蒸気タービンシール装置
【課題】シールフィン支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供する
【解決手段】ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成されたシールフィン4とから構成され、シールフィン4はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有し、ロータ2の周方向に重なり合う結合凸部4a、4bが結合されて一体的な円環となる。
【解決手段】ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成されたシールフィン4とから構成され、シールフィン4はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有し、ロータ2の周方向に重なり合う結合凸部4a、4bが結合されて一体的な円環となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンのシャフトグランド部または翼先端などの非接触シール部に取り付けられるシールフィンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タービンなどの回転機械の回転部と静止部との隙間には、作動流体の軸方向の漏洩を防止してタービン効率を維持するため、軸シール機構が設けられる。
【0003】
軸シール機構として、非接触式シールの一種であるラビリンスシールがある。
【0004】
図10は、従来のラビリンスシールを用いた軸シール機構の模式的な縦断面図である。
【0005】
図10に示すように、従来のラビリンスシール20は、ケーシング21と回転軸22との隙間に、回転軸22に固定されたラビリンスシール絞り片23が設けられる。実線矢uで示された流れ方向の作動流体は、ラビリンスシール絞り片23によって急縮小した後、急拡大する。ラビリンスシール20のシール効果は、この急縮小と急拡大による流体抵抗によるものである。ラビリンスシール20は、ラビリンスシール絞り片23の先端とケーシング21との隙間である軸シール隙間Wを小さくするほどシール性能を向上できる。しかし、ラビリンスシール絞り片23の先端がケーシング21に接触すると、軸振動(ラビング振動)が発生して過大になり、タービンの運転継続が困難になる。
【0006】
また、蒸気タービンの軸シール機構である蒸気タービンシール装置として、ハイロー型ラビリンスシールがある。ハイロー型ラビリンスシールは、ケーシングである静止部側に複数のシールフィンを設け、このシールフィンをロータ表面に半径方向の間隔を開けて対向させて配置するとともに、シールフィンが対向するロータ表面部分に凹凸部を形成し、その凹凸部に合わせてシールフィン長さを有する。ハイロー型ラビリンスシール装置では、シールフィンとロータ凹凸部との半径方向の間隙を可能な限り微小に設定するか、ロータの軸方向にシールフィンを多数設けて蒸気通過距離を長くすることで、蒸気漏洩損失低減とそれによるタービン効率向上を図っている。
【0007】
また、特許文献1および2に記載されたコーキングシールと呼ばれる埋め込み型の蒸気タービンシール装置がある。これは、静止部あるいは回転部に所定間隔で複数の溝が形成され、この溝にシールフィンがコーキングピースによってかしめられて支持される。コーキングシールでは、シールフィンを極めて薄く形成することが可能であって、放熱性を向上できるため、ロータの熱変形による過大な軸振動(ラビング振動)が起こりにくいという利点がある。
【0008】
コーキングシールでは、シールフィンをロータグランド部に設ける場合、ロータの回転によってシールフィンに作用する遠心力の作用を考慮する必要がある。
【0009】
特許文献3には、削出し、あるいは、コーキングによって外表面にシールフィンが設けられたスリーブをロータグランド部に嵌合させ、回り止めキーでスリーブを固定させる蒸気タービンシール装置が記載される。シールフィンが設けられたスリーブからなる別部材を、ロータグランド部に嵌合して組立てるので、シールフィンが摩耗や損傷した場合には、蒸気タービンシール装置の取替えが容易である。
【特許文献1】特開平5−125903号公報
【特許文献2】特開平5−125904号公報
【特許文献3】特開平10−299412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ロータグランド部にシールフィンを設ける場合には、シールフィンとロータとを一体的に削りだしたロータ一体シールフィンとすることが、シールフィンの強度上は最も有利である。しかし、シールフィンが損傷した場合には、ロータごと交換が必要になり、経済的に不利である。
【0011】
また、特許文献3に記載のシールフィンが設けられたスリーブをロータグランド部に嵌合することは、ロータと別部材のホイールが接合されるガスタービンでは採用できるが、ロータとホイールとが一体的に削りだされる蒸気タービンでは、シールフィンが設けられたスリーブをロータグランド部に嵌合して組立てるような構造を採ることは難しい。
【0012】
そこで、従来の蒸気タービンシール装置では、ロータグランド部に形成された溝に嵌め込まれたシールフィンがコーキングピースによってかしめられて支持される。しかし、コーキングピースによってシールフィンを支持する場合は、ロータ一体シールフィンに比べて強度を確保し難い。
【0013】
図11は、従来の蒸気タービンシール装置の部分的な縦断面図である。
【0014】
図11に示すように、従来の蒸気タービンシール装置30は、ロータ31のロータグランド部に設けられた溝32にシールフィン33が嵌め込まれ、コーキングピース34がかしめられてシールフィン33が溝32に支持される。
【0015】
図12は、従来の蒸気タービンシール装置を構成するロータグランド部の部分的な縦断面図である。
【0016】
図12に示すように、従来の蒸気タービンシール装置30を構成するロータ31は、軸状に形成され、その表面の周方向には溝32がロータ31の軸方向に離間されて複数形成される。
【0017】
図13は、従来の蒸気タービンシール装置を構成するシールフィンの斜視図である。
【0018】
図13に示すように、従来の蒸気タービンシール装置30を構成するシールフィン33は、一部が切りかかれ円周方向に延びた環状に形成される。また、シールフィン33は、円環の軸方向の断面視でL字状断面を有し、円環の半径方向外側に突出して形成されたフィンと、フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成される。シールフィン33のL字状断面の底部の内径は、ロータ31に設けられた溝32の底面が形成する円の外径と略同径に形成される。なお、シールフィン33の断面形状はJ字状に形成することもできる。
【0019】
図14(A)、(B)は、従来の蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図である。
【0020】
図14(A)に示すように、従来の蒸気タービンシール装置30には、蒸気タービンの運転中、シールフィン33に作用する遠心力Fsとコーキングピース34に作用する遠心力Fcとを、シールフィン33と溝32との間に生じる摩擦力fsと、コーキングピース34と溝32との間に生じる摩擦力fcとで支持している。すなわち、コーキングピース34には、摩擦力fsと摩擦力fcとを発生させるために高いコーキングピース反力fが要求される。このため、図14(B)のように、溝32に鉤状の係止部35を形成して、係止部35の接触反力で遠心力Fsと遠心力Fcと支持することも行われている。
【0021】
しかし、コーキングピース34の施工後は、コーキングピース反力fの検出は困難である。また、蒸気タービンを高温下で運転した際のコーキングピース反力fの経年的な低下を確認することも困難である。さらに、溝32に鉤状の係止部35を形成した場合も、コーキングピース34の塑性変形によって形成された係止部35の状況を確認することが困難であり、係止部35の高温強度が十分に確保できないことが懸念される。
【0022】
すなわち、従来の蒸気タービンシール装置では、コーキングピースによるシールフィンの支持部の強度を確保するためには、高い強度を有するコーキング材が必要となる。しかし、コーキング材の強度が高くなるとコーキング時の作業性が悪化し、コーキングピースによるシールフィンの支持部の信頼性が低下する要因となる。
【0023】
また、ロータの軸径が大きくシールフィンが大型化する場合には、コーキングピースによるシールフィンの支持部の強度、信頼性を保つためには、コーキング材の寸法も大きくする必要がある。しかし、コーキング材の寸法を大きくすると、シールフィン間のロータ軸方向の間隔を大きく開けることとなり、軸シール機構としての性能を確保し難くなる。したがって、コーキング材の寸法には制限があり、結果的にコーキングピースによるシールフィンの支持部の強度、信頼性を低下させる要因となる。
【0024】
さらに、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性がある。しかし、ロータグランド部に形成された溝にコーキングピースがかしめられてシールフィンが支持された従来の蒸気タービンシール装置では、コーキングピースによるシールフィンの支持部の強度、信頼性を確保することが困難であり、高温下での運転中、シールフィンに作用する遠心力に抗してシールフィンを支持する支持部の強度、信頼性を確保することが課題であった。
【0025】
本発明は、シールフィン支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記の課題を解決するため本発明では、ロータの表面の周方向に設けられた溝に、シールフィンを嵌め込んで、前記ロータと静止部との間の蒸気をシールする蒸気タービンシール装置において、前記シールフィンは、前記シールフィンを前記溝に嵌め込むために設けられた切り欠き端部の相互間を接合する接合部が形成されて、一体的な円環とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、シールフィン支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る蒸気タービンシール装置の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0029】
[第1の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第1実施形態について、図1から図2を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に切り欠いて示した鳥瞰図である。
【0031】
図1に示すように、蒸気タービンシール装置1は、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成されたシールフィン4とから構成される。
【0032】
ロータ2は、軸状に形成され、その表面の周方向には溝3がロータ2の軸方向に離間されて複数形成される。
【0033】
溝3は、シールフィン4の板厚tより僅かに広い幅を有する。
【0034】
シールフィン4はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。シールフィン4の切り欠きの端部にはシールフィン4の内周側と外周側とにそれぞれロータ2の周方向に重なり合う結合凸部4a、4bが形成される。結合凸部4aはシールフィン4の内周に沿って延設され、結合凸部4bはシールフィン4の外周に沿って延設される。結合凸部4a、4bの互いに突き合わされた端部が溶接されて接合部4cが形成される。すなわち、シールフィン4は切り欠き端部に形成された結合凸部4a、4bが結合されて一体的な円環となる。
【0035】
したがって、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1によればシールフィン4は切れ目のない環状構造物となる。なお、シールフィン4がロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部4cが形成されることで、シールフィン4は切れ目のない環状構造物となる。
【0036】
図2は、本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図である。
【0037】
図2に示すように、シールフィン4の下端部は、ロータ2の溝3に嵌合され、シールフィン4の倒れこみとロータ軸方向変位とが支持される。
【0038】
蒸気タービンが運転されると、シールフィン4には接線方向にフープ力が発生し、このフープ力によってシールフィン4にはロータ径方向内側に向かう径方向反力fpが生じる。シールフィン4に作用する遠心力Fsは、径方向反力fpによってシールフィン4の全周で緩和される。したがって、シールフィン4には、遠心力Fsと径方向反力fpとの差分の遠心力ΔFs=Fs−fpが生じることになり、シールフィン4に作用する遠心力は大幅に低減される。遠心力ΔFsには、シールフィン4の円周方向の構造的な不連続部分や施工における不釣合い分が含まれる。
【0039】
また、シールフィン4は、遠心力ΔFsによって径方向外側へ広がる。溝3は、シールフィン4の内径rが遠心力ΔFsによって径方向外側へ広がってもシールフィン4が抜け出すことのない溝深さDを有する。
