説明

蒸しパン類及びその製造方法

【課題】新規形状の蒸しパン類及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】蒸気加熱された生地が、容器側面に沿って容器より上部延長方向にそのまませり上がった、従来知られていない新規形状の蒸しパン類及び該蒸しパン類の製造方法を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規形状の蒸しパン類及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、容器に生地を充填し、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置き、蒸気加熱することによって得られる新規形状の蒸しパン類及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸しパン、蒸しケーキ、がんづき、マーライカオ等の様々な蒸しパン類が製造されている。しかし、これらはほとんど、1)蒸気加熱された生地が容器より上部にドーム状に盛り上がっている形状(図1、A.)、2)蒸気加熱された生地が容器より上部に盛り上がり、頂面が不規則に割れている形状(図1、B.)や、または3)蒸気加熱された生地が大型の枠に沿ってそのまま蒸しあがった形状(図1、C.)でしかない。
これらの外観に変化をもたらすために、小豆、フラワーペースト、ジャム類をトッピングした製品等も製造されているが、上記3つの形状と大きく変わるものではなく、蒸しパン類は消費者にとって目新しさに欠けたものとなっている。
【0003】
近年、このような蒸しパン類の形状に変化をもたらしたものとして、ドーナツ型蒸しパンが開発されている(例えば、特許文献1参照)。このドーナツ型蒸しパンは、ドーナツの略雌型状に形成された容器本体と、この容器の中に敷いたシートを含むドーナツ型の蒸しパン焼成容器を使用して製造されるものである。しかし、この製品はドーナツ型という特別な型を必要とすることから、製造にコストがかかり、さらにドーナツ型の形状は特別目新しい形状であるとは言えない。
また、略凹状の蒸し型を使用して製造することにより、表面が表皮ではなく内部組織と同様にスポンジ状組織になる、略ドーム状もしくは山型状となる蒸しパン(例えば、特許文献2参照)も開発されているが、消費者において、これらの蒸しパン類よりもさらに目新しさのある蒸しパン類の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2934671号
【特許文献2】特許第3739033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来知られている蒸しパン類に対し、特別な型等を必要とせずに製造できる、新規形状の蒸しパン類及びその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意研究したところ、容器に生地を充填し、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置き、蒸気加熱することによって、従来知られていない新規形状の蒸しパン類が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明で得られる蒸しパン類はいずれも蒸気加熱によって得られる、次の1)〜3)の特徴を有する新規形状の蒸しパン類である。
1)生地がペースト状の食品より上方にせり上がっている
2)ペースト状の食品より上方にせり上がった生地の側面が底面に対して垂直である
3)ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上を占めている
このような1)〜3)の特徴を有する本発明で得られる蒸しパン類のひとつの形状を図1、D.に示したが、非常に目新しさのあるものであった。
【0007】
即ち、本発明は次の(1)〜(14)に記載の新規形状の蒸しパン類及びその製造方法等に関する。
(1)容器に生地を充填し、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置き、蒸気加熱することによって得られる新規形状の蒸しパン類であって、次の1)〜3)の特徴を有する新規形状の蒸しパン類。
1)生地がペースト状の食品より上方にせり上がっている
2)ペースト状の食品より上方にせり上がった生地の側面が底面に対して垂直である
3)ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上を占めている
(2)さらに、容器内に保形性のある食品を配置し、蒸気加熱することによって得られる上記(1)に記載の蒸しパン類。
(3)生地とペースト状の食品の重量比を8:0.5〜8:3として得られる上記(1)または(2)に記載の蒸しパン類。
(4)蒸しパン類が蒸しパン、蒸しケーキである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の蒸しパン類。
(5)頂面が底面に対して水平である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の新規形状の蒸しパン類。
(6)生地とペースト状の食品の重量比を8:0.5〜8:3とし、かつ、生地と保形性のある食品の重量比を8:2〜8:5として得られる上記(5)に記載の蒸しパン類。
(7)次の工程を含む、上記(5)または(6)に記載の蒸しパン類の製造方法。
1)容器内に保形性のある食品の配置と生地の充填をした後、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置く工程
2)蒸気加熱する工程
(8)頂面が凸状である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の新規形状の蒸しパン類。
(9)頂面に割れのある上記(1)〜(4)のいずれかに記載の新規形状の蒸しパン類。
(10)生地とペースト状の食品の重量比を8:0.5〜8:3とし、かつ、生地と保形性のある食品の重量比を8:2未満として得られる上記(8)または(9)に記載の蒸しパン類。
(11)次の工程を含む、上記(8)〜(10)のいずれかに記載の蒸しパン類の製造方法。
1)容器内に生地を充填した後、または容器に保形性のある食品の配置と生地の充填をした後、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置く工程
2)蒸気加熱する工程
(12)頂面が凹状である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の新規形状の蒸しパン類。
(13)生地とペースト状の食品の重量比を8:0.5〜8:3とし、かつ、生地と保形性のある食品の重量比が8:5を超える値にして得られる上記(12)に記載の蒸しパン類。
(14)次の工程を含む、上記(12)または(13)に記載の蒸しパン類の製造方法。
1)容器内に生地を充填した後、または容器に保形性のある食品の配置と生地の充填をした後、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置く工程
2)蒸気加熱する工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、特別な型等を必要とせずに、従来知られていない新規形状の蒸しパン類を容易に提供することが可能となる。本発明で得られる蒸しパン類は、消費者において目新しさのある蒸しパン類として、幅広く提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来の蒸しパン類および新規形状の蒸しパン類<形状1>を示した図である。
【図2】本発明の蒸しパン類の形状<形状1>〜<形状4>を写真および模式図で示した図である。
【図3】本発明の蒸しパン類の製造状態を模式的に示した図である。
【図4】本発明の蒸しパン類において、「蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)」等の求め方の概要を示した図である。
【図5】本発明の蒸しパン類<形状4>を模式図で例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の「蒸しパン類」は、「容器に生地を充填し、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置き、蒸気加熱することによって得られる」ものであって、その形状において、次の1)〜3)の特徴を有することを必須とするものである。
1)生地がペースト状の食品より上方にせり上がっている
2)ペースト状の食品より上方にせり上がった生地の側面が底面に対して垂直である
3)ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上を占めている
【0011】
このような本発明の新規形状の「蒸しパン類」として、図2に示される<形状1>〜<形状4>等の形状を有する「蒸しパン類」を挙げることができる。
<形状1>の「蒸しパン類」は、その形状において上記1)〜3)の特徴に加え、「頂面が底面に対して水平である」という特徴を有するものである。
同様に<形状2>は、「頂面が凸状である」という特徴を有するものであり、<形状3>は、「頂面に割れのある」という特徴を有するものであり、さらに、<形状4>は、「頂面が凹状である」という特徴を有するものである。
【0012】
本発明の新規形状の「蒸しパン類」の特徴である「1)生地がペースト状の食品より上方にせり上がっている」とは、蒸しパン類の生地が蒸気加熱されたことによって気泡を含み、生地の容積が増して上部に膨らんでいく際に、生地とともに生地の上方に置いたペースト状の食品も上部に移動していくが、このペースト状の食品が移動した高さを超えて、さらに上方に生地が膨らんでいくことをいう。
また、「2)ペースト状の食品より上方にせり上がった生地の側面が底面に対して垂直である」とは、上記1)に示したように、ペースト状の食品より上方にせり上がった部分の生地の側面が容器の底面に対してほぼ垂直となる角度を示していることをいう。
ここで、「底面に対して垂直」とは、蒸しパン類の底面に対し、ペースト状の食品より上方にせり上がった部分の生地の側面の角度が平均してほぼ90度として視認できることをいう。平均してほぼ90度として視認できればよく、90±25度の範囲と視認される部分を含んでいても良い。
【0013】
本発明の蒸しパン類の製造状態における模式的な様子として、この「1)生地がペースト状の食品より上方にせり上がっている」様子と、「2)ペースト状の食品より上方にせり上がった生地の側面が底面に対して垂直である」様子を<形状1>の蒸しパン類を例として図3に示した。
図3、A.はペースト状の食品を蒸しパン類の生地の上方に、生地に接するようにおいた場合の模式的な様子(断面図)である。次の(1)〜(4)に示すような段階を経て、「生地がペースト状の食品より上方のせり上が」り、その「せり上がった生地の側面が底面に対して垂直である」形状を示すことになる。
(1)容器に蒸しパン類の生地、保形性のある食品を置き、ペースト状の食品を生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿って、生地に接するように置く。
(2)蒸気加熱を始めることによって、蒸しパン類の生地が気泡を含み、容積が上部に増して膨らんでいく。
この際、蒸しパン類の生地は容器の側面内側に沿っておいたペースト状の食品からはみ出すことなく、上部に膨らんでいく。蒸しパン類の生地は容器に沿った部分が中心部に比べて早く膨らみ、蒸気加熱開始後の初期の段階では中心部がくぼんだ凹状の形状を示している。
