蒸気弁装置およびこれを用いた蒸気タービンの制御方法
【課題】弁振動による不安定挙動を低減させることができる蒸気弁装置を得る。
【解決手段】蒸気入口と蒸気出口を連通する蒸気流通路を有する蒸気弁装置本体12と、蒸気弁装置本体12の蒸気流通路内に配設した環状の弁座22と、弁座22に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって、蒸気の下流側に凹部40を有する制御弁ヘッド18と、18と弁座22とにより流量制御弁17を構成し、タービン回転数の検出値と回転数設定値との速度偏差に基づき回転数制御を行うように18を位置決めする速度制御システム60と、18の凹部20内に移動可能であって22に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッド100と、100と22とにより止め弁19を構成し、前記蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき圧力制御を行うように100を位置決めする圧力制御システム70を備えたもの。
【解決手段】蒸気入口と蒸気出口を連通する蒸気流通路を有する蒸気弁装置本体12と、蒸気弁装置本体12の蒸気流通路内に配設した環状の弁座22と、弁座22に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって、蒸気の下流側に凹部40を有する制御弁ヘッド18と、18と弁座22とにより流量制御弁17を構成し、タービン回転数の検出値と回転数設定値との速度偏差に基づき回転数制御を行うように18を位置決めする速度制御システム60と、18の凹部20内に移動可能であって22に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッド100と、100と22とにより止め弁19を構成し、前記蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき圧力制御を行うように100を位置決めする圧力制御システム70を備えたもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン用入口弁として使用され、流量制御弁及び止め弁を組み合わせた蒸気弁装置、およびこれを用いた蒸気タービンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種従来の蒸気弁装置として、図9(特許文献1の従来例)と、図10(特許文献1の発明)のように構成したものがある。始めに、図9を参照してその一例について説明する。単一の弁座22と関連して所要の機能を果たす2つの上部弁体と、下部弁体を備え、上部弁体は制御弁ヘッド(制御弁体)18であり、下部弁体は止め弁ヘッド(止め弁体)44であり、これらを組合せたものである。ここで、弁座22と制御弁ヘッド18で流量制御弁17を構成し、また弁座22と止め弁ヘッド44で止め弁19を構成している。
【0003】
制御弁ヘッド18は、底部の開口凹部40を有する環状弁要素を備え、制御弁ヘッド18の縁部が制御弁17の閉位置で弁座22に対して着座する。制御弁17は、蒸気入口を通る流量を制御するために、弁座22に対して制御弁ヘッド18を位置決めするための図示しない比例制御装置、例えば、サーボ弁を有する。
【0004】
止め弁ヘッド44は、通常、制御弁ヘッド18内の下部に形成された凹部40内に位置する弁全開位置と蒸気入口の弁座22に座する弁閉位置間で動くように、入口の下方で制御される。その結果、運転中、止め弁19は通常常に全開状態にあり、制御弁17は、制御弁ヘッド18を絞ることによって、タービン部への蒸気流量を制御するために開き加減が調整される。
【0005】
制御弁17が一般的に最大弁体揚程の約50%以下に絞り込まれると、弁内の流れ現象は不安定な状態を引き起こし、その結果、望ましくない振動が発生する。このような振動は、弁または関連配管またはタービンシステムの要素磨耗及び又は疲労破壊を生じる原因ともなりうる。
【0006】
一般的に、制御弁17は、これまでは厳しい運転制御モードでは、つまり弁通路が非常に狭くなるような高圧低流量の非常に低い弁揚程での一定絞り込みでは使用されなかった。組合せ弁は従来絞り込みモードで長期間使用されることはなかったので、この固有の問題は取り扱われていなかった。
【0007】
しかしながら、最近のコンバインドサイクル等の蒸気タービンシステムの運用では、新たに入口圧力制御(制御弁17を絞り込み操作し、当該蒸気弁前の上流側圧力を一定に制御する)が重要な制御対象として加わっている。このような入口圧力制御運転時には、従来よりも長い期間で制御弁17を絞り込み操作することが要求されるが、このような絞り込み運転モード(圧力制御モード)では制御弁17内の流れが不安定になることによる上述の望ましくない振動が発生する。そして、過酷な振動が長時間生じる結果、制御弁17の保守や補修のための休止が頻繁に必要になることが問題となっている。
【0008】
この問題の原因は、制御弁17と弁座22を通りすぎる流路を画成する壁からの蒸気流の分離にあるとの分析がなされており、制御弁17の下流側に発生した渦流により制御弁ヘッド18に掛かる力が変動する結果、制御弁ヘッド18が振動するものと考えられている。
【0009】
図10はこのような課題を解決する発明の一つとして、特許文献1に開示されたものである。これは蒸気流通路を画成する概して環状の弁座22と、制御弁17の下流側に凹部40を有し、弁座22に対して前進及び後退できる制御弁ヘッド18を備える蒸気流通路内の制御弁17と、弁を通る蒸気の流量を選択的に制御するために弁座22に対して選択した位置に制御弁ヘッド18を位置決めするための蒸気弁制御システム(図示せず)と、概して凹部40内にある止め弁ヘッド44及び止め弁位置で弁座22と係合するためのシール面46を有する止め弁19とを備え、前記蒸気弁制御システムが、制御弁17と止め弁19を通り過ぎて実質的に層流を発生させるために制御弁ヘッド18と関連して止め弁ヘッド44を位置決めするように構成されている。
【特許文献1】特表2002―535544「蒸気タービン弁体の振動低減装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、制御弁ヘッド18と止め弁ヘッド44により形成された蒸気通路部の途中には、制御弁ヘッド18と止め弁ヘッド44により構成される大きな空間(制御弁17の凹部40内)と連通する制御弁ヘッド18の内径と止め弁ヘッド44の外径で構成された隙間による開口48が存在するため、連続流れの影響により大きな空間(制御弁17の凹部40内)の内部圧力が不規則に変動し、この大きな空間が共鳴箱となることから、制御弁ヘッド18や止め弁ヘッド44に共鳴や共振を発生するため当初目的とした弁体の振動低減にはあまり効果が無かった。
【0011】
本発明は、これらの問題を解決するものであり、コンバインドサイクル等の蒸気タービンシステムの運用において、流量制御弁および止め弁を組み込んだ組合せ弁を用いながら、弁振動による不安定挙動を低減、具体的には高圧低流量の非常に低い弁揚程での長期絞り込みによる流れの不安定および振動を最小限に抑えるか、又は解消させることができる蒸気弁装置、およびこれを用いた蒸気タービンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る蒸気弁装置は、蒸気発生器からの蒸気をタービンに供給する蒸気供給路に配設するものであって、蒸気入口及び蒸気出口を有し、前記蒸気入口及び前記蒸気出口を連通する蒸気流通路を有する蒸気弁装置本体と、前記蒸気弁装置本体の蒸気流通路内に配設した環状の弁座と、前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって、蒸気の下流側に凹部を有する制御弁ヘッドと、前記タービン回転数の検出値と回転数設定値との速度偏差に基づき前記制御弁ヘッドを位置決めする回転数制御を行う速度制御システムと、前記制御弁ヘッドの凹部内に移動可能であって前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッドと、前記タービンが圧力制御モードで運転される際に、前記制御弁ヘッドを全開とするとともに、前記蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき前記止め弁ヘッドを位置決めする圧力制御を行う圧力制御システムと、を具備したことを特徴とする。
【0013】
また、前記目的を達成するため、本発明の請求項10に係る蒸気タービンの制御方法は、蒸気入口及び蒸気出口と前記蒸気入口及び前記蒸気出口を連通する蒸気流通路を有するとともに蒸気発生器からの蒸気をタービンに供給する蒸気供給路に配設される蒸気弁装置本体と、前記蒸気弁装置本体の蒸気流通路内に配設した環状の弁座と、前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって、蒸気の下流側に凹部を有する制御弁ヘッドと、前記制御弁ヘッドの凹部内に移動可能であって前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッドと、を有する蒸気弁装置を用いた蒸気タービンの制御方法において、前記蒸気タービンが圧力制御モードにて運転される際に、前記制御弁ヘッドを全開位置に固定するとともに、前記蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき前記止め弁ヘッドを位置決めすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蒸気タービンシステムの運用において、流量制御弁および止め弁を組み込んだ組合せ弁を用いながら、弁振動による不安定挙動を低減できる蒸気弁装置、およびこれを用いた蒸気タービンの制御方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の蒸気弁装置の実施形態の全体構成を示す概略構成図である。図2は図1の制御弁17及び止め弁19を拡大して示す図であり、図3は図2の止め弁19を拡大して示す図、図7および図8は蒸気弁制御システム80を説明するための図である。
