説明

荷重支持構造

【課題】側面衝突時において、より効率的に衝撃エネルギーを吸収して乗員を保護するための空間を確保することができる荷重支持構造を提供すること。
【解決手段】本発明による荷重支持構造は、
側面衝突時の荷重を支持する支持部材6と、
支持部材6に側面衝突時の荷重を伝達する伝達部材5を備える側面衝突時の荷重支持構造であって、
伝達部材5の剛性を、支持部材の剛性6よりも小さくすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両の車体構造に適用されて好適な荷重支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の側面に他の車両が衝突する側面衝突時において、車両の車体に車幅方向外側から内側に荷重が入力された場合において、特許文献1に記載されているように、車体のフロアを補強する補強部材であるフロアクロスメンバを座屈変形させることによりその荷重を支持させて、側面衝突時の衝撃エネルギーを吸収するとともに、乗員を保護するための空間を確保することが行われている。
【特許文献1】特開2000−280931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、このような従来技術の荷重支持構造においては、車両の側面から荷重が入力されて、その荷重をフロアクロスメンバに伝達するにあたり、車両のフロア両側に車両前後方向に延びる構造部材であるロッカを利用している。このため、このロッカからフロアクロスメンバに荷重が伝達される場合に、側面衝突時において衝突してくる側の車両の前方のバンパーがフロアクロスメンバよりも上方に位置する場合では、車両の側面の上方が下方に対してより車幅方向内側に変形して、ロッカの上方が下方に対して車幅方向内側により変形し、ロッカからフロアクロスメンバに対して大きな曲げモーメントが伝達されてしまい、フロアクロスメンバを有効に座屈変形させて、衝撃エネルギーを吸収できないという問題が生じる。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、側面衝突時において、より効率的に衝撃エネルギーを吸収して乗員を保護するための空間を確保することができる荷重支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するため、
本発明による荷重支持構造は、
側面衝突時の荷重を支持する支持部材と、
前記支持部材に側面衝突時の荷重を伝達する伝達部材を備える側面衝突時の荷重支持構造であって、
前記伝達部材の剛性を、前記支持部材の剛性よりも小さくすることを特徴とする。
【0006】
なお、前記支持部材とは、典型的には車両のフロアを補強するフロアクロスメンバを示し、前記伝達部材とは、典型的には車両のセンターピラー又はクォーターピラーの下方及び、車両のフロアの両側に車両前後方向に延在する構造部材であるロッカの上方に隣接して位置するピラー内ボックスを指すものとする。
【0007】
なお、センターピラーとはセダン車又はワゴン車において前部座席ドアと後部座席ドアとの間に位置する車両のルーフの荷重を支持する構造部材であり、クォーターピラーとは、セダン車又はワゴン車においては、後部座席ドアの後方に位置する車両のルーフの荷重を支持する構造部材であり、ハッチバック車においては座席ドアの後方に位置する車両のルーフの荷重を支持するための構造部材である。
【0008】
ここで、前記荷重支持構造において、
前記伝達部材の前記支持部材に対向する面の上端を、前記支持部材の前記伝達部材に対向する面の上端よりも、上方にオフセットさせて位置させることを特徴とする、
ことが好ましい。
【0009】
これによれば、側面衝突時において、前記伝達部材の前記支持部材に対向する面の上下方向の中間部分が、前記支持部材の前記伝達部材に対向する面の上端に接触し、前記伝達部材の剛性が前記支持部材の剛性よりも小さいことに起因して、前記伝達部材が、前記支持部材の前記伝達部材に対向する面の上端を中心に、前記伝達部材の上方が下方に対して車幅方向外側から内側に向けて倒れ込むように回転して変形する。
【0010】
このため、前記伝達部材から前記支持部材へ側面衝突時の荷重を伝達するにあたっては、前記支持部材の前記伝達部材に対向する面の上端と前記伝達部材の前記支持部材に対向する面との接触点を介して伝達され、当該接触点においては車幅方向外側から内側に向かう荷重は伝達されるが、前記支持部材に対する曲げモーメントは伝達されにくい、もしくは小さくなる、あるいは、前記支持部材に伝達する曲げモーメントは小さくなる。
【0011】
これにより、前記支持部材を効果的に座屈変形させて側面衝突時の荷重を前記支持部材により支持させて、側面衝突時の衝撃エネルギーを吸収するとともに、乗員を保護するための空間を確保することができる。
【0012】
さらに、前記支持部材が側面衝突時に前記伝達部材から伝達される曲げモーメントを支持する剛性を有する必要を廃することができるので、前記支持部材に必要とされる剛性を小さくして、前記支持部材の断面積を小さくすることができる。
