前記炭化水素オキシ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素スルホニル基とは、オキシ基、メルカプト基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基に前記炭化水素基1個が結合した基である。炭化水素二置換アミノ基、炭化水素二置換アミノカルボニル基とは、アミノ基、アミノカルボニル基に前記炭化水素基2個が結合した基である。
【0051】
即ち、前記炭化水素オキシ基は、Q4−O−(Q4は炭化水素基を表す。)で表される基であり、前記炭化水素メルカプト基は、Q5−S−(Q5は炭化水素基を表す。)で表される基であり、前記炭化水素カルボニル基は、Q6−C(=O)−(Q6は炭化水素基を表す。)で表される基であり、前記炭化水素オキシカルボニル基はQ7−OC(=O)−(Q7は炭化水素基を表す。)で表される基であり、前記炭化水素スルホニル基は、Q8−SO2−(Q8は炭化水素基を表す。)で表される基である。
【0052】
炭化水素二置換アミノ基は、(Q92N−(Q9は炭化水素基を表す。2個のQ9は同一であっても異なっていてもよい。)で表される基であり、炭化水素二置換アミノカルボニル基は、(Q102N(C=O)−(Q10は炭化水素基を表す。2個のQ10は同一であっても異なっていてもよい。)で表される基である。これらに含まれる炭化水素基の例及び好ましい例は、前記式(I)中のArで表される芳香環を含む二価の基の置換基における炭化水素基のそれらと同じである。
【0053】
前記Araの芳香環を含む1価の基における置換基として、水素原子の結合した炭素原子には、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基が好ましく、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基がより好ましく、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭化水素基、炭化水素オキシ基がさらに好ましい。水素原子の結合した窒素原子においては、該水素原子が炭化水素基で置換されていることが好ましい。
【0054】
前記式(V)中のXaは、ハロゲン原子又は−SO3aで示される基(ここで、Qaは置換又は非置換の炭化水素基を表す。)である。ここで、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0055】
aで示される置換又は非置換の炭化水素基としては、芳香環の置換基として説明した炭化水素基及びその置換炭化水素基が挙げられる。置換炭化水素基の置換基としては、フッ素原子が挙げられる。
【0056】
−SO3aで示される基としては、メチルスルホ基、フェニルスルホ基、p−トリルスルホ基、トリフルオロメチルスルホ基が挙げられる。
【0057】
aは、好ましくは、ハロゲン原子、−SO3aで示される基であり、より好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−SO3aで示される基であり、さらに好ましくは、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチルスルホ基である。
【0058】
前記式(V)で表される芳香族化合物の使用量は、前記式(I)で表される芳香族化合物に対する使用下限量が、好ましくは0.0001モル%であり、より好ましくは0.001モル%であり、さらに好ましくは0.01モル%であり、該使用上限量が、好ましくは1000000モル%であり、より好ましくは1000モル%であり、さらに好ましくは100モル%である。
【0059】
本発明の製造方法において、前記式(II)で表されるホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体と前記式(V)で表される芳香族化合物とを予め反応させた後に、前記式(I)で表される芳香族化合物に接触させて重縮合を行うことも、得られる芳香族ポリマーの分子量分布をより狭くする観点から好ましい。
【0060】
前記式(II)で表されるホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体に含まれるパラジウム原子に対する、前記式(V)で表される芳香族化合物の使用量は、反応性の観点から、1モル倍以上であることが好ましい。また、前記式(II)で表されるホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体と前記式(V)で表される芳香族化合物とを反応させた後に、得られたパラジウム錯体化合物を単離する場合には、2モル倍以上であることが好ましく、10モル倍以上であることがより好ましく、30モル倍以上であることがさらに好ましいが、その上限は、単離操作の利便性の観点から、200モル倍であることが好ましく、100モル倍であることがより好ましい。
【0061】
前記式(II)で表されるホスフィン化合物を含むパラジウム錯体と前記式(V)で表される芳香族化合物とを反応させ、得られたパラジウム錯体化合物を単離した後に、前記式(I)で表される芳香族化合物に接触させて重縮合に用いることが、得られた芳香族ポリマーの構造を制御する点、及び分子量分布をより狭くする観点から、より好ましい。
【0062】
前記式(II)で表されるホスフィン化合物を含むパラジウム錯体と前記式(V)で表される芳香族化合物とを反応させる方法としては、J. Am. Chem. Soc. 126, 1184(2004) に記載されるように、不活性ガス雰囲気下で混合して反応させる方法が挙げられる。
【0063】
前記式(II)で表されるホスフィン化合物を含むパラジウム錯体と前記式(V)で表される芳香族化合物とを反応させることで、下記式(VI)で表されるパラジウム錯体化合物、又は下記式(VI)で表されるパラジウム錯体化合物を含む組成物が生じていると推定される。下記式(VI)で表されるパラジウム錯体化合物を単離して用いてもよい。

