説明

蒸気抜き機能を有する包装袋とそれを用いた包装体

【課題】電子レンジ調理しても包装体の内部圧力を逃がすことができ、袋内が汚染されることのない蒸気抜き機能を有する包装袋を提供すること。
【解決手段】互いにシーラント層を有する表裏二枚の本体フィルムをシーラント層を内側にして対向させ、周囲を側部シール(12)、底部シール(13)してなる包装袋であって、左右の側部シール(12)の中央近傍には内方になだらかに突出した突出部(14)が形成され、突出部の中央近傍には端縁方向に円弧状に広がる未シール部分である脱蒸気口(15)が形成され、脱蒸気口には脱蒸気口寸法と同寸,若しくは近似寸法の円弧による切れ目(16)が包装袋の内側に広がってシール部分に一部飛び出して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋を開封せずに内容物を電子レンジで加熱した時に、内部で発生する蒸気により包装袋に収納された内容物を蒸らす効果を持ちつつ、包装袋の一部が自動的に開口して内部圧力を逃がす。
【背景技術】
【0002】
従来、調理済のあるいは半調理済の食品等を耐熱性のプラスチックフィルムからなる包装袋に充填して、食する直前に電子レンジにより加熱して調理する包装食品が提案されている。
【0003】
しかし、この包装食品は、電子レンジで加熱すると,加熱時に食品等から発生する蒸気圧などの内圧により、包装袋が破袋して内容物が飛散してしまい、電子レンジの内部を汚染してしまう欠点があった。
【0004】
このため、電子レンジで加熱する前に、あらかじめ、包装袋に、例えば、ハサミ等を用いて小さい孔等を開けて、あるいは、袋の一部を切り取って、包装袋内部の内圧の上昇を抑えて包装袋の破袋を防止していた。
【0005】
しかしながらこの方法では、加熱後発生する水蒸気は直ぐに包装袋の外に放出されてしまうため、水蒸気による蒸し効果が低減されるとともに包装袋内部の食品の乾燥が進行して、食品の劣化をきたす場合がある。
【0006】
これらの問題点を解消すべく、例えば、包装袋等の包装容器を密封するシール部の少なくとも1か所以上を容器の内側方向に突出して形成させることが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特公平4−40005号公報。
【特許文献2】特公平8−25583号公報。
【0008】
しかし、この方法では、脱蒸気口(102)はヒートシール帯(101)より容器(100)の内側にまで及んでいる。この場合、脱蒸気口(102)の大きさにより頂点(103)も大きくなり、内容物(105)を容器に詰めるために開封した場合容器(100)が変形して、内容物(105)を充填することが難しくなる(図5参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたもので、電子レンジで加熱調理しても、加熱により生じる包装体の内部圧力を逃がすことができ、かつ、袋内が汚染されることのない、食品の劣化することのない蒸気抜き機能を有する包装袋とそれを用いた包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1の発明は、互いにシーラント層を有する表裏二枚の本体フィルムをシーラント層を内側にして対向させ、周囲を側部シール、底部シールしてなる包装袋であっ
て、前記左右の側部シールの中央近傍には、内方になだらかに突出した突出部が形成され、該突出部の中央近傍には、端縁方向に円弧状に広がる未シール部分である脱蒸気口が形成され、前記脱蒸気口には、該脱蒸気口寸法と同寸、若しくは近似寸法の円弧による切れ目が包装袋の内側に広がってシール部分に一部飛び出して形成されていることを特徴とする、蒸気抜き機能を有する包装袋である。
【0011】
このように請求項1記載の発明によれば、互いにシーラント層を有する表裏二枚の本体フィルムをシーラント層を内側にして対向させ、周囲を側部シール、底部シールしてなる包装袋であって、前記左右の側部シールの中央近傍には、内方になだらかに突出した突出部が形成され、該突出部の中央近傍には、端縁方向に円弧状に広がる未シール部分である脱蒸気口が形成され、前記脱蒸気口には、該脱蒸気口寸法と同寸、若しくは近似寸法の円弧による切れ目が包装袋の内側に広がってシール部分に一部飛び出して形成されているので、脱蒸気口は側部シールの内側より外方に施されており、脱蒸気口の大きさを小さくすることにより、内容物を詰める際の袋の変形を少なくし、内容物が詰め易くなっている。
【0012】
また、脱蒸気口に切れ目を入れることにより、内圧の噴き出しを端面に達する前に発生させることにより、内圧が高まりすぎるのを防ぎ、低い内圧で容器を開封させることができる。よって容器が内圧により破壊されることも防ぐ。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記脱蒸気口の未シール開始位置及び終了位置をa、最も内方の位置をb、切れ目の開始位置及び終了位置をc、最も外方の位置をdとした時、前記a、b、c、dは側部シールの内方に向けて、a、d、b=cの順序で配置されていることを特徴とする、蒸気抜き機能を有する包装袋である。
【0014】