ペースト状の食品も生地の膨らみに伴い、上方に移動していくが、蒸しパン類の生地が途中でペースト状の食品を追い越し、そのまま上方に膨らんでいくことになる。
(3)さらに蒸気加熱を続けると、蒸しパン類の生地の中心部も膨らみ始め、中心部の窪みが段々なくなり、側面と同等の高さまで膨らんでいく。
(4)蒸しパン類の生地の膨張が止まることにより、ペースト状の食品の上方への移動も止まる。最終的に得られる蒸しパン類は、「生地がペースト状の食品より上方にせり上が」り、その「せり上がった生地の側面が底面に対して垂直であ」り、かつ、「頂面が底面に対して水平」な形状を示すものとなる。
【0014】
また、図3、B.は、ペースト状の食品を生地に接しないようにおいた場合の模式的な様子(断面図)である。次の(1)〜(4)に示すような段階を経て、「生地がペースト状の食品より上方にせり上が」り、その「せり上がった生地の側面が底面に対して垂直である」ことになる。
(1)容器に蒸しパン類の生地、保形性のある食品を置き、ペースト状の食品を生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿って、生地に接しないように置く。
(2)蒸気加熱を開始することによって、蒸しパン類の生地が気泡を含み、容積が上方に増して膨らんでいく。
この際、蒸しパン類の生地は容器の側面内側に沿っておいたペースト状の食品からはみ出すことなく、上方に膨らんでいく。蒸しパン類の生地は中心部が容器に沿った部分に比べて早く膨らみ、蒸気加熱開始後の初期の段階では中心部が膨らんだ凸状の形状を示している。
(3)さらに蒸気加熱を続けると、蒸しパン類の生地の容器に沿った部分も膨らみ始め、中心部とともに膨らんでいく。
ペースト状の食品も生地の膨らみに伴い、上方に移動していくが、蒸しパン類の生地が途中でペースト状の食品を追い越し、そのまま上方に膨らんでいくことになる。
(4)蒸しパン類の生地の膨張が止まることにより、ペースト状の食品の上方への移動も止まる。最終的に得られる蒸しパン類は、「生地がペースト状の食品より上方にせり上が」り、その「せり上がった生地の側面が底面に対して垂直であ」り、かつ、「頂面が底面に対して水平」な形状を示すものとなる。
これら、図3、A.B.に示されるように製造される蒸しパン類は、使用する容器の大きさや深さによって、せり上がった生地や上方に移動したペースト状の食品が容器より上部に視認できるものもあれば、容器内でこのような形状の蒸しパン類が製造され、容器から取り出すことでこのような形状を視認できるものもある。側面が高い、深い容器を使用した場合に、後者のように容器から取り出すことが必要となる。
【0015】
図3、A.およびB.において例示した蒸しパン類は、本発明の<形状1>の蒸しパン類を示したものであるが、本発明の他の<形状2>、<形状3>および<形状4>を有する蒸しパン類も同様に、蒸気加熱によって「生地がペースト状の食品より上方にせり上が」り、その「せり上がった生地の側面が底面に対して垂直である」ことになる。
【0016】
さらに、本発明の「蒸しパン類」の特徴である「3)ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上を占める」とは、図2においてaとして示される「ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)」が、図2においてbとして示される「蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)」の10%以上であることをいう。
ここで、「変曲点」とは、蒸しパン類を上端から底面に向かって垂直面で切断した場合の断面において、側面と頂面が交わる点のことを指す。なお、本発明の蒸しパン類においては、垂直な側面と頂面の境界はエッジ状となるので、上記「変曲点」は、外見上、垂直な側面と頂面の境界線として認識することができる。<形状3>のように「頂面に割れのある」特徴を有するものは、頂面が割れていない部分において、側面と頂面が交わる点を「変曲点」とした。
【0017】
本発明において「蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)」は、次の1)〜3)のように求めることができる。この求め方の概要を図4に模式的に示した。
1)本発明の「蒸しパン類」を平坦な板等に接するように置き、蒸しパン類の上端から底面に向かって垂直に、蒸しパン類の頂面の中心を通る切断線Aで仮想的に蒸しパン類を切断し、仮想切断面Aを得る。
2)上記1)と同様に、切断線Bで仮想的に蒸しパン類を切断し、仮想断面図Bを得る。ここで、切断線Bは頂面の中心において切断線Aと原則直角に交わるものとする。ただし、<形状3>のような「頂面に割れのある」特徴を有する蒸しパン類においては、頂面に割れのある部分を避け、変曲点を有する仮想切断面Bが得られるように、切断線Bの位置を決定することが望ましい。この際、切断線Bは、頂面の中心において切断線Aと極力直角に交わるものとする。
3)上記1)および2)で得られた仮想切断面Aおよび仮想断面図Bにおいて左右に現れた蒸しパン類の側面に該当する箇所において、底面から変曲点までの長さ(図4、a〜d)を測定し、この数値から求めた平均値を本発明の「蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)」とする。
【0018】
また、本発明における「ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)」は、上記1)および2)において得られた仮想断面図AおよびBにおいて、「蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)」を求めたのと同じ箇所において、ペースト状の食品の上端から変曲点までの長さ(図4、a’〜d’)を測定し、この数値から求めた平均値を本発明の「ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)」とする。
本発明の「蒸しパン類」は、この「ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)」が「蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)」の10%以上であれば良く、20%以上であることがより好ましい。
【0019】
本発明において「蒸しパン類」とは、小麦粉、米粉等の穀類の粉を主成分とし、必要に応じてグラニュー糖、砂糖等の糖類、重曹等の膨張剤や水等の材料をミックスした生地を蒸気によって加熱して得られる蒸しパン、蒸しケーキ等のことをいう。
このような本発明の「蒸しパン類」のうち、「蒸しパン」とは、生地比重が1.0程度であり、蒸し温度90℃〜100℃で、蒸気によって加熱して得られるもののことをいう。
ここで、「生地比重」とは、水(4℃)の比重1を基準としている時の生地比重を示している。
例えば、一定容積における生地の重量を測定し、それと同じ容積の水の重量で割ることで、得られた値を生地比重として求めることができる。
【0020】
また、「蒸しケーキ」には、生地比重の軽い蒸しケーキや、マーライカオと同様に生地比重の重い蒸しケーキ等が含まれる。ここで、「生地比重の軽い蒸しケーキ」とは、生地比重が0.5程度であり、蒸し温度90℃〜95℃で蒸気によって加熱して得られるもののことをいい、「生地比重の重い蒸しケーキ」とは、生地比重が1.0程度であり、蒸し温度90℃〜100℃で蒸気によって加熱して得られるもののことをいう。
本発明において、これらの「蒸しパン類」には、小麦粉などの穀物の粉を主体とするものであって、さらに、イチゴ等のフルーツのペーストやチョコレート等を生地に練りこんだものや、ジャム、ナッツ類、小豆または果物等でトッピングしたものも含まれる。
【0021】
本発明の「蒸しパン類」の製造において、上述のように、製造する蒸しパン類の種類によって、生地比重が異なるものを本発明の「生地」として用いることができる。
本発明の<形状1>〜<形状4>の蒸しパン類は、このような「生地」を容器に充填して製造する。容器への充填は、「生地」の種類や膨張度によって、適切な量を充填すれば良いが、凡そ容器の側面の高さの3割〜8割程度となるように充填することを目安とできる。
【0022】
また、「ペースト状の食品」とは、食品として摂食できるものであれば良く、絞り袋等に入れて口金から絞りだした際に一定の形状を維持しているものであることが好ましい。
本発明で使用し得る「ペースト状の食品」として、例えば、クリーム、α化でん粉、加工でん粉等を使用して粘度が上げられたフラワーペースト、ペースト状の製菓材料、乳等を主原料とする食品、マーガリン、バター、耐熱マヨネーズ、練乳等が挙げられ、これらは市販のものであってもよい。また、本発明の実施例において調製したペースト状の食品(X)も、本発明の「ペースト状の食品」に該当する。
本発明の<形状1>〜<形状4>の蒸しパン類の製造にあたり、生地の上方に「ペースト状の食品」を置く場合、「ペースト状の食品」は絞り袋等に入れて絞り出して置くこともできる。この場合、製造したい蒸しパン類の種類や形状に適した金口を用いればよく、例えば、「生地」として80gの蒸しパン生地を容器に充填した場合、金口6号(直径4.5mm)を使用して絞り袋等に入れた「ペースト状の食品」を絞り出し、容器の側面に沿って「ペースト状の食品」を置いた場合、生地重量:ペースト状の食品重量が8:0.5〜8:3の範囲となる。
【0023】
本発明の蒸しパン類<形状1>〜<形状4>の製造において、必須である生地とペースト状の食品に加え、必要に応じて「保形性のある食品」も組み合わせて用いることができる。
ここで、「保形性のある食品」とは、食品として摂取でき、蒸しパン類の製造時の蒸気加熱によって溶解せず、蒸気加熱前に配置した際の形状を維持できる、一定の形を有する食品のことをいい、このようなものであればいずれの食品であっても良い。
このような「保形性のある食品」として、例えば、こし餡、つぶ餡等の餡子、耐熱性フラワーペースト、耐熱性ジャム、桃、パイナップル、葡萄等の果実類、耐熱性チョコレート、チーズ類、もち又は寒天等が挙げられる。これらは市販ものであってもよく、クリーミーカスタードH2(月島食品工業株式会社)、またはフレッシュイチゴTB−2(ソントン食品工業株式会社)も本発明の「保形性のある食品」として使用することができる。
【0024】
本発明の「蒸しパン類」の製造において使用するこれらの「保形性のある食品」は、「蒸しパン類」の製造において使用する容器の高さを越えないものであれば、いずれの大きさで用いてもよく、形状も特に問わない。たとえば、球型、立方体、円柱等の形状が挙げられる。また、同様の形状の他に、粒状や小さなダイス形状のものを複数まとめて「保形性のある食品」としてもよい。
本発明の<形状1>〜<形状4>の蒸しパン類の製造にあたり、「保形性のある食品」を容器に配置する場合、「保形性のある食品」は容器に充填される「生地」に埋もれていても、「生地」から一部が露出していても良い。「保形性のある食品」の一部が「生地」から露出している場合は、露出している部分も「生地」で薄くコーティングされた状態となるように配置することが好ましい。
また、「保形性のある食品」は、容器の中心や側面の近く等、どこに配置しても良いが、側面に接しないように配置することが好ましい。
【0025】
本発明の蒸しパン類のうち、<形状1>の蒸しパン類の特徴である「頂面が底面に対して水平である」とは、図2<形状1>の写真および模式的に示された図のように、「蒸しパン類」を平坦な板等に接するように置き、蒸しパン類の上端から底面に向かって垂直に、蒸しパン類の頂面の中心を通る切断線で蒸しパン類が分割されるように切断する場合に得られる仮想切断面において、その上下における「頂面」と「底面」が全体としてほぼ平行な面として視認される状態のことをいう。
