説明

蒸発エミッション制御システムからのエミッションを減少させる方法

【課題】自動車の蒸発エミッション制御システムから昼間呼吸損失エミッションを大幅に減少する方法を開示する。
【解決手段】エミッション制御システムキャニスターの燃料源側に高作用能力活性炭を、第1のキャニスター(吸着)領域に設ける。排気側の後続のキャニスター領域において、吸着剤は、容積ベースで平坦又は平坦化された吸着剤等温線を示すとともに、燃料源側吸着剤と比べて高濃度蒸気に対して比較的低い能力を示す必要がある。一アプローチでは、吸着剤等温線を平坦化する容積希釈として充填材及び/又は空隙を使用する。他のアプローチでは、所望の吸着剤等温線特性を示す吸着剤を採用し、希釈のための特別手段を必須とせず、その吸着剤を適切な形状又は形態に処理する。燃料源側の高作用能力活性炭と排気側の低作用能力吸着剤との組み合わせは、作用能力の著しい低下又は流れ抵抗の増加を生じることなく、実質的に低い昼間呼吸エミッションを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭粒子充填キャニスター、及び活性炭を包含する吸着性モノリス含有キャニスターを有する蒸発制御システムからのエミッションを減少する方法、及び揮発有機化合物及び他の化学物質を流体の流れから除去するために上述の吸着キャニスターを使用することに関する。さらに詳しくは、本発明は、炭化水素燃料消費エンジンにおいて前記蒸気吸着物質を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
(a)標準作用能力吸着剤
自動車燃料システムからのガソリンの蒸発は、炭化水素空気汚染物の主な潜在的発生源である。自動車業界は、米国だけにおいて、毎年燃料システムから蒸発されるほぼ10億ガロン(38億リットル)ものガソリンをできるだけ多く抑制するように、エンジン構成部材及びシステムを設計することを強いられている。そのようなエミッションは、蒸発する蒸気を吸着して保持するために活性炭を使用したキャニスターシステムによって制御できる。エンジン運転の所定のモードの下で、吸着された炭化水素蒸気は、キャニスターを通して空気を引き出し、脱着された蒸気をエンジンで燃焼することによって、活性炭から周期的に除去される。再生された活性炭は、ついで、別の蒸気を吸着することが可能な状態になる。米国の環境保護庁(EPA)の命令に従って、そのような制御システムが米国において約30年間使用されており、また、その期間中において、政府規制は、これらのシステムについての許容エミッションレベルを徐々に下げてきた。これに応じて、制御システムにおける改良点は、炭化水素蒸気を保持する活性炭の能力の向上に主に的が絞られてきた。たとえば、均一な能力の活性炭を含有する現行のキャニスターシステムは、吸着及び空気パージ再生のサイクル中において、100グラムの蒸気を容易に捕捉したり放出したりすることができる。これらのキャニスターシステムは、また、燃料補給中において、置換される空気及び燃料タンクからの炭化水素蒸気の大量の流れに適合するために、流れの制約は低くなければならない。自動車エミッション制御システム用の活性炭の改良点は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17に開示されている。
【0003】
最新の自動車エミッション制御システムに使用される代表的なキャニスターが、図1に示されている。キャニスター1は、サポートスクリーン2、分割壁3、大気への排気ポート4(エンジンの停止時用)、蒸気源接続部5(燃料タンクからの)、真空パージ接続部6(エンジンの運転時用)及び吸着剤充填部7を有する。
【0004】
他の基本的な自動車エミッション制御システムキャニスターは、特許文献18、特許文献19、特許文献20及び特許文献21に開示されている。
【0005】
蒸発エミッションキャニスター用の代表的な活性炭は、活性炭ベッド充填密度(bed packing density)(「見掛け密度(apparent density)」、g/ml)、100%ブタン蒸気についての平衡飽和能力(equilibrium saturation capacity)(「ブタン活性(butane activity)」、g/100g活性炭)及びパージ能力(「ブタン比(butane ratio)」)の標準測定値、特に、空気パージ工程によって活性炭から回収できる飽和工程からの吸着されたブタンの割合によって特徴づけられる。これら三つの特性の乗算積によって、ASTM D5228−92によって測定される活性炭の有効ブタン「作用能力」(「BWC」、g/dL)の測定値が得られる。その測定値は、ガソリン蒸気についてのキャニスター作用能力の正確な予測値として当該技術において確立されている。この用途に優れている活性炭は、高いBWC、一般には、9〜15g/dLのBWCを有する。これは、ブタンについての容積ベース(volumetric basis)での高い飽和能力(密度とブタン活性度との積)及び高いブタン比(>0.85)の結果として生じるものである。全ての蒸気濃度を通しての等温平衡吸着能力に関して、これらの活性炭は、増加した蒸気濃度の関数としての高い容量の増加率(すなわち、片対数グラフ上で上方へ湾曲した等温線)をその特徴として有する。この等温線の上方への曲線は、これらの活性炭の高い作用能力性能の特徴を反映している。それは、ガソリン蒸気は高濃度で多量に吸着されるが、高濃度で空気パージ流れへ容易に脱着されるためである。さらに、これらの活性炭は、代表的には、ちょうど約1〜3mm径のサイズの粒状(幾分不規則な形状)又は円筒状のペレットである傾向を有する。幾分大きいサイズは、動的吸着及びパージのサイクル中において、活性炭粒子に対して出入りする蒸気の拡散移行を妨げることが判明している。一方、幾分小さいサイズの粒子は、燃料補給時において、置換される空気及び炭化水素蒸気について許容不可能な高い流れ抵抗を有する。
【0006】
(b)昼間呼吸損失(DBL)要件
