説明

芳香族縮合系高分子により被覆されたカーボンナノチューブ

カーボンナノチューブ100重量部に対して0.01〜100重量部の全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、芳香族ポリカーボネート、半芳香族ポリエステル、および全芳香族アゾールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族縮合系高分子により被覆されたカーボンナノチューブ、およびその製造方法。また被覆されたカーボンナノチューブ0.01〜100重量部と芳香族縮合系高分子100重量部とからなる芳香族縮合系高分子組成物およびそれからの成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は芳香族縮合系高分子により被覆したカーボンナノチューブ、その製造方法、それを含む組成物、およびその成形体に関するものである。
【背景技術】
カーボンナノチューブはその構造からすぐれた強度、弾性率を示し、樹脂に極少量加えることで樹脂の持つ強度、弾性率を大きく向上させることが期待できる。しかしながらカーボンナノチューブは樹脂および溶媒に不溶であり、樹脂および溶媒に十分に分散させることが困難であった。
そこでカーボンナノチューブへの官能基の導入や溶媒への分散性向上が検討されている。例えばScience 280,1253(1998)には硝酸、硫酸等によりカーボンナノチューブにカルボン酸基を導入することが報告されている。
Scinece,282,95,(1998)には酸処理によってカーボンナノチューブを切断し、カルボン酸を導入した後、塩化チオニルによりカルボン酸をアシルハライド化し得られたアシルハライド体にアミンを反応させアミド誘導体を得るたことが紹介されている。しかしながら上記の方法では反応に塩化チオニル等のハロゲン化物を使用するため環境に悪影響を与えるほか、得られるアシルハライド体は反応性が高い反面不安定な物質であるため単離生成が困難である。
またScience 280,1253(1998)には炭素繊維を微細化しようとという報告例として例えば硝酸、硫酸等の存在下加熱あるいは超音波を印加する事により単層カーボンナノチューブを切断し微細化するという報告例がある。酸処理等によりカーボンナノチューブを切断したとしてもカーボンナノチューブをろ過等により分離処理を行った際凝集してしまい、ポリマーとのコンポジットとして使用するにはさらに分散処理を施す必要があった。
また炭素繊維の表面をポリマーで被覆した報告例としては特開平3−287821号公報には極細炭素フィブリルの表面をポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリル酸等のポリオレフィンで被覆し表面の濡れ性を改良したとの報告例が有る。
特開平5−106163号公報には炭素繊維表面にカルボジイミド試薬を付着させポリアミド、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂との界面の接着性を改善するといった報告例が有る。
【発明の開示】
本発明の目的は芳香族縮合系高分子により被覆されたカーボンナノチューブ、その製造方法、それを含む組成物、およびその成形体を提供することにある。カーボンナノチューブを芳香族縮合系高分子により被覆することにより、樹脂および溶媒に十分に分散させることが可能となり、分散性および配向性に優れた組成物が得られる。
発明の好ましい実施態様
(カーボンナノチューブについて)
本発明において芳香族縮合系高分子により被覆させるのに用いられるカーボンナノチューブとしては、平均直径が300nm以下、好ましくは0.3〜250nm、より好ましくは0.3〜200nm、さらに好ましくは0.4〜100nmである。平均直径が0.3nm以下のものは実質的に製造が困難であり、300nm以上のものは分散の改善効果が少ないため好ましくない。
また平均アスペクト比の好ましい値として上限の制限はないが下限としては5.0以上さらには10.0以上、さらに好ましくは50.0以上である事が好ましい。
カーボンナノチューブの平均直径およびアスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることが出来る。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)測定を行い、その画像から直接カーボンナノチューブの直径および長手方向の長さを測定することが可能である。また組成物中のカーボンナノチューブの形態は例えば繊維軸と平行に切断した繊維断面のTEM(透過型電子顕微鏡)測定により把握することが出来る。
好ましい平均粒径としては0.01〜5μm、さらに好ましくは0.5〜3μm、さらには0.1〜1.0μmである。
なお平均粒径は従来既知の粒度分布計、粒径測定装置により求めることができる。測定方法としては、光散乱法、レーザードップラー法等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
カーボンナノチューブの形状としてはグラフェンシートが円筒状に巻かれたもので、この円筒が単層のものでも複数の層からなるものでも構わない。またグラフェンシートがカップ状に積み重なったものでも構わない。すなわち本発明におけるカーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カップスタック型カーボンナノチューブが好ましく挙げられる。
これらカーボンナノチューブは従来公知の方法で製造され、気相流動法、触媒担持型気相流動法、レーザーアブレーション法、高圧一酸化炭素法、アーク放電法等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
(カーボンナノチューブの前処理)
また、カーボンナノチューブを芳香族縮合系高分子で被覆する際、カーボンナノチューブにあらかじめ物理処理および/または化学処理を施しておくことが好ましい。
化学処理の好ましい例としては具体的にはpH0.01〜2の強酸を用いて表面処理することが挙げられる。強酸処理によりカルボン酸や水酸基を置換基として有するカーボンナノチューブを得ることができ、溶媒や全芳香族ポリアミドに対する親和性を高めて分散性を向上させることが出来る。使用可能なpH0.01〜2の強酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、重クロム酸、およびこれらの混酸等が挙げられるが、なかでも硝酸や、硫酸と硝酸との混酸、重クロム酸と硫酸との混酸を用いることが好ましく、特に濃度の高いものを用いることが好ましい。硝酸と硫酸との好ましい混合比は、特に限定はされるものではないが、硝酸/硫酸(重量比)で10/1〜1/10が好ましい。また化学処理は超音波存在下で処理することがさらに好ましい。
物理処理の好ましい例としてはボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー、超音波処理、強力なせん断処理等などが挙げられる。カーボンナノチューブをボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等の物理処理により溶媒中であらかじめ分散させ調整したカーボンナノチューブ分散液をカーボンナノチューブとして用いることが好ましい。
物理処理は溶媒を用いない乾式、有機溶媒、酸等を用いる湿式いずれでも構わない。さらに物理処理と超音波処理とを併用することも好ましい。また、溶媒として、硫酸硝酸の混合液、硫酸過酸化水素の混合液等の化学的酸化力の強い溶媒を併用することも好ましい。
(全芳香族ポリアミドにより被覆されたカーボンナノチューブ)
本発明における全芳香族ポリアミドは、下記式(A)及び(B)
−NH−Ar−NH− (A)
−OC−Ar−CO− (B)
上記一般式(A)、(B)において、Ar,Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。
からなり、
下記式(1)
0.8≦a/b≦4/3 (1)
aは式(A)で表される芳香族ジアミンの繰り返し単位のモル数であり、bは式(B)で表される芳香族ジカルボン酸の繰り返し単位のモル数である。
を満足する全芳香族ポリアミドであることが好ましい。
上記Ar,Arは、各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基であるが、その具体例としては、メタフェニレン基、パラフェニレン基、オルトフェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ジフェニレンスルフィド基、4,4’−ジフェニレンスルホン基、4,4’−ジフェニレンケトン基、4,4’−ジフェニレンエーテル基、3,4’−ジフェニレンエーテル基、メタキシリレン基、パラキシリレン基、オルトキシリレン基等が挙げられる。
これらの芳香族基の水素原子のうち1つまたは複数がそれぞれ独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜10の芳香族基で置換されていてもよい。なお、上記式(A)及び/又(B)の構成単位が、2種以上の芳香族基からなる共重合体であっても差し支えない。
これらのうち、Arはメタフェニレン基、パラフェニレン基、3,4’−ジフェニレンエーテル基が好ましく、パラフェニレン基、またはパラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基とを併用したものがさらに好ましく、パラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基とを併用した場合にはそのモル比が1:0.8〜1:1.2の範囲にあることがさらに好ましい。
Arはメタフェニレン基、パラフェニレン基、が好ましく、パラフェニレン基がさらに好ましい。
すなわち本発明において好適に用いられるものとして具体的には、Arがパラフェニレン基及び/または3,4’−ジフェニレンエーテル基であり、Arがパラフェニレン基である全芳香族ポリアミドが挙げられる。なかでもArがパラフェニレン基及び3,4’−ジフェニレンエーテル基であり、Arがパラフェニレン基である共重合体であって、その共重合比(Arのパラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基のモル比)が1:0.8〜1:1.2の範囲にある全芳香族ポリアミドを挙げることが出来る。
これらの全芳香族ポリアミドは溶液重合法、界面重合法、溶融重合法など従来公知の方法にて製造する事が出来る。重合度は芳香族ジアミン成分と芳香族ジカルボン酸成分の比率によりコントロールすることが出来、得られるポリマーの分子量としては98重量%濃硫酸に0.5g/100mLの濃度で溶かした溶液を30℃にて測定した特有粘度(inherent viscosity)ηinhが0.05〜20dL/gであることが好ましく、0.1〜10dL/gの間に有るものがより好ましい。
全芳香族ポリアミドにより被覆されたカーボンナノチューブの製造方法としては、下記式(H)で表わされる芳香族ジアミンの少なくとも1種と、下記式(J)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルまたは下記式(K)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアシルハライドの少なくとも1種とを、
NH−Ar−NH (H)
−OC−Ar−CO−R10 (J)
OC−Ar−COX (K)
,R10は各々独立に炭素数6〜20の芳香族基を、Ar,Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基、X,Xはハロゲンを表す。
下記式(2)
0.8≦c/d≦4/3 (2)
cは上記式(H)で表される芳香族ジアミン、dは上記式(J)で表される芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルまたは下記式(K)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアシルハライドの各仕込みモル数である。
を同時に満足する割合で仕込み、さらにカーボンナノチューブ(N)を加え反応を行い、次いで得られた反応物を有機溶媒または酸性溶媒に溶かしポリマーにより被覆されたカーボンナノチューブをろ過、単離する方法が好ましく挙げられる。
または、下記式(H)で表わされる芳香族ジアミンの少なくとも1種と、下記式(J)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルまたは下記式(K)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアシルハライドの少なくとも1種とを、
NH−Ar−NH (H)
−OC−Ar−CO−R10 (J)
OC−Ar−COX (K)
,R10は各々独立に炭素数6〜20の芳香族基を、Ar,Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基、X,Xはハロゲンを表す。
下記式(2)’
1<c/d≦4/3 (2)’
cは上記式(H)で表される芳香族ジアミン、dは上記式(J)で表される芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルまたは上記式(K)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアシルハライドの各仕込みモル数である。
を同時に満足する割合で仕込んで反応を行い、アミン末端がカルボン酸誘導体からなる末端に比べて多い全芳香族ポリアミドを合成した後、さらにpH0.01〜2の酸性溶液中で表面処理を行い得られたカーボンナノチューブ(N)と反応させ、得られた反応物を有機溶媒または酸性溶媒に溶かしポリマーにより被覆されたカーボンナノチューブをろ過、単離する方法が好ましく挙げられる。
すなわち上記の如き全芳香族ポリアミドにより被覆されたカーボンナノチューブは、本発明に従って以下の[方法1]、[方法2][方法3]、または[方法4]によって良好な生産性で工業的に製造することができる。
[方法1]下記式(H)および(J)で表されるモノマーを、所定割合で加熱反応させてポリマーを得る方法:
NH−Ar−NH (H)
−OC−Ar−CO−R10 (J)
上記式(H)、(J)におけるAr、Arはそれぞれ全芳香族ポリアミドの組成に関して説明したAr、Arと同じであり、また、式(J)におけるR、R10は各々独立に、炭素数6〜20の1価の芳香族基を表わし、具体的にはフェニレン基、ナフタレン基、ビフェニレン基、イソプロピリデンジフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルスルフィド基、ジフェニルスルホン基、ジフェニルケトン基等である。これらの芳香族基の水素原子のうち1つまたは複数が各々独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等で置換されていてもよい。これらのうち、Arはメタフェニレン基、パラフェニレン基、3,4’−ジフェニレンエーテル基が好ましく、パラフェニレン基、またはパラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基とを併用したものがさらに好ましい。Arはメタフェニレン基、パラフェニレン基、が好まくパラフェニレン基がさらに好ましい。
上記[方法1]においては、各モノマー(反応成分)のモル数が上記数式(2)
0.8≦c/d≦4/3 (2)
cは上記式(H)で表される芳香族ジアミン、dは上記式(J)で表される芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルの各仕込みモル数である。]
を同時に満たすことが必要である。すなわち、c/dが0.8より小さい場合や4/3より大きい場合には、重合度の十分なポリマーを得ることが困難である。c/dの下限としては、0.9以上が適当であり、より好ましくは0.93以上、さらに好ましくは0.95以上である。また、c/dの上限としては、1.25以下が適当であり、より好ましくは1.2以下である。従って、本発明におけるc/dの最適範囲は0.95≦c/d≦1.2ということができる。
[方法1]において、反応は、溶媒中で行う反応、無溶媒の加熱溶融反応のいずれも採用できるが、例えば、後述する反応溶媒中で攪拌下に反加熱反応させるのが好ましい。反応温度は、100℃から380℃が好ましく、180℃から350℃がさらに好ましい。100℃より温度が低いと反応が進まず、380℃より温度が高いと反応させるジアミンの沸点以上になる、あるいは分解等の副反応が起こりやすくなるためである。反応時間は温度条件にもよるが、通常は1時間から数十時間である。反応は加圧下から減圧下で行うことができるが、通常は常圧下から減圧下で行う。好ましくは、生成するフェノール等のモノヒドロキシ化合物を留去しつつ、反応を行う。加熱溶融反応の場合は減圧下がよく、反応媒体を使用する場合は常圧下で反応させるのが適当である。
反応は、通常、無触媒でも進行するが、必要に応じてエステル交換触媒を用いてもよい。本発明で用いるエステル交換触媒としては三酸化アンチモンといったアンチモン化合物、酢酸第一錫、オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジアセテートといった錫化合物、酢酸カルシウムのようなアルカリ土類金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属塩等、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸を例示することができる。また、反応時には酸化防止剤等の各種添加剤を併用することが好ましい。
(H)、(J)に加え反応前にあらかじめカーボンナノチューブ(N)を
0.001≦(n)/(x)≦100 (3)
式中、(x)は芳香族ジアミン(J)および芳香族ジカルボン酸ジアリールエステル(K)の重量部の総和を示し、(n)はカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加え反応を行うことが好ましい。
ここでいうカーボンナノチューブ(N)は先にのべたものと同義である。
上記重量比(n)/(x)が0.001より小さいと、ポリマー中からのカーボンナノチューブ成分の単離が困難であり好ましくない。また、重量比(n)/(x)が100より大きいと、カーボンナノチューブのポリマーの被覆が十分でなく好ましくない。本発明者らの研究では、上記式(3)において、0.01≦(n)/(x)≦10の範囲が好ましく、0.01≦(n)/(x)≦1.0の範囲が特に好ましいことが判明している。