【0013】
加えて、前記荷重支持構造において、
前記伝達部材の前記支持部材に対向する面の、前記支持部材の前記伝達部材に対向する面の上端に接触する部分に、剛性低下手段を備えることを特徴とする、
ことが好ましい。
【0014】
ここで、前記剛性低下手段とは、典型的には、前記伝達部材の前記支持部材に対向する面に設けられる溝状部又は凹状部である。
【0015】
これによれば、側面衝突時において、前記伝達部材の前記支持部材に対向する面の上下方向の中間部分が、前記支持部材の前記伝達部材に対向する面の上端に接触し、前記伝達部材の剛性が前記支持部材の剛性よりも小さいことに起因して、前記伝達部材が、前記支持部材の前記伝達部材に対向する面の上端を中心に、前記伝達部材の上方が下方に対して車幅方向外側から内側に向けて倒れ込むように回転して変形することをより容易なものとすることができる。
【0016】
これによっても、側面衝突時において前記伝達部材が前記支持部材に曲げモーメントを作用させることを小さくでき、前記支持部材を効果的に座屈変形させて側面衝突時の荷重を前記支持部材により支持させて、側面衝突時の衝撃エネルギーを吸収するとともに、乗員を保護するための空間を確保することができる。
【0017】
さらに、前記支持部材が側面衝突時に前記伝達部材から伝達される曲げモーメントを支持する剛性を有する必要を廃することができるので、前記支持部材に必要とされる剛性を小さくして、前記支持部材の断面積を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、側面衝突時において、より効率的に衝撃エネルギーを吸収して乗員を保護するための空間を確保することができる荷重支持構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明に係る荷重支持構造の一実施形態を適用対象となる車体構造とともに車室内斜め前方から視て示す模式図である。図2は、本発明に係る荷重支持構造の一実施形態を図1のAA断面において示す模式断面図である。図3は、本発明に係る荷重支持構造の一実施形態を図1のAA断面においてより詳細に示す模式断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施例1に係わる荷重支持構造の適用対象となる車体構造は車室内斜め前方から視て、センターピラー1と、ロッカインナ2と、ロッカアウタ3と、サイドメンバアウタ4と、センターピラー内ボックス5と、フロアクロスアッパメンバ6と、フロアクロスロアメンバ7と、フロア8を備えて構成される。
【0022】
なお、図1中UPは上方を、FRは車両前方を、INは車幅方向内側を指す。また、図1〜3中Bは、衝突してくる車両側のバンパーを模したハニカム部材よりなる衝突試験用のバリアである。さらに、図1中Mは乗員を示す。
【0023】
センターピラー1は、ここでは図示しない前部座席ドアの後方及び後部座席ドアの前方に位置して、図示しないサイドレールから下方にフロア8に向けて延在され、車両のルーフ及びサイドレールの荷重を支持する構造部材をなすものである。
【0024】
ロッカインナ2は、車幅方向外側に開口する断面コの字状の鋼板からなる構造部材であり、フロア8の車幅方向外側に位置して、車両前後方向に延びてフロア8及びセンターピラー1ひいては図示しないルーフの荷重を支持するものである。
【0025】
ロッカアウタ3は、車幅方向内側に開口する断面コの字状の鋼板からなる構造部材であり、ロッカインナ2の更に車幅方向外側に位置して、車両前後方向に延びてフロア8及びセンターピラー1ひいては図示しないルーフの荷重を支持するものである。
【0026】
サイドメンバアウタ4は、センターピラー1の車幅方向外側に位置して、車両最外形部の意匠面を構成する鋼板よりなる意匠部材である。
【0027】
フロア8は、前述したロッカインナ2及びロッカアウタ3により支持されて、車幅方向及び車両前後方向に平板状に延びて車両の車室内の床面を形成する、鋼板からなる構造部材である。
【0028】
フロアクロスアッパメンバ6は、フロア8の上面に、センターピラー1の車幅方向内側に位置して車幅方向に延びて配置される、車両下方に開口する断面コの字状の鋼板よりなり、フロア8を補強する補強部材をなすとともに、側面衝突時の荷重を支持する支持部材をなすものである。
【0029】
フロアクロスロアメンバ7は、フロア8の下面のフロアクロスアッパメンバ6に対応する位置に、センターピラー1の車幅方向内側に位置して車幅方向に延びて配置される、車両上方に開口する断面コの字状の鋼板よりなり、フロア8を補強する補強部材をなすとともに、側面衝突時の荷重を支持する支持部材をなすものである。
【0030】
さらに、フロアクロスロアメンバ7の車幅方向内側は、上方に突出するトンネルを構成しており、その内部にはここでは図示しないトランスミッションやデファレンシャルが内蔵される。
【0031】