最近、蒸気が制御されなければならない方法に関するアプローチの変更を要求する規制が公布されている。キャニスターからの許容エミッションレベルは、排出される蒸気の主要源である燃料タンクがもはや主な問題でないような低いレベルまで下げられるであろう。これは、現行の従来の蒸発エミッション制御システムが高い除去効率を達成したことを示しているためである。むしろ、現在の問題は、実際には、再生(パージ)工程後に残留「ヒール(heel)」として活性炭吸着剤自体に残される炭化水素である。そのようなエミッションは、代表的には、自動車が駐車しており、数日の期間を通して昼間温度変化を受けているときに生じ、通常「昼間呼吸損失」と呼ばれる。ここに、カリフォルニア低エミッション車両規制は、これらのキャニスターシステムからの昼間呼吸損失(DBL)について、2003年型に始まる幾つかの車両に対しては10mg未満(「PZEV」)であり、2004年型に始まる多くの車両に対しては50mg未満、代表的には、20mg未満(「LEV−II」)であるのが望ましいとしている。(「PZEV」及び「LEV−II」は、カリフォルニア低エミッション車両規制の規準である。)
【0007】
市販のキャニスターにおいて使用されている標準活性炭は、作用能力に関して優れているが、通常のキャニスター作動の下でDBLエミッション目標値に合致させることができない。さらに、作用能力特性の標準測定値は、DBLエミッション性能と相関していない。それにもかかわらず、エミッション目標値に合致させるための一つのオプションは、活性炭ベッド(carbon bed)における残留炭化水素ヒールの量を減少させ、それによって、その後のエミッションを減少するために、再生中のパージガスのボリュームを大幅に増加させることである。しかしながら、この方策は、パージ再生中にエンジンに対する燃料/空気混合物の管理を複雑にするという欠点を有し、また、排気管エミッションに悪影響を与える傾向、すなわち、その問題を解決するどころか、問題を転移させたり再び生じさせたりする。(特許文献22を参照。)
【0008】
他のオプションは、既存のキャニスターの寸法を再設計することによって、又は適切な寸法の追加の補助排気側キャニスターを設置することによって、キャニスターシステムの排気側(パージ空気に出合う活性炭ベッドの第1の部分)に比較的小さい断面積が存在するように、活性炭ベッドを設計することである。この別の案は、活性炭ベッドのその排気側部分に対するパージの強さを増加させることによって、残留炭化水素ヒールを局部的に減少させる効果を有し、それによって、そうでない場合に昼間呼吸状態下においてキャニスターシステムから排出されるであろう蒸気を活性炭ベッドが保持する機能を向上させる。その欠点は、そうでない場合にキャニスターシステムによって受けるような過大な流れ抵抗を受けることなく、活性炭ベッドが減少した断面積で延長できる実用的な限界があることである。実際に、この限界は、エミッション目標値に合致させるために、十分に狭くて細長い幾何学的形状を採用することができない。(特許文献23を参照。)
【0009】
吸着剤の細孔に吸着された燃料蒸気/空気の混合物フラクションのパージ効率を増加させる他のオプションが、特許文献24及び特許文献25の開示によって示唆されている。その開示内容は、キャニスター内又はその部分内に加熱能力を付与して、蒸気貯留キャニスター内の圧力を増加させて、高温蒸気を蒸気/パージ導管を通して燃料タンク中へ放出し、そのタンク内で高温蒸気を低い周囲温度で凝縮したり(特許文献24)、加熱された吸着剤からの炭化水素のパージ効率を増加させて、パージされた燃料蒸気を関連するエンジンの吸気システムへ移送するといるものである(特許文献25)。しかしながら、これは、制御システム管理の複雑性を増加させ、燃料蒸気を閉じ込めるキャニスター内を加熱するという点で、なんらかの固有の安全上の問題を有する。
【特許文献1】米国特許第4677086号明細書
【特許文献2】米国特許第5204310号明細書
【特許文献3】米国特許第5206207号明細書
【特許文献4】米国特許第5250491号明細書
【特許文献5】米国特許第5276000号明細書
【特許文献6】米国特許第5304527号明細書
【特許文献7】米国特許第5324703号明細書
【特許文献8】米国特許第5416056号明細書
【特許文献9】米国特許第5538932号明細書
【特許文献10】米国特許第5691270号明細書
【特許文献11】米国特許第5736481号明細書
【特許文献12】米国特許第5736485号明細書
【特許文献13】米国特許第5863858号明細書
【特許文献14】米国特許第5914294号明細書
【特許文献15】米国特許第6136075号明細書
【特許文献16】米国特許第6171373号明細書
【特許文献17】米国特許第6284705号明細書
【特許文献18】米国特許第5456236号明細書
【特許文献19】米国特許第5456237号明細書
【特許文献20】米国特許第5460136号明細書
【特許文献21】米国特許第5477836号明細書
【特許文献22】米国特許第4894072号明細書
【特許文献23】米国特許第5957114号明細書
【特許文献24】米国特許第6098601号明細書
【特許文献25】米国特許第6279548号明細書
【特許文献26】欧州特許出願公開第1113163号明細書
【特許文献27】国際公開第0162367号パンフレット
【特許文献28】米国特許出願公開第2001/020418号明細書
【特許文献29】国際出願公開第9201585号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、引用された代案のように欠点を有していない受入れできる対応策が嘱望されている。ここに開示されるとともに請求項に記載された本発明は所望の解決策を提供することが主張される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
複数の層又は段の吸着剤を使用することによって、蒸発エミッションキャニスターから昼間呼吸損失エミッションを大幅に減少する発明が開示される。キャニスターの燃料源側では、標準的な高作用能力の活性炭が好ましい。排気側では、好ましい吸着剤のボリュームは、広い蒸気濃度にわたって一定の特徴的な所定の吸着特性、特に、燃料源側吸着剤ボリュームに比べて高濃度蒸気における比較的低い容量の増加に加えて、ボリュームベース (volumetric basis)で平坦又は平坦化された吸着剤等温線を示す。排気側吸着剤ボリュームについて好ましい特性を得る二つのアプローチが説明される。一つのアプローチは、等温線を平坦化するためのボリューム希釈剤として、充填材及び/又は活性炭ベッド空隙を使用することである。第2のアプローチは、所望の等温線特性を有する活性炭を採用し、希釈のための専用の手段を必ずしも必要とすることなく、活性炭を適切な形状又は形態に処理することである。そのような両方のアプローチは、自動車エミッション制御システムに使用される従来技術の吸着剤と比べて、作用能力を大幅に低下させることなく、あるいは、流れ抵抗を増加させることなく、実質的に低エミッションのキャニスターシステムを提供する。本明細書中において、上記のような吸着剤の等温線を平坦化するための手段を「容積希釈」という。また、「容量の増加」、「吸着容量の増加」及びそれに類する用語は、二つの蒸気濃度において吸着剤が有する吸着量の差又はその増加量を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