上記の反応は、無溶媒で行うこともできるが、必要に応じて、N−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジフェニルスルホン、ジクロロメタン、クロロロホルム、テトラヒドロフラン、水等の溶媒を用いてもよい。これらの溶媒は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
得られた反応物を有機溶媒または酸性溶媒、例えば硫酸、1−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等、に一度溶解しろ過する事で全芳香族ポリエステルに被覆されたカーボンナノチューブを得る事が出来る。また上記溶媒に塩化リチウム、塩化カルシウム等の溶媒に可溶なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を併用しても良い。
[方法2]下記一般式(H)、(K)の各反応成分(モノマー)を所定割合で同時に反応させてポリマーを得る方法:
NH−Ar−NH (H)
OC−Ar−COX (K)
上記一般式(H)、(K)において、Ar、Arは、各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わし、その詳細は各々全芳香族ポリアミドの説明で述べたAr、Arと同じである。上記一般式(E)中のX,Xはハロゲンを表わし、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。この中でも反応性、安定性、コストの点で塩素が好ましい。
本発明の[方法2]において、各反応成分(モノマー)が下記数式(2)を満足する割合で反応させる。
0.8≦c/d≦4/3 (2)
cは上記式(H)で表される芳香族ジアミン、dは式(K)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアシルハライドの各仕込みモル数である。
上記c/dが0.8より小さい場合や4/3より大きい場合には、重合度の十分なポリマーを得ることが困難である。c/dの好ましい下限は0.9以上であり、より好ましくは0.93以上、さらに好ましくは0.95以上である。また、c/dの好ましい上限は1.25以下であり、より好ましくは1.2以下である。従って、本発明におけるc/dの最適範囲は0.95≦c/d≦1.2ということができる。
この[方法2]における反応温度は−20℃から100℃が好ましく、−5℃から50℃がさらに好ましい。−20℃より温度が低いと反応が進まず、100℃より温度が高いと原料の分解等の副反応が起こりやすくなるためである。反応時間は温度条件にもよるが、通常は1時間から数十時間である。反応は、後述する反応溶媒中で加熱反応させるのが好ましい。
反応により生成するハロゲン化水素は塩基性物質により中和して除去し、生成した全芳香族ポリアミドを取り出すことができる。このポリマーを必要により洗浄、精製してもよいが、中和した反応溶液を濃度調整して成形原液として使用することもできる。
上記[方法2]では、反応の際、N−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジフェニルスルホン、ジクロロメタン、クロロロホルム、テトラヒドロフラン、水等の溶媒を用いる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また上記溶媒に塩化リチウム、塩化カルシウム等の溶媒に可溶なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を併用しても良い。
本発明では(H),(K)に加え反応前にあらかじめカーボンナノチューブ(N)を
0.001≦(n)/(x)≦100 (3)
xは芳香族ジアミン(J)、芳香族ジカルボン酸ジアシルハライド(L)からなるモノマー成分の重量部の総和を示し、(n)はカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加え反応を行うことを特徴としている。
ここでいうカーボンナノチューブ(N)は先にのべたものと同義である。
上記重量比(n)/(x)が0.001より小さいと、ポリマー中からのカーボンナノチューブ成分の単離が困難であり好ましくない。また、重量比(n)/(x)が100より大きいと、カーボンナノチューブのポリマーの被覆が十分でなく好ましくない。本発明者らの研究では、上記式(3)において、0.01≦(n)/(x)≦10の範囲が好ましく、0.01≦(n)/(x)≦1.0の範囲が特に好ましいことが判明している。
得られた反応物を有機溶媒または酸性溶媒、例えば硫酸、N−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等、に溶解し、ろ過する事で全芳香族ポリアミドにより被覆されたカーボンナノチューブを得る事が出来る。
[方法3]下記式(H)および(J)で表されるモノマーを、所定割合で加熱反応させてアミン末端がカルボン酸誘導体からなる末端に比べて多いポリマーを得る方法:
NH−Ar−NH (H)
−OC−Ar−CO−R10 (J)
上記式(H)、(J)におけるAr、Arはそれぞれ全芳香族ポリアミドの組成に関して説明したAr、Arと同じであり、また、式(J)におけるR、R10は各々独立に、炭素数6〜20の1価の芳香族基を表わし、具体的にはフェニレン基、ナフタレン基、ビフェニレン基、イソプロピリデンジフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルスルフィド基、ジフェニルスルホン基、ジフェニルケトン基等である。これらの芳香族基の水素原子のうち1つまたは複数が各々独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等で置換されていてもよい。これらのうち、Arはメタフェニレン基、パラフェニレン基、3,4’−ジフェニレンエーテル基が好ましく、パラフェニレン基、またはパラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基とを併用したものがさらに好ましい。Arはメタフェニレン基、パラフェニレン基、が好まくパラフェニレン基がさらに好ましい。
本発明の[方法3]において、各反応成分(モノマー)が下記数式(2)’を満足する割合で反応させる。
1<c/d≦4/3 (2)’
cは上記式(H)で表される芳香族ジアミン、dは式(J)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルの各仕込みモル数である。
上記c/dが1以下の場合は、アミン末端の多い全芳香族ポリアミドが得ることができない。上記c/dが4/3より大きい場合には、重合度の十分なポリマーを得ることが困難である。c/dの好ましい上限は1.25以下であり、より好ましくは1.2以下である。従って、本発明における[方法3]におけるc/dの最適範囲は1<c/d≦1.2ということができる。
ここでアミン末端の多い全芳香族ポリアミドとは、全末端の60%以上が、より好ましくは80%以上がアミノ基からなる全芳香族ポリアミドのことをいう。
[方法3]において、反応は、溶媒中で行う反応、無溶媒の加熱溶融反応のいずれも採用できるが、例えば、後述する反応溶媒中で攪拌下に反加熱反応させるのが好ましい。反応温度は、100℃から380℃が好ましく、180℃から350℃がさらに好ましい。100℃より温度が低いと反応が進まず、380℃より温度が高いと反応させるジアミンの沸点以上になる、あるいは分解等の副反応が起こりやすくなるためである。反応時間は温度条件にもよるが、通常は1時間から数十時間である。反応は加圧下から減圧下で行うことができるが、通常は常圧下から減圧下で行う。好ましくは、生成するフェノール等のモノヒドロキシ化合物を留去しつつ、反応を行う。加熱溶融反応の場合は減圧下がよく、反応媒体を使用する場合は常圧下で反応させるのが適当である。
反応は、通常、無触媒でも進行するが、必要に応じてエステル交換触媒を用いてもよい。本発明で用いるエステル交換触媒としては三酸化アンチモンといったアンチモン化合物、酢酸第一錫、オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジアセテートといった錫化合物、酢酸カルシウムのようなアルカリ土類金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属塩等、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸を例示することができる。また、反応時には酸化防止剤等の各種添加剤を併用することが好ましい。
上記で得られたアミン末端の多い全芳香族ポリアミドとカーボンナノチューブ(N)を
0.001≦(n)/(x)≦100 (3)
xはアミン末端の多い全芳香族ポリアミドの重量部を示し、(n)はカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加え反応を行うことを特徴としている。
ここでいうカーボンナノチューブ(N)は先にのべたものと同義であるが、pH0.01〜2の酸性溶液中で表面処理を行い得られたものである。
上記式(3)において重量比(n)/(x)が0.001より小さいと、ポリマー中からのカーボンナノチューブ成分の単離が困難であり好ましくない。また、重量比(n)/(x)が100より大きいと、カーボンナノチューブのポリマーの被覆が十分でなく好ましくない。本発明者らの研究では、上記式(3)において、0.01≦(n)/(x)≦10の範囲が好ましく、0.01≦(n)/(x)≦1.0の範囲が特に好ましいことが判明している。
[方法3]において、アミン末端の多い全芳香族ポリアミドとカーボンナノチューブ(N)を反応させる方法としては、特に限定はされないが、アミン末端の多い全芳香族ポリアミドの溶媒溶液中で、カーボンナノチューブ(N)を反応させる方法が挙げられる。全芳香族ポリアミドは耐熱性が高いために溶融するためには高温が必要である。または溶融しないものもある。その点からも溶液中で反応させることが好ましい。
この[方法3]におけるアミン末端の多い全芳香族ポリアミドとカーボンナノチューブ(N)を反応させるときの反応温度は特に限定されるものではないが、0℃から250℃が好ましく、30℃から200℃がさらに好ましい。0℃より温度が低いと反応が進まず、250℃より温度が高いと原料の分解等の副反応が起こりやすくなるためである。反応時間は温度条件にもよるが、通常は1時間から数十時間である。反応は、後述する反応溶媒中で加熱反応させるのが好ましい。
上記アミン末端の多い全芳香族ポリアミドとカーボンナノチューブ(N)を反応させる際、N−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジフェニルスルホン、ジクロロメタン、クロロロホルム、テトラヒドロフラン、水等の溶媒を用いる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また上記溶媒に塩化リチウム、塩化カルシウム等の溶媒に可溶なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を併用しても良い。
得られた反応物を有機溶媒または酸性溶媒、例えば硫酸、N−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等、に溶解し、ろ過する事で全芳香族ポリアミドにより被覆されたカーボンナノチューブを得る事が出来る。また上記溶媒に塩化リチウム、塩化カルシウム等の溶媒に可溶なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を併用しても良い。
[方法3]で得られたアミン末端の多い全芳香族ポリアミドで被覆されたカーボンナノチューブは、全芳香族ポリアミドのアミン末端と酸性溶液中で表面処理を行ったカーボンナノチューブのカルボキシル基末端とが、共有結合および/またはイオン相互作用により相互作用することにより全芳香族ポリアミドに被覆されている。
[方法4]下記一般式(H)、(K)の各反応成分(モノマー)を所定割合で同時に反応させてアミン末端がカルボン酸誘導体末端に比べて多いポリマーを得る方法:
NH−Ar−NH (H)
OC−Ar−COX (K)
上記一般式(H)、(K)において、Ar、Arは、各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わし、その詳細は各々全芳香族ポリアミドの説明で述べたAr、Arと同じである。上記一般式(E)中のX,Xはハロゲンを表わし、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。この中でも反応性、安定性、コストの点で塩素が好ましい。
本発明の[方法4]において、各反応成分(モノマー)が下記数式(2)’を満足する割合で反応させる。
1<c/d≦4/3 (2)’
cは上記式(H)で表される芳香族ジアミン、dは式(K)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアシルハライドの各仕込みモル数である。
上記c/dが1以下の場合は、アミン末端の多い全芳香族ポリアミドが得ることができない。上記c/dが4/3より大きい場合には、重合度の十分なポリマーを得ることが困難である。c/dの好ましい上限は1.25以下であり、より好ましくは1.2以下である。従って、本発明における[方法4]におけるc/dの最適範囲は1<c/d≦1.2ということができる。
ここでアミン末端の多い全芳香族ポリアミドとは、末端の60%以上が、より好ましくは80%以上がアミノ基からなる全芳香族ポリアミドのことをいう。
この[方法4]における反応温度は−20℃から100℃が好ましく、−5℃から50℃がさらに好ましい。−20℃より温度が低いと反応が進まず、100℃より温度が高いと原料の分解等の副反応が起こりやすくなるためである。反応時間は温度条件にもよるが、通常は1時間から数十時間である。反応は、後述する反応溶媒中で加熱反応させるのが好ましい。
反応により生成するハロゲン化水素は塩基性物質により中和して除去し、生成した全芳香族ポリアミドを取り出すことができる。このポリマーを必要により洗浄、精製してもよいが、中和した反応溶液を濃度調整して成形原液として使用することもできる。
上記[方法4]では、反応の際、N−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジフェニルスルホン、ジクロロメタン、クロロロホルム、テトラヒドロフラン、水等の溶媒を用いる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また上記溶媒に塩化リチウム、塩化カルシウム等の溶媒に可溶なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を併用しても良い。
本発明の[方法4]では、上記で得られたアミン末端の多い全芳香族ポリアミドと好ましくはpH0.01〜2の酸性溶液中で表面処理を行い得られたカーボンナノチューブ(N)を
0.001≦(n)/(x)≦100 (3)
xはアミン末端の多い全芳香族ポリアミドの重量部を示し、(n)はpH0.01〜2の酸性溶液中で表面処理を行い得られたカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加え反応を行うことを特徴としている。
ここでいうカーボンナノチューブ(N)は先にのべたものと同義であるが、pH0.01〜2の酸性溶液中で表面処理を行い得られたものである。
上記重量比(n)/(x)が0.001より小さいと、ポリマー中からのカーボンナノチューブ成分の単離が困難であり好ましくない。また、重量比(n)/(x)が100より大きいと、カーボンナノチューブのポリマーの被覆が十分でなく好ましくない。本発明者らの研究では、上記式(3)において、0.01≦(n)/(x)≦10の範囲が好ましく、0.01≦(n)/(x)≦1.0の範囲が特に好ましいことが判明している。
[方法4]において、アミン末端の多い全芳香族ポリアミドとカーボンナノチューブ(N)を反応させる方法としては、特に限定はされないが、アミン末端の多い全芳香族ポリアミドの溶媒溶液中で、カーボンナノチューブ(N)を反応させる方法が挙げられる。全芳香族ポリアミドは耐熱性が高いために溶融するためには高温が必要である。または溶融しないものもある。その点からも溶液中で反応させることが好ましい。
この[方法4]においてアミン末端の多い全芳香族ポリアミドとカーボンナノチューブ(N)を反応させるときの反応温度は特に限定されるものではないが、0℃から250℃が好ましく、30℃から200℃がさらに好ましい。0℃より温度が低いと反応が進まず、250℃より温度が高いと原料の分解等の副反応が起こりやすくなるためである。反応時間は温度条件にもよるが、通常は1時間から数十時間である。反応は、後述する反応溶媒中で加熱反応させるのが好ましい。
上記アミン末端の多い全芳香族ポリアミドとカーボンナノチューブ(N)を反応させる際、N−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジフェニルスルホン、ジクロロメタン、クロロロホルム、テトラヒドロフラン、水等の溶媒を用いる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また上記溶媒に塩化リチウム、塩化カルシウム等の溶媒に可溶なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を併用しても良い。
得られた反応物を有機溶媒または酸性溶媒、例えば硫酸、N−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等、に溶解し、ろ過する事で全芳香族ポリアミドにより被覆されたカーボンナノチューブを得る事が出来る。
[方法4]で得られたアミン末端の多い全芳香族ポリアミドで被覆されたカーボンナノチューブは、全芳香族ポリアミドのアミン末端と酸性溶液中で表面処理を行ったカーボンナノチューブのカルボキシル基末端とが、共有結合および/またはイオン相互作用により相互作用することにより全芳香族ポリアミドに被覆されている。
((全)芳香族ポリエステル/カーボネートにより被覆されたカーボンナノチューブ)
本発明における全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、芳香族ポリカーボネートは下記構成単位

