説明

荷重計測装置

【課題】車両通過時に路面埋設物に加わる水平方向の力を検出することができる荷重計測装置を提供することにある。
【解決手段】車両が走行する路面に埋設された路面埋設物を有し、路面埋設物に加わる荷重を計測する荷重計測装置であって、路面に埋め込まれて固定され、鉛直方向上側の面が開放された筐体と、板状部材であり、面積が広い面が鉛直方向上面と鉛直方向下面側となるように、筐体の内側に移動自在な状態で配置された路面埋設物と、路面埋設物の鉛直方向下側の面と筐体との間に配置された潤滑手段と、路面埋設物の側面と筐体との間に配置され、路面埋設物に加わる水平方向の荷重を検出する荷重検出手段とを有することで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷重を検出する車両識別装置に用いられる車両埋設物に加わる荷重を計測する荷重計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路、有料道路等に配置される課金システムには、通過する車両の種別を特定するために車両の種類を検出する装置がある。
例えば、特許文献1には、車両通過路を通る車両を検出して車両検出信号を発生する車両検出装置と、この車両検出装置の設置位置近傍に設けられ、通過車両の車輪踏圧を受けて車軸検知信号を発生する踏板装置と、これらの装置の設置位置近傍に設けられ、通過車両の走行騒音を検出する装置と、この走行騒音の検出出力を受け、この検出出力が所定レベルを超えると出力を発生するレベル検知装置と、このレベル検知装置の発生出力及び車両検出信号及び車軸検出信号とを受け、車両検出信号出力期間における車軸検知信号により得た軸情報に基づく車両の部位情報とれ得る検知装置の出力発生タイミング関係に基づき通過車両のエンジン設置位置を知り、これにより大型バスであるか否かを検出する判定装置とを備えてなることを特徴とする車種判別装置が記載されている。
【0003】
このように、車種を判別する装置には、車両の車輪が通過する路面に車両の重量を検出する装置が設けられており、車両の重量、車両の車軸数等を検出して車種判別に利用している。
【0004】
また、特許文献2には、車両が通行する道路のピット内に設けられ車輪の踏圧を感知するものにおいて、道路の路面と金属枠をほぼ同一平面にすると共に、金属枠の路面幅方向の幅よりも十分小さい幅を有し且つ金属枠と同一平面を有する弾性体と該弾性体の上面ほぼ中央部でかつ該弾性体よりやや突出する踏板とを金属枠内にモール度充填してなり、弾性体の内部に外圧により抵抗値の変化する感圧素体を密封して設けたことを特徴とする踏圧感圧素子が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭63−37438号公報
【特許文献2】特開昭58−9358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載されているように、荷重を検出する装置で車両の荷重車輪の通過を検知することで、車種の判別、車両の通過をより容易にすることができる。ここで、このような荷重検出装置では、車両の重量を適切に検出するために、車輪と接する路面埋設物が荷重を感知する検出器のみに支持された状態となっている。そのため、路面埋設物は、車両の通過時に水平方向に力を受けると、水平方向に変動する。特に、車両が路面埋設物上で急加速、急減速した場合は、路面埋設物に対して水平方向により大きな力が作用する。路面埋設物が水平方向にずれると側面を覆っている部材と接触したり、衝撃を吸収するための緩衝材に負荷がかかったりする。
【0007】
このような路面埋設物に水平方向に負荷がかかった場合でも、故障が発生しないように、路面埋設物や、路面埋設物を囲うように配置され路面埋設物を支持する筐体、また緩衝部材を設計する必要があるか、荷重検出装置は、路面埋設物が鉛直方向に受けている力は検出できるが、水平方向に受ける力は検出することができないため、路面埋設物、筐体、緩衝部材に必要な強度を算出することができなかった。そのため、各部材を必要以上の強度や、耐久性で製造することになり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両通過時に路面埋設物に加わる水平方向の力を検出することができる荷重計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、荷重計測装置であって、車両が走行する路面に埋め込まれて固定され、鉛直方向上側の面が開放された筐体と、板状部材であり、面積が広い面が鉛直方向上面と鉛直方向下面側となるように、前記筐体の内側に移動自在な状態で配置された路面埋設物と、前記路面埋設物の鉛直方向下側の面と前記筐体との間に配置された潤滑手段と、前記路面埋設物の側面と前記筐体との間に配置され、前記路面埋設物の車両の進行方向側の側面に加わる水平方向の荷重を検出する荷重検出手段とを有することを特徴とする。
