説明

蓄熱システム及びこれを備えた車両

【課題】 蓄電装置の放電時における電気エネルギを熱エネルギとして再利用することができる蓄熱システムを提供する。
【解決手段】 充放電が可能な蓄電装置(10a)と、蓄電装置を放電させた際の電気エネルギを用いて発熱する発熱体(13)と、発熱体の熱エネルギを用いて蓄熱するとともに、蓄熱された熱エネルギを蓄電装置に供給するための蓄熱手段(12,14)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を放電させた際の電気エネルギを熱エネルギとして再利用することのできる蓄熱システム及び、これを備えた車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の単電池(二次電池)で構成される組電池を含む電池パックを車両に搭載し、電池パック(組電池)の出力を用いて車両を走行等させる場合には、組電池の残容量(いわゆる、SOC(State Of Charge))が所定範囲内で変動するように、組電池の充放電を行っている。例えば、上記所定範囲の上限値として80%に設定し、下限値として40%に設定している。
【0003】
また、車両のイグニッションスイッチがオフ状態となったときには、組電池のSOCを所定値(例えば、上記所定範囲の中心に位置する値)に維持し、次回において車両を始動し易くしている。
【0004】
ここで、車両が放置された状態(言い換えれば、エンジンが停止している状態)においては、一般的に、組電池のSOCが高いほど、組電池の寿命が短くなってしまうことが知られている。特に、一般の車両では、放置された状態が全体の90%を占めることもあり、組電池のSOCを高い値に維持しておくことは、組電池の寿命を低下させてしまう。
【0005】
そこで、特許文献1では、車両が非走行状態にあるときに、バッテリを強制的に放電することにより、バッテリの電圧値(SOCに相当する)を下げるようにしている。
【特許文献1】特開平10−302844号公報(段落0024−0048、図2)
【特許文献2】特開2000−134811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1のように、バッテリを強制的に放電させれば、車両の放置に伴うバッテリの劣化を抑制することができるものの、バッテリを単に放電させただけでは、放電時の電気エネルギが無駄になってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、放電時の電気エネルギを熱エネルギとして再利用して電気エネルギの無駄を省くことのできる蓄熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明である蓄熱システムは、充放電が可能な蓄電装置と、蓄電装置を放電させた際の電気エネルギを用いて発熱する発熱体と、発熱体の熱エネルギを用いて蓄熱するとともに、蓄熱された熱エネルギを蓄電装置に供給するための蓄熱手段とを有することを特徴とする。
【0009】
ここで、蓄熱手段を蓄電装置に接触させて蓄電装置に熱エネルギを伝達することができる。また、蓄熱手段により、蓄電装置に導かれる熱交換媒体に対して熱エネルギを与えることができる。蓄熱手段としては、固相状態及び液相状態の間で変化して過冷却される蓄熱材を含む蓄熱体と、蓄熱体に対して振動を与えるための振動伝達体とで構成することができる。
【0010】
一方、本発明である車両は、上述した蓄熱システムと、蓄熱手段の駆動を制御するコントローラとを有し、コントローラは、車両を始動させる際に、蓄熱手段から蓄電装置に対して熱エネルギを供給させることを特徴とする。
【0011】
ここで、蓄熱手段は、車両に搭載された蓄電装置とは異なる搭載物に対して、熱エネルギを供給することができる。また、コントローラは、車両が始動していない場合に、蓄電装置の残容量が所定値に到達するまで、蓄電装置を放電させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓄電装置を放電させた際の電気エネルギを熱エネルギとして蓄熱手段に貯めておくことができるため、放電時のエネルギを無駄無く利用することができる。また、蓄熱手段で貯められた熱エネルギは、蓄電装置を温めるために用いることにより、低温時における蓄電装置の出力低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1である蓄熱システムについて、図1及び図2を用いて説明する。ここで、図1は、本実施例の蓄熱システムの構成を示すブロック図であり、図2は、単電池の構成を示す外観図である。
【0015】
図1において、電池パック1は、複数の単電池(二次電池)からなる組電池10と、組電池10を収容するパックケース11とで構成されている。組電池10には、複数の単電池がバスバーを介して電気的及び機械的に接続されたものである。組電池10は、正極用及び負極用の配線(不図示)が接続されており、これらの配線は、パックケース11を貫通して、電池パック1の外部に設けられた電子機器に接続されている。