開示される発明は、複数のベッド(又は層、段又はチャンバ)の吸着剤を使用することに関する。それらの吸着剤ベッドは、組合せによって、キャニスターシステムの高い作用能力及び低い流れ抵抗特性を維持しながら、DBLエミッションを大幅に減少させる。(図2参照。)これらの吸着剤には、木材、泥炭、石炭、ココナツ、合成又は天然の重合体を含む種々の原料からの活性炭、及び化学的及び/又は熱的活性化を含む種々のプロセスからの活性炭、ならびに、分子篩、多孔性アルミナ、柱状クレー、ゼオライト及び多孔性シリカを含む無機吸着剤、ならびに多孔性重合体を含む有機吸着剤が含まれる。これらの吸着剤は、粒状、球状又はペレット化された円筒状でもよいし、当該技術の技術的能力内における中空円筒形、星形、ねじり螺旋形、星印形、成形リボン形又はその他の形状の特殊な薄肉断面形状に押出すこともできる。成形中において、無機及び/又は有機の結合剤を使用できる。これらの吸着剤は、モノリス又はハチの巣状成形品に成形できる。これらの吸着剤は、一つ又は複数の層又は別々のチャンバとしてキャニスター中に組込むことができるし、補助キャニスターベッドとして流体の流れ内へ挿入することもできる。
【0013】
これらのアプローチの全てに共通する一つの特徴は、比較的平坦な形状の等温線を示す排気側吸着剤を有することである。この等温線形状は吸着剤ベッド深さを通してのパージ効率に関連する理由のために重要である。平坦な吸着等温線を示す吸着剤の場合、吸着された炭化水素と平衡する炭化水素蒸気の濃度は、当然ながら、さらに減少する。これは、より急傾斜した等温線を示す吸着剤と比べて、吸着された炭化水素が除去されるためである。したがって、そのような物質が、キャニスターの排気側領域上に吸着剤ボリュームとして採用されるとき、パージは、パージ入口部位における蒸気濃度を非常に低いレベルまで減少させることができる。ブリードとして最終的に出現するものは、パージ入口近くの蒸気であるので、この濃度を減少させることによって、ブリードエミッションレベルが減少させられる。パージ中の吸着された炭化水素の除去の程度は、パージガスに取り込まれた炭化水素の濃度と、ベッド中の任意の箇所において吸着剤と平衡している濃度との間の差によって求められる。したがって、パージ入口に最も近い吸着剤が最も十分に再生される。吸着剤ベッドにおける深い箇所においては、少ない炭化水素が除去される。これは、パージガスがベッド内の先の点から除去された炭化水素を既に含有しているためである。平坦な吸着等温線を示す吸着剤は、パージの流れ中に少ない蒸気を放出し、このパージは、ついで、ベッドにおける深い箇所において蒸気濃度をより効果的に減少させる。したがって、一定量のパージガスの場合、平坦な吸着等温線を有する吸着剤のボリュームの蒸気濃度を減少させ、急勾配の吸着等温線を示す吸着剤の同一ボリュームの濃度よりも低いレベルまで下げることができる。したがって、吸着剤が平坦な吸着等温線を示す場合には、そのようなボリュームからのブリードエミッションは低くなる。
【0014】
しかしながら、低ブリードエミッションレベルを達成するための好ましい吸着等温線特性を有する粒子含有キャニスター又は吸着剤含有モノリスにおける領域は、自動車の蒸発エミッション制御通常使用される活性炭と比べて、比較的低い吸着作用能力を有する。たとえば、低能力吸着剤のBWCは、代表的な自動車用の活性炭に使用されるような9g/dLから15g/dLの範囲に比べて、約6g/dLであろう。したがって、通常のエミッション制御システムの作動に必要な炭化水素能力を維持するためには、通常採用される一定量の高能力活性炭を含有する燃料源側領域と組合せて、キャニスター内又はキャニスター外の排気側補助領域において、低ブリード吸着剤が使用されるであろう。たとえば、二つの異なる吸着剤が使用される場合、システム設計は、所望の作用能力を達成するためのエミッション制御キャニスターの主要部、すなわち、燃料源側に十分な量の高能力活性炭を設けること、さらには、メインベッドから排出される蒸気を低ブリード吸着剤からのブリードエミッションに実質的に影響しない程度まで含ませるための十分な量の低ブリード吸着剤を設けることを必要とする。
【0015】
本発明の文脈において「モノリス」とは、発泡体、織及び不織繊維、マット、ブロック及び粒子の結合集合体を含むように意図される。
【0016】
吸着剤の主要な高能力燃料源側ボリュームから補助低能力排気側ボリューム中への蒸気のエミッションは、排気側ボリュームの存在によってかなり影響されるということが注目に値する。パージ中において、平坦な吸着等温線を示す排気側吸着剤ボリュームは、比較的小さい炭化水素負荷をパージガス中へ放出する。したがって、パージガスによって搬送される蒸気の濃度は、低ブリード排気側ボリュームから出て、高能力燃料源側ボリュームに入るときには、低いと予想される。このことは、二つの吸着剤ボリュームの結合部近くにおける高能力吸着剤の良好な再生が可能にし、さらに、昼間呼吸流れ中において、キャニスターの燃料源側領域からのエミッションから排気側ボリュームを保護する助けとなる。特に、燃料源側ボリュームの高い再生効率は、キャニスターシステムの流れ方向長さを通してのバルク相拡散速度を遅らせることによって、昼間エミッションを減少させる。バルク相拡散は、昼間呼吸状態中における蒸気移送の主要な形態であるので、キャニスターシステムの流れ長さを通しての蒸気濃度差を向上された再生によって減少させることによって、キャニスターシステム内の蒸気の再分布と、二次排気側ボリューム中へのエミッション及び排気ポートからのエミッションとが減少される。
【0017】
