苗移植機
【課題】
畦際作業の際に、線引きマーカが一側に連続して作動し、畦や圃場に植え付けた苗に線引きマーカが接触することを防止可能な苗移植機を提供する。
【解決手段】
畦際での植付作業を検知する畦際検知部材76を設け、畦際検知部材76が畦際での植付作業を検知すると、苗植付部4を昇降させてもマーカ切替装置72の線引きマーカ68の作動方向を切り替えない構成とすると共に、畦際検知部材76が畦際での植付作業を検知すると線引きマーカ68の昇降回数を記憶する作動回数検知部材77を設け、作動回数検知部材77の検知回数が所定回数未満であるときは苗植付部4を昇降させてもマーカ切替装置72の作動方向を切り替えない構成とすると共に、作動回数検知部材77の検知回数が所定回数以上になると線引きマーカ68が圃場に線を形成しないようにマーカ切替装置72の作動を停止する構成とする。
畦際作業の際に、線引きマーカが一側に連続して作動し、畦や圃場に植え付けた苗に線引きマーカが接触することを防止可能な苗移植機を提供する。
【解決手段】
畦際での植付作業を検知する畦際検知部材76を設け、畦際検知部材76が畦際での植付作業を検知すると、苗植付部4を昇降させてもマーカ切替装置72の線引きマーカ68の作動方向を切り替えない構成とすると共に、畦際検知部材76が畦際での植付作業を検知すると線引きマーカ68の昇降回数を記憶する作動回数検知部材77を設け、作動回数検知部材77の検知回数が所定回数未満であるときは苗植付部4を昇降させてもマーカ切替装置72の作動方向を切り替えない構成とすると共に、作動回数検知部材77の検知回数が所定回数以上になると線引きマーカ68が圃場に線を形成しないようにマーカ切替装置72の作動を停止する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田圃場に苗を移植する、苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の苗移植機には、圃場に直進の目安となる線を形成する左右の線引きマーカを、旋回開始時に苗植付部の昇降に連動して自動的に上方に移動させると共に、旋回終了後に苗植付部の下降に連動して旋回前とは反対側の線引きマーカを自動的に下降させ、苗の植付と同時に次の作業位置に線を形成する技術が存在する。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−246409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された苗移植機は、圃場の隅で旋回する際に苗植付部を上昇させ、旋回後に苗植付部を下降させると、畦に線引きマーカが下降して接触し、接触の衝撃で線引きマーカが破損する問題がある。
【0005】
また、圃場端部に苗を植え付ける際、既に苗を植えている側の線引きマーカが下降し、線引きマーカが苗を押し潰してしまうと、作業者が潰れた苗を引き抜いて新しい苗を手作業で植え直す作業が必要になり、作業能率の低下、及び作業者の労力が増大する問題がある。
【0006】
上記の問題を解決すべく、圃場端付近での植付作業時は線引きマーカの自動作動を切ることはできるが、広い圃場では直進の目安となる線がないと走行方向が乱れやすくなるため、苗の植付条が蛇行したり斜めになったりして、圃場全体を有効に活用できず作物の収穫量が減少する問題がある。
【0007】
植え付けが行われていない箇所に作業者が手作業で苗を植えることはできるが、このとき、作業者の労力が大幅に増大してしまう問題がある。
本発明は、この問題を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、走行車体(2)の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付部(4)を昇降自在に設け、該苗植付部(4)の側方に直進走行の指標となる線を圃場に形成する線引きマーカ(68)を設け、前記苗植付部(4)の昇降に連動して該線引きマーカ(68)の作動方向を交互に切り替えるマーカ切替装置(72)を設けた苗移植機において、畦際での植付作業を検知する畦際検知部材(76)を設け、該畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知すると、前記苗植付部(4)を昇降させてもマーカ切替装置(72)の線引きマーカ(68)の作動方向を切り替えない構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知すると線引きマーカ(68)の昇降回数を記憶する作動回数検知部材(77)を設け、該作動回数検知部材(77)の検知回数が所定回数未満であるときは苗植付部(4)を昇降させてもマーカ切替装置(72)の作動方向を切り替えない構成とすると共に、作動回数検知部材(77)の検知回数が所定回数以上になると前記線引きマーカ(68)が圃場に線を形成しないようにマーカ切替装置(72)の作動を停止する構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記走行車体(2)に走行装置(11)を設け、該走行装置(11)の回転数を検知する走行回転検知装置(78)を設け、該走行回転検知装置(78)の検知する回転数が植付作業開始時から所定回数以上になるまでは、前記畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知していても前記マーカ切替装置(72)の作動方向が交互に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機とした。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記畦際検知部材(76)に発光体(76a)を設け、前記走行回転検知装置(78)が所定回数以上の回転を検知すると、該発光体(76a)が発光する構成としたことを特徴とする請求項3記載の苗移植機とした。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記苗植付部(4)を操作する作業操作部材(80)に、前記苗植付部(4)が所定高さ以上に上昇しているときに該苗植付部(4)を自動的に所定距離下降させる調節下降部材(81)を設けたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の苗移植機とした。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記畦際検知部材(76)をスイッチで構成し、前記走行車体(2)に傾斜を検知する傾斜検知部材(79)を設け、該傾斜検知部材(79)が所定角度以上の傾斜を検知すると、前記畦際検知部材(76)が自動的に「切」になる構成としたことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知すると、苗植付部(4)を昇降させてもマーカ切替部材(72)の線引きマーカ(68)の作動方向を切り替えない構成としたことにより、線引きマーカ(68)が圃場に線を形成する側が機体の一側または他側に保たれるので、畦際で植付作業をする際に線引きマーカ(68)が畦に下降して接触することが防止され、線引きマーカ(68)が破損することが防止される。
【0015】
また、畦際の隣接条に苗の植付作業をする際、線引きマーカ(68)が既に苗を植えた側に下降することを防止できるので、線引きマーカ(68)が苗を押し潰すことが防止され、作業者が潰れた苗を引き抜いて新しい苗に植え直す作業が不要となり、作業者の労力が軽減されると共に、無駄になる苗が減少する。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、作動回数検知部材(77)で線引きマーカ(68)の昇降回数を記憶し、昇降回数が所定回数未満であるときはマーカ切替装置(72)の作動方向が切り替えられなくなる構成としたことにより、畦際の隣接条に苗の植付作業をする際、線引きマーカ(68)が既に苗を植えた側に下降することを防止できるので、線引きマーカ(68)が苗を押し潰すことが防止され、作業者が潰れた苗を引き抜いて新しい苗に植え直す作業が不要となるので、作業者の労力が軽減されると共に、無駄になる苗が減少する。
【0017】
また、線引きマーカ(68)の昇降回数が所定回数以上になると、マーカ切替装置(72)の作動を停止させる構成としたことにより、畦際に苗を植え付ける際に線引きマーカ(68)が畦または苗を植え付けた隣接条に向かって移動することを防止できるので、線引きマーカ(68)が破損することが防止されると共に、線引きマーカ(68)が苗を押し潰し、作業者が苗を植え直す作業が不要となる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、走行装置(11)の回転数が植付作業開始時から所定回転数以上になるまでは、畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知していてもマーカ切替装置(72)の作動方向が交互に切り替わる構成としたことにより、畦際検知部材(76)が畦際でない位置で畦際での植付作業中であると誤認することが防止され、線引きマーカ(68)の作動が走行車体(2)の操作と一致しなくなることを防止できるので、圃場に直進の目安となる線が形成されなくなり、走行車体(2)が直進走行できず、苗の植付条が蛇行したり斜めになったりすることが防止され、苗の植付精度が向上する。
【0019】
そして、苗の植付条の間隔が極端に狭くなり、養分を取り合って生育不良を起こし、作物の収穫量や品質が低下することが防止される。
また、苗の植付条の間隔が極端に広くなり、作業者が手作業で苗を植え付ける作業が必要となることを防止できるので、作業者の労力が軽減される。
【0020】
請求項4記載の発明の効果は、請求項3記載の発明の効果に加えて、走行装置(11)の回転数が所定回転数以上となると畦際検知部材(76)に設けた発光体(76a)が発光する構成としたことにより、作業者は畦際検知部材(76)が検知可能になったことを認識することができるので、畦際検知部材(76)の操作を受け付けないタイミングで畦際検知部材(76)を操作することが防止され、線引きマーカ(68)が圃場外に接触して破損することが防止される。
【0021】
請求項5記載の発明の効果は、請求項1から4の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、苗植付部(4)が所定高さ以上に上昇しているときに調節下降部材(81)が苗植付部(4)を所定距離下降することにより、苗植付部(4)を僅かに下降させて作業者の後方の視認性を確保することができるので、後進操作時に苗植付部(4)の下部が畦際に接触して破損することが防止される。
【0022】
また、畦際直前まで後進が行われず、苗の植付開始位置と畦際の間に苗が植えられない空間が発生することを防止できるので、作業者が苗を植え付ける作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
【0023】
そして、苗植付部(4)の下降距離が決められていることにより、苗植付部(4)が不要なときに圃場面に接触することを防止できるので、圃場面が荒れて苗の植付深さが乱れ、苗の生育不良が防止されると共に、苗植付部(4)が苗を押し潰すことが防止される。
【0024】
請求項6記載の発明の効果は、請求項1から5の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、傾斜検知部材(79)が所定角度以上の走行車体(2)の傾斜を検知すると、スイッチ式の畦際検知部材(76)が自動的に「切」になる構成としたことにより、畦際検知部材(76)を切り忘れることを防止できるので、線引きマーカ(68)の作動方向が適切になるため、苗の植付精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】乗用型田植機の側面図
【図2】乗用型田植機の平面図
【図3】線引きマーカの作用状態を示す要部正面図
【図4】昇降シリンダと左右切替ソレノイドを示す要部側面図
【図5】線引きマーカを示す要部正面図
【図6】線引きマーカを示す断面図
【図7】作業時の走行方向を示す参考図
【図8】各制御部材のブロック図
【図9】畦際作業スイッチを「入」にしたときの制御を示すフローチャート
【図10】バランスフレーム及び増設ウェイトを備えた乗用型田植機の平面図
【図11】フロートを最下降状態とした乗用型田植機を示す側面図
【図12】操縦部の要部拡大平面図
【図13】走行操作レバーの要部拡大平面図
【図14】(a)前後から操作可能なデフロックアームを示す要部側面図、(b)前後から操作可能なデフロックアームを示す要部平面図
【図15】デフロックアームを装着した乗用型田植機の正面図
【図16】デファレンシャルロック機構及びエンジン回転操作位置を示す要部平面図
【図17】(a)機体前側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第1動作を示す要部正面図、(b)機体前側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第2動作を示す要部正面図、(c)機体前側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第3動作を示す要部正面図、(d)機体前側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第4動作を示す要部正面図
【図18】(a)機体後側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第1動作を示す要部正面図、(b)機体後側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第2動作を示す要部正面図、(c)機体後側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第3動作を示す要部正面図、(d)機体前側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第後動作を示す要部正面図
【図19】前後及び左右方向に回動可能な畦越えアームを備える乗用型田植機の正面図
【図20】前後及び左右方向に回動可能な畦越えアームの要部正面図
【図21】前後及び左右方向に回動可能な畦越えアームの要部側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
本件においては、平面図において、機体の進行方向に対して左側を機体左右一側、機体の進行方向に対して右側を機体左右他側と称する。以下、各部の詳細を具体的に記載する。
【0027】
図1及び図2は、本発明の作業機の一実施例である乗用型田植機の側面図と平面図である。また、図12及び図19は正面図である。なお、図2に開示されている田植機は4条植えの構成であるが、本構成を4条未満の田植機、並びに5条以上の田植機に用いても構わない。
【0028】
