説明

蒸気タービン用の膨張式シールストリップ

例示的な実施形態では、タービン(10)は、外側ハウジング(22)と、外側ハウジング内に回転可能に支持されたタービンシャフト(12)と、タービンシャフトに沿って設置された複数のタービン段とを含む。各タービン段は、外側ハウジングに取付けられたダイアフラム(20)と、タービンシャフトに固定取付けされた複数のバケット(16)とバケットカバー(52)とを有するロータ(46)と、ダイアフラムの第1の円周方向に延びる溝(56)内に取付けられたパッキンリング(54)とを含む。パッキンリングは、シールシュラウド(58)とシール手段(60)とを含み、タービンシャフトに隣接して配置される。シールシュラウドは、第1の膨張係数を有する第1の材料で製作され、またダイアフラムは、第2の膨張係数を有する第2の材料で製作される。第1及び第2の材料は、第1の温度におけるタービンシャフトとダイアフラムとの間のギャップが第2のより高い温度におけるよりも大きくなるように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には蒸気ガスタービン及びガスタービンのような回転機械に関し、より具体的には、その回転ロータブレードの先端と固定外側ケーシングとの間の間隙を制御するためのシールアセンブリを有する回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン及びガスタービンは、とりわけ発電機に動力を供給するために使用される。蒸気タービンは、一般的に直列流れ状態で、蒸気入口、タービン及び蒸気出口を含む蒸気経路を有する。ガスタービンは、一般的に直列流れ状態で、空気吸入口(又は入口)、圧縮機、燃焼器、タービン及びガス出口(又は排気ノズル)を含むガス経路を有する。圧縮機及びタービンセクションは、少なくとも1つの円周方向列の回転ブレードを含む。回転ブレードの自由端又は先端は、ステータケーシングによって囲まれる。
【0003】
タービンの効率は、ロータブレード先端と周囲ケーシングとの間の半径方向間隙又はギャップ並びにロータとダイアフラムパッキンとの間の間隙に応じてある程度決まる。この間隙が大き過ぎる場合には、蒸気又はガス流のより多くが、ロータブレード先端と周囲ケーシングとの間のギャップ或いはダイアフラムとロータとの間のギャップを通して漏洩し、タービン効率を低下させることになる。間隙が小さ過ぎる場合には、特定のタービン作動状態の間にロータブレード先端が周囲ケーシングに衝突するおそれがある。より高圧の領域からより低圧の領域に向かってガス又は蒸気経路から外へ又はガス又は蒸気経路内へのいずれかに流れるガス又は蒸気の漏洩は、一般的に望ましくない。例えば、タービン又は圧縮機のロータと周囲を囲むタービン又は圧縮機のケーシングとの間におけるガスタービンのタービン又は圧縮機領域でのガス経路の漏洩は、ガスタービンの効率を低下させて燃料コストを増加させることになる。また、タービンのロータと周囲を囲むケーシングとの間における蒸気タービンのタービン領域での蒸気経路の漏洩は、蒸気タービンの効率を低下させて燃料コストを増加させることになる。
【0004】
この間隙が、加速又は減速の期間の間にブレード先端にかかる遠心力の変化により、或いは回転ロータと固定ケーシングとの間の相対的熱膨張により変化することは知られている。異なる遠心力並びにロータ及びケーシングの異なる熱膨張の期間の間に、この間隙変化により、固定ケーシングに対する移動ブレード先端の激しい摩擦が生じる可能性がある。このブレード先端間隙の増大により、効率の低下が生じる。
【0005】
これまでは、ロータ対ケーシングの間隙の変化に対応するために、剛性アブレイダブルシュラウドのような間隙制御装置が使用されてきた。しかしながら、このような間隙を制御するための最適設計を示すものは存在しなかったと思われる。さらに、始動時には後退位置にありまた定常作動時には拡張位置にあることを可能にする可動パッキンを含む能動圧力パッキン装置が、使用されてきた。しかしながら、作動中に可動部品が膠着してパッキンが拡張及び後退位置間で移動することが妨げられる可能性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、タービンを提供し、本タービンは、外側ハウジングと、外側ハウジング内に回転可能に支持されたタービンシャフトと、タービンシャフトに沿って設置されかつ外側ハウジング内部に収容された複数のタービン段とを含む。各タービン段は、外側ハウジング(ケーシング)に取付けられたダイアフラムと、タービンシャフトに固定取付けされたロータと、ダイアフラムの第1の円周方向に延びる溝内に取付けられたパッキンリングとを含む。ロータは、複数のバケットとバケットカバーとを含む。パッキンリングは、シールシュラウドとシール手段とを含む。パッキンリングは、タービンシャフトに隣接して配置されて該タービンシャフトとダイアフラムとの間のギャップ内にシールを形成する。シールシュラウドは、第1の膨張係数を有する第1の材料で製作され、またダイアフラムは、第2の膨張係数を有する第2の材料で製作される。第1及び第2の材料は、第1の温度におけるタービンシャフトとダイアフラムとの間のギャップが第2のより高い温度におけるよりも大きくなるように選択される。