このように請求項2記載の発明によれば、脱蒸気口の未シール開始位置及び終了位置をa、最も内方の位置をb、切れ目の開始位置及び終了位置をc、最も外方の位置をdとした時、前記a、b、c、dは側部シールの内方に向けて、a、d、b=cの順序で配置されているので、脱蒸気口及び切れ目は、側部シールの内側シール際より外方に加工されており、電子レンジ加熱により発生する蒸気圧などの内圧により包装袋が破袋しても、内容物が外部まで飛散することがない。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載の蒸気抜き機能を有する包装袋に内容物を充填して開口部を天部シールした包装体を、加熱装置により加熱させ、包装体の内圧が上昇した時、側部シールの未シール部分である脱蒸気口から内圧が逃げだすようにしたことを特徴とする、蒸気抜き機能を有する包装袋である。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明の蒸気抜き機能を有する包装袋は、袋を開封せずに内容物を電子レンジで加熱した時に、内部で発生する蒸気により包装袋に収納された内容物を蒸らす効果を持ちつつ、包装袋の一部が自動的に開口して内部圧力を逃がすことができる。
【0017】
また、特に内容物が変形しやすい製品の場合、内部の圧力が噴き出す際、切れ目があることにより内容物が同時に包装袋の外に噴き出すのを防ぐことができる。従って、薄い布状の内容物、例えば、不織布、ガーゼのような布類、湯葉、とろろ昆布、薄切り餅のような食品類が電子レンジで安全に加熱することができる。
【0018】
さらに、電子レンジで内容物を加熱した場合、内容物は高温に達していることがあり、不用意に触ると火傷をすることがある。噴き出した内容物が切れ目に引っ掛かっていることにより対象品を処分する際にも内容物に直接触れず、低温な袋を持つことにより処分できるため、火傷の心配もない。
【0019】
既存の技術ではヒートシール強度が9.8N以下の強度しか出さない剥離機能を持つフィルムが使用されることが多いが、本発明においては、剥離機能を付与されていなくても、高温時にヒートシール強度が低下するようなフィルムを使用することができ、通常輸送時には9.8N以上のヒートシール強度を持つことにより輸送時等の袋の破壊を避け、使用時には自動開封が行えるまでにヒートシール強度が低下する容器を生産することができる。よって容器としての安定性が向上すると共に、特殊機能を持つフィルムを使用しないことで低コスト化にもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の蒸気抜き機能を有する包装袋は、例えば、図1、図2に示すように、互いにシーラント層(21)を有する表裏二枚の本体フィルム(20)をシーラント層を内側にして対向させ、周囲を側部シール(12)、底部シール(13)してなる包装袋(10)である。
【0021】
そして、左右の側部シール(12、12)の中央近傍には、内方になだらかに突出した突出部(14)が形成されている。突出部の中央近傍には、端縁方向に円弧状に広がる未シール部分である脱蒸気口(15)が形成されている。
【0022】
脱蒸気口(15)には、脱蒸気口寸法と同寸、若しくは近似寸法の円弧による切れ目(16)が包装袋(10)の内側に広がってシール部分に一部飛び出して形成されている。
【0023】
すなわち、脱蒸気口(15)及び切れ目(16)は、側部シール(12)の内側シール際より外方に加工されている。
【0024】
ここで、側部シール(12)内に形成される脱蒸気口(15)と切れ目(16)の関係について述べる。脱蒸気口(15)の未シール開始位置及び終了位置を(a、a)、最も内方の位置を(b)とし、円弧状の切れ目(16)の開始位置及び終了位置を(c、c)とし、最も外方の位置を(d)とした時、前記a、b、c、dは側部シールの内方に向けて、a、d、b=cの順序で配置されている(図4参照)。
【0025】
このような構成にすることにより、包装袋に内容物を収納し、開口部を天部シールして包装体を形成し、該包装体を電子レンジ加熱した時、加熱時に発生する内圧により包装袋が破袋しても、内容物は切れ目により引っ掛かり外に飛び出すことがなくなる。
【0026】
なお、本発明で使用する本体フィルム(20)は、少なくとも内面にポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂からなるシーラント層が配置された複合フィルムであれば良い。具体例をあげるならば、複合フィルムの基材として、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリイミド等)など、あるいはこれら高分子の共重合体など、通常包装材料として用いられる比較的耐熱性を有するプラスチックフィルムないしシートが挙げられる。
【0027】
この基材には、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤などの公知の添加剤を加えることができ、必要に応じて適宜添加される。さらに基材の表面をコロナ放電処理、アンカーコート処理等の表面改質を行い、後記するシーンラント層等との接着性を向上させることもできる。また、必要に応じて、基材の表面または裏面に印刷層(図示せず)を形成させることもできる。
【0028】
ガスバリア性をアルミニウム箔なみに向上させるため、基材のプラスチックフィルムに酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの無機化合物の薄膜を物理蒸着あるいは化学蒸着などの蒸着法により20〜100nm程度の厚さに設けた無機化合物蒸着プラスチックフィルムを使用することもできる。この場合のプラスチックフィルムとしては、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく使用できる。
【0029】
シーラント層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体、飽和ポリエステルなど熱融着性のある樹脂であれば使用できるが、電子レンジ適性等を考慮すると、厚さが60〜80μm程度のポリプロピレン樹脂がより好ましく使用できる。
【0030】
落下強度、突き刺し強度やガスバリア性を向上させる必要がある場合、基材とシーラント層の間に中間層を介在させることができる。