この乗用型田植機は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4を昇降可能に設け、該走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分を配置している。そして、該走行車体2の前部にミッションケース12を設け、該ミッションケース12の左右側方にそれぞれ前輪ファイナルケース13,13を設けると共に、該左右の前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右の前輪車軸14に駆動輪である左右一対の前輪10,10を設ける。
【0029】
また、前記ミッションケース12の背面部に機体のメインフレーム15の前端部を固着し、該メインフレーム15の後端部で且つ左右方向中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示省略)を支点として左右の後輪ギアケース18,18をローリング自在に設け、該後輪ギアケース18,18から外側方向に向けて突出させた左右の後輪車軸18a,18aにそれぞれ後輪11,11を軸着する。
【0030】
さらに、前記メインフレーム15の上部で且つ、機体の前後及び左右方向の略中央位置にエンジン20を設け、該エンジン20の駆動力をベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置(HST)23を介して前記ミッションケース12に伝動する構成とする。そして、前記ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12に内装するトランスミッション(図示省略)により変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0031】
これにより、走行駆動力の一部が前記左右の前輪ファイナルケース13,13に伝達されて左右の前輪10,10を回転駆動させると共に、残りの走行駆動力は前記左右の後輪ギアケース18,18に伝達されて左右の後輪11,11を回転駆動させる。
【0032】
また、外部取出動力は、前記走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、該植付クラッチケース25から植付伝動軸26を経由して苗植付部4へ伝動されると共に、施肥伝動機構(図示省略)を経由して前記施肥装置5に伝動される。
【0033】
前記メインフレーム15の上部に、該メインフレーム15を覆う平坦なフロアステップ35を前記エンジン20を避けて設け、該フロアステップ35上で且つエンジン20の外周に、エンジン20を覆うエンジンカバー30を設ける。該エンジンカバー30は前側下部を回動支点として回動可能に構成すると共に、上部に作業者が着座する作業座席31を装着する。
【0034】
そして、該作業座席31よりも機体前側で且つフロアステップ35上に、本件作業車両の各種作業機構を内装するボンネット32を設け、該ボンネット32の上部に各作業部の設定を変更操作するスイッチ類を配置する操作パネル33と、作業者が前記左右の前輪10,10を操舵するハンドル34を設ける。
【0035】
また、前記フロアステップ35のうち、作業座席31の左右両側は格子状に形成し、フロアステップ35上を異動する作業者の足等に付着した泥土が圃場に落下する構成としている。そして、前記フロアステップ35の後部には、前記左右の後輪11,11のフェンダを兼ねるリアステップ36,36を設ける。
【0036】
さらに、前記走行車体2の前側で且つ左右両側に支柱38をそれぞれ設け、該左右の支柱38a,38aに、補充用の苗を載置する予備苗載せ台38b…を上下方向に複数、本件では図1で示すとおり2つ設けて、左右の予備苗枠38,38を構成する。
【0037】
左右の予備苗枠38,38を設けたことにより、補充用の苗を予め機体に積み込んでおくことができるので、植え付ける苗が無くなった際に圃場端まで苗を取りに戻る回数が減少するため、作業能率が向上する。
【0038】
また、フロアステップ35の上に苗を置く必要がなくなるので、作業者がフロアステップ35上を移動しやすくなり、作業能率が向上すると共に、積載した苗が機体の振動などによって落下することを防止できるので、落下した苗を拾う必要がなく、作業能率が向上する。
【0039】
そして、前記走行車体2及びボンネット32の前側で且つ左右方向の中央位置に畦越えアーム39を設け、該畦越えアーム39の上端部の左右両側に作業者が握るための左右のグリップ40,40を設ける。また、前記畦越えアーム39の上端部に、前後方向に回動自在にセンターマスコット41を取り付ける。
【0040】
さらに、前記メインフレーム15の後端部で且つ左右中央位置に上下方向の支持フレーム41を設け、該支持フレーム41に上下一対の昇降リンクアーム42,42の基部を平行に配置する。そして、該昇降リンクアーム42,42の端部を苗植付部4のリンクフレーム43に取り付けて平行リンクとし、前記メインフレーム15と支持フレーム41に亘って昇降シリンダ44を伸縮自在に取り付ける。該昇降シリンダ44が伸びると苗植付部4が下降し、縮むと苗植付部4が上昇する構成とする。なお、該昇降シリンダ44は、メインフレーム15に設ける油圧バルブ44aの開閉により伸縮する構成とする。
【0041】
また、前記リンクフレーム43に伝動ケース45を設け、該伝動ケース45の前側上部に植付部フレーム46を上下方向に配置する。該植付部フレーム46の上端部には受けローラ47を回転自在に設け、該受けローラ47と伝動ケース45の後部で複数の苗を載置する苗タンク48を支持する。該苗タンク48には、苗を仕切る苗フェンス49を等間隔に設け、苗タンク48の上端部には、苗を一対の苗フェンス49,49の左右間に案内する苗ガイド50を1条ごとに設ける。
【0042】
なお、一対の苗フェンス49,49はその左右間隔は約30cmとし、苗ガイド50の左右幅もこの左右間隔と同じ約30cmとすると、苗が苗タンク48にずれることなく案内されやすくなる。
【0043】
そして、前記苗タンク48の下端部には、苗を受け止める側面視L字形状の苗受け板51を固定すると共に、苗タンク48の機体前部には、苗を下方に送り出す苗送り装置52,52を、1条につき一対配置する。さらに、前記伝動ケース45の後側下部に複数の、本件では図2で示すとおり2つの植付伝動ケース53,53を設け、該植付伝動ケース53の左右両側に、2つの植込稈54,54を備える植付ロータリ55をそれぞれ配置する。
【0044】
なお、前記伝動ケース45は、植付伝動ケース53,53に駆動力を供給するだけでなく、苗タンク48を左右方向に移動させる摺動装置(図示省略)も駆動している。この摺動装置の駆動によって苗タンク48が左右端に到着すると、苗送り装置52,52を所定距離に亘って作動させるスイッチ(図示省略)が入る構成とする。
【0045】
また、前記植付部フレーム46の下部で且つ左右中央部に回動支持アーム56を上下方向に回動自在に設け、左右両側部にフロート支持アーム(図示省略)を設ける。該回動支持アーム56の下部に圃場に接触して滑走するセンターフロート57Cを設け、左右のフロート支持アームの下部に圃場に接触して滑走するサイドフロート57L,57Rをそれぞれ設ける。そして、該センターフロート57Cの取付部にポテンショメータ58を設け、該ポテンショメータ58の検知するセンターフロート57Cの角度に合わせて前記油圧バルブ44aを微細に開閉し、昇降シリンダ44を微細に伸縮させる構成とする。
【0046】
さらに、前記植付部フレーム46の上部側に一対のロータリンクアーム59,59を設け、該ロータリンクアーム59,59の一方にロータ吊下アーム60を伸縮自在に設けると共に、ロータリンクアーム59の他側にロータ支持アーム61を設ける。なお、ロータ支持アーム61は、左右に1本ずつ設ける。
【0047】
そして、機体右側の後輪ギアケース18の後部に後側下方に向けてロータ伝動軸62の基部を設け、該ロータ伝動軸62の端部をロータ伝動ケース(図示省略)を設ける。該ロータ伝動ケースの右側に、右側のサイドフロート57Rの前側の圃場面を回転しながら均す右側のサイドロータ63Rを設け、ロータ伝動ケースの左側に、前後方向の接続伝動ケース64Rの後部側を設ける。さらに、該右側の接続伝動ケース64Rの前部側に、センターフロート57Cの前側の圃場面を回転しながら均すセンターロータ63Cの右側端部を連結し、該センターロータ63Cの左側端部を左側の接続伝動ケース64Lの前部側に設けると共に、該左側の接続伝動ケース64Lの後部側に左側のサイドフロート57Lの前側の圃場面を回転しながら均す左側のサイドフロート57Lを設ける。
【0048】
さらに、前記センターロータ63Cの上部を覆うセンターロータカバー65Cを左右の接続伝動ケース64L,64Rの左右間に亘って設け、左右の接続伝動ケース64L,64Rの後部側に左右のサイドロータ63L,63Rの上部を覆うサイドロータカバー65L,65Rを設けることにより、整地ロータユニット66が構成される。
【0049】
上記構成により、センターロータ63C及び左右のサイドロータ63L,63Rで圃場面を均した後をセンターフロート57C及び左右のサイドフロート57L,57Rが接地しながら移動することができるので、植込稈54…で圃場に植え付ける苗の深さが一定に保たれるため、苗の生育が安定する。
【0050】
また、センターフロート57Cの上下角度に合わせて苗植付部4が微細に昇降する構成となっているが、センターロータ63C及び左右のサイドロータ63L,63Rで圃場面を均しているため、センターフロート57Cの角度変化が過度に発生することが防止され、大きな圃場の凹凸があるときのみ苗植付部4が上下動するため、いっそう苗の植付精度が向上する。
【0051】
さらに、センターロータ63C及び左右のサイドロータ63L,63Rの上部をセンターロータカバー65C及びサイドロータカバー65L,65Rで覆うことにより、センターロータ63C及び左右のサイドロータ63L,63Rが圃場の泥土を跳ね上げても、この泥土が周辺に飛散することを防止できるので、機体や作業者が泥土で汚れることが防止される。
【0052】
そして、図1及び図2で示すとおり、前記苗タンク48の機体前側、即ち苗を載置しない側の左右端部側にマーカロッド67をそれぞれ設け、該マーカロッド67,67の端部に、圃場に機体直進の目印となる線を引く線引きマーカ68,68を回転自在に装着する。なお、図3、図5及び図6で示すとおり、線引きマーカ68はディスク体68aの外周縁部に土を描き切って溝を形成する溝切り突起68b…を等間隔に複数配置して構成するものである。
【0053】
図3で示すとおり、前記植付部フレーム46の下部に支持ブラケット46aを設け、該支持ブラケット46aの左右両端部で且つ苗タンク48の前側に、左右方向に回動自在なマーカアーム69を介して前記マーカロッド67を取り付ける。そして、前記支持ブラケット46aの下部とマーカアーム69の間に、マーカアーム69を苗タンク48側に付勢する付勢スプリング70を設けると 共に、前記昇降シリンダ44の固定側、即ち伸縮動作時に動かない側に、左右のマーカ操作ワイヤ71L,71Rを備えた左右切替ソレノイド72を設ける。
【0054】
図4で示すとおり、該左右切替ソレノイド72には、左のマーカ操作ワイヤ71Lの作動を規制する左側の引張ピン73Lと、右側のマーカ操作ワイヤ71Rの作動を規制する右側の引張ピン73Rが設けられており、左右切替ソレノイド72の動作により、左側の引張ピン73Lが作動する状態、右側の引張ピン73Rが作動する状態、そして左右の引張ピン73L,73Rの両方が作動していない状態に切り替わるものとする。
【0055】
そして、前記左右のマーカ操作ワイヤ71L,71Rをそれぞれ左右のマーカアーム69,69の上部に連結し、前記ハンドル34の基部に操舵方向を検出するハンドルポテンショメータ74を設け、該ハンドルポテンショメータ74が操舵方向を検出すると、左右切替ソレノイド72を作動させる構成とする。
【0056】
まず、ハンドル34を左右いずれかの旋回方向に操作すると油圧バルブ44aが作動して昇降シリンダ44を収縮させ、苗植付部4を非植付作業高さまで上昇させる。このとき、左右のマーカ操作ワイヤ71L,71Rは昇降シリンダ44の収縮動作により非作用状態となるため、マーカアーム69,69が付勢スプリング70,70に引っ張られてマーカロッド67,67を持ち上げた状態、即ち、左右のマーカロッド67,67が共に非作用状態となる。
【0057】
そして、ハンドル34が右旋回方向に操舵されたことをハンドルポテンショメータ74が検知した状態で、旋回操作から直進操作に戻すと、油圧バルブ44aが作用して昇降シリンダ44が伸張し、苗植付部4が植付作業高さまで下降する。このとき、左右切替ソレノイド72は左側の引張ピン73Lを作動させて左側のマーカ操作ワイヤ71Lを非作用状態に切り替え、左側のマーカアーム69が付勢スプリング70によって付勢され、左側のマーカロッド67が上昇した状態とする。一方、右側のマーカ操作ワイヤ71Rは昇降シリンダ44の伸張に伴い復動し、右側のマーカアーム69を付勢スプリング70の張力よりも強い力で回動させて右側のマーカロッド67を圃場面に対して略水平な姿勢に変更し、端部に装着した右側の線引きマーカ68が圃場面に接触して溝を形成する形態とする。
【0058】
また、ハンドル34が左旋回方向に操舵されたことをハンドルポテンショメータ74が検知した状態で、旋回操作から直進操作に戻すと、油圧バルブ44aが作用して昇降シリンダ44が伸張し、苗植付部4が植付作業高さまで下降する。このとき、左右切替ソレノイド72は右側の引張ピン73Rを作動させて右側のマーカ操作ワイヤ71Rを非作用状態に切り替え、右側のマーカアーム69が付勢スプリング70によって付勢され、右側のマーカロッド67が上昇した状態とする。一方、左側のマーカ操作ワイヤ71Lは昇降シリンダ44の伸張に伴い復動し、左側のマーカアーム69を付勢スプリング70の張力よりも強い力で回動させて左側のマーカロッド67を圃場面に対して略水平な姿勢に変更し、端部に装着した左側の線引きマーカ68が圃場面に接触して溝を形成する形態とする。
【0059】
そして、前記植付部フレーム46の左右両側に、左右のマーカロッド67,67を引っ掛けて非作用状態とする収容フック75をそれぞれ設け、苗移植機をしまうときや、線引きマーカ68,68を使用しないときに、左右のマーカロッド67,67を収容可能な構成とする。マーカロッド67,67を収容フック75,75に引っ掛けた状態では、マーカロッド67,67が苗タンク48の左右幅内に収まる構成としておくと、線引きマーカ68,68が左右に突出しにくくなるため、線引きマーカ68,68が壁等に当たって破損しにくくなる。
【0060】
上記構成としたことにより、圃場端で旋回する前に左右の線引きマーカ68,68が自動的に上昇するので、旋回中に線引きマーカ68,68が圃場面や畦に接触することを防止でき、苗が押し倒されることが防止されて苗の植え直し作業が省略されると共に、線引きマーカ68,68の破損が防止され、耐久性が向上する。
【0061】