(式中、R1、Ara、Xaは、前記と同じ定義である。)
【0064】
前記式(VI)で表されるパラジウム錯体化合物を単離して使用する場合、前記式(VI)で表されるパラジウム錯体化合物の使用量は、前記式(I)で表される芳香族化合物に対して、好ましくは0.0001〜10モル%であり、より好ましくは0.001〜5モル%であり、さらに好ましくは0.01〜5モル%である。
【0065】
なお、前記式(V)で表される芳香族化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0066】
−反応溶媒−
本発明の製造方法において、重縮合は、通常、溶媒中で行われる。使用する溶媒は、生成するポリマーの良溶媒を選択することが好ましい。前記溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、シクロヘキサン等の鎖状及び環状の脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類が挙げられ、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素、ニトリル類、エーテル類、ニトロ化合物類が好ましい。また、本発明の製造方法では、前記溶媒に加えて、蒸留水等の水を併用してもよい。
【0067】
前記溶媒の使用量は、通常、前記式(I)で表される芳香族化合物1gに対して、0.01〜10000mLであり、好ましくは0.1〜1000mLであり、より好ましくは1〜500mLである。
【0068】
前記重縮合の反応温度は、通常、−100℃〜200℃であり、好ましくは−50℃〜150℃であり、より好ましくは−20℃〜100℃である。
【0069】
前記重縮合の反応時間は、通常、0.1分間〜1,000時間であり、好ましくは1分間〜500時間であり、より好ましくは10分間〜200時間である。
【0070】
なお、前記溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0071】
−塩基−
本発明の製造方法における塩基としては、カウンターカチオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、及びテトラアルキルアンモニウムイオンから選ばれる、水酸化物塩、炭酸塩、リン酸塩、フッ化物塩が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化セシウムが好ましい。
【0072】
前記塩基の使用量は、前記式(I)で表される芳香族化合物に対して、好ましくは0.01〜1000モル倍量であり、より好ましくは0.1〜100モル倍量であり、さらに好ましくは1〜50モル倍量である。
【0073】
なお、前記塩基は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0074】
−界面活性剤−
本発明の製造方法における界面活性剤は、分子内に親水性の部分と疎水性(親油性)の部分とを併せ持つ化合物である。前記疎水性の部分(疎水基)は、アルキル基等の長鎖炭化水素基であり、前記親水性の部分(親水基)は、水酸基及びイオン性解離基(カルボキシル基、スルホ基等)等である。前記界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等が挙げられる。陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸、脂肪酸、モノアルキルリン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。陽イオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム基を有する化合物、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤は、同一分子中に陽イオン性と陰イオン性の解離基を併せ持つ化合物、例えば、長鎖アルキルアミノ酸等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、非イオン性の極性基を有する化合物、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。前記界面活性剤としては、以下の化合物も挙げられる。















【0075】
前記界面活性剤の使用量は、前記式(I)で表される芳香族化合物に対して、好ましくは0.01〜1000モル倍量であり、より好ましくは0.1〜100モル倍量であり、さらに好ましくは0.1〜50モル倍量である。
【0076】
なお、前記界面活性剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0077】
−相間移動触媒−
本発明の製造方法における相間移動触媒は、公知の触媒を用いることができるが、通常、前記塩基を前記溶媒中に拡散させることができる化合物であり、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化テトラブチルホスホニウム等の長鎖アルキル第4級塩;酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を有する大環状化合物等が挙げられる。
【0078】
前記大環状化合物としては、クラウンエーテル、ポルフィリン、アザクラウン、チオクラウン等が挙げられ、クラウンエーテルが好ましい。
【0079】
前記大環状化合物としては、以下の化合物が挙げられる。