【0016】
以下、本実施形態の蒸気弁装置について説明するが、初めにその概要について説明する。
【0017】
本実施形態の蒸気弁装置は、図8に示した通り、蒸気発生器1からの蒸気をタービン2に供給する蒸気供給路に配設するものであって、止め弁19と制御弁17を組み合わせてなる。本実施形態の蒸気弁装置を介してタービン2に供給された蒸気は、タービン2およびタービン2に連結された発電機3を回転させて電力を発生し、タービン2からの排気蒸気は復水器4にて凝縮して水に戻される。蒸気弁装置を構成する止め弁19、制御弁17にはそれぞれ、弁を開閉させる油圧シリンダと、この油圧シリンダを動作させるサーボ弁54,28から構成されるアクチュエータが設けられている。
【0018】
蒸気弁装置の止め弁19、制御弁17は前述のサーボ弁54,28にそれぞれ制御信号を送出する蒸気弁制御システム80により制御される。蒸気弁制御システム80は、非常停止システム65や起動システム66、同期併入システム67、負荷制御システム68等その他蒸気タービンの運転や保守に必要なシステムが相互に関連しあうように構成されているが、特に、本実施形態の蒸気弁装置の蒸気弁制御システム80には、制御弁17に作用する速度制御システム60と、止め弁19に作用する圧力制御システム70とを備えたところに特徴を有する。
【0019】
止め弁19と制御弁17が組み合わされた本実施形態の蒸気弁装置は、さらに詳細には図1に示した通り以下のような構成からなる。すなわち、本実施形態に係る蒸気弁装置は、蒸気入口14及び蒸気出口16を有し、蒸気入口14及び蒸気出口16を連通する蒸気流通路を有する蒸気弁装置本体12と、蒸気弁装置本体12の蒸気流通路内に配設した環状の弁座22と、弁座22に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって、蒸気の下流側に凹部40を有する制御弁ヘッド18と、制御弁ヘッド18と弁座22とにより制御弁17を構成し、また制御弁ヘッド18の凹部40内に移動可能であって弁座22に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッド100と、止め弁ヘッド100と弁座22とにより止め弁19を構成している。図1において、制御弁17の上に設けられたアクチュエータは、制御弁ヘッド18を上下動させるために、油圧シリンダ26に流体(作動油)を供給するためのサーボ弁28となっている。シリンダ26のピストンは、クロスヘッド32に結合され、クロスヘッド32はコイルばね36の付勢に抗して制御弁ヘッド18を上昇させるための立軸34に結合されている。蒸気弁制御システム80から急速閉信号を受信してシリンダ26から作動油が放出されるとき、制御弁17を素早く閉じるためにコイルばね36が使用される。
【0020】
また、止め弁ヘッド100は、適当なパッキンを通って油圧シリンダ52まで延びている軸50に取り付けられる。止め弁ヘッド100を弁閉位置に付勢するため、即ち、止め弁19を素早く閉じるために、ばね53が設置される。油圧シリンダ52は、止め弁ヘッド100を上下動させるために油圧シリンダ52に作動油を供給するためのサーボバルブ54を備えている。
【0021】
さらに、蒸気弁制御システム80からの急速閉信号に対応してシリンダ52から油圧流体を放出するための動作の速い放出弁56が設置される。止め弁19の位置を検出して蒸気弁制御システム80に検出した位置を知らせる変換器58が設置される。
【0022】
次に、本実施形態の蒸気弁制御システム80の速度制御システム60と圧力制御システム70について、蒸気弁装置とタービンの運転状態の時間変化を示した図7も参照してさらに詳細に説明する。
【0023】
速度制御システム60は、従来の機能である速度制御機能をそのまま残したものであって、タービン2の回転数の検出値と正常回転数との速度偏差に基づき制御弁ヘッド18を位置決めする。ここで、タービン2の回転数が正常回転数よりも上回った負荷遮断状態(図7では負荷遮断発生と記載している時点)となると、速度制御システム60は、制御弁ヘッド18を開状態[図7では(全開)100%と記載している]から一旦全閉状態[図7では(全閉)0%と記載している]とするような制御信号をサーボ弁28に対して送出する。また、速度制御システム60は、タービン2の回転数が上がり正常回転数を超えタービン動作が破壊的な過速度等によるタービントリップ状態となると、制御弁ヘッド18を開状態から急速閉信号に対応し全閉状態とするような制御信号をサーボ弁28に対して送出する。これにより、制御弁ヘッド18はそれまでの開度から、通常制御弁ヘッド18を全閉する際よりも急速に全閉する。
【0024】
圧力制御システム70は、タービン2の運転モードとして圧力制御運転を選択した場合に動作する制御システムである。すなわち、止め弁ヘッド100は通常の負荷運転では全開位置に保持されているが、タービン2の運転モードとして圧力制御運転が選択された場合、圧力制御システム70が動作し、蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき、止め弁ヘッド100を圧力制御する。この際、圧力制御システム70は、止め弁ヘッド100のみに圧力制御を行わせるため、制御弁ヘッド18を全開位置に移動させる制御信号をサーボ弁28に対して送出する。そして、本実施形態の圧力制御システム70は、この圧力制御時であって、前述の負荷遮断状態では図7に示すように止め弁ヘッド100を圧力制御時の弁開度から全開動作するような制御信号をサーボ弁54に送出する。これにより止め弁ヘッド100は負荷遮断状態となる直前の開度から全開へと開弁を開始する。また、本実施形態の圧力制御システム70は、圧力制御時であって、前述の過速度等によるタービントリップ状態では、止め弁ヘッド100を圧力制御時の弁開度から急速に全閉動作するような制御信号をサーボ弁54に送出する。これにより、止め弁ヘッド100はそれまでの開度から通常止め弁ヘッド100を全閉する際よりも急速に全閉する。
【0025】
なお、本実施形態において、タービン2の運転モードとして圧力制御運転が選択された場合、圧力制御システム70が制御弁ヘッド18を全開位置に移動させる制御信号を送出するとしたが、ここで言う全開は、弁の100%開度でなくとも構わない。すなわちここでの制御弁ヘッド18の「全開」は、止め弁ヘッド100による圧力制御に影響を及ぼさないだけの十分大きな開度(例えば95%開度)に設定することも可能であり、この「全開」位置に制御弁ヘッド18が固定されていればよい。
【0026】
ここで、制御弁17に作用する速度制御システム60及び止め弁19に作用する圧力制御システム70の具体的構成について、図8を参照して説明する。速度制御システム60は、タービン2の回転数を検出するため、タービン2の回転軸に取り付けられた歯車61に対して近接してピックアップを用いた速度検出装置62が設けられており、検出された速度信号、速度制御システム60内にて速度設定値と比較演算され速度設定値との速度偏差が求められる。この求められた速度偏差から制御弁17の弁開度指令が求められ、これが制御弁17のサーボ弁28に与えられるようになっている。
【0027】
止め弁19に作用する圧力制御システム70は、蒸気発生器1とタービン入口の間の蒸気供給路内には圧力トランスミッターを用いた圧力検出装置が設けられており、検出された圧力信号は、圧力制御システム70内にて圧力設定値と比較演算され、圧力設定値との圧力偏差が求められる。この求められた圧力偏差から、止め弁19の弁開度指令が求められ、これが止め弁19のサーボ弁54に与えるようになっている。
【0028】
このように構成することにより、圧力制御運転を選択した場合には、制御弁ヘッド18は全開位置にあり、止め弁19のみが圧力制御のために絞込み動作するので、図2に示すように蒸気通路部の途中には共鳴箱となる大きな空間と連通する制御弁ヘッド18と止め弁ヘッド100の隙間による開口がなくなり、止め弁ヘッド100だけによる実質的な層流が弁座22を通りすぎてできるため、制御弁ヘッド18と止め弁ヘッド100の振動を低減し、弁及びシステムにおける振動とそれに伴う問題を最小限に抑えることが可能となる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、蒸気流通路を画成する概して環状の弁座22と、制御弁ヘッド18の下流側に凹部40を有し、弁座22に対して前進及び後退できる制御弁ヘッド18を備える通路内の制御弁17と、制御弁17を通る蒸気の流量を選択的に制御するために弁座22に対して選択した位置に制御弁ヘッド18を位置決めするための速度制御システム60と、概して制御弁ヘッド18の凹部40内にある止め弁ヘッド100、及び止め弁閉位置で前記弁座22と係合するためのシール面を有する止め弁19とを備え、圧力制御状態(圧力制御モード)にある時、圧力制御システム70が、制御弁ヘッド18が全開位置とするとともに止め弁ヘッド100を弁座22に対して選択した位置に前進及び後退できるよう位置決めし、止め弁19を通る蒸気の流量を制御し、蒸気タービンに蒸気を供給するようになっている。
【0030】