【0007】
別の態様では、蒸気タービン用のダイアフラムを提供する。タービンは、回転シャフトとシャフトに固定取付けされた少なくとも1つのロータとを含み、ロータは、複数のバケットとバケットカバーとを含む。ダイアフラムは、複数のノズルとダイアフラムの第1の円周方向に延びる溝内に取付けられたパッキンリングとを含む。パッキンリングは、シールシュラウドとシール手段とを含み、パッキンリングは、タービンシャフトに隣接して配置されて該タービンシャフトとダイアフラムとの間のギャップ内にシールを形成するように構成される。シールシュラウドは、第1の膨張係数を有する第1の材料で製作され、またダイアフラムは、第2の膨張係数を有する第2の材料で製作される。第1及び第2の材料は、第1の温度におけるタービンシャフトとダイアフラムとの間のギャップが第2のより高い温度におけるよりも大きくなるように選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
蒸気タービンダイアフラム並びに付属のパッキンリング及びスピルストリップ型(こぼれ止め)シールリングを以下で詳細に説明する。ダイアフラム、パッキンリング及びスピルストリップ型シールリングは、これら様々な部品の熱膨張を制御するのを可能にする異なる膨張係数を有する材料で製作される。このことにより、冷間始動時には部品が比較的「遠く」離れることができるが、通常の定常作動時には間隙が自動的に最小値まで縮小して蒸気漏洩を防止しかつタービン効率を増大させるように、タービン内の可動及び固定部品間の間隙を変化させることが可能になる。
【0009】
図面を参照すると、図1は蒸気タービン10の概略断面図である。蒸気タービン10は、該タービン10を貫通しかつ各端部において軸受サポート14によって支持されたシャフト12を含む。複数のタービンブレード段16が、シャフト12に結合される。タービンブレード段16の間には、複数の非回転タービンノズル18が配置される。タービンブレード又はバケット16は、タービンシャフト12に結合されるが、タービンノズル18は、タービンブレード16及びノズル18を囲むハウジング又はシェル22に取付けられた支持部材又はタービンダイアフラム20に結合される。蒸気入口ポート24は、高温蒸気の供給源に接続され、蒸気をタービン10内に導く。主蒸気制御弁26は、タービン10内への蒸気の流れを制御する。蒸気は、ノズル18を通ってブレード16に衝突するように導かれてブレード16をタービンシャフト12と共に回転させる。蒸気の幾らかは、抽気チャンバ30及び32内に流入し、所定量の蒸気が、意図的に種々の給水加熱器(図示せず)に向けて取り出される。残りの蒸気は、全てのタービンブレードを通って流れた後に、蒸気排出ケーシング34及び排出出口36から流出して復水器(図示せず)に導かれ、次いで再加熱器及び/又はボイラ(図示せず)に戻されて蒸気に再変換される。
【0010】
図2は、第1の温度における蒸気タービン10のダイアフラム20の実施形態の概略断面図であり、図3は、第2のより高い温度におけるダイアフラム20の概略断面図である。図2及び図3を参照すると、ダイアフラム20は、外側タービンハウジング22(図1に示す)に結合された外側リング部分38と、外側リング部分38の内側に支持された蒸気配向ノズル18のリング40と、ノズルリング40の内側に収容された内側リング部分42とを含む。タービンバケット16は、それらの内側端部44において、軸線48の周りで回転可能なタービンシャフト12から延びるタービンホイール46に固定される。バケット16の半径方向外側端部50は、該バケット16と共に回転するバケットカバー52を含む。1つの実施形態では、カバー52は、各バケット16の半径方向外側端部50上に配置され、また別の実施形態では、隣接するバケット16が共通のカバー又はバンド52に結合されるのを可能にするようなバンドの形態で2つ又はそれ以上のバケット16の外側端部50上に配置される。
【0011】
パッキンリング54は、ダイアフラムの内側リング部分42の円周方向に延びる溝56内に取付けられる。パッキンリング54は、シールシュラウド58とシール手段60とを含む。パッキンリング54は、タービンシャフト12に隣接して配置されて該タービンシャフト12とダイアフラムの内側リング部分42との間のギャップ62内にシールを形成する。パッキンリングのシール手段60は、シールシュラウド58から延びる複数の軸方向に間隔を置いて配置されたラビリンスシール歯64を含む。パッキンシール手段60はまた、ブラシシール(図示せず)或いは軸方向に間隔を置いて配置されたラビリンスシール歯64とブラシシールとの組合せを含むことができる。