【0040】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1によれば、シールフィン4を容易に形成することが可能である。また、コーキングピースが不要となり、シールフィン4に発生するフープ力によってシールフィン4が支持される。
【0041】
また、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1によれば、コーキングピースによるシールフィン4の支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによるシールフィン4の支持部の信頼性が低下することはない。
【0042】
さらに、ロータ2の軸径が大きくシールフィン4が大型化する場合に、コーキングピースによるシールフィン4の支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、シールフィン4間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0043】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1では、シールフィン4の接合部4cの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、シールフィン4に働く遠心力ΔFsに抗してシールフィン4を支持する接合部4cの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0044】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1は、シールフィン4の支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0045】
[第2の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第2実施形態について、図3から図4を参照して説明する。
【0046】
図3は、本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に切り欠いて示した鳥瞰図である。
【0047】
この蒸気タービンシール装置1Aにおいて第1実施形態の蒸気タービンシール装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0048】
図3に示すように、蒸気タービンシール装置1Aは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3にシールフィン4Aが嵌め込まれ、コーキングピース5がかしめられてシールフィン4Aが溝3に支持される。
【0049】
シールフィン4Aはロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。また、シールフィン4Aは、円環の軸方向の断面視でL字状断面を有し、円環の半径方向外側に突出して形成されたフィン4dと、フィン4dの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部4eとから形成される。シールフィン4AのL字状断面の底部4eの内径は、ロータ2に設けられた溝3の底面が形成する円の外径と略同径に形成される。なお、シールフィン4Aの断面形状はJ字状に形成することもできる。
【0050】
シールフィン4Aの切り欠き部のフィン4dの端部には、切り欠きの一方から他方に向かって結合凸部4fが延設され、切り欠きの他方には結合凸部4fに重ね合わせられる結合凹部4gが形成される。結合凸部4fと結合凹部4gとの互いに重ね合わされた部分が接合されて接合部4cが形成される。すなわち、シールフィン4Aは結合凸部4f、結合凹部4gが接合されて一体的な円環となる。接合部4cは、結合凸部4fと結合凹部4gとを、例えば4箇所でスポット溶接して形成される。なお、接合方法は溶接に限られるものではなく、融接、圧接、ろう接などの冶金的接合方法を採用できる。
【0051】
コーキングピース5は、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3に嵌め込まれたシールフィン4Aと溝3との間にかしめられて、シールフィン4Aと溝3とにコーキングピース反力fを付勢させる。
【0052】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Aによればシールフィン4Aは切れ目のない環状構造物となる。なお、シールフィン4Aがロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部4cが形成されることで、シールフィン4Aは切れ目のない環状構造物となる。
【0053】
図4は、本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図である。
【0054】
図4に示すように、蒸気タービンが運転されると、シールフィン4Aには遠心力Fsが作用し、コーキングピース5には遠心力Fcが作用する。このときコーキングピース反力fによって、シールフィン4Aと溝3との間には摩擦力fsが作用し、コーキングピース5と溝3との間には摩擦力fcが作用して、シールフィン4Aが支持される。シールフィン4Aには接線方向にフープ力が発生し、このフープ力によってシールフィン4Aにはロータ径方向内側へ向かう径方向反力fpが生じる。シールフィン4Aに作用する遠心力Fsは、径方向反力fpによってシールフィン4Aの全周で緩和される。したがって、シールフィン4Aには、遠心力Fsと径方向反力fpとの差分の遠心力ΔFs=Fs−fpが生じることになり、シールフィン4Aに作用する遠心力は大幅に低減される。遠心力ΔFsには、シールフィン4Aの円周方向の構造的な不連続部分や施工における不釣合い分が含まれる。
【0055】
すなわち、コーキングピース5が支持する遠心力は、コーキングピース5に作用する遠心力Fcとシールフィン4Aに作用する遠心力ΔFsとの合計の遠心力に減少する。そうすると、コーキングピース反力fが小さい場合でもシールフィン4Aをロータ2に支持することが可能となり、シールフィン4Aの支持部の強度、信頼性が高くなる。また、従来の蒸気タービンシール装置30のように溝3に鉤状の係止部を形成して、係止部の接触反力で遠心力ΔFsと遠心力Fcと支持することも容易になる。
【0056】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Aによれば、シールフィン4Aに発生するフープ力によってシールフィン4Aが支持される。
【0057】
また、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Aによれば、コーキングピース5によるシールフィン4Aの支持部の強度を確保するために、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピース5によるシールフィン4Aの支持部の信頼性が低下することはない。
【0058】
さらに、ロータ2の軸径が大きくシールフィン4Aが大型化する場合に、コーキングピース5によるシールフィン4Aの支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、シールフィン4A間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0059】
さらにまた、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Aでは、コーキングピース5によるシールフィン4Aの支持部の強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、シールフィン4Aに作用する遠心力ΔFsに抗してシールフィン4Aを支持する支持部の強度、信頼性を確保することが可能である。
【0060】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Aは、シールフィン4Aの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0061】
[第3の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第3実施形態について、図5を参照して説明する。
【0062】
図5(A)は本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ軸方向の部分的な断面図である。
【0063】
この蒸気タービンシール装置1Bにおいて第1実施形態の蒸気タービンシール装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
図5(A)、(B)に示すように、蒸気タービンシール装置1Bは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成された複数のフィンを有する複列シールフィン6とから構成される。
【0065】
複列シールフィン6はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。また、複列シールフィン6は、円環の軸方向の断面視でU字状断面を有し、円環の半径方向外側に突出して形成されたハイ側フィン6aおよびロー側フィン6bからなる2枚のシールフィンと、ハイ側フィン6aおよびロー側フィン6bの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部6cとから形成される。シールフィン14のU字状断面の底部6cの内径は、ロータ2に設けられた溝3の底面が形成する円の外径と略同径に形成される。
【0066】
また、複列シールフィン6は円環の一部が切り欠かれ、この切り欠きの端部が溶接され、接合部6dが形成されて一体的な円環となる。なお、接合方法は溶接に限られるものではなく、融接、圧接、ろう接などの冶金的接合方法を採用できる。
【0067】
ロータ2の表面には、複列シールフィン6の溶接部に対応させて、逃げ溝7が設けられる。逃げ溝7は、複列シールフィン6の溶接施工時に、ロータ2の本体に熱影響部や溶融部が生じないようにすること、および、複列シールフィン6の溶接部に裏波ビードが形成される空間を確保する。
【0068】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Bによれば、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。なお、複列シールフィン6がロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部6dが形成されることで、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。
【0069】
したがって、蒸気タービンが運転されると、複列シールフィン6には遠心力Fsが作用する。このとき、複列シールフィン6には接線方向にフープ力が発生し、このフープ力によって複列シールフィン6にはロータ径方向内側へ向かう径方向反力fpが生じる。複列シールフィン6に作用する遠心力Fsは、径方向反力fpによって複列シールフィン6の全周で緩和される。したがって、複列シールフィン6には、遠心力Fsと径方向反力fpとの差分の遠心力ΔFs=Fs−fpが生じることになり、複列シールフィン6に作用する遠心力は大幅に低減される。遠心力ΔFsには、複列シールフィン6の円周方向の構造的な不連続部分や施工における不釣合い分が含まれる。
【0070】
一方、複列シールフィン6に発生するフープ力に抗するため、複列シールフィン6の切り欠き部に形成された接合部6dには十分な強度が必要となる。複列シールフィン6によれば、ハイ側フィン6aおよびロー側フィン6bが独立に接合される場合に比べて底部6cの接合面積が増加するので、接合部6dの面積を大きく接合部の強度を向上させることができる。
【0071】
また、複列シールフィン6は、その断面形状がU字状に形成されるため、蒸気力による軸方向曲げに対する剛性が向上する。したがって、ロータ2の溝3は、シールフィンの軸方向変位を支持するだけでよく、シールフィンの蒸気力による軸方向曲げに対する剛性を確保するために溝3の深さを深くする必要が無くなり、溝3の深さを浅くすることができる。
【0072】
さらに、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Bによれば、コーキングピースは不要になり、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の信頼性が低下することはない。
【0073】
さらに、ロータ2の軸径が大きく複列シールフィン6が大型化する場合に、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、複列シールフィン6間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0074】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Bでは、複列シールフィン6の接合部6dの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、複列シールフィン6に作用する遠心力ΔFsに抗して複列シールフィン6を支持する接合部6dの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0075】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Bは、シールフィンの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0076】