ここで「底面」とは、蒸しパン類において、容器の底に接している面、またはできあがった「蒸しパン類」を容器から取り出した際に容器の底に接していた面をいい、「頂面」とは、蒸しパン類を「底面」が平坦な板等に接するように置いた場合に、その真上から見て、面として視認される部分のことをいう。これらは以下の<形状2>、<形状3>および<形状4>においても同様である。
【0026】
このような特徴を有する本発明の<形状1>の蒸しパン類の製造にあたり、生地とペースト状の食品の重量比を8:0.5〜8:3とすることに加え、生地と保形性のある食品の重量比が8:2〜8:5となるようにすることが好ましい。
ここで、生地と保形性のある食品の「重量比」とは、蒸しパン類の製造にあたり使用する材料における生地自体の重量に対する保形性のある食品の重量を比として示したもののことをいう。例えば、生地を80g用い、保形性のある食品を20g用いたものは、重量比が8:2であり、生地を80g用い、ペースト状の食品を50g用いたものは、重量比が8:5に該当する。
【0027】
本発明の<形状1>の蒸しパン類は、本発明の<形状1>の蒸しパン類が製造できる方法であればいずれの方法であっても良いが、例えば、次の1)および2)の工程を含む製造方法等が挙げられる。
1)容器内に保形性のある食品の配置と生地の充填をした後、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置く工程
2)蒸気加熱する工程
上記、1)の工程における「保形性のある食品の配置」と「生地の充填」はどちらを先に行っても良く、「保形性のある食品」を容器内に配置した後「生地の充填」を行っても良く、容器に「生地の充填」した後、「保形性のある食品の配置」を行っても良い。
ペースト状の食品は「生地の上方」であって、かつ、「容器の側面内側に沿って」置けばよく、「生地の上方」には、生地とペースト状の食品が接するように置く場合も、生地とペースト状の食品が接しないが、生地の上方になるように、容器の側面内側に接するように置く場合も含まれる。生地とペースト状の食品が接するように置くことが特に好ましいが、生地とペースト状の食品が接することなく、生地の上方になるように、容器の側面内側に接するように置く場合には、ペースト状の食品は生地の上方5cm以内に置くことが好ましい。
【0028】
本発明の蒸しパン類のうち、<形状2>の蒸しパン類の特徴である「頂面が凸状である」とは、図2<形状2>の写真および模式的に示された図のように、「底面」が平坦な板等に接するように蒸しパン類を置き、蒸しパン類の上端から底面に向かって垂直に、蒸しパン類の頂面の中心を通る切断線で蒸しパン類が分割されるように切断する場合に得られる仮想切断面において、その左右の側面に現れた変曲点(2点)を、蒸しパン類の頂面の中心を通るようにひとつの線でつないだ場合に、上方に向かって半円状につながるように「頂面」が視認される状態のことをいう。「頂面」がこのように視認されるものであれば「凸状」であるといえ、例えばドーム状でも、山状であっても良く、半円状に視認される最も高い部分が左右にずれて視認されるものであっても良い。
【0029】
本発明の蒸しパン類のうち、<形状3>の蒸しパン類の特徴である「頂面に割れのある」とは、図2<形状3>の写真および模式的に示された図のように、「底面」が平坦な板等に接するように蒸しパン類を置き、蒸しパン類の上端から底面に向かって垂直に、蒸しパン類の頂面の中心を通る切断線で蒸しパン類が分割されるように切断する場合に得られる仮想切断面において、その上部に現れた「頂面」に割れがあり、ひとつの面として形成されておらず、変曲点よりも高い位置に視認される部分があったり、変曲点よりも低い位置に視認される部分があったりする状態のものをいう。
【0030】
このような特徴を有する本発明の<形状2>、<形状3>の蒸しパン類の製造にあたり、生地とペースト状の食品の重量比を8:0.5〜8:3とすることに加え、生地と保形性のある食品の重量比が8:2未満となるようにすることが好ましい。
【0031】
本発明の<形状2>、<形状3>の蒸しパン類は、本発明の<形状2>、<形状3>の蒸しパン類が製造できる方法であればいずれの方法であっても良いが、例えば、次の1)および2)の工程を含む製造方法等が挙げられる。
1)容器内に生地を充填した後、または容器に保形性のある食品の配置と生地の充填をした後、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置く工程
2)蒸気加熱する工程
1)の工程における「保形性のある食品の配置」と「生地の充填」は<形状1>の場合と同様にどちらを先に行っても良い。また、ペースト状の食品も「生地の上方」であれば、生地とペースト状の食品が接するように置いても、ペースト状の食品が生地の上方5cm以内となるように置いても良い。生地とペースト状の食品が接するように置くことが特に好ましい。
【0032】
また、本発明の蒸しパン類のうち、<形状4>の蒸しパン類の特徴である「頂面が凹状である」とは、図2<形状4>の写真および模式的に示された図のように、「底面」が平坦な板等に接するように蒸しパン類を置き、蒸しパン類の上端から底面に向かって垂直に、蒸しパン類の頂面の中心を通る切断線で蒸しパン類が分割されるように切断する場合に得られる仮想切断面において、その左右の側面に現れた変曲点(2点)を、蒸しパン類の頂面の中心を通るようにひとつの線でつないだ場合に、下方に向かって窪んでいる形状に線がつながるように「頂面」が視認される状態のことをいう。「頂面」がこのように視認されるものであれば「凹状」であるといえ、例えば逆ドーム状でも、逆山状であっても良く、窪んでいると視認される部分が左右にずれて視認されるものであっても良い。
このような<形状4>の蒸しパン類は、図5に模式的に示された図のようなものも含まれ、図5、例1、例3のように保形性のある食品が露出したものや、図5、例5のように、頂面が凹状であり、さらに凹んだ部分が割れているものも含まれる。
【0033】
このような特徴を有する本発明の<形状4>の蒸しパン類の製造にあたり、生地とペースト状の食品の重量比を8:0.5〜8:3とすることに加え、生地と保形性のある食品の重量比が8:5を超えるようにすることが好ましい。
【0034】
本発明の<形状4>の蒸しパン類は、本発明の<形状4>の蒸しパン類が製造できる方法であればいずれの方法であっても良いが、例えば、次の1)および2)の工程を含む製造方法等が挙げられる。
1)容器内に生地を充填した後、または容器に保形性のある食品の配置と生地の充填をした後、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置く工程
2)蒸気加熱する工程
1)の工程における「保形性のある食品の配置」と「生地の充填」は<形状1>の場合と同様にどちらを先に行っても良い。また、ペースト状の食品も「生地の上方」であれば、生地とペースト状の食品が接するように置いても、ペースト状の食品が生地の上方5cm以内となるように置いても良い。生地とペースト状の食品が接するように置くことが特に好ましい。
【0035】
このように本発明の新規形状の「蒸しパン類」は、蒸し器等の蒸気加熱が可能な機器を用いて、製造する「蒸しパン類」の種類に応じて適切な条件(蒸し温度、時間)等で蒸気によって加熱することで製造することできる。
「蒸しパン類」の製造に使用する機器は、本発明の蒸しパン類の製造に利用できるものであれば、ボックスタイプ、連続式トンネルタイプまたはバーチカルタイプ等の、従来知られているいずれの蒸し器も用いることができる。
【0036】
また、本発明の「蒸しパン類」の製造に使用する「容器」とは、底面と側面からなり、上部から蒸しパン類の生地を充填等することができる器状のもののことをいい、底面と側面が一体化されたものであっても良く、中に充填した蒸しパン類の生地等が隙間から流れ出ないものであれば、底面と側面が分解して外せるようになっているものであっても良い。
このような容器は、本発明の蒸しパン類が製造でき、食品の製造において安全に使用できる容器であればいずれの素材のものであってもよく、例えば、グラシン紙、ポリエチレンテレフタート(以下、PETと示す場合がある)、ポリプロピレン(以下、PPと示す場合がある)またはクラフト紙を素材として作られた容器やアルミカップ、シリコン型等を用いることができる。なお、薄い紙等でできている容器は、必要に応じて容器を蒸し型に入れて使用することで、生地を充填する際に、容器から生地が流れ出るのを防ぐことができる。
【0037】
本発明の蒸しパン類の製造にあたり、使用する容器の大きさは特に問わない。例えば、「保形性のある食品」や「ペースト状の食品」を用いず、蒸しパン類の「生地」のみを容器に充填して蒸気加熱した場合に、容器の側面よりも高く蒸しパン類の生地が膨脹して蒸しパン類が製造されるような容器であってもよく、容器内で本発明の新規形状の蒸しパン類が製造できるような側面の高い、深い容器であってもよい。
また、容器の形はどのような形であってもよく、蒸しパン類の底面に該当する部分が四角形、菱形、星型、ハート型、うさぎや鳥等の動物型、ツリーや花等の植物型等の様々な形の容器を用いることができる。このような形の容器を用いた場合に得られる本発明の<形状1>の蒸しパン類は、頂面も底面と同様に、四角形、菱形、星型、ハート型、うさぎや鳥等の動物型、ツリーや花等の植物型等の形状を示すことになる。
【0038】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
[実施例1〜59]
蒸しパン類の製造
<材料>
1.道具・機器
蒸し型(500mm×500mm)、容器(実施例ごとに使用した種類を以下に示した)、混合用ミキサー(関東混合機工業株式会社社製KTM−10(10Lミキサー))、ホイッパー(混合用ミキサー(関東混合機工業株式会社)部品の一部)および蒸し器(株式会社 荒畑製作所社製 K−1 DX)をそれぞれ用いた。
<容器>
丸型容器
1.素材:グラシン紙、直径75mm×高さ35mm(実施例1〜26、32〜38、42)、
2.素材:グラシン紙、直径75mm×高さ80mm(実施例39〜41)、
3.アルミカップ、直径75mm×35mm(実施例27、45)、
4.素材:PET、直径75mm×35mm(実施例28、48)、
5.素材:クラフト紙、直径75mm×35mm(実施例29、51)、
6.シリコン型、直径75mm×35mm(実施例30、54)、
7.素材:PP、直径75mm×35mm(実施例31、57)、
四角型容器
1.素材:グラシン紙、直径75mm×35mm(実施例43)、
2.アルミカップ、幅65mm×高さ35mm(実施例46)、
3.素材:PET、幅65mm×高さ35mm(実施例49)、
4.素材:クラフト紙、幅65mm×高さ35mm(実施例52)、
5.シリコン型、幅65mm×高さ35mm(実施例55)、
6.素材:PP、幅65mm×高さ35mm(実施例58)、
小判型容器
1.素材:グラシン紙、幅90mm×幅50mm×35mm(実施例44)、
2.アルミカップ、幅90mm×幅50mm×35mm(実施例47)、
3.素材:PET、幅90mm×幅50mm×35mm(実施例50)、
4.素材:クラフト紙、幅90mm×幅50mm×35mm(実施例53)、
5.シリコン型、幅90mm×幅50mm×35mm(実施例56)、
6.素材:PP、幅90mm×幅50mm×35mm(実施例59)、
【0040】
2.生地
1)表1に記載の材料を用い、蒸しパン(実施例1〜9、26〜59)、比重の軽い蒸しケーキ(実施例10〜16)又は比重の重い蒸しケーキ(実施例17〜25)の蒸しパン類の生地をそれぞれ調製した。
【0041】
【表1】

