説明

蒸気タービン装置

【課題】蒸気タービンの構成部品等の実機条件下における検証を短期間で行うことができる蒸気タービン装置を提供する。
【解決手段】蒸気タービン装置10は、蒸気発生器20と、高圧タービン30と、蒸気発生器20で発生した蒸気を高圧タービン30に導く主蒸気管100に設けられた主蒸気止め弁40と、高圧タービン30から排気された蒸気により駆動される低圧タービン50と、高圧タービン30のタービン軸に直結された第1の発電機60と、低圧タービン50のタービン軸に直結された第2の発電機61と、復水器70とを備えている。また、高圧タービン30の排気を低圧タービン50に導く配管101には、圧力調整弁80が設けられている。各グランドシール部に蒸気を供給または各グランドシール部の蒸気を回収して復水器70に導くグランドシール系統配管102a〜102kを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン装置に係り、特に、環境負荷低減技術、性能向上技術、信頼性検証技術を総合的に検証できる蒸気タービン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラントに用いられる蒸気発生器(ボイラ)の燃料の代表的なものとして、天然ガス、石油、石炭などが挙げられる。これらの燃料の中で燃料費が比較的安価で、埋蔵量が多い石炭を使用した石炭火力発電が世界的に多く利用されている。しかしながら、昨今、世界的な地球温暖化防止の対策として、発電プラントより発生するCOの削減が必須となってきている。COの排出量を削減する策の一つとして、蒸気タービンをより高性能化し、燃料の消費を削減することが挙げられる。
【0003】
蒸気タービンの性能を向上させるには、プラントを制御する各種弁の圧力損失を低減させることや通路部の内部効率を向上させることが重要となる。内部効率を向上させる方法として、翼列の損失低減、吸排気部の圧力損失の低減、通路部より蒸気が漏洩し動力を減ずるために発生する漏洩損失の低減などが挙げられる。これらの損失低減技術は、各製造メーカにおける、計画、解析、モデル検証試験、実機での検証試験を経て初めて実用化される。しかしながら、これらの技術開発プロセスの中で、モデル検証試験から実用化までには長い期間を要し、開発成果が実機に適用されるのは3〜4年程度の期間を要する。
【0004】
図7は、従来における蒸気タービンの技術開発プロセスの概要を説明するための図である。
【0005】
図7に示すように、計画を立案し、数値解析等によりパラメータを絞り込み、効果のある形状やシステムを選択する。続いて、選択された形状やシステムを用いてモデル検証試験を行う。例えば、蒸気タービンの翼列のモデル検証試験では、風洞試験やスケールモデルタービン試験などが行われる。続いて、モデル検証試験をされた後、実機に搭載され実機での検証が行われる。続いて、実機での検証に基づいて評価を行い、実機に適用可能か、さらに、解析やモデル検証が必要かを判断する。
【0006】
また、従来の大型火力発電用蒸気タービンは、高圧部、中圧部、低圧部のセクションに分かれ、これをタンデム型に直結、または、高圧軸および中圧軸と、低圧軸との2軸に分けたクロスコンパウンド型の2種類に集約されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】蒸気タービン、ターボ機器協会、p47
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来における蒸気タービンの技術開発プロセスにおいて、例えばモデル検証試験では、実蒸気条件での検証ではなく、流体として空気を用いたり、スケールモデルを用いての検証が行われていた。すなわち、実際の条件とは異なる条件で検証されているので、信頼性を有する検証ができないという問題がある。また、モデル検証試験がなされた技術を実機に適用しようと試みる際にも問題が生じる。すなわち通常、実機は顧客の所有する装置であるため、モデル検証試験がなされた技術を実機に搭載するか否かの判断は顧客によることから、モデル検証試験で検証された技術であるということをもって、実機への適用試験が行なえるわけではない。また、顧客の好意により実機への適用試験が許可されたとしても、顧客側の作動条件が優先されるため、実機における検証をするためには検証条件が不十分となったり、各種の計測にも制約がかかったりすることもある。このように、モデル検証試験がなされた技術を比較的短期間のうちに実機において詳細に検討することは現実的に困難であった。