[第4の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第4実施形態について、図6を参照して説明する。
【0077】
図6は、本発明の第4実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図である。
【0078】
この蒸気タービンシール装置1Cにおいて第3実施形態の蒸気タービンシール装置1Bと同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0079】
図6に示すように、蒸気タービンシール装置1Cは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成された複数のフィンを有する複列シールフィン6とから構成される。
【0080】
複列シールフィン6はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。また、複列シールフィン6は、この切り欠きの端部とロータ2の溝3とがロータ2の軸方向と周方向とに溶接され、接合部6eが形成されて一体的な円環となる。なお、接合方法は溶接に限られるものではなく、融接、圧接、ろう接などの冶金的接合方法を採用できる。
【0081】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Cによれば、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。なお、複列シールフィン6がロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部6eが形成されることで、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。
【0082】
本実施形態に係る複列シールフィン6の接合部6eは、複列シールフィン6の切り欠きの端部どうしを接合するのではなく、ロータ2の溝3に複列シールフィン6の切り欠きの端部をロータ周方向とロータ軸方向とに溶接して形成される。複列シールフィン6とロータ1の溝3との接合を複列シールフィン6の切り欠きの端部で行うことによって複列シールフィン6に作用する遠心力Fsに対しては、切れ目のない環状のシールフィンと同様の効果が得られるとともに、接合部6eの領域を増すことができるので、複列シールフィン6の切り欠きの端部の接合部6eの強度を高くできる。
【0083】
蒸気タービンのタービン効率を向上させるため、蒸気タービンシール装置1Cは、ロータ2の軸方向に多数列のシールフィンが設けられる。蒸気タービンシール装置1Cでは、ロータ2の溝3に複列シールフィン6の切り欠きの端部をロータ周方向とロータ軸方向とに溶接して接合されるため、溶接施工を行うトーチや電極などの接合装置の作業空間を確保し易く、また溶接ビードを研磨する必要がないので狭い範囲に多数のシールフィンを設け易い。
【0084】
また、複列シールフィン6は、その断面形状がU字状に形成されるため、蒸気力による軸方向曲げに対する剛性が向上する。したがって、ロータ2の溝3は、シールフィンの軸方向変位を支持するだけでよく、シールフィンの蒸気力による軸方向曲げに対する剛性を確保するために溝3の深さを深くする必要が無くなり、溝3の深さを浅くすることができる。
【0085】
さらに、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Cによれば、コーキングピースは不要になり、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の信頼性が低下することはない。
【0086】
さらにまた、ロータ2の軸径が大きく複列シールフィン6が大型化する場合に、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、複列シールフィン6間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0087】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Cでは、複列シールフィン6の接合部6eの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、複列シールフィン6に作用する遠心力ΔFsに抗して複列シールフィン6を支持する接合部6eの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0088】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Cは、シールフィンの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0089】
[第5の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第5実施形態について、図7を参照して説明する。
【0090】
図7(A)は本発明の第5実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は本発明の第5実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ周方向の部分的な断面図である。
【0091】
この蒸気タービンシール装置1Dにおいて第3実施形態の蒸気タービンシール装置1Bと同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0092】
図7(A)、(B)に示すように、蒸気タービンシール装置1Dは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成された複数のフィンを有する複列シールフィン6と、複列シールフィン6に形成された切り欠き部が接合される結合基部8と、溝3に交差させてロータ2に形成され、結合基部8が係止されるダブデール結合溝9とから構成される。
【0093】
複列シールフィン6はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。また、複列シールフィン6は、この切り欠きの端部の底部6cと結合基部8とが溶接され、接合部6fが形成されて一体的な円環となる。なお、接合方法は溶接に限られるものではなく、融接、圧接、ろう接などの冶金的接合方法を採用できる。複列シールフィン6の切り欠き部は、フィン6a、6bがロータ径方向外側に向かって広がる開先形状に形成され、溶接作業の容易化が図られる。
【0094】
結合基部8は、周方向断面視でフック部が設けられた楔形に形成され、複列シールフィン6に作用する遠心力によってダブデール結合溝9から外れることがない。結合基部8によって複列シールフィン6の溶接施工時に、ロータ2の本体に熱影響部や溶融部が生じない。
【0095】
ダブデール結合溝9は、ロータ2の軸方向断面視で楔形の溝であり、複列シールフィン6の切り欠き部に接合された結合基部8に対応させて、ロータ2の表面のロータ軸方向に形成される。
【0096】
なお、複数の複列シールフィン6に亘ってロータ軸方向にダブデール結合溝9を形成し、ロータ軸方向に長尺な結合基部8を設けて、1つの結合基部8に複数の複列シールフィン6を接合することが可能である。
【0097】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Dによれば、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。なお、複列シールフィン6がロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部6fが形成されることで、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。
【0098】
また、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Dによれば、結合基部8によって複列シールフィン6の溶接施工時にロータ2に生じる熱影響を最小限に抑えることができる。また、ロータ2には溶接部が無いため経年後の複列シールフィン6の交換を容易にできる。
【0099】
蒸気タービンのタービン効率を向上させるため、蒸気タービンシール装置1Dは、ロータ2の軸方向に多数列のシールフィンが設けられる。蒸気タービンシール装置1Dでは、ロータ2の溝3に複列シールフィン6の切り欠きの端部をロータ周方向とロータ軸方向とに溶接して接合されるため、溶接施工を行うトーチや電極などの接合装置の作業空間を確保し易く、また溶接ビードを研磨する必要がないので狭い範囲に多数のシールフィンを設け易い。
【0100】
また、複列シールフィン6は、その断面形状がU字状に形成されるため、蒸気力による軸方向曲げに対する剛性が向上する。したがって、ロータ2の溝3は、シールフィンの軸方向変位を支持するだけでよく、シールフィンの蒸気力による軸方向曲げに対する剛性を確保するために溝3の深さを深くする必要が無くなり、溝3の深さを浅くすることができる。
【0101】
さらに、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Dによれば、コーキングピースは不要になり、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の信頼性が低下することはない。
【0102】
さらにまた、ロータ2の軸径が大きく複列シールフィン6が大型化する場合に、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、複列シールフィン6間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0103】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Dでは、複列シールフィン6の接合部6fの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、複列シールフィン6に作用する遠心力ΔFsに抗して複列シールフィン6を支持する接合部6fの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0104】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Dは、シールフィンの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0105】
[第6の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第6実施形態について、図8を参照して説明する。
【0106】
図8は、本発明の第6実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図である。
【0107】
この蒸気タービンシール装置1Eにおいて第1実施形態の蒸気タービンシール装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0108】
図8に示すように、蒸気タービンシール装置1Eは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成されたシールフィン4Bとから構成される。
【0109】
シールフィン4Bはロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。
【0110】
シールフィン4Bの切り欠き部の端部には、切り欠きの一方から他方に向かって結合部4hが延設され、切り欠きの他方には結合部12eがロータ軸方向に重ねられる。結合部4hと、結合部4hに重ねあわされた切り欠きの他方の端部とは、連通されたリベット孔4iを有し、リベット孔4iにリベット10がかしめられて接合部4jが形成される。すなわち、シールフィン4Bは結合部4hと、切り欠きの他方とがリベット10によって接合されて一体的な円環となる。シールフィン4Bは、例えば3個のリベット10によって結合される。なお、接合方法はリベットに限られるものではなく、ボルト、ナット結合などの機械的接合方法を採用できる。
【0111】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Eによれば、熱影響が生じる溶接などの冶金的結合方法ではなく、リベットのような機械的結合方法によってシールフィン4Bは切れ目のない環状構造物となる。なお、シールフィン4Bがロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部4jが形成されることで、シールフィン4Bは切れ目のない環状構造物となる。
【0112】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Eによれば、シールフィン4Bを容易に形成することが可能である。また、コーキングピースが不要となり、シールフィン4Bに発生するフープ力によってシールフィン4Bが支持される。
【0113】