低ブリード性能を提供する好ましい形状を有する等温線を示す吸着剤の例が、図3において、標準のキャニスター充填活性炭(ウェストヴァコ・コーポレーション(Westvaco Corporation)のBAX1100及びBAX1500)と比較されている。この図に示されるように、等温線特性を容積能力(volumetric capacity)に関して明確にしなければならないことに注目することが重要である。これに基づいて、好ましい低ブリード吸着剤部分は、5容量%と50容量%との間のn−ブタン蒸気濃度で、約35g/リットル未満のn−ブタンの容量の増加を有することになる。
【0018】
一部の例において、既知の吸着剤は、排気側について、好ましい特性を有するけれども、これらの吸着剤は蒸発ガス用キャニスターにおいて有用であることは期待されないであろう。場合によっては、これらの物質は、キャニスター活性炭を認定する標準BWC試験によって測定されたときに、低いパージ能力(0.85未満のブタン比)及び低い作用能力(9g/dL未満のBWC)を有する。当該技術における共通の知恵と経験によって、低いブタン比と高いエミッションの潜在的発生源である高い残留炭化水素ヒールとが関連づけられる。さらに、低いBWC吸着剤は、ガソリン蒸気に対する作用能力が損なわれると想定され、エミッションを減少させる効用があるという期待が無いので、キャニスターシステム中への包含が有用とは考えられなかった。事実、本発明の一つの好ましい実施形態である低能力吸着剤は、好ましくは、8g/dL未満のBWC値を有し、この値は、通常、蒸発エミッション制御キャニスターシステムにおける使用に好適とみなされる9〜15g/dLのBWCレベルよりも十分に低い。低エミッションを生成するために排気側の層としてキャニスターシステム中へ包含させるためのこれらの低BWC物質の好ましい選択は、吸着剤ベッド内の動的特性(すなわち、排気側ベッドボリューム内の低い残留蒸気濃度の意義、及び昼間呼吸損失期間中におけるキャニスターシステム全体を通しての分布及び拡散に対して排気側ベッドボリュームが有する相互作用効果)が一旦実現されたときにだけ実現された。
【0019】
したがって、相対的に低いBWCに加えて、好ましい排気側吸着剤特性は、0.4と0.98との間のブタン比を含み、それは、全体として、これらのキャニスターシステムに有用であると先に考えられていた吸着剤と比べて実質的に異なる特性であることが判明した。
【0020】
上述した提案された別のアプローチは、下記の例におけるキャニスターブリードエミッション出制御において有効であることが示される。排気側吸着剤を調製する一つのアプローチは、高作用能力吸着剤を容積的に希釈し、その結果として得られる等温線が容積ベースで平坦化されるようにすることである。第2のアプローチは、所望の吸着能力及び平坦な等温線形状を有する吸着剤で開始し、その吸着剤をペレット又はハチの巣形などの形状又は形態へと処理することである。
【0021】
複数の吸着剤を有するキャニスターに対する、特に好ましい実施形態が図2に示されている。図2は、主キャニスター本体1、サポートスクリーン2、分割壁3、大気への排気ポート4、蒸気源接続部5、真空パージ接続部6、燃料源側領域7、異なる低能力の排気側キャニスター領域8〜11、追加キャニスター本体12、及び主キャニスター本体1から追加キャニスター本体12まで流体を流す接続ホース13を有するキャニスターシステムを示している。上述のように、別の実施形態も本発明の対象の範囲内にあると考えられる。
【0022】
本発明の対象に対する所望の結果が、その後の吸着剤としての単一の排気側均一低能力吸着剤によって達成できる。広い蒸気濃度を通しての望ましい吸着特性を有する複数の低能力吸着剤のオプションが、一つの実施形態としてのみ、実証されている。
【0023】
表におけるガソリン作用能力(GWC)及びエミッションについての測定値が、2.1リットルのキャニスターを使用しているウェストヴァコのDBL試験から得られた。ペレットの例が、残りのキャニスター充填材として1800mLのBAX1500ペレットを用い、キャニスター内の300mL排気側層として試験された。ハチの巣体が、補助ベッドキャニスターとして試験された。その補助ベッドキャニスターは、BAX1500ペレットの2.1リットルのキャニスターと直列に配置された。全ての実施形態について、キャニスターシステムは、先ず、ガソリン蒸気吸着及び空気パージ(400ベッド容積空気)を反復させることによって、均一に予め調整された。この反復によって、GWC値が得られた。ブタンエミッションは、キャニスターシステムが温度反復燃料タンクへ取り付けられたとき、特に、昼間呼吸期間中において、ブタン吸着及び空気パージ工程後に引き続いて測定された。報告された値は、燃料タンクが加温され、蒸気含有空気がキャニスターシステムへ排気されるとともに排気側吸着剤から排気され、そこでエミッションが測定されたときに、11時間の期間中の第2日のDBLエミッションである。DBLエミッションを測定するために採用された手順は、アール・エス・ウィリアムズ(R.S.Williams)とシー・アール・クロンツ(C.R.Clontz)による「キャニスターブリードエミッションの影響及び制御」という名称のSAE技術論文2001−01−0733に記載されている。
【0024】
実施例1:微小球状の充填材ペレット
これらの2mmのペレットは、固体充填材を押出調合物に付加することによる容積希釈方法の実施例である。ペレットは、ウェストヴァコのSA−1500粉末(12.8重量%)、固体ガラス微小球状の充填材(79.7重量%のPQコーポレーションのA3000)、ベントナイトクレー(7.2重量%)、及び燐酸(0.3重量%)から成る押出調合物から調製された。ペレットは、4分間にわたって転動され、105℃で一晩中乾燥され、引き続いて、650℃で15分間にわたって水蒸気中で熱処理された。適切な非吸着性の充填材が、全ての蒸気濃度を通して吸着能力を減少させ、その結果として、平坦化された吸着等温線(図3の「実施例1」)を生じる。排気側領域を希釈する別の方法は、吸着剤粒子又はペレットと同様なサイズの不活性充填材粒子とをいっしょに混合すること、押出ペーストを中空円筒形、星印形、星形又はねじりリボン形、曲げリボン形又は螺旋リボン形などの高空隙形状に成形すること、もしくは、非吸着粒子の複数の薄層、多孔性マット(たとえば、発泡体)、又は吸着剤の層の間に単に閉じ込められた空気空間を設置することである。「非吸着性」の用語は、吸着剤の標的となる燃料に対して吸着しない、すなわち不活性である事を意味する。