Arは置換されてもよい炭素数6〜20の芳香族基であり、R,Rは各々置換されてもよいフェニレン基であり、Yは下記式群(E)から選ばれる基を表す。

〜Rは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5または6のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基および炭素数6〜12のアラルキル基から選ばれる少なくとも1種の基である。qは4〜10の整数を示す。
からなることが好ましい。
(全)芳香族ポリエステル/カーボネートにより被覆されたカーボンナノチューブの製造方法について詳細に述べる。
下記式(L)
HOOC−Ar−COOH (L)
Arは上記式(C)における定義と同じである。
で示される芳香族ジカルボン酸成分と、下記式(O)
HO−R−Y−R−OH (O)
、R、Yは上記式(C)、(D)における定義と同じである。
で示される芳香族ジオール成分、および(P)

2つのR11は、それぞれ、互いに同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、エステル基、あるいは炭素数1〜6のアルキル基から選ばれる。
で表されるジアリールカーボネートを下記式(4)、および(5)
0≦e/f≦1.05 (4)
0.9≦g/(e+f)≦1.1 (5)
eは芳香族ジカルボン酸成分、fはジオール成分、gはジアリールカーボネートの各モル数である。
を同時に満足するモル割合で仕込み、さらにカーボンナノチューブ(N)を加えて反応を行い、次いで得られた反応物を有機溶媒に溶かしポリマーにより被覆されたカーボンナノチューブをろ過、分離する事により得られる。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等を挙げることができる。これらの芳香族ジカルボン酸は単独で用いても、複数を同時に用いてもよい。なかでも良好な非結晶性ポリマーを得る上で、特に、テレフタル酸とイソフタル酸を同時に用いることが望ましい。
芳香族ジオール成分としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が例示され、これらのうち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが好ましい。これらの芳香族ジオール成分も、単独で用いても、複数を同時に用いてもよい。
本発明の方法では、生成するポリマーの性質を損なわない範囲(例えば、1モル%以上、15モル%以下)で、上記の芳香族ジオール成分の一部を、ハイドロキノン、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル等の他の芳香族ジオール成分と置き換えてもよい。
ジアリールカーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられるが、これらのうちでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。これらのジアリールカーボネートは単独で用いても、複数を同時に用いてもよい。
式(5)において、この比g/(e+f)が0.9より小さいと生成するポリマーの重合が遅くなり易く、また、1.1より大きいと得られるポリマーの着色が激しくなるので、何れも好ましくない。式(5)において、0.95≦g/(e+f)≦1.15の範囲が好ましく、さらには0.97≦g/(e+f)≦1.10の範囲が特に好ましい。
本発明ではモノマー成分に加え反応前にあらかじめカーボンナノチューブ(N)を
0.001≦(n)/(m)≦100 (6)
mは芳香族ジカルボン酸成分(e)、ジオール成分(f)、ジアリールカーボネート(g)であるモノマー成分の重量部の総和を示し、(n)はカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加え反応を行うことを特徴としている。
ここでいうカーボンナノチューブ(N)は先にのべたものと同義である。
上記重量比(n)/(m)が0.001より小さいと、ポリマー中からのカーボンナノチューブ成分の単離が困難であり好ましくない。また、重量比(n)/(m)が100より大きいと、カーボンナノチューブのポリマーの被覆が十分でなく好ましくない。本発明者らの研究では、上記式(6)において、0.01≦(n)/(m)≦10の範囲が好ましく、0.01≦(n)/(m)≦1.0の範囲が特に好ましいことが判明している。
本発明の方法は、上記化合物(L)、(O)、(P)およびカーボンナノチューブを、下記式(T)

