説明

荷電粒子ビーム装置

【課題】試料を自動で平面に加工することができる荷電粒子ビーム装置を提供する。
【解決手段】荷電粒子ビームを試料に照射する荷電粒子ビーム照射手段と、荷電粒子ビームを照射された試料から発生する二次荷電粒子を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された二次荷電粒子に基づいて荷電粒子像を形成する画像表示手段と、前記荷電粒子像において所望の加工領域を選択し、前記加工領域において、荷電粒子ビームを照射する各単位照射領域における輝度を取得し、前記輝度に応じて各単位照射領域に照射する荷電粒子ビームの照射時間を決定し、各単位照射領域に対する照射時間を規定した加工データを設定する画像表示及び加工設定手段と、前記加工データにしたがって前記荷電粒子ビーム照射手段を制御し、荷電粒子ビームを前記試料に照射させるビーム走査制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム装置、例えば、集束イオンビーム加工装置による試料の加工においては、操作者が加工データを生成し、加工データにしたがって試料を加工し、加工後に操作者が加工跡を確認し、必要であれば再加工といった工程を行う。荷電粒子ビーム装置による加工では、物質の構造を知るために、断面形状をいかにきれいに見ることができるか、という観点が主流であった。近年、荷電粒子ビーム装置の性能の向上に伴い、試料の平面形状の観察を行うことが多くなってきている。平面形状を見るためには、試料をより平らに加工する技術が求められる。従来は、特許文献1に記載されているように、ハードウェアにより試料の高さを計測し、それを加工にフィードバックするという方法が用いられていた。
【0003】
【特許文献1】特開平8−290274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凹凸がある試料を加工して平面を形成しようとする場合、荷電粒子ビームを一様に照射しても平面にはならないため、試料の高さに応じて荷電粒子ビームを照射する時間を加減し、操作者が加工跡が平面になったかどうかを確認しながら何度も再加工する必要があった。加工跡が平面になったか確認するためには、試料を傾斜させて確認する必要があり、手間や時間がかかっていた。
【0005】
配線構造を有する試料を加工して平面を形成しようとする場合、配線部分のような硬い部分はあまり加工されず、基板部分のような柔らかい部分はより加工されてしまうため、荷電粒子ビームを一様に照射したのでは凹凸を伴った加工跡となってしまい、操作者が加工跡が平面になったかを確認しながら何度も再加工する必要があった。加工跡が平面になったか確認するためには、試料を傾斜させて確認する必要があり、手間や時間がかかっていた。また、平らに加工をするための加工データを作成することは、莫大な時間と労力がかかっていた。
【0006】
また、単一の材質から成り、凹凸がない試料を加工する場合で、特に一定の深さの穴を形成しようとする場合、荷電粒子ビームによって削られた材質が試料に再度付着し、穴の底面が平面にならないという問題もあった。この場合も、オペレータが加工跡が平面になったかを確認しながら何度も再加工する必要があり、加工跡が平面になったか確認するためには、試料を傾斜させて確認する必要があり、手間や時間がかかっていた。
【0007】
本発明は、上述したことを鑑みてなされたものであり、試料を自動で平面に加工することができる荷電粒子ビーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、荷電粒子ビームを照射された試料から発生する二次荷電粒子に基づいて形成された荷電粒子像において、ある領域の輝度がその領域の高さ、すなわちワーキングディスタンス(WD)に比例することに着目し、輝度に応じてその領域への荷電粒子ビームの照射時間を決定することに想到した。
【0009】