【0025】
実施例2:セラミック結合ハチの巣体
200cpsi(平方インチ当りのセル数)の活性炭含有ハチの巣体は、容積希釈方法の他の実施例である。表におけるハチの巣体は、特許文献14に記載される方法に従って調製された。その特許は吸着モノリスの成形方法を開示している。その方法は、(a)押出ダイを通して押出可能な混合物を押し出して所定の形状のモノリスを形成する工程と、(b)押出されたモノリスを乾燥する工程と、(c)セラミック成形物質をいっしょに反応させてセラミックマトリックスを成形するのに十分な温度及び時間で、乾燥されたモノリスを焼成する工程とを有する。工程(a)において、形成されたモノリスはその全長にわたる少なくとも一つの通路を有し、押出可能の混合物は、活性炭、セラミック成形物質、融剤物質及び水から構成されている。押出可能な混合物は、押出後及びモノリスの乾燥中において、モノリスの形状を維持できる。
【0026】
この実施例において、押出調合物の成分は活性炭を部分的に希釈し、加えて、吸着剤が押出された成形品の連続セル構造によってさらに希釈される。これらのセルは、同様なベッドボリュームのペレットと比べて、成形品内にベッド空隙を多く生成する(ペレット又は粒子の場合は35容量%であるのに対して、ハチの巣体の場合は65容量%)。このセル構造及び高いベッド空隙は、ペレットのベッドと比べて、付加的な流れ抵抗が最小になるという別の利点を有し、それによって、ハチの巣体は、大幅に減少された断面積の付加的な補助装置として、主キャニスターへ取り付けることができる(図2の追加キャニスター本体12を参照)。
【0027】
実施例3:特殊前駆物質ペレット
これらの2mmのペレットは、固有の平坦な等温線吸着特性に従って押し出される吸着剤を選択することによって調製された。この実施例においては、調合物における充填材又は押し出された形状からのベッド空隙希釈のためには、特に何も設けられなかった。試験された活性炭ペレットを生成する押出調合物用の成分は、NORITによって生産されたSX1等級の活性炭(93.2重量%)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム結合剤系(6.8重量%)とから構成された。これらのペレットは、4分間にわたって転動され、105℃で一晩中乾燥され、引き続いて、150℃で3時間にわたって空気中で熱処理された。上述のように、実施例に記載されたように調製されたこれらの活性炭含有物質の比較が、以下の表に示されている。
【0028】
【表1】

【0029】
この表は、これらの二つのアプローチの三つの実施例について、高作用能力活性炭であるBAX1100及びBAX1500を含有する排気側層と比較したデータを示している。BAX活性炭(図3)の状態と比較して、三つの実施例全てが、高濃度におけるブタンについて非常に低い能力及びかなり平坦化された等温線曲線を有する。
【0030】
この表に示されるように、これらの実施例は、高作用能力活性炭だけから構成されたキャニスターに比べて、1/3〜1/22のエミッションの減少を実証している。GWCの低下は、全く無いか、又は、僅かだけあった。
【0031】
本発明の方法の別の好ましい実施形態が、自動車用の蒸発エミッション制御システムにおいて示されている。このシステムは、揮発燃料を貯留する燃料タンクと、吸気システムを有し、燃料を消費するようになっているエンジンと、タンクからの燃料蒸気を一時的に吸着して保持するための燃料蒸気吸着剤の一次ボリューム(initial volume)を含むキャニスターと、燃料蒸気をタンクからキャニスター蒸気入口へ導く導管と、キャニスターパージ出口からエンジンの吸気システムへの燃料蒸気パージ導管と、エンジン吸気システムの作動中にキャニスターを排気するとともにキャニスターへ空気を導入する排気/空気開口部との組合せを有している。そのシステムにおいて、キャニスターは、キャニスターの第1の領域内における蒸気吸着剤の一次ボリュームを通して、キャニスター蒸気入口から排気/空気開口部へ向かう燃料蒸気流路と、排気/空気開口部におけるキャニスターの第2の領域及びパージ出口における第1の領域内における吸着剤の二次ボリューム(subsequent volume)を通る空気流路とを形成し、その結果、タンク内に生成される燃料蒸気が、蒸気入口を通って、吸着剤の一次ボリュームの中へと流入し、そこで、吸着され、また、エンジン吸気システムの作動中において、周囲空気が通路に流入し、排気/空気開口部を通り、キャニスター内の空気流路に沿って、さらに、一次ボリューム及びパージ出口を通って、エンジン吸気システムへ流出する。この空気の流れは、吸着された燃料蒸気の一部分を除去するが、一次ボリューム内に燃料の残留物を残す。また、このシステムにおいては、蒸気吸着剤の少なくとも一つの二次ボリュームは、第1のボリュームの1%から100%のボリュームを有し、第2の領域内におけるキャニスターの内側又はキャニスターの外側に配置される。さらに、蒸気吸着剤の一次ボリュームは、流体の流れを蒸気吸着剤の少なくとも一つの二次ボリュームに通す前に、5容量%と50容量%との間のn−ブタン蒸気濃度で、25℃における35gn−ブタン/Lを超える吸着容量の増加によって特徴づけられる。蒸気吸着剤の二次ボリュームは、5容量%と50容量%との間のn−ブタン蒸気濃度で、25℃における35gn−ブタン/L未満の吸着容量の増加によって特徴づけられる。
【0032】
本発明の方法は、次のような実施形態も確実に含む。すなわち、蒸気吸着剤の第2のボリュームが、別の後続キャニスター内のキャニスターの外側に配置されるが、排気/空気入口及び第1の領域への周囲空気の流路内に配置されるような実施形態である。
【0033】
本発明の方法は、次のような実施形態も含む。すなわち、蒸気吸着剤の一次ボリューム及び蒸気吸着剤の二次ボリュームが、化学的活性化方法、熱的活性化方法、及び組み合わせられた化学的/熱的活性化方法から成るグループから選択されるプロセスによって活性化された木材、泥炭、石炭、ココナツ、褐炭、石油ピッチ、石油コークス、コールタールピッチ、果実種、堅果殻、おがくず、木粉、合成重合体及び天然重合体から成るグループから選択される物質に由来する活性炭であるような実施形態である。
【0034】