【0016】
本実施例の電池パック1は、車両に搭載されており、車両の走行に用いられるモータに対して電力を供給したり、車両の減速時における回生エネルギを用いて充電したりする。ここで、電池パック1の出力を用いて車両を走行させる構成は、公知の構成と同様であるため、詳細な説明については省略する。
【0017】
一方、組電池10の冷却効率(放熱効率)を向上させるためと、複数の単電池の間における短絡を防止するために、パックケース11の内部に、組電池10とともに液体を収容することができる。
【0018】
この液体としては、絶縁性の油や不活性液体を用いることができる。絶縁性の油としては、シリコンオイルが用いられる。また、不活性液体(絶縁性を有する液体)としては、フッ素系不活性液体である、フロリナート、Novec HFE(hydrofluoroether)、Novec1230(スリーエム社製)を用いることができる。
【0019】
ここで、図2を用いて、組電池10を構成する単電池の構成について説明する。図2(A)は、本実施例における単電池を側面から見たときの図であり、図2(B)は、本実施例における単電池を図2(A)の矢印X方向(上方向)から見たときの図である。
【0020】
単電池10aは、電池ケースと、電池ケースの内部に収容される発電要素とで構成されている。ここで、発電要素とは、正極体、負極体及び電解質で構成され、充放電が可能なものである。
【0021】
例えば、単電池10aとしてニッケル−水素電池を用いた場合には、正極体のうち集電体上に形成される活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極体のうち集電体上に形成される活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlMnCo(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。そして、電解液としての水酸化カリウムを用いることができる。
【0022】
また、リチウムイオン電池を用いた場合には、正極体のうち集電体上に形成される活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極体のうち集電体上に形成される活物質として、カーボンを用いることができる。そして、有機電解液を用いることができる。なお、本実施例では、二次電池を用いた場合について説明するが、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。
【0023】
単電池10aには、上述した発電要素に接続された正極用端子10b及び負極用端子10cを有している。正極用端子10b及び負極用端子10cは、他の単電池10aに設けられた正極用端子10bや負極用端子10cと、バスバーを介して電気的に接続される。
【0024】
一方、単電池(蓄電装置)10aの外側面には、蓄熱体(発熱体)12が配置されている。この蓄熱体12は、後述するように、蓄熱した熱エネルギを利用して単電池10aを温めるために用いられ、図2(B)に示すように、単電池10aにおける4つの側面に接触している。ここで、蓄熱体12は、単電池10aにおける少なくとも一部分に接触していればよく、この接触位置は適宜設定することができる。
【0025】
なお、蓄熱体12の熱によって単電池10aを温めることができれば、蓄熱体12を単電池10aから離して配置することもできる。
【0026】
本実施例では、組電池10を構成する各単電池10aに対して蓄熱体12を設けているが、複数の単電池10aが電気的に接続された1つの電池モジュールに対して、1つの蓄熱体12を設けてもよい。ここで、単電池10a毎の出力特性(充放電特性)のバラツキを抑制するためには、蓄熱体12によって、組電池10を構成するすべての単電池10aを温めるようにすることが好ましい。
【0027】
蓄熱体12は、蓄熱材を密閉状態となる容器内に充填したものである。蓄熱材としては、固相状態及び液相状態の間で変化し、過冷却される材料が用いられる。例えば、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、パラフィンを用いることができる。蓄熱材として用いる材料は、各材料の持つ凝固温度に基づいて決定することができる。
【0028】
また、蓄熱体12の内部には、電気ヒータ(発熱体)13が設けられており、この電気ヒータ13は、電池パック1(組電池10)に接続されている。これにより、電気ヒータ13には、組電池10からの電流が流れるようになっている。電気ヒータ13に電流が流れた場合には、電気ヒータ13が発熱することにより、蓄熱体12が加熱される。ここで、本実施例では、蓄熱体12の内部に電気ヒータ13を設けた場合について説明するが、これに限るものではない。すなわち、電気ヒータ13によって蓄熱体12を加熱することができればよく、例えば、蓄熱体12の外表面に電気ヒータ13を設けてもよい。
【0029】