本発明の荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビームを試料に照射する荷電粒子ビーム照射手段と、荷電粒子ビームを照射された試料から発生する二次荷電粒子を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された二次荷電粒子に基づいて荷電粒子像を形成する画像表示手段と、前記荷電粒子像において所望の加工領域を選択し、前記加工領域において、荷電粒子ビームを照射する各単位照射領域における輝度を取得し、前記輝度に応じて各単位照射領域に照射する荷電粒子ビームの照射時間を決定し、各単位照射領域に対する照射時間を規定した加工データを設定する画像表示及び加工設定手段と、前記加工データにしたがって前記荷電粒子ビーム照射手段を制御し、荷電粒子ビームを前記試料に照射させるビーム走査制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、試料を自動で平面に加工することができる荷電粒子ビーム装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、荷電粒子ビーム装置の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、荷電粒子ビーム装置の構成の一例を示すブロック図である。本荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビーム光学系1と、試料台4と、検出器5と、画像表示及び加工設定装置6と、ビーム走査制御装置7と、ガス噴射ノズル8と、ガス源9とを備える。図1において、荷電粒子ビーム光学系1から放射される集束された荷電粒子ビーム2は、試料ステージ4に装着された試料3に照射される。試料ステージ4は、互いに直交するx方向、y方向、z方向の3軸方向における移動と、照射される荷電粒子ビーム2の光軸を回転軸とする試料ステージ4自身の回転方向における移動と、試料ステージ4自身の傾斜とが可能であり、実質的に試料3のあらゆる部位を任意の角度から観察し、加工することが可能である。観察には、観察用のビーム径の細い荷電粒子ビーム2で試料3を走査し、試料3から発生する二次荷電粒子を検出器5で検出し、検出した二次荷電粒子により、画像表示及び加工設定装置6が試料3を画像化し、画面に表示する。そして、画像表示及び加工設定装置6の画面に表示された試料の画像を操作者が見ながら、試料の観察領域、加工領域を設定していき、画像表示及び加工設定装置6と連動したビーム走査制御装置7を介して、荷電粒子ビーム光学系1の制御を行う。加工には、荷電粒子ビーム光学系1から収束された荷電粒子ビーム2を試料3の任意の位置に照射することで試料3を削るスパッタリングと、ガス源9からノズル8により試料3近傍へタングステン化合物ガスや炭素化合物ガス等のガスを放出し、試料3の表面上に膜を形成させるデポジットとがある。本荷電粒子ビーム装置では、スパッタリングのみを使用する。荷電粒子ビーム2は、例えば集束イオンビームである。加工の設定は、画像表示及び加工設定装置6によって行う。画像表示された二次荷電粒子像を見ながら、試料ステージ4を移動させ、荷電粒子ビーム2の偏向領域を設定し、試料ステージ4上の目印の図形を使って実際に荷電粒子を当てる位置を決定する。
【0012】
従来は、画像表示及び加工設定装置6の画面に表示される試料の画像に対して操作者が加工領域を指定し、加工領域をどのように加工するか、どのような太さの荷電粒子ビームを照射するか、荷電粒子ビームをどのくらいの時間照射するかといった情報も合わせて指定し、指定が終わったら加工を開始し、加工が終了した後、操作者は加工領域の形状が求めている形状かどうかを観察し、加工が足りないときは、加工領域、加工に使用する荷電粒子ビーム、荷電粒子ビームの照射時間等の条件を再度指定し、加工を行うといった手順を行っていた。操作者は、加工領域が最終的に求めている形状となるまで、このような作業を繰り返し行っていた。すなわち、従来の加工では、加工領域を指定した後、荷電粒子ビームをどこにどれくらい当てるかといった条件は、操作者により決定していた。
【0013】
本荷電粒子ビーム装置では、操作者は加工領域の指定のみを行えばよい。操作者は、観察用のビーム径の細い荷電粒子ビームで試料3を走査することによって試料3から発生し、検出器5によって検出された二次荷電粒子に基づいて画像表示及び加工設定装置6の画面に表示された試料3の像を見ながら、像に対して所望の加工領域を指定する。このような加工領域の指定は、例えば、画像表示装置及び加工設定装置6に接続されたマウス等のポインティングデバイスを操作して行うことができる。
【0014】