本発明の方法は、次のような実施形態も含む。すなわち、蒸気吸着剤の一次ボリューム及び蒸気吸着剤の二次ボリュームが、ゼオライト、多孔性シリカ、多孔性アルミナ、柱状クレー及び分子篩から成るグループから選択される無機物質であるような実施形態である。
【0035】
本発明の方法は、蒸気吸着剤の一次ボリューム及び蒸気吸着剤の二次ボリュームが多孔性重合体であるような実施形態を含む。
【0036】
本発明の方法は、蒸気吸着剤の二次ボリュームが容積希釈によって達成される吸着能力を示すような実施形態を含む。
【0037】
本発明の方法は、次のような実施形態も含む。すなわち、容積希釈が、活性化前における活性炭原料の付加、成形粒子又はモノリスへの成形前における吸着剤の付加、及びそれらの組合せから成るグループから選択される付加プロセスによって、共成分として非吸着性の充填材を付加することによって達成されるような実施形態である。
【0038】
本発明の方法は、次のような実施形態も含む。すなわち、容積希釈が、星形、中空円筒形、星印形、螺旋形、円筒形、成形リボン形、及び当該技術の能力内における他の形状から成るグループから選択される高空隙形状に吸着剤を成形することによって達成されるような実施形態である。
【0039】
ここに請求される方法は、容積希釈が、ハチの巣形又はモノリス形に吸着剤を成形することによって達成されるような実施形態を含む。
【0040】
ここに請求される方法は、容積希釈が、不活性スペーサ粒子、発泡体、繊維及びスクリーンを排気側吸着剤の粒子及びモノリスの外部に使用することによって達成されるような実施形態を含む。
【0041】
ここに請求される方法は、非吸着性の充填材が処理後において固体であるような実施形態を含む。
【0042】
また、ここに請求される方法は、非吸着性の充填材が、揮発又は燃焼して、成形粒子又はモノリス内に50Åの幅より大きい空隙を形成するような実施形態を含む。
【0043】
上述の説明は、本発明の実施形態に関する説明であり、ここにおいては、特許請求の範囲によって限定される発明の範囲から逸脱することなく、変更及び修正をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来技術のキャニスターシステムを断面で示した図である。
【図2】複数の吸着剤を有する本発明のキャニスターの一実施形態を断面で示した図である。
【図3】異なる活性炭吸着剤についてのブタン等温線特性を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 主キャニスター本体
2 サポートスクリーン
3 分割壁
4 排気ポート
5 蒸気源接続部
6 真空パージ接続部
7 燃料源側領域
8〜11 キャニスター領域
12 追加キャニスター本体
13 接続ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の蒸発エミッション制御システムにおいて燃料蒸気エミッションを減少させる方法であって、
一次吸着剤を燃料蒸気と接触させ、その後に前記燃料蒸気を二次吸着剤に接触させる工程を有し、一次吸着剤は、25℃における5容量%及び50容量%のn−ブタン蒸気濃度間で、35g/Lを超えるn−ブタンの吸着容量の増加を有し、二次吸着剤は、25℃における5容量%及び50容量%のn−ブタン蒸気濃度間で、35g/L未満のn−ブタンの吸着容量の増加を有していて、
前記一次吸着剤と前記二次吸着剤との間のパージ性能の差が、前記一次吸着剤のパージ性能に基づいて10%以下である方法。
【請求項2】
単一の二次吸着剤を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の二次吸着剤を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
一次吸着剤及び二次吸着剤は、単一の自動車の蒸発エミッション制御キャニスター内に配置される請求項2に記載の方法。
【請求項5】
一次吸着剤及び二次吸着剤は、単一の自動車の蒸発エミッション制御キャニスター内に配置される請求項3に記載の方法。
【請求項6】
一次吸着剤及び二次吸着剤は、燃料蒸気が順次接触できるように相互に接続された別々のキャニスター内に配置される請求項2に記載の方法。
【請求項7】
一次吸着剤及び少なくとも一つの二次吸着剤は、燃料蒸気が順次接触できるように相互に接続された別々のキャニスター内に配置される請求項3に記載の方法。
【請求項8】
一次吸着剤及び二次吸着剤は、化学的活性化方法、熱的活性化方法、及び組合せられた化学的/熱的活性化方法から成るグループから選択されるプロセスによって活性化された木材、泥炭、石炭、ココナツ、褐炭、石油ピッチ、石油コークス、コールタールピッチ、果実種、堅果殻、おがくず、木粉、合成重合体及び天然重合体から成るグループから選択される物質に由来する活性炭である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
一次吸着剤及び二次吸着剤は、ゼオライト、多孔性シリカ、多孔性アルミナ、柱状クレー及び分子篩から成るグループから選択される無機物質である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
一次吸着剤及び二次吸着剤は、多孔性重合体である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
二次吸着剤は容積希釈されている請求項1に記載の方法。
【請求項12】
容積希釈は、活性化前の活性炭原料の付加、成形粒子又はモノリスへの成形前における吸着剤の付加、及びそれらの組合せから成るグループから選択される付加プロセスによって、共成分として非吸着性の充填材を付加することによって達成される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
容積希釈は、星形、中空円筒形、星印形、螺旋形、円筒形及び成形リボン形から成るグループから選択される高空隙形状に吸着剤を成形することによって達成される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
容積希釈は、ハチの巣形又はモノリス形に吸着剤を成形することによって達成される請求項11に記載の方法。
【請求項15】
容積希釈は、不活性スペーサ粒子、空隙、発泡体、繊維及びスクリーンを吸着剤の外部に使用する事によって達成される請求項11に記載の方法。