14、R15は、各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基および炭素数6〜12のアラルキル基から選ばれる少なくとも1種の基である。また、R14とR15との間に結合があってもかまわない。R16は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基および炭素数6〜12のアラルキル基から選ばれる少なくとも1種の基である。nは0〜4の整数を示す。
で示されるピリジン系化合物の存在下で反応を行うことが好ましい。
このようなピリジン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、4−ピペリジノピリジン、4−ピロリノピリジン、2−メチル−4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。これらのうち、4−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジンが特に好ましい。
この反応においては、初めは主としてジアリールカーボネートが芳香族ジカルボン酸成分および芳香族ジオール成分と反応してフェノール類を生じる。一般に芳香族ジカルボン酸は溶解性が低いため、この初期の反応が開始されるには高温を要し、また初期反応が終結する迄には長時間を必要とする。しかし、上記のような特定のピリジン系化合物を用いると、予想外にもこの初期のフェノール類の発生が非常に低温で、しかも短時間で終了する。また驚くべきことに、芳香族ポリエステルカーボネート製造後期においてもエステル交換触媒として働き、短時間で高重合度のポリマーを得ることができる。
上記ピリジン系化合物の使用量は、いわゆる触媒量でよいが上記成分(a)1モルに対して、0.00001モルから0.05モルが好ましく、0.0001モルから0.005モルがさらに好ましい。
本発明の方法において、上記ピリジン化合物の存在下で加熱重合する際の重合温度は、200〜400℃とするのが適当である。ここで重合温度とは、重合後期あるいはその終了時における反応系の温度を意味する。重合温度が200℃より低いと、ポリマーの溶融粘度が高くなるため高重合度のポリマーを得ることができず、また400℃よりも高いと、ポリマー劣化等が生じやすくなるので好ましくない。
本発明では上記ピリジン系化合物のほかに重合速度を高めるために、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を用いることができる。
これらの触媒の具体例としてリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属類及び/又はマグネシウム、カルシウム等アルカリ土類金属類の水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、炭酸水素塩を挙げることができる。これら中でも炭酸カリウム、炭酸ナトリウム,ビスフェノールAのジナトリウム塩が特に好ましい。
本発明では上記ピリジン系化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のほか従来公知のエステル交換触媒を使用しても差し支えない。
これらアルカリ金属類は、アルカリ土類金属類の使用量はいわゆる触媒量でよく上記芳香族ジオール成分1モルに対して0.01μmol%から0.05mol%が好ましく、0.1μmol%から0.005mol%がさらに好ましい。
本発明の方法では、重合反応温度の初期は比較的低温とし、これを徐々に昇温して最終的に上記重合温度にすることが好ましい。この際の初期重合反応の重合温度は、好ましくは160〜320℃である。
該重合反応は常圧下もしくは減圧下で実施されるが、初期重合反応時は常圧下とし、徐々に減圧とすることが好ましい。また、常圧時には反応系は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下とすることが好ましい。重合反応時間は特に制限はないが、およそ0.2〜20時間程度である。
なお、本発明の方法では、上記各成分を反応の当初から同時に反応容器に仕込むのが好ましいが、モル当量分のジアリールカーボネートを反応開始から数回に分けて反応容器に導入することも可能である。
上述したように本発明における全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネートおよび芳香族ポリカーボネートは、いずれも非晶性ポリマーであり、これを用いて例えば射出成形等の溶融成形法により成形品を得ることができる。そして、本発明の方法により得られるポリマーが非晶性であることは、例えばDSCによりその融点が得られない等の現象から確認することができる。
上記の方法により得られる全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネートおよび芳香族ポリカーボネートのそれぞれの還元粘度は0.05〜3.0、好ましくは0.3〜2.5である。還元粘度が0.05より小さいと樹脂組成物として期待される機械特性が得られず、3.0より大きいものは実質的に製造が困難である。
上記の方法により得られる反応物を有機溶媒または酸性溶媒に溶かしポリマーにより被覆されたカーボンナノチューブに一度溶解し、単離する。溶媒としてはジクロロメタン、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒等が好ましく挙げられる。
(半芳香族ポリエステルにより被覆されたカーボンナノチューブ)
本発明における半芳香族ポリエステルは芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分よりなる半芳香族ポリエステルであることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸成分と、脂肪族ジオール成分とを下記式(7)
0.8≦e’/f’≦1.2 (7)
e’は芳香族ジカルボン酸成分、f’はジオール成分の各モル数である。
を満足するモル割合で仕込み、さらにカーボンナノチューブ(N)を下記式(8)
0.001≦(n)/(m)≦100 (8)
mは芳香族ジカルボン酸成分(e)、ジオール成分(f)であるモノマー成分の重量部の総和を示し、(n)はカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加えて反応を行い、次いで得られた反応物を有機溶媒に溶かし、ポリマーにより被覆されたカーボンナノチューブをろ過、分離する事により得ることができる。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等を挙げることができる。これらの芳香族ジカルボン酸は単独で用いても、複数を同時に用いてもよい。なかでも良好な非結晶性ポリマーを得る上で、特に、テレフタル酸とイソフタル酸を同時に用いることが望ましい。
脂肪族ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。これらの脂肪族ジオールは単独で用いても、複数を同時に用いてもよい。
半芳香族ポリエステルの分子量は、好ましくは、還元粘度(1.2g/dLのフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=4/6(重量比)溶液中、35℃で測定した値)で0.1〜20dL/g、より好ましくは0.2〜10dL/g、さらに好ましくは0.3〜5dL/gの範囲である。
(全芳香族アゾールにより被覆されたカーボンナノチューブ)
本発明における全芳香族アゾールは、下記式(F)及びまたは(G)

、YはO、S、およびNHからなる群からそれぞれ独立に選ばれ、Arは炭素数6〜20の4価の芳香族基を表わし,Arは炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。
を満足する全芳香族アゾールであることが好ましい。
(F)、(G)はそれぞれ単独でも、併存してもよく、(F):(G)のモル比は0:100〜100:0の任意の比率で適宜選択できる。
上記式(F)、(G)におけるArは、各々独立に炭素数6〜20の4価の芳香族基を表わし、その具体例としては

はO、S、SO、SO2、NH、C(CHのいずれかから選ばれる。等が挙げられるがこれに限定されるものではない。これらの芳香族基の水素原子のうち1つまたは複数がそれぞれ独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜10の芳香族基で置換されていてもよい。
上記式(F)、(G)におけるArは、各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わし、その具体例としては、メタフェニレン基、パラフェニレン基、オルトフェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ジフェニレンスルフィド基、4,4’−ジフェニレンスルホン基、4,4’−ジフェニレンケトン基、4,4’−ジフェニレンエーテル基、3,4’−ジフェニレンエーテル基、メタキシリレン基、パラキシリレン基、オルトキシリレン基等が挙げられる。これらの芳香族基の水素原子のうち1つまたは複数がそれぞれ独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜10の芳香族基で置換されていてもよい。なお、上記式(A)及び/又(B)の構成単位が、2種以上の芳香族基からなる共重合体であっても差し支えない
これらの中でパラフェニレン基、2,6−ナフチレン基が好ましい。
好適な全芳香族縮合系高分子としては、具体的には以下のポリベンゾビスオキサゾール、

あるいは以下のポリベンゾビスチアゾール、

を好ましく例示することができる。
これら全芳香族縮合系高分子は溶液重合法、溶融重合法など従来公知の方法にて製造する事が出来る。ポリマーの重合度としては98重量%濃硫酸に0.5g/100ml溶かした溶液を30℃にて測定した特有粘度(inherent viscosity)ηinhが0.05〜100(dl/g)好ましくは1.0〜80(dl/g)の間に有るものが好ましい。
全芳香族アゾールは、本発明に従って次の方法によって良好な生産性で工業的に製造することができる。
すなわち下記式(Q)、(R)