【0009】
また、従来の大型火力発電用蒸気タービンは、高圧部、中圧部、低圧部のセクションに分かれ、これをタンデム型に直結、または、高圧軸および中圧軸と、低圧軸との2軸に分けたクロスコンパウンド型の2種類に集約されている。そのために、性能検証上、各セクションの出力を個々に確認することができず、個々のセクションの性能検証を正確に行うことは困難であった。
【0010】
このように、従来における蒸気タービンの技術開発プロセスにおいては、上記したような様々な制約があるために、新しい技術を本格的に実機に採用するまでには、3〜4年の長い期間を要していた。
【0011】
また、従来においては、新しい技術を実機において検証して、例えば、個々のセクション毎に評価することができる試験設備としての蒸気タービン設備もなかった。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、蒸気タービンの構成部品等の実機条件下における検証を短期間で行うことができる蒸気タービン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、蒸気発生器と、前記蒸気発生器で発生した蒸気により駆動される高圧タービンと、前記蒸気発生器で発生した蒸気を前記高圧タービンに導く主蒸気管に設けられた主蒸気止め弁と、前記高圧タービンから排気された蒸気により駆動される低圧タービンと、前記高圧タービンの排気を前記低圧タービンに導く、減圧弁を備えた配管と、前記高圧タービンのタービン軸に直結された第1の発電機と、前記低圧タービンのタービン軸に直結された第2の発電機と、少なくとも前記低圧タービンからの排気を凝縮する復水器と、各グランドシール部に蒸気を供給または各グランドシール部の蒸気を回収して前記復水器に導くグランドシール系統配管とを具備することを特徴とする蒸気タービン装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蒸気タービン装置によれば、蒸気タービンの構成部品等の実機条件下における検証を短期間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービン装置の系統構成を示した図である。
【図2】本発明に係る第2の実施の形態の蒸気タービン装置の系統構成を示した図である。
【図3】本発明に係る第3の実施の形態の蒸気タービン装置の系統構成を示した図である。
【図4】本発明に係る第4の実施の形態の蒸気タービン装置の系統構成であって、高圧タービンおよび発電機における系統構成を示した図である。
【図5】本発明に係る第4の実施の形態の蒸気タービン装置の系統構成であって、低圧タービンおよび発電機における系統構成を示した図である。
【図6】本発明に係る第5の実施の形態の蒸気タービン装置の系統構成を示した図である。
【図7】従来における蒸気タービンの技術開発プロセスの概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービン装置10の系統構成を示した図である。
【0018】
図1に示すように、蒸気タービン装置10は、蒸気発生器20と、この蒸気発生器20で発生した蒸気により駆動される高圧タービン30と、蒸気発生器20で発生した蒸気を高圧タービン30に導く主蒸気管100に設けられた主蒸気止め弁40と、高圧タービン30から排気された蒸気により駆動される低圧タービン50と、高圧タービン30のタービン軸に直結された第1の発電機60と、低圧タービン50のタービン軸に直結された第2の発電機61と、排気管103を介して導かれた、少なくとも低圧タービン50からの排気を凝縮する復水器70とを備えている。
【0019】