このように、圧力制御状態(圧力制御モード)にて、止め弁ヘッド100と弁座22との間を通る蒸気の流量を制御している時、タービン回転数が正常回転数よりも上昇した場合は、圧力制御(圧力制御モード)を解除し、同時に速度制御システム60にて制御弁17を絞り、蒸気流量を制御していた止め弁19を全開動作させる。さらに止め弁19は、圧力制御(圧力制御モード)の投入時や解除時の過渡時には、決められた速度変化率に基づき目標弁開度に向かってゆっくりと開閉動作するように設定されている。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施形態では、弁座22と、シール面を備えた制御弁ヘッド18を有する制御弁17と、シール面を備えた止め弁ヘッド100を有する止め弁19とを含み、蒸気弁制御システム80が弁座に対する各々ヘッドの接触(前進)及び非接触(後退)の動きを制御する蒸気タービンに蒸気を供給するための弁において、シール面と弁座を通りすぎる渦流を最小限に抑えるか、または解消するために、止め弁ヘッド100は上流側に略凹部20となっており、その略凹部20の先端は常に制御弁ヘッド18の下流側凹部40内部に位置するように構成され、さらに止め弁ヘッド100はその下流側の蒸気通路を構成する底部側に設けられ、縁辺にエッジ101を備えた凹陥部102で形成された改良型流路を採用したものである。この結果、圧力制御状態(圧力制御モード)において不安定流れによる流体振動を低減させることができる。
【0032】
従って、本発明は、コンバインドサイクル等の蒸気タービンシステムの運用において、制御弁および止め弁を組み込んだ組合せ弁を用いながら、高圧低流量の非常に低い弁揚程での長期絞り込みによる流れの不安定および振動を最小限に抑えるか解消するような、蒸気タービンに蒸気を供給するための蒸気弁装置を提供することができる。
【0033】
図2は、圧力制御モードにて運用している状態を示している。ここで制御弁17は全開を保持した状態であり、図示しない蒸気タービン制御システムからの圧力偏差信号に従い止め弁用流体作動シリンダ52に設置されたサーボ弁54により、圧力制御モードで運用する前は全開となっていた流体作動シリンダ52から流体を排出するように動作させ、止め弁19のみを絞り込み動作させたものである。
【0034】
従って、この状態すなわち圧力制御状態(圧力制御モード)における止め弁19と制御弁17を比較すると、止め弁19を通る蒸気の流量が支配的に蒸気タービンに蒸気を供給していることになる。
【0035】
このように、本発明では止め弁19のすべての位置で蒸気出口に向かって弁内に概して層流を形成するように組み合わされるシール面103と止め弁ヘッド100上の表面を通りすぎて入口から出口に向う蒸気の滑らかな層流が止め弁19のみで作られる。従って、制御弁ヘッド18の下面に沿って中空となる大きな凹部40と連通する開口部が存在しないため、凹部40の内部まで圧力変動が伝播することが無く、結果的にこの大きな凹部40の空間が共鳴箱とならないので弁体の振動低減に効果がある。
【0036】
さらに、本実施形態における止め弁ヘッド100は上流側に凹部20を備える構成となっており、その凹部20の先端は常に制御弁ヘッド18の凹部40内に位置しており、止め弁19が絞り込み動作をしても止め弁ヘッド100の凹部20の先端は組合せ弁内部を流れる蒸気に直接さらされることがないように構成されている。
【0037】
この構成は、組合せ弁内部を流れる蒸気流線をマクロ的にみると、止め弁ヘッド100の位置がどこにあっても極端な蒸気通路部形状の変化がないため、組合せ弁内部を流れる蒸気の圧力損失は最小に留めることが可能となり、性能のよい蒸気弁装置を提供することができる。
【0038】
また、止め弁19のみ絞り込み動作をさせることから、止め弁ヘッド100の底部側に止め弁ヘッド100の内部に向って形成され、その縁辺にエッジ101を備えた凹陥部102が構成され、このエッジ101で止め弁ヘッド100の球面に沿って流れる蒸気を途中でカットさせて止め弁ヘッド100の回りの蒸気流れの安定化を確実に確保、維持するようにしている。
【0039】
また、エッジ101は、止め弁ヘッド100と弁座22とで形成する蒸気通路104を流れる蒸気に衝撃波が発生する上流側の位置に設けたものである。さらに、エッジ101は、止め弁ヘッド100と弁座22とで形成する蒸気通路104を流れる蒸気の臨界の位置に設けたものである。
【0040】
また、曲率半径rの弁座22と曲率半径Rの止め弁ヘッド100で構成され、止め弁閉位置で弁座22と係合するためのシール面103を有するようにして形成する蒸気通路104において、止め弁ヘッド100の弁口径(言い換えれば止め弁19の弁座シート径)をDoとした時、エッジ101の直径DiをDi≧0.9Doとし、弁座22の内径Dthを
Dth≧0.8Do の範囲に設定してある。
【0041】
このように、本実施形態に係る蒸気弁装置は、球形状の止め弁ヘッド100の底部側に設けた凹陥部102のエッジ101の位置を、蒸気通路104内での衝撃波が発生する直前の上流側に設定する一方、エッジ101の直径Di、弁座22の内径Dthを実験によって確認した好ましい数値範囲に設定するとともに、止め弁ヘッド100の曲率半径R、弁座22の曲率半径rの寸法も実験によって確認した適正値に設定したので、蒸気通路104を通過する蒸気流れの騒音、振動を防止することができる。
【0042】
このことは発明者らによる実験にて検証されている。この結果、止め弁ヘッド100は高圧低流量の非常に低い弁揚程での長期絞り込みによる流れの不安定および振動を最小限に抑えることが可能となり、止め弁ヘッド100の回りの蒸気流れの安定化を確実に確保、維持することができる。
【0043】
圧力制御システム70では、入り口圧力制御モードに投入されると(圧力制御運転を開始すると)入り口圧力の設定圧力と実入り口圧力の圧力偏差の監視を開始する。ここで、実入り口圧力が設定圧力より低くなった時、入り口圧力を高めるように止め弁19を絞り込み、前記圧力偏差が解消されるまで(信号値としてゼロになるまで)流体作動シリンダ52から流体を排出するように止め弁のサーボ弁54を制御し止め弁19の弁開度を決定する。
【0044】
また逆に、実入口圧力が設定圧力より高くなった時、蒸気タービンに蒸気を飲み込ませて入り口圧力を下げるように止め弁19を開き、前記偏差信号が相殺されるまで流体作動シリンダ52に流体を供給するように止め弁19のサーボ弁54を制御し止め弁19の弁開度を決定する。
【0045】
同時刻において、蒸気タービンの速度制御は制御弁17にて行われているが、コンバインドサイクルプラントの最適な運用手段(すなわち常時全開)からすれば、当該制御弁17は全開状態を保持したままであるが、例えば、タービン回転数が正常回転数よりも上回った負荷遮断状態では、制御弁17は、蒸気入口14と蒸気出口16の間の蒸気流量を絞り始めタービン部への蒸気流量を制御するように動作する。
【0046】
また、万一タービンの回転数が上がり正常回転数を超えタービン動作が破壊的な過速度等によるタービントリップ状態では、サーボ弁(図示せず)は油圧流体を放出して、ばね36は制御弁17を素早く閉じ、蒸気入口14と蒸気出口16の間の弁を閉状態にする。
【0047】
このような、速度制御システム60の速度制御系からの信号にて制御弁17が作動した場合の動きと、圧力制御システム70の圧力制御系からの信号にて止め弁19が作動した場合の相互の動きをまとめると下の表のようになる。
【表1】
【0048】
ここでの特徴は、圧力制御モードにて止め弁19は途中開度にて圧力制御運用中、タービン回転数が正常回転数よりも上回った時は、圧力制御システム70では止め弁19による圧力制御モードを強制的に終了し、途中開度に位置していた止め弁ヘッド100は徐々に全開まで開弁するように動作する。すなわち、圧力制御状態(圧力制御モード)では止め弁19を通る蒸気の流量が支配的に蒸気タービンに蒸気を供給していたが、タービン回転数が正常回転数よりも上回った状態(負荷遮断状態)では、制御弁17にその支配権を移行するものであり、タービン回転数が正常回転数よりも上回った状態(負荷遮断状態)の後に続く一連の揃速、併入、負荷上昇工程をスムーズに運用するに有効な動作である。
【0049】
このような起動過程に要する時間は短時間であり、例え従来技術にて問題となった振動等が発生してもその影響は軽微である。
【0050】
なお、止め弁19の圧力制御(圧力制御モード)の投入時や解除時における開閉動作、すなわち全開から任意制御位置までの絞込みや任意制御位置(途中弁開度位置)から全開までの過渡時の動きは、蒸気タービンの運転(回転数変化や負荷変化)に影響を与えないように圧力制御システム70にて決められた速度変化率、たとえば弁テスト時の開閉時間と同様な速度に基づきゆっくりと作動するように設定されている。
【0051】
ここで、上記までの圧力制御(圧力制御モード)とは、タービン入口圧力を中心に説明してきたが、蒸気タービンに使用される蒸気弁の用途や設置場所は多岐に亙り、その圧力制御対象はタービン入口圧力以外にタービン抽気圧力やタービン背気圧力がある。
【0052】
本発明は、これら圧力制御対象や蒸気弁の用途が変更となっても、単一の弁座と関連して所要の機能を果たす2つの弁体を組み込んだ組合せ弁アセンブリを備えていれば、いかなる条件や形態にも適用可能であることは説明するまでもない。
【0053】
ここで、単一の弁座22と関連して所要の機能を果たす2つの制御弁ヘッド18及び止め弁ヘッド100を組み込んだ組合せ弁において、蒸気タービンの立ち上げ時(起動時)には、止め弁19は先行して全開位置まで開かれる。この場合、止め弁油圧シリンダ52は、止め弁ヘッド100に定格蒸気圧が作用している状態で止め弁19を開くほどの力がないために、制御弁17を開く前に止め弁19は開かれていなければならない。
【0054】
本発明の弁形状思想を使用する蒸気タービンを始動するのに種々の方法が使用される。例えば、蒸気タービンは制御弁17を用いて、始動し、加速し、同期をとり、そして負荷をかけることができる。また他の例では、バイパス系統またはバイパス装置を使用することができる。
【0055】
[本発明の変形例]
次に本発明の実施形態の変形例について、図4と、図5及び図6を参照して説明する。
【0056】
図4は実施形態の第1の変形例を示す要部断面図である。この変形例は、概略前述の実施形態の弁棒(軸)50に副弁ヘッド201を設けた点が異なる。すなわち、止め弁ヘッド(主弁)200を駆動して弁座22に対して接離するための止め弁ヘッド200に組み合わされ固定された弁棒50であって、制御弁ヘッド18側の端部に、止め弁ヘッド200より弁口径が小さい副弁ヘッド201を設けたものである。止め弁ヘッド200の底面側(弁座22と対向する側)には、前述の実施形態と同様に凹陥部204が形成され、また止め弁ヘッド200には副弁ヘッド201用の弁座202及び副弁用の蒸気通路孔203が形成されている。以上述べた点以外は、前述の実施形態と同一である。
