説明

蒸気タービンの過負荷運転装置および蒸気タービンの過負荷運転方法

【課題】主蒸気圧力を押さえながら蒸気タービンの出力を増加させることのできる蒸気タービンの過負荷運転装置を得る。
【解決手段】蒸気タービン高圧部5および蒸気タービン再熱部6を備え、高圧蒸気を主蒸気加減弁2を介して蒸気タービン高圧部5に導入し、再熱蒸気を再熱蒸気弁3を介して蒸気タービン再熱部6に導入した蒸気タービンにおいて、前記主蒸気加減弁2の入口側から分岐して前記蒸気タービン再熱部6の入口側にオーバロード弁4を介して連通させたことを特徴とする蒸気タービンの過負荷運転装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバロード弁を備えた蒸気タービンの過負荷運転装置および蒸気タービンの過負荷運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインドサイクル発電プラントにおいては、ガスタービンの定格出力点を越えるような蒸気タービンの過負荷運転を行うことが、排熱回収ボイラにダクトファイアリングシステムを採用することにより実現可能である。
【0003】
このダクトファイアリングシステムを採用する場合、コンバインドサイクル発電プラントの出力増加量は、理論的にはダクトファイアリング量を増やすことにより発電機容量の許容範囲内において制限はないが、主蒸気圧力はタービンに流入する蒸気量にほぼ比例するため、排熱回収ボイラを含む蒸気系統の設計圧力を高める必要があり、その分設備のコストが上昇することになる。
【0004】
一方、主蒸気圧力の上昇を避けるため、オーバロード弁を用いて高圧部1段出口に過負荷分の蒸気を供給する方法も知られているが、この方法にしても主蒸気圧力がある程度上昇することは避けられない。
【0005】
以下、図面を参照して従来の蒸気タービンの過負荷運転装置について説明する。
図6は蒸気タービンの過負荷運転装置の主要部を中心に示したもので、ガスタービンについては図示を省略している。図6において、排熱回収ボイラ13の図示しない高圧加熱器から取り出された高圧の主蒸気は、主蒸気配管P1の主蒸気止弁1、主蒸気加減弁2を通過して蒸気タービン高圧部5に導入され、ここで膨張仕事を行ったあと排気管P2を介して排熱回収ボイラ13の図示しない再熱器に送られて再熱される。そして、再熱蒸気は再熱蒸気管P3の再熱蒸気弁3を通して蒸気タービン再熱部6に導入される。そしてここで膨張仕事を行ったあと復水器7により復水にされる。14は蒸気タービンによって回転駆動される発電機である。
【0006】
通常では以上の蒸気系統により蒸気タービンは運転されるが、主蒸気圧力が定格点(VWO)に到達し、かつ主蒸気加減弁の弁開度が全開のときに、さらに出力増加の要求があった場合は、図7で示すようにダクトファイアリング量を増やすことにより主蒸気流量を増加させ、主蒸気止弁1の出口側と蒸気タービン高圧部5の第1段出口との間を連通させる過負荷蒸気管P4に設けたオーバロード弁4の弁開度を開いて過負荷分に見合う蒸気量を供給し、蒸気タービン高圧部5の出力を増強させている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このように、蒸気タービンの過負荷運転装置はオーバロード弁4を開いて蒸気を高圧第1段出口51に供給するが、この高圧第1段出口51の圧力はこれ以降の蒸気流量にほぼ比例するため圧力が上昇し、その結果主蒸気圧力も上昇する。例えば主蒸気流量を10%増加させると、蒸気タービンの出力もほぼ10%増加するが、そのためには主蒸気圧力が8%〜9%増加するため、この圧力に見合った蒸気系統の設備とする必要がある。
【特許文献1】実開昭57−182204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来の蒸気タービンの過負荷運転装置は、過負荷時にオーバロード弁を開いて蒸気を高圧1段出口に供給するので、排熱回収ボイラを含む蒸気系統の設計圧力を高める必要が生じ、その分蒸気プラントの設備費が嵩むことになる。