また、高圧タービン30の排気を低圧タービン50に導く配管101には、圧力調整弁80が設けられている。さらに、各グランドシール部に蒸気を供給または各グランドシール部の蒸気を回収して復水器70に導くグランドシール系統配管102a〜102kを備えている。また、主蒸気の一部を配管101に導く配管104が設けられている。さらに、主蒸気の一部を、高圧タービン30のグランドシール部および低圧タービン50の入口側のグランドシール部から回収された蒸気が流れるグランドシール系統配管102kに導く配管105が設けられている。また、グランドシール系統配管102kの他端は、復水器70に連通されている。このグランドシール系統配管102kの復水器70の近傍には、低圧タービン50の入口側のグランドシール部に供給する蒸気の圧力を調整する圧力調整弁81が設けられている。また、復水器70には、水を供給する配管120が設けられている。
【0020】
ここで、圧力調整弁80、81としては、例えば、油圧式または空気式の圧力調整弁などが使用される。
【0021】
蒸気発生器20で発生した蒸気は、主蒸気管100、主蒸気止め弁40を通り、高圧タービン30に供給される。高圧タービン30に供給された蒸気による膨張仕事によりタービンは回転され、第1の発電機60により発電される。高圧タービン30で膨張仕事をした蒸気は、圧力調整弁80、配管101を通り、低圧タービン50に供給される。この圧力調整弁80の開度を調整することで、高圧タービン30の出力(負荷)と低圧タービン50の出力(負荷)を任意に設定することができる。また、主蒸気の一部は、配管104を介して、また、高圧タービン30の入口側のグランドシール部のうち最上流部(すなわち、高圧タービン30に最も近い部分)から回収された蒸気の一部は、グランドシール系統配管102dを介して配管101に導かれ、高圧タービン30から排気される蒸気中に導入される。これによって、高圧タービン30から排気された蒸気、すなわち低圧タービン50に供給される蒸気の条件を調整することができる。
【0022】
低圧タービン50に供給された蒸気による膨張仕事によりタービンは回転され、第2の発電機61により発電される。低圧タービン50で膨張仕事をした蒸気は、排気管103を通り、復水器70に供給される。復水器70に供給された蒸気は、凝縮し復水となる。
【0023】
低圧タービン50の入口側のグランドシール部のうち、最上流部(すなわち、低圧タービン50に最も近い部分)には、配管101から分岐するグランドシール系統配管102fを介してグランド蒸気が供給される。
【0024】
高圧タービン30の入口側のグランドシール部のうち、グランドシール系統配管102dが設けられた位置よりも下流側(中間部)に配置されたグランドシール系統配管102cから回収された蒸気、高圧タービン30の出口側のグランドシール部の上流部に配置されたグランドシール配管系統102eから回収された蒸気、および低圧タービン50の入口側のグランドシール部のうちグランドシール系統配管102fよりも下流側(中間部)に設けられたグランドシール系統配管102iから回収された蒸気は、圧力調整弁81により圧力が調整され、配管105を介して供給された主蒸気の一部とともに、グランドシール系統配管102kを介して低圧タービン50の出口側のグランドシール部のうち最上流部に供給される。また、このグランドシール系統配管102kを流れる蒸気の一部は、復水器70に導かれる。このように、グランドシール部からの蒸気に主蒸気の一部を供給することで、低圧タービン50の出口側のグランドシール部に供給される蒸気の条件を調整することができる。また、グランドシール系統配管102kを介して復水器70に供給された蒸気は、凝縮し復水となる。
【0025】
また、高圧タービン30のグランドシール部のうち最下流部(すなわち、高圧タービン30から最も離れた部分)からグランドシール系統配管102aおよびグランドシール系統配管102bを介して回収された蒸気と、低圧タービン50のグランドシール部のうち最下流部からグランドシール系統配管102gおよびグランドシール系統配管102hを介して回収された蒸気は、グランドシール系統配管102jに合流して復水器70に供給される。復水器70に供給された蒸気は、凝縮し復水となる。
【0026】
上記した復水器70の復水は、配管106を介して、給水ポンプ(図示しない)により、再び蒸気発生器20に導かれる。
【0027】
第1の実施の形態の蒸気タービン装置10によれば、高圧タービン30のタービン軸に第1の発電機60を直結し、低圧タービン50のタービン軸に第2の発電機61を直結することで、高圧タービン30および低圧タービン50それぞれの出力を直接測定することができる。これによって、従来、大型火力発電用蒸気タービン等で測定することができなかった、高圧タービン30、低圧タービン50などの各セクションにおける個々の出力を評価することができる。