一方、蓄熱体12の外表面には、振動体(振動伝達体)14が設けられている。この振動体14は、蓄熱体12に対して振動を与えるために用いられる。振動体14は、圧電素子(電気−機械エネルギ変換素子)によって構成されており、圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子を変形させて蓄熱体12に振動を与えることができる。
【0030】
なお、振動体14としては、蓄熱体12に振動を与えることができるものであればよく、上述した構成に限定されるものではない。例えば、蓄熱体12に接触する位置と、蓄熱体12から離れた位置との間で移動する移動部材(振動伝達体)を設け、この移動部材を蓄熱体12に衝突させることにより、振動を発生させるようにすることもできる。
【0031】
図1において、放電回路2は、電池パック1(組電池10)を強制的に放電させるために用いられ、コントローラ4によって制御される。放電回路2は、具体的には、組電池10及び電気ヒータ13を接続する配線上に設けられ、スイッチ等によって構成することができる。
【0032】
また、電池パック1には、電池パック1(組電池10)の温度を検出するための第1の温度センサ3aが設けられており、第1の温度センサ3aの出力は、コントローラ4に入力される。コントローラ4は、第1の温度センサ3aの出力に基づいて電池パック1の温度を検出する。なお、本実施例では、電池パック1に取り付けた第1の温度センサ3aによって電池パック1の温度を直接、検出するようにしているが、これに限るものではない。すなわち、電池パック1の温度を間接的に検出できるものであってもよい。
【0033】
一方、第2の温度センサ3bは、電池パック1の外部における温度(いわゆる環境温度)を検出するために用いられる。コントローラ4は、第2の温度センサ3bの出力に基づいて環境温度を検出する。なお、第2の温度センサ3bを用いずに、間接的に環境温度を検出できるものであってもよい。
【0034】
コントローラ4は、所定情報を記憶するためのメモリ4aを有している。この所定情報の内容については、後述する。ここで、コントローラ45は、後述する電池パック1の放電制御や、放電回路2及び振動体14の駆動制御の他にも、車両の走行状態を制御するために用いることもできる。
【0035】
次に、上述したコントローラ4の制御について、図3を用いて説明する。ここで、図3に示す処理は、電池パック1を強制的に放電させるための処理である。この処理は、車両のエンジンが停止したとき(言い換えれば、イグニッションスイッチがオフ状態のとき)に開始される。
【0036】
ステップS10において、コントローラ4は、第1の温度センサ3aの出力に基づいて電池パック1の温度を検出するとともに、第2の温度センサ3bの出力に基づいて環境温度(いわゆる外気温)を検出する。ステップS11において、ステップS10で検出された電池パック1の温度及び環境温度が略等しいか否かを判別し、略等しい場合には、ステップS12に進み、そうでない場合にはステップS10に戻る。ここでいう略等しいとは、完全に一致しているだけでなく、許容される温度差を含むものである。
【0037】
ステップS12において、コントローラ4は、車両(エンジン)を始動させるために必要な電池パック1におけるSOCの下限値(以下、最低SOCという)を決定する。具体的には、コントローラ4のメモリ4aには、図4に示すデータテーブル(上述した所定情報)が記憶されており、このデータテーブルを用いて最低SOCが決定される。
【0038】
ここで、図4は、電池パック1の最低SOCと温度との関係を示す図である。図4に示すように、電池パック1の最低SOCは、温度が高くなるにつれて低くなる。また、図4に示す最低SOCのラインに対して上側の領域は、車両を始動させることができる領域を示し、下側の領域は、車両を始動させることができない領域を示している。各温度に対する最低SOCは、予め求めておくことができる。
【0039】
なお、本実施例では、図4に示す最低SOCのデータテーブルをメモリ4aに記憶させているが、これに限るものではない。すなわち、図3のステップS10で検出された温度に基づいて、最低SOCを演算によって求めるようにしてもよい。
【0040】
また、本実施例では、ステップS11で説明したように、環境温度及び電池パック1の温度を比較しているが、これに限るものではない。例えば、エンジンが停止したタイミングから所定時間が経過した後に、電池パック1の温度を検出し、この検出された温度に基づいて最低SOCを決定することもできる。
【0041】
ここで、所定時間の測定は、例えば、コントローラ4に設けたタイマによって行うことができる。また、所定時間とは、車両が放置されることによって単電池10aに劣化が生じ始める前までの時間である。
【0042】
さらに、本実施例では、図4に示すように、エンジンの始動が可能な領域と、エンジンの始動が不可能な領域との境界に位置する最低SOCを設定しているが、これに限るものではない。具体的には、図4に示す最低SOCよりも高いSOCを設定するようにしてもよい。但し、設定されるSOCは、図4に示す最低SOCに近いことが好ましい。
【0043】