また、旋回終了時に、ハンドルポテンショメータ74が検知した右または左の旋回方向と同じ側の線引きマーカ68が圃場面に向かって下降移動して線を引く状態となり、旋回方向と反対側の線引きマーカ68が圃場面から離間した位置に上昇移動して非作用状態となる構成としたことにより、植付作業を行いながら次の作業位置に直進の目安となる線を引くことができるので、苗移植機が直進しやすくなり、苗の植付精度が向上する。
【0062】
そして、旋回前、旋回後のいずれも線引きマーカ68,68を操作する必要が無いので、作業者が余分な操作をする必要が無く、操作性や作業能率が向上する。
上記の、旋回方向に合わせて交互に左右の線引きマーカ68,68が作用状態と非作用状態とする作業は、圃場内を直進走行し、圃場端で180度旋回する工程で行うものである。一方、圃場の四隅、所謂畦際では、圃場端部に沿って直進しながら苗の植え付けを行い、隅まで植え付けると所定距離後進した後で90度旋回し、所定距離後進した後、直進しながら植え付けを行う工程では、交互に線引きマーカ68,68が作動すると、畦際に近い側の線引きマーカ68が下降して畦際に接触し、必要な箇所に線が引けず直進性が低下すると共に、接触の際に線引きマーカ68やマーカロッド67が破損してしまう問題があった。
【0063】
このため、線引きマーカ68,68を使用せずに作業をすることもあるが、畦際とその内周をそれぞれ一周して畦際の植付を行う作業形態を行うときは、畦際の作業の際に目安となる線が無く、既に植え付けられた苗を前輪10や後輪11で踏み潰してしまい、踏み潰した苗を手作業で抜いて植え直す作業が必要となり、作業者の労力が増加してしまう問題がある。また、苗を踏み潰さなくとも、苗同士の条間隔が極端に狭くなり、養分の取り合いで生育不良を起こす問題や、風通しの悪さにより病害虫が発生しやすくなる問題がある。
【0064】
上記の問題を解決すべく、図2及び図12で示すとおり、操作パネル33に畦際作業スイッチ76を設け、該畦際作業スイッチ76を「入」操作すると左右切替ソレノイド72の切替方向をハンドルポテンショメータ74の操作方向にかかわらず一定方向にのみ作動させると共に、線引きマーカ68,68の昇降動作回数をカウントするマーカ作動センサ77が作動する構成とする。
【0065】
畦際とその内周をそれぞれ一周ずつ回りながら苗を植え付ける作業工程では、まず内周側を植付走行し、畦際の最終作業位置に一側の線引きマーカ68で線を引いていく。圃場の四隅での旋回角度は約90度であるため、線を形成するために必要な線引きマーカ68は、左右のどちらか一側の線引きマーカ68となる。
【0066】
畦際作業スイッチ76を「入」にすると、圃場隅での90度旋回後にマーカ作動センサ77が畦際側の線引きマーカ68を自動的に連続して下降移動させることにより、作業者が直進走行開始前に苗植付部4を昇降させて畦際側の線引きマーカ68を下降移動させる操作が不要となるため、操作性や作業能率が向上する。
【0067】
また、マーカ作動センサ77が線引きマーカ68の昇降をカウントしていることにより、畦際の内周の四辺で植付作業をするときは自動的に畦際側の線引きマーカ68を下降移動させて線引き作業状態とすることができると共に、畦際の内周から畦際に作業が移行するとき、即ち線引きマーカ68による線引き作業が不要となる工程に移行するときに、線引きマーカ68,68が左右どちらも非作用状態となるよう左右切替ソレノイド72が切り替わる制御構成とすることができるので、畦に一方の線引きマーカ68が接触して破損することが防止されると共に、他方の線引きマーカ68が圃場に植え付けられた苗に接触して押し潰してしまうことが防止される。
【0068】
上記構成とすべく、マーカ作動センサ77は、4回目の苗植付部4の上昇に伴う左右切替ソレノイド72の作動が行われると、該左右切替ソレノイド72の切替を規制する信号を制御装置200に発信するものとする。但し、畦際の四隅で90度旋回する際にもマーカ作動センサ77はカウントを継続し、8回目のカウントが発生する、即ち畦際の四隅の植付作業が完了して苗植付部4が上昇されると、作業者が畦際作業スイッチ76を操作しなくても、自動的に該畦際作業スイッチ76を「切」操作する制御構成とする。
【0069】
上記構成により、次の圃場に移動して作業を開始した際に、圃場端で180度旋回する必要がある圃場内での作業工程であるにもかかわらず、畦際作業スイッチ76が「入」のままになっており、最初にハンドル34を操舵してハンドルポテンショメータ74が検知した旋回方向の線引きマーカ68が出続け、適切な線引き作業が行われなくなることが防止され、作業能率が向上すると共に、苗の踏み潰しが防止される。
【0070】
なお、前記マーカ作動センサ77は、左右切替ソレノイド72の作動が規制される畦際での植付作業工程でもカウントを確実に取るべく、昇降リンクアーム42,42に設け、苗植付部4の上下動に連動させる構成とすると、確実且つ簡潔にカウントを行うことができる構成となる。
【0071】
また、前記畦際作業スイッチ76が「切」状態であるとき、後輪11,11の回転数をカウントして走行距離や走行速度を算出する左右の後輪回転センサ78,78が所定回転数をカウントするまでは操作を受け付けない構成とする。この所定回転数は圃場の広さや作業速度によって変化するので、作業者が受付可能とする最低回転数を設定可能にするとよい。
【0072】
上記構成により、植付作業前や走行再開する際など、発進時に苗植付部4を下降させる作業が行われ得る状態であるとき、畦際作業スイッチ76を誤って操作してしまっても、所定距離を走行するまでは線引きマーカ68の畦際作業制御が行なわれなくなるため、不要な箇所に線引きが行われたり、苗を押し潰したりすることが防止され、作業者の労力が軽減される。
【0073】
なお、畦際作業スイッチ76にLED等の発光体76aを設け、畦際作業スイッチ76の操作が受付できる状態、即ち後輪回転センサ78,78が所定数以上回転した状態になると、畦際作業スイッチ76が点滅する構成とすると、作業者が操作受付タイミングを把握しやすくなり、操作性が向上する。
【0074】
なお、前記発光体76aは点滅でなく、常時発光して操作を受け付ける状態であることを示す構成としてもよい。
また、走行車体2のメインフレーム15に、苗移植機の前後方向、即ちピッチング方向の傾斜を検知する傾斜センサ79を設け、所定角度、例えば約10度以上傾斜すると、圃場の出入口の傾斜部を移動していると判断して、畦際作業スイッチ76を自動的に「切」にする構成としても良い。
【0075】
上記構成とすることにより、圃場の出入口の直前まで苗植付部4を下降させて苗を植え付ける作業を行うとき、即ちその圃場での作業を終了するときを基準として畦際作業を終わることができるので、畦際作業スイッチ76を切り忘れることが防止され、次の圃場での作業性や苗の植付精度が向上する。
【0076】
また、本件構成の苗移植機では、ハンドル34を旋回角度まで操舵すると旋回内側のサイドクラッチ(図示省略)が切れる構成としており、このとき後輪回転センサ78の回転数と旋回外側の後輪回転センサ78の回転数に所定値以上の差が生じると、油圧バルブ44aを作動させて昇降シリンダ44を収縮させ、自動的に苗植付部4を昇降させると共に、ハンドル34の操舵角度が所定値未満に戻され、サイドクラッチが繋がり左右の後輪回転センサ78,78の回転数が略同じに戻ると、油圧バルブ44aを作動させて昇降シリンダ44を伸張させ、自動的に苗植付部4を下降させ、後輪回転センサ78,78の回転数がさらに所定値をカウントすると、植付クラッチケース25内の植付クラッチ25aを自動的に「入」にして苗の植付作業を開始する旋回制御機構Tが搭載されている。
【0077】
しかしながら、上記旋回制御機構Tは、180度旋回の際には苗の植付終了位置や植付開始位置を揃えて植付精度を向上させる効果を有するものの、畦際直前まで機体を前進させて苗を植え付け、いったん後進してから旋回し、旋回後に畦際まで後進した後、苗植付部4を下降させてから植付作業を再開する90度旋回の場合は、苗の植付タイミングが乱れてかえって植付精度が低下したり、作業者の意図に反する昇降を行うことにより、苗を押し潰してしまい、作業者が植え直すため労力が増大するという問題が生じる。
【0078】
このため、前記畦際作業スイッチ76を操作すると、左右の後輪回転センサ78,78の回転数に所定値以上の差が発生しても油圧バルブ44aを作動させず、作業者がボンネット32に設ける作業操作レバー80を操作すると苗植付部4が昇降すると共に、植付クラッチ25aが「入」となって植付伝動ケース53,53に駆動力が伝動される構成としてもよい。
【0079】
上記構成により、苗移植機の旋回位置に合わせて旋回制御機構Tの入切を変更することができるので、旋回制御機構Tの入切操作を行なう必要が無く、操作性や作業能率が向上する。
【0080】
また、上記のとおり、圃場の四隅で90度旋回する際には、畦際まで機体を前進させ、旋回開始位置まで後進した後、旋回終了後に畦際まで後進した後、苗植付部4を下降させて植付走行を行うという操作が必要となる。
【0081】
このとき、苗植付部4は上昇させた状態であるため、90度旋回の終了後に畦際まで後退する際、苗植付部4の苗タンク48や苗ガイド50が作業者の視界を妨げ、畦際まで後退せずに植付作業を始めてしまい、苗が植え付けられていないところに手作業で苗を植えるため、作業者の労力が増大する問題がある。また、苗植付部4の下部側の植付伝動ケース53,53や植込稈54…等を畦際に接触させて破損させてしまう問題がある。
【0082】
これを解消すべく、作業者は手動操作で苗植付部4を僅かに下降させて視界を確保しているが、微細な調整作業であるため調整に時間がかかり、作業能率を低下させてしまうと共に、操作を誤ると苗植付部4が下がり過ぎてしまい、植込稈54…に泥土が付着して苗の掻き取りを失敗し、苗の植付不良を起こす問題があると共に、圃場の隅の表面が荒れて、苗の植付深さが一定にならず、生育不良が生じる問題がある。
【0083】
このため、作業操作レバー80、あるいは操作パネル33に調整下降ボタン81を設け、該調整下降ボタン81を操作すると油圧バルブ44aが所定時間、例えば約2秒間作動して昇降シリンダ44を対応する長さだけ伸張させて、苗植付部4を僅かに下降させる構成とすると良い。
【0084】
上記構成により、苗タンク48や苗ガイド50が作業座席31に着座した作業者の視界を妨げず、且つ植付伝動ケース53,53や植込稈54…が圃場面から十分に離間する高さまで苗植付部4を下降させることができるので、作業者は畦際までの距離を視認しながら後進することができ、苗が畦際直前から植え付けられて手作業による植え付けが不要となり、作業者の労力が軽減されると共に、圃場面が荒らされることや植込稈54…に泥土が付着することが無く、苗の植付深さが一定となり、苗の生育が安定し、収量や品質が向上する。
【0085】
なお、苗植付部4の下降は、上記のとおり油圧バルブ44aの作動時間を制御してもよいが、昇降リンクアーム42,42にポテンショメータ(図示省略)を設け、該ポテンショメータが所定角度を検出すると油圧バルブ44aを停止させる構成としても良い。
【0086】
前記線引きマーカ68,68の作動方向は、旋回時の苗植付部4の昇降に伴う、昇降シリンダ44の作動に連動する左右切替ソレノイド72によって定められているが、作業者が旋回タイミングを誤ってハンドル34を操作したり、障害を回避するべく大きく操作した際に、苗植付部4が上昇して左右切替ソレノイド72を作動させてしまうことがある。この状態で作業を継続すると、旋回方向と反対側の線引きマーカ68が線引き作業状態となり、既に苗を植え付けた位置に下降し、苗を押し潰してしまう問題がある。
【0087】
このため、作業者は誤操作による線引きマーカ68,68の誤作動を防止すべく、走行を停止して苗植付部4を昇降させ、左右切替ソレノイド72の作動順を調整する必要がある。
【0088】
しかしながら、上記の調整操作ができるのは、作業者が誤操作を行ったことを認識しているときであり、作業者が誤操作したことに気付いていないときは、気付かずに旋回操作を行ってしまい、作業状態になってはならない側の線引きマーカ68が作業状態となってしまう。
【0089】
これを防止すべく、左右の後輪回転センサ78,78の回転数の差から旋回方向を判断し、左右切替ソレノイド72の作動方向、即ち左側の引張ピン73または右側の引張ピン73Rを作動させる方向が旋回方向と一致しないときは、ブザー82を作動させて作業者に報知する構成とすると、作業者は遅くとも旋回途中で線引きマーカ68の作動タイミングが合わなくなっていることに気付くことができるので、旋回が終了し、苗の植付が開始される前に調整操作を行うことができ、線引き作業が適切に行われ、苗の植付精度が向上する。
【0090】
なお、苗移植機の旋回方向の検出は、ハンドルポテンショメータ74の検出方向を用いても良い。
図10で示すのは、機体左側に予備苗載せ台38bが複数段、本件では2段に上下方向に並ぶ積層状態と、前後に並ぶ展開状態に切替可能なスライド予備苗枠83を設ける構成である。また、この構成では、機体前側の浮き上がりを防止すべく、メインフレーム15の前側で且つフロアステップ35の下方に左右のバランスフレーム84,84を設けている。
【0091】
前記スライド予備苗枠83は、展開状態及び積層状態の切替機構(図示省略)を有するので、従来の予備苗枠38に比べて5〜6kg程度重量が増しているため、機体の重心が左側に寄り、バランスを悪くする問題がある。
【0092】
前記バランスフレーム84,84は箱型に形成し、内部を中空とし、この内部に板状の金属で構成する増設ウェイト85を任意に投入できる構成とする。
上記構成により、通常の予備苗枠38を設ける機体右側のバランスフレーム84の内部に5〜6kg相当の増設ウェイト85を配置することにより、左右の機体バランスを安定させることができるので、走行姿勢が偏ったり、傾斜地で姿勢が乱れたりすることが防止され、走行性が向上すると共に、作業の安全性が向上する。
【0093】
なお、バランスフレーム84に形成する中空部を左右方向に長く形成することにより、増設ウェイト85を複数配置したり、増設ウェイト85の配置を調節して機体の左右バランスを調節することができるので、細やかな左右のバランス調節が可能となる。
【0094】
また、苗植付部4や施肥装置5の重量により、左右のバランスフレーム84,84だけでは浮き上がりを抑え切れないときは、左右のバランスフレーム84,84に増設ウェイト85…を浮き上がりが生じなくなるまで配置することもできるので、一層安全性が向上する。
【0095】
なお、図10では左側にスライド苗枠83を設ける構成としたが、図2のとおり左右両方とも通常の予備苗枠38,38とするときは、機体前側の左右バランスは安定している。
【0096】
しかしながら、本件の苗移植機に搭載される油圧式無段変速装置(HST)23は、機体の中心線よりも右側に偏って設けられており、機体全体での重量バランスが右寄りとなる。
【0097】
また、施肥装置5には、肥料を各条に送る風を発生させる施肥ブロア86が設けられているが、該施肥ブロア86にはモータ等の重量物が設けられているため、機体全体での重量バランスが右寄りとなる。
【0098】