【0028】
また、高圧タービン30の排気を低圧タービン50に導く配管101に圧力調整弁80を設け、この圧力調整弁80の開度を調整することで、高圧タービン30の出力(負荷)と低圧タービン50の出力(負荷)を任意に設定することができる。そのため、高圧タービン30、低圧タービン50それぞれの負荷を変化させた部分負荷性能の検証を行うことができる。さらに、高圧タービン30の出力(負荷)と低圧タービン50の出力(負荷)を任意に設定することで、低圧タービン50の湿り度を変化させて性能を検証することができる。
【0029】
また、蒸気タービン装置で検証した技術は、直接、実機に反映できるため、検証や開発に費やす期間を大幅に短縮することができる。
【0030】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明に係る第2の実施の形態の蒸気タービン装置11の系統構成を示した図である。この第2の実施の形態の蒸気タービン装置11は、第1の実施の形態の蒸気タービン装置10における復水器70に大気と連通する配管125を設け、この配管125に真空調節弁82を設けたものである。なお、以下の実施の形態においては、前述した蒸気タービン装置の構成と同一の構成の部分には同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
【0031】
図2に示すように、復水器70には、大気と連通する配管125が設けられている。また、この配管125には、真空調節弁82が設けられている。この真空調節弁82としては、例えば、油圧式または空気式の圧力調整弁などが使用される。
【0032】
この蒸気タービン装置11では、真空調節弁82を開き、大気と連通させ、復水器70内の真空度を調整する。この復水器70内の真空度を調整すると、低圧タービン50の最終段における軸流速度が変化する。
【0033】
上記したように第2の実施の形態の蒸気タービン装置11によれば、復水器70に大気と連通する配管125を設け、この配管125に真空調節弁82を設けることで、復水器70内の真空度を調整し、低圧タービン50の最終段における軸流速度を変化させることができる。これによって、低圧タービン50において、部分負荷時の最終段性能や排気室性能を測定することができる。また、蒸気タービン装置で検証した技術は、直接、実機に反映できるため、検証や開発に費やす期間を大幅に短縮することができる。
【0034】
(第3の実施の形態)
図3は、本発明に係る第3の実施の形態の蒸気タービン装置12の系統構成を示した図である。この第3の実施の形態の蒸気タービン装置12は、第1の実施の形態の蒸気タービン装置10に、所定のグランドシール系統配管および所定の配管に蒸気流量を測定する流量計110a〜110i、復水器70への給水量を測定する水量流量計111およびグランドコンデンサ90を備えたものである。
【0035】
図3に示すように、配管105、104、グランドシール系統配管102c、102d、102e、102f、102i、102kには、それぞれ蒸気流量を測定する流量計110a〜110iが設けられている。また、グランドシール系統配管102kには、低圧タービン50の出口側のグランドシール部に供給される蒸気の流量を測定する流量計110hと、復水器に供給される蒸気の流量を測定する流量計110iが設けられている。
【0036】
これらの流量計110a〜110iは、蒸気の流量に基づく情報を検出するものであり、例えば、差圧式流量計などで構成される。具体的には、流量計110a〜110iとして、Vコンフローメータ(東京計装社製)などが使用される。なお、流量計110a〜110iは、これに限定されるものではなく、蒸気の流量に基づく情報を検出することができ、その検出情報に基づいて蒸気の流量が得られるものであればよい。例えば、流量計110a〜110iとして、用途に応じて、しぼり流量計、フロート流量計、タービン流量計などを使用してもよい。
【0037】
また、復水器70へ水を供給する配管120には、給水量を測定する水量流量計111が設けられている。この水量流量計111は、給水される水の流量に基づく情報を検出するものであり、例えば、差圧式流量計などで構成される。具体的には、水量流量計111として、Vコンフローメータ(東京計装社製)などが使用される。