一方、図3のステップS13では、現在における電池パック1のSOCが、ステップS12で決定された最低SOCとなるように、電池パック1の放電を行う。ここでは、現在のSOCが最低SOCよりも高くなっている。具体的には、コントローラ4は、放電回路2をオフ状態からオン状態に切り換えることにより、電池パック1を強制的に放電させる。
【0044】
このように電池パック1のSOCが最低SOCとなるように電池パック1の放電を行うことにより、SOCが高い状態のままで電池パック1が長時間放置されることによる劣化を抑制することができる。
【0045】
電池パック1から放電された電流は、放電回路2を介して電気ヒータ13に供給される。これにより、電気ヒータ13は、発熱することになる。ここで、電池パック1の電圧値を直接、電気ヒータ13に供給することもできるし、DC/DCコンバータによって電池パック1の電圧値を低電圧値に変換してから電気ヒータ13に供給することもできる。
【0046】
電気ヒータ13が発熱すると、電気ヒータ13と接触している蓄熱体12に含まれる蓄熱材が温められ、蓄熱材の温度が上昇していく。ここで、電気ヒータ13への通電が行われる前においては、蓄熱材が固相状態となっている。
【0047】
蓄熱材の温度が上昇していくと、蓄熱材は、固相状態から液相状態に変化(融解)する。そして、蓄熱材の温度は、電気ヒータ13の発熱量に応じた温度まで上昇する。
【0048】
電池パック1のSOCが最低SOCに到達して電池パック1の放電が停止されると、電気ヒータ13への通電も停止する。ここで、電池パック1の放電停止は、放電回路2をオン状態からオフ状態に切り替えることによって行われる。
【0049】
電気ヒータ13への通電が停止した後は、蓄熱体12の放熱が開始されることになる。すなわち、蓄熱体12の温度は、環境温度に応じて低下していくことになる。ここで、蓄熱材は、上述したように過冷却が可能な材料であるため、蓄熱材は、徐々に冷却されることにより、液相のままで過冷却の状態となる。この状態において、蓄熱体12(蓄熱材)は、融解熱に相当する熱量を蓄えていることになる。
【0050】
次に、車両を始動させる際の動作について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0051】
ステップS20において、コントローラ4は、第1の温度センサ3aの出力に基づいて電池パック1の温度を検出する。ステップS21では、ステップS20で検出された温度が所定値以下であるか否かを判別する。この所定値とは、図3のステップS12で決定された最低SOCに対応する温度を示す。
【0052】
ステップS21において、電池パック1の検出温度が所定値以下である場合には、ステップS22に進み、そうでない場合にはステップS23に進む。ステップS22において、コントローラ4は、振動体14を駆動することによって、蓄熱体12に振動(外力)を与える。
【0053】
ここで、振動体14によって振動を与える前においては、図3のステップS13で説明したように、蓄熱体12の蓄熱材は、液相状態であって、かつ過冷却の状態にある。この状態の蓄熱材に対して振動を与えると、過冷却の状態が解除され、蓄熱材は液相状態から固相状態に変化する。そして、蓄熱体12からは融解熱に相当する熱量が放出される。
【0054】
蓄熱体12は、図2に示すように、単電池10aに接触しているため、蓄熱体12から発生した熱は単電池10aに伝達され、単電池10aが温められる。単電池10aが温められると、単電池10aの出力を上昇させることができ、エンジンを始動させるのに必要な出力を得ることができる。
【0055】
なお、本実施例では、電池パック1の検出温度に応じて振動体14を駆動したり、駆動しなかったりしているが、電池パック1の温度に拘わらず、エンジンを始動させるときには常に振動体14を駆動させてもよい。この場合には、電池パック1(単電池10a)が蓄熱体12からの熱によって温められ、単電池10aの出力を上昇させることができる。これにより、エンジンの始動を容易に行うことができる。
【実施例2】
【0056】
次に、本発明の実施例2である蓄熱システムについて図6を用いて説明する。ここで、図6は、電池パックに対して気体を供給するための構成を示す概略図である。なお、実施例1で説明した部材と同一の機能を有する部材については同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0057】
ダクト5は、電池パック1に対して気体(例えば、空気)を供給するとともに、車両に搭載されたシートに対して気体を供給する。ここで、ダクト5の上流側には、ダクト5の内部に気体を取り込むためのファン(不図示)が配置されている。また、ダクト5は、電池パック1に気体を導く経路と、シートに気体を導く経路とに分岐されている。この分岐部分には、切換部材6が設けられている。
【0058】
切換部材6は回動軸6aを中心として回動可能であり、ダクト5の上流側からの気体を電池パック1に導く経路を形成する位置と、上記気体をシートに導く経路を形成する位置との間で移動可能となっている。切換部材6の駆動は、実施例1で説明したコントローラ4によって制御される。