【0010】
このように、路面埋設物を移動可能、特に水平方向に移動可能とし、潤滑手段により、筐体に対して路面埋設物が水平方向に移動しやすい状態とし、荷重検出手段により、路面埋設物に加わる水平方向の荷重を検出することで、車両から路面埋設物に加えられる水平方向の荷重を計測することができる。これにより、車両が走行する路面に埋設された路面埋設物を有し、前記路面埋設物に加わる荷重を計測する荷重計測装置を好適に設計することができる。
【0011】
ここで、前記荷重検出手段は、前記路面埋設物の4つの側面のうち、前記車両の進行方向側の側面で、かつ、対向する2つの側面に配置されていることが好ましい。
【0012】
4つの側面のうち対向する2つの側面に荷重検出手段を配置することで、車両の走行する方向において路面埋設物の先端側となる面と後端側となる面に係る荷重を検出することができる。これにより、車両の通過時、路面埋設物に最も大きな負荷がかかる部分に加わる荷重を検出することができ、前記路面埋設物に加わる荷重を計測する荷重計測装置を好適に設計することができる。
【0013】
また、前記荷重検出手段は、前記路面埋設物の側面と前記筐体との間に配置されたロードセルであることも好ましい。ここで、前記路面埋設物は、側面に凹部が形成されており、前記ロードセルは、該凹部に配置されていることが好ましい。
【0014】
荷重検出手段としてロードセルを用いることで、高い精度で路面埋設物に加わる水平方向の荷重を検出することができる。また、路面埋設物に凹部を形成し、その凹部にロードセルを配置することで、路面埋設物のロードセルが配置されていない部分と筐体との距離を短くすることができ、荷重計測装置上を走行する車両に衝撃を与えることを抑制できる。
【0015】
また、前記荷重検出手段は、前記路面埋設物の側面と前記筐体との間に配置された圧力シートであることが好ましい。
【0016】
荷重検出手段を圧力シートとすることで、高い精度で路面埋設物に加わる水平方向の荷重を検出することができ、かつ、路面埋設物と筐体との距離を短くすることができる。
【0017】
また、前記荷重検出手段は、前記路面埋設物からの水平方向の荷重が負荷される物体のひずみを検出するひずみゲージであることが好ましい。
【0018】
また、荷重検出手段をひずみゲージとすることでも、高い精度で路面埋設物に加わる水平方向の荷重を検出することができ、かつ、路面埋設物と筐体との距離を短くすることができる。
【0019】
また、前記潤滑手段は、複数のローラベアリングであることが好ましい。また、前記潤滑手段は、多数の微細な粉末であることも好ましい。さらに、前記潤滑手段は、複数枚積層された低摩擦シートであることも好ましい。
【0020】
潤滑手段を、複数のローラベアリング、多数の微細な粉末、複数枚積層された低摩擦シートのいずれかとすることで、筐体と路面埋設物との間の摩擦力(摩擦係数)を低くすることができる。また、筐体と路面埋設物との間の摩擦力を低くできることで、筐体と路面埋設物との間で働く摩擦力よりも、前記路面埋設物から荷重検出手段に加わる荷重の割合を多くすることができ、高い精度で路面埋設物に加わる水平方向の荷重を検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる荷重計測装置は、車両から路面埋設物に加えられる水平方向の荷重を計測することができ、車両が走行する路面に埋設された路面埋設物を有し、前記路面埋設物に加わる荷重を計測する荷重計測装置を好適に設計することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる荷重計測装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
図1−1は、本発明の荷重計測装置の一実施形態の概略構成を示す上面図であり、図1−2は、図1−1に示す荷重計測装置のA−A線断面図である。図1−1及び図1−2に示すように、荷重計測装置10は、路面埋設物12と、筐体14と、潤滑手段16と、荷重検出手段18とを有する。