【0057】
このように止め弁ヘッド部250に、副弁ヘッド201を設置したことで、以下のような作用効果が得られる。すなわち、止め弁の図示しない油圧シリンダ52にサーボ弁54から流体を供給すると、止め弁ヘッド200が全閉の状態で、先に副弁ヘッド201が開弁するように作動する。副弁ヘッド201が決められた開度に到達すると、引き続き止め弁ヘッド200が弁棒50の動きに伴い開弁するように構成されている。
【0058】
図1に示す本発明の実施形態では、止め弁油圧シリンダ52は、止め弁ヘッド100に定格蒸気圧が作用している状態で止め弁ヘッド100を開くほどの力がないため制御弁17を開く前に止め弁19は開かれていなければならないが、図4に示すように副弁ヘッド201を設置すれば弁口径が止め弁ヘッド200より小さいため定格蒸気圧が作用している状態でも従来の油圧シリンダ52にて十分に開弁することが可能となり、蒸気タービン起動時の運用方法が拡大する。
【0059】
すなわち、図4に示すこの副弁ヘッド201を設置した場合では、通常、蒸気タービンの無負荷時の定格回転数まで副弁ヘッド201にて回転上昇させ、その後制御弁17にて同期、負荷上昇及び又は速度制御を行わせる。制御弁17に制御が切り替わり後は、止め弁19はサーボ弁54の動作により全開位置まで開かれる。なお、たとえ副弁ヘッド201を設置しても止め弁ヘッド200による圧力制御(圧力制御モード)機能はそのまま運用できる。
【0060】
図5は実施形態の第2の変形例を示す要部断面図であり、図6の図5の要部を拡大して示す図である。この変形例は、概略前述の実施形態の止め弁ヘッドの弁座22と対向する側を、平面形状では流線形状にした点が、前述の実施形態とは異なる。具体的には、止め弁ヘッド300は弁座22と接触するためのシール面301を有し、また止め弁ヘッド300は下流側の蒸気通路を構成する底部側に設けられ縁辺にエッジ304を備えた凹陥部302が形成され、かつ止め弁ヘッド300の下流側であって凹陥部302の中央部の凸状部303を形成したものである。これ以外の構成は、前述の実施形態と同一である。
【0061】
このような構成において、凸状部303が形成されない場合には、全開状態の止め弁ヘッド300および制御弁ヘッド18を示すように、止め弁ヘッド300のすべての位置で蒸気出口16に向かって弁内に概して層流を形成するように組み合わされるシール面301と止め弁上の表面を通りすぎて蒸気入口14から蒸気出口16に向う蒸気の滑らかな層流が、止め弁ヘッド300のみで作られる。
【0062】
ところが、止め弁ヘッド300の下流側を延長して凹陥部302の中央の空間に凸状部303が形成されているので、さらに滑らかな層流が連続させ、蒸気が弁シール面301と弁座22間の環状の隙間の中を流れた後に制約のない広い流域に広がって渦流が引き起こされることが無い。
【0063】
このように止め弁ヘッド300の下流側が流線形状になることで、組合せ弁内部を流れる蒸気が整流されるため、騒音や振動を低減できるばかりでなく圧力損失を最小に留めることが可能となり、性能のよい蒸気弁装置を提供することができる。
【0064】
以上説明の本発明は、最も実用的で好ましい実施形態と現在考えられるものに関連して説明してきたが、本発明は、開示した実施形態に限定されるべきではなく、それどころか、添付の特許請求の範囲の技術的思想及び技術的範囲に属する様々な変形形態および均等形態を保護することを意図すると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による蒸気弁装置の実施形態の全体構成を説明するための概略構成図。
【図2】図1の流量制御弁及び止め弁部分を拡大して示す断面図。
【図3】図2における止め弁部分を拡大して示す破断断面図。
【図4】図1の実施形態の第1の変形例を説明するための拡大断面図。
【図5】図1の実施形態の第2の変形例を説明するための拡大断面図。
【図6】図5における止め弁部分を拡大して示す破断断面図。
【図7】本発明の蒸気弁制御システムを説明するための図。
【図8】本発明による圧力制御システムを説明するための図。
【図9】特許文献1に開示された従来の技術を説明するための流量制御弁及び止め弁の概略断面図。
【図10】特許文献1に開示された発明の技術を説明するための流量制御弁及び止め弁の概略断面図。
【符号の説明】
【0066】
1…蒸気発生器、2…タービン、3…発電機、4…復水器、12…蒸気弁装置本体、14…蒸気入口、16…蒸気出口、17…制御弁、18…制御弁ヘッド、19…止め弁、20…凹部、22…弁座、24…アクチュエータ、26…弁用流体作動シリンダ例えば油圧シリンダ、28…サーボ弁、32…クロスヘッド、34…立軸、40…開口凹部、44…止め弁ヘッド、46…シール面、48…開口、
50…弁棒(軸)、52…流体作動シリンダ例えば油圧シリンダ、54…サーボ弁(サーボバルブ)、56…放出弁、58…位置制御変換器、60…速度制御システム、65…非常停止システム、66…起動システム、67…同期併入システム、68…負荷制御システム、70…圧力制御システム、80…蒸気弁制御システム、100…止め弁ヘッド、101…エッジ、102…凹陥部、103…シール面、104…蒸気通路、200…止め弁ヘッド、201…副弁ヘッド、202…弁座、203…蒸気通路孔、204…凹陥部、250…止め弁ヘッド部、300…止め弁ヘッド、301…シール面、302…凹陥部、303…凸状部、304…エッジ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン用入口弁として使用され、流量制御弁及び止め弁を組み合わせた蒸気弁装置、およびこれを用いた蒸気タービンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種従来の蒸気弁装置として、図9(特許文献1の従来例)と、図10(特許文献1の発明)のように構成したものがある。始めに、図9を参照してその一例について説明する。単一の弁座22と関連して所要の機能を果たす2つの上部弁体と、下部弁体を備え、上部弁体は制御弁ヘッド(制御弁体)18であり、下部弁体は止め弁ヘッド(止め弁体)44であり、これらを組合せたものである。ここで、弁座22と制御弁ヘッド18で流量制御弁17を構成し、また弁座22と止め弁ヘッド44で止め弁19を構成している。
【0003】
制御弁ヘッド18は、底部の開口凹部40を有する環状弁要素を備え、制御弁ヘッド18の縁部が制御弁17の閉位置で弁座22に対して着座する。制御弁17は、蒸気入口を通る流量を制御するために、弁座22に対して制御弁ヘッド18を位置決めするための図示しない比例制御装置、例えば、サーボ弁を有する。
【0004】
止め弁ヘッド44は、通常、制御弁ヘッド18内の下部に形成された凹部40内に位置する弁全開位置と蒸気入口の弁座22に座する弁閉位置間で動くように、入口の下方で制御される。その結果、運転中、止め弁19は通常常に全開状態にあり、制御弁17は、制御弁ヘッド18を絞ることによって、タービン部への蒸気流量を制御するために開き加減が調整される。
【0005】
制御弁17が一般的に最大弁体揚程の約50%以下に絞り込まれると、弁内の流れ現象は不安定な状態を引き起こし、その結果、望ましくない振動が発生する。このような振動は、弁または関連配管またはタービンシステムの要素磨耗及び又は疲労破壊を生じる原因ともなりうる。
【0006】
一般的に、制御弁17は、これまでは厳しい運転制御モードでは、つまり弁通路が非常に狭くなるような高圧低流量の非常に低い弁揚程での一定絞り込みでは使用されなかった。組合せ弁は従来絞り込みモードで長期間使用されることはなかったので、この固有の問題は取り扱われていなかった。
【0007】
しかしながら、最近のコンバインドサイクル等の蒸気タービンシステムの運用では、新たに入口圧力制御(制御弁17を絞り込み操作し、当該蒸気弁前の上流側圧力を一定に制御する)が重要な制御対象として加わっている。このような入口圧力制御運転時には、従来よりも長い期間で制御弁17を絞り込み操作することが要求されるが、このような絞り込み運転モード(圧力制御モード)では制御弁17内の流れが不安定になることによる上述の望ましくない振動が発生する。そして、過酷な振動が長時間生じる結果、制御弁17の保守や補修のための休止が頻繁に必要になることが問題となっている。
【0008】
この問題の原因は、制御弁17と弁座22を通りすぎる流路を画成する壁からの蒸気流の分離にあるとの分析がなされており、制御弁17の下流側に発生した渦流により制御弁ヘッド18に掛かる力が変動する結果、制御弁ヘッド18が振動するものと考えられている。
【0009】
図10はこのような課題を解決する発明の一つとして、特許文献1に開示されたものである。これは蒸気流通路を画成する概して環状の弁座22と、制御弁17の下流側に凹部40を有し、弁座22に対して前進及び後退できる制御弁ヘッド18を備える蒸気流通路内の制御弁17と、弁を通る蒸気の流量を選択的に制御するために弁座22に対して選択した位置に制御弁ヘッド18を位置決めするための蒸気弁制御システム(図示せず)と、概して凹部40内にある止め弁ヘッド44及び止め弁位置で弁座22と係合するためのシール面46を有する止め弁19とを備え、前記蒸気弁制御システムが、制御弁17と止め弁19を通り過ぎて実質的に層流を発生させるために制御弁ヘッド18と関連して止め弁ヘッド44を位置決めするように構成されている。