センターピラー内ボックス5はセンターピラー1の内部に位置する、車幅方向外側に開口する断面コの字状の鋼板よりなる構造部材であり、側面衝突時においてバリアBからサイドメンバアウタ4を介して入力される荷重を、フロアクロスアッパメンバ6に伝達する伝達部材を構成するものである。センターピラー内ボックス5の車両前後方向長さは、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7の車両前後方向長さとほぼ同一に形成される。
【0032】
なお、フロアクロスアッパメンバ6の車幅方向外側端部は上下方向に拡大されて形成され、フロアクロスロアメンバ7の車幅方向外側端部はフロアクロスアッパメンバ6の上下方向拡大部分に車幅方向に噛み合う形態に形成されて、センターピラー内ボックス5から伝達された側面衝突時の荷重の一部は、フロアクロスアッパメンバ6の車幅方向外側端部からフロアクロスロアメンバ7の車幅方向外側端部へと伝達される。
【0033】
センターピラー内ボックス5を構成する鋼板は、フロアクロスアッパメンバ6を構成する鋼板よりも板厚が薄い鋼板により構成されて、センターピラー内ボックス5の車幅方向の剛性は、フロアクロスアッパメンバ6の車幅方向の剛性よりも小さく設定されている。
【0034】
さらに、センターピラー内ボックス5のフロアクロスアッパメンバ6に対向する面6aの上端を、フロアクロスアッパメンバ6のセンターピラー内ボックス5に対向する面6aの上端6bよりも上方に寸法Aだけオフセットさせて位置させる。
【0035】
以上述べたセンターピラー内ボックス5、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7が本実施例1の荷重支持構造を構成する。また、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7は一体となってフロアクロスメンバを構成する。
【0036】
ここで、特には乗用車の側面にトラック等の大型車のバンパーが衝突した場合を模擬すると、側方衝突時においてバリアBは車両の車幅方向外側から内側に向けて車両に対して接近して、バリアBがロッカインナ2及びロッカアウタ3によりの上方にオフセットした状態で車幅方向外側から内側に進行する。
【0037】
図4はこの場合のバリアBと本実施例1に係わる荷重支持構造の相対位置関係を示す模式断面図である。以下にこの図を用いて本実施例1の荷重支持構造の作用効果について述べる。
【0038】
つまり、以上述べた本実施例1による荷重支持構造によれば以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、側面衝突時において、バリアBの車幅方向外側から内側へのせり出しに伴って、センターピラー内ボックス5のフロアクロスアッパメンバ6に対向する面5aの上下方向の中間部分5bが、フロアクロスアッパメンバ6のセンターピラー内ボックス5に対向する面6aの上端6bに接触し、センターピラー内ボックス5の剛性がフロアクロスアッパメンバ6の剛性よりも小さいことに起因して、センターピラー内ボックス5が、フロアクロスアッパメンバ6のセンターピラー内ボックス5に対向する面6aの上端6bを中心に、センターピラー内ボックス5の上方が下方に対して車幅方向外側から内側に向けて倒れ込むように回転して変形する。
【0039】
なお、センターピラー内ボックス5のフロアクロスアッパメンバ6に対向する面6aの上端を、フロアクロスアッパメンバ6のセンターピラー内ボックス5に対向する面6aの上端6bよりも上方に寸法Aだけオフセットさせていることにより、中間部分5bを構成して上記変形をより確実なものとしている。
【0040】
このため、センターピラー内ボックス5からフロアクロスアッパメンバ6へ側面衝突時の荷重を伝達するにあたっては、フロアクロスアッパメンバ6のセンターピラー内ボックス5に対向する面6aの上端6bとセンターピラー内ボックス5のフロアクロスアッパメンバ6に対向する面5aとのピンポイントの接触点を介して伝達され、接触点においては車幅方向外側から内側に向かう荷重は伝達されるが、フロアクロスアッパメンバ6に対する曲げモーメントは伝達されない。
【0041】
これにより、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7を効果的に座屈変形させて側面衝突時の荷重をフロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7により支持させて、側面衝突時の衝撃エネルギーを吸収することができる。これとともに、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7の車幅方向の荷重支持により、乗員Mを保護するための空間を確保することができる。
【0042】