【0042】
2)生地の調製
A.蒸しパン
1)表1の材料のうち、サラダ油、水以外の材料をあらかじめビニール袋に入れ混合し、ミックス粉を得た。
2)上記1)のミックス粉を10Lミキサーボールに入れ、表1の残りの材料(水、サラダ油)を加え、混合用ミキサーを用いてホイッパーにて低速1分、高速1分攪拌し、蒸しパン生地を調製した。
3)上記2)で調製した蒸しパン生地を絞り袋に充填した。
【0043】
B.比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキ
1)表1の材料のうち、小麦粉、卵白粉および膨張剤をあらかじめビニール袋に入れ混合し、ミックス粉を得た。
2)ミキサーボールに砂糖、全卵、サラダ油、起泡性乳化油脂、水を入れ混合した。
3)上記1)のミックス粉を上記2)に加え、比重が0.5になるように混合用ミキサーを用いてホイッパーにて低速1分、高速4分攪拌し、比重の軽い蒸しケーキ生地を調製した。
4)上記3)で調製した比重の軽い蒸しケーキ生地を絞り袋に充填した。
【0044】
C.比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ
1)表1の材料のうち、小麦粉、膨張剤および食塩をあらかじめビニール袋に入れ混合し、ミックス粉を得た。
2)ミキサーボールに砂糖、全卵、サラダ油、水を入れ混合した。
3)上記1)のミックス粉を上記2)に加え、比重が1.0になるように混合用ミキサーを用いてホイッパーにて低速1分、中速2分攪拌し、比重の重い蒸しケーキ生地を調製した。
4)上記3)で調製した比重の重い蒸しケーキ生地を絞り袋に充填した。
【0045】
3.保形性のある食品
こし餡、クリーミーカスタードH2、フレッシュイチゴTB−2、桃カット(3cmカット(30g))(株式会社宝幸)またはダイスチーズ(8mmカット、16個(30g))(明治乳業株式会社)を保形性のある食品として用いた。
【0046】
4.ペースト状の食品
練乳(森永乳業株式会社)、モアロクリームPS(ソントン食品工業株式会社)または次のように調製したペースト状の食品(X)を用いた。
<ペースト状の食品(X)の調製>
表2に記載の組成となるように、各成分を全てボールに入れ、混合用ミキサーを用いてホイッパーにて低速3分、中速4分、高速3分攪拌し、ペースト状の食品(X)を調製した。
【0047】
【表2】