【特許文献1】特表2002―535544「蒸気タービン弁体の振動低減装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、制御弁ヘッド18と止め弁ヘッド44により形成された蒸気通路部の途中には、制御弁ヘッド18と止め弁ヘッド44により構成される大きな空間(制御弁17の凹部40内)と連通する制御弁ヘッド18の内径と止め弁ヘッド44の外径で構成された隙間による開口48が存在するため、連続流れの影響により大きな空間(制御弁17の凹部40内)の内部圧力が不規則に変動し、この大きな空間が共鳴箱となることから、制御弁ヘッド18や止め弁ヘッド44に共鳴や共振を発生するため当初目的とした弁体の振動低減にはあまり効果が無かった。
【0011】
本発明は、これらの問題を解決するものであり、コンバインドサイクル等の蒸気タービンシステムの運用において、流量制御弁および止め弁を組み込んだ組合せ弁を用いながら、弁振動による不安定挙動を低減、具体的には高圧低流量の非常に低い弁揚程での長期絞り込みによる流れの不安定および振動を最小限に抑えるか、又は解消させることができる蒸気弁装置、およびこれを用いた蒸気タービンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る蒸気弁装置は、蒸気発生器からの蒸気をタービンに供給する蒸気供給路に配設するものであって、蒸気入口及び蒸気出口を有し、前記蒸気入口及び前記蒸気出口を連通する蒸気流通路を有する蒸気弁装置本体と、前記蒸気弁装置本体の蒸気流通路内に配設した環状の弁座と、前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって、蒸気の下流側に凹部を有する制御弁ヘッドと、前記タービン回転数の検出値と回転数設定値との速度偏差に基づき前記制御弁ヘッドを位置決めする回転数制御を行う速度制御システムと、前記制御弁ヘッドの凹部内に移動可能であって前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッドと、前記タービンが圧力制御モードで運転される際に、前記制御弁ヘッドを全開とするとともに、前記蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき前記止め弁ヘッドを位置決めする圧力制御を行う圧力制御システムと、を具備したことを特徴とする。
【0013】
また、前記目的を達成するため、本発明の請求項10に係る蒸気タービンの制御方法は、蒸気入口及び蒸気出口と前記蒸気入口及び前記蒸気出口を連通する蒸気流通路を有するとともに蒸気発生器からの蒸気をタービンに供給する蒸気供給路に配設される蒸気弁装置本体と、前記蒸気弁装置本体の蒸気流通路内に配設した環状の弁座と、前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって、蒸気の下流側に凹部を有する制御弁ヘッドと、前記制御弁ヘッドの凹部内に移動可能であって前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッドと、を有する蒸気弁装置を用いた蒸気タービンの制御方法において、前記蒸気タービンが圧力制御モードにて運転される際に、前記制御弁ヘッドを全開位置に固定するとともに、前記蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき前記止め弁ヘッドを位置決めすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蒸気タービンシステムの運用において、流量制御弁および止め弁を組み込んだ組合せ弁を用いながら、弁振動による不安定挙動を低減できる蒸気弁装置、およびこれを用いた蒸気タービンの制御方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の蒸気弁装置の実施形態の全体構成を示す概略構成図である。図2は図1の制御弁17及び止め弁19を拡大して示す図であり、図3は図2の止め弁19を拡大して示す図、図7および図8は蒸気弁制御システム80を説明するための図である。
【0016】
以下、本実施形態の蒸気弁装置について説明するが、初めにその概要について説明する。
【0017】
本実施形態の蒸気弁装置は、図8に示した通り、蒸気発生器1からの蒸気をタービン2に供給する蒸気供給路に配設するものであって、止め弁19と制御弁17を組み合わせてなる。本実施形態の蒸気弁装置を介してタービン2に供給された蒸気は、タービン2およびタービン2に連結された発電機3を回転させて電力を発生し、タービン2からの排気蒸気は復水器4にて凝縮して水に戻される。蒸気弁装置を構成する止め弁19、制御弁17にはそれぞれ、弁を開閉させる油圧シリンダと、この油圧シリンダを動作させるサーボ弁54,28から構成されるアクチュエータが設けられている。
【0018】
蒸気弁装置の止め弁19、制御弁17は前述のサーボ弁54,28にそれぞれ制御信号を送出する蒸気弁制御システム80により制御される。蒸気弁制御システム80は、非常停止システム65や起動システム66、同期併入システム67、負荷制御システム68等その他蒸気タービンの運転や保守に必要なシステムが相互に関連しあうように構成されているが、特に、本実施形態の蒸気弁装置の蒸気弁制御システム80には、制御弁17に作用する速度制御システム60と、止め弁19に作用する圧力制御システム70とを備えたところに特徴を有する。
【0019】
止め弁19と制御弁17が組み合わされた本実施形態の蒸気弁装置は、さらに詳細には図1に示した通り以下のような構成からなる。すなわち、本実施形態に係る蒸気弁装置は、蒸気入口14及び蒸気出口16を有し、蒸気入口14及び蒸気出口16を連通する蒸気流通路を有する蒸気弁装置本体12と、蒸気弁装置本体12の蒸気流通路内に配設した環状の弁座22と、弁座22に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって、蒸気の下流側に凹部40を有する制御弁ヘッド18と、制御弁ヘッド18と弁座22とにより制御弁17を構成し、また制御弁ヘッド18の凹部40内に移動可能であって弁座22に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッド100と、止め弁ヘッド100と弁座22とにより止め弁19を構成している。図1において、制御弁17の上に設けられたアクチュエータは、制御弁ヘッド18を上下動させるために、油圧シリンダ26に流体(作動油)を供給するためのサーボ弁28となっている。シリンダ26のピストンは、クロスヘッド32に結合され、クロスヘッド32はコイルばね36の付勢に抗して制御弁ヘッド18を上昇させるための立軸34に結合されている。蒸気弁制御システム80から急速閉信号を受信してシリンダ26から作動油が放出されるとき、制御弁17を素早く閉じるためにコイルばね36が使用される。
【0020】
また、止め弁ヘッド100は、適当なパッキンを通って油圧シリンダ52まで延びている軸50に取り付けられる。止め弁ヘッド100を弁閉位置に付勢するため、即ち、止め弁19を素早く閉じるために、ばね53が設置される。油圧シリンダ52は、止め弁ヘッド100を上下動させるために油圧シリンダ52に作動油を供給するためのサーボバルブ54を備えている。
【0021】
さらに、蒸気弁制御システム80からの急速閉信号に対応してシリンダ52から油圧流体を放出するための動作の速い放出弁56が設置される。止め弁19の位置を検出して蒸気弁制御システム80に検出した位置を知らせる変換器58が設置される。
【0022】
次に、本実施形態の蒸気弁制御システム80の速度制御システム60と圧力制御システム70について、蒸気弁装置とタービンの運転状態の時間変化を示した図7も参照してさらに詳細に説明する。
【0023】
速度制御システム60は、従来の機能である速度制御機能をそのまま残したものであって、タービン2の回転数の検出値と正常回転数との速度偏差に基づき制御弁ヘッド18を位置決めする。ここで、タービン2の回転数が正常回転数よりも上回った負荷遮断状態(図7では負荷遮断発生と記載している時点)となると、速度制御システム60は、制御弁ヘッド18を開状態[図7では(全開)100%と記載している]から一旦全閉状態[図7では(全閉)0%と記載している]とするような制御信号をサーボ弁28に対して送出する。また、速度制御システム60は、タービン2の回転数が上がり正常回転数を超えタービン動作が破壊的な過速度等によるタービントリップ状態となると、制御弁ヘッド18を開状態から急速閉信号に対応し全閉状態とするような制御信号をサーボ弁28に対して送出する。これにより、制御弁ヘッド18はそれまでの開度から、通常制御弁ヘッド18を全閉する際よりも急速に全閉する。
【0024】
圧力制御システム70は、タービン2の運転モードとして圧力制御運転を選択した場合に動作する制御システムである。すなわち、止め弁ヘッド100は通常の負荷運転では全開位置に保持されているが、タービン2の運転モードとして圧力制御運転が選択された場合、圧力制御システム70が動作し、蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき、止め弁ヘッド100を圧力制御する。この際、圧力制御システム70は、止め弁ヘッド100のみに圧力制御を行わせるため、制御弁ヘッド18を全開位置に移動させる制御信号をサーボ弁28に対して送出する。そして、本実施形態の圧力制御システム70は、この圧力制御時であって、前述の負荷遮断状態では図7に示すように止め弁ヘッド100を圧力制御時の弁開度から全開動作するような制御信号をサーボ弁54に送出する。これにより止め弁ヘッド100は負荷遮断状態となる直前の開度から全開へと開弁を開始する。また、本実施形態の圧力制御システム70は、圧力制御時であって、前述の過速度等によるタービントリップ状態では、止め弁ヘッド100を圧力制御時の弁開度から急速に全閉動作するような制御信号をサーボ弁54に送出する。これにより、止め弁ヘッド100はそれまでの開度から通常止め弁ヘッド100を全閉する際よりも急速に全閉する。
【0025】