また、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Eによれば、コーキングピースによるシールフィン4Bの支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによるシールフィン4Bの支持部の信頼性が低下することはない。
【0114】
さらに、ロータ2の軸径が大きくシールフィン4Bが大型化する場合に、コーキングピースによるシールフィン4Bの支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、シールフィン4B間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0115】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Eでは、シールフィン4Bの接合部4jの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、シールフィン4Bに働く遠心力ΔFsに抗してシールフィン4Bを支持する接合部4jの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0116】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Eは、シールフィン4Bの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0117】
[第7の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第7実施形態について、図9を参照して説明する。
【0118】
図9(A)は、本発明の第7実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は、本発明の第7実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ周方向の部分的な断面図である。
【0119】
この蒸気タービンシール装置1Fにおいて第1実施形態の蒸気タービンシール装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0120】
図9(A)、(B)に示すように、蒸気タービンシール装置1Fは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成された複数のフィンを有する複列シールフィン6と、複列シールフィン6に形成された切り欠き部が接合される結合基部8Aと、溝3に沿ってロータ2に形成され、結合基部8が収容される逃げ溝7Aとから構成される。
【0121】
複列シールフィン6はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。また、複列シールフィン6は、この切り欠きの端部の底部6cと、結合基部8Aとが接合されて一体的な円環となる。
【0122】
複列シールフィン6の切り欠き端部の底部6cには、結合基部8Aが重ねられる。底部6cと結合基部8とは、連通されたリベット孔6g、8aを有し、リベット孔6g、8aにリベット10がかしめられて接合部6hが形成される。すなわち、複列シールフィン6は底部6cと、結合基部8Aとがリベット10によって接合されて一体的な円環となる。複列シールフィン6は、例えば4個のリベット10によって結合される。なお、接合方法はリベットに限られるものではなく、ボルト、ナット結合などの機械的接合方法を採用できる。
【0123】
ロータ2の表面には、複列シールフィン6に結合された結合基部8Aに対応させて、逃げ溝7Aが設けられる。逃げ溝7Aは、複列シールフィン6を結合する結合基部8A、および、複列シールフィン6を結合するリベット10の頭を収容する空間を確保する。
【0124】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Fによれば、熱影響が生じる溶接などの冶金的結合方法ではなく、リベットのような機械的結合方法によって複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。なお、複列シールフィン6がロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部6hが形成されることで、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。
【0125】
また、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Fによれば、結合基部8Aによって複列シールフィン6が機械的に接合されるので、ロータ2には溶接部が無い。また、経年後の複列シールフィン6の交換を容易にできる。
【0126】
蒸気タービンのタービン効率を向上させるため、蒸気タービンシール装置1Fは、ロータ2の軸方向に多数列のシールフィンが設けられる。蒸気タービンシール装置1Fでは、ロータ2の溝3に複列シールフィン6の切り欠きの端部を結合基部8Aによって機械的に接合されるため、接合工具の作業空間を確保し易く、また溶接ビードを研磨する必要がないので狭い範囲に多数のシールフィンを設け易い。
【0127】
また、複列シールフィン6は、その断面形状がU字状に形成されるため、蒸気力による軸方向曲げに対する剛性が向上する。したがって、ロータ2の溝3は、シールフィンの軸方向変位を支持するだけでよく、シールフィンの蒸気力による軸方向曲げに対する剛性を確保するために溝3の深さを深くする必要が無くなり、溝3の深さを浅くすることができる。
【0128】
さらに、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Fによれば、コーキングピースは不要になり、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の信頼性が低下することはない。
【0129】
さらにまた、ロータ2の軸径が大きく複列シールフィン6が大型化する場合に、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、複列シールフィン6間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0130】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Fでは、複列シールフィン6の接合部6hの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、複列シールフィン6に作用する遠心力ΔFsに抗して複列シールフィン6を支持する接合部6hの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0131】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Fは、シールフィンの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に切り欠いて示した鳥瞰図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に切り欠いて示した鳥瞰図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図。
【図5】(A)は本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ軸方向の部分的な断面図。
【図6】本発明の第4実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図。
【図7】(A)は本発明の第5実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は本発明の第5実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ周方向の部分的な断面図。
【図8】本発明の第6実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図。
【図9】(A)は本発明の第7実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は本発明の第7実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ周方向の部分的な断面図。
【図10】従来のラビリンスシールを用いた軸シール機構の模式的な縦断面図。
【図11】従来の蒸気タービンシール装置の部分的な縦断面図。
【図12】従来の蒸気タービンシール装置を構成するロータグランド部の部分的な縦断面図。
【図13】従来の蒸気タービンシール装置を構成するシールフィンの斜視図。
【図14】(A)、(B)は、従来の蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図。
【符号の説明】
【0133】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F 蒸気タービンシール装置
2 ロータ
3 溝
4、4A、4B シールフィン
4a、4b 結合凸部
4c 接合部
4d フィン
4e 底部
4f 結合凸部
4g 結合凹部
4h 結合部
4i リベット孔
4j 接合部
5 コーキングピース
6 複列シールフィン
6a ハイ側フィン
6b ロー側フィン
6c 底部
6d 接合部
6e 接合部
6f 接合部
6g リベット孔
6h 接合部
7 逃げ溝
8、8A 結合基部
8a リベット孔
9 ダブデール結合溝
10 リベット
20 従来のラビリンスシール
21 ケーシング
22 回転軸
23 ラビリンスシール絞り片
30 従来の蒸気タービンシール装置
31 ロータ
32 溝
33 シールフィン
34 コーキングピース
35 係止部
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンのシャフトグランド部または翼先端などの非接触シール部に取り付けられるシールフィンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タービンなどの回転機械の回転部と静止部との隙間には、作動流体の軸方向の漏洩を防止してタービン効率を維持するため、軸シール機構が設けられる。
【0003】
軸シール機構として、非接触式シールの一種であるラビリンスシールがある。
【0004】
図10は、従来のラビリンスシールを用いた軸シール機構の模式的な縦断面図である。
【0005】
図10に示すように、従来のラビリンスシール20は、ケーシング21と回転軸22との隙間に、回転軸22に固定されたラビリンスシール絞り片23が設けられる。実線矢uで示された流れ方向の作動流体は、ラビリンスシール絞り片23によって急縮小した後、急拡大する。ラビリンスシール20のシール効果は、この急縮小と急拡大による流体抵抗によるものである。ラビリンスシール20は、ラビリンスシール絞り片23の先端とケーシング21との隙間である軸シール隙間Wを小さくするほどシール性能を向上できる。しかし、ラビリンスシール絞り片23の先端がケーシング21に接触すると、軸振動(ラビング振動)が発生して過大になり、タービンの運転継続が困難になる。
【0006】
また、蒸気タービンの軸シール機構である蒸気タービンシール装置として、ハイロー型ラビリンスシールがある。ハイロー型ラビリンスシールは、ケーシングである静止部側に複数のシールフィンを設け、このシールフィンをロータ表面に半径方向の間隔を開けて対向させて配置するとともに、シールフィンが対向するロータ表面部分に凹凸部を形成し、その凹凸部に合わせてシールフィン長さを有する。ハイロー型ラビリンスシール装置では、シールフィンとロータ凹凸部との半径方向の間隙を可能な限り微小に設定するか、ロータの軸方向にシールフィンを多数設けて蒸気通過距離を長くすることで、蒸気漏洩損失低減とそれによるタービン効率向上を図っている。
【0007】
また、特許文献1および2に記載されたコーキングシールと呼ばれる埋め込み型の蒸気タービンシール装置がある。これは、静止部あるいは回転部に所定間隔で複数の溝が形成され、この溝にシールフィンがコーキングピースによってかしめられて支持される。コーキングシールでは、シールフィンを極めて薄く形成することが可能であって、放熱性を向上できるため、ロータの熱変形による過大な軸振動(ラビング振動)が起こりにくいという利点がある。
【0008】
コーキングシールでは、シールフィンをロータグランド部に設ける場合、ロータの回転によってシールフィンに作用する遠心力の作用を考慮する必要がある。
【0009】
特許文献3には、削出し、あるいは、コーキングによって外表面にシールフィンが設けられたスリーブをロータグランド部に嵌合させ、回り止めキーでスリーブを固定させる蒸気タービンシール装置が記載される。シールフィンが設けられたスリーブからなる別部材を、ロータグランド部に嵌合して組立てるので、シールフィンが摩耗や損傷した場合には、蒸気タービンシール装置の取替えが容易である。
【特許文献1】特開平5−125903号公報
【特許文献2】特開平5−125904号公報
【特許文献3】特開平10−299412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ロータグランド部にシールフィンを設ける場合には、シールフィンとロータとを一体的に削りだしたロータ一体シールフィンとすることが、シールフィンの強度上は最も有利である。しかし、シールフィンが損傷した場合には、ロータごと交換が必要になり、経済的に不利である。