【0038】
また、復水器70から蒸気発生器20に復水を導く配管106には、復水の流量を測定する復水流量計112が設けられている。復水流量計112は、復水の流量に基づく情報を検出するものであり、例えば、オリフィス流量計などの差圧式流量計などで構成される。
【0039】
なお、水量流量計111や復水流量計112は、上記したものに限定されるものではなく、それぞれの流量に基づく情報を検出することができ、その検出情報に基づいてそれぞれの流量が得られるものであればよい。
【0040】
また、グランドシール系統配管102jには、高圧タービン30のグランドシール部および低圧タービン50のグランドシール部から回収された蒸気を凝縮して復水とするグランドコンデンサ90が設けられている。また、グランドコンデンサ90には、復水量を測定するためのレベルメータ90aが設けられている。
【0041】
上記した構成を備える第3の実施の形態の蒸気タービン装置12において、グランドシール系統配管102kに導入される、高圧タービン30のグランドシール部および低圧タービン50の入口側のグランドシール部から回収された蒸気の流量は、それぞれ流量計110c、110e、110gで測定される。また、グランドシール系統配管102kに導入される主蒸気の流量は、流量計110aで測定される。また、グランドシール系統配管102kを介して、低圧タービン50の出口側のグランドシール部に供給される蒸気の流量は、流量計110hで測定され、復水器に供給される蒸気の流量は、流量計110iで測定される。
【0042】
また、高圧タービン30のグランドシール部から回収され、配管101に導入される蒸気の流量は、流量計110dで測定される。配管101に導入される主蒸気の流量は、流量計110bで測定される。また、この配管101から導出され、低圧タービン50の入口側のグランドシール部に供給される蒸気の流量は、流量計110fで測定される。
【0043】
また、高圧タービン30のグランドシール部および低圧タービン50のグランドシール部から回収された蒸気は、グランドシール系統配管102jを介してグランドコンデンサ90に導入される。グランドコンデンサ90に供給された蒸気は、凝縮し復水となる。この際、空気は外部に排出される。凝縮した復水は、グランドコンデンサ90内で一旦保留され、保留時間とレベルメータ90aの変化により復水量の変化を測定し、それに基づいて蒸気の流量を得る。保留された復水は、所定量になると、グランドシール系統配管102jを介して復水器70へ導出される。
【0044】
また、復水器70から蒸気発生器20に供給される復水の流量は、復水流量計112で測定される。
【0045】
このようにして、高圧タービン30のグランドシール部および低圧タービン50のグランドシール部における蒸気の入出流量を測定することができる。
【0046】
上記したように第3の実施の形態の蒸気タービン装置12によれば、所定のグランドシール系統配管および所定の配管に蒸気流量を測定する流量計を設けることで、従来の大型火力発電用蒸気タービンでは測定することができなかった、例えば、高圧タービン30のグランドシール部および低圧タービン50のグランドシール部における蒸気の入出流量を正確に把握することができる。これにより、タービン性能の測定精度を向上させることができる。また、蒸気タービン装置で検証した技術は、直接、実機に反映できるため、検証や開発に費やす期間を大幅に短縮することができる。
【0047】
なお、第3の実施の形態の蒸気タービン装置12に、第2の実施の形態の蒸気タービン装置11と同様に、復水器70に大気と連通する配管125を設け、この配管125に真空調節弁82を設けてもよい。これによって、上記効果に加え、第2の実施の形態の蒸気タービン装置11と同様の効果を得ることができる。
【0048】
(第4の実施の形態)
図4は、本発明に係る第4の実施の形態の蒸気タービン装置13の系統構成であって、高圧タービン30および発電機60における系統構成を示した図である。図5は、本発明に係る第4の実施の形態の蒸気タービン装置13の系統構成であって、低圧タービン50および発電機61における系統構成を示した図である。なお、本系統構成の構成は、前述した第1の実施から第3の実施の形態の蒸気タービン装置、および後述する第5の実施の形態の蒸気タービン装置のいずれの系統構成にも備えることができる。