なお、本実施形態において、タービン2の運転モードとして圧力制御運転が選択された場合、圧力制御システム70が制御弁ヘッド18を全開位置に移動させる制御信号を送出するとしたが、ここで言う全開は、弁の100%開度でなくとも構わない。すなわちここでの制御弁ヘッド18の「全開」は、止め弁ヘッド100による圧力制御に影響を及ぼさないだけの十分大きな開度(例えば95%開度)に設定することも可能であり、この「全開」位置に制御弁ヘッド18が固定されていればよい。
【0026】
ここで、制御弁17に作用する速度制御システム60及び止め弁19に作用する圧力制御システム70の具体的構成について、図8を参照して説明する。速度制御システム60は、タービン2の回転数を検出するため、タービン2の回転軸に取り付けられた歯車61に対して近接してピックアップを用いた速度検出装置62が設けられており、検出された速度信号、速度制御システム60内にて速度設定値と比較演算され速度設定値との速度偏差が求められる。この求められた速度偏差から制御弁17の弁開度指令が求められ、これが制御弁17のサーボ弁28に与えられるようになっている。
【0027】
止め弁19に作用する圧力制御システム70は、蒸気発生器1とタービン入口の間の蒸気供給路内には圧力トランスミッターを用いた圧力検出装置が設けられており、検出された圧力信号は、圧力制御システム70内にて圧力設定値と比較演算され、圧力設定値との圧力偏差が求められる。この求められた圧力偏差から、止め弁19の弁開度指令が求められ、これが止め弁19のサーボ弁54に与えるようになっている。
【0028】
このように構成することにより、圧力制御運転を選択した場合には、制御弁ヘッド18は全開位置にあり、止め弁19のみが圧力制御のために絞込み動作するので、図2に示すように蒸気通路部の途中には共鳴箱となる大きな空間と連通する制御弁ヘッド18と止め弁ヘッド100の隙間による開口がなくなり、止め弁ヘッド100だけによる実質的な層流が弁座22を通りすぎてできるため、制御弁ヘッド18と止め弁ヘッド100の振動を低減し、弁及びシステムにおける振動とそれに伴う問題を最小限に抑えることが可能となる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、蒸気流通路を画成する概して環状の弁座22と、制御弁ヘッド18の下流側に凹部40を有し、弁座22に対して前進及び後退できる制御弁ヘッド18を備える通路内の制御弁17と、制御弁17を通る蒸気の流量を選択的に制御するために弁座22に対して選択した位置に制御弁ヘッド18を位置決めするための速度制御システム60と、概して制御弁ヘッド18の凹部40内にある止め弁ヘッド100、及び止め弁閉位置で前記弁座22と係合するためのシール面を有する止め弁19とを備え、圧力制御状態(圧力制御モード)にある時、圧力制御システム70が、制御弁ヘッド18が全開位置とするとともに止め弁ヘッド100を弁座22に対して選択した位置に前進及び後退できるよう位置決めし、止め弁19を通る蒸気の流量を制御し、蒸気タービンに蒸気を供給するようになっている。
【0030】
このように、圧力制御状態(圧力制御モード)にて、止め弁ヘッド100と弁座22との間を通る蒸気の流量を制御している時、タービン回転数が正常回転数よりも上昇した場合は、圧力制御(圧力制御モード)を解除し、同時に速度制御システム60にて制御弁17を絞り、蒸気流量を制御していた止め弁19を全開動作させる。さらに止め弁19は、圧力制御(圧力制御モード)の投入時や解除時の過渡時には、決められた速度変化率に基づき目標弁開度に向かってゆっくりと開閉動作するように設定されている。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施形態では、弁座22と、シール面を備えた制御弁ヘッド18を有する制御弁17と、シール面を備えた止め弁ヘッド100を有する止め弁19とを含み、蒸気弁制御システム80が弁座に対する各々ヘッドの接触(前進)及び非接触(後退)の動きを制御する蒸気タービンに蒸気を供給するための弁において、シール面と弁座を通りすぎる渦流を最小限に抑えるか、または解消するために、止め弁ヘッド100は上流側に略凹部20となっており、その略凹部20の先端は常に制御弁ヘッド18の下流側凹部40内部に位置するように構成され、さらに止め弁ヘッド100はその下流側の蒸気通路を構成する底部側に設けられ、縁辺にエッジ101を備えた凹陥部102で形成された改良型流路を採用したものである。この結果、圧力制御状態(圧力制御モード)において不安定流れによる流体振動を低減させることができる。
【0032】
従って、本発明は、コンバインドサイクル等の蒸気タービンシステムの運用において、制御弁および止め弁を組み込んだ組合せ弁を用いながら、高圧低流量の非常に低い弁揚程での長期絞り込みによる流れの不安定および振動を最小限に抑えるか解消するような、蒸気タービンに蒸気を供給するための蒸気弁装置を提供することができる。
【0033】
図2は、圧力制御モードにて運用している状態を示している。ここで制御弁17は全開を保持した状態であり、図示しない蒸気タービン制御システムからの圧力偏差信号に従い止め弁用流体作動シリンダ52に設置されたサーボ弁54により、圧力制御モードで運用する前は全開となっていた流体作動シリンダ52から流体を排出するように動作させ、止め弁19のみを絞り込み動作させたものである。
【0034】
従って、この状態すなわち圧力制御状態(圧力制御モード)における止め弁19と制御弁17を比較すると、止め弁19を通る蒸気の流量が支配的に蒸気タービンに蒸気を供給していることになる。
【0035】
このように、本発明では止め弁19のすべての位置で蒸気出口に向かって弁内に概して層流を形成するように組み合わされるシール面103と止め弁ヘッド100上の表面を通りすぎて入口から出口に向う蒸気の滑らかな層流が止め弁19のみで作られる。従って、制御弁ヘッド18の下面に沿って中空となる大きな凹部40と連通する開口部が存在しないため、凹部40の内部まで圧力変動が伝播することが無く、結果的にこの大きな凹部40の空間が共鳴箱とならないので弁体の振動低減に効果がある。
【0036】
さらに、本実施形態における止め弁ヘッド100は上流側に凹部20を備える構成となっており、その凹部20の先端は常に制御弁ヘッド18の凹部40内に位置しており、止め弁19が絞り込み動作をしても止め弁ヘッド100の凹部20の先端は組合せ弁内部を流れる蒸気に直接さらされることがないように構成されている。
【0037】
この構成は、組合せ弁内部を流れる蒸気流線をマクロ的にみると、止め弁ヘッド100の位置がどこにあっても極端な蒸気通路部形状の変化がないため、組合せ弁内部を流れる蒸気の圧力損失は最小に留めることが可能となり、性能のよい蒸気弁装置を提供することができる。
【0038】
また、止め弁19のみ絞り込み動作をさせることから、止め弁ヘッド100の底部側に止め弁ヘッド100の内部に向って形成され、その縁辺にエッジ101を備えた凹陥部102が構成され、このエッジ101で止め弁ヘッド100の球面に沿って流れる蒸気を途中でカットさせて止め弁ヘッド100の回りの蒸気流れの安定化を確実に確保、維持するようにしている。
【0039】
また、エッジ101は、止め弁ヘッド100と弁座22とで形成する蒸気通路104を流れる蒸気に衝撃波が発生する上流側の位置に設けたものである。さらに、エッジ101は、止め弁ヘッド100と弁座22とで形成する蒸気通路104を流れる蒸気の臨界の位置に設けたものである。
【0040】
また、曲率半径rの弁座22と曲率半径Rの止め弁ヘッド100で構成され、止め弁閉位置で弁座22と係合するためのシール面103を有するようにして形成する蒸気通路104において、止め弁ヘッド100の弁口径(言い換えれば止め弁19の弁座シート径)をDoとした時、エッジ101の直径DiをDi≧0.9Doとし、弁座22の内径Dthを
Dth≧0.8Do の範囲に設定してある。
【0041】
このように、本実施形態に係る蒸気弁装置は、球形状の止め弁ヘッド100の底部側に設けた凹陥部102のエッジ101の位置を、蒸気通路104内での衝撃波が発生する直前の上流側に設定する一方、エッジ101の直径Di、弁座22の内径Dthを実験によって確認した好ましい数値範囲に設定するとともに、止め弁ヘッド100の曲率半径R、弁座22の曲率半径rの寸法も実験によって確認した適正値に設定したので、蒸気通路104を通過する蒸気流れの騒音、振動を防止することができる。
【0042】
このことは発明者らによる実験にて検証されている。この結果、止め弁ヘッド100は高圧低流量の非常に低い弁揚程での長期絞り込みによる流れの不安定および振動を最小限に抑えることが可能となり、止め弁ヘッド100の回りの蒸気流れの安定化を確実に確保、維持することができる。
【0043】
圧力制御システム70では、入り口圧力制御モードに投入されると(圧力制御運転を開始すると)入り口圧力の設定圧力と実入り口圧力の圧力偏差の監視を開始する。ここで、実入り口圧力が設定圧力より低くなった時、入り口圧力を高めるように止め弁19を絞り込み、前記圧力偏差が解消されるまで(信号値としてゼロになるまで)流体作動シリンダ52から流体を排出するように止め弁のサーボ弁54を制御し止め弁19の弁開度を決定する。
【0044】
また逆に、実入口圧力が設定圧力より高くなった時、蒸気タービンに蒸気を飲み込ませて入り口圧力を下げるように止め弁19を開き、前記偏差信号が相殺されるまで流体作動シリンダ52に流体を供給するように止め弁19のサーボ弁54を制御し止め弁19の弁開度を決定する。
【0045】
同時刻において、蒸気タービンの速度制御は制御弁17にて行われているが、コンバインドサイクルプラントの最適な運用手段(すなわち常時全開)からすれば、当該制御弁17は全開状態を保持したままであるが、例えば、タービン回転数が正常回転数よりも上回った負荷遮断状態では、制御弁17は、蒸気入口14と蒸気出口16の間の蒸気流量を絞り始めタービン部への蒸気流量を制御するように動作する。
【0046】