【0011】
また、特許文献3に記載のシールフィンが設けられたスリーブをロータグランド部に嵌合することは、ロータと別部材のホイールが接合されるガスタービンでは採用できるが、ロータとホイールとが一体的に削りだされる蒸気タービンでは、シールフィンが設けられたスリーブをロータグランド部に嵌合して組立てるような構造を採ることは難しい。
【0012】
そこで、従来の蒸気タービンシール装置では、ロータグランド部に形成された溝に嵌め込まれたシールフィンがコーキングピースによってかしめられて支持される。しかし、コーキングピースによってシールフィンを支持する場合は、ロータ一体シールフィンに比べて強度を確保し難い。
【0013】
図11は、従来の蒸気タービンシール装置の部分的な縦断面図である。
【0014】
図11に示すように、従来の蒸気タービンシール装置30は、ロータ31のロータグランド部に設けられた溝32にシールフィン33が嵌め込まれ、コーキングピース34がかしめられてシールフィン33が溝32に支持される。
【0015】
図12は、従来の蒸気タービンシール装置を構成するロータグランド部の部分的な縦断面図である。
【0016】
図12に示すように、従来の蒸気タービンシール装置30を構成するロータ31は、軸状に形成され、その表面の周方向には溝32がロータ31の軸方向に離間されて複数形成される。
【0017】
図13は、従来の蒸気タービンシール装置を構成するシールフィンの斜視図である。
【0018】
図13に示すように、従来の蒸気タービンシール装置30を構成するシールフィン33は、一部が切りかかれ円周方向に延びた環状に形成される。また、シールフィン33は、円環の軸方向の断面視でL字状断面を有し、円環の半径方向外側に突出して形成されたフィンと、フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成される。シールフィン33のL字状断面の底部の内径は、ロータ31に設けられた溝32の底面が形成する円の外径と略同径に形成される。なお、シールフィン33の断面形状はJ字状に形成することもできる。
【0019】
図14(A)、(B)は、従来の蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図である。
【0020】
図14(A)に示すように、従来の蒸気タービンシール装置30には、蒸気タービンの運転中、シールフィン33に作用する遠心力Fsとコーキングピース34に作用する遠心力Fcとを、シールフィン33と溝32との間に生じる摩擦力fsと、コーキングピース34と溝32との間に生じる摩擦力fcとで支持している。すなわち、コーキングピース34には、摩擦力fsと摩擦力fcとを発生させるために高いコーキングピース反力fが要求される。このため、図14(B)のように、溝32に鉤状の係止部35を形成して、係止部35の接触反力で遠心力Fsと遠心力Fcと支持することも行われている。
【0021】
しかし、コーキングピース34の施工後は、コーキングピース反力fの検出は困難である。また、蒸気タービンを高温下で運転した際のコーキングピース反力fの経年的な低下を確認することも困難である。さらに、溝32に鉤状の係止部35を形成した場合も、コーキングピース34の塑性変形によって形成された係止部35の状況を確認することが困難であり、係止部35の高温強度が十分に確保できないことが懸念される。
【0022】
すなわち、従来の蒸気タービンシール装置では、コーキングピースによるシールフィンの支持部の強度を確保するためには、高い強度を有するコーキング材が必要となる。しかし、コーキング材の強度が高くなるとコーキング時の作業性が悪化し、コーキングピースによるシールフィンの支持部の信頼性が低下する要因となる。
【0023】
また、ロータの軸径が大きくシールフィンが大型化する場合には、コーキングピースによるシールフィンの支持部の強度、信頼性を保つためには、コーキング材の寸法も大きくする必要がある。しかし、コーキング材の寸法を大きくすると、シールフィン間のロータ軸方向の間隔を大きく開けることとなり、軸シール機構としての性能を確保し難くなる。したがって、コーキング材の寸法には制限があり、結果的にコーキングピースによるシールフィンの支持部の強度、信頼性を低下させる要因となる。
【0024】
さらに、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性がある。しかし、ロータグランド部に形成された溝にコーキングピースがかしめられてシールフィンが支持された従来の蒸気タービンシール装置では、コーキングピースによるシールフィンの支持部の強度、信頼性を確保することが困難であり、高温下での運転中、シールフィンに作用する遠心力に抗してシールフィンを支持する支持部の強度、信頼性を確保することが課題であった。
【0025】
本発明は、シールフィン支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記の課題を解決するため本発明では、ロータの表面の周方向に設けられた溝に、シールフィンを嵌め込んで、前記ロータと静止部との間の蒸気をシールする蒸気タービンシール装置において、前記シールフィンは、前記シールフィンを前記溝に嵌め込むために設けられた切り欠き端部の相互間を接合する接合部が形成されて、一体的な円環とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、シールフィン支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る蒸気タービンシール装置の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0029】
[第1の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第1実施形態について、図1から図2を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に切り欠いて示した鳥瞰図である。
【0031】
図1に示すように、蒸気タービンシール装置1は、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成されたシールフィン4とから構成される。
【0032】
ロータ2は、軸状に形成され、その表面の周方向には溝3がロータ2の軸方向に離間されて複数形成される。
【0033】
溝3は、シールフィン4の板厚tより僅かに広い幅を有する。
【0034】
シールフィン4はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。シールフィン4の切り欠きの端部にはシールフィン4の内周側と外周側とにそれぞれロータ2の周方向に重なり合う結合凸部4a、4bが形成される。結合凸部4aはシールフィン4の内周に沿って延設され、結合凸部4bはシールフィン4の外周に沿って延設される。結合凸部4a、4bの互いに突き合わされた端部が溶接されて接合部4cが形成される。すなわち、シールフィン4は切り欠き端部に形成された結合凸部4a、4bが結合されて一体的な円環となる。
【0035】
したがって、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1によればシールフィン4は切れ目のない環状構造物となる。なお、シールフィン4がロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部4cが形成されることで、シールフィン4は切れ目のない環状構造物となる。
【0036】
図2は、本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図である。
【0037】
図2に示すように、シールフィン4の下端部は、ロータ2の溝3に嵌合され、シールフィン4の倒れこみとロータ軸方向変位とが支持される。
【0038】
蒸気タービンが運転されると、シールフィン4には接線方向にフープ力が発生し、このフープ力によってシールフィン4にはロータ径方向内側に向かう径方向反力fpが生じる。シールフィン4に作用する遠心力Fsは、径方向反力fpによってシールフィン4の全周で緩和される。したがって、シールフィン4には、遠心力Fsと径方向反力fpとの差分の遠心力ΔFs=Fs−fpが生じることになり、シールフィン4に作用する遠心力は大幅に低減される。遠心力ΔFsには、シールフィン4の円周方向の構造的な不連続部分や施工における不釣合い分が含まれる。
【0039】
また、シールフィン4は、遠心力ΔFsによって径方向外側へ広がる。溝3は、シールフィン4の内径rが遠心力ΔFsによって径方向外側へ広がってもシールフィン4が抜け出すことのない溝深さDを有する。
【0040】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1によれば、シールフィン4を容易に形成することが可能である。また、コーキングピースが不要となり、シールフィン4に発生するフープ力によってシールフィン4が支持される。
【0041】
また、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1によれば、コーキングピースによるシールフィン4の支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによるシールフィン4の支持部の信頼性が低下することはない。
【0042】
さらに、ロータ2の軸径が大きくシールフィン4が大型化する場合に、コーキングピースによるシールフィン4の支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、シールフィン4間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0043】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1では、シールフィン4の接合部4cの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、シールフィン4に働く遠心力ΔFsに抗してシールフィン4を支持する接合部4cの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0044】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1は、シールフィン4の支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0045】
[第2の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第2実施形態について、図3から図4を参照して説明する。
【0046】
図3は、本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に切り欠いて示した鳥瞰図である。
【0047】
この蒸気タービンシール装置1Aにおいて第1実施形態の蒸気タービンシール装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0048】
図3に示すように、蒸気タービンシール装置1Aは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3にシールフィン4Aが嵌め込まれ、コーキングピース5がかしめられてシールフィン4Aが溝3に支持される。
【0049】
シールフィン4Aはロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。また、シールフィン4Aは、円環の軸方向の断面視でL字状断面を有し、円環の半径方向外側に突出して形成されたフィン4dと、フィン4dの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部4eとから形成される。シールフィン4AのL字状断面の底部4eの内径は、ロータ2に設けられた溝3の底面が形成する円の外径と略同径に形成される。なお、シールフィン4Aの断面形状はJ字状に形成することもできる。
【0050】
シールフィン4Aの切り欠き部のフィン4dの端部には、切り欠きの一方から他方に向かって結合凸部4fが延設され、切り欠きの他方には結合凸部4fに重ね合わせられる結合凹部4gが形成される。結合凸部4fと結合凹部4gとの互いに重ね合わされた部分が接合されて接合部4cが形成される。すなわち、シールフィン4Aは結合凸部4f、結合凹部4gが接合されて一体的な円環となる。接合部4cは、結合凸部4fと結合凹部4gとを、例えば4箇所でスポット溶接して形成される。なお、接合方法は溶接に限られるものではなく、融接、圧接、ろう接などの冶金的接合方法を採用できる。
【0051】
コーキングピース5は、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3に嵌め込まれたシールフィン4Aと溝3との間にかしめられて、シールフィン4Aと溝3とにコーキングピース反力fを付勢させる。
【0052】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Aによればシールフィン4Aは切れ目のない環状構造物となる。なお、シールフィン4Aがロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部4cが形成されることで、シールフィン4Aは切れ目のない環状構造物となる。