【0012】
シールシュラウド58は、第1の膨張係数を有する第1の材料で製作され、またダイアフラムの内側リング部分42は、第2の膨張係数を有する第2の材料で製作される。第1及び第2の材料は、例えば蒸気タービン10の始動温度である第1の温度におけるタービンシャフト12とダイアフラム20との間のギャップ62が、例えば蒸気タービン10の作動温度である第2のより高い温度におけるよりも大きくなるように選択される。図2は、タービン10の始動温度におけるギャップ62を示し、また図3は、タービン10の作動温度におけるギャップ62を示す。図3に示すように、ギャップ62は、シール手段60がギャップ62を通る蒸気の流れをシールするのを可能にするのに十分なほど小さい。上述の第1及び第2の材料として用いるのに好適な材料の幾つかの非限定的な実例を、表Iに一覧で示す。
【0013】
【表1】

【0014】
例えば、高クロム含量鋼(12Cr、17Cr、27Cr)の熱膨張を、一般的にタービンで使用するCrMoV鋼の熱膨張と比較した場合、熱膨張係数の差は、1.10*10−6インチ/(インチ−°F)である。CrMoV鋼で作製した22インチのパッキン直径のロータにおいては、各100°Fについての直径の増大は、100*7.02*10−6*22=0.0154インチ(391.1μm)として概算することができる。ロータ材料を高クロム含量鋼(12Cr、17Cr、27Cr)に変更することにより、各100°Fについての直径の増大は、100*5.92*10−6×22=0.0130インチ(330.1μm)として概算することができる。従って、温度上昇の各100°Fに対して、半径方向間隙は、約0.0024インチ(61.0μm)だけ変化する。
【0015】
スピルストリップ型シールリング66は、ダイアフラムの外側リング部分38の第2の円周方向に延びる溝67内に取付けられる。スピルストリップ型シールリング66は、シールシュラウド68とシール手段70とを含む。スピルストリップ型シールリング66は、バケットカバー52に隣接して配置されて該バケットカバー52とダイアフラムの外側リング部分38との間のギャップ72内にシールを形成する。スピルストリップ型シールリングのシール手段70は、ブラシシール76とシールシュラウド68から延びる複数の軸方向に間隔を置いて配置されたラビリンスシール歯74とを含む。他の実施形態では、パッキンシール手段70は、ブラシシール76のみ又は軸方向に間隔を置いて配置されたシール歯74のみを含む。
【0016】
スピルストリップ型シールリング66のシールシュラウド68は、第3の膨張係数を有する第3の材料で製作される。第3の材料は、例えば蒸気タービン10の始動温度である第1の温度におけるバケットカバー52とダイアフラム20との間のギャップ72が、例えば蒸気タービン10の作動温度である第2のより高い温度におけるよりも大きくなるように選択される。図2は、タービン10の始動温度におけるギャップ72を示し、また図3は、タービン10の作動温度におけるギャップ70を示す。図3に示すように、ギャップ72は、シール手段70がギャップ72を通る蒸気の流れをシールするのを可能にするのに十分なほど小さい。第3の材料として用いるのに好適な材料の幾つかの非限定的な実例は、先の表Iに一覧で示している。
【0017】
種々の膨張係数を有する様々な材料を使用することができることを理解されたい。ダイアフラム20の膨張係数はパッキンリング54及びスピルストリップ型シールリング66の何れもの膨張係数よりも大きくするか又は小さくすることができ、またパッキンリング54の膨張係数はスピルストリップ型シールリング66の膨張係数に等しくするか、その膨張係数よりも大きくするか、又はその膨張係数よりも小さくすることができることは、当業者には分かるであろう。
【0018】
上述のダイアフラム20は、始動状態の間にタービン部品の摩擦を防止するのに十分なほど大きい組込み間隙を可能にする。上述のダイアフラム20はまた、ダイアフラム20、パッキンリング54及びスピルストリップ型シールリング66の熱膨張を制御することよってその「大きい」間隙を縮小して蒸気漏洩を防止することを可能にする。バケット15の周りの蒸気漏洩を減少させることにより、タービン10の効率が増大する。
【0019】
本発明を様々な特定の実施形態に関して説明してきたが、本発明が特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内の変更で実施することができることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】蒸気タービンの概略断面図。
【図2】第1の温度における、図1に示す蒸気タービンのダイアフラムの1つの実施形態の概略断面図。
【図3】第2のより高い温度における、図1に示す蒸気タービンのダイアフラムの1つの実施形態の概略断面図。