また、万一タービンの回転数が上がり正常回転数を超えタービン動作が破壊的な過速度等によるタービントリップ状態では、サーボ弁(図示せず)は油圧流体を放出して、ばね36は制御弁17を素早く閉じ、蒸気入口14と蒸気出口16の間の弁を閉状態にする。
【0047】
このような、速度制御システム60の速度制御系からの信号にて制御弁17が作動した場合の動きと、圧力制御システム70の圧力制御系からの信号にて止め弁19が作動した場合の相互の動きをまとめると下の表のようになる。
【表1】
【0048】
ここでの特徴は、圧力制御モードにて止め弁19は途中開度にて圧力制御運用中、タービン回転数が正常回転数よりも上回った時は、圧力制御システム70では止め弁19による圧力制御モードを強制的に終了し、途中開度に位置していた止め弁ヘッド100は徐々に全開まで開弁するように動作する。すなわち、圧力制御状態(圧力制御モード)では止め弁19を通る蒸気の流量が支配的に蒸気タービンに蒸気を供給していたが、タービン回転数が正常回転数よりも上回った状態(負荷遮断状態)では、制御弁17にその支配権を移行するものであり、タービン回転数が正常回転数よりも上回った状態(負荷遮断状態)の後に続く一連の揃速、併入、負荷上昇工程をスムーズに運用するに有効な動作である。
【0049】
このような起動過程に要する時間は短時間であり、例え従来技術にて問題となった振動等が発生してもその影響は軽微である。
【0050】
なお、止め弁19の圧力制御(圧力制御モード)の投入時や解除時における開閉動作、すなわち全開から任意制御位置までの絞込みや任意制御位置(途中弁開度位置)から全開までの過渡時の動きは、蒸気タービンの運転(回転数変化や負荷変化)に影響を与えないように圧力制御システム70にて決められた速度変化率、たとえば弁テスト時の開閉時間と同様な速度に基づきゆっくりと作動するように設定されている。
【0051】
ここで、上記までの圧力制御(圧力制御モード)とは、タービン入口圧力を中心に説明してきたが、蒸気タービンに使用される蒸気弁の用途や設置場所は多岐に亙り、その圧力制御対象はタービン入口圧力以外にタービン抽気圧力やタービン背気圧力がある。
【0052】
本発明は、これら圧力制御対象や蒸気弁の用途が変更となっても、単一の弁座と関連して所要の機能を果たす2つの弁体を組み込んだ組合せ弁アセンブリを備えていれば、いかなる条件や形態にも適用可能であることは説明するまでもない。
【0053】
ここで、単一の弁座22と関連して所要の機能を果たす2つの制御弁ヘッド18及び止め弁ヘッド100を組み込んだ組合せ弁において、蒸気タービンの立ち上げ時(起動時)には、止め弁19は先行して全開位置まで開かれる。この場合、止め弁油圧シリンダ52は、止め弁ヘッド100に定格蒸気圧が作用している状態で止め弁19を開くほどの力がないために、制御弁17を開く前に止め弁19は開かれていなければならない。
【0054】
本発明の弁形状思想を使用する蒸気タービンを始動するのに種々の方法が使用される。例えば、蒸気タービンは制御弁17を用いて、始動し、加速し、同期をとり、そして負荷をかけることができる。また他の例では、バイパス系統またはバイパス装置を使用することができる。
【0055】
[本発明の変形例]
次に本発明の実施形態の変形例について、図4と、図5及び図6を参照して説明する。
【0056】
図4は実施形態の第1の変形例を示す要部断面図である。この変形例は、概略前述の実施形態の弁棒(軸)50に副弁ヘッド201を設けた点が異なる。すなわち、止め弁ヘッド(主弁)200を駆動して弁座22に対して接離するための止め弁ヘッド200に組み合わされ固定された弁棒50であって、制御弁ヘッド18側の端部に、止め弁ヘッド200より弁口径が小さい副弁ヘッド201を設けたものである。止め弁ヘッド200の底面側(弁座22と対向する側)には、前述の実施形態と同様に凹陥部204が形成され、また止め弁ヘッド200には副弁ヘッド201用の弁座202及び副弁用の蒸気通路孔203が形成されている。以上述べた点以外は、前述の実施形態と同一である。
【0057】
このように止め弁ヘッド部250に、副弁ヘッド201を設置したことで、以下のような作用効果が得られる。すなわち、止め弁の図示しない油圧シリンダ52にサーボ弁54から流体を供給すると、止め弁ヘッド200が全閉の状態で、先に副弁ヘッド201が開弁するように作動する。副弁ヘッド201が決められた開度に到達すると、引き続き止め弁ヘッド200が弁棒50の動きに伴い開弁するように構成されている。
【0058】
図1に示す本発明の実施形態では、止め弁油圧シリンダ52は、止め弁ヘッド100に定格蒸気圧が作用している状態で止め弁ヘッド100を開くほどの力がないため制御弁17を開く前に止め弁19は開かれていなければならないが、図4に示すように副弁ヘッド201を設置すれば弁口径が止め弁ヘッド200より小さいため定格蒸気圧が作用している状態でも従来の油圧シリンダ52にて十分に開弁することが可能となり、蒸気タービン起動時の運用方法が拡大する。
【0059】
すなわち、図4に示すこの副弁ヘッド201を設置した場合では、通常、蒸気タービンの無負荷時の定格回転数まで副弁ヘッド201にて回転上昇させ、その後制御弁17にて同期、負荷上昇及び又は速度制御を行わせる。制御弁17に制御が切り替わり後は、止め弁19はサーボ弁54の動作により全開位置まで開かれる。なお、たとえ副弁ヘッド201を設置しても止め弁ヘッド200による圧力制御(圧力制御モード)機能はそのまま運用できる。
【0060】
図5は実施形態の第2の変形例を示す要部断面図であり、図6の図5の要部を拡大して示す図である。この変形例は、概略前述の実施形態の止め弁ヘッドの弁座22と対向する側を、平面形状では流線形状にした点が、前述の実施形態とは異なる。具体的には、止め弁ヘッド300は弁座22と接触するためのシール面301を有し、また止め弁ヘッド300は下流側の蒸気通路を構成する底部側に設けられ縁辺にエッジ304を備えた凹陥部302が形成され、かつ止め弁ヘッド300の下流側であって凹陥部302の中央部の凸状部303を形成したものである。これ以外の構成は、前述の実施形態と同一である。
【0061】
このような構成において、凸状部303が形成されない場合には、全開状態の止め弁ヘッド300および制御弁ヘッド18を示すように、止め弁ヘッド300のすべての位置で蒸気出口16に向かって弁内に概して層流を形成するように組み合わされるシール面301と止め弁上の表面を通りすぎて蒸気入口14から蒸気出口16に向う蒸気の滑らかな層流が、止め弁ヘッド300のみで作られる。
【0062】
ところが、止め弁ヘッド300の下流側を延長して凹陥部302の中央の空間に凸状部303が形成されているので、さらに滑らかな層流が連続させ、蒸気が弁シール面301と弁座22間の環状の隙間の中を流れた後に制約のない広い流域に広がって渦流が引き起こされることが無い。
【0063】
このように止め弁ヘッド300の下流側が流線形状になることで、組合せ弁内部を流れる蒸気が整流されるため、騒音や振動を低減できるばかりでなく圧力損失を最小に留めることが可能となり、性能のよい蒸気弁装置を提供することができる。
【0064】
以上説明の本発明は、最も実用的で好ましい実施形態と現在考えられるものに関連して説明してきたが、本発明は、開示した実施形態に限定されるべきではなく、それどころか、添付の特許請求の範囲の技術的思想及び技術的範囲に属する様々な変形形態および均等形態を保護することを意図すると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による蒸気弁装置の実施形態の全体構成を説明するための概略構成図。
【図2】図1の流量制御弁及び止め弁部分を拡大して示す断面図。
【図3】図2における止め弁部分を拡大して示す破断断面図。
【図4】図1の実施形態の第1の変形例を説明するための拡大断面図。
【図5】図1の実施形態の第2の変形例を説明するための拡大断面図。
【図6】図5における止め弁部分を拡大して示す破断断面図。
【図7】本発明の蒸気弁制御システムを説明するための図。
【図8】本発明による圧力制御システムを説明するための図。
【図9】特許文献1に開示された従来の技術を説明するための流量制御弁及び止め弁の概略断面図。
【図10】特許文献1に開示された発明の技術を説明するための流量制御弁及び止め弁の概略断面図。
【符号の説明】
【0066】
1…蒸気発生器、2…タービン、3…発電機、4…復水器、12…蒸気弁装置本体、14…蒸気入口、16…蒸気出口、17…制御弁、18…制御弁ヘッド、19…止め弁、20…凹部、22…弁座、24…アクチュエータ、26…弁用流体作動シリンダ例えば油圧シリンダ、28…サーボ弁、32…クロスヘッド、34…立軸、40…開口凹部、44…止め弁ヘッド、46…シール面、48…開口、
50…弁棒(軸)、52…流体作動シリンダ例えば油圧シリンダ、54…サーボ弁(サーボバルブ)、56…放出弁、58…位置制御変換器、60…速度制御システム、65…非常停止システム、66…起動システム、67…同期併入システム、68…負荷制御システム、70…圧力制御システム、80…蒸気弁制御システム、100…止め弁ヘッド、101…エッジ、102…凹陥部、103…シール面、104…蒸気通路、200…止め弁ヘッド、201…副弁ヘッド、202…弁座、203…蒸気通路孔、204…凹陥部、250…止め弁ヘッド部、300…止め弁ヘッド、301…シール面、302…凹陥部、303…凸状部、304…エッジ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器からの蒸気をタービンに供給する蒸気供給路に配設するものであって、蒸気入口及び蒸気出口を有し、前記蒸気入口及び前記蒸気出口を連通する蒸気流通路を有する蒸気弁装置本体と、
前記蒸気弁装置本体の蒸気流通路内に配設した環状の弁座と、
前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって、蒸気の下流側に凹部を有する制御弁ヘッドと、