【0024】
路面埋設物12は、板状の部材であり、面積の最も大きい面(以下「正面」という。)32が車両の車輪と接触する面となる。また、路面埋設物12の正面32に直交する4つの面、つまり側面のうち、車両の走行方向において先端となる側面34と、後端となる側面36には、それぞれ複数の凹部40、42が形成されている。なお、走行方向は、水平方向のうち任意の一方向である。路面埋設物12は、車両が通過して車輪の通過時に荷重がかかっても、実質的な変形をしない剛性を有する材料で形成されている。また、路面埋設物12の正面32には、車両の走行方向と平行な方向に延びた走行目標ライン44が形成されている。
【0025】
筐体14は、鉛直方向上方の面が解放された箱型部材であり路面に埋められて固定されている。また、筐体14の内部の空間には、路面埋設物12が配置されている。つまり、筐体14は、路面埋設物12の正面32以外を囲うように配置されている。また、筐体14と路面埋設物12の側面との間には、一定の間隔が設けられており、路面埋設物12は、筐体14に対して移動可能な状態となっている。
【0026】
潤滑手段16は、路面埋設物12の正面32とは反対側の面(以下「裏面」という。)と筐体14との間に配置され、ローラベアリング20とローラベアリング20を挟んで配置された2枚の鉄板22、24とで構成されている。ローラベアリング20は、裏面の全域に一定間隔で、走行方向に回転可能な状態で配置されている。鉄板22は、ローラベアリング20と路面埋設物12の裏面との間に配置された板状部材であり、鉄板24は、ローラベアリング20と筐体14との間に配置された板状部材である。このように潤滑手段16は、筐体14から路面埋設物12の裏面に向けて、鉄板24、ローラベアリング20、鉄板22の順に積層されている。潤滑手段16は、路面埋設物12と筐体14とが走行方向に相対的に移動する場合に、路面埋設物12の裏面と筐体14との間で既知の低摩擦係数の力のみが発生するようにしている。つまり、路面埋設物12と筐体14とが相対的に移動しやすい状態で、路面埋設物12を裏面から走行方向に摺動可能な状態で支持している。なお、摩擦係数が不明な場合は、装置を完成後、一定の力を負荷し、その際に検出される計測値から算出すればよい。
【0027】
荷重検出手段18は、複数のロードセル26と、各ロードセル26に対応して設けられた鉄板28とで構成されている。ロードセル26は、それぞれ、路面埋設物12の凹部40、42に対応して配置されており、路面埋設物12の凹部40または42に囲まれていない面が筐体14に固定されている。ロードセル26は、走行方向に平行な方向から受ける力を計測する計測手段である。鉄板28は、ロードセル26と路面埋設物12の凹部40または凹部42の走行方向に直交する面との間に配置され、ロードセル26と路面埋設物12とを接続させている。荷重検出手段18は、鉄板28を介してロードセル26に伝達された、路面埋設物12に加えられた走行方向の力を検出する。なお、筐体14は、知路面に埋設されているため移動せず、さらに筐体14自体も剛体とみなすことができるため、路面埋設物12から加えられた力は、ロードセル26により適切に検出することができる。なお、一方の側面のロードセル26から検出した荷重を全て加算した荷重が車体から路面埋設物12に加えられた荷重となる。
【0028】
荷重計測装置10は、以上のような構成である。荷重計測装置10は、路面埋設物12の正面32を車両の車輪が通過する際に、車両の車輪から路面埋設物12に対して走行方向に平行な力が作用すると、路面埋設物12は、走行方向に移動し、鉄板28を介してロードセル26を圧縮する。また、潤滑手段16により、路面埋設物12の裏面と筐体14とは、既知の低摩擦係数に比例した力で摺動される。荷重検出手段18は、ロードセル26で計測した値に基づいて、路面埋設物12が受けた走行方向の力を算出する。このとき、路面埋設物12の裏面と筐体14との間で働く、既知の低摩擦係数に比例した力を加味することで、路面埋設部12が受けた走行方向の力を正確に算出することができる。
【0029】
このように、潤滑手段16を設け、路面埋設物12と、筐体14とを走行方向に既知の低摩擦で摺動可能な状態とし、荷重検出手段18で、路面埋設物12に加わる走行方向の力を検出することで、車両の走行により路面埋設物12に対して水平方向に加わる力(働く力)を短時間かつ簡単に計測することができる。路面埋設物12に対して水平方向に加わる力が計測できることで、路面埋設物の必要な強度、また、筐体に必要な強度等を適切に算出することができ、車両の荷重を検出する検出装置を適切に設計することができる。