【符号の説明】
【0021】
10 蒸気タービン
12 タービンシャフト
16 タービンバケット
18 タービンノズル
20 ダイアフラム
22 ハウジング若しくはシェル
24 蒸気入口ポート
26 主蒸気制御弁
30,32 抽気チャンバ
34 蒸気排出ケーシング
36 排出出口
38 外側リング部分
40 ノズルリング
42 内側リング部分
44 内側端部
46 タービンホイール
48 軸
50 外側端部
52 バケットカバー
54 パッキンリング
56、67 円周方向に延びる溝
58、68 シールシュラウド
60、70 シール手段
62、72 ギャップ
64、74 ラビリンスシール歯
66 スピルストリップ型シールリング
76 ブラシシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ハウジング(22)と、
前記外側ハウジング内に回転可能に支持されたタービンシャフト(12)と、
前記タービンシャフトに沿って設置されかつ前記外側ハウジング内部に収容された複数のタービン段と、を有するタービンであって、
各タービン段が、
前記外側ハウジングに取付けられかつ複数のノズル(18)を含むダイアフラム(20)と、
前記タービンシャフトに固定取付けされかつ複数のバケット(16)とバケットカバー(52)とを含むロータ(46)と、
前記ダイアフラムの第1の円周方向に延びる溝(56)内に取付けられ、シールシュラウド(58)とシール手段(60)とを含み、かつ前記タービンシャフトに隣接して配置されて該タービンシャフトと前記ダイアフラムとの間のギャップ(62)内にシールを形成するパッキンリング(54)と、
を具備し、
前記シールシュラウドが、第1の膨張係数を有する第1の材料で製作され、前記ダイアフラムが、第2の膨張係数を有する第2の材料で製作され、前記第1及び第2の材料が、第1の温度における前記タービンシャフトとダイアフラムとの間のギャップが第2のより高い温度におけるよりも大きくなるように選択されたことを特徴とするタービン(10)。
【請求項2】
前記ダイアフラム(20)の第2の円周方向に延びる溝(67)内に取付けられたスピルストリップ型シールリングをさらに含み、
前記スピルストリップ型シールリングが、シールシュラウド(68)とシール手段(70)とを含みかつ前記バケットカバー(52)に隣接して配置されて該バケットカバーとダイアフラムとの間のギャップ(72)内にシールを形成し、
前記スピルストリップ型シールリングのシールシュラウドが、第3の膨張係数を有する第3の材料で製作され、前記第3の材料が、第1の温度における前記バケットカバーとダイアフラムとの間のギャップが第2のより高い温度におけるよりも大きくなるように選択されることを特徴とする請求項1記載のタービン(10)。
【請求項3】
前記パッキンリングのシール手段(60)が、ブラシシール及び複数のシール歯の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載のタービン(10)。
【請求項4】
前記スピルストリップ型シールリングのシール手段(70)が、ブラシシール及び複数のシール歯の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2記載のタービン(10)。
【請求項5】
前記第2の材料の膨張係数が、前記第1の材料の膨張係数よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のタービン(10)。
【請求項6】
前記第2の材料の膨張係数が、前記第3の材料の膨張係数よりも大きいことを特徴とする請求項2記載のタービン(10)。
【請求項7】
前記第1の材料の膨張係数が、前記第3の材料の膨張係数よりも大きいか又はそれに等しいことを特徴とする請求項6記載のタービン(10)。
【請求項8】
前記第2の材料の膨張係数が、前記第1の材料の膨張係数よりも小さいことを特徴とする請求項1記載のタービン(10)。
【請求項9】
前記第2の材料の膨張係数が、前記第3の材料の膨張係数よりも小さいことを特徴とする請求項2記載のタービン(10)。
【請求項10】
前記第1の材料の膨張係数が、前記第3の材料の膨張係数よりも大きいか又はそれに等しいことを特徴とする請求項9記載のタービン(10)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−504395(P2007−504395A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525480(P2006−525480)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/028773
【国際公開番号】WO2005/024186
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】