、YはO、S、およびNHからなる群からそれぞれ独立に選ばれ、Arは炭素数6〜20の4価の芳香族基を表わし、また(Q)、(R)は塩酸塩でも構わない。
で表わされる芳香族アミン誘導体およびその塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種と、下記式(S)
12−OC−Ar−CO−R13 (S)
Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わし、R12,R13は各々独立に水素あるいは炭素数6〜20の芳香族基を表す。
で表わされる芳香族ジカルボン酸誘導体の少なくとも1種を、
下記式(7)
0.8≦(h+i)/j≦1.2 (7)
hは上記式(Q)で表される芳香族アミン誘導体、iは上記式(R)で表される芳香族アミン誘導体、jは上記式(S)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体の各仕込みモル数である。
を同時に満足するモル割合で仕込み、さらにカーボンナノチューブ(N)を加えて反応を行ない、得られた反応物を有機溶媒に溶かしカーボンナノチューブ成分をろ過、単離することで得ることができる。
上記式(Q)、(R)、(S)におけるAr、Arは、それぞれ全芳香族アゾールの組成に関して説明したAr、Arと同じであり、また、式(S)におけるR12、R13は各々独立に、水素あるいは炭素数6〜20の1価の芳香族基を表わし、芳香族機の具体例はフェニレン基、ナフタレン基、ビフェニレン基、イソプロピリデンジフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルスルフィド基、ジフェニルスルホン基、ジフェニルケトン基等である。これらの芳香族基の水素原子のうち1つまたは複数が各々独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等で置換されていてもよい。
各モノマー(反応成分)のモル数が下記数式(7)
0.8≦(h+i)/j≦1.2 (7)
hは上記式(Q)で表される芳香族アミン誘導体、iは上記式(R)で表される芳香族アミン誘導体、jは上記式(S)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体の各仕込みモル数である。
を同時に満たすことが好ましい(h+i)/jが0.8より小さい場合や1.2より大きい場合には、重合度の十分なポリマーを得ることが困難である場合がある。(h+i)/jの下限としては、0.9以上が適当であり、より好ましくは0.93以上、さらに好ましくは0.95以上である。また、(h+i)/jの上限としては、1.1以下が適当であり、より好ましくは1.07以下、さらに好ましくは1.05以下である。従って、本発明における(h+i)/jの最適範囲は0.95≦(h+i)/j≦1.05ということができる。
(Q)、(R)はそれぞれ単独で用いても、併用してもよく、(Q):(R)のモル比は0:100〜100:0の任意の比率で適宜選択できる。
反応は、溶媒中で行う反応、無溶媒の加熱溶融反応のいずれも採用できるが、例えば、後述する反応溶媒中で攪拌下に加熱反応させるのが好ましい。反応温度は、50℃から500℃が好ましく、100℃から350℃がさらに好ましい。50℃より温度が低いと反応が進まず、500℃より温度が高いとあるいは分解等の副反応が起こりやすくなるためである。反応時間は温度条件にもよるが、通常は1時間から数十時間である。反応は加圧下から減圧下で行うことができる。
反応は、通常、無触媒でも進行するが、必要に応じてエステル交換触媒を用いてもよい。本発明で用いるエステル交換触媒としては三酸化アンチモンといったアンチモン化合物、酢酸第一錫、オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジアセテートといった錫化合物、酢酸カルシウムのようなアルカリ土類金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属塩等、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸を例示することができる。また、反応時には酸化防止剤等の各種添加剤を併用することが好ましい。
本発明の全芳香族アゾールで被覆されたカーボンナノチューブにおいては重合原料である上記の(Q)、(R)、(S)に反応前にあらかじめカーボンナノチューブ(N)を下記式(8)
0.001≦(n)/(m)≦100 (8)
mは芳香族アミン誘導体成分(h)、(i)、および芳香族ジカルボン酸誘導体成分(j)の重量部の総和を示し、(n)はカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加え反応を行うことが好ましい。
ここでいうカーボンナノチューブ(N)は先にのべたものと同義である。
上記重量比(n)/(m)が0.001より小さいと、ポリマー中からのカーボンナノチューブ成分の単離が困難となることがある。また、重量比(n)/(m)が100より大きいと、カーボンナノチューブのポリマーの被覆が十分でなく好ましくない。本発明者らの研究では、上記式(8)において、本発明者らの研究では、上記式(3)において、0.01≦(n)/(x)≦10の範囲が好ましく、0.01≦(n)/(x)≦1.0の範囲が特に好ましい。
(マトリックスとなる全芳香族縮合系高分子と芳香族縮合系高分子により被覆されたカーボンナノチューブとからなる組成物)
また本発明は全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、芳香族ポリカーボネート、半芳香族ポリエステル、および全芳香族アゾールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族縮合系高分子100重量部と、上記に記載の芳香族縮合系高分子により被覆されたカーボンナノチューブ0.01〜100重量部とからなる芳香族縮合系高分子組成物である。芳香族縮合系高分子100重量部に対して、被覆されたカーボンナノチューブが好ましくは0.1〜60重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。被覆されたカーボンナノチューブが0.01重量部未満だと機械特性の向上の効果が観察されにくく、100重量部より上のものは成形が困難となる。
該芳香族縮合系高分子組成物は被覆されたカーボンナノチューブが樹脂への分散性に優れていることから、強度、弾性率に優れている。
なかでもカーボンナノチューブの被覆に用いられる芳香族縮合系高分子、および組成物のマトリックスとなる芳香族縮合系高分子が下記式(A)及び(B)
−NH−Ar−NH− (A)
−OC−Ar−CO− (B)
Ar,Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。
からなり、
下記式(1)
0.8≦a/b≦4/3 (1)
aは式(A)で表される芳香族ジアミンの繰り返し単位のモル数であり、bは式(B)で表される芳香族ジカルボン酸の繰り返し単位のモル数である。
を満足する全芳香族ポリアミドであることが好ましい。
(成形体)
上記のように得られた該芳香族縮合系高分子組成物から繊維やフィルムなどの成形体を得ることができる。成形体中でカーボンナノチューブが成形体の長手方向または面内に配向していることにより機械特性に優れた成形品を得ることができる。
すなわち本発明は全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、芳香族ポリカーボネート、半芳香族ポリエステル、および全芳香族アゾールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族縮合系高分子100重量部と、上記に記載の芳香族縮合系高分子により被覆されたカーボンナノチューブ0.01〜100重量部とからなる組成物からなり、下記式(11)