本荷電粒子ビーム装置では、荷電粒子ビームを照射された試料から発生する二次荷電粒子に基づいて形成された荷電粒子像において、ある領域の輝度がその領域の高さ、すなわちワーキングディスタンス(WD)に比例することに着目し、輝度に応じてその領域への荷電粒子ビームの照射時間を決定する。画像表示及び加工設定装置6で得られる試料3の像の輝度情報は、画像表示及び加工設定装置6のコントラストやブライトネスの設定によって変化してしまう。したがって、加工開始前の画像取得時には、オートコントラスト・オートブライトネス等により、常に一定の状態を作り出せる仕掛けが必要となる。また、オートコントラスト・オートブライトネスで取得する画像に基づいて、材質と輝度とWDとの関係を予め変換テーブルとして保持しておく。画像表示及び加工設定装置6は、選択された加工領域において、荷電粒子ビームが照射される単位照射領域ごとに輝度を取得し、変換テーブルを参照して、すべての単位照射領域が所望のWDとなるように(すなわち加工領域が平面になるように)各単位照射領域に照射する荷電粒子ビームの照射時間を決定し、加工データを設定する。ビーム走査制御装置7は、このようにして決定された加工データにしたがって荷電粒子ビーム光学系を制御し、試料3の加工領域を加工する。加工後、再度観察用のビーム径の細い荷電粒子ビームで試料3を走査して試料3の像を取得し、加工領域における各単位照射領域が所望のWDとなっているかどうかを判定し、再加工が必要なら加工データを新たに設定して再加工を行う。試料3の加工領域が所望のWDまで平面に加工されるまで再加工を繰り返す。加工を開始してから終了するまでは、画像表示及び加工設定装置6のコントラストやブライトネスの設定は変更しない。
【0015】
本荷電粒子ビーム装置の目的は、試料の特定の加工領域を平面に加工することである。このような加工は、種々のバリエーションが存在する。例えば、単一の材料から成る表面が平面の試料全体を加工する(試料を薄くする)、単一の材料から成るが表面が平坦でない(凹凸がある)試料を加工する、複数の材料から成る試料を加工する、単一の材料から成り試料の一部のみを加工する(試料に一定の深さの穴を開ける)、等が考えられる。単一の材料から成る表面が平面の試料全体を加工する場合は、試料のどの部分に関しても同じ加工データで加工すればよい。複数の材料から成る試料を加工する場合でも、各材料が垂直方向に層を成す場合は、単一の材料から成る試料を加工する場合と同様である。しかしながら、単一の材料から成り表面が平面の試料全体を加工する場合や、同一平面上に複数の材料から成る部分が存在する試料を加工する場合などでは、試料において条件が異なる場所ごとに加工データを変えなければならない。また、単一の材料から成る試料の一部のみを加工する場合、荷電粒子ビームの照射によって削れた材質が試料に再び付着し、加工領域を同じ加工データで加工しても底面が平面にならず、断面がテーパー状になってしまい、加工データを場所に応じて変えなければならない。そこで、本荷電粒子ビーム装置の効果を説明するために、以下に、単一の材料から成り表面が平面の試料全体を加工する場合を実施例1において、同一平面上に複数の材料から成る部分が存在する試料を加工する場合を実施例2において、単一の材料から成る試料の一部のみを加工する場合を実施例3において説明する。
【0016】
<実施例1>
図2は、画像表示及び加工設定装置6の画面に表示された試料3の加工領域のトリミングを説明する平面図及び断面図である。試料3の所望の加工領域を平面になるように加工するのが目的である。本実施例において、試料3は、図2の下部に示す断面図におけるように凹凸があり、平面ではないとする。このような場合、加工領域に一様に荷電粒子ビームを照射したのでは、平面に加工することはできない。
【0017】
画像表示及び加工設定装置6は、荷電粒子ビーム光学系1から荷電粒子ビームを照射された試料3から生じ、検出器5によって検出された二次荷電粒子から荷電粒子像を形成する。このような二次荷電粒子による画像では、試料3の高さが高くなると(すなわちWDが小さくなると)輝度が高くなる。すなわち、図2の上部に示す平面図のように、試料3の高い部分(WDが小さい部分)は明るく見え(白い部分)、低い部分(WDが大きい部分)は暗く見える(ハッチングを施した部分)。画像表示及び加工設定装置6は、像21から指定された加工領域22を加工領域画像23としてトリミングする。図3は、このような加工領域画像23における輝度情報を説明する概念図である。加工領域画像23を、荷電粒子ビームが照射される単位照射領域に分割する。荷電粒子ビームは、各単位照射領域ごとに所定の時間照射される。図3における各ます目は、このような単位照射領域に対応する。各々の単位照射領域の輝度値は、十六進数で00からFFまでの値で表される。