【0030】
また、潤滑手段16により、路面埋設物12と筐体14との間の摩擦力を小さくすることで荷重検出手段18により路面埋設物12に加わる荷重に近い荷重を検出することができる。また、摩擦力を小さくできることで、摩擦力による影響を補正する場合の補正量も小さくすることができ、補正により発生する誤差をより小さくすることができる。
【0031】
また、ロードセルにより水平方向荷重を計測できることで、高い精度で水平方向の荷重を計測することができる。
【0032】
以下、具体的測定例とともに本発明の荷重計測装置の効果についてさらに説明する。図2は、測定に用いた検証装置の概略構成を示す正面図であり、図3は、図2に示す検証装置の荷重計測装置の周辺部を拡大して示す拡大正面図である。なお、本具体的測定例は、荷重計測装置による水平方向の荷重の計測精度を検証するための検証装置である。検証装置100は、荷重計測装置10と、荷重負荷装置102と、鉛直荷重計測装置104と、斜度調整装置106と、台座108と、支持フレーム109とを有する。
【0033】
荷重負荷装置102は、車輪110と、車輪110に鉛直方向の荷重を負荷する油圧ジャッキ112とで構成されている。車輪110は、荷重計測装置10の鉛直方向上方に配置されており、荷重計測装置10の路面埋設物12に接して配置されている。油圧ジャッキ112は、車輪110に連結されており、車輪110に対して鉛直方向下向きの力を加える。鉛直荷重計測装置104は、油圧ジャッキ112の一部に配置されており、油圧ジャッキ112から車輪110に伝達される荷重を検出する。斜度調整装置106は、荷重計測装置10の鉛直方向下側の面から荷重計測装置10を支持し、図2及び図3に示すように、荷重計測装置10を支持している面の角度を変化させることができる装置である。
【0034】
また、台座108は、各部の支持台であり、斜度調整装置106を支持し、所定位置に固定している。また、台座108には、支持フレーム109が固定されている。支持フレーム109は、台座108に固定されており、荷重負荷装置102の油圧ジャッキ112を固定している。台座108及び支持フレーム109により各部を固定することで、荷重負荷装置102から荷重計測装置10に適切に力を伝達することができる。
【0035】
このような検証装置100を用い、斜度調整装置106により、荷重計測装置10の路面埋設物10が走行方向に平行な方向と水平方向とのなす角が20度となるように傾けた状態とする。また、車輪110からの力が路面埋設物12に正確に伝達されるように、車輪110と路面埋設物12との間に係合部材を設けた。係合部材は、車輪との接触面が水平となるように配置した(図3参照)。この状態で、油圧ジャッキ112から車輪110に種々の荷重を加え、各荷重の場合の荷重計測装置10で水平方向(走行方向)の荷重を計測した。ここで、本測定例の場合は、荷重計測装置10を傾けているため計測している荷重は、水平方向の力ではないが、実際の使用時には、水平方向の力となる。また、鉛直荷重計測装置104により、水平方向(走行方向)の荷重を計測したときの、車輪110から荷重計測装置10に荷重される鉛直方向の荷重、つまり、荷重負荷装置102が負荷した荷重を計測した。なお、計測は、鉛直方向の荷重の場合について3回計測した。
【0036】
計測結果を図4に示す。ここで、図4は、荷重負荷装置が負荷した荷重と荷重計測装置が計測した荷重との関係を示すグラフである。ここで、図4では、横軸を鉛直荷重、つまり、荷重負荷装置が負荷した荷重とし、縦軸を水平荷重、つまり、荷重計測装置が計測した荷重とした。また、比較のために、荷重計測装置10の斜度(20度)から理論上の算出される鉛直荷重と水平荷重との関係を示す。図4に示すように、いずれの場合の計測についても、計測された水平荷重は、理論値と近い値であったことがわかる。また、各測定において、測定値のばらつきも小さいことがわかる。以上から、荷重計測装置によれば、車両から加わる水平方向の荷重を正確に計測できることがわかる。
【0037】
ここで、路面埋設物は、正面に突起部を設けることが好ましい。車輪と接触する正面に突起部を設けることで、車輪と路面埋設物との間でスリップや、すべりが発生することを防止でき、車輪から加わる力を路面埋設物に正確に伝達することができる。
【0038】