【0048】
[実施例1〜7]
蒸しパンの製造方法(1)
蒸し型に容器を10個並べて置き、必要に応じて保形性のある食品として、こし餡(球形)を置いた。
2)上記1)の容器に、蒸しパン生地80gを充填した。
3)上記2)で充填した蒸しパン生地の上に、金口6号を取り付けた絞り袋を使用してペースト状の食品を容器の側面内側に沿って蒸しパン生地の上に接するように置いた。
4)あらかじめ100℃に予熱しておいた蒸し器に上記3)を入れ、庫内温度100℃で15分間蒸した。
5)蒸し終了後、蒸し器から蒸し型を取り出したら、常温にて50分冷却した。
6)製造された蒸しパンを蒸し型から取り出した。
【0049】
表3に示したように、実施例1〜5では、蒸しパン生地と保形性のある食品の重量比が8:2〜8:5の範囲であり、かつ、蒸しパン生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製した。
また、実施例6では、蒸しパン生地の重量と保形性のある食品の重量比が8:2未満の範囲であり、かつ、蒸しパン生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製した。
さらに、実施例7では、蒸しパン生地と保形性のある食品の重量比が8:5を超える範囲であり、かつ、蒸しパン生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製した。
一方、比較例1および2では、保形性のある食品の重量、蒸しパン生地の重量およびペースト状の食品の重量を表3に示したように調製し、実施例1〜7の蒸しパンと同様に製造した。
【0050】
評価
得られた蒸しパン類の評価は、以下のA〜Dの項目について、専門パネラーにより行った。
A.せり上がりの高さ
蒸しパン類の底面が平坦な板に接するように蒸しパン類を置き、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)(図2または図5、a)と、蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)(図2または図5、b)を定規で測定し、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)の何%を占めるかを算出して評価した(n=10、平均値)。
【0051】
B.頂面の形
蒸しパン類の底面が平坦な板に接するように蒸しパン類を置き、その真横からみて頂面がどのように視認されるかを確認し評価した(n=10)。
【0052】
C.形状
蒸しパン類の底面が平坦な板に接するように蒸しパン類を置き、その真横からみて頂面および側面を観察し、どのように視認されるかを確認し、次の<形状1>〜<形状4>のいずれに該当するかを評価した(n=10)。
それぞれの形状について、写真および断面の模式図を図2に示した。なお、いずれの形状においても、ペースト状の食品が容器からあふれてしまったものは、本発明の蒸しパン類には該当しないものとした。
<形状1>
1)生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっている。
2)頂面が底面に対して水平である。
<形状2>
1)生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっている。
2)頂面が凸状である。
<形状3>
1)生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっている。
2)頂面に割れがある。
<形状4>
1)生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっている。
2)頂面が凹状である(図5の例1〜例5の断面図で示されるものも形状4に含む)。
【0053】
D.角度
蒸しパン類の底面が平坦な板に接するように蒸しパン類を置き、蒸しパン類の側面が底面に対しどのような角度でせり上がっているかを分度器で測定した(n=10)。底面に対し垂直にせり上がっているものを0度とし、内側に傾いたものをマイナス何度、外側に傾いたものをプラス何度として表示した。
【0054】
【表3】