このため、機体前側の浮き上がりを防止する増設ウェイト85を設けるときは、機体左側のバランスフレーム84に設けると、機体の左右バランスを安定させることが可能となり、走行性や安全性が向上する。
【0099】
図11及び図12で示すとおり、前記昇降シリンダ44を、苗植付部4を最大限下降させる伸張した状態から、さらに伸張可能に構成すると共に、前記操作パネル33に形成する、作業操作レバー80を所定の作業位置に移動操作させるレバーガイド80aに、「最下降」ポジションを形成する。なお、従来のレバーガイド80aは、機体後側から苗植付部4を上昇させる「上昇」、苗植付部4の昇降を停止させる「中立」、苗植付部4が下降する「下降」、植付クラッチ25aを「入」にして植付伝動ケース53を駆動させる「植付入」ポジションを有しており、作業操作レバー80を該当するポジションに操作すると、苗植付部4の昇降及び植付クラッチ25aの入切が行われる構成としている。
【0100】
なお、前記「最下降」ポジションは、「下降」ポジションの側方にL字形の溝を切り、作業操作レバー80を作業者が意識的に操作しないと移動し得ない位置に形成する。
そして、前記作業操作レバー80を「最下降」ポジションに操作すると、苗植付部4が圃場面に接地してもなお昇降シリンダ44が伸張を続け、左右の後輪11,11が圃場面から上方に離間し、苗移植機が左右の前輪10,10とセンターフロート57C、及び左右のサイドフロート57L,57Rで支えられる状態となる。
【0101】
上記構成としたことにより、後輪11,11の着脱時や、メインフレーム15の下部側からのメンテナンス作業を行う際に、ジャッキ等の機材を使うことなく作業を行うことができるので、苗の植付作業中に故障が起こっても、ジャッキを取りに戻ったり、苗移植機を一旦持ち帰ったりして作業を中断することなく、問題点の確認や応急修理を行うことができるので、作業能率が向上する。
【0102】
また、後輪11やメインフレーム15の下部側を見やすいので、故障原因の確認や部品の交換が容易になるので、メンテナンス性が向上する。
なお、上記構成では作業操作レバー80のレバーガイド80aに「最下降」ポジションを形成して苗植付部4の最下降操作を行える構成としたが、図13で示すとおり、油圧式無段変速装置23のトラニオン軸(図示省略)の開度を及び開放方向を変更し、走行車体2の前後進及び走行速度を走行操作レバー87のグリップ部87aに、油圧バルブ44aを作動させて昇降シリンダ44を伸縮させる上下動ボタン88u,88dと、植付クラッチ25aの入切を切り替える植付ボタン88pと、苗植付部4を最下降させる最下降ボタン88mを設ける構成としてもよい。
【0103】
上記構成としたことにより、作業者は操作パネル33側に手を伸ばすことなく苗植付部4の昇降や植付クラッチ25aの入切を操作することができるので、作業性が向上する。
苗移植機の構成によっては、走行車体2を後進させると、植付クラッチ25aの回転方向が逆転するものがある。こうした構成の植付クラッチ25aをそのまま逆回転させると過負荷が生じて破損するため、逆回転が始まると植付クラッチ25aを「切」にする、逆転クラッチ機構90が設けられている。
【0104】
しかしながら、植付クラッチ25aは、植付作業中に切れると、苗の植付が行われない区間が生じる原因となるため、「入」になると容易に切れない構成となっているため、逆転クラッチ機構90が植付クラッチ25aを切操作しても、「切」にならずに逆回転を続けてしまうことがある。
【0105】
このため、該逆転クラッチ機構90が作動する際の振動を検知する振動センサ91を設け、前記左右の後輪回転センサ78,78が検出する回転方向が後進を検出し、このとき所定時間(5〜10秒)以内に振動センサ91が振動を検知しないときは、ブザー82を作動させて作業者に報知する構成とする。
【0106】
上記構成により、逆転クラッチ機構90が植付クラッチ25aを「切」にできないとき、ブザー82が作業者に問題の発生を即座に報知することにより、作業者は作業操作レバー80を操作して手動で植付クラッチ25aを確実に「切」状態とすることができるので、植付クラッチ25aが破損することが防止される。
【0107】
なお、ブザー82を作動させる代わりに、前記走行操作レバー87をモータ等(図示省略)で中立位置に戻して後進を止める構成としてもよい。
走行車体2の走行が停止すれば植付クラッチ25aの回転も停止するので、植付クラッチ25aの破損を防止しつつ、停車することにより、作業者に異常を報知することが可能となる。
【0108】
図14〜図18で示すとおり、前記作業座席31の左前側で且つ、前記ボンネット32の下側で且つ機体左側に、デフ操作レバーガイド94aを形成したデフ操作パネル94を上下方向に立てて設け、該デフ操作レバーガイド94aを貫通させて側面視で「へ」の字形のデフアーム93を設ける。
【0109】
該デフアーム93の屈曲部には、メインフレーム15に回動軸(図示省略)を介して取り付ける回動支点を形成して前後方向に回動自在に構成し、連繋ワイヤ95を、前記デフアーム93の前端部側とデファレンシャルギア機構(図示省略)のデフペダルアームに亘って設ける。そして、前記デフアーム93の前端部に、作業者が機体前側からデフアーム93を操作するフロントデフグリップ96を左右方向に回動自在に設け、該フロントデフグリップ96を操作していないと機体左側の外側方向へと付勢する第1スプリング97をデフ操作パネル94とに亘って配置する。
【0110】
さらに、前記デフ操作パネル94にはエンジン20のスロットルを操作して回転数を増減させるエンジン回転ワイヤ98を貫通させており、該エンジン回転ワイヤ98の端部を、フロントデフグリップ96に取り付ける。
【0111】
そして、前記フロアステップ35から下方に向けて第2スプリング99を設け、前記デフアーム93の回動支点よりも後部とフロアステップ35を該第2スプリング99で連繋し、デフアーム93を下方に付勢する構成とすると共に、該デフアーム93の後端部側を、作業座席31の左側の下部側方に設ける後側デフ操作パネル100に形成した後側デフ操作レバーガイド100aを貫通させる。さらに、デフアーム93の後端部には、作業座席31に着座した作業者が手作業で操作する、リアデフグリップ101を設ける。
【0112】
前記デフ操作パネル94には、上下方向に長い溝と、この上下溝の上部側に左右方向の溝からなるデフ操作レバーガイド94aが形成されており、上下溝の下端部にデファレンシャルギア機構を作動させない状態でフロントデフグリップ96が位置する「切」ポジションを形成する。また、横溝のうち、上下溝に近い側にデファレンシャルギア機構が「入」となるデフ「入」ポジションを形成すると共に、上下溝から遠い側に、エンジン20の回転数を最大にするアクセル最大ポジションを形成する。なお、各ポジションには、それぞれ上下方向の切溝が形成されており、この切溝に差し込み可能な前側突起102が、前記フロントデフグリップ96の下側に取り付けられている。
【0113】
「切」ポジションの切溝に前側突起102を差し込むと、デファレンシャルギア機構は非作動状態となり、左右の前輪10,10が独立して作動する。そして、デフ「入」ポジションの切溝に前側突起102を差し込むと、デファレンシャルギア機構がロック状態となって左右の前輪10,10が連動して回転する構成としている。さらに、アクセル最大ポジションの切溝に前側突起102を差し込むと、エンジン回転ワイヤ98が最大まで引っ張られて、エンジン20の回転数が最大まで上昇する構成としている。
【0114】
また、前記後側デフ操作パネル100には左右方向にも幅の広い後側デフ操作レバーガイド100aが形成されており、リアデフグリップ101は第2スプリング99の付勢力により、非操作時はこの上下溝の上側にリアデフグリップ101が位置する構成である。後側デフ操作レバーガイド100aの下方で且つ機体内側には、機体内側に向かって上方傾斜する溝部が形成されており、前記デフアーム93の機体内側には、上方傾斜姿勢の後側突起103が設けられており、この後側突起103を後側デフ操作レバーガイド100aの溝部に差し込むと、デファレンシャルギア機構がロック状態となって左右の前輪10,10が連動して回転する構成としている。
【0115】
上記構成により、作業者は作業座席31に着座した状態、または走行車体2から降りた状態のいずれのときでも、前輪10,10が空転して旋回できなくなると、フロントデフグリップ96またはリアデフグリップ101を操作してデファレンシャルギア機構をロック状態に切り替えることができるので、圃場端の旋回時等に泥土に足を取られても作業が中断されること無く、作業能率が向上する。
【0116】
従来は、走行車体2の外側から走行車体2上のデフロックペダルを操作することはできなかったため、作業者はデフロックペダル92を踏みに走行車体2上に再度上がる必要があったため、作業能率が低下する問題があった。
【0117】
本案では、デフロックペダルがフロアステップ35から上方に突出していないため、フロアステップ35を移動する際にデフロックペダルが作業者の足に引っ掛かることが防止され、作業能率が向上するとともに、安全性が向上する。
【0118】
そして、デファレンシャルギア機構だけでなく、フロントデフグリップ96をアクセル最大ポジションに操作すると、エンジン20の回転数が最大まで上昇するため、圃場の泥土の粘性が高く、デファレンシャルギア機構だけでは泥濘から脱出できないことがあっても、出力を上げることにより泥土の抵抗を上回らせることができるので、走行作業が妨げられることが防止され、作業能率が向上する。
【0119】
さらに、第1スプリング97と第2スプリング99によって、デフアーム93とフロントデフグリップ96が切溝に引っ掛けられていない、非操作状態になると自動的にデファレンシャルロック機構が非作用状態になると共にエンジン20の回転数が低下する構成としているので、デファレンシャルロック機構やエンジン20の高い回転数が必要な箇所を通過した後、軽くデフアーム93及びフロントデフグリップ96を操作すれば作業状態を変更することができるので、操作性や作業能率が向上する。
【0120】
図19〜図21で示すとおり、走行車体2の前側には、圃場から退出するときや、傾斜部を移動する際に、作業者が機体前側から掴んで直進走行をアシストしたり、浮き上がりを防止したりする畦越えアーム104が設けられ、該畦越えアーム104の上端部に、前記センターマスコット41が前後回動可能に取り付けられている。また、前記畦越えアーム104の上端部の左右両側に、作業者が手で握る畦越えグリップ105,105が設けられている。
【0121】
水田等の圃場の出入口は、土を盛り上げて築いたものがあり、こうした出入口は、苗移植機や作業者の移動、風雨による侵食により次第に凹凸が形成される。苗移植機の前に立ち、畦越えグリップ105,105を握る作業者は、畦越えグリップ105,105に均等に力をかけるべく、この出入口に凹凸に合わせて姿勢を傾けたり捻ったりするが、畦越えアーム104及び畦越えグリップ105,105の姿勢は変化しないため、不自然な体勢で作業を行うことになるので、作業者に大きな労力を強いている。
【0122】
このため、図21で示すとおり、前記メインフレーム15の前側端部に、前後方向に回動自在な畦越え回動フレーム106を前後方向に所定範囲内で回動自在に設け、該畦越え回動フレーム106の前側左右方向中央部に、左右方向に回動自在に畦越えアーム104の基部を軸着する。なお、該畦越えアーム104は、ベアリング104a等を介して設けるものとする。
【0123】
そして、畦越えアーム104が左右方向に過度に回動することを防止すべく、畦越え回動フレーム106の前側に、所定の位置で畦越えアーム104を受け止める停止ピン107,107を少なくとも左右一対設ける。なお、畦越えアーム104は上下方向に長いので、該停止ピン107,107は、上下方向に複数個所、上側ほど左右間隔を広く開けて配置することが望ましい。
【0124】
さらに、畦越えアーム104の基部にはトルクスプリング108を設け、作業者が畦越えグリップ105,105または畦越えアーム104から手を離すと、自動的に中央位置に戻る構成とすると、畦越えアーム104を戻し忘れることが防止される。
【0125】
上記構成により、畦越えアーム104を回動させて、作業者の姿勢に合う位置で畦越えグリップ105,105を握ることができるので、作業者は比較的自然な姿勢で圃場の出入口での操作を行うことができるので、作業能率が向上するとともに、作業者が疲れにくく、作業者の労力が軽減される。
【0126】
また、畦越え回動フレーム106によって前後方向にも回動させることができるので、作業者が走行車体2の浮き上がりを押さえ易い作業状態に変更しやすくなるため、一層作業者の労力が軽減される。
【符号の説明】
【0127】
2 走行車体
4 苗植付部
11 後輪(走行装置)
72 左右切替ソレノイド(マーカ切替部材)
76 畦際作業スイッチ(畦際検知部材)
76a 発光体
77 マーカ作動センサ(作動回数検知部材)
78 後輪回転センサ(走行回転検知装置)
79 傾斜センサ(傾斜検知部材)
80 作業操作レバー(作業操作部材)
81 調節下降ボタン(調節下降部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田圃場に苗を移植する、苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の苗移植機には、圃場に直進の目安となる線を形成する左右の線引きマーカを、旋回開始時に苗植付部の昇降に連動して自動的に上方に移動させると共に、旋回終了後に苗植付部の下降に連動して旋回前とは反対側の線引きマーカを自動的に下降させ、苗の植付と同時に次の作業位置に線を形成する技術が存在する。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−246409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された苗移植機は、圃場の隅で旋回する際に苗植付部を上昇させ、旋回後に苗植付部を下降させると、畦に線引きマーカが下降して接触し、接触の衝撃で線引きマーカが破損する問題がある。
【0005】
また、圃場端部に苗を植え付ける際、既に苗を植えている側の線引きマーカが下降し、線引きマーカが苗を押し潰してしまうと、作業者が潰れた苗を引き抜いて新しい苗を手作業で植え直す作業が必要になり、作業能率の低下、及び作業者の労力が増大する問題がある。
【0006】
上記の問題を解決すべく、圃場端付近での植付作業時は線引きマーカの自動作動を切ることはできるが、広い圃場では直進の目安となる線がないと走行方向が乱れやすくなるため、苗の植付条が蛇行したり斜めになったりして、圃場全体を有効に活用できず作物の収穫量が減少する問題がある。
【0007】
植え付けが行われていない箇所に作業者が手作業で苗を植えることはできるが、このとき、作業者の労力が大幅に増大してしまう問題がある。