【0053】
図4は、本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図である。
【0054】
図4に示すように、蒸気タービンが運転されると、シールフィン4Aには遠心力Fsが作用し、コーキングピース5には遠心力Fcが作用する。このときコーキングピース反力fによって、シールフィン4Aと溝3との間には摩擦力fsが作用し、コーキングピース5と溝3との間には摩擦力fcが作用して、シールフィン4Aが支持される。シールフィン4Aには接線方向にフープ力が発生し、このフープ力によってシールフィン4Aにはロータ径方向内側へ向かう径方向反力fpが生じる。シールフィン4Aに作用する遠心力Fsは、径方向反力fpによってシールフィン4Aの全周で緩和される。したがって、シールフィン4Aには、遠心力Fsと径方向反力fpとの差分の遠心力ΔFs=Fs−fpが生じることになり、シールフィン4Aに作用する遠心力は大幅に低減される。遠心力ΔFsには、シールフィン4Aの円周方向の構造的な不連続部分や施工における不釣合い分が含まれる。
【0055】
すなわち、コーキングピース5が支持する遠心力は、コーキングピース5に作用する遠心力Fcとシールフィン4Aに作用する遠心力ΔFsとの合計の遠心力に減少する。そうすると、コーキングピース反力fが小さい場合でもシールフィン4Aをロータ2に支持することが可能となり、シールフィン4Aの支持部の強度、信頼性が高くなる。また、従来の蒸気タービンシール装置30のように溝3に鉤状の係止部を形成して、係止部の接触反力で遠心力ΔFsと遠心力Fcと支持することも容易になる。
【0056】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Aによれば、シールフィン4Aに発生するフープ力によってシールフィン4Aが支持される。
【0057】
また、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Aによれば、コーキングピース5によるシールフィン4Aの支持部の強度を確保するために、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピース5によるシールフィン4Aの支持部の信頼性が低下することはない。
【0058】
さらに、ロータ2の軸径が大きくシールフィン4Aが大型化する場合に、コーキングピース5によるシールフィン4Aの支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、シールフィン4A間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0059】
さらにまた、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Aでは、コーキングピース5によるシールフィン4Aの支持部の強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、シールフィン4Aに作用する遠心力ΔFsに抗してシールフィン4Aを支持する支持部の強度、信頼性を確保することが可能である。
【0060】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Aは、シールフィン4Aの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0061】
[第3の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第3実施形態について、図5を参照して説明する。
【0062】
図5(A)は本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ軸方向の部分的な断面図である。
【0063】
この蒸気タービンシール装置1Bにおいて第1実施形態の蒸気タービンシール装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
図5(A)、(B)に示すように、蒸気タービンシール装置1Bは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成された複数のフィンを有する複列シールフィン6とから構成される。
【0065】
複列シールフィン6はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。また、複列シールフィン6は、円環の軸方向の断面視でU字状断面を有し、円環の半径方向外側に突出して形成されたハイ側フィン6aおよびロー側フィン6bからなる2枚のシールフィンと、ハイ側フィン6aおよびロー側フィン6bの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部6cとから形成される。シールフィン14のU字状断面の底部6cの内径は、ロータ2に設けられた溝3の底面が形成する円の外径と略同径に形成される。
【0066】
また、複列シールフィン6は円環の一部が切り欠かれ、この切り欠きの端部が溶接され、接合部6dが形成されて一体的な円環となる。なお、接合方法は溶接に限られるものではなく、融接、圧接、ろう接などの冶金的接合方法を採用できる。
【0067】
ロータ2の表面には、複列シールフィン6の溶接部に対応させて、逃げ溝7が設けられる。逃げ溝7は、複列シールフィン6の溶接施工時に、ロータ2の本体に熱影響部や溶融部が生じないようにすること、および、複列シールフィン6の溶接部に裏波ビードが形成される空間を確保する。
【0068】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Bによれば、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。なお、複列シールフィン6がロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部6dが形成されることで、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。
【0069】
したがって、蒸気タービンが運転されると、複列シールフィン6には遠心力Fsが作用する。このとき、複列シールフィン6には接線方向にフープ力が発生し、このフープ力によって複列シールフィン6にはロータ径方向内側へ向かう径方向反力fpが生じる。複列シールフィン6に作用する遠心力Fsは、径方向反力fpによって複列シールフィン6の全周で緩和される。したがって、複列シールフィン6には、遠心力Fsと径方向反力fpとの差分の遠心力ΔFs=Fs−fpが生じることになり、複列シールフィン6に作用する遠心力は大幅に低減される。遠心力ΔFsには、複列シールフィン6の円周方向の構造的な不連続部分や施工における不釣合い分が含まれる。
【0070】
一方、複列シールフィン6に発生するフープ力に抗するため、複列シールフィン6の切り欠き部に形成された接合部6dには十分な強度が必要となる。複列シールフィン6によれば、ハイ側フィン6aおよびロー側フィン6bが独立に接合される場合に比べて底部6cの接合面積が増加するので、接合部6dの面積を大きく接合部の強度を向上させることができる。
【0071】
また、複列シールフィン6は、その断面形状がU字状に形成されるため、蒸気力による軸方向曲げに対する剛性が向上する。したがって、ロータ2の溝3は、シールフィンの軸方向変位を支持するだけでよく、シールフィンの蒸気力による軸方向曲げに対する剛性を確保するために溝3の深さを深くする必要が無くなり、溝3の深さを浅くすることができる。
【0072】
さらに、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Bによれば、コーキングピースは不要になり、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の信頼性が低下することはない。
【0073】
さらに、ロータ2の軸径が大きく複列シールフィン6が大型化する場合に、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、複列シールフィン6間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0074】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Bでは、複列シールフィン6の接合部6dの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、複列シールフィン6に作用する遠心力ΔFsに抗して複列シールフィン6を支持する接合部6dの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0075】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Bは、シールフィンの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0076】
[第4の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第4実施形態について、図6を参照して説明する。
【0077】
図6は、本発明の第4実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図である。
【0078】
この蒸気タービンシール装置1Cにおいて第3実施形態の蒸気タービンシール装置1Bと同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0079】
図6に示すように、蒸気タービンシール装置1Cは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成された複数のフィンを有する複列シールフィン6とから構成される。
【0080】
複列シールフィン6はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。また、複列シールフィン6は、この切り欠きの端部とロータ2の溝3とがロータ2の軸方向と周方向とに溶接され、接合部6eが形成されて一体的な円環となる。なお、接合方法は溶接に限られるものではなく、融接、圧接、ろう接などの冶金的接合方法を採用できる。
【0081】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Cによれば、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。なお、複列シールフィン6がロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部6eが形成されることで、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。
【0082】
本実施形態に係る複列シールフィン6の接合部6eは、複列シールフィン6の切り欠きの端部どうしを接合するのではなく、ロータ2の溝3に複列シールフィン6の切り欠きの端部をロータ周方向とロータ軸方向とに溶接して形成される。複列シールフィン6とロータ1の溝3との接合を複列シールフィン6の切り欠きの端部で行うことによって複列シールフィン6に作用する遠心力Fsに対しては、切れ目のない環状のシールフィンと同様の効果が得られるとともに、接合部6eの領域を増すことができるので、複列シールフィン6の切り欠きの端部の接合部6eの強度を高くできる。
【0083】
蒸気タービンのタービン効率を向上させるため、蒸気タービンシール装置1Cは、ロータ2の軸方向に多数列のシールフィンが設けられる。蒸気タービンシール装置1Cでは、ロータ2の溝3に複列シールフィン6の切り欠きの端部をロータ周方向とロータ軸方向とに溶接して接合されるため、溶接施工を行うトーチや電極などの接合装置の作業空間を確保し易く、また溶接ビードを研磨する必要がないので狭い範囲に多数のシールフィンを設け易い。
【0084】
また、複列シールフィン6は、その断面形状がU字状に形成されるため、蒸気力による軸方向曲げに対する剛性が向上する。したがって、ロータ2の溝3は、シールフィンの軸方向変位を支持するだけでよく、シールフィンの蒸気力による軸方向曲げに対する剛性を確保するために溝3の深さを深くする必要が無くなり、溝3の深さを浅くすることができる。
【0085】
さらに、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Cによれば、コーキングピースは不要になり、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の信頼性が低下することはない。
【0086】
さらにまた、ロータ2の軸径が大きく複列シールフィン6が大型化する場合に、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、複列シールフィン6間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0087】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Cでは、複列シールフィン6の接合部6eの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、複列シールフィン6に作用する遠心力ΔFsに抗して複列シールフィン6を支持する接合部6eの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0088】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Cは、シールフィンの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0089】