【0018】
試料から発生する二次荷電粒子を検出することによって形成される画像の輝度は、試料の材質によっても変化する。したがって、材質ごとに、輝度とWDの対応テーブルを以下のような方法によって用意する。例えば、WD=5の位置に試料を移動させ、そのときの輝度を取得する。次に、WD=6の位置に試料を移動させ、そのときの輝度を取得する。試料の位置を変化させながらこれを繰り返し、対応テーブルを作成する。図4は、このような対応テーブルの一例を示す。この対応テーブルから、輝度とWDの関係が一次関数として求められる。
【0019】
画像表示及び加工設定装置6は、画像と対応テーブルを基に加工の条件を決定する。すなわち、試料3の材質の対応テーブルを参照し、各単位照射領域における輝度から各単位照射領域のWDを求る。そして、各単位照射領域の深さが同じになるようにするために必要な各単位照射領域に照射する荷電粒子ビームの照射時間を決定する。ビーム走査制御装置7は、画像表示及び加工設定装置6によってこのように決定された加工データにしたがって荷電粒子ビーム光学系を制御して、荷電粒子ビームを試料3に照射して加工を行う。図5は、このような加工データの一例を示すテーブルである。各々の単位照射領域の照射時間が記入されている。加工された試料が特に低い部分に再付着する場合があるため、高い部分(WDが小さい部分)から加工していくほうがよい。加工データにしたがって加工しても、一度では試料を平面に加工できない場合がある。したがって、加工データにしたがって加工した後、再度画像を取得してすべての単位照射領域の輝度が一様であるかどうかを確認して、試料が平面に加工できていない場合は新たな加工データを作成し、この新たな加工データにしたがって加工を行う。試料が平面になるまでこれを繰り返す。
【0020】
図6は、本荷電粒子ビーム装置による加工処理の手順の一例を説明するフローチャートである。ステップS501で、試料の画像を取得する。ビーム走査制御装置7の制御により、荷電粒子ビーム光学系1は、観察用のビーム径の細い荷電粒子ビーム2を、試料3の加工領域全体が走査されるように照射する。検出器5は、試料3の表面から発生する二次荷電粒子ビームを検出し、画像表示加工設定装置6は、検出器5によって検出された二次荷電粒子ビームを画像化して表示する。ステップS502で、画像を単位照射領域ごとに分割し、各々の単位照射領域の輝度情報を取得する。ステップS503で、取得した単位照射領域の輝度情報から、加工が必要かどうかを調べる。対応テーブルに基づいて各単位照射領域の輝度情報からWDを求め、これらが一様であり(すなわち、加工領域が平面であり)、所望のWDであれば(すなわち、加工領域が所望の深さまで削れていれば)、加工が必要でないと判断し、加工処理を終了する。各単位照射領域のWDが一様でないか、所望のWDとなるまで加工されていなければ、ステップS505に進む。ステップS505で、画像表示加工設定装置6は、各単位照射領域のWDに基づいて、所望のWDとなるために必要な各単位照射領域に照射する荷電粒子ビームの照射時間を求め、加工データを決定する。ビーム走査制御装置7は、この加工データにしたがって荷電粒子ビーム光学系を制御して試料3の加工領域に荷電粒子ビームを照射して加工を行い、ステップS501に戻る。
【0021】
<実施例2>
本荷電粒子ビーム装置の目的は、所定の領域を平面に加工することである。実施例1では、同一の材料で高さ変化がある試料を例に挙げたが、同一平面上に複数の硬さが異なる材質から成る部分が存在する試料の所望の領域を平面になるように加工する目的にも本荷電粒子ビーム装置を使用することができる。
【0022】
図7は、2種類の材料からなる試料の平面図及び断面図である。本実施例の試料51は、シリコン基板53の上にアルミ配線52が形成されている。図7に示す部分が試料51の加工領域とする。シリコンに比べアルミは非常に硬く、荷電粒子ビームによるスパッタレートは非常に高い。また、二次荷電粒子によって形成された画像において、荷電粒子ビームの反射率の関係で、シリコンよりアルミの方が白く見える。したがって、すなわち、材質によって輝度とWDの関係が異なるため、実施例1のような単一の材料から成る試料の場合のように、すべての単位照射領域の輝度が一様になったことが加工領域が平面になったことを意味しない。
【0023】