【0009】
近年、夏期の冷房用など電力のピーク需要が平常時に比べて突出する傾向にあり、これに対応した発電設備容量が求められるが、定格出力を最大需要に対応させるように構築した設備では設備費が割高になるため、ピーク需要に低コストで対応することのできる発電設備が求められている。
【0010】
本発明は上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、主蒸気圧力を押さえながら蒸気タービンの出力を増加させることのできる蒸気タービンの過負荷運転装置および蒸気タービンの過負荷運転方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る蒸気タービンの過負荷運転装置の発明は、蒸気タービン高圧部および蒸気タービン再熱部を備え、高圧蒸気を主蒸気加減弁を介して蒸気タービン高圧部に導入し、再熱蒸気を再熱蒸気弁を介して蒸気タービン再熱部に導入した蒸気タービンにおいて、前記主蒸気加減弁の入口側から分岐して前記蒸気タービン再熱部の入口側にオーバロード弁を介して連通させたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る蒸気タービンの過負荷運転装置の発明は、蒸気タービン高圧部および蒸気タービン再熱部を備え、高圧蒸気を主蒸気加減弁を介して蒸気タービン高圧部に導入し、再熱蒸気を再熱蒸気弁を介して蒸気タービン再熱部に導入した蒸気タービンにおいて、前記主蒸気加減弁の入口側から分岐して前記蒸気タービン高圧部の中間段落にオーバロード弁を介して連通させたことを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項4に係る蒸気タービンの過負荷運転方法の発明は、蒸気タービン高圧部および蒸気タービン再熱部を備え、高圧蒸気を主蒸気加減弁を介して蒸気タービン高圧部に導入し、再熱蒸気を再熱蒸気弁を介して蒸気タービン再熱部に導入して蒸気タービンの過負荷運転を行うようにした運転方法において、前記主蒸気加減弁の入口側と前記蒸気タービン再熱部の入口側とを連通するオーバロード弁を、主蒸気圧力が定格点に到達し、かつ主蒸気加減弁の開度が全開のとき、オーバロード弁を開いて主蒸気を蒸気タービン再熱部の入口に導入することを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る蒸気タービンの過負荷運転方法の発明は、蒸気タービン高圧部および蒸気タービン再熱部を備え、高圧蒸気を主蒸気加減弁を介して蒸気タービン高圧部に導入し、再熱蒸気を再熱蒸気弁を介して蒸気タービン再熱部に導入して蒸気タービンの過負荷運転を行うようにした運転方法において、前記主蒸気加減弁の入口側と前記蒸気タービン再熱部の入口側とを連通するオーバロード弁を、主蒸気圧力が定格点に到達し、かつ主蒸気加減弁の開度が全開のとき、オーバロード弁を開いて主蒸気を高圧中間段落に導入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば過負荷分の蒸気をオーバロード弁を介して過負荷蒸気管から蒸気タービン再熱部に導入、若しくは部分二重車室に構成された高圧タービンの中間段落に導入するようにしたので、主蒸気圧力の上昇を押さえながら蒸気タービンの出力を増加させることのできる蒸気タービンの過負荷運転装置および蒸気タービンの過負荷運転方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図を通して共通する部分については同一符号をつけて重複する説明は省略する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。本実施の形態は、オーバロード弁4を備える過負荷蒸気管P4の出口側を蒸気タービン再熱部6の入口側に接続するように構成したものであり、その他の構成は従来の技術の場合と同じである。
【0018】