[第5の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第5実施形態について、図7を参照して説明する。
【0090】
図7(A)は本発明の第5実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は本発明の第5実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ周方向の部分的な断面図である。
【0091】
この蒸気タービンシール装置1Dにおいて第3実施形態の蒸気タービンシール装置1Bと同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0092】
図7(A)、(B)に示すように、蒸気タービンシール装置1Dは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成された複数のフィンを有する複列シールフィン6と、複列シールフィン6に形成された切り欠き部が接合される結合基部8と、溝3に交差させてロータ2に形成され、結合基部8が係止されるダブデール結合溝9とから構成される。
【0093】
複列シールフィン6はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。また、複列シールフィン6は、この切り欠きの端部の底部6cと結合基部8とが溶接され、接合部6fが形成されて一体的な円環となる。なお、接合方法は溶接に限られるものではなく、融接、圧接、ろう接などの冶金的接合方法を採用できる。複列シールフィン6の切り欠き部は、フィン6a、6bがロータ径方向外側に向かって広がる開先形状に形成され、溶接作業の容易化が図られる。
【0094】
結合基部8は、周方向断面視でフック部が設けられた楔形に形成され、複列シールフィン6に作用する遠心力によってダブデール結合溝9から外れることがない。結合基部8によって複列シールフィン6の溶接施工時に、ロータ2の本体に熱影響部や溶融部が生じない。
【0095】
ダブデール結合溝9は、ロータ2の軸方向断面視で楔形の溝であり、複列シールフィン6の切り欠き部に接合された結合基部8に対応させて、ロータ2の表面のロータ軸方向に形成される。
【0096】
なお、複数の複列シールフィン6に亘ってロータ軸方向にダブデール結合溝9を形成し、ロータ軸方向に長尺な結合基部8を設けて、1つの結合基部8に複数の複列シールフィン6を接合することが可能である。
【0097】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Dによれば、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。なお、複列シールフィン6がロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部6fが形成されることで、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。
【0098】
また、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Dによれば、結合基部8によって複列シールフィン6の溶接施工時にロータ2に生じる熱影響を最小限に抑えることができる。また、ロータ2には溶接部が無いため経年後の複列シールフィン6の交換を容易にできる。
【0099】
蒸気タービンのタービン効率を向上させるため、蒸気タービンシール装置1Dは、ロータ2の軸方向に多数列のシールフィンが設けられる。蒸気タービンシール装置1Dでは、ロータ2の溝3に複列シールフィン6の切り欠きの端部をロータ周方向とロータ軸方向とに溶接して接合されるため、溶接施工を行うトーチや電極などの接合装置の作業空間を確保し易く、また溶接ビードを研磨する必要がないので狭い範囲に多数のシールフィンを設け易い。
【0100】
また、複列シールフィン6は、その断面形状がU字状に形成されるため、蒸気力による軸方向曲げに対する剛性が向上する。したがって、ロータ2の溝3は、シールフィンの軸方向変位を支持するだけでよく、シールフィンの蒸気力による軸方向曲げに対する剛性を確保するために溝3の深さを深くする必要が無くなり、溝3の深さを浅くすることができる。
【0101】
さらに、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Dによれば、コーキングピースは不要になり、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の信頼性が低下することはない。
【0102】
さらにまた、ロータ2の軸径が大きく複列シールフィン6が大型化する場合に、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、複列シールフィン6間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0103】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Dでは、複列シールフィン6の接合部6fの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、複列シールフィン6に作用する遠心力ΔFsに抗して複列シールフィン6を支持する接合部6fの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0104】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Dは、シールフィンの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0105】
[第6の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第6実施形態について、図8を参照して説明する。
【0106】
図8は、本発明の第6実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図である。
【0107】
この蒸気タービンシール装置1Eにおいて第1実施形態の蒸気タービンシール装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0108】
図8に示すように、蒸気タービンシール装置1Eは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成されたシールフィン4Bとから構成される。
【0109】
シールフィン4Bはロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。
【0110】
シールフィン4Bの切り欠き部の端部には、切り欠きの一方から他方に向かって結合部4hが延設され、切り欠きの他方には結合部12eがロータ軸方向に重ねられる。結合部4hと、結合部4hに重ねあわされた切り欠きの他方の端部とは、連通されたリベット孔4iを有し、リベット孔4iにリベット10がかしめられて接合部4jが形成される。すなわち、シールフィン4Bは結合部4hと、切り欠きの他方とがリベット10によって接合されて一体的な円環となる。シールフィン4Bは、例えば3個のリベット10によって結合される。なお、接合方法はリベットに限られるものではなく、ボルト、ナット結合などの機械的接合方法を採用できる。
【0111】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Eによれば、熱影響が生じる溶接などの冶金的結合方法ではなく、リベットのような機械的結合方法によってシールフィン4Bは切れ目のない環状構造物となる。なお、シールフィン4Bがロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部4jが形成されることで、シールフィン4Bは切れ目のない環状構造物となる。
【0112】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Eによれば、シールフィン4Bを容易に形成することが可能である。また、コーキングピースが不要となり、シールフィン4Bに発生するフープ力によってシールフィン4Bが支持される。
【0113】
また、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Eによれば、コーキングピースによるシールフィン4Bの支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによるシールフィン4Bの支持部の信頼性が低下することはない。
【0114】
さらに、ロータ2の軸径が大きくシールフィン4Bが大型化する場合に、コーキングピースによるシールフィン4Bの支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、シールフィン4B間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0115】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Eでは、シールフィン4Bの接合部4jの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、シールフィン4Bに働く遠心力ΔFsに抗してシールフィン4Bを支持する接合部4jの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0116】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Eは、シールフィン4Bの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【0117】
[第7の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンシール装置の第7実施形態について、図9を参照して説明する。
【0118】
図9(A)は、本発明の第7実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は、本発明の第7実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ周方向の部分的な断面図である。
【0119】
この蒸気タービンシール装置1Fにおいて第1実施形態の蒸気タービンシール装置1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0120】
図9(A)、(B)に示すように、蒸気タービンシール装置1Fは、ロータ2のロータグランド部に設けられた溝3と、溝3に嵌め込まれ、ロータ2の半径方向外側に突出して形成された複数のフィンを有する複列シールフィン6と、複列シールフィン6に形成された切り欠き部が接合される結合基部8Aと、溝3に沿ってロータ2に形成され、結合基部8が収容される逃げ溝7Aとから構成される。
【0121】
複列シールフィン6はロータ2の周方向に延びた環状に形成され、溝3に嵌め込むための切り欠きを有する。また、複列シールフィン6は、この切り欠きの端部の底部6cと、結合基部8Aとが接合されて一体的な円環となる。
【0122】
複列シールフィン6の切り欠き端部の底部6cには、結合基部8Aが重ねられる。底部6cと結合基部8とは、連通されたリベット孔6g、8aを有し、リベット孔6g、8aにリベット10がかしめられて接合部6hが形成される。すなわち、複列シールフィン6は底部6cと、結合基部8Aとがリベット10によって接合されて一体的な円環となる。複列シールフィン6は、例えば4個のリベット10によって結合される。なお、接合方法はリベットに限られるものではなく、ボルト、ナット結合などの機械的接合方法を採用できる。
【0123】
ロータ2の表面には、複列シールフィン6に結合された結合基部8Aに対応させて、逃げ溝7Aが設けられる。逃げ溝7Aは、複列シールフィン6を結合する結合基部8A、および、複列シールフィン6を結合するリベット10の頭を収容する空間を確保する。
【0124】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Fによれば、熱影響が生じる溶接などの冶金的結合方法ではなく、リベットのような機械的結合方法によって複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。なお、複列シールフィン6がロータ2の周方向に延びた複数の弧状部材によって形成される場合であっても、それぞれの弧状部材の間に接合部6hが形成されることで、複列シールフィン6は切れ目のない環状構造物となる。
【0125】
また、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Fによれば、結合基部8Aによって複列シールフィン6が機械的に接合されるので、ロータ2には溶接部が無い。また、経年後の複列シールフィン6の交換を容易にできる。