また、荷重計測装置は、路面埋設物を、走行方向のみに移動可能な状態で筐体に保持することが好ましい。路面埋設物を筐体に保持することで、車両通過時に路面埋設物に加わる力により、路面埋設物が浮いて筐体から外れることを抑制でき、荷重検出手段に正確に荷重を伝達することができ、また、荷重計測装置が故障することも抑制することができる。ここで、路面埋設物を、走行方向のみに移動可能な状態で筐体に保持するとしては、例えば、路面埋設物は、走行方向と平行な方向が長軸となる長穴を形成し、その長穴に、長穴よりも走行方向の径が小さいピン差し込み、このピンを筐体に固定する方法がある。さらにピンの路面埋設物側の端部が長穴よりも大きい径にすることで、路面埋設物が鉛直方向に動こうとした場合も、長穴がピンの端部を通過できないようにすることができ、路面埋設物が筐体から浮き上がることを防止できる。なお、このような、ピンと長穴は、路面埋設物の正面において四方の端部に設けることが好ましい。
【0039】
また、荷重計測装置10では、ロードセルを対向する2つの側面にそれぞれ3つずつ配置したが、その配置数、配置間隔は特に限定されず、必要に応じて設定すればよい。
【0040】
ここで、荷重計測装置では、ローラベアリングと2枚の鉄板とで構成された潤滑手段を用いたが、本発明はこれに限定されない。以下、図5及び図6を用いて潤滑手段の他の例について説明する。図5及び図6は、それぞれ荷重計測装置の他の実施形態の概略構成を示す断面図である。なお、図5に示す荷重計測装置210と、図6に示す荷重計測装置230とは、ともに潤滑手段212、潤滑手段232が異なる点を除いて他の構成は、図1−1及び図1−2に示す荷重計測装置10と同様の構成であるので、同一の構成には、同一の符号を付してその詳細な説明は省略し、以下、各荷重計測装置に特有の点を重点的に説明する。
【0041】
図5に示す荷重計測装置210は、路面埋設物12と、筐体14と、潤滑手段212と、荷重検出手段18とを有する。路面埋設物12と、筐体14と、荷重検出手段18とは、荷重計測装置10の各部と同様の構成であるので詳細な説明は省略する。潤滑手段212は、路面埋設物12の裏面と筐体14との間に配置され、鉄板214と、粉末層216と、鉄板218とで構成されている、また、鉄板214と、粉末層216と、鉄板218とは、筐体14から路面埋設物12の裏面に向かって鉄板218と、粉末層216と、鉄板214の順で積層されている。
【0042】
鉄板214は、路面埋設物12の裏面と接して配置された板状部材であり、鉄板218は、筐体14と接して配置された板状部材である。粉末層216は、四フッ化エチレン樹脂の白色粉末で構成されており、この粉末により鉄板214と鉄板218との間に層を形成している。潤滑手段212は、路面埋設物12と筐体14とが走行方向に相対的に移動する場合に、鉄板214と鉄板18との間の摩擦が粉末層216により低減され、路面埋設物12の裏面と筐体14との間で既知の低摩擦係数の力のみが発生するようにしている。このように、潤滑手段212も、路面埋設物12と筐体14とが相対的に移動しやすい状態で、路面埋設物12を裏面から走行方向に摺動可能な状態で支持している。なお、鉄板214は、粉末層216との摩擦係数よりも路面埋設物12との間の摩擦係数が高くなるため、路面埋設物21と共に移動する。
【0043】
このように、ローラベアリングに換えて、粉末層を設けることでも、路面埋設物12と筐体14とが相対的に移動しやすい状態で、路面埋設物12を裏面から走行方向に摺動可能な状態で支持することができ、荷重計測装置10と同様の効果を得ることができる。さらに、粉末層とすることで潤滑手段の厚みを薄くすることができ、従来用いられている車両の負荷を計測する装置と略同一の厚みとすることができるため、既存の施設で計測を行うことができる。なお、摩擦係数をより低くでき、より正確な荷重を簡単に計測できるため、粉末には、本実施形態のように四フッ化エチレン樹脂の白色粉末を用いることが好ましいが、他の材料の粉末を用いてもよい。
【0044】
次に、図6に示す荷重計測装置230は、路面埋設物12と、筐体14と、潤滑手段232と、荷重検出手段18とを有する。路面埋設物12と、筐体14と、荷重検出手段18とは、荷重計測装置10の各部と同様の構成であるので詳細な説明は省略する。
潤滑手段232は、路面埋設物12の裏面と筐体14との間に配置され、2枚の低摩擦シート234、236で構成されている。
【0045】