このように構成した結果、本実施の形態による蒸気タービンの過負荷運転装置は、蒸気圧力が定格点に到達してかつ主蒸気加減弁が全開の時に過負荷要求があれば、オーバロード弁4を開くことにより、過負荷蒸気管P4から高温高圧蒸気をタービンの高温再熱部6に導入して、蒸気タービンの再熱部6の出力を増強させるので、発電プラントの出力はオーバロード弁4から導入される蒸気量に応じて増強する。
【0019】
しかも、この実施の形態では、蒸気タービン再熱部6の蒸気圧力は流量に比例して増加するが、蒸気タービン高圧部5の流量は増加しないため、主蒸気圧力は定格点に比較してほとんど上昇しない。過負荷分の蒸気は再熱部のみを通過するため、主蒸気流量増加に対するタービン出力の寄与はタービン全体のうち再熱部が受け持つ出力しか増加しない。
【0020】
通常、蒸気タービン再熱部6の出力分担は7割程度であるため、オーバロード弁4の開により主蒸気流量が10%増加したとき、このシステムではタービン出力が7%程度増加する。このオーバロード弁4から導入された蒸気は排熱回収ボイラの再熱器を通過しないため、タービンの熱消費率は良くなる。しかも、主蒸気圧力がほとんど上昇せず、主蒸気系統の再熱回収ボイラや蒸気管の設計圧力を高くする必要がないため、経済的に蒸気タービンの過負荷運転を実現することができる。
【0021】
図2は本実施の形態の特性図を示したものであり、蒸気圧力が定格点(VWO)に到達したあと主蒸気流量を増加した場合、主蒸気圧力は定格点と比べてほとんど変化しないが、熱消費率および電気出力が増加することがわかる。
【0022】
(第2の実施の形態)
次に、図3を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。
近年の大容量コンバインドサイクル(蒸気タービン出力がおよそ100MWを越えるもの)では、主蒸気圧力が100bar(10MPa)を越えて200bar(20MPa)未満であることが多い。この場合、高圧タービン部のケーシングは部分二重車室になることが一般的である。
【0023】
本実施の形態は、ケーシングが部分二重車室に構成された高圧タービンを採用し、オーバロード弁4を備える過負荷蒸気管P4の出口側を二重車室部の外部車室側と連通させることにより、蒸気を二重車室部と単車室部との接続部に位置する中間段落部から蒸気通路部に混入するように構成したものであり、その他の構成は図1の実施の形態の場合と同じである。
【0024】
図4は部分二重車室に構成された蒸気タービン高圧部5の車室断面図であり、特に蒸気タービン高圧部5の二重車室部を拡大して示す図である。図4において、8は高圧外部車室、9は高圧内部車室、10はタービン動翼、11はタービン静翼、12はタービンロータである。
【0025】
主蒸気加減弁2から高圧内部車室9内に導入された主蒸気S1(破線で示す)は初段動翼、静翼、…第3段動翼、静翼を通り、二重車室部と単車室部との接続部に位置する中間段落部52に至る。
【0026】
一方、過負荷蒸気管P4を通りオーバロード弁4から出力されて蒸気タービン高圧部5の高圧外部車室8にあけられた蒸気送り込み口53から高圧外部車室8の外周面および高圧内部車室9の内周面間に形成された環状通路54に送り込まれた主蒸気S2(実線で示す)は、その環状通路54を通って前記中間段落部52で高圧内部車室9内部を通ってきた主蒸気S1と合流し、次段落に導入される。そして最終段落の動翼、静翼を通過し排気管P2を介して再熱器に導入される。
【0027】
この第2の実施の形態では、図4の蒸気タービン高圧部5の車室断面図で示したように、過負荷蒸気管P4を通りオーバロード弁4から送り込まれた蒸気S2をこの二重車室部の外部車室−内部車室間に送り込み、中間段落部52から主蒸気S1の通路部に混入するように構成したので、外部車室8と内部車室9を貫通するスリーブが不要となるため、極めて簡単な構造で蒸気タービンの過負荷運転装置を実現することができる。
【0028】