【0049】
この第4の実施の形態の蒸気タービン装置13は、図4に示すように、高圧タービン30および発電機60におけるスラスト軸受130、ラジアル軸受131a〜131dに導入される潤滑油の流量を測定する流量計140a〜140eを備えている。また、蒸気タービン装置13は、図5に示すように、低圧タービン50および発電機61におけるスラスト軸受150、ラジアル軸受151a〜151dに導入される潤滑油の流量を測定する流量計160a〜160eを備えている。なお、ここでは、軸受に導入される潤滑油の流量を測定するように流量計を備えているが、軸受から排出される潤滑油の流量を測定するように流量計を備えてもよい。
【0050】
また、第4の実施の形態の蒸気タービン装置13は、図示していないが、これらの軸受に導入される潤滑油の温度、およびこれらの軸受から排出される潤滑油の温度を測定する温度センサを備えている。
【0051】
潤滑油の流量を測定する流量計140a〜140e、160a〜160eは、潤滑油の流量に基づく情報を検出するものであり、例えば、差圧式流量計などで構成される。具体的には、流量計140a〜140e、160a〜160eとして、Vコンフローメータ(東京計装社製)などが使用される。なお、流量計140a〜140e、160a〜160eは、これに限定されるものではなく、潤滑油の流量に基づく情報を検出することができ、その検出情報に基づいて潤滑油の流量が得られるものであればよい。
【0052】
潤滑油の温度を測定する温度センサは、潤滑油の温度に基づく情報を検出するものであり、例えば、熱電対で構成される。なお、潤滑油に接触させて温度を検知する温度センサを使用する場合には、潤滑油の影響を受けない耐油性のものを使用することが好ましい。
【0053】
上記したように、潤滑油の流量および温度を測定し、その結果に基づいて、軸受における回転による摩擦損失、すなわち軸受における機械損失を算出することができる。具体的には、潤滑油が軸受を通過することで与えられた熱量に基づいて、軸受における摩擦損失、すなわち軸受における機械損失を算出する。
【0054】
上記したように第4の実施の形態の蒸気タービン装置13によれば、軸受に導入される潤滑油の流量を測定する流量計、および潤滑油の温度を測定する温度センサを設けることで、各軸受における摩擦損失、すなわち各軸受における機械損失を算出することができる。これによって、タービン性能を正確に検証することができとともに、軸受の性能検証を容易にかつ正確に行うことができる。また、蒸気タービン装置で検証した技術は、直接、実機に反映できるため、検証や開発に費やす期間を大幅に短縮することができる。
【0055】
(第5の実施の形態)
図6は、本発明に係る第5の実施の形態の蒸気タービン装置14の系統構成を示した図である。この第5の実施の形態の蒸気タービン装置14は、第1の実施の形態の蒸気タービン装置10に、減圧弁170と減温器180を備えたものである。
【0056】
図6に示すように、減圧弁170と減温器180は、主蒸気止め弁40よりも上流側の主蒸気管に介在するように設けられている。
【0057】
蒸気発生器20で発生した蒸気は、減圧弁170により適正な圧力まで減圧され、減温器180により適正な温度まで下げられ、主蒸気止め弁40を通り、高圧タービン30に供給される。また、高圧タービン30に供給される蒸気の圧力および温度を調整することで、低圧タービン50における湿り度を任意に設定することができる。
【0058】
なお、第5の実施の形態の蒸気タービン装置14は、高圧タービン30に供給される蒸気の圧力および温度を調整することができるので、原子力用の蒸気タービンへの適用試験に用いる蒸気タービン装置として好適である。
【0059】
この第5の実施の形態の蒸気タービン装置14によれば、主蒸気止め弁40の上流側に減圧弁170と減温器180を設けることで、高圧タービン30に供給される蒸気の圧力および温度を適正に調整することができる。また、低圧タービン50における湿り度を任意に設定することができるので、低圧タービン50の湿り度を変化させて性能を検証することができる。また、蒸気タービン装置で検証した技術は、直接、実機に反映できるため、検証や開発に費やす期間を大幅に短縮することができる。
【0060】