式中φはX線回折測定における方位角、Iはグラファイトの002回折強度である。
にて求められるカーボンナノチューブの配向係数Fが0.1以上であることを特徴とする成形体の長手方向または面内にカーボンナノチューブが配向した成形体である。さらに好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上である。Fの値は高ければ高いほど好ましいが、多層カーボンナノチューブが完全配向した場合の理論上の上限値は1.0である。
また本発明は全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、芳香族ポリカーボネート、半芳香族ポリエステル、および全芳香族アゾールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族縮合系高分子100重量部と、上記に記載の芳香族縮合系高分子により被覆されたカーボンナノチューブ0.01〜100重量部とからなる組成物からなり、下記式(12)
P=IYY/IXX (12)
式中、偏光ラマン分光測定でのカーボンナノチューブ由来のラマンスペクトルにおいて、レーザー偏光面を成形体の長手方向と平行、または面と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX、レーザー偏光面を成形体の長手方向と垂直、または面と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。
で表されるカーボンナノチューブの配向度Pが0以上0.7以下であることを特徴とする成形体の長手方向にカーボンナノチューブが配向した成形体である。
成形体としては繊維やフィルムが好適に提供できる。
なかでもカーボンナノチューブの被覆に用いられる芳香族縮合系高分子、および組成物のマトリックスとなる芳香族縮合系高分子が下記式(A)及び(B)
−NH−Ar−NH− (A)
−OC−Ar−CO− (B)
Ar,Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。
からなり、
下記式(1)
0.8≦a/b≦4/3 (1)
aは式(A)で表される芳香族ジアミンの繰り返し単位のモル数であり、bは式(B)で表される芳香族ジカルボン酸の繰り返し単位のモル数である。
を満足する全芳香族ポリアミドであることが好ましい。
【実施例】
以下、実施例により本発明方法をさらに詳しく具体的に説明する。ただしこれらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(1)遠心分離:MILLIPORE社製パーソナル遠心機チビタンを用いて行った。
(2)平均粒径の測定
分散溶媒中のカーボンナノチューブの平均粒径は日機装社製マイクロトラックMT3000を用い、光散乱法にて測定した。なお未処理品の平均粒径は測定前にN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPということがある)中で1分間超音波処理を行い、測定した。
(3)カーボンナノチューブの平均直径、平均アスペクト比
TEM(Transmission Electron Microscopy)写真を日立製作所 H−800を用いて測定し、縦7.5μmx横9μm(20000倍)中で観察することができるすべてのカーボンナノチューブの直径および長さを測定し、その直径の平均値をカーボンナノチューブの平均直径、各カーボンナノチューブのアスペクト比の平均を平均アスペクト比とした。
(4)カーボンナノチューブを被覆する芳香族縮合系高分子の量
芳香族縮合系高分子で被覆されたカーボンナノチューブをリガク社製示差熱走査熱量天秤、TG−8120を用いAir中、昇温速度10℃/minで1500℃まで加熱し芳香族縮合系高分子とカーボンナノチューブの分解に由来する重量減少の比から求めた値である。
(5)機械特性:オリエンテック株式会社製テンシロン万能試験機1225Aにより引っ張り試験を行い、ヤング率および引っ張り強度を求めた。
(6)X線回折測定:X線発生装置(理学電機社製RU−B型)はターゲットCuKα線、電圧45kV、電流70mAの条件にて測定した。入射X線はオスミック社製多層膜ミラーにより集光及び単色化して、試料の断面を垂直透過法で測定した。回折X線の検出は大きさ200mm×250mmのイメージングプレート(富士写真フィルム製)を用い、カメラ長250mmの条件で測定した。
(7)偏向ラマン分光測定:ラマン分光装置は,顕微レーザーラマン分光測定装置(堀場ジョバンイボン製LabRamHR)を用いた。励起レーザー光源として波長785nmの半導体レーザーを用い,レーザービーム径は約1μmに集光した。かかる装置を使い、以下のようにして偏光ラマン分光測定を行なった。入射レーザーを繊維組成物の側面に繊維軸と直交方向から照射してカーボンナノチューブのラマンスペクトルを測定する際、レーザー偏光面を繊維軸と平行に配置した場合のラマンシフト波数1580cm−1付近のグラファイト構造由来のGバンド強度(IXX),レーザー偏光面を繊維軸と垂直に配置した場合のGバンド強度(IYY)を測定した。
参考例1:単層カーボンナノチューブの合成
多孔性担体にY型ゼオライト粉末(東ソー製;HSZ−320NAA)を用い、触媒金属化合物に酢酸第二鉄と酢酸コバルトを用いて、Fe/Co触媒をゼオライトに担持した。触媒の担持量はそれぞれ2.5重量%に調製した。その後、石英ボートに触媒粉末を乗せてCVD装置の石英管内に設置して真空排気をおこない、流量10mL/分でArガスを導入しながら室温から800℃まで昇温した。所定の800℃に達した後、エタノール蒸気を流量3000mL/分で導入し、Ar/エタノール雰囲気下で30分間保持した。得られた黒色の生成物をレーザーラマン分光法および透過型電子顕微鏡で分析した結果、単層カーボンナノチューブが生成していることが確認された。ついで、得られた生成物(単層カーボンナノチューブ/ゼオライト/金属触媒)を、フッ化水素酸10%に3時間浸漬後、中性になるまでイオン交換水で洗浄することでゼオライトおよび金属触媒を除去してカーボンナノチューブを精製した。得られたカーボンナノチューブをTEMにて観察したところ、平均直径は1.2nm、平均アスペクト比は100以上であった。ただし多くが幅約10nmほどのバンドル構造をとっていた。
参考例2:多層カーボンナノチューブの合成
CVD装置における反応温度を600℃とした以外は参考例2と同様にして反を行ったところ多層カーボンナノチューブが生成していることを確認した。参考例2と同様にして精製してゼオライトおよび金属触媒を除去した後、電気焼成炉(倉田技研(株)製、SCC−U−90/150)を用いて黒鉛化処理を行った。まず真空下室温から1000℃まで30分かけて昇温し、次いでアルゴン雰囲気下、圧力5atmで1000℃から2000℃まで30分で昇温、さらに2000℃から2800℃まで1時間かけて昇温して焼成することにより、黒鉛化処理された多層カーボンナノチューブを得た。得られたカーボンナノチューブをTEMで観察したところ、平均直径が58nm、平均アスペクト比が36であった。
参考例3:カーボンナノチューブの酸処理
参考例1で得られたカーボンナノチューブ1重量部に硫酸30重量部を加えた後、硝酸10重量部をゆっくりと滴化した。滴下が終了した後、70℃の温水浴中で28kHzの超音波にて1時間処理した。反応終了後の溶液を100重量部の水に加え希釈し孔径0.22μmのテフロン製メンブレンフィルターにて吸引ろ過及び水にて水洗し単離した。
参考例4:カーボンナノチューブのフェニルエステル化
参考例3にて得られた酸処理されたカーボンナノチューブ0.1重量部に0.5重量部のフェノールを加え乳鉢にて10分間約60℃で処理したのちに70℃の温水浴中で28kHzの超音波にて10分間処理し、これにジフェニルカーボネート10重量部、ジメチルアミノピリジン0.0061重量部を加え、常圧下200℃で反応を開始した。30分後常圧のまま220℃に昇温し、系内を徐々に減圧した。反応開始から3時間後さらに、昇温、減圧し、反応開始から5時間後、系内の最終到達温度を320℃、真空度を約0.5mmHg(66.7Pa)とし反応により生成したフェノール及びジフェニルカーボネートを系外へゆっくりと除去した。反応終了後残留物にジクロロメタンを加え孔径0.22μmのテフロン製メンブレンフィルターにて吸引ろ過することで残留したフェノール及びジフェニルカーボネートを除去し0.55重量部のカーボンナノチューブを単離した。
参考例5:カーボンナノチューブの物理処理
参考例1にて得られたカーボンナノチューブ0.909重量部をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)300重量部に加えNETZSCH社製ビーズミル、MINI ZETA(エアー)を用いジルコニウム製の0.8mm径のビーズを使用し2500rmpにて1時間処理しカーボンナノチューブの分散液を得た。
参考例6:
参考例2で得られたカーボンナノチューブを用いる他は参考例3と同様にして酸処理された多層カーボンナノチューブを得た。
参考例7:
参考例6で得られたカーボンナノチューブを用いる他は参考例4と同様にしてフェニルエステル化された多層カーボンナノチューブを得た。
参考例8:
参考例2で得られたカーボンナノチューブ4.680重量部を用いる他は参考例5と同様にして多層カーボンナノチューブの分散液を得た。
参考例9:
昭和電工製社製カーボンナノチューブVGCFを用いる他は参考例3と同様にして酸処理された多層カーボンナノチューブを得た。
参考例10:
参考例9にて得られたカーボンナノチューブを用いる他は参考例4と同様にしてフェニルエステル化された多層カーボンナノチューブを得た。
参考例11:
昭和電工製社製カーボンナノチューブVGCFを4.680を重量部用いる他は参考例5と同様にして多層カーボンナノチューブの分散液を得た。
参考例12:ポリマードープの作成例
十分に乾燥した攪拌装置付きの三口フラスコにN−メチルピロリドン1717.38重量部p−フェニレンジアミン18.82重量部及び3、4’−ジアミノフェニルエーテル34.84重量部を常温下で添加し窒素中で溶解した後、攪拌しながらテレフタル酸ジクロリド70.08重量部を添加した。最終的に80℃、60分反応させたところに水酸化カルシウム12.85重量部を添加し中和反応を行った。得られたポリマードープを水にて再沈殿することにより析出させたポリマーの特有粘度は3.5(dl/g)であった。
参考例13:アミン末端の多い全芳香族ポリアミドの作成例
十分に乾燥した攪拌装置付きの三口フラスコにN−メチルピロリドン1717.38重量部p−フェニレンジアミン18.82重量部及び3、4’−ジアミノフェニルエーテル34.84重量部を常温下で添加し窒素中で溶解した後、攪拌しながらテレフタル酸ジクロリド63.07重量部を添加した。最終的に80℃、60分反応させたところに水酸化カルシウム11.57重量部を添加し中和反応を行いアミン末端の多い全芳香族ポリアミド溶液を得た。得られたポリマードープを水にて再沈殿することにより析出させたポリマーの特有粘度は0.32(dl/g)であった。
参考例14:アミン末端の多い全芳香族ポリアミドの作成例
十分に乾燥した攪拌装置付きの三口フラスコにN−メチルピロリドン1717.38重量3、4’−ジアミノフェニルエーテル69.68重量部を常温下で添加し窒素中で溶解した後、攪拌しながらテレフタル酸ジクロリド63.07重量部を添加した。最終的に80℃、60分反応させたところに水酸化カルシウム11.57重量部を添加し中和反応を行いアミン末端の多い全芳香族ポリアミド溶液を得た。得られたポリマードープを水にて再沈殿することにより析出させたポリマーの特有粘度は0.28(dl/g)であった。
【実施例1】
十分に乾燥した攪拌装置付きの三口フラスコにN−メチルピロリドン500重量部、塩化カルシウム20重量部、p−フェニレンジアミン3.406重量部及び参考例3で得られた酸処理後の単層カーボンナノチューブ0.5重量部を常温下で添加し窒素中で溶解した後、攪拌しながらテレフタル酸ジクロリド6.395重量部を添加した。最終的に80℃、60分反応させたところに水酸化カルシウム2.3重量部を添加し中和反応を行った。得られたポリマードープを孔径0.22μmのテフロン製メンブレンフィルターにて吸引ろ過洗浄し全芳香族ポリアミドにて被覆されたカーボンナノチューブ0.55重量部を単離した。
示差熱走査熱量天秤による測定結果カーボンナノチューブを被覆した全芳香族ポリアミドの量は19.3wt%であった。
【実施例2】
参考例4で得られたフェニルエステル化された単層カーボンナノチューブ0.52重量部を40重量部のNMP中に加え1.337重量部のテレフタル酸ジフェニル、0.454重量部のパラフェニレンジアミンを加え、200℃にて3時間過熱攪拌した。反応後得られたポリマードープを孔径0.22μmのテフロン製メンブレンフィルターにて吸引ろ過洗浄し全芳香族ポリアミドにて被覆されたカーボンナノチューブ0.58重量部を単離した。示差熱走査熱量天秤による測定結果カーボンナノチューブを被覆した全芳香族ポリアミドの量は22.3wt%であった。
【実施例3】
パラフェニレンジアミンを0.227重量部、3、4‘−ジアミノジフェニルエーテルを0.421重量部用いたほかは実施例2と同様の操作を行った。このようにして得られたカーボンナノチューブ0.1重量部を100重量部のNMPに超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ得られた沈殿物は0.02重量部であった。
【実施例4】
参考例5で得られたカーボンナノチューブのNMP分散液244重量部を200℃で1時間加熱し分散液中に含まれる水分を十分除去したのち0.703重量部のパラフェニレンジアミン、1.330重量部の3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを加え0℃で28kHzの超音波処理を行いアミンの溶解後テレフタル酸ジクロリド2.639重量部加え0℃、28kHzの超音波処理を加えながら60分反応を継続し最終的に80℃、60分同様の超音波条件下反応させたところに水酸化カルシウム0.48重量部を添加し中和反応を行った。得られたポリマードープを孔径0.22μmのテフロン製メンブレンフィルターにて吸引ろ過洗浄し全芳香族ポリアミドにて被覆されたカーボンナノチューブ3.91重量部を単離した。
このようにして得られたカーボンナノチューブ0.1重量部を100重量部のNMPに超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ得られた沈殿物は0.01重量部であった。示差熱走査熱量天秤による測定結果カーボンナノチューブを被覆した全芳香族ポリアミドの量は24.5wt%であった。
【実施例5】
参考例13で重合したアミン末端の多い全芳香族ポリアミド溶液200重量部をとり、1000重量部のNMPで希釈して均一な1wt%アミン末端の多い全芳香族ポリアミド溶液を作製した。上記のポリマー溶液に参考例6で得られたカーボンナノチューブ2重量部を添加して、超音波分散させ、さらに100℃で24時間攪拌反応を行った。得られた反応液をNMPで希釈して、0.2μフィルターでろ過、NMP洗浄を3回繰り返し、最後にアルコールで洗浄して減圧乾燥し、アミン末端の多い全芳香族ポリアミドで被覆されたカーボンナノチューブ2.52重量部を得た。このようにして得られたカーボンナノチューブ0.1重量部を100重量部のNMPに超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ得られた沈殿物は0.008重量部であった。示差熱走査熱量天秤による測定結果カーボンナノチューブを被覆した全芳香族ポリアミドの量は26.0wt%であった。
【実施例6】
参考例14で重合したアミン末端の多い全芳香族ポリアミド溶液200重量部をとり、1000重量部のNMPで希釈して均一な1wt%アミン末端の多い全芳香族ポリアミド溶液を作製した。上記のポリマー溶液に参考例6で得られたカーボンナノチューブ2重量部を添加して、超音波分散させ、さらに100℃で24時間攪拌反応を行った。得られた反応液をNMPで希釈して、0.2μフィルターでろ過、NMP洗浄を3回繰り返し、最後にアルコールで洗浄して減圧乾燥し、アミン末端の多い全芳香族ポリアミドで被覆されたカーボンナノチューブ2.52重量部を得た。このようにして得られたカーボンナノチューブ0.1重量部を100重量部のNMPに超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ得られた沈殿物は0.006重量部であった。示差熱走査熱量天秤による測定結果カーボンナノチューブを被覆した全芳香族ポリアミドの量は24.5wt%であった。
【実施例7】
参考例6のカーボンナノチューブを用いたほかは実施例1と同様の操作を行い得られたカーボンナノチューブ0.1重量部を100重量部の98%硫酸中に超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ得られた沈殿物は0.02重量部であった。示差熱走査熱量天秤による測定結果カーボンナノチューブを被覆した全芳香族ポリアミドの量は21.1wt%であった。
【実施例8】
参考例7のカーボンナノチューブを用いたほかは実施例2と同様の操作を行い、実施例7と同様に硫酸溶媒への分散を評価した。
【実施例9】
参考例7のカーボンナノチューブを用いたほかは実施例3と同様の操作を行った。
【実施例10】
参考例8のカーボンナノチューブを用いたほかは実施例4と同様の操作を行った。
【実施例11】
参考例9のカーボンナノチューブを用いたほかは実施例1と同様の操作を行った。
【実施例12】
参考例10のカーボンナノチューブを用いたほかは実施例2と同様の操作を行った。
【実施例13】
参考例10のカーボンナノチューブを用いたほかは実施例3と同様の操作を行った。
【実施例14】
参考例11のカーボンナノチューブを用いたほかは実施例4と同様の操作を行った。
実施例1〜14の各結果を表1に示す。