この実施の形態の特性は図5で示すように、主蒸気圧力は第1の実施の形態の特性(図2)と比較して若干上昇することは否めないが、主蒸気流量を10%増加したときに期待できる出力の増加量は第1の実施の形態よりも大きく、図7の従来例との中間程度になる。しかし主蒸気圧力の増加は従来の特性図における8〜9%に比べて低く、2〜3%程度であり、主蒸気系統に与える影響は非常に小さい。そのためこの実施の形態でもタービンの熱消費率はほとんど低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る蒸気タービンの過負荷運転装置のシステム構成図。
【図2】第1の実施の形態の特性図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る蒸気タービンの過負荷運転装置のシステム構成図。
【図4】第2の実施の形態で採用した蒸気タービン高温部の車室断面図。
【図5】第2の実施の形態の特性図。
【図6】従来技術による蒸気タービンの過負荷運転装置のシステム構成図。
【図7】従来技術の特性図。
【符号の説明】
【0030】
1…主蒸気止め弁、2…主蒸気加減弁、3…再熱蒸気弁、4…オーバロード弁、5…蒸気タービン高圧部、51…第1段出口部、52…中間段落部、53…蒸気送り込み口、54…環状通路、6…蒸気タービン再熱部、7…復水器、8…高圧外部車室、9…高圧内部車室、10…タービン動翼、11…タービン静翼、12…タービンロータ、13…排熱回収ボイラ、14…発電機、P1…主蒸気配管、P2…排気管、P3…再熱管、P4…過負荷蒸気管。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービン高圧部および蒸気タービン再熱部を備え、高圧蒸気を主蒸気加減弁を介して蒸気タービン高圧部に導入し、再熱蒸気を再熱蒸気弁を介して蒸気タービン再熱部に導入した蒸気タービンにおいて、
前記主蒸気加減弁の入口側から分岐して前記蒸気タービン再熱部の入口側にオーバロード弁を介して連通させたことを特徴とする蒸気タービン過負荷運転装置。
【請求項2】
蒸気タービン高圧部および蒸気タービン再熱部を備え、高圧蒸気を主蒸気加減弁を介して蒸気タービン高圧部に導入し、再熱蒸気を再熱蒸気弁を介して蒸気タービン再熱部に導入した蒸気タービンにおいて、
前記主蒸気加減弁の入口側から分岐して前記蒸気タービン高圧部の中間段落にオーバロード弁を介して連通させたことを特徴とする蒸気タービンの過負荷運転装置。
【請求項3】
前記蒸気タービン高圧部は部分二重車室部を備え、前記オーバロード弁の出口側を二重車室部の外部車室側と連通させ、蒸気を二重車室部と単車室部との接続部に位置する中間段落部から蒸気通路部に混入するように構成したことを特徴とする請求項2記載の蒸気タービンの過負荷運転装置。
【請求項4】
蒸気タービン高圧部および蒸気タービン再熱部を備え、高圧蒸気を主蒸気加減弁を介して蒸気タービン高圧部に導入し、再熱蒸気を再熱蒸気弁を介して蒸気タービン再熱部に導入して蒸気タービンの過負荷運転を行うようにした運転方法において、
前記主蒸気加減弁の入口側と前記蒸気タービン再熱部の入口側とを連通するオーバロード弁を、主蒸気圧力が定格点に到達し、かつ主蒸気加減弁の開度が全開のとき、オーバロード弁を開いて主蒸気を蒸気タービン再熱部の入口に導入することを特徴とする蒸気タービンの過負荷運転方法。
【請求項5】
蒸気タービン高圧部および蒸気タービン再熱部を備え、高圧蒸気を主蒸気加減弁を介して蒸気タービン高圧部に導入し、再熱蒸気を再熱蒸気弁を介して蒸気タービン再熱部に導入して蒸気タービンの過負荷運転を行うようにした運転方法において、
前記主蒸気加減弁の入口側と前記蒸気タービン再熱部の入口側とを連通するオーバロード弁を、主蒸気圧力が定格点に到達し、かつ主蒸気加減弁の開度が全開のとき、オーバロード弁を開いて主蒸気を高圧中間段落に導入することを特徴とする蒸気タービンの過負荷運転方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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