【0055】
その結果、実施例1〜5の蒸しパンは、いずれも生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパンの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が水平でひび割れのない、新規形状<形状1>の蒸しパンであった。
また、実施例6の蒸しパンも、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパンの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面にひび割れのある、新規形状<形状3>の蒸しパンであった。
さらに、実施例7の蒸しパンも、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパンの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が凹状である新規形状<形状4>の蒸しパンであった。この新規形状の蒸しパンとして、図5の例1、例3等に示されるように、頂面に保形性のある食品の上部が露出したものも観察された。
これに対し、比較例1の蒸しパンは、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっているものの、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパンの底面から変曲点までの高さ(b)の10%未満であり、従来の蒸しパンと視覚上大きな違いが認められず、目新しいものではなかった。
また、比較例2の蒸しパンは生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパンの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が水平でひび割れのないものであったが、ペースト状の食品が容器からあふれてしまい、本発明の新規形状の蒸しパンとしては不適であった。
【0056】
[実施例8、9]
蒸しパンの製造方法(2)
1)蒸し型に容器を10個並べて置き、必要に応じて保形性のある食品として、こし餡(球形)を置いた。
2)上記1)の容器に、蒸しパン生地80gを充填した。
3)上記2)で充填した蒸しパン生地の上に、金口6号を取り付けた絞り袋を使用してペースト状の食品を容器の側面内側に沿って置いた。
4)あらかじめ90℃に予熱しておいた蒸し器に上記3)を入れ、庫内温度90℃で17分間蒸した。
5)蒸し終了後、蒸し器から蒸し型を取り出したら、常温にて50分冷却した。
6)製造された蒸しパンを蒸し型から取り出した。
【0057】
表4に示したように、実施例8および9では、蒸しパン生地と保形性のある食品の重量比が8:2未満の範囲であり、かつ、蒸しパン生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製した。
一方、比較例3および4では、保形性のある食品の重量、蒸しパン生地の重量およびペースト状の食品の重量を表4に示したように調製し、実施例8および9の蒸しパンと同様に製造した。これらの評価は、実施例1〜7、比較例1、2の評価方法と同様に行った。
【0058】
【表4】

【0059】
その結果、実施例8および9の蒸しパンは、いずれも生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパンの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、上部表面が凸型であったが、上部表面の割れは全く見られない、新規形状<形状2>の蒸しパンであった。
これに対し、比較例3の蒸しパンは、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっているものの、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパンの底面から変曲点までの高さ(b)の10%未満であり、従来の蒸しパンと視覚上大きな違いが認められず、目新しいものではなかった。
また、比較例4の蒸しパンは、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパンの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であったが、ペースト状の食品が容器からあふれてしまい、本発明の新規形状の蒸しパンとしては不適であった。
【0060】
従って、これらの結果より、本発明の新規形状<形状1>の蒸しパンの製造においては、蒸しパン生地の重量と、保形性のある食品の重量が8:2〜8:5の範囲であり、かつ、蒸しパン生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製することが必要であることが示された。
また、本発明の新規形状<形状2>、<形状3>の蒸しパンの製造においては、蒸しパン生地と、保形性のある食品の重量比が8:2未満の範囲であり、かつ、蒸しパン生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製することが必要であることが示された。
さらに、本発明の新規形状<形状4>の蒸しパンの製造においては、蒸しパン生地と、保形性のある食品の重量比が8:5を超える範囲であり、かつ、蒸しパン生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8.3の範囲になるように調製することが必要であることが示された。
【0061】
[実施例10〜16]
比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキの製造方法
1)蒸し型に容器を10個並べて置き、必要に応じて保形性のある食品として、こし餡(球形)を置いた。
2)上記1)の容器に、比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキ生地60gを充填した。
3)上記2)で充填した蒸しケーキ生地の上に、金口6号を取り付けた絞り袋を使用してペースト状の食品を容器の側面内側に沿って置いた。
4)あらかじめ80℃に予熱しておいた蒸し器に上記3)を入れ、庫内温度90〜95℃で15分間蒸した。
5)蒸し終了後、蒸し器から蒸し型を取り出し、常温にて50分冷却した。
6)製造された比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキを蒸し型から取り出した。
【0062】
表5に示したように、実施例10〜14では、比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキ生地と保形性のある食品の重量比が8:2〜8:5の範囲であり、かつ、比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキ生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製した。
また、実施例15では、比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキ生地の重量と保形性のある食品の重量比が8:2未満の範囲であり、かつ、比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキ生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製した。
さらに、実施例16では、比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキ生地の重量と保形性のある食品の重量比が8:5を超える範囲であり、かつ、比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキ生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製した。
一方、比較例5および6では、保形性のある食品の重量、比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキ生地の重量およびペースト状の食品の重量を表5に示したように調製し、実施例10〜16の蒸しケーキと同様に製造した。
これらの評価は、実施例1〜7、比較例1、2の評価方法と同様に行った。
【0063】
【表5】