加えて、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7が曲げモーメントを支持する剛性を有する必要を廃することができるので、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7に必要とされる剛性を小さくして、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7を構成する鋼板の板厚を薄くすることができ、またあるいは、断面積を小さくすることができる。これにより車両の軽量化を図ることもできる。
【実施例2】
【0043】
以上述べた実施例1によれば、センターピラー内ボックス5の剛性を、フロアクロスアッパメンバ6の剛性より小さくすることで、バリアBがロッカインナ2及びロッカアウタ3によりの上方において車幅方向外側から内側に接近して乗り上げて、センターピラー内ボックス5をフロアクロスアッパメンバ6のセンターピラー内ボックス5に対向する面の上端を中心として、センターピラー内ボックス5の上方が下方に対して車幅方向外側から内側に向けて倒れ込むように回転して変形させたが、この変形を更に容易なものとするために以下のような構成とすることもできる。以下その構成についての実施例2について述べる。
【0044】
前提となる車両の車体構造は実施例1に示したものと同様であるため、前提となる構成要素には同一の符号を付して個々の説明は割愛する。以下相違点のみを図を用いて説明する。図5は、本発明に係る荷重支持構造の他の実施形態を図1のAA断面においてより詳細に示す模式断面図である。図6は、本発明に係わる荷重支持構造の他の実施形態において、バリアBと荷重支持構造の構成要素との相対位置関係を示す模式断面図である。
【0045】
図5に示すように、実施例1に示した構成に加えて、センターピラー内ボックス5のフロアクロスアッパメンバ6に対向する面5aの、フロアクロスアッパメンバ6のセンターピラー内ボックス5に対向する面6aの上端6bに接触する中間部分5bに、車両前後方向に延びる溝状部を備える。この溝状部はセンターピラー内ボックス5の車幅方向の剛性を低下させる剛性低下手段を構成する。
【0046】
このように溝状部を中間部分5bに設けることにより、側面衝突時においては図6に示すように、センターピラー内ボックス5のフロアクロスアッパメンバ6に対向する面5aの上下方向の中間部分5bが、フロアクロスアッパメンバ6のセンターピラー内ボックス5に対向する面6aの上端6bに接触し、センターピラー内ボックス5の剛性がフロアクロスアッパメンバ6の剛性よりも小さいことに起因して、センターピラー内ボックス5が、フロアクロスアッパメンバ6のセンターピラー内ボックス5に対向する面6aの上端6bを中心に、センターピラー内ボックス5の上方が下方に対して車幅方向外側から内側に向けて倒れ込むように回転して変形することをより容易なものとすることができる。
【0047】
このため、センターピラー内ボックス5からフロアクロスアッパメンバ6へ側面衝突時の荷重を伝達するにあたっては、フロアクロスアッパメンバ6のセンターピラー内ボックス5に対向する面6aの上端6bとセンターピラー内ボックス5のフロアクロスアッパメンバ6に対向する面5aとのピンポイントの接触点を介して伝達され、接触点においては車幅方向外側から内側に向かう荷重は伝達されるが、フロアクロスアッパメンバ6に対する曲げモーメントは伝達されない。
【0048】
これによっても、実施例1に示した荷重支持構造と同様に、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7を効果的に座屈変形させて側面衝突時の荷重をフロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7により支持させて、側面衝突時の衝撃エネルギーを吸収することができる。これとともに、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7の車幅方向の荷重支持により、乗員Mを保護するための空間を確保することができる。
【0049】
加えて、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7が曲げモーメントを支持する剛性を有する必要を廃することができる。これにより、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7に必要とされる剛性を小さくして、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7を構成する鋼板の板厚を薄くすることができ、またあるいは、断面積を小さくすることができる。これに起因して車両の軽量化を図ることもできる。
【0050】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0051】