本発明は、この問題を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、走行車体(2)の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付部(4)を昇降自在に設け、該苗植付部(4)の側方に直進走行の指標となる線を圃場に形成する線引きマーカ(68)を設け、前記苗植付部(4)の昇降に連動して該線引きマーカ(68)の作動方向を交互に切り替えるマーカ切替装置(72)を設けた苗移植機において、畦際での植付作業を検知する畦際検知部材(76)を設け、該畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知すると、前記苗植付部(4)を昇降させてもマーカ切替装置(72)の線引きマーカ(68)の作動方向を切り替えない構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知すると線引きマーカ(68)の昇降回数を記憶する作動回数検知部材(77)を設け、該作動回数検知部材(77)の検知回数が所定回数未満であるときは苗植付部(4)を昇降させてもマーカ切替装置(72)の作動方向を切り替えない構成とすると共に、作動回数検知部材(77)の検知回数が所定回数以上になると前記線引きマーカ(68)が圃場に線を形成しないようにマーカ切替装置(72)の作動を停止する構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記走行車体(2)に走行装置(11)を設け、該走行装置(11)の回転数を検知する走行回転検知装置(78)を設け、該走行回転検知装置(78)の検知する回転数が植付作業開始時から所定回数以上になるまでは、前記畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知していても前記マーカ切替装置(72)の作動方向が交互に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機とした。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記畦際検知部材(76)に発光体(76a)を設け、前記走行回転検知装置(78)が所定回数以上の回転を検知すると、該発光体(76a)が発光する構成としたことを特徴とする請求項3記載の苗移植機とした。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記苗植付部(4)を操作する作業操作部材(80)に、前記苗植付部(4)が所定高さ以上に上昇しているときに該苗植付部(4)を自動的に所定距離下降させる調節下降部材(81)を設けたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の苗移植機とした。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記畦際検知部材(76)をスイッチで構成し、前記走行車体(2)に傾斜を検知する傾斜検知部材(79)を設け、該傾斜検知部材(79)が所定角度以上の傾斜を検知すると、前記畦際検知部材(76)が自動的に「切」になる構成としたことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知すると、苗植付部(4)を昇降させてもマーカ切替部材(72)の線引きマーカ(68)の作動方向を切り替えない構成としたことにより、線引きマーカ(68)が圃場に線を形成する側が機体の一側または他側に保たれるので、畦際で植付作業をする際に線引きマーカ(68)が畦に下降して接触することが防止され、線引きマーカ(68)が破損することが防止される。
【0015】
また、畦際の隣接条に苗の植付作業をする際、線引きマーカ(68)が既に苗を植えた側に下降することを防止できるので、線引きマーカ(68)が苗を押し潰すことが防止され、作業者が潰れた苗を引き抜いて新しい苗に植え直す作業が不要となり、作業者の労力が軽減されると共に、無駄になる苗が減少する。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、作動回数検知部材(77)で線引きマーカ(68)の昇降回数を記憶し、昇降回数が所定回数未満であるときはマーカ切替装置(72)の作動方向が切り替えられなくなる構成としたことにより、畦際の隣接条に苗の植付作業をする際、線引きマーカ(68)が既に苗を植えた側に下降することを防止できるので、線引きマーカ(68)が苗を押し潰すことが防止され、作業者が潰れた苗を引き抜いて新しい苗に植え直す作業が不要となるので、作業者の労力が軽減されると共に、無駄になる苗が減少する。
【0017】
また、線引きマーカ(68)の昇降回数が所定回数以上になると、マーカ切替装置(72)の作動を停止させる構成としたことにより、畦際に苗を植え付ける際に線引きマーカ(68)が畦または苗を植え付けた隣接条に向かって移動することを防止できるので、線引きマーカ(68)が破損することが防止されると共に、線引きマーカ(68)が苗を押し潰し、作業者が苗を植え直す作業が不要となる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、走行装置(11)の回転数が植付作業開始時から所定回転数以上になるまでは、畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知していてもマーカ切替装置(72)の作動方向が交互に切り替わる構成としたことにより、畦際検知部材(76)が畦際でない位置で畦際での植付作業中であると誤認することが防止され、線引きマーカ(68)の作動が走行車体(2)の操作と一致しなくなることを防止できるので、圃場に直進の目安となる線が形成されなくなり、走行車体(2)が直進走行できず、苗の植付条が蛇行したり斜めになったりすることが防止され、苗の植付精度が向上する。
【0019】
そして、苗の植付条の間隔が極端に狭くなり、養分を取り合って生育不良を起こし、作物の収穫量や品質が低下することが防止される。
また、苗の植付条の間隔が極端に広くなり、作業者が手作業で苗を植え付ける作業が必要となることを防止できるので、作業者の労力が軽減される。
【0020】
請求項4記載の発明の効果は、請求項3記載の発明の効果に加えて、走行装置(11)の回転数が所定回転数以上となると畦際検知部材(76)に設けた発光体(76a)が発光する構成としたことにより、作業者は畦際検知部材(76)が検知可能になったことを認識することができるので、畦際検知部材(76)の操作を受け付けないタイミングで畦際検知部材(76)を操作することが防止され、線引きマーカ(68)が圃場外に接触して破損することが防止される。
【0021】
請求項5記載の発明の効果は、請求項1から4の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、苗植付部(4)が所定高さ以上に上昇しているときに調節下降部材(81)が苗植付部(4)を所定距離下降することにより、苗植付部(4)を僅かに下降させて作業者の後方の視認性を確保することができるので、後進操作時に苗植付部(4)の下部が畦際に接触して破損することが防止される。
【0022】
また、畦際直前まで後進が行われず、苗の植付開始位置と畦際の間に苗が植えられない空間が発生することを防止できるので、作業者が苗を植え付ける作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
【0023】
そして、苗植付部(4)の下降距離が決められていることにより、苗植付部(4)が不要なときに圃場面に接触することを防止できるので、圃場面が荒れて苗の植付深さが乱れ、苗の生育不良が防止されると共に、苗植付部(4)が苗を押し潰すことが防止される。
【0024】
請求項6記載の発明の効果は、請求項1から5の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、傾斜検知部材(79)が所定角度以上の走行車体(2)の傾斜を検知すると、スイッチ式の畦際検知部材(76)が自動的に「切」になる構成としたことにより、畦際検知部材(76)を切り忘れることを防止できるので、線引きマーカ(68)の作動方向が適切になるため、苗の植付精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】乗用型田植機の側面図
【図2】乗用型田植機の平面図
【図3】線引きマーカの作用状態を示す要部正面図
【図4】昇降シリンダと左右切替ソレノイドを示す要部側面図
【図5】線引きマーカを示す要部正面図
【図6】線引きマーカを示す断面図
【図7】作業時の走行方向を示す参考図
【図8】各制御部材のブロック図
【図9】畦際作業スイッチを「入」にしたときの制御を示すフローチャート
【図10】バランスフレーム及び増設ウェイトを備えた乗用型田植機の平面図
【図11】フロートを最下降状態とした乗用型田植機を示す側面図
【図12】操縦部の要部拡大平面図
【図13】走行操作レバーの要部拡大平面図
【図14】(a)前後から操作可能なデフロックアームを示す要部側面図、(b)前後から操作可能なデフロックアームを示す要部平面図
【図15】デフロックアームを装着した乗用型田植機の正面図
【図16】デファレンシャルロック機構及びエンジン回転操作位置を示す要部平面図
【図17】(a)機体前側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第1動作を示す要部正面図、(b)機体前側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第2動作を示す要部正面図、(c)機体前側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第3動作を示す要部正面図、(d)機体前側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第4動作を示す要部正面図
【図18】(a)機体後側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第1動作を示す要部正面図、(b)機体後側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第2動作を示す要部正面図、(c)機体後側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第3動作を示す要部正面図、(d)機体前側からデファレンシャルロック機構を解除する際の第後動作を示す要部正面図
【図19】前後及び左右方向に回動可能な畦越えアームを備える乗用型田植機の正面図
【図20】前後及び左右方向に回動可能な畦越えアームの要部正面図
【図21】前後及び左右方向に回動可能な畦越えアームの要部側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
本件においては、平面図において、機体の進行方向に対して左側を機体左右一側、機体の進行方向に対して右側を機体左右他側と称する。以下、各部の詳細を具体的に記載する。
【0027】
図1及び図2は、本発明の作業機の一実施例である乗用型田植機の側面図と平面図である。また、図12及び図19は正面図である。なお、図2に開示されている田植機は4条植えの構成であるが、本構成を4条未満の田植機、並びに5条以上の田植機に用いても構わない。
【0028】
この乗用型田植機は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4を昇降可能に設け、該走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分を配置している。そして、該走行車体2の前部にミッションケース12を設け、該ミッションケース12の左右側方にそれぞれ前輪ファイナルケース13,13を設けると共に、該左右の前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右の前輪車軸14に駆動輪である左右一対の前輪10,10を設ける。
【0029】
また、前記ミッションケース12の背面部に機体のメインフレーム15の前端部を固着し、該メインフレーム15の後端部で且つ左右方向中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示省略)を支点として左右の後輪ギアケース18,18をローリング自在に設け、該後輪ギアケース18,18から外側方向に向けて突出させた左右の後輪車軸18a,18aにそれぞれ後輪11,11を軸着する。
【0030】
さらに、前記メインフレーム15の上部で且つ、機体の前後及び左右方向の略中央位置にエンジン20を設け、該エンジン20の駆動力をベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置(HST)23を介して前記ミッションケース12に伝動する構成とする。そして、前記ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12に内装するトランスミッション(図示省略)により変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0031】
これにより、走行駆動力の一部が前記左右の前輪ファイナルケース13,13に伝達されて左右の前輪10,10を回転駆動させると共に、残りの走行駆動力は前記左右の後輪ギアケース18,18に伝達されて左右の後輪11,11を回転駆動させる。
【0032】
また、外部取出動力は、前記走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、該植付クラッチケース25から植付伝動軸26を経由して苗植付部4へ伝動されると共に、施肥伝動機構(図示省略)を経由して前記施肥装置5に伝動される。
【0033】
前記メインフレーム15の上部に、該メインフレーム15を覆う平坦なフロアステップ35を前記エンジン20を避けて設け、該フロアステップ35上で且つエンジン20の外周に、エンジン20を覆うエンジンカバー30を設ける。該エンジンカバー30は前側下部を回動支点として回動可能に構成すると共に、上部に作業者が着座する作業座席31を装着する。
【0034】
そして、該作業座席31よりも機体前側で且つフロアステップ35上に、本件作業車両の各種作業機構を内装するボンネット32を設け、該ボンネット32の上部に各作業部の設定を変更操作するスイッチ類を配置する操作パネル33と、作業者が前記左右の前輪10,10を操舵するハンドル34を設ける。
【0035】
また、前記フロアステップ35のうち、作業座席31の左右両側は格子状に形成し、フロアステップ35上を異動する作業者の足等に付着した泥土が圃場に落下する構成としている。そして、前記フロアステップ35の後部には、前記左右の後輪11,11のフェンダを兼ねるリアステップ36,36を設ける。
【0036】
さらに、前記走行車体2の前側で且つ左右両側に支柱38をそれぞれ設け、該左右の支柱38a,38aに、補充用の苗を載置する予備苗載せ台38b…を上下方向に複数、本件では図1で示すとおり2つ設けて、左右の予備苗枠38,38を構成する。
【0037】
左右の予備苗枠38,38を設けたことにより、補充用の苗を予め機体に積み込んでおくことができるので、植え付ける苗が無くなった際に圃場端まで苗を取りに戻る回数が減少するため、作業能率が向上する。