2枚の低摩擦シート234、236は、路面埋設物12の裏面と筐体14との間に積層されている。ここで、低摩擦シートとしては、種々の摩擦係数の低いシートを用いることができるが、例えば、シート表面の摩擦係数が小さい超高分子ポリエチレンシート(例えば、ニューライト(商品名、作新工業株式会社製))、ポリテトラフルオロエチレンシート(つまり、テフロン(登録商標)製のシート)、ポリイミドフィルム(例えば、カプトンシート(商品名、東レデュポン株式会社製)等を用いることができる。潤滑手段232は、路面埋設物12と筐体14とが走行方向に相対的に移動する場合に、低摩擦シート234と低摩擦シート236とが滑り、2路面埋設物12の裏面と筐体14との間で既知の低摩擦係数の力のみが発生するようにしている。このように、潤滑手段232も、路面埋設物12と筐体14とが相対的に移動しやすい状態で、路面埋設物12を裏面から走行方向に摺動可能な状態で支持している。なお、鉄板214は、粉末層216との摩擦係数よりも路面埋設物12との間の摩擦係数が高くなるため、路面埋設物21と共に移動する。
【0046】
このように、潤滑手段として、2枚の低摩擦シートを設けることでも、路面埋設物12と筐体14とが相対的に移動しやすい状態で、路面埋設物12を裏面から走行方向に摺動可能な状態で支持することができ、荷重計測装置10と同様の効果を得ることができる。さらに、2枚のシート状部材とすることで潤滑手段の厚みを薄くすることができ、従来用いられている車両の負荷を計測する装置と略同一の厚みとすることができるため、既存の施設で計測を行うことができる。
【0047】
また、上述した荷重計測装置では、いずれも、荷重検出手段として、ロードセルを配置したが、本発明はこれに限定されない。以下、図7−1及び7−2を用いて荷重検出手段の他の例について説明する。図7−1は、荷重計測装置の他の実施形態の概略構成を示す上面図であり、図7−2は、図7−1に示す荷重計測装置のB−B線断面図である。なお、図7−1及び図7−2に示す荷重計測装置300は、荷重検出手段310の構成が異なる点を除いて他の構成は、基本的に、図6に示す荷重計測装置230と同様の構成である。そこで、同一の構成には、同一の符号を付してその詳細な説明は省略し、以下、各荷重計測装置300に特有の点を重点的に説明する。
【0048】
図7−1及び図7−2に示す荷重計測装置300は、路面埋設物302と、筐体14と、潤滑手段232と、荷重検出手段310とを有する。筐体14と、潤滑手段232とは、荷重計測装置230の各部と同様の構成であるので詳細な説明は省略する。路面埋設物302は、側面に凹部が形成されていない以外は、路面埋設物12と同様の構成である。つまり、路面埋設物302は、板状の部材であり、面積の最も大きい面(以下「正面」という。)が車両の車輪と接触する面となる。路面埋設物302は、側面と裏面が筐体14に対向するように、筐体14で囲われた空間に配置されている。
【0049】
荷重検出手段310は、2枚の圧力シート312で構成されており、1枚の圧力シート312は、路面埋設物302の4つの側面のうち車両の走行方向において先端となる側面とそれに対面している筐体との間とに配置され、もう一枚の圧力シート312は、路面埋設物302の4つの側面のうち車両の走行方向において後端となる側面とそれに対面している筐体との間とに配置されている。圧力シート312は、加えられた圧力を検出するシート状センサである。圧力シート312は、路面埋設物302に対して走行方向の力が荷重されていないときは、路面埋設物302及び筐体14から力を受けないように配置されている。また、圧力シート312は、路面埋設物302から水平方向の荷重が加えられると、その荷重を検出する。なお、この場合も、水平方向の加重は、潤滑手段の摩擦係数に比例する力は加味して計算する。
【0050】
荷重計測装置300は、以上のような構成であり、車両が路面埋設物302上を通過する際に、路面埋設物302に水平方向の荷重が加えられると、路面埋設物302は力が加えられた方向に移動される。路面埋設物302が移動することで、路面埋設物302により圧力シート312が押され、圧力シート312はおされた力を検出する。荷重計測装置300は、この押された力から路面埋設物302に加えられた水平方向の力を計測する。なお、路面埋設物302に加えられる水平方向の荷重は、圧力シート312で検出された力の和となる。このように、ロードセルに替えて圧力シートを用いても、路面埋設物302に加えられる圧力を計測することができる。また、荷重検出手段を薄いシートにすることができるため、装置より小さくすることができる。
【0051】