【0080】
これらの大環状化合物の中でも、好ましくは、101、102、103、104、105、106、107、108、110、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149であり、より好ましくは101、102、103、105、106、107、108、110、112、113、114、115、116、117、120、121、122、123、125、128、129、130、131、132、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149であり、さらに好ましくは、105、106、108、110、116、120、121、123、130、134、135、136、137、139、140、142、143、144、145、147、148、149であり、特に好ましくは、106、108、110、120、135、137、140、144、147、148である。
【0081】
該相間移動触媒の使用量は、前記式(I)で表される芳香族化合物に対して、好ましくは0.01〜1000モル倍量であり、より好ましくは0.1〜100モル倍量であり、さらに好ましくは0.1〜50モル倍量である。
【0082】
なお、前記相間移動触媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0083】
−芳香族ポリマー−
本発明の製造方法により、下記式:

で表される繰り返し単位からなる高分子化合物(芳香族ポリマー)が得られる。
【0084】
−後処理−
本発明の製造方法において、前記重縮合の後に、後処理として、得られた油層を必要に応じて塩酸水溶液や水で洗浄し、有機溶媒を蒸発させるか、貧溶媒を加えて沈殿させた後にろ過、洗浄、乾燥することにより、芳香族ポリマーを単離することが好ましい。
【0085】
本発明の製造方法において、前記重縮合を、前記式(V)で表される芳香族化合物の共存下で行う場合、又は前記式(II)で表されるホスフィン化合物を含むパラジウム錯体と前記式(V)で表される芳香族化合物を予め反応させて用いる場合、得られる芳香族ポリマーは、下記式(VII)で表される化合物となり得る。これは、前記式(V)で表される芳香族化合物から重合が開始され、前記式(I)で表される芳香族化合物が連鎖的に重縮合して生成するため、高分子量であり分子量分布がより狭い芳香族ポリマーを得ることができると推定している。前記式(V)で表される芳香族化合物のAraに反応性基を持たせると、開始末端構造に反応性基を持つ芳香族ポリマーが得られる。また、前記式(V)で表される芳香族化合物を複数の開始点を持つ化合物に替えると、複数に分岐した芳香族ポリマーが得られる。

(式中、Ara、Ar、Xは、前記と同じ意味を有する。iは、繰り返し構造Arの数平均重合度である。)
【0086】
前記式(VII)で表される芳香族ポリマーは、重合副反応や後処理反応により、Xが水素原子に置換されることがある。また、該重合終了後に、下記式(VIII)で表される芳香族化合物を添加することにより、下記式(IX)で表される芳香族ポリマーを得ることができる。

(式中、Q1bは、前記Q1と同じ意味を有する。Arbは、前記Araと同じ意味を有する。)