【0038】
また、フロアステップ35の上に苗を置く必要がなくなるので、作業者がフロアステップ35上を移動しやすくなり、作業能率が向上すると共に、積載した苗が機体の振動などによって落下することを防止できるので、落下した苗を拾う必要がなく、作業能率が向上する。
【0039】
そして、前記走行車体2及びボンネット32の前側で且つ左右方向の中央位置に畦越えアーム39を設け、該畦越えアーム39の上端部の左右両側に作業者が握るための左右のグリップ40,40を設ける。また、前記畦越えアーム39の上端部に、前後方向に回動自在にセンターマスコット41を取り付ける。
【0040】
さらに、前記メインフレーム15の後端部で且つ左右中央位置に上下方向の支持フレーム41を設け、該支持フレーム41に上下一対の昇降リンクアーム42,42の基部を平行に配置する。そして、該昇降リンクアーム42,42の端部を苗植付部4のリンクフレーム43に取り付けて平行リンクとし、前記メインフレーム15と支持フレーム41に亘って昇降シリンダ44を伸縮自在に取り付ける。該昇降シリンダ44が伸びると苗植付部4が下降し、縮むと苗植付部4が上昇する構成とする。なお、該昇降シリンダ44は、メインフレーム15に設ける油圧バルブ44aの開閉により伸縮する構成とする。
【0041】
また、前記リンクフレーム43に伝動ケース45を設け、該伝動ケース45の前側上部に植付部フレーム46を上下方向に配置する。該植付部フレーム46の上端部には受けローラ47を回転自在に設け、該受けローラ47と伝動ケース45の後部で複数の苗を載置する苗タンク48を支持する。該苗タンク48には、苗を仕切る苗フェンス49を等間隔に設け、苗タンク48の上端部には、苗を一対の苗フェンス49,49の左右間に案内する苗ガイド50を1条ごとに設ける。
【0042】
なお、一対の苗フェンス49,49はその左右間隔は約30cmとし、苗ガイド50の左右幅もこの左右間隔と同じ約30cmとすると、苗が苗タンク48にずれることなく案内されやすくなる。
【0043】
そして、前記苗タンク48の下端部には、苗を受け止める側面視L字形状の苗受け板51を固定すると共に、苗タンク48の機体前部には、苗を下方に送り出す苗送り装置52,52を、1条につき一対配置する。さらに、前記伝動ケース45の後側下部に複数の、本件では図2で示すとおり2つの植付伝動ケース53,53を設け、該植付伝動ケース53の左右両側に、2つの植込稈54,54を備える植付ロータリ55をそれぞれ配置する。
【0044】
なお、前記伝動ケース45は、植付伝動ケース53,53に駆動力を供給するだけでなく、苗タンク48を左右方向に移動させる摺動装置(図示省略)も駆動している。この摺動装置の駆動によって苗タンク48が左右端に到着すると、苗送り装置52,52を所定距離に亘って作動させるスイッチ(図示省略)が入る構成とする。
【0045】
また、前記植付部フレーム46の下部で且つ左右中央部に回動支持アーム56を上下方向に回動自在に設け、左右両側部にフロート支持アーム(図示省略)を設ける。該回動支持アーム56の下部に圃場に接触して滑走するセンターフロート57Cを設け、左右のフロート支持アームの下部に圃場に接触して滑走するサイドフロート57L,57Rをそれぞれ設ける。そして、該センターフロート57Cの取付部にポテンショメータ58を設け、該ポテンショメータ58の検知するセンターフロート57Cの角度に合わせて前記油圧バルブ44aを微細に開閉し、昇降シリンダ44を微細に伸縮させる構成とする。
【0046】
さらに、前記植付部フレーム46の上部側に一対のロータリンクアーム59,59を設け、該ロータリンクアーム59,59の一方にロータ吊下アーム60を伸縮自在に設けると共に、ロータリンクアーム59の他側にロータ支持アーム61を設ける。なお、ロータ支持アーム61は、左右に1本ずつ設ける。
【0047】
そして、機体右側の後輪ギアケース18の後部に後側下方に向けてロータ伝動軸62の基部を設け、該ロータ伝動軸62の端部をロータ伝動ケース(図示省略)を設ける。該ロータ伝動ケースの右側に、右側のサイドフロート57Rの前側の圃場面を回転しながら均す右側のサイドロータ63Rを設け、ロータ伝動ケースの左側に、前後方向の接続伝動ケース64Rの後部側を設ける。さらに、該右側の接続伝動ケース64Rの前部側に、センターフロート57Cの前側の圃場面を回転しながら均すセンターロータ63Cの右側端部を連結し、該センターロータ63Cの左側端部を左側の接続伝動ケース64Lの前部側に設けると共に、該左側の接続伝動ケース64Lの後部側に左側のサイドフロート57Lの前側の圃場面を回転しながら均す左側のサイドフロート57Lを設ける。
【0048】
さらに、前記センターロータ63Cの上部を覆うセンターロータカバー65Cを左右の接続伝動ケース64L,64Rの左右間に亘って設け、左右の接続伝動ケース64L,64Rの後部側に左右のサイドロータ63L,63Rの上部を覆うサイドロータカバー65L,65Rを設けることにより、整地ロータユニット66が構成される。
【0049】
上記構成により、センターロータ63C及び左右のサイドロータ63L,63Rで圃場面を均した後をセンターフロート57C及び左右のサイドフロート57L,57Rが接地しながら移動することができるので、植込稈54…で圃場に植え付ける苗の深さが一定に保たれるため、苗の生育が安定する。
【0050】
また、センターフロート57Cの上下角度に合わせて苗植付部4が微細に昇降する構成となっているが、センターロータ63C及び左右のサイドロータ63L,63Rで圃場面を均しているため、センターフロート57Cの角度変化が過度に発生することが防止され、大きな圃場の凹凸があるときのみ苗植付部4が上下動するため、いっそう苗の植付精度が向上する。
【0051】
さらに、センターロータ63C及び左右のサイドロータ63L,63Rの上部をセンターロータカバー65C及びサイドロータカバー65L,65Rで覆うことにより、センターロータ63C及び左右のサイドロータ63L,63Rが圃場の泥土を跳ね上げても、この泥土が周辺に飛散することを防止できるので、機体や作業者が泥土で汚れることが防止される。
【0052】
そして、図1及び図2で示すとおり、前記苗タンク48の機体前側、即ち苗を載置しない側の左右端部側にマーカロッド67をそれぞれ設け、該マーカロッド67,67の端部に、圃場に機体直進の目印となる線を引く線引きマーカ68,68を回転自在に装着する。なお、図3、図5及び図6で示すとおり、線引きマーカ68はディスク体68aの外周縁部に土を描き切って溝を形成する溝切り突起68b…を等間隔に複数配置して構成するものである。
【0053】
図3で示すとおり、前記植付部フレーム46の下部に支持ブラケット46aを設け、該支持ブラケット46aの左右両端部で且つ苗タンク48の前側に、左右方向に回動自在なマーカアーム69を介して前記マーカロッド67を取り付ける。そして、前記支持ブラケット46aの下部とマーカアーム69の間に、マーカアーム69を苗タンク48側に付勢する付勢スプリング70を設けると 共に、前記昇降シリンダ44の固定側、即ち伸縮動作時に動かない側に、左右のマーカ操作ワイヤ71L,71Rを備えた左右切替ソレノイド72を設ける。
【0054】
図4で示すとおり、該左右切替ソレノイド72には、左のマーカ操作ワイヤ71Lの作動を規制する左側の引張ピン73Lと、右側のマーカ操作ワイヤ71Rの作動を規制する右側の引張ピン73Rが設けられており、左右切替ソレノイド72の動作により、左側の引張ピン73Lが作動する状態、右側の引張ピン73Rが作動する状態、そして左右の引張ピン73L,73Rの両方が作動していない状態に切り替わるものとする。
【0055】
そして、前記左右のマーカ操作ワイヤ71L,71Rをそれぞれ左右のマーカアーム69,69の上部に連結し、前記ハンドル34の基部に操舵方向を検出するハンドルポテンショメータ74を設け、該ハンドルポテンショメータ74が操舵方向を検出すると、左右切替ソレノイド72を作動させる構成とする。
【0056】
まず、ハンドル34を左右いずれかの旋回方向に操作すると油圧バルブ44aが作動して昇降シリンダ44を収縮させ、苗植付部4を非植付作業高さまで上昇させる。このとき、左右のマーカ操作ワイヤ71L,71Rは昇降シリンダ44の収縮動作により非作用状態となるため、マーカアーム69,69が付勢スプリング70,70に引っ張られてマーカロッド67,67を持ち上げた状態、即ち、左右のマーカロッド67,67が共に非作用状態となる。
【0057】
そして、ハンドル34が右旋回方向に操舵されたことをハンドルポテンショメータ74が検知した状態で、旋回操作から直進操作に戻すと、油圧バルブ44aが作用して昇降シリンダ44が伸張し、苗植付部4が植付作業高さまで下降する。このとき、左右切替ソレノイド72は左側の引張ピン73Lを作動させて左側のマーカ操作ワイヤ71Lを非作用状態に切り替え、左側のマーカアーム69が付勢スプリング70によって付勢され、左側のマーカロッド67が上昇した状態とする。一方、右側のマーカ操作ワイヤ71Rは昇降シリンダ44の伸張に伴い復動し、右側のマーカアーム69を付勢スプリング70の張力よりも強い力で回動させて右側のマーカロッド67を圃場面に対して略水平な姿勢に変更し、端部に装着した右側の線引きマーカ68が圃場面に接触して溝を形成する形態とする。
【0058】
また、ハンドル34が左旋回方向に操舵されたことをハンドルポテンショメータ74が検知した状態で、旋回操作から直進操作に戻すと、油圧バルブ44aが作用して昇降シリンダ44が伸張し、苗植付部4が植付作業高さまで下降する。このとき、左右切替ソレノイド72は右側の引張ピン73Rを作動させて右側のマーカ操作ワイヤ71Rを非作用状態に切り替え、右側のマーカアーム69が付勢スプリング70によって付勢され、右側のマーカロッド67が上昇した状態とする。一方、左側のマーカ操作ワイヤ71Lは昇降シリンダ44の伸張に伴い復動し、左側のマーカアーム69を付勢スプリング70の張力よりも強い力で回動させて左側のマーカロッド67を圃場面に対して略水平な姿勢に変更し、端部に装着した左側の線引きマーカ68が圃場面に接触して溝を形成する形態とする。
【0059】
そして、前記植付部フレーム46の左右両側に、左右のマーカロッド67,67を引っ掛けて非作用状態とする収容フック75をそれぞれ設け、苗移植機をしまうときや、線引きマーカ68,68を使用しないときに、左右のマーカロッド67,67を収容可能な構成とする。マーカロッド67,67を収容フック75,75に引っ掛けた状態では、マーカロッド67,67が苗タンク48の左右幅内に収まる構成としておくと、線引きマーカ68,68が左右に突出しにくくなるため、線引きマーカ68,68が壁等に当たって破損しにくくなる。
【0060】
上記構成としたことにより、圃場端で旋回する前に左右の線引きマーカ68,68が自動的に上昇するので、旋回中に線引きマーカ68,68が圃場面や畦に接触することを防止でき、苗が押し倒されることが防止されて苗の植え直し作業が省略されると共に、線引きマーカ68,68の破損が防止され、耐久性が向上する。
【0061】
また、旋回終了時に、ハンドルポテンショメータ74が検知した右または左の旋回方向と同じ側の線引きマーカ68が圃場面に向かって下降移動して線を引く状態となり、旋回方向と反対側の線引きマーカ68が圃場面から離間した位置に上昇移動して非作用状態となる構成としたことにより、植付作業を行いながら次の作業位置に直進の目安となる線を引くことができるので、苗移植機が直進しやすくなり、苗の植付精度が向上する。
【0062】
そして、旋回前、旋回後のいずれも線引きマーカ68,68を操作する必要が無いので、作業者が余分な操作をする必要が無く、操作性や作業能率が向上する。
上記の、旋回方向に合わせて交互に左右の線引きマーカ68,68が作用状態と非作用状態とする作業は、圃場内を直進走行し、圃場端で180度旋回する工程で行うものである。一方、圃場の四隅、所謂畦際では、圃場端部に沿って直進しながら苗の植え付けを行い、隅まで植え付けると所定距離後進した後で90度旋回し、所定距離後進した後、直進しながら植え付けを行う工程では、交互に線引きマーカ68,68が作動すると、畦際に近い側の線引きマーカ68が下降して畦際に接触し、必要な箇所に線が引けず直進性が低下すると共に、接触の際に線引きマーカ68やマーカロッド67が破損してしまう問題があった。
【0063】
このため、線引きマーカ68,68を使用せずに作業をすることもあるが、畦際とその内周をそれぞれ一周して畦際の植付を行う作業形態を行うときは、畦際の作業の際に目安となる線が無く、既に植え付けられた苗を前輪10や後輪11で踏み潰してしまい、踏み潰した苗を手作業で抜いて植え直す作業が必要となり、作業者の労力が増加してしまう問題がある。また、苗を踏み潰さなくとも、苗同士の条間隔が極端に狭くなり、養分の取り合いで生育不良を起こす問題や、風通しの悪さにより病害虫が発生しやすくなる問題がある。
【0064】
上記の問題を解決すべく、図2及び図12で示すとおり、操作パネル33に畦際作業スイッチ76を設け、該畦際作業スイッチ76を「入」操作すると左右切替ソレノイド72の切替方向をハンドルポテンショメータ74の操作方向にかかわらず一定方向にのみ作動させると共に、線引きマーカ68,68の昇降動作回数をカウントするマーカ作動センサ77が作動する構成とする。
【0065】
畦際とその内周をそれぞれ一周ずつ回りながら苗を植え付ける作業工程では、まず内周側を植付走行し、畦際の最終作業位置に一側の線引きマーカ68で線を引いていく。圃場の四隅での旋回角度は約90度であるため、線を形成するために必要な線引きマーカ68は、左右のどちらか一側の線引きマーカ68となる。
【0066】
畦際作業スイッチ76を「入」にすると、圃場隅での90度旋回後にマーカ作動センサ77が畦際側の線引きマーカ68を自動的に連続して下降移動させることにより、作業者が直進走行開始前に苗植付部4を昇降させて畦際側の線引きマーカ68を下降移動させる操作が不要となるため、操作性や作業能率が向上する。
【0067】
また、マーカ作動センサ77が線引きマーカ68の昇降をカウントしていることにより、畦際の内周の四辺で植付作業をするときは自動的に畦際側の線引きマーカ68を下降移動させて線引き作業状態とすることができると共に、畦際の内周から畦際に作業が移行するとき、即ち線引きマーカ68による線引き作業が不要となる工程に移行するときに、線引きマーカ68,68が左右どちらも非作用状態となるよう左右切替ソレノイド72が切り替わる制御構成とすることができるので、畦に一方の線引きマーカ68が接触して破損することが防止されると共に、他方の線引きマーカ68が圃場に植え付けられた苗に接触して押し潰してしまうことが防止される。
【0068】
上記構成とすべく、マーカ作動センサ77は、4回目の苗植付部4の上昇に伴う左右切替ソレノイド72の作動が行われると、該左右切替ソレノイド72の切替を規制する信号を制御装置200に発信するものとする。但し、畦際の四隅で90度旋回する際にもマーカ作動センサ77はカウントを継続し、8回目のカウントが発生する、即ち畦際の四隅の植付作業が完了して苗植付部4が上昇されると、作業者が畦際作業スイッチ76を操作しなくても、自動的に該畦際作業スイッチ76を「切」操作する制御構成とする。