【0064】
その結果、実施例10〜14の蒸しケーキは、いずれも生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が水平でひび割れのない、新規形状<形状1>の蒸しケーキ(図2)であった。
また、実施例15の蒸しケーキも、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、上部表面が凸型であったが、上部表面の割れは全く見られない、新規形状<形状2>の蒸しケーキ(図2)であった。
さらに、実施例16の蒸しケーキも、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が凹状である新規形状<形状4>の比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキであった。この形状の比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキとして、図5の例1、例3等に示されるように、頂面に保形性のある食品の上部が露出したものも観察された。
また、比較例5の蒸しケーキは、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっているものの、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%未満であり、従来の蒸しケーキと視覚上大きな違いが認められず、目新しいものではなかった。比較例6の蒸しケーキは、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面の割れもなかったが、ペースト状の食品が容器からあふれてしまい、本発明の新規形状の比重の軽い(生地比重0.5程度)蒸しケーキとしては不適であった。
【0065】
従って、これらの結果より、本発明の新規形状<形状1>の蒸しケーキの製造においては、蒸しケーキ生地の重量と保形性のある食品の重量の比が8:2〜8:5の範囲であり、かつ、蒸しケーキ生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製することが必要であることが示された。
また、本発明の新規形状<形状2>の蒸しケーキの製造においては、蒸しケーキ生地と保形性のある食品の重量比が8:2未満の範囲であり、かつ、蒸しケーキ生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製することが必要であることが示された。
さらに、本発明の新規形状<形状4>の蒸しケーキの製造においては、蒸しケーキ生地と保形性のある食品の重量比が8:5を超える範囲であり、かつ、蒸しケーキ生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製することが必要であることが示された。
【0066】
[実施例17〜23]
比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの製造方法(1)
1)蒸し型に容器を10個並べて置き、必要に応じて保形性のある食品としてこし餡(球形)を置いた。
2)上記1)の容器に、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地80gを充填した。
3)上記2)で充填した比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地の上に、金口6号を取り付けた絞り袋を使用してペースト状の食品を容器の側面内側に沿って置いた。
4)あらかじめ90℃に予熱しておいた蒸し器に上記3)を入れ、庫内温度98℃で17分間蒸した。
5)蒸し終了後、蒸し器から蒸し型を取り出し、常温にて50分冷却した。
6)製造された比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキを蒸し型から取り出した。
【0067】
表6に示したように、実施例17〜21では、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地の重量と保形性のある食品の重量の比が8:2〜8:5の範囲であり、かつ、蒸しケーキ生地の重量とペースト状の食品の重量の比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製した。
また、実施例22では、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地の重量と保形性のある食品の重量の比が8:2未満の範囲であり、かつ、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製した。
さらに、実施例23では、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地の重量と保形性のある食品の重量比が8:5を超える範囲であり、かつ、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製した。
一方、比較例7および8では、保形性のある食品の重量、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地の重量およびペースト状の食品の重量を表6に示したように調製し、実施例17〜23の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキと同様に製造した。これらの評価は、実施例1〜7、比較例1、2の評価方法と同様に行った。
【0068】
【表6】

【0069】
その結果、実施例17〜21の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキは、いずれも生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が水平で割れのない、新規形状<形状1>の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ(図2)であった。
また、実施例22の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキも、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、上部表面が凸型であったが、上部表面の割れは全く見られない、新規形状<形状2>の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキであった。
さらに、実施例23の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキも、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が凹状である新規形状<形状4>比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキであった。この新規形状の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキとして、図5の例1、例3等に示されるように、頂面が凹んだものや、に保形性のある食品の上部が露出したもの観察された。
これに対し、比較例7の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキは、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっているものの、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%未満であり、従来の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキと視覚上大きな違いが認められず、目新しいものではなかった。
また、比較例8比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキは、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面の割れもなかったが、ペースト状の食品が容器からあふれてしまい、本発明の新規形状の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキとしては不適であった。
【0070】
[実施例24、25]
比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの製造方法(2)
1)蒸し型に容器を10個並べて置き、必要に応じて保形性のある食品として、こし餡(球形)を置いた。
2)上記1)の容器に、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地80gを充填した。
3)上記2)で充填した蒸しケーキ生地の上に、金口6号を取り付けた絞り袋を使用してペースト状の食品を容器の側面内側に沿って置いた。
4)あらかじめ100℃に予熱しておいた蒸し器に上記3)を入れ、庫内温度100℃で15分間蒸した。
5)蒸し終了後、蒸し器から蒸し型を取り出し、常温にて50分冷却した。
6)製造された比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキを蒸し型から取り出した。
【0071】
実施例24および25では、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地と保形性のある食品の重量比が8:2未満の範囲であり、かつ、いずれも蒸しケーキ生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製した。
一方、比較例9および10では、保形性のある食品の重量、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地の重量およびペースト状の食品の重量を表7に示したように調製し、実施例24および25の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキと同様に製造した。これらの評価は、実施例1〜7、比較例1、2の評価方法と同様に行った。
【0072】
【表7】

【0073】
その結果、実施例24および25の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキは、いずれも生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面にひび割れのある、新規形状<形状3>の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキであった。
一方、比較例9の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキは生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっているものの、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の高さが10%未満であり、従来の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキと視覚上大きな違いが認められなかった。
また、比較例10の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキは生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であったが、ペースト状の食品が容器からあふれてしまい、本発明の新規形状の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキとしては不適であった。
【0074】
従って、これらの結果より、本発明の新規形状<形状1>の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの製造においては、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地の重量と保形性のある食品の重量の比が8:0〜8:5の範囲であり、かつ、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製することが必要であることが示された。
また、本発明の新規形状<形状2、形状3>の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの製造においては、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地と保形性のある食品の重量比が8:2未満の範囲であり、かつ、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地の重量とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8:3の範囲になるように調製することが必要であることが示された。
さらに、本発明の新規形状<形状4>の比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキの製造においては、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地と保形性のある食品の重量比が8:5を超える範囲であり、かつ、比重の重い(生地比重1.0程度)蒸しケーキ生地とペースト状の食品の重量比が8:0.5〜8.3の範囲になるように調製することが必要であることが示された。
【0075】
[実施例26〜31]
蒸しパンの製造方法(3)
実施例2と同量の蒸しパン生地、保形性のある食品としてこし餡およびペースト状の食品を用い、容器の種類を表8に示したものに変えた以外は実施例2と同様に蒸しパンを製造した。
その結果、表8に示したように、グラシン紙、PET,クラフト紙あるいはPPを素材とする容器、アルミカップまたはシリコン型をそれぞれ容器として使用した場合、いずれも生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が水平でひび割れのない新規形状<形状1>の蒸しパンを得ることができた。
従って、この結果より、どのような容器を用いても、蒸しパン生地と、保形性のある食品の重量比、および、蒸しパン生地とペースト状の食品の重量比を一定の範囲とすることで、本願発明の新規形状の蒸しパンが製造できることが示された。
【0076】
【表8】