また、荷重検出手段としては、ロードセル、圧力シート以外にもひずみゲージを用いることができる。以下、図8−1及び8−2を用いて荷重検出手段の他の例について説明する。図8−1は、荷重計測装置の他の実施形態の概略構成を示す上面図であり、図8−2は、図8−1に示す荷重計測装置のC−C線断面図である。なお、図8−1及び図8−2に示す荷重計測装置320は、荷重検出手段330の構成が異なる点を除いて他の構成は、基本的に、図7−1及び図7−2に示す荷重計測装置300と同様の構成である。そこで、同一の構成には、同一の符号を付してその詳細な説明は省略し、以下、各荷重計測装置330に特有の点を重点的に説明する。
【0052】
図8−1及び図8−2に示す荷重計測装置330は、路面埋設物302と、筐体322と、潤滑手段232と、荷重検出手段330とを有する。潤滑手段232と、路面埋設物302とは、荷重計測装置300の各部と同様の構成であるので詳細な説明は省略する。筐体322は、鉛直方向上方の面が解放された箱型部材であり路面に埋められて固定されている。また、筐体322の内部の空間には、路面埋設物302が配置されている。つまり、筐体322は、路面埋設物302の正面以外を囲うように配置されている。また、筐体322と路面埋設物302の側面との間には、一定の間隔が設けられており、路面埋設物302は、筐体322に対して移動可能な状態となっている。また、筐体322は、箱型形状の4つの側面(路面埋設物302の側面と対向している面)のうち、走行方向において先端となる側面と路面342との間、及び、後端となる側面344と路面との間に後述する荷重計測手段330を配置するための隙間をあけて配置されている。
【0053】
荷重検出手段330は、複数のひずみゲージ332と複数のひずみゲージ334とで構成されている。ひずみゲージ332は、路面埋設物302の4つの側面のうち車両の走行方向において先端となる側面とそれに対面している筐体322との間と、及び、路面埋設物302の4つの側面のうち車両の走行方向において後端となる側面とそれに対面している筐体322との間とに配置されている。ひずみゲージ334は、筐体322の4つの側面のうち車両の走行方向において先端となる側面342とそれに対面している路面との間と、及び、筐体322の4つの側面のうち車両の走行方向において後端となる側面344とそれに対面している路面との間とに配置されている。ひずみゲージ332、および334は、筐体322の側面の変形つまりひずみを検出するセンサである。
【0054】
荷重計測装置330は、以上のような構成であり、車両が路面埋設物302上を通過する際に、路面埋設物302に水平方向の荷重が加えられると、路面埋設物302は力が加えられた方向に移動される。路面埋設物302が移動することで、路面埋設物302により筐体322の走行方向先端の側面342が押される。本実施形態では、筐体322の走行方向先端の側面342がひずみゲージ332、334を配置するための空間が形成されているため、筐体322の走行方向先端の側面342に荷重が負荷されると、側面342は、ひずみを発生させる。ひずみゲージ332、334は、側面342に発生したひずみを検出し、検出したひずみ量と側面342の剛性に基づいて路面埋設物302に加わった水平方向の荷重を算出する。なお、この場合も、水平方向の加重は、潤滑手段の摩擦係数に比例する力は加味して計算する。このように、ロードセル、圧力シートに替えてひずみゲージを用いても、路面埋設物302に加えられる圧力を計測することができる。
【0055】
なお、荷重計測装置320では、筐体の側面にひずみゲージを配置し、筐体のひずみを測定したが本発明はこれに限定されない。例えば、筐体とひずみを計測する対象の部材とを別々にしてもよい。具体的には、荷重検出手段をひずみゲージと鉄板とで構成し、筐体と路面埋設物との間に鉄板を配置し、この鉄板のひずみをひずみゲージで検出するようにしてもよい。この場合は、筐体としては、実質的に変形しない剛性の高い材料を用いることができる。また、筐体と路面との間に隙間を設ける必要が無くなり、設置を簡単にすることができる。
【0056】
また、上記実施形態では、ロードセルと路面埋設物との間、また、潤滑部材を構成する材料として鉄板を用いたが、鉄板以外の剛性の高い板状部材も用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明にかかる荷重計測装置は、路面埋設物にかかる水平方向の荷重を計測するのに有用であり、特に、路面埋設物にかかる荷重に基づいて、車両の通過、車両の荷重、車軸の数を検出する装置を適切に設計するための試験装置として用いることに適している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1−1】荷重計測装置の一実施形態の概略構成を示す上面図である。