【実施例15】
NMP(N−メチル−2−ピロリドン)300重量部に実施例1にて得られた全芳香族ポリアミドにて被覆されたカーボンナノチューブ0.909重量部を加え28kHzの超音波にて1時間処理した。このNMP溶液を参考例12にて得られたポリマーのNMPドープ1500重量部に加え90℃で1時間攪拌し均一なポリマードープにした。このようにして得られたポリマードープを孔径0.3mm、孔数5個のキャップを用いドープ温度を80℃に保ち、NMP30重量%の水溶液である56℃の凝固浴中に押し出した。キャップ面と凝固浴面との距離は10mmとした。紡糸した繊維は50℃で水洗、120℃で乾燥しフィラメントを得た。得られたフィラメントを500℃の熱板上で延伸倍率10倍で延伸し、延伸フィラメントを得た。物性データの測定結果を表2に示す。
【実施例16】
実施例3で得られたカーボンナノチューブを用いたほかは実施例15と同様の操作を行った。
【実施例17】
参考例5で得られたカーボンナノチューブのNMP分散液300重量部を200℃で1時間加熱し分散液中に含まれる水分を十分除去したのち0.168重量部のパラフェニレンジアミン、0.318重量部の3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを加え0℃で28kHzの超音波処理を行いアミンの溶解後テレフタル酸ジクロリド0.630重量部加え0℃、28kHzの超音波処理を加えながら60分反応を継続し最終的に80℃、60分同様の超音波条件下反応させたところに水酸化カルシウム0.115重量部を添加し中和反応を行った。
このようにして得られたポリマードープを、参考例12にて得られたポリマーのNMPドープ1500重量部に加え90℃で1時間攪拌し均一なポリマードープにした。このようにして得られたポリマードープを実施例15と同様の手順にて紡糸しフィラメントを得た。
【実施例18】
実施例7で得られたカーボンナノチューブを4.680重量部用いたほかは実施例15と同様の操作を行った。
【実施例19】
実施例3で得られたカーボンナノチューブを4.680重量部用いたほかは実施例18と同様の操作を行った。
【実施例20】
参考例5で得られたカーボンナノチューブのNMP分散液300重量部を200℃で1時間加熱し分散液中に含まれる水分を十分除去したのち0.864重量部のパラフェニレンジアミン、1.635重量部の3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを加え0℃で28kHzの超音波処理を行いアミンの溶解後テレフタル酸ジクロリド3.245重量部加え0℃、28kHzの超音波処理を加えながら60分反応を継続し最終的に80℃、60分同様の超音波条件下反応させたところに水酸化カルシウム0.59重量部を添加し中和反応を行った。
このようにして得られたポリマードープを、参考例12にて得られたポリマーのNMPドープ1500重量部に加え90℃で1時間攪拌し均一なポリマードープにした。このようにして得られたポリマードープを実施例15と同様の手順にて紡糸しフィラメントを得た。
【実施例21】
実施例11で得られたカーボンナノチューブを4.680重量部を用いたほかは実施例15と同様の操作を行った。
【実施例22】
実施例13で得られたカーボンナノチューブを4.680重量部用いたほかは実施例15と同様の操作を行った。
【実施例23】
参考例11で得られたカーボンナノチューブのNMP分散液を用いたほかは実施例20と同様の操作を行った。
実施例15〜23の各物性データの測定結果を表2に示す。

【実施例24】
昭和電工社製カーボンナノチューブVGCF9.360重量部をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)300重量部に加えNETZSCH社製ビーズミル、MINI ZETA(エアー)を用いジルコニウム製の0.8mm径のビーズを使用し2500rmpにて1時間処理しカーボンナノチューブの分散液を得た。このようにして得られたカーボンナノチューブのNMP分散液300重量部を200℃で1時間加熱し分散液中に含まれる水分を十分除去したのち1.728重量部のパラフェニレンジアミン、3.270重量部の3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを加え0℃で28kHzの超音波処理を行いアミンの溶解後テレフタル酸ジクロリド6.490重量部加え0℃、28kHzの超音波処理を加えながら60分反応を継続し最終的に80℃、60分同様の超音波条件下反応させたところに水酸化カルシウム1.18重量部を添加し中和反応を行った。
このようにして得られたポリマードープを、参考例12にて得られたポリマーのNMPドープ1500重量部に加え90℃で1時間攪拌し均一なポリマードープにした。このようにして得られたポリマードープを実施例15と同様の手順にて紡糸しフィラメントを得た。
【実施例25】
2,2‘−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)25.08重量部、ジフェニルカーボネート23.54重量部、参考例6にて得られた多層カーボンナノチューブ0.5重量部、ビスフェノールAジナトリウム塩0.014重量部、ジメチルアミノピリジン0.061重量部を攪拌装置、減圧装置および蒸留塔等を具備した反応装置に仕込み、180℃、N雰囲気下、30分間攪拌し溶解した。
次いで同温度で100mmHgの減圧下、1時間フェノールを溜去しつつ反応させた。さらに200℃に昇温しつつ、30mmHgに減圧し、同温度、同圧力で1時間反応せしめた。さらに反応系を280℃に昇温し、0.5mmHg(66.7Pa)に減圧し、同条件下にて0.3時間重合を行い、カーボンナノチューブを含有する芳香族ポリカーボネートを得た。
続いてこの芳香族ポリカーボネート20重量部にジクロロメタン2000重量部を加え芳香族ポリカーボネートを溶かし孔径0.22μmのテフロン製メンブレンフィルターにて吸引ろ過洗浄し芳香族ポリカーボネートに被覆されたカーボンナノチューブを得た。このようにして得られたカーボンナノチューブ0.1重量部を100重量部のジクロロメタン中に超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ得られた沈殿物は0.03重量部であり、0.07重量部がジクロロメタン中に相溶していることが確認できた。またカーボンナノチューブを被覆した芳香族ポリカーボネートは23.3wt%であった。
【実施例26】
テレフタル酸5.81部、イソフタル酸2.49部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノールA)12.56部、ジフェニルカーボネート22.49部、参考例6にて得られた多層カーボンナノチューブ0.2重量部及び4−ジメチルアミノピリジン0.0061部を撹拌装置および窒素導入口を備えた真空留出系を有する反応容器に入れ、反応容器中を窒素雰囲気とした後、常圧下200℃で反応を開始した。30分後常圧のまま220℃に昇温し、同温度にてフェノールの留出を確認した後、系内を徐々に減圧した。反応開始から3時間後、原料が均一に溶解していることを確認した。
その後さらに、昇温、減圧し、反応開始から5時間後、系内の最終到達温度を320℃、真空度を約0.5mmHg(66.7Pa)とした。同条件下にて0.3時間重合を行い、カーボンナノチューブを含有する芳香族ポリエステルカーボネート19重量部を得た。
続いてこの芳香族ポリエステルカーボネート19重量部にフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比60/40)2000重量部を加え芳香族ポリエステルカーボネートを溶かし孔径0.22μmのテフロン製メンブレンフィルターにて吸引ろ過洗浄し芳香族ポリエステルカーボネートに被覆されたカーボンナノチューブを得た。このようにして得られたカーボンナノチューブ0.1重量部を100重量部のジクロロメタン中に超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ得られた沈殿物は0.04重量部であり、0.06重量部がジクロロメタン中に相溶していることが確認できた。またカーボンナノチューブを被覆した芳香族ポリエステルカーボネートは32.5wt%であった。
【実施例27】
テレフタル酸5.81部、イソフタル酸2.49部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノールA)11.42部、ジフェニルカーボネート21.75部、を用いたほかは実施例26と同様の操作を行い全芳香族ポリエステルに被覆されたカーボンナノチューブを得た。このようにして得られたカーボンナノチューブ0.1重量部を100重量部のジクロロメタン中に超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ得られた沈殿物は0.05重量部であり、0.05重量部がジクロロメタン中に相溶していることが確認できた。またカーボンナノチューブを被覆した全芳香族ポリエステルは26.9wt%であった。
【実施例28】
参考例6で得られた3重量部の多層カーボンナノチューブを10重量部のエチレングリコール中でホモジナイザーにて1時間処理した分散液を40重量部のビスヒドロキシエチルテレフタレートに加え三酸化アンチモン0.014重量部を加え200℃にて反応を開始した。30分かけて270℃に昇温し、その後系内の圧力を常圧から0.3mmHgへ2時間かけて減圧し、最終的に270℃、0.3mmHgで30分反応を行い、カーボンナノチューブを含有するポリエチレンテレフタレートを得た。
続いてこのポリエチレンテレフタレート20重量部にフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比60/40)2000重量部を加えポリエチレンテレフタレートを溶かし孔径0.22μmのテフロン製メンブレンフィルターにて吸引ろ過し、ポリエチレンテレフタレートに被覆されたカーボンナノチューブを得た。
このようにして得られたカーボンナノチューブ0.1重量部を100重量部のフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比60/40)中に超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ、得られた沈殿物は0.02重量部であった。またカーボンナノチューブを被覆したポリエチレンテレフタレートは25.8wt%であった。
【実施例29】
ポリりん酸9.37重量部に4,6−ジアミノレゾルシノール2塩酸塩0.21306重量部を加え176mmHg、80℃にて24時間攪拌した。反応物を60℃に冷却し五酸化りん6.82重量部、テレフタル酸0.16613重量部、参考例6にて得られた多層カーボンナノチューブ0.23421重量部を加え100℃で2時間、140℃で18時間攪拌した。得られた反応体を100重量部の水に加え再沈殿させた。沈殿物を硫酸100重量部で3回洗い孔径0.22μmのテフロン製メンブレンフィルターにて吸引ろ過洗浄し全芳香族アゾールにて被覆されたカーボンナノチューブ0.21重量部を単離した。このようにして得られた被覆されたカーボンナノチューブ0.1重量部を100重量部の98%硫酸中に超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ得られた沈殿物は0.02重量部であり、0.08重量部のカーボンナノチューブは硫酸中に相溶化されていることが確認できた。100重量部のメタンスルホン酸中にて同様の処理を行ったところ得られた沈殿物は0.01重量部であり、0.09重量部のカーボンナノチューブはメタンスルホン酸中に相溶化されていることが確認できた。
また示差熱走査熱量天秤による測定結果カーボンナノチューブを被覆した全芳香族アゾールの量は8.39wt%であった。
比較例1
昭和電工製カーボンナノチューブ(VGCF)0.1重量部を100重量部の98%硫酸中に超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ得られた沈殿物は0.08重量部であり、0.02重量部が硫酸中に相溶していることが確認できた。
比較例2
昭和電工製カーボンナノチューブ(VGCF)0.1重量部を100重量部のNMPに超音波にて分散させ遠心加速度が51000m/sの遠心分離処理を1分間行ったところ得られた沈殿物は0.085重量部であり、0.015重量部がNMP中に相溶していることが確認できた。
比較例3
参考例12で得られたポリマードープを孔径0.3mm、孔数5個のキャップを用いドープ温度を80℃に保ち、NMP30重量%の水溶液である56℃の凝固浴中に押し出した。キャップ面と凝固浴面との距離は10mmとした。紡糸した繊維は50℃で水洗、120℃で乾燥した後500℃の熱板上で延伸倍率10倍で延伸し延伸フィラメントを得た。ヤング率60GPa、引っ張り強度18gf/deであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ100重量部に対して全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、芳香族ポリカーボネート、半芳香族ポリエステル、および全芳香族アゾールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族縮合系高分子0.01〜100重量部により被覆されたカーボンナノチューブ。
【請求項2】
芳香族縮合系高分子が下記式(A)及び(B)
−NH−Ar−NH− (A)
−OC−Ar−CO− (B)
Ar,Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。
からなり、
下記式(1)
0.8≦a/b≦4/3 (1)
aは式(A)で表される芳香族ジアミンの繰り返し単位のモル数であり、bは式(B)で表される芳香族ジカルボン酸の繰り返し単位のモル数である。
を満足する全芳香族ポリアミドである請求項1に記載の被覆されたカーボンナノチューブ。
【請求項3】
全芳香族ポリアミドが、Ar