(式中、Ara、Ar、Arb、iは、前記と同じ意味を有する。)
【実施例】
【0087】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【0088】
<合成例1>(2,5−ビス(ヘキシルオキシ)−4−ヨードフェニルボロン酸の合成)
不活性ガス雰囲気下、ヒドロキノン25.1g、炭酸カリウム26.23g、アセトン450mL、及び1−ブロモヘキサン78.5mLを混合し、50℃で72時間撹拌した。反応終了後、得られた生成物を、ジクロロメタンで抽出し、有機層を水で洗浄した後、濃縮した有機層をカラムクロマトグラフィーで精製したところ、白色固体1が24.3g得られた。白色固体1を7.3g、ヨウ素11.0g、ヨウ素酸4.7g、水19mL、硫酸4.2mL、氷酢酸95mL、及び四塩化炭素24mLを混合し、70℃で24時間撹拌して、反応させた。反応終了後、得られた生成物を、ジエチルエーテルで抽出し、水酸化ナトリウム水溶液と水とで洗浄した後、濃縮した有機層をカラムクロマトグラフィーと再結晶で精製したところ、白色固体2が5.3g得られた。不活性ガス雰囲気下、白色固体2を0.33g、及びテトラヒドロフラン3.5mLを混合し、−78℃で1.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液を0.4mL滴下して、−78℃で2時間撹拌した。次いで、トリイソプロポキシボラン0.28mLを加え、−78℃で2時間撹拌した後、塩酸を添加した。得られた生成物を、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した後、濃縮した有機層を再結晶で精製したところ、2,5−ビス(ヘキシルオキシ)−4−ヨードフェニルボロン酸が0.11g得られた。
1H NMR(500MHz,CDCl3
δ 7.31(s,1H),7.24(s,1H),6.02(s,1H),4.02−3.99(m,4H),1.60−1.42(m,4H),1.37−1.32(m,8H),0.91(t,J=7.4Hz,6H)
13C NMR(126MHz,CDCl3
δ 158.3,152.5,122.4,119.0,91.4,70.0,69.3,31.5,31.4,29.2,25.7,25.6,22.6,22.5,14.0,13.9
【0089】
<合成例2>(ビス(トリt−ブチルホスフィン)パラジウムの合成)
ビス(トリt−ブチルホスフィン)パラジウムは、J. Am. Chem. Soc. 98, 5850-5857(1976)に記載の方法で合成した。
【0090】
<合成例3>(パラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)の合成)
パラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)は、J. Am. Chem. Soc. 126,1184-1194(2004)に記載の方法で合成した。
【0091】
<実施例1>
不活性ガス雰囲気下、重合触媒としてパラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)を1.0mg、溶媒としてテトラヒドロフランを5.0mL、式(I)で表される芳香族化合物として2,5−ジ(ヘキシルオキシ)−4−ヨードフェニルボロン酸を19.0mg、ナフタレンを5.0mg、塩基としてフッ化セシウムを28.0mg、相間移動触媒として18−クラウン−6を90.0mg、及び蒸留水を0.2mL混合し、室温で4時間撹拌して、反応させた。反応終了後に、得られた生成物を取り出し、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」という)で生成物の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは6.4×103であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.26であった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(芳香族ポリマー)であり、その収量は10.2mg(収率87%)であった。
【0092】
<実施例2>
不活性ガス雰囲気下、重合触媒としてパラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)を1.0mg、溶媒としてテトラヒドロフランを15.0mL、式(I)で表される芳香族化合物として2,5−ジ(ヘキシルオキシ)−4−ヨードフェニルボロン酸を57.6mg、ナフタレン18.0mg、塩基としてフッ化セシウムを91.0mg、相間移動触媒として18−クラウン−6を303.0mg、及び蒸留水を0.3mL混合し、0℃で3.5時間撹拌して、反応させた。反応終了後に、得られた生成物を取り出し、GPCで生成物の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.61×104であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.47であった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(芳香族ポリマー)であり、その収量は27.6mg(収率78%)であった。
【0093】
<実施例3>
不活性ガス雰囲気下、重合触媒としてパラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)を1.0mg、溶媒としてテトラヒドロフランを15.0mL、式(I)で表される芳香族化合物として2,5−ジ(ヘキシルオキシ)−4−ヨードフェニルボロン酸を59.2mg、ナフタレン17.6mg、塩基としてフッ化セシウムを84.0mg、相間移動触媒として18−クラウン−6を305.0mg、及び蒸留水を0.3mL混合し、−20℃で24時間撹拌して、反応させた。反応終了後に、得られた生成物を取り出し、GPCで生成物の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.7×104であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.46であった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(芳香族ポリマー)であり、その収量は29.3mg(収率80%)であった。
【0094】
<比較例1>
不活性ガス雰囲気下、ビス(トリt−ブチルホスフィン)パラジウム1.1mg、テトラヒドロフラン5.5mL、2,5−ジ(ヘキシルオキシ)−4−ヨードフェニルボロン酸47.5mg、ナフタレン24.6mg、炭酸ナトリウム141mg、及び蒸留水1.5mLを混合し、3時間還流しながら撹拌して、反応させた。反応終了後に、得られた生成物を取り出し、GPCで生成物の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.87×104であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(ポリマー)であった。
【0095】
<比較例2>
不活性ガス雰囲気下、パラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)1.0mg、テトラヒドロフラン5.5mL、2,5−ジ(ヘキシルオキシ)−4−ヨードフェニルボロン酸47.0mg、ナフタレン23.6mg、炭酸ナトリウム142mg、及び蒸留水1.5mLを混合し、2時間30分還流しながら撹拌して、反応させた。反応終了後に、得られた生成物を取り出し、GPCで生成物の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.79×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.2×104)であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.79であった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(ポリマー)であり、その収量は25.1mg(収率87%)であった。
【0096】
<比較例3>
比較例2において、反応を40℃で2時間30分行った以外は、比較例2と同様にして生成物を得た。反応中にポリマーが析出し、GPCで析出物の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは2.22×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは6.02×104であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.71であった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(ポリマー)であった。
【0097】
<比較例4>
比較例2において、反応を室温で2時間30分行った以外は、比較例2と同様にして生成物を得た。反応中にポリマーが析出し、分子量分布は広いものであった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(ポリマー)であった。
【0098】
<比較例5>
比較例2において、パラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)の量を5分の2とし、反応を2時間30分還流しながら撹拌して行った以外は、比較例2と同様にして生成物を得た。得られた生成物を取り出し、GPCで生成物の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは9.6×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.79×104であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.87であった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(ポリマー)であった。
【0099】
<比較例6>
比較例2において、パラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)の量を5分の2とし、反応を40℃で2時間30分行った以外は、比較例2と同様にして生成物を得た。反応中にポリマーが析出し、分子量分布は広いものであった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(ポリマー)であった。
【0100】
<比較例7>
比較例2において、パラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)の量を5分の2とし、反応を室温で2時間30分行った以外は、比較例2と同様にして生成物を得た。反応中にポリマーが析出し、分子量分布は広いものであった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(ポリマー)であった。
【0101】
<比較例8>
不活性ガス雰囲気下、パラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)1.0mg、テトラヒドロフラン5.0mL、2,5−ジ(ヘキシルオキシ)−4−ヨードフェニルボロン酸20.0mg、ナフタレン5.0mg、及びリン酸カリウム28.0mgを混合し、室温で96時間撹拌して、反応させた。反応終了後に、生成物を取り出し、GPCで生成物の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは2.8×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは4.0×103であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.43であった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(ポリマー)であった。
【0102】
<比較例9>
不活性ガス雰囲気下、パラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)1.0mg、テトラヒドロフラン5.0mL、2,5−ジ(ヘキシルオキシ)−4−ヨードフェニルボロン酸19.0mg、ナフタレン7.0mg、リン酸カリウム17.0mg、及び塩化リチウム5.0mgを混合し、室温で96時間撹拌して、反応させた。反応終了後に、生成物を取り出し、GPCで生成物の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.3×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.5×103であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.12であった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(ポリマー)であった。
【0103】
<比較例10>
不活性ガス雰囲気下、パラジウム,ブロモフェニル[トリス(1,1−ジメチルエチル)ホスフィン](9CI)1.0mg、THF5.0mL、2,5−ビス(ヘキシルオキシ)−4−ヨードフェニルボロン酸19.0mg、ナフタレン7.0mg、フッ化セシウム26.0mg、及び蒸留水0.2mLを混合し、室温で48時間撹拌して、反応させた。反応終了後に、生成物を取り出し、GPCで生成物の分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは3.5×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは5.0×103であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.44であった。なお、得られた生成物は、ポリ(パラ−2,5−ジ(ヘキシルオキシ)フェニレン)(ポリマー)であった。
【0104】
<合成例4>(化合物fの合成)
・化合物aの合成
60重量%水素化ナトリウム5.02g(125.5 mmol)をヘキサンで洗浄し、乾燥させ、窒素気流下、0℃で、2−メトキシエタノール7.78g(102.3mmol)のTHF溶液127mLを加えて、0℃で、1時間攪拌した。そこに、プロパギルブロミド13.52g(113.7mmol)のTHF溶液20mLを滴下して、0℃で、4時間攪拌した。得られた反応液をゆっくりと氷水に添加し、エーテルで抽出し、乾燥し、得られた有機層から溶媒を留去し、減圧蒸留により精製したところ、下記式:

で表される化合物aを7.002g(収率60%)得た。
下記のスペクトルにより構造を確認した。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 4.22 (d, J = 2.4 Hz, 2 H), 3.71-3.69 (m, 2 H), 3.59-3.57 (m, 2 H), 3.40 (s, 3 H), 2.43 (t, J = 2.4 Hz, 1 H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 79.5, 74.6, 71.7, 68.9, 59.1, 58.4; IR (neat) 3257, 2882, 2115, 1458, 1355, 1101 cm-1.
【0105】
・化合物bの合成
塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)1.396g(1.99 mmol)、トリフェニルホスフィン1.034g(3.94 mmol)、ヨウ化銅 0.757g(3.97 mmol)及び2-アミノ-6-ブロモピリジン6.776g(39.17 mmol)に、窒素気流下で、乾燥THF140 mLとトリエチルアミン8.2mL(59.08 mmol)とを加え、そこに、化合物a 6.690g(58.61 mmol)のTHF7.0 mL溶液を加えて、室温で、112時間攪拌した。得られた反応液に3M塩酸を加えて酸性にし、水層を塩化メチレンで洗浄した。その後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性にし、得られた水層を塩化メチレンで抽出して有機層を得、その有機層を乾燥し、減圧下で溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ヘキサン:酢酸エチル=1:4)(容積比)で精製したところ、下記式:

で表される薄茶色粘性液体である化合物bを7.425 g(収率92%)得た。
下記のスペクトルにより構造を確認した。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.38 (t, J = 7.2 Hz, 1 H), 6.83 (d, J = 7.2 Hz, 1 H), 6.46 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 4.55 (br s, 2H), 4.44 (s, 2H), 3.77-3.76 (m, 2H), 3.60-3.59 (m, 2H), 3.40 (s, 3H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 158.2, 140.5, 137.8, 117.7, 108.7, 85.9, 83.9, 71.7, 69.1, 59.03, 58.99; IR (neat) 3356, 3191, 2925, 1626, 1592, 1562, 1460, 1351, 1241, 1090, 797 cm-1.
【0106】
・化合物cの合成
酢酸エチル210mLに溶かした化合物b 4.24 g (20.56 mmol)に、5重量%Pd/C 2.616 g(5 mol%)を加えた。反応器に水素ガスを充填して、得られた溶液を、室温で、3.5時間攪拌した後、不溶物をろ過で取り除いた。得られた溶液から、溶媒を留去し、再結晶 (塩化メチレン-ヘキサン) で精製したところ、下記式:

で表される白色板状結晶である化合物c(融点 64.5-66.8℃)を3.4314 g(収率79%)得た。
下記のスペクトルにより構造を確認した。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.33 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.52 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.32 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.37 (br s, 2H), 3.59-3.57 (m, 2H), 3.55-3.54 (m, 2H), 3.52 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 3.39 (s, 3H), 2.67 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.01-1.97 (m, 2H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 160.3, 158.0, 138.0, 112.8, 105.7, 72.0, 70.8, 70.0, 59.1, 34.5, 29.4; IR (KBr) 3413, 3327, 3168, 2985, 2942, 2885, 2812, 1649, 1600, 1574, 1474, 1358, 1134, 1092, 1054, 989, 819, 788 cm-1.
【0107】
・化合物dの合成
化合物c 3.203g(15.23mmol)に塩化メチレン40mLを加えて0℃に冷却した。そこに、2,4,4,6-テトラブロモ-2,5-シクロヘキサジエノン7.376g(18.00mmol)を加えて、0℃で、1.5時間攪拌した。得られた反応液に3M塩酸を加えて酸性にし、水層を塩化メチレンで洗浄した後、そこに、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性にし、塩化メチレンで抽出して有機層を乾燥させた。この有機層から溶媒を留去した後に再結晶(塩化メチレン−ヘキサン)で精製したところ、下記式:

で表される白色板状結晶である化合物d(融点 108.1-109.4℃)を3.221g(収率73%)得た。
下記のスペクトルにより構造を確認した。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.47 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.23 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 4.43 (br s, 2H), 3.61-3.59 (m, 2H), 3.57-3.53 (m, 4H), 3.39 (s, 3H), 2.84-2.81 (m, 2H), 2.03-1.98 (m, 2H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 157.9, 157.0, 141.4, 108.3, 107.7, 72.0, 70.8, 69.9, 59.0, 33.7, 28.2; IR (KBr) 3400, 3329, 3184, 2921, 2883, 1650, 1586, 1469, 1396, 1132, 1091, 1075, 836, 564 cm-1.
【0108】
・化合物eの合成
化合物d 3.166g(10.95 mmol)及び48重量%臭化水素酸20mLを加えて0℃に冷却し、そこに、臭素2mLを滴下し、0℃で、30分間攪拌した。そこに、水10mLに溶かした亜硝酸ナトリウム 2.400g(34.8mmol)を加えて、0℃で、2.75時間攪拌した。得られた反応液に10重量%水酸化ナトリウム水溶液及び10重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、水層を塩化メチレンで抽出し、10重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液、水の順番で、洗浄した。得られた有機層を乾燥させ、溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ヘキサン:酢酸エチル=3:1)(容積比)で精製したところ、下記式:

で表される薄黄色液体である化合物eを3.3992g(収率88%)得た。
下記のスペクトルにより構造を確認した。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.63 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 3.60-3.53 (m, 6H), 3.39 (s, 3H), 2.99 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.07-2.02 (m, 2H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 161.5, 142.2, 139.6, 126.7, 120.3, 71.9, 70.5, 70.0, 59.1, 33.8, 27.9; IR (neat) 2871, 1558, 1537, 1417, 1123, 1008, 819 cm-1.
【0109】
・化合物fの合成
化合物e 3.542g(10.03 mmol)にエーテル28 mLを窒素気流下で加え、−78℃に冷却し、そこに、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液 (1.6 mol/L)7.5 mL(12.00 mmol)を滴下し、3時間攪拌した。そこに、窒素気流下で、ボロン酸イソプロピル2.292 g (12.19 mmol)のエーテル10 mL溶液を加え、室温で2時間攪拌した。得られた反応液に、ピナコール 1.613g(13.65mmol)のエーテル10mL溶液を加えてから、5分間攪拌した後、酢酸 0.60mL(10.53mmol)を加え、2時間攪拌した。そこに、水を加え、エーテルで抽出し、有機層を乾燥させ、溶媒を留去した後に、蒸留したところ、下記式:

で表される無色透明粘性液体である化合物fを2.5571g(収率64%)得た。
下記のスペクトルにより構造を確認した。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.84 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.29 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 3.59-3.52 (m, 6H), 3.38 (s, 3H), 3.08 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.00-1.95 (m, 2H), 1.34 (s 12H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 169.4, 146.0, 143.9, 124.6, 84.1, 71.9, 70.9, 69.6, 58.9, 34.2, 30.5, 24.7, 24.6; IR (neat) 2979, 2929, 2870, 1566, 1452, 1344, 1273, 1136, 1030, 962, 854, 667, 478 cm-1.
【0110】
<合成例5>(化合物gの合成)
不活性ガス雰囲気下で、Pd[P(t-Bu)3] 0.541 g (0.106 mmol)とブロモベンゼン 0.5 mL (4.77 mmol)とを混合し、凍結脱気を行った後、70℃で1.5時間攪拌した。そこに、n-ペンタン5 mLを加え、30秒間攪拌後、30分間静置したところ、橙色の固体が析出した。この固体をろ過することにより、下記式:

で表される化合物gを得た。
【0111】
<実施例4>
化合物f 0.043g(0.017 mmol)、フッ化セシウム0.0767 g (0.505 mmol)、18-クラウン-6 0.2134 g (0.807 mmol)、及び蒸留水 0.5 mLに、不活性ガス気流下で、乾燥THF7.5 mLを加え、得られた溶液を、化合物g 0.0023g(0.00450mmol)の乾燥THF溶液5mLに加えて、室温で1時間攪拌した。得られた反応液を1M塩酸中に添加し、そこに、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性にし、塩化メチレンで抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去したところ、黄色粘性液体としてポリ[6−{3−(2−メトキシエトキシ)プロピル}−ピリジレン−2,5−ジイル](芳香族ポリマー)(Mn=4800、Mw/Mn=1.79)を得た。
【0112】
<比較例11>
化合物f 0.0430 g (0.107 mmol)、炭酸ナトリウム0.4300 g(4.06 mmol)、及び蒸留水2mLに、不活性ガス気流下で、乾燥THF4 mLを加え、得られた溶液を、化合物g 0.0026g(0.00558mmol)の乾燥THF溶液1mLに加えて、室温で15分間攪拌した。得られた反応液を1M塩酸中に添加し、そこに、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性にし、塩化メチレンで抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を留去したところ、黄色固体としてポリ[6−{3−(2−メトキシエトキシ)プロピル}−ピリジレン−2,5−ジイル](ポリマー)(Mn=7500、Mw/Mn=2.01)を得た。
【0113】
<評価>
同一のモノマーを用いてポリ(パラ−2,5−フェ(ヘキシルオキシ)フェニレン)を合成した実施例1〜3、比較例1〜10によれば、本発明の製造方法によって合成した実施例1〜3の芳香族ポリマーは、比較例1〜10のポリマーに比べて、高分子量であり分子量分布が狭い(即ち、両者のバランスがよい)ことが認められる。
また、同一のモノマーを用いてポリ[6−{3−(2−メトキシエトキシ)プロピル}−ピリジレン−2,5−ジイル]を合成した実施例4、比較例11によれば、本発明の製造方法によって合成した実施例4の芳香族ポリマーは、比較例11のポリマーに比べて、高分子量であり分子量分布が狭い(即ち、分子量と分子量分布のバランスがよい)ことが認められる。
以上のとおり、本発明の製造方法によれば、高分子量であり分子量分布が狭い芳香族ポリマーを容易に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される芳香族化合物を、塩基と、重合触媒と、界面活性剤又は相間移動触媒との存在下で重縮合することを含む芳香族ポリマーの製造方法。

〔式中、Arは芳香環を含む二価の基であり、Xはハロゲン原子、ニトロ基又は−SO3Q(ここで、Qは置換又は非置換の炭化水素基を表す)で示される一価の基である。2個のQ1はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であるか、結合して環を形成する。〕
【請求項2】
前記相間移動触媒が、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を有する大環状化合物である請求項1に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記大環状化合物が、クラウンエーテルである請求項2に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記重合触媒が、パラジウム錯体である請求項1〜3のいずれか一項に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記パラジウム錯体が、ホスフィン化合物を配位子として含む請求項4に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項6】
前記ホスフィン化合物が、下記式(II)で表される請求項5に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
P(R1)3 (II)
(式中、3個のR1は、同一又は異なり、下記式(III)で表される基、又は下記式(IV)で表される基である。)
−C(R2)3 (III)
(式中、3個のR2は、同一又は異なり、水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基である。但し、3個のR2のうちの2個のR2が結合して環を形成してもよい。)

(式中、R3〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素二置換アミノカルボニル基、又は炭化水素スルホニル基である。これらの基は、置換基を有していてもよい。R3とR5、R5とR7、R4とR6、及びR6とR7からなる群から選ばれる少なくとも1組において、当該2個の基は結合して環を形成してもよい。)
【請求項7】
前記重縮合が、下記式(V)で表される芳香族化合物の共存下で行われる請求項1〜6のいずれか一項に記載の芳香族ポリマーの製造方法。

(式中、Araは、芳香環を含む1価の基である。Xaは、ハロゲン原子又は−SO3aで示される基(ここで、Qaは置換されていてもよい炭化水素基を表す)である。)
【請求項8】
前記Arが、単環式芳香環、縮合多環式芳香環、芳香環集合、又は有橋多環式芳香環から、環構成元素に結合した水素原子を2個取り除いてなる基である請求項1〜7のいずれか一項に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項9】
前記Arが、単環式芳香環から環構成元素に結合した水素原子を2個取り除いてなる基である請求項8に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項10】
前記単環式芳香環から環構成元素に結合した水素原子を2個取り除いてなる基が、フェニレン基である請求項9に記載の芳香族ポリマーの製造方法。

【公開番号】特開2009−215538(P2009−215538A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23472(P2009−23472)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】