本実施例における試料51の加工の手順を図8を参照して説明する。図8(a)において、加工前の試料51を観察用のビーム径の細い荷電粒子ビームで走査し、試料51の表面から発生する二次荷電粒子ビームを検出して画像を形成する。この画像におけるシリコンの部分の輝度とアルミの部分の輝度の比率を保持しておく。先ず、比較的柔らかいシリコンの部分が所望のWDになるように試料51の全面を荷電粒子ビームで加工する。この際、実施例1におけるように、所望のWDとなるまで加工−観察の手順を繰り返す。図8(b)はその途中の状態を表し、アルミの一部がシリコンの部分の上に被さっているのは、一度削れたアルミが再度付着したために生じたものである。図8(c)の、シリコンの部分が所望のWDまで加工された状態で、シリコンより硬いアルミの部分はまだ所望のWDに達していない。この後、アルミの部分のみを荷電粒子ビームによって加工する。この際、アルミの部分が所望のWDとなるときの輝度は、シリコンの部分の輝度との比率によって求めることができる。例えば、加工前の平面の状態で記憶したシリコンの部分の輝度とアルミの部分の輝度の比率(ここでは、アルミの輝度/シリコンの輝度)がxであるとし、所望のWDのときのシリコンの部分の輝度がyであるとした場合、所望のWDのときのアルミの部分の輝度zは、z=xyである。アルミの部分をこの輝度zになるまで荷電粒子ビームによって加工していく(図8(d))。このようにして、図8(e)に示すような所望のWDまで平面に加工された試料51が得られる。本実施例によれば、シリコンについてのみ輝度とWDの対応テーブルを用意すれば、シリコンの部分とアルミの部分が混在した試料を平面に加工することができる。図4に示すような材質ごとに予め測定された対応テーブルを用いて各部分への荷電粒子ビームの照射時間を決定してもよい。
【0024】
<実施例3>
同一材質から成る表面が平面な試料に一定の深さの穴を形成しようとする場合、荷電粒子ビームを一様に照射しただけでは、荷電粒子ビームによって削られた材質が再度付着し、図9(a)に示すように断面がテーパ状になってしまう。このような場合も、本荷電粒子ビーム装置を適用すれば、一定の深さで底面が平面の穴を自動的に形成することができる。すなわち、図9(a)に示すような状態になっても、この状態の二次荷電粒子による画像において、WDが小さいため輝度値が高くなるテーパー部分にのみ荷電粒子ビームを照射するような加工データを設定し、テーパー部分のみを削るように加工することができる。その結果、図9(b)に示すように底面が平面の穴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、荷電粒子ビーム装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】荷電粒子ビーム装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】試料の加工領域のトリミングを説明する平面図及び断面図である。
【図3】画像における輝度情報を説明する概念図である。
【図4】輝度とWDの対応テーブルの一例を示す図である。
【図5】加工データの一例を示すテーブルである。
【図6】荷電粒子ビーム装置による加工処理の手順の一例を説明するフローチャートである。
【図7】2種類の材料からなる試料の平面図及び断面図である。
【図8】(a)〜(e)は2種類の材料からなる試料の加工の手順を示す図である。
【図9】(a)は底面が平面の穴を試料に形成する際に生じるテーパ部分を示す断面図であり、(b)は試料に形成した底面が平面の穴を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 荷電粒子ビーム光学系
2 荷電粒子ビーム
3 試料
4 試料台
5 検出器
6 画像表示及び加工設定装置
7 ビーム走査制御装置
8 ガス噴射ノズル
9 ガス源
21 試料の像
22 加工領域
51 試料
52 アルミ配線
53 シリコン基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを試料に照射する荷電粒子ビーム照射手段と、
荷電粒子ビームを照射された試料から発生する二次荷電粒子を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された二次荷電粒子に基づいて荷電粒子像を形成する画像表示手段と、