【0031】
中間層としては、例えば、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム等が好ましく使用できる。また、この中間層には、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の無機化合物の蒸着層を含んでも良い。
【0032】
基材とシーラント層、あるいは,基材と中間層、中間層とシーラント層の貼り合わせは、例えば、二液反応型のポリウレタン樹脂系接着剤を使用したドライラミネート法等の公知のラミネート方法を用いて容易に行うことができる。
【実施例】
【0033】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。
〈実施例1〉
本体フィルム(20)として、〔外側〕透明蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(蒸着層)/両面コロナ放電処理ポリエチレンテレフタレートフィルム/未延伸ポリプロピレンフィルム(シーラント層)〔内側〕の層構成からなる複合フィルムを準備した。
【0034】
この本体フィルム(20)二枚をシーラント層(21)を内側にして対向させ、周囲を側部シール(12)、底部シール(13)して、縦;145mm、横;120mm、シール幅;5mm、の大きさの実施例1の三方シール袋(10)を製袋した。
【0035】
なお、側部シールの中央近傍に、内方になだらかに突出する突出部(14)を形成し(突出部(14)の突出部高さ;7mm)、突出部の中央近傍に、端縁方向に円弧状に広がる未シール部分である脱蒸気口(15)を形成した。
【0036】
また、脱蒸気口(15)に、脱蒸気口と同寸の円弧状の切れ目(16)を包装袋の内側に広がるように先端と末端がシール部分に飛び出して形成した(図1参照)。
【0037】
この実施例1の三方シール袋に縦;100mm、横;80mm、厚さ;1mmの薄板状の不織布と、液体である化粧水12グラムを収納して、開口部(11)をシール幅;5mmで天部シールして包装体とした。
【0038】
この包装体を出力600ワットの電子レンジ中央部に載置して、電子レンジで包装体を加熱して、破袋するまでの時間、内容物の飛び出しの有無、破袋の方向、破袋個所、破袋時の状況を目視確認した(N=20)。その状態を表1に示す。なお、破袋個所はすべて突出部からであった。また、内容物の飛び出しの判断基準は次の通りである。
【0039】
○ ; 飛び出し無
△ ; 飛び出し有り。開封部に引っ掛かる状態
× ; 飛び出し有り。電子レンジ内面に付着
【0040】
【表1】

表1に示されているように、側部シールに未シール部を設け、この未シール部に重なるように円弧状の切れ目を形成させることで、電子レンジ加熱により生じた内圧により包装袋が破袋しても、切れ目に内容物が引っ掛かり、内容物が外に飛び出すことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の蒸気抜き機能を有する包装袋の一実施例を示す、平面で表した説明図である。
【図2】本発明の蒸気抜き機能を有する包装袋に使用する本体フィルムの層構成の一実施例を示す、断面で表した説明図である。
【図3】図1の包装袋に内容物を充填して包装体とした状態の一実施例を示す、(a)は平面説明図であり、(b)は(a)のA−A’線断面説明図である。
【図4】図1のA部拡大説明図である。
【図5】従来の蒸気抜き機能を有する包装袋の一例を示す、平面説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1‥‥包装体
10‥‥包装袋
11‥‥天部シール、開口部
12‥‥側部シール
13‥‥底部シール
14‥‥突出部
15‥‥脱蒸気口
16‥‥切れ目
20‥‥本体フィルム
21‥‥シーラント層
50‥‥内容物
100‥‥容器
101‥‥ヒートシール帯
102‥‥脱蒸気口
103‥‥頂
105‥‥内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにシーラント層を有する表裏二枚の本体フィルムをシーラント層を内側にして対向させ、周囲を側部シール、底部シールしてなる包装袋であって、
前記左右の側部シールの中央近傍には、内方になだらかに突出した突出部が形成され、
該突出部の中央近傍には、端縁方向に円弧状に広がる未シール部分である脱蒸気口が形成され、
前記脱蒸気口には、該脱蒸気口寸法と同寸、若しくは近似寸法の円弧による切れ目が包装袋の内側に広がってシール部分に一部飛び出して形成され、
ていることを特徴とする、蒸気抜き機能を有する包装袋。
【請求項2】
前記脱蒸気口の未シール開始位置及び終了位置をa、最も内方の位置をb、切れ目の開始位置及び終了位置をc、最も外方の位置をdとした時、前記a、b、c、dは側部シールの内方に向けて、a、d、b=cの順序で配置されていることを特徴とする、請求項1記載の蒸気抜き機能を有する包装袋。
【請求項3】
請求項1又は2記載の蒸気抜き機能を有する包装袋に内容物を充填して開口部を天部シールした包装体を、加熱装置により加熱させ、包装体の内圧が上昇した時、側部シールの未シール部分である脱蒸気口から内圧が逃げだすようにしたことを特徴とする、蒸気抜き機能を有する包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−321519(P2006−321519A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145159(P2005−145159)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】