【0077】
[実施例32〜35]
蒸しパンの製造方法(4)
実施例2と同量の蒸しパン生地、保形性のある食品(クリーミーカスタードH2、フレッシュイチゴTB−2、桃ダイスカット(3cm角 30gにしたもの)またはダイスチーズ(8mm角16個 30g)のいずれか)およびペースト状の食品を用い、実施例2と同様に蒸しパンを製造した。
その結果、表9に示したように、保形性のある食品としてクリーミーカスタードH2、フレッシュイチゴTB−2、桃カットおよびダイスチーズを用いた場合、いずれも生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が水平で割れのない新規形状<形状1>の蒸しパンを得ることができた。
従って、この結果より、保形性のある食品としてどのような食品を用いても、蒸しパン生地と、保形性のある食品の重量比、および、蒸しパン生地とペースト状の食品の重量比を一定の範囲とすることで、本願発明の新規形状の蒸しパンが製造できることが示された。
【0078】
【表9】

【0079】
[実施例36〜38]
蒸しパンの製造方法(5)
実施例2と同量の蒸しパン生地、保形性のある食品(こしあん)およびペースト状の食品(ペースト状の食品(X)、練乳またはモアロクリームPS)を用い、実施例2と同様に蒸しパンを製造した。
その結果、表10に示したように、ペースト状の食品としてペースト状の食品(X)、練乳およびモアロクリームPSを用いた場合、いずれも生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が水平で割れのない新規形状<形状1>の蒸しパンを得ることができた。
従って、この結果より、ペースト状の食品としてどのようなものを用いても、蒸しパン生地と、保形性のある食品の重量比、および、蒸しパン生地とペースト状の食品の重量比を一定の範囲とすることで、本願発明の新規形状の蒸しパンが製造できることが示された。
【0080】
【表10】

【0081】
[実施例39〜41]
蒸しパンの製造方法(6)
実施例2と同量の蒸しパン生地、保形性のある食品としてこし餡およびペースト状の食品(X)を用い、ペースト状の食品を置く位置を変えて蒸しパンを製造した。
ペースト状の食品を置く位置はいずれも容器の側面内側に沿ってであるが、蒸しパン生地に接するように置く、蒸しパン生地と接しないように蒸しパン生地の1cm上方に置く、または、蒸しパン生地と接しないように蒸しパン生地の5cm上方に置くものとした。
その結果、表11に示したように、いずれにおいても、生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が水平で割れのない新規形状<形状1>の蒸しパンを得ることができた。
従って、この結果より、蒸しパン生地の5cm以内上方にペースト状の食品を置けば、蒸しパン生地の重量と、保形性のある食品の重量の重量比、および、蒸しパン生地の重量とペースト状の食品の重量比を一定の範囲とすることで、本願発明の新規形状の蒸しパンが製造できることが示された。
【0082】
【表11】

【0083】
[実施例42〜59]
蒸しパンの製造方法(7)
実施例2と同量の蒸しパン生地、保形性のある食品としてこし餡およびペースト状の食品(X)を用い、容器の種類と形状を表12に示したものに変えた以外は実施例2と同様に蒸しパンを製造した。
その結果、表12に示したように、グラシン紙、アルミカップ、PET,クラフト紙あるいはPPを素材とする容器、アルミカップまたはシリコン型をそれぞれ容器として使用した場合、いずれにおいても生地とペースト状の食品が底面に対して垂直にせり上がっており、ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上であり、頂面が水平で割れのない新規形状<形状1>の蒸しパンを得ることができた。
従って、この結果より、容器の種類および形状にかかわらず、どのような容器を用いても、蒸しパン生地の重量と保形性のある食品の重量比、および、蒸しパン生地の重量とペースト状の食品の重量比を一定の範囲とすることで、本願発明の新規形状の蒸しパンが製造できることが示された。
【0084】
【表12】

【0085】
実施例1〜59の結果より、新規形状の蒸しパン類の製造にあたり、重要となる蒸しパン類の生地の重量と保形性のある食品の重量の比や、蒸しパン類の生地の重量とペースト状の食品の重量比の組合せを表13〜表15に示した。
【0086】
【表13】

【0087】
【表14】

【0088】
【表15】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によって、特別な型等を必要とせずに、従来知られていない新規形状の蒸しパン類を容易に提供することが可能となる。本発明で得られる蒸しパン類は、消費者において目新しい蒸しパン類として、幅広く提供され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に生地を充填し、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置き、蒸気加熱することによって得られる新規形状の蒸しパン類であって、次の1)〜3)の特徴を有する新規形状の蒸しパン類。
1)生地がペースト状の食品より上方にせり上がっている
2)ペースト状の食品より上方にせり上がった生地の側面が底面に対して垂直である
3)ペースト状の食品の上端から変曲点までの高さ(a)が蒸しパン類の底面から変曲点までの高さ(b)の10%以上を占めている
【請求項2】
さらに、容器内に保形性のある食品を配置し、蒸気加熱することによって得られる請求項1に記載の蒸しパン類。
【請求項3】
生地とペースト状の食品の重量比を8:0.5〜8:3として得られる請求項1または2に記載の蒸しパン類。
【請求項4】
蒸しパン類が蒸しパン、蒸しケーキである請求項1〜3のいずれかに記載の蒸しパン類。
【請求項5】
頂面が底面に対して水平である請求項1〜4のいずれかに記載の新規形状の蒸しパン類。
【請求項6】
生地とペースト状の食品の重量比を8:0.5〜8:3とし、かつ、生地と保形性のある食品の重量比を8:2〜8:5として得られる請求項5に記載の蒸しパン類。
【請求項7】
次の工程を含む、請求項5または6に記載の蒸しパン類の製造方法。
1)容器内に保形性のある食品の配置と生地の充填をした後、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置く工程
2)蒸気加熱する工程
【請求項8】
頂面が凸状である請求項1〜4のいずれかに記載の新規形状の蒸しパン類。
【請求項9】
頂面に割れのある請求項1〜4のいずれかに記載の新規形状の蒸しパン類。
【請求項10】
生地とペースト状の食品の重量比を8:0.5〜8:3とし、かつ、生地と保形性のある食品の重量比を8:2未満として得られる請求項8または9に記載の蒸しパン類。
【請求項11】
次の工程を含む、請求項8〜10のいずれかに記載の蒸しパン類の製造方法。
1)容器内に生地を充填した後、または容器に保形性のある食品の配置と生地の充填をした後、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置く工程
2)蒸気加熱する工程
【請求項12】
頂面が凹状である請求項1〜4のいずれかに記載の新規形状の蒸しパン類。
【請求項13】
生地とペースト状の食品の重量比を8:0.5〜8:3とし、かつ、生地と保形性のある食品の重量比が8:5を超える値にして得られる請求項12に記載の蒸しパン類。
【請求項14】
次の工程を含む、請求項12または13に記載の蒸しパン類の製造方法。
1)容器内に生地を充填した後、または容器に保形性のある食品の配置と生地の充填をした後、生地の上方であって、かつ、容器の側面内側に沿ってペースト状の食品を置く工程
2)蒸気加熱する工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−55900(P2013−55900A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195450(P2011−195450)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000199441)千葉製粉株式会社 (11)
【Fターム(参考)】