【図1−2】図1−1に示す荷重計測装置のA−A線断面図である。
【図2】測定に用いた装置の概略構成を示す正面図である。
【図3】図2に示す装置の荷重計測装置の周辺部を拡大して示す拡大正面図である。
【図4】荷重負荷装置が負荷した荷重と荷重計測装置が計測した荷重との関係を示すグラフである。
【図5】荷重計測装置の他の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図6】荷重計測装置の他の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図7−1】荷重計測装置の他の実施形態の概略構成を示す上面図である。
【図7−2】図7−1に示す荷重計測装置のB−B線断面図である。
【図8−1】荷重計測装置の一実施形態の概略構成を示す上面図である。
【図8−2】図8−1に示す荷重計測装置のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 荷重計測装置
12 路面埋設物
14 筐体
16 潤滑手段
18 荷重検出手段
20 ローラベアリング
22、24、28 鉄板
26 ロードセル
32 正面
34、36 側面
40、42 凹部
100 検証装置
102 荷重負荷装置
104 鉛直方向荷重検出装置
106 斜度調整装置
216 粉末層
232、234 低摩擦シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する路面に埋め込まれて固定され、鉛直方向上側の面が開放された筐体と、
板状部材であり、面積が広い面が鉛直方向上面と鉛直方向下面側となるように、前記筐体の内側に移動自在な状態で配置された路面埋設物と、
前記路面埋設物の鉛直方向下側の面と前記筐体との間に配置された潤滑手段と、
前記路面埋設物の側面と前記筐体との間に配置され、前記路面埋設物の車両の進行方向側の側面に加わる水平方向の荷重を検出する荷重検出手段とを有することを特徴とする荷重計測装置。
【請求項2】
前記荷重検出手段は、前記路面埋設物の4つの側面のうち、前記車両の進行方向側の側面で、かつ、対向する2つの側面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の荷重計測装置。
【請求項3】
前記荷重検出手段は、前記路面埋設物の側面と前記筐体との間に配置されたロードセルであることを特徴とする請求項1または2に記載の荷重計測装置。
【請求項4】
前記路面埋設物は、側面に凹部が形成されており、前記ロードセルは、該凹部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の荷重計測装置。
【請求項5】
前記荷重検出手段は、前記路面埋設物の側面と前記筐体との間に配置された圧力シートであることを特徴とする請求項1または2に記載の荷重計測装置。
【請求項6】
前記荷重検出手段は、前記路面埋設物からの水平方向の荷重が負荷される物体のひずみを検出するひずみゲージであることを特徴とする請求項1または2に記載の荷重計測装置。
【請求項7】
前記潤滑手段は、複数のローラベアリングであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の荷重計測装置。
【請求項8】
前記潤滑手段は、多数の微細な粉末であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の荷重計測装置。
【請求項9】
前記潤滑手段は、複数枚積層された低摩擦シートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の荷重計測装置。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate


【公開番号】特開2010−151654(P2010−151654A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330824(P2008−330824)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】