【0069】
上記構成により、次の圃場に移動して作業を開始した際に、圃場端で180度旋回する必要がある圃場内での作業工程であるにもかかわらず、畦際作業スイッチ76が「入」のままになっており、最初にハンドル34を操舵してハンドルポテンショメータ74が検知した旋回方向の線引きマーカ68が出続け、適切な線引き作業が行われなくなることが防止され、作業能率が向上すると共に、苗の踏み潰しが防止される。
【0070】
なお、前記マーカ作動センサ77は、左右切替ソレノイド72の作動が規制される畦際での植付作業工程でもカウントを確実に取るべく、昇降リンクアーム42,42に設け、苗植付部4の上下動に連動させる構成とすると、確実且つ簡潔にカウントを行うことができる構成となる。
【0071】
また、前記畦際作業スイッチ76が「切」状態であるとき、後輪11,11の回転数をカウントして走行距離や走行速度を算出する左右の後輪回転センサ78,78が所定回転数をカウントするまでは操作を受け付けない構成とする。この所定回転数は圃場の広さや作業速度によって変化するので、作業者が受付可能とする最低回転数を設定可能にするとよい。
【0072】
上記構成により、植付作業前や走行再開する際など、発進時に苗植付部4を下降させる作業が行われ得る状態であるとき、畦際作業スイッチ76を誤って操作してしまっても、所定距離を走行するまでは線引きマーカ68の畦際作業制御が行なわれなくなるため、不要な箇所に線引きが行われたり、苗を押し潰したりすることが防止され、作業者の労力が軽減される。
【0073】
なお、畦際作業スイッチ76にLED等の発光体76aを設け、畦際作業スイッチ76の操作が受付できる状態、即ち後輪回転センサ78,78が所定数以上回転した状態になると、畦際作業スイッチ76が点滅する構成とすると、作業者が操作受付タイミングを把握しやすくなり、操作性が向上する。
【0074】
なお、前記発光体76aは点滅でなく、常時発光して操作を受け付ける状態であることを示す構成としてもよい。
また、走行車体2のメインフレーム15に、苗移植機の前後方向、即ちピッチング方向の傾斜を検知する傾斜センサ79を設け、所定角度、例えば約10度以上傾斜すると、圃場の出入口の傾斜部を移動していると判断して、畦際作業スイッチ76を自動的に「切」にする構成としても良い。
【0075】
上記構成とすることにより、圃場の出入口の直前まで苗植付部4を下降させて苗を植え付ける作業を行うとき、即ちその圃場での作業を終了するときを基準として畦際作業を終わることができるので、畦際作業スイッチ76を切り忘れることが防止され、次の圃場での作業性や苗の植付精度が向上する。
【0076】
また、本件構成の苗移植機では、ハンドル34を旋回角度まで操舵すると旋回内側のサイドクラッチ(図示省略)が切れる構成としており、このとき後輪回転センサ78の回転数と旋回外側の後輪回転センサ78の回転数に所定値以上の差が生じると、油圧バルブ44aを作動させて昇降シリンダ44を収縮させ、自動的に苗植付部4を昇降させると共に、ハンドル34の操舵角度が所定値未満に戻され、サイドクラッチが繋がり左右の後輪回転センサ78,78の回転数が略同じに戻ると、油圧バルブ44aを作動させて昇降シリンダ44を伸張させ、自動的に苗植付部4を下降させ、後輪回転センサ78,78の回転数がさらに所定値をカウントすると、植付クラッチケース25内の植付クラッチ25aを自動的に「入」にして苗の植付作業を開始する旋回制御機構Tが搭載されている。
【0077】
しかしながら、上記旋回制御機構Tは、180度旋回の際には苗の植付終了位置や植付開始位置を揃えて植付精度を向上させる効果を有するものの、畦際直前まで機体を前進させて苗を植え付け、いったん後進してから旋回し、旋回後に畦際まで後進した後、苗植付部4を下降させてから植付作業を再開する90度旋回の場合は、苗の植付タイミングが乱れてかえって植付精度が低下したり、作業者の意図に反する昇降を行うことにより、苗を押し潰してしまい、作業者が植え直すため労力が増大するという問題が生じる。
【0078】
このため、前記畦際作業スイッチ76を操作すると、左右の後輪回転センサ78,78の回転数に所定値以上の差が発生しても油圧バルブ44aを作動させず、作業者がボンネット32に設ける作業操作レバー80を操作すると苗植付部4が昇降すると共に、植付クラッチ25aが「入」となって植付伝動ケース53,53に駆動力が伝動される構成としてもよい。
【0079】
上記構成により、苗移植機の旋回位置に合わせて旋回制御機構Tの入切を変更することができるので、旋回制御機構Tの入切操作を行なう必要が無く、操作性や作業能率が向上する。
【0080】
また、上記のとおり、圃場の四隅で90度旋回する際には、畦際まで機体を前進させ、旋回開始位置まで後進した後、旋回終了後に畦際まで後進した後、苗植付部4を下降させて植付走行を行うという操作が必要となる。
【0081】
このとき、苗植付部4は上昇させた状態であるため、90度旋回の終了後に畦際まで後退する際、苗植付部4の苗タンク48や苗ガイド50が作業者の視界を妨げ、畦際まで後退せずに植付作業を始めてしまい、苗が植え付けられていないところに手作業で苗を植えるため、作業者の労力が増大する問題がある。また、苗植付部4の下部側の植付伝動ケース53,53や植込稈54…等を畦際に接触させて破損させてしまう問題がある。
【0082】
これを解消すべく、作業者は手動操作で苗植付部4を僅かに下降させて視界を確保しているが、微細な調整作業であるため調整に時間がかかり、作業能率を低下させてしまうと共に、操作を誤ると苗植付部4が下がり過ぎてしまい、植込稈54…に泥土が付着して苗の掻き取りを失敗し、苗の植付不良を起こす問題があると共に、圃場の隅の表面が荒れて、苗の植付深さが一定にならず、生育不良が生じる問題がある。
【0083】
このため、作業操作レバー80、あるいは操作パネル33に調整下降ボタン81を設け、該調整下降ボタン81を操作すると油圧バルブ44aが所定時間、例えば約2秒間作動して昇降シリンダ44を対応する長さだけ伸張させて、苗植付部4を僅かに下降させる構成とすると良い。
【0084】
上記構成により、苗タンク48や苗ガイド50が作業座席31に着座した作業者の視界を妨げず、且つ植付伝動ケース53,53や植込稈54…が圃場面から十分に離間する高さまで苗植付部4を下降させることができるので、作業者は畦際までの距離を視認しながら後進することができ、苗が畦際直前から植え付けられて手作業による植え付けが不要となり、作業者の労力が軽減されると共に、圃場面が荒らされることや植込稈54…に泥土が付着することが無く、苗の植付深さが一定となり、苗の生育が安定し、収量や品質が向上する。
【0085】
なお、苗植付部4の下降は、上記のとおり油圧バルブ44aの作動時間を制御してもよいが、昇降リンクアーム42,42にポテンショメータ(図示省略)を設け、該ポテンショメータが所定角度を検出すると油圧バルブ44aを停止させる構成としても良い。
【0086】
前記線引きマーカ68,68の作動方向は、旋回時の苗植付部4の昇降に伴う、昇降シリンダ44の作動に連動する左右切替ソレノイド72によって定められているが、作業者が旋回タイミングを誤ってハンドル34を操作したり、障害を回避するべく大きく操作した際に、苗植付部4が上昇して左右切替ソレノイド72を作動させてしまうことがある。この状態で作業を継続すると、旋回方向と反対側の線引きマーカ68が線引き作業状態となり、既に苗を植え付けた位置に下降し、苗を押し潰してしまう問題がある。
【0087】
このため、作業者は誤操作による線引きマーカ68,68の誤作動を防止すべく、走行を停止して苗植付部4を昇降させ、左右切替ソレノイド72の作動順を調整する必要がある。
【0088】
しかしながら、上記の調整操作ができるのは、作業者が誤操作を行ったことを認識しているときであり、作業者が誤操作したことに気付いていないときは、気付かずに旋回操作を行ってしまい、作業状態になってはならない側の線引きマーカ68が作業状態となってしまう。
【0089】
これを防止すべく、左右の後輪回転センサ78,78の回転数の差から旋回方向を判断し、左右切替ソレノイド72の作動方向、即ち左側の引張ピン73または右側の引張ピン73Rを作動させる方向が旋回方向と一致しないときは、ブザー82を作動させて作業者に報知する構成とすると、作業者は遅くとも旋回途中で線引きマーカ68の作動タイミングが合わなくなっていることに気付くことができるので、旋回が終了し、苗の植付が開始される前に調整操作を行うことができ、線引き作業が適切に行われ、苗の植付精度が向上する。
【0090】
なお、苗移植機の旋回方向の検出は、ハンドルポテンショメータ74の検出方向を用いても良い。
図10で示すのは、機体左側に予備苗載せ台38bが複数段、本件では2段に上下方向に並ぶ積層状態と、前後に並ぶ展開状態に切替可能なスライド予備苗枠83を設ける構成である。また、この構成では、機体前側の浮き上がりを防止すべく、メインフレーム15の前側で且つフロアステップ35の下方に左右のバランスフレーム84,84を設けている。
【0091】
前記スライド予備苗枠83は、展開状態及び積層状態の切替機構(図示省略)を有するので、従来の予備苗枠38に比べて5〜6kg程度重量が増しているため、機体の重心が左側に寄り、バランスを悪くする問題がある。
【0092】
前記バランスフレーム84,84は箱型に形成し、内部を中空とし、この内部に板状の金属で構成する増設ウェイト85を任意に投入できる構成とする。
上記構成により、通常の予備苗枠38を設ける機体右側のバランスフレーム84の内部に5〜6kg相当の増設ウェイト85を配置することにより、左右の機体バランスを安定させることができるので、走行姿勢が偏ったり、傾斜地で姿勢が乱れたりすることが防止され、走行性が向上すると共に、作業の安全性が向上する。
【0093】
なお、バランスフレーム84に形成する中空部を左右方向に長く形成することにより、増設ウェイト85を複数配置したり、増設ウェイト85の配置を調節して機体の左右バランスを調節することができるので、細やかな左右のバランス調節が可能となる。
【0094】
また、苗植付部4や施肥装置5の重量により、左右のバランスフレーム84,84だけでは浮き上がりを抑え切れないときは、左右のバランスフレーム84,84に増設ウェイト85…を浮き上がりが生じなくなるまで配置することもできるので、一層安全性が向上する。
【0095】
なお、図10では左側にスライド苗枠83を設ける構成としたが、図2のとおり左右両方とも通常の予備苗枠38,38とするときは、機体前側の左右バランスは安定している。
【0096】
しかしながら、本件の苗移植機に搭載される油圧式無段変速装置(HST)23は、機体の中心線よりも右側に偏って設けられており、機体全体での重量バランスが右寄りとなる。
【0097】
また、施肥装置5には、肥料を各条に送る風を発生させる施肥ブロア86が設けられているが、該施肥ブロア86にはモータ等の重量物が設けられているため、機体全体での重量バランスが右寄りとなる。
【0098】
このため、機体前側の浮き上がりを防止する増設ウェイト85を設けるときは、機体左側のバランスフレーム84に設けると、機体の左右バランスを安定させることが可能となり、走行性や安全性が向上する。
【0099】
図11及び図12で示すとおり、前記昇降シリンダ44を、苗植付部4を最大限下降させる伸張した状態から、さらに伸張可能に構成すると共に、前記操作パネル33に形成する、作業操作レバー80を所定の作業位置に移動操作させるレバーガイド80aに、「最下降」ポジションを形成する。なお、従来のレバーガイド80aは、機体後側から苗植付部4を上昇させる「上昇」、苗植付部4の昇降を停止させる「中立」、苗植付部4が下降する「下降」、植付クラッチ25aを「入」にして植付伝動ケース53を駆動させる「植付入」ポジションを有しており、作業操作レバー80を該当するポジションに操作すると、苗植付部4の昇降及び植付クラッチ25aの入切が行われる構成としている。
【0100】
なお、前記「最下降」ポジションは、「下降」ポジションの側方にL字形の溝を切り、作業操作レバー80を作業者が意識的に操作しないと移動し得ない位置に形成する。
そして、前記作業操作レバー80を「最下降」ポジションに操作すると、苗植付部4が圃場面に接地してもなお昇降シリンダ44が伸張を続け、左右の後輪11,11が圃場面から上方に離間し、苗移植機が左右の前輪10,10とセンターフロート57C、及び左右のサイドフロート57L,57Rで支えられる状態となる。
【0101】
上記構成としたことにより、後輪11,11の着脱時や、メインフレーム15の下部側からのメンテナンス作業を行う際に、ジャッキ等の機材を使うことなく作業を行うことができるので、苗の植付作業中に故障が起こっても、ジャッキを取りに戻ったり、苗移植機を一旦持ち帰ったりして作業を中断することなく、問題点の確認や応急修理を行うことができるので、作業能率が向上する。
【0102】
また、後輪11やメインフレーム15の下部側を見やすいので、故障原因の確認や部品の交換が容易になるので、メンテナンス性が向上する。
なお、上記構成では作業操作レバー80のレバーガイド80aに「最下降」ポジションを形成して苗植付部4の最下降操作を行える構成としたが、図13で示すとおり、油圧式無段変速装置23のトラニオン軸(図示省略)の開度を及び開放方向を変更し、走行車体2の前後進及び走行速度を走行操作レバー87のグリップ部87aに、油圧バルブ44aを作動させて昇降シリンダ44を伸縮させる上下動ボタン88u,88dと、植付クラッチ25aの入切を切り替える植付ボタン88pと、苗植付部4を最下降させる最下降ボタン88mを設ける構成としてもよい。
【0103】
上記構成としたことにより、作業者は操作パネル33側に手を伸ばすことなく苗植付部4の昇降や植付クラッチ25aの入切を操作することができるので、作業性が向上する。
苗移植機の構成によっては、走行車体2を後進させると、植付クラッチ25aの回転方向が逆転するものがある。こうした構成の植付クラッチ25aをそのまま逆回転させると過負荷が生じて破損するため、逆回転が始まると植付クラッチ25aを「切」にする、逆転クラッチ機構90が設けられている。
【0104】
しかしながら、植付クラッチ25aは、植付作業中に切れると、苗の植付が行われない区間が生じる原因となるため、「入」になると容易に切れない構成となっているため、逆転クラッチ機構90が植付クラッチ25aを切操作しても、「切」にならずに逆回転を続けてしまうことがある。
【0105】
このため、該逆転クラッチ機構90が作動する際の振動を検知する振動センサ91を設け、前記左右の後輪回転センサ78,78が検出する回転方向が後進を検出し、このとき所定時間(5〜10秒)以内に振動センサ91が振動を検知しないときは、ブザー82を作動させて作業者に報知する構成とする。
【0106】
上記構成により、逆転クラッチ機構90が植付クラッチ25aを「切」にできないとき、ブザー82が作業者に問題の発生を即座に報知することにより、作業者は作業操作レバー80を操作して手動で植付クラッチ25aを確実に「切」状態とすることができるので、植付クラッチ25aが破損することが防止される。