【0059】
ダクト5のうち、分岐部分よりも上流側には、蓄熱体12が設けられている。この蓄熱体12には、実施例1と同様に、電気ヒータ13及び振動体14が設けられている。具体的には、蓄熱体12は、ダクト5の外周上に配置されており、ダクト5を通過する気体に対して熱エネルギを与えることができる。
【0060】
実施例1で説明したように、過冷却の状態にある蓄熱体12に対して振動を与えると、蓄熱体12からは熱が放出され、この熱によって、ダクト5を通過する気体が温められる。この温められた気体を電池パック1に導けば、電池パック1を温めることができ、シートに導けば、シートを温めることができる。
【0061】
なお、蓄熱体12からの熱伝達を行わない場合には、ダクト5に取り込まれた気体を電池パック1に導くことにより、電池パック1を冷却することもできる。このようにダクト5を通過して電池パック1等に導かれる気体は、熱交換媒体として機能する。ここで、電池パック1において熱交換された気体は、車両の内部(車室内)又は外部に排出される。
【0062】
本実施例では、熱交換媒体としての気体をダクト5を介して電池パック1及びシートに導いているが、これに限るものではない。すなわち、シート以外の車両に搭載される搭載物に対して気体を導いたり、車室内に気体(蓄熱体12からの熱を受けた気体)を送り込むようにしたりすることができる。また、気体の代わりに液体(熱交換媒体)を電池パック1等に導くようにしてもよい。
【0063】
本実施例によれば、電池パック1を放電させた際の電気エネルギを熱エネルギとして再利用し、電池パック1やシート等の車両搭載物を温めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例1である蓄熱システムに用いられる回路構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1における単電池の構成を示す側面図(A)及び上面図(B)である。
【図3】実施例1において、電池パックの放電処理を示すフローチャートである。
【図4】電池パックの最低SOC及び温度の関係を示す図である。
【図5】実施例1において、車両を始動させる際の処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例2である蓄熱システムの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0065】
1:電池パック
4:コントローラ
10:組電池
10a:単電池(蓄電装置)
12:蓄熱体(蓄熱手段)
13:電気ヒータ(発熱体)
14:振動体(振動伝達体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電が可能な蓄電装置と、
前記蓄電装置を放電させた際の電気エネルギを用いて発熱する発熱体と、
前記発熱体の熱エネルギを用いて蓄熱するとともに、蓄熱された熱エネルギを前記蓄電装置に供給するための蓄熱手段とを有することを特徴とする蓄熱システム。
【請求項2】
前記蓄熱手段は、前記蓄電装置に接触して前記蓄電装置に熱エネルギを伝達することを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項3】
前記蓄熱手段は、前記蓄電装置に導かれる熱交換媒体に対して熱エネルギを与えることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項4】
前記蓄熱手段は、
固相状態及び液相状態の間で変化して過冷却される蓄熱材を含む蓄熱体と、
前記蓄熱体に対して振動を与えるための振動伝達体とを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の蓄熱システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄熱システムと、
前記蓄熱手段の駆動を制御するコントローラとを有し、
前記コントローラは、車両を始動させる際に、前記蓄熱手段から前記蓄電装置に対して熱エネルギを供給させることを特徴とする車両。
【請求項6】
前記蓄熱手段は、該車両に搭載された前記蓄電装置とは異なる搭載物に対して、熱エネルギを供給することを特徴とする請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記コントローラは、該車両が始動していない場合に、前記蓄電装置の残容量が所定値に到達するまで、前記蓄電装置を放電させることを特徴とする請求項5又は6に記載の車両。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−4164(P2009−4164A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162602(P2007−162602)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】