前記タービン回転数の検出値と回転数設定値との速度偏差に基づき前記制御弁ヘッドを位置決めする回転数制御を行う速度制御システムと、
前記制御弁ヘッドの凹部内に移動可能であって前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッドと、
前記タービンが圧力制御モードで運転される際に、前記制御弁ヘッドを全開とするとともに、前記蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき前記止め弁ヘッドを位置決めする圧力制御を行う圧力制御システムと、
を具備した蒸気弁装置。
【請求項2】
請求項1記載の蒸気弁装置であって、
前記タービンが圧力制御モードで運転中に負荷遮断状態となった場合には、前記圧力制御システムは、前記止め弁ヘッドを前記圧力制御時の弁開度から全開へと動作させて圧力制御運転を強制的に終了するとともに、前記制御弁ヘッドを全開から一旦全閉動作させることを特徴とする蒸気弁装置。
【請求項3】
請求項1記載の蒸気弁装置であって、
前記タービンが圧力制御モードで運転中にタービントリップ状態となった場合には、前記圧力制御システムは、前記止め弁ヘッドを前記圧力制御モードでの弁開度から急速閉鎖させることを特徴とする蒸気弁装置。
【請求項4】
前記圧力制御の制御対象圧力は、タービン入口圧力、タービン抽気圧力、タービン背気圧力のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項5】
前記止め弁の圧力制御システムは、前記止め弁ヘッドを位置決めするための流体作動シリンダと、前記弁座に対して閉位置へ前記止め弁ヘッドを付勢するためのばねと、前記ばねが前記弁座に対して前記止め弁ヘッドを移動させることができるようにする前記流体作動シリンダに流体を供給するためのサーボ弁とを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項6】
前記止め弁ヘッドと前記制御弁ヘッドは前記弁座と接触するためのシール面を有し、前記止め弁ヘッドは下流側の蒸気通路を構成する底部側に前記止め弁ヘッドの内部に向って形成され、その縁辺にエッジを備えた凹陥部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項7】
前記弁座は曲率半径がrで、前記止め弁ヘッドは曲率半径がRであって、前記止め弁ヘッド弁が閉位置で前記弁座と接触するためのシール面を有するようにして形成する蒸気通路において、
前記止め弁のシール面の直径をDoとした時、前記エッジの直径Diを
Di≧0.9Do
とし、
前記弁座の内径Dthを
Dth≧0.8Do
の範囲に設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項8】
前記止め弁ヘッドを駆動して前記弁座に対して接離するための前記止め弁ヘッドに組み合わされ固定された弁棒であって、この弁棒の前記制御弁ヘッド側の端部に、前記止め弁ヘッドより弁口径が小さい副弁ヘッドを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項9】
前記止め弁ヘッドは前記弁座と接触するためのシール面を有し、前記止め弁ヘッドは下流側の蒸気通路を構成する底部側に設けられ縁辺にエッジを備えた凹陥部が形成され、かつ前記止め弁ヘッドの下流側であって前記凹陥部の中央部に凸状部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項10】
蒸気入口及び蒸気出口と前記蒸気入口及び前記蒸気出口を連通する蒸気流通路を有するとともに蒸気発生器からの蒸気をタービンに供給する蒸気供給路に配設される蒸気弁装置本体と、前記蒸気弁装置本体の蒸気流通路内に配設した環状の弁座と、前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって蒸気の下流側に凹部を有する制御弁ヘッドと、前記制御弁ヘッドの凹部内に移動可能であって前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッドと、を有する蒸気弁装置を用いた蒸気タービンの制御方法において、
前記蒸気タービンが圧力制御モードにて運転される際に、前記制御弁ヘッドを全開位置に固定するとともに、
前記蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき前記止め弁ヘッドを位置決めする
ことを特徴とする蒸気タービンの制御方法。
【請求項1】
蒸気発生器からの蒸気をタービンに供給する蒸気供給路に配設するものであって、蒸気入口及び蒸気出口を有し、前記蒸気入口及び前記蒸気出口を連通する蒸気流通路を有する蒸気弁装置本体と、
前記蒸気弁装置本体の蒸気流通路内に配設した環状の弁座と、
前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって、蒸気の下流側に凹部を有する制御弁ヘッドと、
前記タービン回転数の検出値と回転数設定値との速度偏差に基づき前記制御弁ヘッドを位置決めする回転数制御を行う速度制御システムと、
前記制御弁ヘッドの凹部内に移動可能であって前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッドと、
前記タービンが圧力制御モードで運転される際に、前記制御弁ヘッドを全開とするとともに、前記蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき前記止め弁ヘッドを位置決めする圧力制御を行う圧力制御システムと、
を具備した蒸気弁装置。
【請求項2】
請求項1記載の蒸気弁装置であって、
前記タービンが圧力制御モードで運転中に負荷遮断状態となった場合には、前記圧力制御システムは、前記止め弁ヘッドを前記圧力制御時の弁開度から全開へと動作させて圧力制御運転を強制的に終了するとともに、前記制御弁ヘッドを全開から一旦全閉動作させることを特徴とする蒸気弁装置。
【請求項3】
請求項1記載の蒸気弁装置であって、
前記タービンが圧力制御モードで運転中にタービントリップ状態となった場合には、前記圧力制御システムは、前記止め弁ヘッドを前記圧力制御モードでの弁開度から急速閉鎖させることを特徴とする蒸気弁装置。
【請求項4】
前記圧力制御の制御対象圧力は、タービン入口圧力、タービン抽気圧力、タービン背気圧力のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項5】
前記止め弁の圧力制御システムは、前記止め弁ヘッドを位置決めするための流体作動シリンダと、前記弁座に対して閉位置へ前記止め弁ヘッドを付勢するためのばねと、前記ばねが前記弁座に対して前記止め弁ヘッドを移動させることができるようにする前記流体作動シリンダに流体を供給するためのサーボ弁とを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項6】
前記止め弁ヘッドと前記制御弁ヘッドは前記弁座と接触するためのシール面を有し、前記止め弁ヘッドは下流側の蒸気通路を構成する底部側に前記止め弁ヘッドの内部に向って形成され、その縁辺にエッジを備えた凹陥部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項7】
前記弁座は曲率半径がrで、前記止め弁ヘッドは曲率半径がRであって、前記止め弁ヘッド弁が閉位置で前記弁座と接触するためのシール面を有するようにして形成する蒸気通路において、
前記止め弁のシール面の直径をDoとした時、前記エッジの直径Diを
Di≧0.9Do
とし、
前記弁座の内径Dthを
Dth≧0.8Do
の範囲に設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項8】
前記止め弁ヘッドを駆動して前記弁座に対して接離するための前記止め弁ヘッドに組み合わされ固定された弁棒であって、この弁棒の前記制御弁ヘッド側の端部に、前記止め弁ヘッドより弁口径が小さい副弁ヘッドを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項9】
前記止め弁ヘッドは前記弁座と接触するためのシール面を有し、前記止め弁ヘッドは下流側の蒸気通路を構成する底部側に設けられ縁辺にエッジを備えた凹陥部が形成され、かつ前記止め弁ヘッドの下流側であって前記凹陥部の中央部に凸状部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸気弁装置。
【請求項10】
蒸気入口及び蒸気出口と前記蒸気入口及び前記蒸気出口を連通する蒸気流通路を有するとともに蒸気発生器からの蒸気をタービンに供給する蒸気供給路に配設される蒸気弁装置本体と、前記蒸気弁装置本体の蒸気流通路内に配設した環状の弁座と、前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に移動可能であって蒸気の下流側に凹部を有する制御弁ヘッドと、前記制御弁ヘッドの凹部内に移動可能であって前記弁座に対して接触位置及び又は非接触位置に可動可能な止め弁ヘッドと、を有する蒸気弁装置を用いた蒸気タービンの制御方法において、
前記蒸気タービンが圧力制御モードにて運転される際に、前記制御弁ヘッドを全開位置に固定するとともに、
前記蒸気供給路内の蒸気の圧力検出値と圧力設定値との圧力偏差に基づき前記止め弁ヘッドを位置決めする
ことを特徴とする蒸気タービンの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−250146(P2009−250146A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100660(P2008−100660)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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