【0107】
なお、ブザー82を作動させる代わりに、前記走行操作レバー87をモータ等(図示省略)で中立位置に戻して後進を止める構成としてもよい。
走行車体2の走行が停止すれば植付クラッチ25aの回転も停止するので、植付クラッチ25aの破損を防止しつつ、停車することにより、作業者に異常を報知することが可能となる。
【0108】
図14〜図18で示すとおり、前記作業座席31の左前側で且つ、前記ボンネット32の下側で且つ機体左側に、デフ操作レバーガイド94aを形成したデフ操作パネル94を上下方向に立てて設け、該デフ操作レバーガイド94aを貫通させて側面視で「へ」の字形のデフアーム93を設ける。
【0109】
該デフアーム93の屈曲部には、メインフレーム15に回動軸(図示省略)を介して取り付ける回動支点を形成して前後方向に回動自在に構成し、連繋ワイヤ95を、前記デフアーム93の前端部側とデファレンシャルギア機構(図示省略)のデフペダルアームに亘って設ける。そして、前記デフアーム93の前端部に、作業者が機体前側からデフアーム93を操作するフロントデフグリップ96を左右方向に回動自在に設け、該フロントデフグリップ96を操作していないと機体左側の外側方向へと付勢する第1スプリング97をデフ操作パネル94とに亘って配置する。
【0110】
さらに、前記デフ操作パネル94にはエンジン20のスロットルを操作して回転数を増減させるエンジン回転ワイヤ98を貫通させており、該エンジン回転ワイヤ98の端部を、フロントデフグリップ96に取り付ける。
【0111】
そして、前記フロアステップ35から下方に向けて第2スプリング99を設け、前記デフアーム93の回動支点よりも後部とフロアステップ35を該第2スプリング99で連繋し、デフアーム93を下方に付勢する構成とすると共に、該デフアーム93の後端部側を、作業座席31の左側の下部側方に設ける後側デフ操作パネル100に形成した後側デフ操作レバーガイド100aを貫通させる。さらに、デフアーム93の後端部には、作業座席31に着座した作業者が手作業で操作する、リアデフグリップ101を設ける。
【0112】
前記デフ操作パネル94には、上下方向に長い溝と、この上下溝の上部側に左右方向の溝からなるデフ操作レバーガイド94aが形成されており、上下溝の下端部にデファレンシャルギア機構を作動させない状態でフロントデフグリップ96が位置する「切」ポジションを形成する。また、横溝のうち、上下溝に近い側にデファレンシャルギア機構が「入」となるデフ「入」ポジションを形成すると共に、上下溝から遠い側に、エンジン20の回転数を最大にするアクセル最大ポジションを形成する。なお、各ポジションには、それぞれ上下方向の切溝が形成されており、この切溝に差し込み可能な前側突起102が、前記フロントデフグリップ96の下側に取り付けられている。
【0113】
「切」ポジションの切溝に前側突起102を差し込むと、デファレンシャルギア機構は非作動状態となり、左右の前輪10,10が独立して作動する。そして、デフ「入」ポジションの切溝に前側突起102を差し込むと、デファレンシャルギア機構がロック状態となって左右の前輪10,10が連動して回転する構成としている。さらに、アクセル最大ポジションの切溝に前側突起102を差し込むと、エンジン回転ワイヤ98が最大まで引っ張られて、エンジン20の回転数が最大まで上昇する構成としている。
【0114】
また、前記後側デフ操作パネル100には左右方向にも幅の広い後側デフ操作レバーガイド100aが形成されており、リアデフグリップ101は第2スプリング99の付勢力により、非操作時はこの上下溝の上側にリアデフグリップ101が位置する構成である。後側デフ操作レバーガイド100aの下方で且つ機体内側には、機体内側に向かって上方傾斜する溝部が形成されており、前記デフアーム93の機体内側には、上方傾斜姿勢の後側突起103が設けられており、この後側突起103を後側デフ操作レバーガイド100aの溝部に差し込むと、デファレンシャルギア機構がロック状態となって左右の前輪10,10が連動して回転する構成としている。
【0115】
上記構成により、作業者は作業座席31に着座した状態、または走行車体2から降りた状態のいずれのときでも、前輪10,10が空転して旋回できなくなると、フロントデフグリップ96またはリアデフグリップ101を操作してデファレンシャルギア機構をロック状態に切り替えることができるので、圃場端の旋回時等に泥土に足を取られても作業が中断されること無く、作業能率が向上する。
【0116】
従来は、走行車体2の外側から走行車体2上のデフロックペダルを操作することはできなかったため、作業者はデフロックペダル92を踏みに走行車体2上に再度上がる必要があったため、作業能率が低下する問題があった。
【0117】
本案では、デフロックペダルがフロアステップ35から上方に突出していないため、フロアステップ35を移動する際にデフロックペダルが作業者の足に引っ掛かることが防止され、作業能率が向上するとともに、安全性が向上する。
【0118】
そして、デファレンシャルギア機構だけでなく、フロントデフグリップ96をアクセル最大ポジションに操作すると、エンジン20の回転数が最大まで上昇するため、圃場の泥土の粘性が高く、デファレンシャルギア機構だけでは泥濘から脱出できないことがあっても、出力を上げることにより泥土の抵抗を上回らせることができるので、走行作業が妨げられることが防止され、作業能率が向上する。
【0119】
さらに、第1スプリング97と第2スプリング99によって、デフアーム93とフロントデフグリップ96が切溝に引っ掛けられていない、非操作状態になると自動的にデファレンシャルロック機構が非作用状態になると共にエンジン20の回転数が低下する構成としているので、デファレンシャルロック機構やエンジン20の高い回転数が必要な箇所を通過した後、軽くデフアーム93及びフロントデフグリップ96を操作すれば作業状態を変更することができるので、操作性や作業能率が向上する。
【0120】
図19〜図21で示すとおり、走行車体2の前側には、圃場から退出するときや、傾斜部を移動する際に、作業者が機体前側から掴んで直進走行をアシストしたり、浮き上がりを防止したりする畦越えアーム104が設けられ、該畦越えアーム104の上端部に、前記センターマスコット41が前後回動可能に取り付けられている。また、前記畦越えアーム104の上端部の左右両側に、作業者が手で握る畦越えグリップ105,105が設けられている。
【0121】
水田等の圃場の出入口は、土を盛り上げて築いたものがあり、こうした出入口は、苗移植機や作業者の移動、風雨による侵食により次第に凹凸が形成される。苗移植機の前に立ち、畦越えグリップ105,105を握る作業者は、畦越えグリップ105,105に均等に力をかけるべく、この出入口に凹凸に合わせて姿勢を傾けたり捻ったりするが、畦越えアーム104及び畦越えグリップ105,105の姿勢は変化しないため、不自然な体勢で作業を行うことになるので、作業者に大きな労力を強いている。
【0122】
このため、図21で示すとおり、前記メインフレーム15の前側端部に、前後方向に回動自在な畦越え回動フレーム106を前後方向に所定範囲内で回動自在に設け、該畦越え回動フレーム106の前側左右方向中央部に、左右方向に回動自在に畦越えアーム104の基部を軸着する。なお、該畦越えアーム104は、ベアリング104a等を介して設けるものとする。
【0123】
そして、畦越えアーム104が左右方向に過度に回動することを防止すべく、畦越え回動フレーム106の前側に、所定の位置で畦越えアーム104を受け止める停止ピン107,107を少なくとも左右一対設ける。なお、畦越えアーム104は上下方向に長いので、該停止ピン107,107は、上下方向に複数個所、上側ほど左右間隔を広く開けて配置することが望ましい。
【0124】
さらに、畦越えアーム104の基部にはトルクスプリング108を設け、作業者が畦越えグリップ105,105または畦越えアーム104から手を離すと、自動的に中央位置に戻る構成とすると、畦越えアーム104を戻し忘れることが防止される。
【0125】
上記構成により、畦越えアーム104を回動させて、作業者の姿勢に合う位置で畦越えグリップ105,105を握ることができるので、作業者は比較的自然な姿勢で圃場の出入口での操作を行うことができるので、作業能率が向上するとともに、作業者が疲れにくく、作業者の労力が軽減される。
【0126】
また、畦越え回動フレーム106によって前後方向にも回動させることができるので、作業者が走行車体2の浮き上がりを押さえ易い作業状態に変更しやすくなるため、一層作業者の労力が軽減される。
【符号の説明】
【0127】
2 走行車体
4 苗植付部
11 後輪(走行装置)
72 左右切替ソレノイド(マーカ切替部材)
76 畦際作業スイッチ(畦際検知部材)
76a 発光体
77 マーカ作動センサ(作動回数検知部材)
78 後輪回転センサ(走行回転検知装置)
79 傾斜センサ(傾斜検知部材)
80 作業操作レバー(作業操作部材)
81 調節下降ボタン(調節下降部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付部(4)を昇降自在に設け、該苗植付部(4)の側方に直進走行の指標となる線を圃場に形成する線引きマーカ(68)を設け、前記苗植付部(4)の昇降に連動して該線引きマーカ(68)の作動方向を交互に切り替えるマーカ切替装置(72)を設けた苗移植機において、
畦際での植付作業を検知する畦際検知部材(76)を設け、該畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知すると、前記苗植付部(4)を昇降させてもマーカ切替装置(72)の線引きマーカ(68)の作動方向を切り替えない構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知すると線引きマーカ(68)の昇降回数を記憶する作動回数検知部材(77)を設け、該作動回数検知部材(77)の検知回数が所定回数未満であるときは苗植付部(4)を昇降させてもマーカ切替装置(72)の作動方向を切り替えない構成とすると共に、作動回数検知部材(77)の検知回数が所定回数以上になると前記線引きマーカ(68)が圃場に線を形成しないようにマーカ切替装置(72)の作動を停止する構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記走行車体(2)に走行装置(11)を設け、該走行装置(11)の回転数を検知する走行回転検知装置(78)を設け、該走行回転検知装置(78)の検知する回転数が植付作業開始時から所定回数以上になるまでは、前記畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知していても前記マーカ切替装置(72)の作動方向が交互に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機。
【請求項4】
前記畦際検知部材(76)に発光体(76a)を設け、前記走行回転検知装置(78)が所定回数以上の回転を検知すると、該発光体(76a)が発光する構成としたことを特徴とする請求項3記載の苗移植機。
【請求項5】
前記苗植付部(4)を操作する作業操作部材(80)に、前記苗植付部(4)が所定高さ以上に上昇しているときに該苗植付部(4)を自動的に所定距離下降させる調節下降部材(81)を設けたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項6】
前記畦際検知部材(76)をスイッチで構成し、前記走行車体(2)に傾斜を検知する傾斜検知部材(79)を設け、該傾斜検知部材(79)が所定角度以上の傾斜を検知すると、前記畦際検知部材(76)が自動的に「切」になる構成としたことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項1】
走行車体(2)の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付部(4)を昇降自在に設け、該苗植付部(4)の側方に直進走行の指標となる線を圃場に形成する線引きマーカ(68)を設け、前記苗植付部(4)の昇降に連動して該線引きマーカ(68)の作動方向を交互に切り替えるマーカ切替装置(72)を設けた苗移植機において、
畦際での植付作業を検知する畦際検知部材(76)を設け、該畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知すると、前記苗植付部(4)を昇降させてもマーカ切替装置(72)の線引きマーカ(68)の作動方向を切り替えない構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知すると線引きマーカ(68)の昇降回数を記憶する作動回数検知部材(77)を設け、該作動回数検知部材(77)の検知回数が所定回数未満であるときは苗植付部(4)を昇降させてもマーカ切替装置(72)の作動方向を切り替えない構成とすると共に、作動回数検知部材(77)の検知回数が所定回数以上になると前記線引きマーカ(68)が圃場に線を形成しないようにマーカ切替装置(72)の作動を停止する構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記走行車体(2)に走行装置(11)を設け、該走行装置(11)の回転数を検知する走行回転検知装置(78)を設け、該走行回転検知装置(78)の検知する回転数が植付作業開始時から所定回数以上になるまでは、前記畦際検知部材(76)が畦際での植付作業を検知していても前記マーカ切替装置(72)の作動方向が交互に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機。
【請求項4】
前記畦際検知部材(76)に発光体(76a)を設け、前記走行回転検知装置(78)が所定回数以上の回転を検知すると、該発光体(76a)が発光する構成としたことを特徴とする請求項3記載の苗移植機。
【請求項5】
前記苗植付部(4)を操作する作業操作部材(80)に、前記苗植付部(4)が所定高さ以上に上昇しているときに該苗植付部(4)を自動的に所定距離下降させる調節下降部材(81)を設けたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項6】
前記畦際検知部材(76)をスイッチで構成し、前記走行車体(2)に傾斜を検知する傾斜検知部材(79)を設け、該傾斜検知部材(79)が所定角度以上の傾斜を検知すると、前記畦際検知部材(76)が自動的に「切」になる構成としたことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−27316(P2013−27316A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163424(P2011−163424)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]