【0126】
蒸気タービンのタービン効率を向上させるため、蒸気タービンシール装置1Fは、ロータ2の軸方向に多数列のシールフィンが設けられる。蒸気タービンシール装置1Fでは、ロータ2の溝3に複列シールフィン6の切り欠きの端部を結合基部8Aによって機械的に接合されるため、接合工具の作業空間を確保し易く、また溶接ビードを研磨する必要がないので狭い範囲に多数のシールフィンを設け易い。
【0127】
また、複列シールフィン6は、その断面形状がU字状に形成されるため、蒸気力による軸方向曲げに対する剛性が向上する。したがって、ロータ2の溝3は、シールフィンの軸方向変位を支持するだけでよく、シールフィンの蒸気力による軸方向曲げに対する剛性を確保するために溝3の深さを深くする必要が無くなり、溝3の深さを浅くすることができる。
【0128】
さらに、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Fによれば、コーキングピースは不要になり、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度を確保する必要がなく、高い強度を有するコーキング材を必要としない。したがって、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の信頼性が低下することはない。
【0129】
さらにまた、ロータ2の軸径が大きく複列シールフィン6が大型化する場合に、コーキングピースによる複列シールフィン6の支持部の強度、信頼性を保つために、コーキング材の寸法を大きくする必要がない。したがって、複列シールフィン6間のロータ軸方向の間隔を大きく開ける必要がなくなり、軸シール機構としての性能を確実に確保できる。
【0130】
他方、蒸気タービンの性能を高めるため、蒸気温度の高温化、タービンの大型化を実現する必要性があるが、本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Fでは、複列シールフィン6の接合部6hの強度、信頼性を確保することが容易であり、高温下での運転中、複列シールフィン6に作用する遠心力ΔFsに抗して複列シールフィン6を支持する接合部6hの強度、信頼性を確保することが可能である。
【0131】
本実施形態に係る蒸気タービンシール装置1Fは、シールフィンの支持部の強度、信頼性に優れ、高温化大型蒸気タービンに適用が可能な蒸気タービンシール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に切り欠いて示した鳥瞰図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に切り欠いて示した鳥瞰図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図。
【図5】(A)は本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ軸方向の部分的な断面図。
【図6】本発明の第4実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図。
【図7】(A)は本発明の第5実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は本発明の第5実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ周方向の部分的な断面図。
【図8】本発明の第6実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図。
【図9】(A)は本発明の第7実施形態に係る蒸気タービンシール装置を部分的に示した鳥瞰図であり、(B)は本発明の第7実施形態に係る蒸気タービンシール装置のロータ周方向の部分的な断面図。
【図10】従来のラビリンスシールを用いた軸シール機構の模式的な縦断面図。
【図11】従来の蒸気タービンシール装置の部分的な縦断面図。
【図12】従来の蒸気タービンシール装置を構成するロータグランド部の部分的な縦断面図。
【図13】従来の蒸気タービンシール装置を構成するシールフィンの斜視図。
【図14】(A)、(B)は、従来の蒸気タービンシール装置に働く力を説明する図。
【符号の説明】
【0133】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F 蒸気タービンシール装置
2 ロータ
3 溝
4、4A、4B シールフィン
4a、4b 結合凸部
4c 接合部
4d フィン
4e 底部
4f 結合凸部
4g 結合凹部
4h 結合部
4i リベット孔
4j 接合部
5 コーキングピース
6 複列シールフィン
6a ハイ側フィン
6b ロー側フィン
6c 底部
6d 接合部
6e 接合部
6f 接合部
6g リベット孔
6h 接合部
7 逃げ溝
8、8A 結合基部
8a リベット孔
9 ダブデール結合溝
10 リベット
20 従来のラビリンスシール
21 ケーシング
22 回転軸
23 ラビリンスシール絞り片
30 従来の蒸気タービンシール装置
31 ロータ
32 溝
33 シールフィン
34 コーキングピース
35 係止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの表面の周方向に設けられた溝に、シールフィンを嵌め込んで、前記ロータと静止部との間の蒸気をシールする蒸気タービンシール装置において、
前記シールフィンは、前記シールフィンを前記溝に嵌め込むために設けられた切り欠き端部の相互間を接合する接合部が形成されて、一体的な円環とされたことを特徴とする蒸気タービンシール装置。
【請求項2】
前記シールフィンは、軸方向にL字状断面またはJ字状断面に形成され、円環の半径方向外側に突出して形成されたフィンと、前記フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成され、
前記シールフィンを前記溝に嵌め込むための切り欠き端部は、前記フィンが周方向に重ね合わされ、
前記接合部は、前記フィンが周方向に重ね合わされた部分が接合されて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項3】
前記シールフィンは、軸方向にU字状断面に形成され、円環の半径方向外側に突出して形成された2枚のフィンと、前記フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項4】
前記シールフィンは、軸方向にU字状断面に形成され、円環の半径方向外側に突出して形成された2枚のフィンと、前記フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成され、
前記接合部は、前記シールフィンを前記溝に嵌め込むための切り欠き端部のフィンと底部と、前記溝とが接合されて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項5】
前記ロータ表面に前記溝に直交させて設けられた軸方向楔形溝に、楔形断面の結合基部が挿入され、
前記接合部は、前記シールフィンを前記溝に嵌め込むための切り欠き端部と前記結合基部とが接合されて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項6】
前記シールフィンは、軸方向にU字状断面に形成され、円環の半径方向外側に突出して形成された2枚のフィンと、前記フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成されたことを特徴とする請求項5に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項7】
前起接合部が形成される前記シールフィンを前記溝に嵌め込むための切り欠き端部に対応させて、前記ロータの表面部に逃げ溝が設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項8】
前記接合部は、機械的に接合されて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項9】
前記シールフィンは、軸方向にU字状断面に形成され、円環の半径方向外側に突出して形成された2枚のフィンと、前記フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成され、
前記接合部は、前記シールフィンを前記溝に嵌め込むための切り欠き端部と結合基部とが機械的に接合されて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項10】
前記接合部は、リベット、ピン、または、ボルトとナットで接合されたことを特徴とする請求項8または9に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項11】
前記シールフィンは、複数の弧状部材によって形成され、前記弧状部材の端部の相互間を接合する接合部が形成されて、一体的な円環とされたことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項1】
ロータの表面の周方向に設けられた溝に、シールフィンを嵌め込んで、前記ロータと静止部との間の蒸気をシールする蒸気タービンシール装置において、
前記シールフィンは、前記シールフィンを前記溝に嵌め込むために設けられた切り欠き端部の相互間を接合する接合部が形成されて、一体的な円環とされたことを特徴とする蒸気タービンシール装置。
【請求項2】
前記シールフィンは、軸方向にL字状断面またはJ字状断面に形成され、円環の半径方向外側に突出して形成されたフィンと、前記フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成され、
前記シールフィンを前記溝に嵌め込むための切り欠き端部は、前記フィンが周方向に重ね合わされ、
前記接合部は、前記フィンが周方向に重ね合わされた部分が接合されて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項3】
前記シールフィンは、軸方向にU字状断面に形成され、円環の半径方向外側に突出して形成された2枚のフィンと、前記フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項4】
前記シールフィンは、軸方向にU字状断面に形成され、円環の半径方向外側に突出して形成された2枚のフィンと、前記フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成され、
前記接合部は、前記シールフィンを前記溝に嵌め込むための切り欠き端部のフィンと底部と、前記溝とが接合されて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項5】
前記ロータ表面に前記溝に直交させて設けられた軸方向楔形溝に、楔形断面の結合基部が挿入され、
前記接合部は、前記シールフィンを前記溝に嵌め込むための切り欠き端部と前記結合基部とが接合されて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項6】
前記シールフィンは、軸方向にU字状断面に形成され、円環の半径方向外側に突出して形成された2枚のフィンと、前記フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成されたことを特徴とする請求項5に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項7】
前起接合部が形成される前記シールフィンを前記溝に嵌め込むための切り欠き端部に対応させて、前記ロータの表面部に逃げ溝が設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項8】
前記接合部は、機械的に接合されて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項9】
前記シールフィンは、軸方向にU字状断面に形成され、円環の半径方向外側に突出して形成された2枚のフィンと、前記フィンの内径に連なり円環の軸方向に突出して形成された底部とから形成され、
前記接合部は、前記シールフィンを前記溝に嵌め込むための切り欠き端部と結合基部とが機械的に接合されて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項10】
前記接合部は、リベット、ピン、または、ボルトとナットで接合されたことを特徴とする請求項8または9に記載の蒸気タービンシール装置。
【請求項11】
前記シールフィンは、複数の弧状部材によって形成され、前記弧状部材の端部の相互間を接合する接合部が形成されて、一体的な円環とされたことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の蒸気タービンシール装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−221982(P2009−221982A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68066(P2008−68066)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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