【請求項16】
非吸着性の充填材は、処理後において固体である請求項12に記載の方法。
【請求項17】
非吸着性の充填材は、揮発又は燃焼して、成形粒子又はモノリス内に50Åの幅より大きい空隙を形成する請求項12に記載の方法。
【請求項18】
自動車の蒸発エミッション制御システムにおいて燃料蒸気エミッションを減少させる方法であって、
揮発性有機化合物を含有する燃料蒸気を蒸気吸着剤に通すことによって、その燃料蒸気から少なくとも一つの揮発性有機化合物を除去する工程を有し、
その改良点は、燃料蒸気を一次吸着剤を包含する領域に連続的に通す工程と、流体の流れを、大気中へ排気する前に、少なくとも一つの二次吸着剤を包含する領域に通す工程とを有し、一次吸着剤は、25℃における5容量%及び50容量%のn−ブタン蒸気濃度間で、35g/Lを超えるn−ブタンの吸着容量の増加によって特徴づけられ、また、二次吸着剤は、25℃における5容量%及び50容量%のn−ブタン蒸気濃度間で、35g/L未満のn−ブタンの吸着容量の増加によって特徴づけられ、
前記一次吸着剤と前記二次吸着剤との間のパージ性能の差が、前記一次吸着剤のパージ性能に基づいて10%以下である方法。
【請求項19】
一次吸着剤及び二次吸着剤は、単一の自動車の蒸発エミッションキャニスター内に配置される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
一次吸着剤及び二次吸着剤は、燃料蒸気が順次接触できるように相互に接続された別々のキャニスター内に配置される請求項18に記載の方法。
【請求項21】
一次吸着剤及び二次吸着剤は、化学的/熱的活性化方法によって活性化された木材、泥炭、石炭、ココナツ、褐炭、石油ピッチ、石油コークス、コールタールピッチ、果実種、堅果殻、おがくず、木粉、合成重合体及び天然重合体から成るグループから選択される物質に由来する活性炭である請求項18に記載の方法。
【請求項22】
一次吸着剤及び二次吸着剤は、ゼオライト、多孔性シリカ及び分子篩から成るグループから選択される無機物質である請求項18に記載の方法。
【請求項23】
一次吸着剤及び二次吸着剤は、多孔性重合体である請求項18に記載の方法。
【請求項24】
二次吸着剤は容積希釈されている請求項18に記載の方法。
【請求項25】
容積希釈は、活性化前の活性炭原料の付加、成形粒子又はモノリスへの成形前における吸着剤の付加、及びそれらの組合せから成るグループから選択される付加プロセスによって、共成分として非吸着性の充填材を付加することによって達成される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
容積希釈は、星形、中空円筒形、星印形、螺旋形、円筒形及び成形リボン形から成るグループから選択される高空隙形状に吸着剤を成形することによって達成される請求項24に記載の方法。
【請求項27】
容積希釈は、ハチの巣形又はモノリス形に吸着剤を成形することによって達成される請求項24に記載の方法。
【請求項28】
容積希釈は、不活性スペーサ粒子、空隙、発泡体、繊維及びスクリーンを吸着剤の外部に使用することによって達成される請求項24に記載の方法。
【請求項29】
非吸着性の充填材は、処理後において固体である請求項25に記載の方法。
【請求項30】
非吸着性の充填材は、揮発又は燃焼して、成形粒子又はモノリス内に50Åの幅より大きい空隙を形成する請求項25に記載の方法。
【請求項31】
車両用の蒸発エミッション制御システムであって、
揮発燃料を貯留する燃料タンクと、吸気システムを有し、燃料を消費するようになっているエンジンと、タンクからの燃料蒸気を一時的に吸着して保持するための燃料蒸気の一次吸着剤を含むキャニスターと、燃料蒸気をタンクからキャニスター蒸気入口へ導く導管と、キャニスターパージ出口からエンジンの吸気システムへの燃料蒸気パージ導管と、エンジン吸気システムの作動中にキャニスターを排気するとともにキャニスターへ空気を導入する排気/空気開口部との組合せを有し、
キャニスターは、キャニスターの第1の領域内における蒸気の一次吸着剤を通して、キャニスター蒸気入口から排気/空気開口部へ向かう燃料蒸気流路と、排気/空気開口部におけるキャニスターの第2の領域及びパージ出口における第1の領域内における二次吸着剤を通る空気流路とによって限定され、その結果、タンク内に生成される燃料蒸気が、蒸気入口を通って、一次吸着剤の中へと流入し、そこで吸着され、また、エンジン吸気システムの作動中において、周囲空気が通路に流入し、排気/空気開口部を通り、キャニスター内の空気流路に沿って、さらに、一次吸着剤及びパージ出口を通って、エンジン吸気システムへ流出し、その空気の流れは、吸着された燃料蒸気の一部分を除去するが、一次吸着剤に燃料の残留物を残し、
また、改良点として、少なくとも一つの蒸気の二次吸着剤は、一次吸着剤の1%から100%の体積を有するとともに、第2の領域内におけるキャニスターの内側又はキャニスターの外側に配置され、さらに、蒸気の一次吸着剤は、空気の流れを蒸気吸着剤の少なくとも一つの二次吸着剤に通す前に、25℃における5容量%及び50容量%のn−ブタン蒸気濃度間で、35g/L‐ベッドを超えるn−ブチルの吸着容量の増加によって特徴づけられ、蒸気の二次吸着剤は、25℃における5容量%及び50容量%のn−ブタン蒸気濃度間で、35g/L未満のn−ブチルの吸着容量の増加によって特徴づけられ、
前記一次吸着剤と前記二次吸着剤との間のパージ性能の差が、前記一次吸着剤のパージ性能に基づいて10%以下であるシステム。
【請求項32】
蒸気の二次吸着剤は、前記キャニスターの外側であり、別の後続キャニスター内に配置される請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
蒸気の一次吸着剤及び蒸気の二次吸着剤は、化学的活性化方法、熱的活性化方法、及び組合せられた化学的/熱的活性化方法から成るグループから選択されるプロセスによって活性化された木材、泥炭、石炭、ココナツ、褐炭、石油ピッチ、石油コークス、コールタールピッチ、果実種、堅果殻、おがくず、木粉、合成重合体及び天然重合体から成るグループから選択される物質に由来する活性炭である請求項31又は32に記載のシステム。
【請求項34】