及び/または

であり、Ar

である請求項2に記載の被覆されたカーボンナノチューブ。
【請求項4】
全芳香族ポリアミドが、Ar

及び

であり、Ar

である共重合体であって、その共重合比が1:0.8〜1:1.2である請求項2に記載の被覆されたカーボンナノチューブ。
【請求項5】
芳香族縮合系高分子が下記構成単位(C)およびまたは(D)

Arは置換されてもよい炭素数6〜20の芳香族基であり、R,Rは各々置換されてもよいフェニレン基であり、Yは下記式群(E)から選ばれる基を表す。

〜Rは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5または6のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基および炭素数6〜12のアラルキル基から選ばれる少なくとも1種の基である。qは4〜10の整数を示す。
からなる全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、芳香族ポリカーボネートのいずれか1種である請求項1に記載の被覆されたカーボンナノチューブ。
【請求項6】
芳香族縮合系高分子が芳香族ジカルボン酸成分、および脂肪族ジオール成分よりなる半芳香族ポリエステルである請求項1に記載の被覆されたカーボンナノチューブ。
【請求項7】
芳香族縮合系高分子が下記式(F)及びまたは(G)

、YはO、S、およびNHからなる群からそれぞれ独立に選ばれ、Arは炭素数6〜20の4価の芳香族基を表わし,Arは炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。
を満足する全芳香族アゾールである請求項1に記載の被覆されたカーボンナノチューブ。
【請求項8】
下記式(H)で表わされる芳香族ジアミンの少なくとも1種と、下記式(J)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルまたは下記式(K)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアシルハライドの少なくとも1種とを、
NH−Ar−NH (H)
−OC−Ar−CO−R10 (J)
OC−Ar−COX (K)
,R10は各々独立に炭素数6〜20の芳香族基を、Ar,Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基、X,Xはハロゲンを表す。
下記式(2)
0.8≦c/d≦4/3 (2)
cは上記式(H)で表される芳香族ジアミン、dは上記式(J)で表される芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルまたは上記式(K)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアシルハライドの各仕込みモル数である。
を同時に満足する割合で仕込み、さらにカーボンナノチューブ(N)を下記式(3)
0.001≦(n)/(x)≦100 (3)
xは芳香族ジアミン(J)、芳香族ジカルボン酸ジアリールエステル(K)、および芳香族ジカルボン酸ジアシルハライド(L)からなるモノマー成分の重量部の総和を示し、(n)はカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加え反応を行ない、次いで得られた反応物を有機溶媒または酸性溶媒に溶かしポリマーにより被覆されたカーボンナノチューブをろ過、単離する請求項2に記載の被覆されたカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項9】
下記式(H)で表わされる芳香族ジアミンの少なくとも1種と、下記式(J)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルまたは下記式(K)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアシルハライドの少なくとも1種とを、
NH−Ar−NH (H)
−OC−Ar−CO−R10 (J)
OC−Ar−COX (K)
,R10は各々独立に炭素数6〜20の芳香族基を、Ar,Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基、X,Xはハロゲンを表す。
下記式(2)’
1<c/d≦4/3 (2)’
cは上記式(H)で表される芳香族ジアミン、dは上記式(J)で表される芳香族ジカルボン酸ジアリールエステルまたは上記式(K)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジアシルハライドの各仕込みモル数である。
を同時に満足する割合で仕込んで反応を行い、アミン末端がカルボン酸誘導体からなる末端に比べて多い全芳香族ポリアミドを合成した後、さらにpH0.01〜2の酸性溶液中で表面処理を行い得られたカーボンナノチューブ(N)を下記式(3)
0.001≦(n)/(x)≦100 (3)
アミン末端全芳香族ポリアミドの重量部を示し、(n)はカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加え反応を行い、次いで得られた反応物を有機溶媒または酸性溶媒に溶かしポリマーにより被覆されたカーボンナノチューブをろ過、単離する請求項2に記載の被覆されたカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項10】
下記式(L)
HOOC−Ar−COOH (L)
Arは上記式(C)における定義と同じである。
で示される芳香族ジカルボン酸成分と、下記式(O)
HO−R−Y−R−OH (O)
、R、Yは上記式(C)、(D)における定義と同じである。
で示される芳香族ジオール成分、および(P)

2つのR11は、それぞれ、互いに同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、エステル基、あるいは炭素数1〜6のアルキル基から選ばれる。
で表されるジアリールカーボネートを下記式(4)、および(5)
0≦e/f≦1.05 (4)
0.9≦g/(e+f)≦1.1 (5)
eは芳香族ジカルボン酸成分、fはジオール成分、gはジアリールカーボネートの各モル数である。
を同時に満足するモル割合で仕込み、さらにカーボンナノチューブ(N)を下記式(6)
0.001≦(n)/(m)≦100 (6)
mは芳香族ジカルボン酸成分(e)、ジオール成分(f)、ジアリールカーボネート(g)であるモノマー成分の重量部の総和を示し、(n)はカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加えて反応を行い、次いで得られた反応物を有機溶媒に溶かし、ポリマーにより被覆されたカーボンナノチューブをろ過、分離する事により得られる請求項5に記載の被覆されたカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項11】
芳香族ジカルボン酸成分と、脂肪族ジオール成分とを下記式(7)
0.8≦e’/f’≦1.2 (7)
e’は芳香族ジカルボン酸成分、f’はジオール成分の各モル数である。
を満足するモル割合で仕込み、さらにカーボンナノチューブ(N)を下記式(8)
0.001≦(n)/(m)≦100 (8)
mは芳香族ジカルボン酸成分(e)、ジオール成分(f)であるモノマー成分の重量部の総和を示し、(n)はカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加えて反応を行い、次いで得られた反応物を有機溶媒に溶かし、ポリマーにより被覆されたカーボンナノチューブをろ過、分離する事により得られる請求項6に記載の被覆されたカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項12】
下記式(Q)、(R)

、YはO、S、およびNHからなる群からそれぞれ独立に選ばれ、Arは炭素数6〜20の4価の芳香族基を表わし、また(Q)、(R)は塩酸塩でも構わない。
で表わされる芳香族アミン誘導体およびその塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種と、下記式(S)
12−OC−Ar−CO−R13 (S)
Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わし、R12、R13は各々独立に水素あるいは炭素数6〜20の芳香族基を表す。
で表わされる芳香族ジカルボン酸誘導体の少なくとも1種を、下記式(9)
0.8≦(h+i)/j≦1.2 (9)
hは上記式(Q)で表される芳香族アミン誘導体、iは上記式(R)で表される芳香族アミン誘導体、jは上記式(S)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体の各仕込みモル数である。
を同時に満足するモル割合で仕込み、さらにカーボンナノチューブ(N)を下記式(10)
0.001≦(n)/(m)≦100 (10)
mは芳香族アミン誘導体成分(h)、(i)、および芳香族ジカルボン酸誘導体成分(j)の重量部の総和を示し、(n)はカーボンナノチューブ(N)の重量部を示す。
を満足する割合で加えて反応を行ない、得られた反応物を有機溶媒に溶かしカーボンナノチューブ成分をろ過、単離する請求項7に記載の被覆されたカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項13】
pH0.01〜2の酸性溶液中で表面処理を行い得られたカーボンナノチューブを用いる事を特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の被覆されたカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項14】
ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等の物理処理によりカーボンナノチューブを溶媒中に分散させ調整したカーボンナノチューブ分散液にモノマーを仕込んで反応させることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の被覆されたカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項15】
平均粒径が0.01〜5μmであるカーボンナノチューブを用いる事を特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の被覆されたカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項16】
平均直径が0.03〜200nmであるカーボンナノチューブを用いる事を特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の被覆されたカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項17】
全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、芳香族ポリカーボネート、半芳香族ポリエステル、および全芳香族アゾールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族縮合系高分子100重量部と、請求項1に記載の被覆されたカーボンナノチューブ0.01〜100重量部とからなる芳香族縮合系高分子組成物。
【請求項18】
カーボンナノチューブの被覆に用いられる芳香族縮合系高分子、および組成物のマトリックスとなる芳香族縮合系高分子が下記式(A)及び(B)
−NH−Ar−NH− (A)
−OC−Ar−CO− (B)
Ar,Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。
からなり、
下記式(1)
0.8≦a/b≦4/3 (1)
aは式(A)で表される芳香族ジアミンの繰り返し単位のモル数であり、bは式(B)で表される芳香族ジカルボン酸の繰り返し単位のモル数である。
を満足する全芳香族ポリアミドである請求項17に記載の芳香族縮合系高分子組成物。
【請求項19】
全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、芳香族ポリカーボネート、半芳香族ポリエステル、および全芳香族アゾールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族縮合系高分子100重量部と、請求項1に記載の芳香族縮合系高分子により被覆されたカーボンナノチューブ0.01〜100重量部とからなる組成物からなる成形体であって、下記式(11)

式中φはX線回折測定における方位角、Iはグラファイトの002回折強度である。
にて求められるカーボンナノチューブの配向係数Fが0.1以上であることを特徴とする成形体の長手方向または面内にカーボンナノチューブが配向した成形体。
【請求項20】
全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、芳香族ポリカーボネート、半芳香族ポリエステル、および全芳香族アゾールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族縮合系高分子100重量部と、請求項1に記載の被覆されたカーボンナノチューブ0.01〜100重量部とからなる組成物からなる成形体であって、下記式(12)
P=IYY/IXX (12)
式中、偏光ラマン分光測定でのカーボンナノチューブ由来のラマンスペクトルにおいて、レーザー偏光面を成形体の長手方向と平行、または面と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX、レーザー偏光面を成形体の長手方向と垂直、または面と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。
で表されるカーボンナノチューブの配向度Pが0以上0.7以下であることを特徴とする成形体の長手方向にカーボンナノチューブが配向した成形体。
【請求項21】
カーボンナノチューブの被覆に用いられる芳香族縮合系高分子、および組成物のマトリックスとなる芳香族縮合系高分子が下記式(A)及び(B)
−NH−Ar−NH− (A)
−OC−Ar−CO− (B)
Ar,Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。
からなり、
下記式(1)
0.8≦a/b≦4/3 (1)
aは式(A)で表される芳香族ジアミンの繰り返し単位のモル数であり、bは式(B)で表される芳香族ジカルボン酸の繰り返し単位のモル数である。
を満足する全芳香族ポリアミドである請求項19または20に記載の成形体。
【請求項22】
成形体が繊維である請求項19または20に記載の成形体。
【請求項23】
成形体がフィルムである請求項19または20に記載の成形体。

【国際公開番号】WO2004/065496
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508067(P2005−508067)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000363
【国際出願日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】