なお、第5の実施の形態の蒸気タービン装置14に、第2の実施の形態の蒸気タービン装置11と同様に、復水器70に大気と連通する配管125を設け、この配管125に真空調節弁82を設けてもよい。これによって、上記効果に加え、第2の実施の形態の蒸気タービン装置11と同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、第5の実施の形態の蒸気タービン装置14に、第3の実施の形態の蒸気タービン装置12と同様に、所定のグランドシール系統配管および所定の配管に蒸気流量を測定する流量計を設けてもよい。これによって、上記効果に加え、第3の実施の形態の蒸気タービン装置12と同様の効果を得ることができる。
【0062】
以上、本発明を一実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記した蒸気タービン装置には、各種測定装置を取り付けるための座を適宜設けることができる。例えば、この座に装置内部の流れなどを測定する装置を取り付けることなどができる。
【符号の説明】
【0063】
10、11、12、13、14…蒸気タービン装置、20…蒸気発生器、30…高圧タービン、40…主蒸気止め弁、50…低圧タービン、60…第1の発電機、61…第2の発電機、70…復水器、80、81…圧力調整弁、82…真空調節弁、90…グランドコンデンサ、100…主蒸気管、101、104、105、106、120…配管、102a〜102k…グランドシール系統配管、103…排気管、110a〜110i、140a〜140e、160a〜160e…流量計、111…水量流量計、112…復水流量計、130、150…スラスト軸受、131a〜131d、151a〜151d…ラジアル軸受、170…減圧弁、180…減温器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器と、
前記蒸気発生器で発生した蒸気により駆動される高圧タービンと、
前記蒸気発生器で発生した蒸気を前記高圧タービンに導く主蒸気管に設けられた主蒸気止め弁と、
前記高圧タービンから排気された蒸気により駆動される低圧タービンと、
前記高圧タービンの排気を前記低圧タービンに導く、減圧弁を備えた配管と、
前記高圧タービンのタービン軸に直結された第1の発電機と、
前記低圧タービンのタービン軸に直結された第2の発電機と、
少なくとも前記低圧タービンからの排気を凝縮する復水器と、
各グランドシール部に蒸気を供給または各グランドシール部の蒸気を回収して前記復水器に導くグランドシール系統配管と
を具備することを特徴とする蒸気タービン装置。
【請求項2】
前記復水器に大気と連通する配管が設けられ、前記配管に真空調節弁が設けられていることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン装置。
【請求項3】
前記グランドシール系統配管が、各グランドシール部に供給された蒸気の流量に基づく情報、および各グランドシール部から回収された蒸気の流量に基づく情報を検出する蒸気流量計を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の蒸気タービン装置。
【請求項4】
前記高圧タービンおよび前記低圧タービンにおける軸受部に導入される潤滑油の供給量に基づく情報、または前記軸受部から排出される潤滑油の排出量に基づく情報を検出する油流量計と、
前記高圧タービンおよび前記低圧タービンにおける軸受部に導入される潤滑油の温度に基づく情報、および前記軸受部から排出される潤滑油の温度に基づく情報を検出する油温度計と
をさらに具備することを特徴する請求項1乃至3のいずれか1項記載の蒸気タービン装置。
【請求項5】
前記主気止め弁よりも上流側の前記主蒸気管に、減圧弁と減温器を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の蒸気タービン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−209858(P2010−209858A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58749(P2009−58749)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】