前記荷電粒子像において所望の加工領域を選択し、前記加工領域において、荷電粒子ビームを照射する各単位照射領域における輝度を取得し、前記輝度に応じて各単位照射領域に照射する荷電粒子ビームの照射時間を決定し、各単位照射領域に対する照射時間を規定した加工データを設定する画像表示及び加工設定手段と、
前記加工データにしたがって前記荷電粒子ビーム照射手段を制御し、荷電粒子ビームを前記試料に照射させるビーム走査制御手段とを備えることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記加工データによる加工後、前記試料の荷電粒子像を再度取得し、前記加工領域の各単位照射領域における輝度から再加工が必要かどうかを判定し、再加工が必要な場合、新たな加工データを設定し、再加工を行うことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
輝度の高い単位照射領域から順に加工することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記荷電粒子ビームは集束イオンビームであることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
前記画像表示及び加工設定手段は、材料ごとに予め測定され記憶された輝度とワーキングディスタンスの対応テーブルを参照し、前記加工領域が所定のワーキングディスタンスとなるように前記加工データを設定することができることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
試料が複数の硬さが異なる材質から構成される場合、前記画像表示及び加工設定手段は柔らかい材質の部分から加工を行うように前記加工データを設定することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
荷電粒子ビームを試料に照射する荷電粒子ビーム光学系と、
荷電粒子ビームを照射された試料から発生する二次荷電粒子を検出する検出器と、
前記検出器によって検出された二次荷電粒子に基づいて荷電粒子像を形成する画像表示装置と、
前記荷電粒子像において所望の加工領域を選択し、前記加工領域において、荷電粒子ビームを照射する各単位照射領域における輝度を取得し、前記輝度に応じて各単位照射領域に照射する荷電粒子ビームの照射時間を決定し、各単位照射領域に対する照射時間を規定した加工データを設定する画像表示及び加工設定装置と、
前記加工データにしたがって前記荷電粒子ビーム光学系を制御し、荷電粒子ビームを前記試料に照射させるビーム走査制御装置とを備えることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
前記加工データによる加工後、前記試料の荷電粒子像を再度取得し、前記加工領域の各単位照射領域における輝度から再加工が必要かどうかを判定し、再加工が必要な場合、新たな加工データを設定し、再加工を行うことを特徴とする請求項7記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
輝度の高い単位照射領域から順に加工することを特徴とする請求項7記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
前記荷電粒子ビームは集束イオンビームであることを特徴とする請求項7記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
前記画像表示及び加工設定装置は、材料ごとに予め測定され記憶された輝度とワーキングディスタンスの対応テーブルを参照し、前記加工領域が所定のワーキングディスタンスとなるように前記加工データを設定することができることを特徴とする請求項7記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
試料が複数の硬さが異なる材質から構成される場合、前記画像表示及び加工設定装置は柔らかい材質の部分から加工を行うように前記加工データを設定することを特徴とする請求項7記載の荷電粒子ビーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−270025(P2008−270025A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113156(P2007−113156)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】