例えば上述した実施例2においては、センターピラー内ボックス5のフロアクロスアッパメンバ6に対向する面5aの上下方向の中間部分5bに溝状部を設けたが、この溝状部はセンターピラー内ボックス5の剛性を部分的に調整するためのものである。これを設けなくても、センターピラー内ボックス5の剛性をフロアクロスアッパメンバ6に対して十分小さくでき、上端6bを中心としたセンターピラー内ボックス5の変形が確保できる場合には、これを廃した実施例1のような構成で十分である。
【0052】
つまり中間部分5bに溝状部を設けるかどうかは、センターピラー内ボックス5に伝達部材として要求される剛性と、フロアクロスアッパメンバ6との比較に基づいて要求される剛性の小ささとを比較考量して、適宜決定される事項である。また、中間部分5bに溝状部を設けることに換えて凹状部を設けることも可能である。
【0053】
さらに、上述した実施例1及び2においては、本発明に係わる荷重支持構造を、センターピラー1近傍のフロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7を支持部材として適用したが、これは側面衝突時において、セダン車やワゴン車においては乗員M保護の観点から最も厳しい荷重がさらされる部位がセンターピラー1近傍であるためである。
【0054】
つまり、セダン車又はワゴン車の後部座席ドア後方のクォーターピラー近傍に、センターピラー1近傍のフロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7に相当する車幅方向に延びる構造部材が存在する場合には、その部位に本発明に係わる荷重支持構造を適用することも可能である。
【0055】
もちろんハッチバック車のクォーターピラー近傍の車体構造においても、フロアクロスアッパメンバ6及びフロアクロスロアメンバ7に相当する車幅方向に延びる構造部材が存在する場合には、本発明に係わる荷重支持構造を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、車両に適用して好適な荷重支持構造に関するものであり、より効率的に衝撃エネルギーを吸収して乗員を保護するための空間を確保することができる荷重支持構造を提供することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用しても有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る荷重支持構造の一実施形態を適用対象となる車体構造とともに車室内斜め前方から視て示す模式図である。
【図2】本発明に係る荷重支持構造の一実施形態を図1のAA断面において示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る荷重支持構造の一実施形態を図1のAA断面においてより詳細に示す模式断面図である。
【図4】本発明に係わる荷重支持構造の一実施形態において、側面衝突時のバリアBと荷重支持構造の構成要素との相対位置関係を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る荷重支持構造の他の実施形態を図1のAA断面においてより詳細に示す模式断面図である。
【図6】本発明に係わる荷重支持構造の他の実施形態において、バリアBと荷重支持構造の構成要素との相対位置関係を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 センターピラー
2 ロッカインナ
3 ロッカアウタ
4 サイドメンバアウタ
5 センターピラー内ボックス
5a フロアクロスアッパメンバ6に対向する面
5b 中間部分
6 フロアクロスアッパメンバ
6a センターピラー内ボックス5に対向する面
6b センターピラー内ボックス5に対向する面6aの上端
7 フロアクロスロアメンバ
8 フロア
B バリア
M 乗員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面衝突時の荷重を支持する支持部材と、
前記支持部材に側面衝突時の荷重を伝達する伝達部材を備える側面衝突時の荷重支持構造であって、
前記伝達部材の剛性を、前記支持部材の剛性よりも小さくすることを特徴とする荷重支持構造。
【請求項2】
前記伝達部材の前記支持部材に対向する面の上端を、前記支持部材の前記伝達部材に対向する面の上端よりも、上方にオフセットさせて位置させることを特徴とする請求項1に記載の荷重支持構造。
【請求項3】
前記伝達部材の前記支持部材に対向する面の、前記支持部材の前記伝達部材に対向する面の上端に接触する部分に、剛性低下手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷重支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−168739(P2008−168739A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2762(P2007−2762)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】