蒸気の一次吸着剤及び蒸気の二次吸着剤は、ゼオライト、多孔性シリカ、多孔性アルミナ、柱状クレー及び分子篩から成るグループから選択される無機物質である請求項31又は32に記載のシステム。
【請求項35】
蒸気の一次吸着剤及び蒸気の二次吸着剤は、多孔性重合体である請求項31又は32に記載のシステム。
【請求項36】
蒸気の二次吸着剤は容積希釈されている請求項31から35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
容積希釈は、活性化前の活性炭原料の付加、成形粒子又はモノリスへの成形前における吸着剤の付加、及びそれらの組合せから成るグループから選択される付加プロセスによって、共成分として非吸着性の充填材を付加することによって達成される請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
容積希釈は、星形、中空円筒形、星印形、螺旋形、円筒形及び成形リボン形から成るグループから選択される高空隙形状に吸着剤を成形することによって達成される請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
容積希釈は、ハチの巣形又はモノリス形に吸着剤を成形することによって達成される請求項36に記載のシステム。
【請求項40】
容積希釈は、不活性スペーサ粒子、空隙、発泡体及びスクリーンを吸着剤の外部に使用することによって達成される請求項36に記載のシステム。
【請求項41】
非吸着性の充填材は、処理後において固体である請求項37に記載のシステム。
【請求項42】
非吸着性の充填材は、揮発又は燃焼して、成形粒子又はモノリス内に50Åの幅より大きい空隙を形成する請求項37に記載のシステム。
【請求項43】
エミッションを制御するための自動車のシステムへの使用に有用なキャニスターであって、
キャニスターは、その第1の領域内における蒸気の一次吸着剤を通して、キャニスター排気/空気開口部へ向う燃料蒸気流路を形成するキャニスター蒸気入口によって限定され、キャニスター排気/空気開口部は、排気/空気開口部におけるキャニスターの第2の領域及びパージ出口における第1の領域内における二次吸着剤を通る連続空気流路を形成し、その結果、揮発性燃料を貯留するためのタンク内に生成される燃料蒸気が、蒸気入口を通って、一次吸着剤の中へと流入し、そこで吸着され、また、エンジン吸気システムの作動中において、周囲空気が通路に流入させられ、排気/空気開口部を通り、キャニスター内の空気流路に沿って、さらに、一次吸着剤及びパージ出口を通って、エンジン吸気システムへ流出し、その空気の流れは、吸着された燃料蒸気の一部分を除去するが、一次吸着剤内に燃料の残留物を残し、また、蒸気の二次吸着剤の少なくとも一つは、一次吸着剤の1%から100%の体積を有するとともに、キャニスターの第2の領域内におけるキャニスターの内側又はキャニスターの外側に配置され、さらに、蒸気の一次吸着剤は、空気の流れを蒸気の二次吸着剤の少なくとも一つに通す前に、25℃における5容量%及び50容量%のn−ブタン蒸気濃度間で、35g/L‐ベッドを超えるn−ブタンの吸着容量の増加によって特徴づけられ、蒸気の二次吸着剤は、25℃における5容量%及び50容量%のn−ブタン蒸気濃度間で、35g/L未満のn−ブタンの吸着容量の増加によって特徴づけられ、
前記一次吸着剤と前記二次吸着剤との間のパージ性能の差が、前記一次吸着剤のパージ性能に基づいて10%以下であるキャニスター。
【請求項44】
蒸気の二次吸着剤は、前記キャニスターの外側であり、別の後続キャニスター内に配置
される請求項43に記載のキャニスター。
【請求項45】
蒸気の一次吸着剤及び蒸気の二次吸着剤は、化学的活性化方法、熱的活性化方法、及び組合せられた化学的/熱的活性化方法から成るグループから選択されるプロセスによって活性化された木材、泥炭、石炭、ココナツ、褐炭、石油ピッチ、石油コークス、コールタールピッチ、果実種、堅果殻、おがくず、木粉、合成重合体及び天然重合体から成るグループから選択される物質に由来する活性炭である請求項43又は44に記載のキャニスター。
【請求項46】
蒸気の一次吸着剤及び蒸気の二次吸着剤は、ゼオライト、多孔性シリカ、多孔性アルミナ、柱状クレー及び分子篩から成るグループから選択される無機物質である請求項43又は44に記載のキャニスター。
【請求項47】
蒸気の一次吸着剤及び蒸気の二次吸着剤は、多孔性重合体である請求項43又は44に記載のキャニスター。
【請求項48】
蒸気の二次吸着剤は、容積希釈されている請求項43又は44に記載のキャニスター。
【請求項49】
容積希釈は、活性化前の活性炭原料の付加、成形粒子又はモノリスへの成形前における吸着剤の付加、及びそれらの組合せから成るグループから選択される付加プロセスによって、共成分として非吸着性の充填材を付加することによって達成される請求項48に記載のキャニスター。
【請求項50】
容積希釈は、星形、中空円筒形、星印形、螺旋形、円筒形及び成形リボン形から成るグループから選択される高空隙形状に吸着剤を成形することによって達成される請求項48に記載のキャニスター。
【請求項51】
容積希釈は、ハチの巣形又はモノリス形に成形された吸着剤によって達成される請求項49に記載のキャニスター。
【請求項52】
容積希釈は、不活性スペーサ粒子、空隙、発泡体及びスクリーンを吸着剤の外部に使用することによって達成される請求項48に記載のキャニスター。
【請求項53】
非吸着性の充填材は、処理後において固体である請求項49から52のいずれか一項に記載のキャニスター。
【請求項54】
非吸着性の充填材は、揮発又は燃焼して、成形された粒子又はモノリス内に50Åの幅より大きい空隙を形成する請求項49から52のいずれか一項に記載のキャニスター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−79595(P2009−79595A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284794(P2008−284794)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【分割の表示】特願2003−547774(P2003−547774)の分割
【原出願日】平成14年7月8日(2002.7.8)
【出願人】(504376810)ミードウエストベコ・コーポレーション (55)
【Fターム(参考)】